車両後部の衝突対応構造
【課題】車両後方から加わる衝撃荷重を効果的に吸収することで、車室内における乗員の安全性を高める。
【解決手段】車両後部において車両前後方向に延びる左右一対のリアサイドフレーム2,3と、該リアサイドフレーム2,3よりも後方において車幅方向に延設されたリアバンパ4と、エンジンの排気経路28に設けられ、前記リアサイドフレーム2,3と車両前後方向に重なる位置に配設された中空の排気サイレンサ30と、を有する車両後部の衝突対応構造であって、前記排気サイレンサ30よりも後方に、車両後方から前記リアバンパ4に加わった衝撃荷重を前記排気サイレンサ30に伝達する荷重伝達部材52を配設し、該荷重伝達部材52により前方へ押し込まれた前記排気サイレンサ30を、該排気サイレンサ30よりも前方に配置された車体構成部材からなる受け部材で受け止める。
【解決手段】車両後部において車両前後方向に延びる左右一対のリアサイドフレーム2,3と、該リアサイドフレーム2,3よりも後方において車幅方向に延設されたリアバンパ4と、エンジンの排気経路28に設けられ、前記リアサイドフレーム2,3と車両前後方向に重なる位置に配設された中空の排気サイレンサ30と、を有する車両後部の衝突対応構造であって、前記排気サイレンサ30よりも後方に、車両後方から前記リアバンパ4に加わった衝撃荷重を前記排気サイレンサ30に伝達する荷重伝達部材52を配設し、該荷重伝達部材52により前方へ押し込まれた前記排気サイレンサ30を、該排気サイレンサ30よりも前方に配置された車体構成部材からなる受け部材で受け止める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両後方から加わる衝撃荷重を吸収するための車両後部の衝突対応構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の衝突時の安全対策として、衝突時に車両に加わる衝撃荷重をサイドフレーム等の車体の一部が潰れることで吸収する技術が一般的に知られており、この技術によれば、車室内に伝わる衝撃を緩和することができ、これにより乗員の安全性が高められる。
【0003】
例えば、前方衝突の場合、先ず、フロントサイドフレームの前端部とフロントバンパとに跨って設けられたクラッシュカンが潰れることで、このクラッシュカンで衝撃荷重を吸収し、これによって吸収しきれない衝撃荷重は、さらにフロントサイドフレームが潰れることで吸収するようにした技術が知られている。
【0004】
この他にも、車両前部の衝突対応構造に関しては、特許文献1及び2等に開示されているように種々の技術が開発されている。
【0005】
例えば、特許文献1の技術は、前方車両との衝突が予知される緊急時にアクチュエータを作動させることにより、車両前端部に設けられたサブバンパビームを、前方車両後端部の車体部分に対応する高さまで降下させて、該サブバンパビームを前方車両の車体に衝突させることで、衝突エネルギーを効率的に吸収するものである。
【0006】
また、特許文献2の技術は、前方車両との衝突が予知される緊急時にねじ機構を作動させることにより、特許文献1の技術と同様にサブバンパビームを降下させて、該サブバンパビームを前方車両の車体に衝突させるものである。
【0007】
一方、後方衝突の対策に関しては、例えば、先ず、リアサイドフレームの後端部とリアバンパとに跨って設けられたクラッシュカンが潰れることで、このクラッシュカンで衝撃荷重を吸収し、これによって吸収しきれない衝撃荷重は、さらにリアサイドフレームが潰れることで吸収するようにした技術が知られている。
【0008】
また、これとは別の車両後部の衝突対応構造として、特許文献3には、後方車両が衝突するときに、リアシートを前方へスライドさせることで、後部座席の乗員の安全性を高める技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−203807号公報
【特許文献2】特開2007−203808号公報
【特許文献3】特開平11−208337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、後方衝突の対策に関して、車両後部のクラッシュカン及びリアサイドフレームだけでは必ずしも十分に衝撃荷重を吸収できない場合があるため、より効果的に衝撃荷重を吸収するための技術の開発が求められている。
【0011】
また、特許文献3の技術は、後方衝突時に後部座席の乗員を衝突部分から遠ざけるために前方へ移動させるものであって、衝撃荷重を効果的に吸収しようとしたものでないため、車室内に伝わる衝撃を軽減することはできない。
【0012】
そこで、本発明は、車両後方から加わる衝撃荷重を効果的に吸収することで、車室内における乗員の安全性を高めることができる車両後部の衝突対応構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため、本発明に係る車両後部の衝突対応構造は、次のように構成したことを特徴とする。
【0014】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、
車両後部において車両前後方向に延びる左右一対のリアサイドフレームと、
該リアサイドフレームよりも後方において車幅方向に延設されたリアバンパと、
エンジンの排気経路に設けられ、前記リアサイドフレームと車両前後方向に重なる位置に配設された中空の排気サイレンサと、を有する車両後部の衝突対応構造であって、
前記排気サイレンサよりも後方に配設され、車両後方から前記リアバンパに加わった衝撃荷重を前記排気サイレンサに伝達する荷重伝達部材と、
前記排気サイレンサよりも前方に配置された車体構成部材であって、前記荷重伝達部材により前方へ押し込まれた前記排気サイレンサを受け止める受け部材と、を有することを特徴とする。
【0015】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の発明において、
前記受け部材は、前記排気サイレンサよりも前方において前記左右のリアサイドフレーム間に架設されたリアサスペンションクロスメンバであることを特徴とする。
【0016】
さらに、請求項3に記載の発明は、前記請求項1または請求項2に記載の発明において、
前記排気サイレンサは、前記リアバンパ内部に設けられたリアバンパレインフォースメントよりも低い位置に設けられ、
前記荷重伝達部材は、車両後方から前記リアバンパに衝撃荷重が加わったときに前記排気サイレンサの後端部に当接可能なように前記リアバンパレインフォースメントから下側に向かって延設された当接部と、該当接部が前記排気サイレンサの後端部に当接した状態において該排気サイレンサの底部を支持可能なように前記当接部から前方へ延設された支持部と、を有することを特徴とする。
【0017】
またさらに、請求項4に記載の発明は、前記請求項3に記載の発明において、
車両後方から前記リアバンパに衝撃荷重が加わったときに潰れながら該衝撃荷重を吸収するクラッシュカンが、各リアサイドフレームの後端部と前記リアバンパレインフォースメントとに跨ってそれぞれ設けられており、
前記荷重伝達部材は、前記当接部と前記排気サイレンサの後端部との間に、車両後方から前記リアバンパに衝撃荷重が加わったときに前記クラッシュカンが潰れてから前記当接部が前記排気サイレンサに当接するために必要な間隔を空けて配設されていることを特徴とする。
【0018】
また、請求項5に記載の発明は、前記請求項3または請求項4に記載の発明において、
前記荷重伝達部材は、前記リアバンパに衝撃荷重が加わっていない状態において前記支持部の前端部が前記排気サイレンサと車両前後方向に重なるように配設されていることを特徴とする。
【0019】
また、請求項6に記載の発明は、前記請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の発明において、
前記荷重伝達部材は、前記受け部材との間で前記排気サイレンサを押し潰したときに、前記受け部材からの反力で前記リアバンパレインフォースメントから離脱するように、該リアバンパレインフォースメントに接合されていることを特徴とする。
【0020】
さらに、請求項7に記載の発明は、前記請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の発明において、
前記排気サイレンサは、各リアサイドフレームにより前後一対のハンガ部材を介して吊り下げ支持されており、
前記ハンガ部材は、前記リアサイドフレームに固定されたフレーム側固定部材と、前記排気サイレンサに固定されたサイレンサ側固定部材と、前記フレーム側固定部材と前記サイレンサ側固定部材とにそれぞれ車幅方向に延びる軸を中心として回転自在に連結された連結部材とを有し、
前側の前記ハンガ部材では、前記サイレンサ側固定部材が前記排気サイレンサの前部に固定されるとともに、該サイレンサ側固定部材と前記連結部材との連結部が、前記フレーム側固定部材と前記連結部材との連結部よりも下側かつ前側に配置され、
後側の前記ハンガ部材では、前記サイレンサ側固定部材が前記排気サイレンサの後部に固定されるとともに、該サイレンサ側固定部材と前記連結部材との連結部が、前記フレーム側固定部材と前記連結部材との連結部よりも下側かつ後側に配置されていることを特徴とする。
【0021】
また、請求項8に記載の発明は、前記請求項1または請求項2に記載の発明において、
前記リアサイドフレームの下面に、タイダウンフックが下方へ突出して設けられ、
該タイダウンフックに前記荷重伝達部材が設けられていることを特徴とする。
【0022】
また、請求項9に記載の発明は、前記請求項8に記載の発明において、
前記荷重伝達部材は、車両後方から前記リアバンパに衝撃荷重が加わったときに前記排気サイレンサの後端部に当接可能なように該排気サイレンサの後方に配設された当接部と、該当接部が前記排気サイレンサに当接した状態において該排気サイレンサが車幅方向外側へ移動することを規制するように前記排気サイレンサよりも車幅方向外側部分において前記当接部から前方へ延設された規制部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
まず、請求項1に記載の発明によれば、車両後方からリアバンパに衝撃荷重が加わったとき、排気サイレンサの後方に配設された荷重伝達部材により前記衝撃荷重が排気サイレンサに伝達され、該荷重伝達部材により前方へ押し込まれた排気サイレンサは、該排気サイレンサよりも前方に設けられた受け部材により受け止められる。そのため、排気サイレンサを受け部材と荷重伝達部材とで挟み込んで押し潰すことができ、これにより衝撃荷重を効果的に吸収することができる。
【0024】
また、請求項2に記載の発明によれば、前記受け部材としてリアサスペンションクロスメンバが利用されるため、受け部材として新たな部材を使用しなくても済む。そのため、部品点数の増加および車両重量の増大を回避することができる。
【0025】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、車両後方からリアバンパに衝撃荷重が加わったとき、荷重伝達部材の当接部が排気サイレンサの後端部に当接した状態において、荷重伝達部材の支持部により排気サイレンサの底部を支持することにより、排気サイレンサが下方へ脱落することを防止することができ、これにより、荷重伝達部材により排気サイレンサを確実に受け部材へ押し当てることができる。
【0026】
またさらに、請求項4に記載の発明を請求項3に記載の発明に適用すれば、リアサイドフレームとリアバンパレインフォースメントとに跨るクラッシュカンが潰れた後に、荷重伝達部材の当接部が排気サイレンサに当接するため、クラッシュカンによる衝撃荷重の吸収の後に、排気サイレンサにより衝撃荷重を吸収することができる。そのため、衝撃荷重がクラッシュカンのみで十分に対応できる程度に小さい場合、排気サイレンサの破損を回避することができる。
【0027】
また、請求項5に記載の発明を請求項3または請求項4に記載の発明に適用すれば、車両後方からリアバンパに衝撃荷重が加わり始めたときから、荷重伝達部材の支持部により排気サイレンサの底部を支持することができるため、排気サイレンサの脱落を一層確実に防止することができる。
【0028】
またさらに、請求項6に記載の発明を請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の発明に適用すれば、荷重伝達部材は、受け部材との間で排気サイレンサを押し潰したときに、受け部材からの反力でリアバンパレインフォースメントから離脱して落下するため、排気サイレンサによる衝撃荷重の吸収が終了した後において、引き続き車両後方から衝撃荷重が加わるとき、荷重伝達部材が受け部材に干渉することを回避することができ、これにより、リアサイドフレームが潰れることによる衝撃吸収を継続することができる。
【0029】
さらに、請求項7に記載の発明によれば、排気サイレンサをリアサイドフレームにより吊り下げ支持するのに用いる前後一対のハンガ部材のうち、前側のハンガ部材では、サイレンサ側固定部材と連結部材との連結部が、フレーム側固定部材と連結部材との連結部よりも下側かつ前側に配置され、後側のハンガ部材では、サイレンサ側固定部材と連結部材との連結部が、フレーム側固定部材と連結部材との連結部よりも下側かつ後側に配置されているため、排気サイレンサに後方から衝撃荷重が加わったときに、前側ハンガ部材では、サイレンサ側固定部材と連結部材との連結部がフレーム側固定部材と連結部材との連結部を中心軸として前上方へ回動し、後側ハンガ部材では、サイレンサ側固定部材と連結部材との連結部がフレーム側固定部材と連結部材との連結部を中心軸として前下方へ回動する。そのため、排気サイレンサは、前端部が後端部よりも高く持ち上げられた状態で、荷重伝達部材により前方へ押し込まれる。よって、排気サイレンサが荷重伝達部材により前方へ押し込まれるとき、排気サイレンサの前端部の高さが極力維持されるため、この前端部を受け部材により確実に受け止めることができる。
【0030】
また、請求項8に記載の発明によれば、リアサイドフレームの下面から下方へ突設されたタイダウンフックに荷重伝達部材が設けられているため、タイダウンフックを利用して排気サイレンサへの衝撃荷重を実現することができる。
【0031】
さらに、請求項9に記載の発明によれば、車両後方からリアバンパに衝撃荷重が加わったとき、荷重伝達部材の当接部が排気サイレンサに当接した状態において、荷重伝達部材の規制部により、排気サイレンサの車幅方向外側への移動が規制されるため、荷重伝達部材により排気サイレンサを確実に受け部材に押し当てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る衝突対応構造が適用される車両後部を示す底面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】第1の実施形態における排気サイレンサ及び荷重伝達部材を示す斜視図である。
【図4】車両後方からリアバンパに衝撃荷重が加わり始めた状態における図1のA−A線断面図である。
【図5】排気サイレンサがリアサスペンションクロスメンバに当接するまで前方へ押し込まれた状態における図1のA−A線断面図である。
【図6】排気サイレンサが押し潰されて荷重伝達部材が脱落する状態における図1のA−A線断面図である。
【図7】ハンガ部材の構成を示す車両左側から見た側面図である。
【図8】排気サイレンサに車両後方側から衝撃荷重が加わったときのハンガ部材の状態を示す車両左側から見た側面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る衝突対応構造が適用される車両後部を示す車両左側から見た側面図である。
【図10】図9に示す車両後部の底面図である。
【図11】第2の実施形態において排気サイレンサが潰れた状態を示す車両左側から見た側面図である。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る衝突対応構造が適用される車両後部を示す車両右側から見た側面図である。
【図13】図12に示す車両後部の底面図である。
【図14】図12のB−B線断面図である。
【図15】第3の実施形態におけるタイダウンフック及び荷重伝達部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、「前」、「後」、「前後」、「右」、「左」、「左右」等の方向を示す用語は、特段の説明がある場合を除いて、車両の進行方向を「前」とした場合の方向を指すものとする。
【0034】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る車両後部の衝突対応構造が適用される車両1の後部を示す底面図であり、図2は、図1のA−A線断面図である。
【0035】
図1及び図2に示すように、車両1の後部には、車両前後方向に延びる左右一対のリアサイドフレーム2,3が設けられている。これら左右のリアサイドフレーム2,3間には、図示しない荷室フロア材が架設されている。
【0036】
リアサイドフレーム2,3よりも後方には、リアバンパ4が車幅方向に延設されている。リアバンパ4は、車幅方向に延びるリアバンパレインフォースメント6と、該リアバンパレインフォースメント6を覆う図示しないリアバンパカバーとを備えている。リアバンパレインフォースメント6は、車両後方側に向かって開放した断面倒ハット状の前側部材8と、この前側部材8の後面開放部を塞ぐように該前側部材8に接合された後側部材10とを有する。
【0037】
また、各リアサイドフレーム2,3の後端部と、リアバンパ4内部に設けられたリアバンパレインフォースメントとに跨ってそれぞれクラッシュカン12,13が設けられている。クラッシュカン12,13の前端にはフランジ14が設けられており、このフランジ14と、リアサイドフレーム2,3の後端に設けられたフランジ16とが接合されることで、クラッシュカン12,13とリアサイドフレーム2,3とが連結されている。車両後方からリアバンパ4に衝撃荷重が加わったときは、先ずクラッシュカン12,13が潰れながら該衝撃荷重を吸収することで、車体への衝撃の伝達が抑制されるようになっている。
【0038】
さらに、左右のリアサイドフレーム2,3間にはリアサスペンションクロスメンバ20が架設されている。このリアサスペンションクロスメンバ20は、後輪用のサスペンション装置の一部を構成するものであり、左右のリアサイドフレーム2,3の下面にそれぞれ連結される左右一対の連結メンバ部22,23と、これらの連結メンバ部22,23間に架設された横メンバ部24とを有する。各連結メンバ部22,23は、車幅方向内側へ膨出するように湾曲して設けられ、該連結メンバ部22,23の両端部がリアサイドフレーム2,3の下面に固定されている。
【0039】
リアサスペンションクロスメンバ20の後方には、エンジンの排気経路28に設けられた中空の排気サイレンサ30が配置されている。図1に示すように、排気サイレンサ30は、車幅方向に関して左右のリアサイドフレーム2,3間に配設されている。また、排気サイレンサ30は、リアサイドフレーム2,3と車両前後方向に重なる位置に配設されている。なお、本実施形態において、排気サイレンサ30の後端部は、リアサイドフレーム2,3の後端よりも後側に配置されているが、リアサイドフレーム2,3の後端よりも前側に収まるように配置するようにしてもよい。また、図2に示すように、排気サイレンサ30は、リアサイドフレーム2,3及びリアバンパレインフォースメント6よりも低い位置に設けられており、例えば前後一対のハンガ部材60,62を介して左右のリアサイドフレーム2,3により吊り下げ支持されている。ハンガ部材60,62の具体的構成については後に説明する。
【0040】
排気サイレンサ30の前部には、排気ガスを導入するための入口管32が設けられており、この入口管32は、エンジン側から後方に延設された排気管50に接続されている。また、排気サイレンサ30の車幅方向両端部には、排気ガスを排出するための出口管34,35が設けられており、排気サイレンサ30を通過した排気ガスが出口管34,35を経由して車両後方へ排出されるようになっている。
【0041】
図3に示すように、排気サイレンサ30は、車幅方向に延びる扁平な筒状壁部38と、この筒状壁部38の両端開口部を塞ぐ左右一対の側壁板40,42と、排気サイレンサ30の内部空間を車幅方向に区切る仕切板44,46とを有する。筒状壁部38の上面は略水平な面となっているが、筒状壁部38の下面は後方に向かって上側へ傾斜した傾斜面となっている(図2参照)。側壁板40,42と仕切板44,46とは、平面視において段状に形成されており、これにより、車両後方側から衝撃荷重を受けたときに、車両前後方向に短くなるように折り畳まれやすくなっている。よって、排気サイレンサ30は、車両後方側から衝撃荷重を受けたときに、車両前後方向に圧縮されるように潰れやすくなっており、これにより、該衝撃荷重を効果的に吸収することができるようになっている。
【0042】
図2及び図3に示すように、排気サイレンサ30の後方には、車両後方からリアバンパ4に加わった衝撃荷重を排気サイレンサ30に伝達する例えば左右一対の荷重伝達部材52が配設されている。ただし、本発明において、荷重伝達部材52の個数は特に限定されるものでない。
【0043】
荷重伝達部材52は、車両後方からリアバンパ4に衝撃荷重が加わったときに排気サイレンサ30の後端部に当接可能なようにリアバンパレインフォースメント6から下側に向かって延設された当接部54と、該当接部54が排気サイレンサ30の後端部に当接した状態において該排気サイレンサ30の底部を支持可能なように当接部54から前方へ延設された支持部56と、を有する。
【0044】
当接部54は、リアバンパレインフォースメント6の前側部材8の下面に接合されており、該接合部から前下方へ延設されている。当接部54の上端部とリアバンパレインフォースメント6とは例えば溶接により接合されており、この接合力は、荷重伝達部材52がリアサスペンションクロスメンバ20との間で排気サイレンサ30を押し潰したときにリアサスペンションクロスメンバ20からの反力でリアバンパレインフォースメント6から離脱するような接合力となっている。すなわち、荷重伝達部材52は、リアサスペンションクロスメンバ20との間で排気サイレンサ30を押し潰すことによる衝撃荷重の吸収を終えると脱落するため、引き続き車両後方から衝撃荷重が加わり続ける場合、荷重伝達部材52がサスペンションクロスメンバ20に干渉することを回避することができ、これにより、リアサイドフレーム2,3が潰れることによる衝撃吸収を継続することができる。
【0045】
当接部54における排気サイレンサ30後端部との対向面55は略鉛直方向に沿って配設されており、これにより、該対向面55が排気サイレンサ30の後端部に当接したときに、車両後方から加わった衝撃荷重を荷重伝達部材52から排気サイレンサ30へ効率的に伝達することができるようになっている。
【0046】
当接部54と排気サイレンサ30の後端部との間には、車両後方からリアバンパ4に衝撃荷重が加わったときにクラッシュカン12,13が潰れてから当接部54が排気サイレンサ30に当接するために必要な間隔dが設けられている。これにより、先ずクラッシュカン12,13が潰れた後に、当接部54が排気サイレンサ30に当接することとなるため、クラッシュカン12,13による衝撃荷重の吸収がなされた後に、排気サイレンサ30により衝撃荷重を吸収することができる。そのため、車両後方からの衝撃荷重がクラッシュカン12,13のみで十分に対応できる程度に小さい場合、排気サイレンサ30の破損を回避することができる。
【0047】
支持部56は、当接部56の下端部から前方へ延設されており、支持部56の少なくとも前端部が、排気サイレンサ30の後端部の下端よりも低い位置に配設されている。これにより、車両後方からの衝撃荷重によりクラッシュカン12,13が潰れて、これに伴い荷重伝達部材52が前方へ移動するときに、支持部56の前端部が排気サイレンサ30の後端部に干渉することを回避して、支持部56を確実に排気サイレンサ30の下方に配置することができる。そのため、この支持部56により排気サイレンサ30を下側から支持することができ、これにより、排気サイレンサ30の脱落を防止することができる。
【0048】
また、支持部56の前端部は、排気サイレンサ30と車両前後方向に重なるように配設されている。そのため、車両後方からリアバンパ4に衝撃荷重が加わり始めたときから、支持部56により排気サイレンサ30の底部を支持することができるため、排気サイレンサ30の脱落を一層確実に防止することができる。
【0049】
図4〜図6を参照しながら、車両後方からリアバンパ4に衝撃荷重が加わるときに車両1の後部において衝撃荷重を吸収する態様の具体例を説明する。
【0050】
図4に示すように、車両後方からリアバンパ4に衝撃荷重が加わると、先ず、クラッシュカン12,13が潰れて、該クラッシュカン12,13により衝撃荷重が吸収される。衝撃荷重が比較的小さい場合、このクラッシュカン12,13による衝撃吸収のみで対応できるが、衝撃荷重が比較的大きい場合は、引き続き次のような態様で衝撃吸収が行われる。
【0051】
クラッシュカン12,13が車両前後方向に圧縮されるように潰れると、これに伴い、荷重伝達部材52は前方へ押し込まれて、該荷重伝達部材52の当接部54が排気サイレンサ30の後端部に当接し、荷重伝達部材52による排気サイレンサ30への荷重伝達が開始される。
【0052】
続いて、図5に示すように、リアサイドフレーム2,3が潰れ始めて、該リアサイドフレーム2,3が車両前後方向に圧縮されることに伴い、荷重伝達部材52が更に前方へ移動して、排気サイレンサ30を前方へ押し込む。このとき、排気サイレンサ30の底面は荷重伝達部材52の支持部56により下側から支持されているため、排気サイレンサ30の脱落を防止することができる。荷重伝達部材52により前方へ押し込まれた排気サイレンサ30は、最終的にリアサスペンションクロスメンバ20の特に横メンバ部24に押し当てられる。
【0053】
その後、図6に示すように、リアサイドフレーム2,3が潰れるのと並行して、排気サイレンサ30は、サスペンションクロスメンバ20と荷重伝達部材52とで挟み込まれることで押し潰される。このように、リアサイドフレーム2,3だけでなく、排気サイレンサ30によっても衝撃荷重を吸収することができるため、衝撃吸収効果を高めることができる。
【0054】
排気サイレンサ30による衝撃吸収が終了すると、荷重伝達部材52は、リアサスペンションクロスメンバ20から受ける反力によりリアバンパレインフォースメント6から離脱して落下する。これにより、引き続き行われるリアサイドフレーム2,3による衝撃吸収が荷重伝達部材52によって阻害されることを回避することができる。
【0055】
続いて、図7及び図8を参照しながら、排気サイレンサ30を吊り下げ支持するハンガ部材60,62の構成について説明する。なお、図7及び図8では、排気サイレンサ30を左側のリアサイドフレーム3により支持するためのハンガ部材60,62のみが図示されているが、排気サイレンサ30を右側のリアサイドフレーム2により支持するためのハンガ部材60,62も同様の構成を有する。また、図7及び図8では、リアバンパ4及び荷重伝達部材52の図示を省略しているが、これら両部材4,52は、上述した構成で設けられているものとする。
【0056】
図7に示すように、前側のハンガ部材60は、リアサイドフレーム3に一端が固定されたフレーム側固定ピン64と、排気サイレンサ30の前部にブラケット76を介して一端が固定されたサイレンサ側固定ピン68と、フレーム側固定ピン64の他端とサイレンサ側固定ピン68の他端とにそれぞれ車幅方向に延びる軸を中心として回転自在に連結された側面視略楕円形の連結部材72とを有する。連結部材72の長軸方向は鉛直方向に対して前下方へ傾斜しており、連結部材72は、その長軸方向における上側の端部においてフレーム側固定ピン64に連結され、長軸方向における下側の端部においてサイレンサ側固定ピン68に連結されている。すなわち、サイレンサ側固定ピン68と連結部材72との連結部(サイレンサ側連結部)69は、フレーム側固定ピン64と連結部材72との連結部(フレーム側連結部)65よりも下側かつ前側に配置されている。これにより、排気サイレンサ30に後方から衝撃荷重が伝達されたとき、サイレンサ側連結部69はフレーム側連結部65を中心軸として前上方へ回動するようになっている。
【0057】
一方、後側のハンガ部材62は、リアサイドフレーム3にフランジ14,16を介して一端が固定されたフレーム側固定ピン66と、排気サイレンサ30の後部にブラケット78を介して一端が固定されたサイレンサ側固定ピン70と、フレーム側固定ピン66の他端とサイレンサ側固定ピン70の他端とにそれぞれ車幅方向に延びる軸を中心として回転自在に連結された側面視略楕円形の連結部材74とを有する。連結部材74の長軸方向は鉛直方向に対して後下方へ傾斜しており、連結部材72は、その長軸方向における上側の端部においてフレーム側固定ピン66に連結され、長軸方向における下側の端部においてサイレンサ側固定ピン70に連結されている。すなわち、サイレンサ側固定ピン70と連結部材74との連結部(サイレンサ側連結部)71は、フレーム側固定ピン66と連結部材72との連結部(フレーム側連結部)67よりも下側かつ前側に配置されている。これにより、排気サイレンサ30に後方から衝撃荷重が伝達されたとき、サイレンサ側連結部71はフレーム側連結部67を中心軸として前下方へ回動するようになっている。
【0058】
このように、排気サイレンサ30に後方から衝撃荷重が加わったとき、前側ハンガ部材60では、サイレンサ側連結部69がフレーム側連結部65を中心軸として前上方へ回動し、後側ハンガ部材62では、サイレンサ側連結部71がフレーム側連結部67を中心軸として前下方へ回動する。これにより、図8に示すように、排気サイレンサ30は、前端部が後端部よりも高く持ち上げられた状態で、荷重伝達部材52により前方へ押し込まれることになる。よって、排気サイレンサ30が荷重伝達部材52により前方へ押し込まれるとき、排気サイレンサ30の前端部の高さが極力維持されるため、この前端部をリアサスペンションクロスメンバ20により確実に受け止めることができ、排気サイレンサ30による衝撃吸収を確実に行うことができる。
【0059】
[第2の実施形態]
図9〜図11を参照しながら、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態において、第1の実施形態と同様の構成については詳細な説明を省略する。また、図9〜図11において、第1の実施形態と同様の機能を有する部材には同符号を付してある。
【0060】
図9は、本発明の第2の実施形態に係る車両後部の衝突対応構造が適用される車両101の後部を示す左側の側面図であり、図10は、同車両101の底面図である。
【0061】
図9及び図10に示すように、本実施形態においても、第1の実施形態と同様、左右のリアサイドフレーム2,3間にはリアサスペンションクロスメンバ120が架設されている。このリアサスペンションクロスメンバ120は、後輪用のサスペンション装置の一部を構成するものであり、左右のリアサイドフレーム2,3の下面にそれぞれ固定されて該連結部から車幅方向内側に向かって斜め後方に延びる左右一対の前側連結メンバ部122,123と、各前側連結メンバ部122,123の後端部から車幅方向外側に向かって斜め後方に延設されて後端部において左右のリアサイドフレーム2,3の下面にそれぞれ固定された左右一対の後側連結メンバ部124,125と、左右の前側連結メンバ部122,123間に架設された前側横メンバ部126と、左右の後側連結メンバ部124,125間に架設された後側横メンバ部128とを有する。
【0062】
本実施形態において、リアサスペンションクロスメンバ20の後方には、スペアタイヤを収容するために荷室フロアに設けられたタイヤパン110が配置されるため、このタイヤパン110を挟んだ車幅方向両側にそれぞれ中空の排気サイレンサ130が配設されている。
【0063】
各排気サイレンサ130は、いわゆる縦置きタイプのサイレンサであり、リアサイドフレーム2,3の下方において車両前後方向に沿って配設されている。また、各排気サイレンサ130は、車両前後方向においてリアサスペンションクロスメンバ120の後側連結メンバ部124,125とリアサイドフレーム2,3の後端部との間に配設されている。なお、各排気サイレンサ130は、図示しないハンガ部材を介してリアサイドフレーム2,3により吊り下げ支持されている。また、このハンガ部材としては、第1の実施形態と同様のハンガ部材60,62を用いてもよいし、別のハンガ部材を用いてもよい。
【0064】
排気サイレンサ130の前部には、排気ガスを導入するための入口管132が設けられており、この入口管132は、エンジン側から後方に延設された排気管150に接続されている。また、排気サイレンサ130の後部には、排気ガスを排出するための出口管134が設けられており、排気サイレンサ130を通過した排気ガスが出口管134を経由して車両後方へ排出されるようになっている。
【0065】
図9に示すように、リアサイドフレーム2,3の後端部の下面には、例えば側面視略U字形のタイダウンフック160が下方へ突出して設けられている。タイダウンフック160は、その前端部が前方へ、後端部が後方へそれぞれ屈曲して形成されており、これら前後の屈曲部が例えば溶接によりリアサイドフレーム2,3の下面に接合されている。
【0066】
図9及び図10に示すように、タイダウンフック160の前部には板状の荷重伝達部材152が例えば溶接により接合されている。荷重伝達部材152は、排気サイレンサ130の直後方において車両前後方向に垂直な面に沿って配設されている。なお、本実施形態において、荷重伝達部材152は、排気サイレンサ130の後端面から僅かに間隔を空けて配設されているが、排気サイレンサ130の後端面に当接して配設するようにしてもよい。
【0067】
図11に示すように、本実施形態において、車両後方からリアバンパ4に衝撃荷重が加わると、先ずクラッシュカン12,13による衝撃吸収がなされた後、リアサイドフレーム2,3による衝撃吸収と並行して、荷重伝達部材152から排気サイレンサ130への荷重伝達が行われる。このとき、荷重伝達部材152は、リアサイドフレーム2,3が車両前後方向に圧縮されるように潰れることに伴って前方へ移動し、これにより、排気サイレンサ130を前方へ押し込む。排気サイレンサ130がリアサスペンションクロスメンバ120の後側連結メンバ部124,125に当接するまで前方へ押し込まれると、排気サイレンサ130は、リアサスペンションクロスメンバ120と荷重伝達部材152とで挟み込まれて潰される。これにより、リアサイドフレーム2,3だけでなく、排気サイレンサ130によっても衝撃荷重を吸収することができるため、衝撃吸収効果を高めることができる。このように、本実施形態では、荷重伝達部材152をタイダウンフック160に設けることにより、該タイダウンフック160を利用して排気サイレンサ130による衝撃吸収を実現することができる。
【0068】
なお、第2の実施形態において、リアサイドフレーム2,3とタイダウンフック160との接合力を調整することにより、排気サイレンサ130による衝撃吸収が終了したときに、タイダウンフック160がリアサスペンションクロスメンバ120から受ける反力によりリアサイドフレーム2,3から離脱するようにしてもよく、この場合、引き続き行われるリアサイドフレーム2,3による衝撃吸収がタイダウンフック160及び荷重伝達部材152によって阻害されることを回避することができる。
【0069】
[第3の実施形態]
図12〜図15を参照しながら、本発明の第3の実施形態について説明する。なお、第3の実施形態において、第1又は第2の実施形態と同様の構成については詳細な説明を省略する。また、図12〜図15において、第1又は第2の実施形態と同様の機能を有する部材には同符号を付してある。
【0070】
図12及び図13に示すように、本実施形態においても、左右のリアサイドフレーム2,3間には第2の実施形態と同様のリアサスペンションクロスメンバ120が架設されており、このリアサスペンションクロスメンバ20の後方には、スペアタイヤを収容するために荷室フロアに設けられたタイヤパン210が配置される。本実施形態では、このタイヤパン210の右側にのみ中空の排気サイレンサ230が配設されている。
【0071】
排気サイレンサ230は、右側のリアサイドフレーム2の下方において、前端部が後端部よりも車幅方向内側に配置されるように車両前後方向に対して傾斜して設けられている。また、排気サイレンサ230は、車両前後方向においてリアサスペンションクロスメンバ120の後側連結メンバ部124とリアサイドフレーム2の後端部との間に配設されている。なお、排気サイレンサ230は、図示しないハンガ部材を介してリアサイドフレーム2により吊り下げ支持されている。また、このハンガ部材としては、第1の実施形態と同様のハンガ部材60,62を用いてもよいし、別のハンガ部材を用いてもよい。
【0072】
排気サイレンサ230の前部は、エンジン側から後方に延設された排気管250に接続されている。また、排気サイレンサ230の後部には、排気ガスを排出するための出口管234が設けられており、排気サイレンサ230を通過した排気ガスが出口管234を経由して車両後方へ排出されるようになっている。
【0073】
図12に示すように、右側リアサイドフレーム2の後端部の下面には、第2の実施形態と同様のタイダウンフック160が下方へ突出して設けられている。このタイダウンフック160の前部には板状の荷重伝達部材252が例えば溶接により接合されている。
【0074】
図12〜図15に示すように、荷重伝達部材252は、車両後方からリアバンパ4に衝撃荷重が加わったときに排気サイレンサ230の後端部に当接可能なように該排気サイレンサ230の後方に配設された当接部254と、該当接部254が排気サイレンサ230に当接した状態において該排気サイレンサ230が車幅方向外側へ移動することを規制するように排気サイレンサ230よりも車幅方向外側部分において当接部254から前方へ延設された規制部258とを有する。
【0075】
当接部254は、排気サイレンサ230の直後方において車両前後方向に垂直な面に沿って配設されている。また、当接部254の上端部には、車幅方向外側へ延びる外側延出部256が設けられている。
【0076】
規制部258は、排気サイレンサ230の車幅方向外側において車幅方向に垂直な面に沿って配設されている。また、規制部258は、例えば棒状の支持部材270を介してリアサイドフレーム2に支持されている。この支持部材270は、規制部258の外側の面に例えば溶接により固定された下側固定部272と、該下側固定部272の上端から車幅方向内側へ延びる水平部274と、該水平部274の車幅方向内側の端部から上方へ延びる上側固定部276とを有し、該上側固定部276がリアサイドフレーム2の外側面に例えば溶接により固定されている。さらに、規制部258の上端部には、後方へ延びる後側延出部260が設けられている。
【0077】
外側延出部256と後側延出部260とは連結部262を介して連なっている。これら外側延出部256、後側延出部260及び連結部262は、排気サイレンサ230の出口管234との干渉を避けるようにして該出口管234の上方に配設されている。
【0078】
本実施形態において、車両後方からリアバンパ4に衝撃荷重が加わると、第2の実施形態と同様、先ずクラッシュカン12,13による衝撃吸収がなされた後、リアサイドフレーム2,3による衝撃吸収と並行して、荷重伝達部材252の当接部254から排気サイレンサ230への荷重伝達が行われる。このとき、荷重伝達部材252の当接部254は、リアサイドフレーム2,3が車両前後方向に圧縮されるように潰れることに伴って前方へ移動し、これにより、排気サイレンサ230を前方へ押し込む。また、このとき、荷重伝達部材252の規制部258は、排気サイレンサ230が車幅方向外側へ移動することを規制するため、排気サイレンサ230を前方または車幅方向内側に向かって斜め前方へ案内することができる。一方、このとき、排気サイレンサ230の前端部は、タイヤパン210によって車幅方向内側への移動が規制されるため、排気サイレンサ230が鉛直方向の軸を中心として回転することを抑制することができる。
【0079】
このようにして荷重伝達部材252により前方または斜め前方へ押し込まれた排気サイレンサ230は、該サイレンサの前端部がリアサスペンションクロスメンバ120の後側連結メンバ部124又は後側横メンバ部128の少なくとも一方に確実に押し当てられ、リアサスペンションクロスメンバ120と荷重伝達部材252とで挟み込まれて押し潰される。これにより、リアサイドフレーム2,3だけでなく、排気サイレンサ230によっても衝撃荷重を吸収することができるため、衝撃吸収効果を高めることができる。このように、本実施形態においても、第2の実施形態と同様、荷重伝達部材252をタイダウンフック160に設けることにより、該タイダウンフック160を利用して排気サイレンサ230による衝撃吸収を実現することができる。
【0080】
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
【0081】
例えば、上述の実施形態では、車両後方からリアバンパ4に衝撃荷重が加わったとき、先ずクラッシュカン12,13が潰れ、続いて、荷重伝達部材52により排気サイレンサ30が前方へ押し込まれ始めた後、リアサイドフレーム2,3が潰れ始めて、その後に排気サイレンサ30が潰れ始める場合について説明したが、本発明において、この順序は必ずしもこれに限定されるものでない。具体的には、例えば、リアサイドフレーム2,3が潰れ始めてから、荷重伝達部材52による排気サイレンサ30への荷重伝達(前方への押し込み)が開始されるようにしたり、排気サイレンサ30が潰れ始めた後にリアサイドフレーム2,3が潰れ始めるようにしたりしてもよい。
【0082】
また、上述の実施形態では、荷重伝達部材52,152,252により前方へ押し込まれた排気サイレンサ30,130,230を受け止める受け部材としてリアサスペンションクロスメンバ20,120を用いる構成について説明したが、本発明における前記受け部材は、排気サイレンサよりも前方に配置された車体構成部材であれば、リアサスペンションクロスメンバ以外の部材であってもよい。
【0083】
さらに、本発明において衝撃荷重を吸収するために用いる排気サイレンサの構成は、上述の第1〜第3の実施形態で説明した排気サイレンサ30,130,230に限られず、種々の排気サイレンサを使用することができる。
【0084】
さらにまた、上述の実施形態では、上述の荷重伝達部材52,152,252を用いる構成について説明したが、本発明に使用される荷重伝達部材の構成は、車両後方から加わった衝撃荷重を排気サイレンサに伝達可能なものであれば特に限定されるものでない。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上のように、本発明によれば、車両後方から加わる衝撃荷重を排気サイレンサにより効果的に吸収することで、車室内における乗員の安全性を高めることが可能となるから、排気サイレンサを備えた車両の製造産業分野において好適に利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0086】
1,101,201:車両、2,3:リアサイドフレーム、4:リアバンパ、6:リアバンパレインフォースメント、12,13:クラッシュカン、20,120:リアサスペンションクロスメンバ、30,130,230:排気サイレンサ、52,152,252:荷重伝達部材、54:当接部、56:支持部、60,62:ハンガ部材、64,66:フレーム側固定ピン、68,70:サイレンサ側固定ピン、72,74:連結部材、65,67:フレーム側連結部、69,71:サイレンサ側連結部、254:当接部、258:規制部、160:タイダウンフック。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両後方から加わる衝撃荷重を吸収するための車両後部の衝突対応構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の衝突時の安全対策として、衝突時に車両に加わる衝撃荷重をサイドフレーム等の車体の一部が潰れることで吸収する技術が一般的に知られており、この技術によれば、車室内に伝わる衝撃を緩和することができ、これにより乗員の安全性が高められる。
【0003】
例えば、前方衝突の場合、先ず、フロントサイドフレームの前端部とフロントバンパとに跨って設けられたクラッシュカンが潰れることで、このクラッシュカンで衝撃荷重を吸収し、これによって吸収しきれない衝撃荷重は、さらにフロントサイドフレームが潰れることで吸収するようにした技術が知られている。
【0004】
この他にも、車両前部の衝突対応構造に関しては、特許文献1及び2等に開示されているように種々の技術が開発されている。
【0005】
例えば、特許文献1の技術は、前方車両との衝突が予知される緊急時にアクチュエータを作動させることにより、車両前端部に設けられたサブバンパビームを、前方車両後端部の車体部分に対応する高さまで降下させて、該サブバンパビームを前方車両の車体に衝突させることで、衝突エネルギーを効率的に吸収するものである。
【0006】
また、特許文献2の技術は、前方車両との衝突が予知される緊急時にねじ機構を作動させることにより、特許文献1の技術と同様にサブバンパビームを降下させて、該サブバンパビームを前方車両の車体に衝突させるものである。
【0007】
一方、後方衝突の対策に関しては、例えば、先ず、リアサイドフレームの後端部とリアバンパとに跨って設けられたクラッシュカンが潰れることで、このクラッシュカンで衝撃荷重を吸収し、これによって吸収しきれない衝撃荷重は、さらにリアサイドフレームが潰れることで吸収するようにした技術が知られている。
【0008】
また、これとは別の車両後部の衝突対応構造として、特許文献3には、後方車両が衝突するときに、リアシートを前方へスライドさせることで、後部座席の乗員の安全性を高める技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−203807号公報
【特許文献2】特開2007−203808号公報
【特許文献3】特開平11−208337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、後方衝突の対策に関して、車両後部のクラッシュカン及びリアサイドフレームだけでは必ずしも十分に衝撃荷重を吸収できない場合があるため、より効果的に衝撃荷重を吸収するための技術の開発が求められている。
【0011】
また、特許文献3の技術は、後方衝突時に後部座席の乗員を衝突部分から遠ざけるために前方へ移動させるものであって、衝撃荷重を効果的に吸収しようとしたものでないため、車室内に伝わる衝撃を軽減することはできない。
【0012】
そこで、本発明は、車両後方から加わる衝撃荷重を効果的に吸収することで、車室内における乗員の安全性を高めることができる車両後部の衝突対応構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため、本発明に係る車両後部の衝突対応構造は、次のように構成したことを特徴とする。
【0014】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、
車両後部において車両前後方向に延びる左右一対のリアサイドフレームと、
該リアサイドフレームよりも後方において車幅方向に延設されたリアバンパと、
エンジンの排気経路に設けられ、前記リアサイドフレームと車両前後方向に重なる位置に配設された中空の排気サイレンサと、を有する車両後部の衝突対応構造であって、
前記排気サイレンサよりも後方に配設され、車両後方から前記リアバンパに加わった衝撃荷重を前記排気サイレンサに伝達する荷重伝達部材と、
前記排気サイレンサよりも前方に配置された車体構成部材であって、前記荷重伝達部材により前方へ押し込まれた前記排気サイレンサを受け止める受け部材と、を有することを特徴とする。
【0015】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の発明において、
前記受け部材は、前記排気サイレンサよりも前方において前記左右のリアサイドフレーム間に架設されたリアサスペンションクロスメンバであることを特徴とする。
【0016】
さらに、請求項3に記載の発明は、前記請求項1または請求項2に記載の発明において、
前記排気サイレンサは、前記リアバンパ内部に設けられたリアバンパレインフォースメントよりも低い位置に設けられ、
前記荷重伝達部材は、車両後方から前記リアバンパに衝撃荷重が加わったときに前記排気サイレンサの後端部に当接可能なように前記リアバンパレインフォースメントから下側に向かって延設された当接部と、該当接部が前記排気サイレンサの後端部に当接した状態において該排気サイレンサの底部を支持可能なように前記当接部から前方へ延設された支持部と、を有することを特徴とする。
【0017】
またさらに、請求項4に記載の発明は、前記請求項3に記載の発明において、
車両後方から前記リアバンパに衝撃荷重が加わったときに潰れながら該衝撃荷重を吸収するクラッシュカンが、各リアサイドフレームの後端部と前記リアバンパレインフォースメントとに跨ってそれぞれ設けられており、
前記荷重伝達部材は、前記当接部と前記排気サイレンサの後端部との間に、車両後方から前記リアバンパに衝撃荷重が加わったときに前記クラッシュカンが潰れてから前記当接部が前記排気サイレンサに当接するために必要な間隔を空けて配設されていることを特徴とする。
【0018】
また、請求項5に記載の発明は、前記請求項3または請求項4に記載の発明において、
前記荷重伝達部材は、前記リアバンパに衝撃荷重が加わっていない状態において前記支持部の前端部が前記排気サイレンサと車両前後方向に重なるように配設されていることを特徴とする。
【0019】
また、請求項6に記載の発明は、前記請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の発明において、
前記荷重伝達部材は、前記受け部材との間で前記排気サイレンサを押し潰したときに、前記受け部材からの反力で前記リアバンパレインフォースメントから離脱するように、該リアバンパレインフォースメントに接合されていることを特徴とする。
【0020】
さらに、請求項7に記載の発明は、前記請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の発明において、
前記排気サイレンサは、各リアサイドフレームにより前後一対のハンガ部材を介して吊り下げ支持されており、
前記ハンガ部材は、前記リアサイドフレームに固定されたフレーム側固定部材と、前記排気サイレンサに固定されたサイレンサ側固定部材と、前記フレーム側固定部材と前記サイレンサ側固定部材とにそれぞれ車幅方向に延びる軸を中心として回転自在に連結された連結部材とを有し、
前側の前記ハンガ部材では、前記サイレンサ側固定部材が前記排気サイレンサの前部に固定されるとともに、該サイレンサ側固定部材と前記連結部材との連結部が、前記フレーム側固定部材と前記連結部材との連結部よりも下側かつ前側に配置され、
後側の前記ハンガ部材では、前記サイレンサ側固定部材が前記排気サイレンサの後部に固定されるとともに、該サイレンサ側固定部材と前記連結部材との連結部が、前記フレーム側固定部材と前記連結部材との連結部よりも下側かつ後側に配置されていることを特徴とする。
【0021】
また、請求項8に記載の発明は、前記請求項1または請求項2に記載の発明において、
前記リアサイドフレームの下面に、タイダウンフックが下方へ突出して設けられ、
該タイダウンフックに前記荷重伝達部材が設けられていることを特徴とする。
【0022】
また、請求項9に記載の発明は、前記請求項8に記載の発明において、
前記荷重伝達部材は、車両後方から前記リアバンパに衝撃荷重が加わったときに前記排気サイレンサの後端部に当接可能なように該排気サイレンサの後方に配設された当接部と、該当接部が前記排気サイレンサに当接した状態において該排気サイレンサが車幅方向外側へ移動することを規制するように前記排気サイレンサよりも車幅方向外側部分において前記当接部から前方へ延設された規制部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
まず、請求項1に記載の発明によれば、車両後方からリアバンパに衝撃荷重が加わったとき、排気サイレンサの後方に配設された荷重伝達部材により前記衝撃荷重が排気サイレンサに伝達され、該荷重伝達部材により前方へ押し込まれた排気サイレンサは、該排気サイレンサよりも前方に設けられた受け部材により受け止められる。そのため、排気サイレンサを受け部材と荷重伝達部材とで挟み込んで押し潰すことができ、これにより衝撃荷重を効果的に吸収することができる。
【0024】
また、請求項2に記載の発明によれば、前記受け部材としてリアサスペンションクロスメンバが利用されるため、受け部材として新たな部材を使用しなくても済む。そのため、部品点数の増加および車両重量の増大を回避することができる。
【0025】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、車両後方からリアバンパに衝撃荷重が加わったとき、荷重伝達部材の当接部が排気サイレンサの後端部に当接した状態において、荷重伝達部材の支持部により排気サイレンサの底部を支持することにより、排気サイレンサが下方へ脱落することを防止することができ、これにより、荷重伝達部材により排気サイレンサを確実に受け部材へ押し当てることができる。
【0026】
またさらに、請求項4に記載の発明を請求項3に記載の発明に適用すれば、リアサイドフレームとリアバンパレインフォースメントとに跨るクラッシュカンが潰れた後に、荷重伝達部材の当接部が排気サイレンサに当接するため、クラッシュカンによる衝撃荷重の吸収の後に、排気サイレンサにより衝撃荷重を吸収することができる。そのため、衝撃荷重がクラッシュカンのみで十分に対応できる程度に小さい場合、排気サイレンサの破損を回避することができる。
【0027】
また、請求項5に記載の発明を請求項3または請求項4に記載の発明に適用すれば、車両後方からリアバンパに衝撃荷重が加わり始めたときから、荷重伝達部材の支持部により排気サイレンサの底部を支持することができるため、排気サイレンサの脱落を一層確実に防止することができる。
【0028】
またさらに、請求項6に記載の発明を請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の発明に適用すれば、荷重伝達部材は、受け部材との間で排気サイレンサを押し潰したときに、受け部材からの反力でリアバンパレインフォースメントから離脱して落下するため、排気サイレンサによる衝撃荷重の吸収が終了した後において、引き続き車両後方から衝撃荷重が加わるとき、荷重伝達部材が受け部材に干渉することを回避することができ、これにより、リアサイドフレームが潰れることによる衝撃吸収を継続することができる。
【0029】
さらに、請求項7に記載の発明によれば、排気サイレンサをリアサイドフレームにより吊り下げ支持するのに用いる前後一対のハンガ部材のうち、前側のハンガ部材では、サイレンサ側固定部材と連結部材との連結部が、フレーム側固定部材と連結部材との連結部よりも下側かつ前側に配置され、後側のハンガ部材では、サイレンサ側固定部材と連結部材との連結部が、フレーム側固定部材と連結部材との連結部よりも下側かつ後側に配置されているため、排気サイレンサに後方から衝撃荷重が加わったときに、前側ハンガ部材では、サイレンサ側固定部材と連結部材との連結部がフレーム側固定部材と連結部材との連結部を中心軸として前上方へ回動し、後側ハンガ部材では、サイレンサ側固定部材と連結部材との連結部がフレーム側固定部材と連結部材との連結部を中心軸として前下方へ回動する。そのため、排気サイレンサは、前端部が後端部よりも高く持ち上げられた状態で、荷重伝達部材により前方へ押し込まれる。よって、排気サイレンサが荷重伝達部材により前方へ押し込まれるとき、排気サイレンサの前端部の高さが極力維持されるため、この前端部を受け部材により確実に受け止めることができる。
【0030】
また、請求項8に記載の発明によれば、リアサイドフレームの下面から下方へ突設されたタイダウンフックに荷重伝達部材が設けられているため、タイダウンフックを利用して排気サイレンサへの衝撃荷重を実現することができる。
【0031】
さらに、請求項9に記載の発明によれば、車両後方からリアバンパに衝撃荷重が加わったとき、荷重伝達部材の当接部が排気サイレンサに当接した状態において、荷重伝達部材の規制部により、排気サイレンサの車幅方向外側への移動が規制されるため、荷重伝達部材により排気サイレンサを確実に受け部材に押し当てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る衝突対応構造が適用される車両後部を示す底面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】第1の実施形態における排気サイレンサ及び荷重伝達部材を示す斜視図である。
【図4】車両後方からリアバンパに衝撃荷重が加わり始めた状態における図1のA−A線断面図である。
【図5】排気サイレンサがリアサスペンションクロスメンバに当接するまで前方へ押し込まれた状態における図1のA−A線断面図である。
【図6】排気サイレンサが押し潰されて荷重伝達部材が脱落する状態における図1のA−A線断面図である。
【図7】ハンガ部材の構成を示す車両左側から見た側面図である。
【図8】排気サイレンサに車両後方側から衝撃荷重が加わったときのハンガ部材の状態を示す車両左側から見た側面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る衝突対応構造が適用される車両後部を示す車両左側から見た側面図である。
【図10】図9に示す車両後部の底面図である。
【図11】第2の実施形態において排気サイレンサが潰れた状態を示す車両左側から見た側面図である。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る衝突対応構造が適用される車両後部を示す車両右側から見た側面図である。
【図13】図12に示す車両後部の底面図である。
【図14】図12のB−B線断面図である。
【図15】第3の実施形態におけるタイダウンフック及び荷重伝達部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、「前」、「後」、「前後」、「右」、「左」、「左右」等の方向を示す用語は、特段の説明がある場合を除いて、車両の進行方向を「前」とした場合の方向を指すものとする。
【0034】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る車両後部の衝突対応構造が適用される車両1の後部を示す底面図であり、図2は、図1のA−A線断面図である。
【0035】
図1及び図2に示すように、車両1の後部には、車両前後方向に延びる左右一対のリアサイドフレーム2,3が設けられている。これら左右のリアサイドフレーム2,3間には、図示しない荷室フロア材が架設されている。
【0036】
リアサイドフレーム2,3よりも後方には、リアバンパ4が車幅方向に延設されている。リアバンパ4は、車幅方向に延びるリアバンパレインフォースメント6と、該リアバンパレインフォースメント6を覆う図示しないリアバンパカバーとを備えている。リアバンパレインフォースメント6は、車両後方側に向かって開放した断面倒ハット状の前側部材8と、この前側部材8の後面開放部を塞ぐように該前側部材8に接合された後側部材10とを有する。
【0037】
また、各リアサイドフレーム2,3の後端部と、リアバンパ4内部に設けられたリアバンパレインフォースメントとに跨ってそれぞれクラッシュカン12,13が設けられている。クラッシュカン12,13の前端にはフランジ14が設けられており、このフランジ14と、リアサイドフレーム2,3の後端に設けられたフランジ16とが接合されることで、クラッシュカン12,13とリアサイドフレーム2,3とが連結されている。車両後方からリアバンパ4に衝撃荷重が加わったときは、先ずクラッシュカン12,13が潰れながら該衝撃荷重を吸収することで、車体への衝撃の伝達が抑制されるようになっている。
【0038】
さらに、左右のリアサイドフレーム2,3間にはリアサスペンションクロスメンバ20が架設されている。このリアサスペンションクロスメンバ20は、後輪用のサスペンション装置の一部を構成するものであり、左右のリアサイドフレーム2,3の下面にそれぞれ連結される左右一対の連結メンバ部22,23と、これらの連結メンバ部22,23間に架設された横メンバ部24とを有する。各連結メンバ部22,23は、車幅方向内側へ膨出するように湾曲して設けられ、該連結メンバ部22,23の両端部がリアサイドフレーム2,3の下面に固定されている。
【0039】
リアサスペンションクロスメンバ20の後方には、エンジンの排気経路28に設けられた中空の排気サイレンサ30が配置されている。図1に示すように、排気サイレンサ30は、車幅方向に関して左右のリアサイドフレーム2,3間に配設されている。また、排気サイレンサ30は、リアサイドフレーム2,3と車両前後方向に重なる位置に配設されている。なお、本実施形態において、排気サイレンサ30の後端部は、リアサイドフレーム2,3の後端よりも後側に配置されているが、リアサイドフレーム2,3の後端よりも前側に収まるように配置するようにしてもよい。また、図2に示すように、排気サイレンサ30は、リアサイドフレーム2,3及びリアバンパレインフォースメント6よりも低い位置に設けられており、例えば前後一対のハンガ部材60,62を介して左右のリアサイドフレーム2,3により吊り下げ支持されている。ハンガ部材60,62の具体的構成については後に説明する。
【0040】
排気サイレンサ30の前部には、排気ガスを導入するための入口管32が設けられており、この入口管32は、エンジン側から後方に延設された排気管50に接続されている。また、排気サイレンサ30の車幅方向両端部には、排気ガスを排出するための出口管34,35が設けられており、排気サイレンサ30を通過した排気ガスが出口管34,35を経由して車両後方へ排出されるようになっている。
【0041】
図3に示すように、排気サイレンサ30は、車幅方向に延びる扁平な筒状壁部38と、この筒状壁部38の両端開口部を塞ぐ左右一対の側壁板40,42と、排気サイレンサ30の内部空間を車幅方向に区切る仕切板44,46とを有する。筒状壁部38の上面は略水平な面となっているが、筒状壁部38の下面は後方に向かって上側へ傾斜した傾斜面となっている(図2参照)。側壁板40,42と仕切板44,46とは、平面視において段状に形成されており、これにより、車両後方側から衝撃荷重を受けたときに、車両前後方向に短くなるように折り畳まれやすくなっている。よって、排気サイレンサ30は、車両後方側から衝撃荷重を受けたときに、車両前後方向に圧縮されるように潰れやすくなっており、これにより、該衝撃荷重を効果的に吸収することができるようになっている。
【0042】
図2及び図3に示すように、排気サイレンサ30の後方には、車両後方からリアバンパ4に加わった衝撃荷重を排気サイレンサ30に伝達する例えば左右一対の荷重伝達部材52が配設されている。ただし、本発明において、荷重伝達部材52の個数は特に限定されるものでない。
【0043】
荷重伝達部材52は、車両後方からリアバンパ4に衝撃荷重が加わったときに排気サイレンサ30の後端部に当接可能なようにリアバンパレインフォースメント6から下側に向かって延設された当接部54と、該当接部54が排気サイレンサ30の後端部に当接した状態において該排気サイレンサ30の底部を支持可能なように当接部54から前方へ延設された支持部56と、を有する。
【0044】
当接部54は、リアバンパレインフォースメント6の前側部材8の下面に接合されており、該接合部から前下方へ延設されている。当接部54の上端部とリアバンパレインフォースメント6とは例えば溶接により接合されており、この接合力は、荷重伝達部材52がリアサスペンションクロスメンバ20との間で排気サイレンサ30を押し潰したときにリアサスペンションクロスメンバ20からの反力でリアバンパレインフォースメント6から離脱するような接合力となっている。すなわち、荷重伝達部材52は、リアサスペンションクロスメンバ20との間で排気サイレンサ30を押し潰すことによる衝撃荷重の吸収を終えると脱落するため、引き続き車両後方から衝撃荷重が加わり続ける場合、荷重伝達部材52がサスペンションクロスメンバ20に干渉することを回避することができ、これにより、リアサイドフレーム2,3が潰れることによる衝撃吸収を継続することができる。
【0045】
当接部54における排気サイレンサ30後端部との対向面55は略鉛直方向に沿って配設されており、これにより、該対向面55が排気サイレンサ30の後端部に当接したときに、車両後方から加わった衝撃荷重を荷重伝達部材52から排気サイレンサ30へ効率的に伝達することができるようになっている。
【0046】
当接部54と排気サイレンサ30の後端部との間には、車両後方からリアバンパ4に衝撃荷重が加わったときにクラッシュカン12,13が潰れてから当接部54が排気サイレンサ30に当接するために必要な間隔dが設けられている。これにより、先ずクラッシュカン12,13が潰れた後に、当接部54が排気サイレンサ30に当接することとなるため、クラッシュカン12,13による衝撃荷重の吸収がなされた後に、排気サイレンサ30により衝撃荷重を吸収することができる。そのため、車両後方からの衝撃荷重がクラッシュカン12,13のみで十分に対応できる程度に小さい場合、排気サイレンサ30の破損を回避することができる。
【0047】
支持部56は、当接部56の下端部から前方へ延設されており、支持部56の少なくとも前端部が、排気サイレンサ30の後端部の下端よりも低い位置に配設されている。これにより、車両後方からの衝撃荷重によりクラッシュカン12,13が潰れて、これに伴い荷重伝達部材52が前方へ移動するときに、支持部56の前端部が排気サイレンサ30の後端部に干渉することを回避して、支持部56を確実に排気サイレンサ30の下方に配置することができる。そのため、この支持部56により排気サイレンサ30を下側から支持することができ、これにより、排気サイレンサ30の脱落を防止することができる。
【0048】
また、支持部56の前端部は、排気サイレンサ30と車両前後方向に重なるように配設されている。そのため、車両後方からリアバンパ4に衝撃荷重が加わり始めたときから、支持部56により排気サイレンサ30の底部を支持することができるため、排気サイレンサ30の脱落を一層確実に防止することができる。
【0049】
図4〜図6を参照しながら、車両後方からリアバンパ4に衝撃荷重が加わるときに車両1の後部において衝撃荷重を吸収する態様の具体例を説明する。
【0050】
図4に示すように、車両後方からリアバンパ4に衝撃荷重が加わると、先ず、クラッシュカン12,13が潰れて、該クラッシュカン12,13により衝撃荷重が吸収される。衝撃荷重が比較的小さい場合、このクラッシュカン12,13による衝撃吸収のみで対応できるが、衝撃荷重が比較的大きい場合は、引き続き次のような態様で衝撃吸収が行われる。
【0051】
クラッシュカン12,13が車両前後方向に圧縮されるように潰れると、これに伴い、荷重伝達部材52は前方へ押し込まれて、該荷重伝達部材52の当接部54が排気サイレンサ30の後端部に当接し、荷重伝達部材52による排気サイレンサ30への荷重伝達が開始される。
【0052】
続いて、図5に示すように、リアサイドフレーム2,3が潰れ始めて、該リアサイドフレーム2,3が車両前後方向に圧縮されることに伴い、荷重伝達部材52が更に前方へ移動して、排気サイレンサ30を前方へ押し込む。このとき、排気サイレンサ30の底面は荷重伝達部材52の支持部56により下側から支持されているため、排気サイレンサ30の脱落を防止することができる。荷重伝達部材52により前方へ押し込まれた排気サイレンサ30は、最終的にリアサスペンションクロスメンバ20の特に横メンバ部24に押し当てられる。
【0053】
その後、図6に示すように、リアサイドフレーム2,3が潰れるのと並行して、排気サイレンサ30は、サスペンションクロスメンバ20と荷重伝達部材52とで挟み込まれることで押し潰される。このように、リアサイドフレーム2,3だけでなく、排気サイレンサ30によっても衝撃荷重を吸収することができるため、衝撃吸収効果を高めることができる。
【0054】
排気サイレンサ30による衝撃吸収が終了すると、荷重伝達部材52は、リアサスペンションクロスメンバ20から受ける反力によりリアバンパレインフォースメント6から離脱して落下する。これにより、引き続き行われるリアサイドフレーム2,3による衝撃吸収が荷重伝達部材52によって阻害されることを回避することができる。
【0055】
続いて、図7及び図8を参照しながら、排気サイレンサ30を吊り下げ支持するハンガ部材60,62の構成について説明する。なお、図7及び図8では、排気サイレンサ30を左側のリアサイドフレーム3により支持するためのハンガ部材60,62のみが図示されているが、排気サイレンサ30を右側のリアサイドフレーム2により支持するためのハンガ部材60,62も同様の構成を有する。また、図7及び図8では、リアバンパ4及び荷重伝達部材52の図示を省略しているが、これら両部材4,52は、上述した構成で設けられているものとする。
【0056】
図7に示すように、前側のハンガ部材60は、リアサイドフレーム3に一端が固定されたフレーム側固定ピン64と、排気サイレンサ30の前部にブラケット76を介して一端が固定されたサイレンサ側固定ピン68と、フレーム側固定ピン64の他端とサイレンサ側固定ピン68の他端とにそれぞれ車幅方向に延びる軸を中心として回転自在に連結された側面視略楕円形の連結部材72とを有する。連結部材72の長軸方向は鉛直方向に対して前下方へ傾斜しており、連結部材72は、その長軸方向における上側の端部においてフレーム側固定ピン64に連結され、長軸方向における下側の端部においてサイレンサ側固定ピン68に連結されている。すなわち、サイレンサ側固定ピン68と連結部材72との連結部(サイレンサ側連結部)69は、フレーム側固定ピン64と連結部材72との連結部(フレーム側連結部)65よりも下側かつ前側に配置されている。これにより、排気サイレンサ30に後方から衝撃荷重が伝達されたとき、サイレンサ側連結部69はフレーム側連結部65を中心軸として前上方へ回動するようになっている。
【0057】
一方、後側のハンガ部材62は、リアサイドフレーム3にフランジ14,16を介して一端が固定されたフレーム側固定ピン66と、排気サイレンサ30の後部にブラケット78を介して一端が固定されたサイレンサ側固定ピン70と、フレーム側固定ピン66の他端とサイレンサ側固定ピン70の他端とにそれぞれ車幅方向に延びる軸を中心として回転自在に連結された側面視略楕円形の連結部材74とを有する。連結部材74の長軸方向は鉛直方向に対して後下方へ傾斜しており、連結部材72は、その長軸方向における上側の端部においてフレーム側固定ピン66に連結され、長軸方向における下側の端部においてサイレンサ側固定ピン70に連結されている。すなわち、サイレンサ側固定ピン70と連結部材74との連結部(サイレンサ側連結部)71は、フレーム側固定ピン66と連結部材72との連結部(フレーム側連結部)67よりも下側かつ前側に配置されている。これにより、排気サイレンサ30に後方から衝撃荷重が伝達されたとき、サイレンサ側連結部71はフレーム側連結部67を中心軸として前下方へ回動するようになっている。
【0058】
このように、排気サイレンサ30に後方から衝撃荷重が加わったとき、前側ハンガ部材60では、サイレンサ側連結部69がフレーム側連結部65を中心軸として前上方へ回動し、後側ハンガ部材62では、サイレンサ側連結部71がフレーム側連結部67を中心軸として前下方へ回動する。これにより、図8に示すように、排気サイレンサ30は、前端部が後端部よりも高く持ち上げられた状態で、荷重伝達部材52により前方へ押し込まれることになる。よって、排気サイレンサ30が荷重伝達部材52により前方へ押し込まれるとき、排気サイレンサ30の前端部の高さが極力維持されるため、この前端部をリアサスペンションクロスメンバ20により確実に受け止めることができ、排気サイレンサ30による衝撃吸収を確実に行うことができる。
【0059】
[第2の実施形態]
図9〜図11を参照しながら、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態において、第1の実施形態と同様の構成については詳細な説明を省略する。また、図9〜図11において、第1の実施形態と同様の機能を有する部材には同符号を付してある。
【0060】
図9は、本発明の第2の実施形態に係る車両後部の衝突対応構造が適用される車両101の後部を示す左側の側面図であり、図10は、同車両101の底面図である。
【0061】
図9及び図10に示すように、本実施形態においても、第1の実施形態と同様、左右のリアサイドフレーム2,3間にはリアサスペンションクロスメンバ120が架設されている。このリアサスペンションクロスメンバ120は、後輪用のサスペンション装置の一部を構成するものであり、左右のリアサイドフレーム2,3の下面にそれぞれ固定されて該連結部から車幅方向内側に向かって斜め後方に延びる左右一対の前側連結メンバ部122,123と、各前側連結メンバ部122,123の後端部から車幅方向外側に向かって斜め後方に延設されて後端部において左右のリアサイドフレーム2,3の下面にそれぞれ固定された左右一対の後側連結メンバ部124,125と、左右の前側連結メンバ部122,123間に架設された前側横メンバ部126と、左右の後側連結メンバ部124,125間に架設された後側横メンバ部128とを有する。
【0062】
本実施形態において、リアサスペンションクロスメンバ20の後方には、スペアタイヤを収容するために荷室フロアに設けられたタイヤパン110が配置されるため、このタイヤパン110を挟んだ車幅方向両側にそれぞれ中空の排気サイレンサ130が配設されている。
【0063】
各排気サイレンサ130は、いわゆる縦置きタイプのサイレンサであり、リアサイドフレーム2,3の下方において車両前後方向に沿って配設されている。また、各排気サイレンサ130は、車両前後方向においてリアサスペンションクロスメンバ120の後側連結メンバ部124,125とリアサイドフレーム2,3の後端部との間に配設されている。なお、各排気サイレンサ130は、図示しないハンガ部材を介してリアサイドフレーム2,3により吊り下げ支持されている。また、このハンガ部材としては、第1の実施形態と同様のハンガ部材60,62を用いてもよいし、別のハンガ部材を用いてもよい。
【0064】
排気サイレンサ130の前部には、排気ガスを導入するための入口管132が設けられており、この入口管132は、エンジン側から後方に延設された排気管150に接続されている。また、排気サイレンサ130の後部には、排気ガスを排出するための出口管134が設けられており、排気サイレンサ130を通過した排気ガスが出口管134を経由して車両後方へ排出されるようになっている。
【0065】
図9に示すように、リアサイドフレーム2,3の後端部の下面には、例えば側面視略U字形のタイダウンフック160が下方へ突出して設けられている。タイダウンフック160は、その前端部が前方へ、後端部が後方へそれぞれ屈曲して形成されており、これら前後の屈曲部が例えば溶接によりリアサイドフレーム2,3の下面に接合されている。
【0066】
図9及び図10に示すように、タイダウンフック160の前部には板状の荷重伝達部材152が例えば溶接により接合されている。荷重伝達部材152は、排気サイレンサ130の直後方において車両前後方向に垂直な面に沿って配設されている。なお、本実施形態において、荷重伝達部材152は、排気サイレンサ130の後端面から僅かに間隔を空けて配設されているが、排気サイレンサ130の後端面に当接して配設するようにしてもよい。
【0067】
図11に示すように、本実施形態において、車両後方からリアバンパ4に衝撃荷重が加わると、先ずクラッシュカン12,13による衝撃吸収がなされた後、リアサイドフレーム2,3による衝撃吸収と並行して、荷重伝達部材152から排気サイレンサ130への荷重伝達が行われる。このとき、荷重伝達部材152は、リアサイドフレーム2,3が車両前後方向に圧縮されるように潰れることに伴って前方へ移動し、これにより、排気サイレンサ130を前方へ押し込む。排気サイレンサ130がリアサスペンションクロスメンバ120の後側連結メンバ部124,125に当接するまで前方へ押し込まれると、排気サイレンサ130は、リアサスペンションクロスメンバ120と荷重伝達部材152とで挟み込まれて潰される。これにより、リアサイドフレーム2,3だけでなく、排気サイレンサ130によっても衝撃荷重を吸収することができるため、衝撃吸収効果を高めることができる。このように、本実施形態では、荷重伝達部材152をタイダウンフック160に設けることにより、該タイダウンフック160を利用して排気サイレンサ130による衝撃吸収を実現することができる。
【0068】
なお、第2の実施形態において、リアサイドフレーム2,3とタイダウンフック160との接合力を調整することにより、排気サイレンサ130による衝撃吸収が終了したときに、タイダウンフック160がリアサスペンションクロスメンバ120から受ける反力によりリアサイドフレーム2,3から離脱するようにしてもよく、この場合、引き続き行われるリアサイドフレーム2,3による衝撃吸収がタイダウンフック160及び荷重伝達部材152によって阻害されることを回避することができる。
【0069】
[第3の実施形態]
図12〜図15を参照しながら、本発明の第3の実施形態について説明する。なお、第3の実施形態において、第1又は第2の実施形態と同様の構成については詳細な説明を省略する。また、図12〜図15において、第1又は第2の実施形態と同様の機能を有する部材には同符号を付してある。
【0070】
図12及び図13に示すように、本実施形態においても、左右のリアサイドフレーム2,3間には第2の実施形態と同様のリアサスペンションクロスメンバ120が架設されており、このリアサスペンションクロスメンバ20の後方には、スペアタイヤを収容するために荷室フロアに設けられたタイヤパン210が配置される。本実施形態では、このタイヤパン210の右側にのみ中空の排気サイレンサ230が配設されている。
【0071】
排気サイレンサ230は、右側のリアサイドフレーム2の下方において、前端部が後端部よりも車幅方向内側に配置されるように車両前後方向に対して傾斜して設けられている。また、排気サイレンサ230は、車両前後方向においてリアサスペンションクロスメンバ120の後側連結メンバ部124とリアサイドフレーム2の後端部との間に配設されている。なお、排気サイレンサ230は、図示しないハンガ部材を介してリアサイドフレーム2により吊り下げ支持されている。また、このハンガ部材としては、第1の実施形態と同様のハンガ部材60,62を用いてもよいし、別のハンガ部材を用いてもよい。
【0072】
排気サイレンサ230の前部は、エンジン側から後方に延設された排気管250に接続されている。また、排気サイレンサ230の後部には、排気ガスを排出するための出口管234が設けられており、排気サイレンサ230を通過した排気ガスが出口管234を経由して車両後方へ排出されるようになっている。
【0073】
図12に示すように、右側リアサイドフレーム2の後端部の下面には、第2の実施形態と同様のタイダウンフック160が下方へ突出して設けられている。このタイダウンフック160の前部には板状の荷重伝達部材252が例えば溶接により接合されている。
【0074】
図12〜図15に示すように、荷重伝達部材252は、車両後方からリアバンパ4に衝撃荷重が加わったときに排気サイレンサ230の後端部に当接可能なように該排気サイレンサ230の後方に配設された当接部254と、該当接部254が排気サイレンサ230に当接した状態において該排気サイレンサ230が車幅方向外側へ移動することを規制するように排気サイレンサ230よりも車幅方向外側部分において当接部254から前方へ延設された規制部258とを有する。
【0075】
当接部254は、排気サイレンサ230の直後方において車両前後方向に垂直な面に沿って配設されている。また、当接部254の上端部には、車幅方向外側へ延びる外側延出部256が設けられている。
【0076】
規制部258は、排気サイレンサ230の車幅方向外側において車幅方向に垂直な面に沿って配設されている。また、規制部258は、例えば棒状の支持部材270を介してリアサイドフレーム2に支持されている。この支持部材270は、規制部258の外側の面に例えば溶接により固定された下側固定部272と、該下側固定部272の上端から車幅方向内側へ延びる水平部274と、該水平部274の車幅方向内側の端部から上方へ延びる上側固定部276とを有し、該上側固定部276がリアサイドフレーム2の外側面に例えば溶接により固定されている。さらに、規制部258の上端部には、後方へ延びる後側延出部260が設けられている。
【0077】
外側延出部256と後側延出部260とは連結部262を介して連なっている。これら外側延出部256、後側延出部260及び連結部262は、排気サイレンサ230の出口管234との干渉を避けるようにして該出口管234の上方に配設されている。
【0078】
本実施形態において、車両後方からリアバンパ4に衝撃荷重が加わると、第2の実施形態と同様、先ずクラッシュカン12,13による衝撃吸収がなされた後、リアサイドフレーム2,3による衝撃吸収と並行して、荷重伝達部材252の当接部254から排気サイレンサ230への荷重伝達が行われる。このとき、荷重伝達部材252の当接部254は、リアサイドフレーム2,3が車両前後方向に圧縮されるように潰れることに伴って前方へ移動し、これにより、排気サイレンサ230を前方へ押し込む。また、このとき、荷重伝達部材252の規制部258は、排気サイレンサ230が車幅方向外側へ移動することを規制するため、排気サイレンサ230を前方または車幅方向内側に向かって斜め前方へ案内することができる。一方、このとき、排気サイレンサ230の前端部は、タイヤパン210によって車幅方向内側への移動が規制されるため、排気サイレンサ230が鉛直方向の軸を中心として回転することを抑制することができる。
【0079】
このようにして荷重伝達部材252により前方または斜め前方へ押し込まれた排気サイレンサ230は、該サイレンサの前端部がリアサスペンションクロスメンバ120の後側連結メンバ部124又は後側横メンバ部128の少なくとも一方に確実に押し当てられ、リアサスペンションクロスメンバ120と荷重伝達部材252とで挟み込まれて押し潰される。これにより、リアサイドフレーム2,3だけでなく、排気サイレンサ230によっても衝撃荷重を吸収することができるため、衝撃吸収効果を高めることができる。このように、本実施形態においても、第2の実施形態と同様、荷重伝達部材252をタイダウンフック160に設けることにより、該タイダウンフック160を利用して排気サイレンサ230による衝撃吸収を実現することができる。
【0080】
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
【0081】
例えば、上述の実施形態では、車両後方からリアバンパ4に衝撃荷重が加わったとき、先ずクラッシュカン12,13が潰れ、続いて、荷重伝達部材52により排気サイレンサ30が前方へ押し込まれ始めた後、リアサイドフレーム2,3が潰れ始めて、その後に排気サイレンサ30が潰れ始める場合について説明したが、本発明において、この順序は必ずしもこれに限定されるものでない。具体的には、例えば、リアサイドフレーム2,3が潰れ始めてから、荷重伝達部材52による排気サイレンサ30への荷重伝達(前方への押し込み)が開始されるようにしたり、排気サイレンサ30が潰れ始めた後にリアサイドフレーム2,3が潰れ始めるようにしたりしてもよい。
【0082】
また、上述の実施形態では、荷重伝達部材52,152,252により前方へ押し込まれた排気サイレンサ30,130,230を受け止める受け部材としてリアサスペンションクロスメンバ20,120を用いる構成について説明したが、本発明における前記受け部材は、排気サイレンサよりも前方に配置された車体構成部材であれば、リアサスペンションクロスメンバ以外の部材であってもよい。
【0083】
さらに、本発明において衝撃荷重を吸収するために用いる排気サイレンサの構成は、上述の第1〜第3の実施形態で説明した排気サイレンサ30,130,230に限られず、種々の排気サイレンサを使用することができる。
【0084】
さらにまた、上述の実施形態では、上述の荷重伝達部材52,152,252を用いる構成について説明したが、本発明に使用される荷重伝達部材の構成は、車両後方から加わった衝撃荷重を排気サイレンサに伝達可能なものであれば特に限定されるものでない。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上のように、本発明によれば、車両後方から加わる衝撃荷重を排気サイレンサにより効果的に吸収することで、車室内における乗員の安全性を高めることが可能となるから、排気サイレンサを備えた車両の製造産業分野において好適に利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0086】
1,101,201:車両、2,3:リアサイドフレーム、4:リアバンパ、6:リアバンパレインフォースメント、12,13:クラッシュカン、20,120:リアサスペンションクロスメンバ、30,130,230:排気サイレンサ、52,152,252:荷重伝達部材、54:当接部、56:支持部、60,62:ハンガ部材、64,66:フレーム側固定ピン、68,70:サイレンサ側固定ピン、72,74:連結部材、65,67:フレーム側連結部、69,71:サイレンサ側連結部、254:当接部、258:規制部、160:タイダウンフック。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後部において車両前後方向に延びる左右一対のリアサイドフレームと、
該リアサイドフレームよりも後方において車幅方向に延設されたリアバンパと、
エンジンの排気経路に設けられ、前記リアサイドフレームと車両前後方向に重なる位置に配設された中空の排気サイレンサと、を有する車両後部の衝突対応構造であって、
前記排気サイレンサよりも後方に配設され、車両後方から前記リアバンパに加わった衝撃荷重を前記排気サイレンサに伝達する荷重伝達部材と、
前記排気サイレンサよりも前方に配置された車体構成部材であって、前記荷重伝達部材により前方へ押し込まれた前記排気サイレンサを受け止める受け部材と、を有することを特徴とする車両後部の衝突対応構造。
【請求項2】
前記受け部材は、前記排気サイレンサよりも前方において前記左右のリアサイドフレーム間に架設されたリアサスペンションクロスメンバであることを特徴とする請求項1に記載の車両後部の衝突対応構造。
【請求項3】
前記排気サイレンサは、前記リアバンパ内部に設けられたリアバンパレインフォースメントよりも低い位置に設けられ、
前記荷重伝達部材は、車両後方から前記リアバンパに衝撃荷重が加わったときに前記排気サイレンサの後端部に当接可能なように前記リアバンパレインフォースメントから下側に向かって延設された当接部と、該当接部が前記排気サイレンサの後端部に当接した状態において該排気サイレンサの底部を支持可能なように前記当接部から前方へ延設された支持部と、を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両後部の衝突対応構造。
【請求項4】
車両後方から前記リアバンパに衝撃荷重が加わったときに潰れながら該衝撃荷重を吸収するクラッシュカンが、各リアサイドフレームの後端部と前記リアバンパレインフォースメントとに跨ってそれぞれ設けられており、
前記荷重伝達部材は、前記当接部と前記排気サイレンサの後端部との間に、車両後方から前記リアバンパに衝撃荷重が加わったときに前記クラッシュカンが潰れてから前記当接部が前記排気サイレンサに当接するために必要な間隔を空けて配設されていることを特徴とする請求項3に記載の車両後部の衝突対応構造。
【請求項5】
前記荷重伝達部材は、前記リアバンパに衝撃荷重が加わっていない状態において前記支持部の前端部が前記排気サイレンサと車両前後方向に重なるように配設されていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の車両後部の衝突対応構造。
【請求項6】
前記荷重伝達部材は、前記受け部材との間で前記排気サイレンサを押し潰したときに、前記受け部材からの反力で前記リアバンパレインフォースメントから離脱するように、該リアバンパレインフォースメントに接合されていることを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の車両後部の衝突対応構造。
【請求項7】
前記排気サイレンサは、各リアサイドフレームにより前後一対のハンガ部材を介して吊り下げ支持されており、
前記ハンガ部材は、前記リアサイドフレームに固定されたフレーム側固定部材と、前記排気サイレンサに固定されたサイレンサ側固定部材と、前記フレーム側固定部材と前記サイレンサ側固定部材とにそれぞれ車幅方向に延びる軸を中心として回転自在に連結された連結部材とを有し、
前側の前記ハンガ部材では、前記サイレンサ側固定部材が前記排気サイレンサの前部に固定されるとともに、該サイレンサ側固定部材と前記連結部材との連結部が、前記フレーム側固定部材と前記連結部材との連結部よりも下側かつ前側に配置され、
後側の前記ハンガ部材では、前記サイレンサ側固定部材が前記排気サイレンサの後部に固定されるとともに、該サイレンサ側固定部材と前記連結部材との連結部が、前記フレーム側固定部材と前記連結部材との連結部よりも下側かつ後側に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の車両後部の衝突対応構造。
【請求項8】
前記リアサイドフレームの下面に、タイダウンフックが下方へ突出して設けられ、
該タイダウンフックに前記荷重伝達部材が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両後部の衝突対応構造。
【請求項9】
前記荷重伝達部材は、車両後方から前記リアバンパに衝撃荷重が加わったときに前記排気サイレンサの後端部に当接可能なように該排気サイレンサの後方に配設された当接部と、該当接部が前記排気サイレンサに当接した状態において該排気サイレンサが車幅方向外側へ移動することを規制するように前記排気サイレンサよりも車幅方向外側部分において前記当接部から前方へ延設された規制部と、を有することを特徴とする請求項8に記載の車両後部の衝突対応構造。
【請求項1】
車両後部において車両前後方向に延びる左右一対のリアサイドフレームと、
該リアサイドフレームよりも後方において車幅方向に延設されたリアバンパと、
エンジンの排気経路に設けられ、前記リアサイドフレームと車両前後方向に重なる位置に配設された中空の排気サイレンサと、を有する車両後部の衝突対応構造であって、
前記排気サイレンサよりも後方に配設され、車両後方から前記リアバンパに加わった衝撃荷重を前記排気サイレンサに伝達する荷重伝達部材と、
前記排気サイレンサよりも前方に配置された車体構成部材であって、前記荷重伝達部材により前方へ押し込まれた前記排気サイレンサを受け止める受け部材と、を有することを特徴とする車両後部の衝突対応構造。
【請求項2】
前記受け部材は、前記排気サイレンサよりも前方において前記左右のリアサイドフレーム間に架設されたリアサスペンションクロスメンバであることを特徴とする請求項1に記載の車両後部の衝突対応構造。
【請求項3】
前記排気サイレンサは、前記リアバンパ内部に設けられたリアバンパレインフォースメントよりも低い位置に設けられ、
前記荷重伝達部材は、車両後方から前記リアバンパに衝撃荷重が加わったときに前記排気サイレンサの後端部に当接可能なように前記リアバンパレインフォースメントから下側に向かって延設された当接部と、該当接部が前記排気サイレンサの後端部に当接した状態において該排気サイレンサの底部を支持可能なように前記当接部から前方へ延設された支持部と、を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両後部の衝突対応構造。
【請求項4】
車両後方から前記リアバンパに衝撃荷重が加わったときに潰れながら該衝撃荷重を吸収するクラッシュカンが、各リアサイドフレームの後端部と前記リアバンパレインフォースメントとに跨ってそれぞれ設けられており、
前記荷重伝達部材は、前記当接部と前記排気サイレンサの後端部との間に、車両後方から前記リアバンパに衝撃荷重が加わったときに前記クラッシュカンが潰れてから前記当接部が前記排気サイレンサに当接するために必要な間隔を空けて配設されていることを特徴とする請求項3に記載の車両後部の衝突対応構造。
【請求項5】
前記荷重伝達部材は、前記リアバンパに衝撃荷重が加わっていない状態において前記支持部の前端部が前記排気サイレンサと車両前後方向に重なるように配設されていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の車両後部の衝突対応構造。
【請求項6】
前記荷重伝達部材は、前記受け部材との間で前記排気サイレンサを押し潰したときに、前記受け部材からの反力で前記リアバンパレインフォースメントから離脱するように、該リアバンパレインフォースメントに接合されていることを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の車両後部の衝突対応構造。
【請求項7】
前記排気サイレンサは、各リアサイドフレームにより前後一対のハンガ部材を介して吊り下げ支持されており、
前記ハンガ部材は、前記リアサイドフレームに固定されたフレーム側固定部材と、前記排気サイレンサに固定されたサイレンサ側固定部材と、前記フレーム側固定部材と前記サイレンサ側固定部材とにそれぞれ車幅方向に延びる軸を中心として回転自在に連結された連結部材とを有し、
前側の前記ハンガ部材では、前記サイレンサ側固定部材が前記排気サイレンサの前部に固定されるとともに、該サイレンサ側固定部材と前記連結部材との連結部が、前記フレーム側固定部材と前記連結部材との連結部よりも下側かつ前側に配置され、
後側の前記ハンガ部材では、前記サイレンサ側固定部材が前記排気サイレンサの後部に固定されるとともに、該サイレンサ側固定部材と前記連結部材との連結部が、前記フレーム側固定部材と前記連結部材との連結部よりも下側かつ後側に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の車両後部の衝突対応構造。
【請求項8】
前記リアサイドフレームの下面に、タイダウンフックが下方へ突出して設けられ、
該タイダウンフックに前記荷重伝達部材が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両後部の衝突対応構造。
【請求項9】
前記荷重伝達部材は、車両後方から前記リアバンパに衝撃荷重が加わったときに前記排気サイレンサの後端部に当接可能なように該排気サイレンサの後方に配設された当接部と、該当接部が前記排気サイレンサに当接した状態において該排気サイレンサが車幅方向外側へ移動することを規制するように前記排気サイレンサよりも車幅方向外側部分において前記当接部から前方へ延設された規制部と、を有することを特徴とする請求項8に記載の車両後部の衝突対応構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−166611(P2012−166611A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27396(P2011−27396)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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