説明

車両後部排水構造

【課題】排水路からトランク内への水漏れをより一層抑制することが可能な車両後部排水構造を得る。
【解決手段】トランク開口部5の前縁5aに沿う左右排水路8と側縁5bに沿う前後排水路9とを形成した車両後部排水構造において、左右排水路8の左右の端部8aに、当該左右排水路8に沿って流れる水Wを前後排水路9の前端部9aを跨ぐように跳ね上げさせてトランクリッド7と車体外板としてのリヤフェンダパネル6との間の隙間Gから車体外方に向かわせるジャンプ部12を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両後部排水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体後部に形成されたトランク開口部の前縁および側縁に沿って排水路を設け、この排水路に沿って水を流すことで、トランクルーム内に水が浸入するのを抑制するようにした構造が知られている(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−118504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来構造では、排水路内に許容範囲を超える大量の水が流れ込んだときには、トランクルーム内に水が漏れやすくなる虞があった。
【0004】
そこで、本発明は、排水路からトランクルーム内への水漏れをより一層抑制することが可能な車両後部排水構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にあっては、トランク開口部の前縁に沿う左右排水路と側縁に沿う前後排水路とを形成した車両後部排水構造において、左右排水路の左右端部に、当該左右排水路に沿って流れる水を前後排水路の前端部を跨ぐように跳ね上げて車体外方に向かわせるジャンプ部を設けたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ジャンプ部で跳ね上げた水を前後排水路の前端部を跨がせて車体外方に排出することができるため、左右排水路から前後排水路に流れ込む水の流量を減らして、前後排水路からトランク内への水漏れをより一層抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本実施形態にかかる車両後部排水構造を備える車両の後部を示す斜視図、図2は、図1からトランクリッドを取り除いた状態を示す図、図3は、トランク開口部の前縁と左側縁とがつながる隅部を拡大して示す斜視図、図4は、図1のIV−IV断面図、図5は、図1のV−V断面図、図6は、図2のVI方向から見た斜視図、図7は、前縁部材の左端部の拡大図、図8は、図7のVIII−VIII断面図、図9は、図2のIX−IX断面図である。なお、各図中、UPは車両上方、FRは車両前方、RHは左右方向右舷側を示す。
【0008】
図2に示すように、車両としての自動車1の車体後部には、上方に開放されたトランクルームTが形成されている。トランクルームTは、リヤウインドウパネル2およびリヤフェンダ3と車体後端部で左右方向に沿って延設される後端部材4との間に配置されている。そして、トランクルームTの開口部としてのトランク開口部5は、図1に示すように、車体に回動可能に取り付けられたトランクリッド7によって、開閉可能に塞がれるようになっている。
【0009】
また、トランク開口部5の周縁部には、トランクルームT内に水Wが浸入するのを抑制するため、凹溝として排水路が形成されている。排水路は、トランク開口部5の前縁5aに沿って伸びる左右排水路8と、トランク開口部5の側縁5bに沿って伸びる前後排水路9とを含んでいる。なお、図2では左舷側の構成のみを示し、右舷側の構成は省略してある。実際には、前後排水路9その他の構造は、トランク開口部5の左右一対の側縁5bに沿って、一対形成されている。
【0010】
左右排水路8には、その左右中間部から左右の端部8aに向けて比較的緩やかな下り勾配が設定されており、前後排水路9には、その前端部9aから後側に向けて比較的緩やかな下り勾配が設定されている。そして、左右排水路8の端部8aより前後排水路9の前端部9aを僅かに下に配置してある。したがって、本実施形態では、図2に示すように、左右排水路8に入った水Wは、左右の端部8aに向けて流れ、当該左右の端部8aから前後排水路9の前端部9aに導入され、当該前後排水路9を後方に向けて流れて当該前後排水路9の後端部から排出される。
【0011】
前後排水路9は、図4に示すように、トランク開口部5の側縁5bに沿って車両前後方向に伸びる側縁部材13上に形成されている。本実施形態では、側縁部材13の上面は略U字状の断面を有しており、この側縁部材13を上方から覆うように、シール部材としてのウエザーストリップ11が取り付けられている。ウエザーストリップ11は、エラストマ等の弾性部材によって形成されており、二つの基部11b,11c間に形成される凹部11dを側縁部材13とトランクルーム内壁部材14との上端部に上方から被せるようにして取り付けられている。車幅方向外側(図4では左側)の基部11cは、側縁部材13の断面に沿う略U字状の断面を有しており、本実施形態では、この基部11cによって凹溝としての前後排水路9が形成されている。
【0012】
基部11b,11cの上部には、断面略C字状のシール部11aが設けられている。このシール部11aは、断面略円形の中空状や直線のリップ形状としてもよい。トランクリッド7が閉じられた際には、シール部11aがトランクリッド7によって上方から押さえつけられ、トランクリッド7の下面に密着して、シールが確保される。
【0013】
左右排水路8は、図5に示すように、トランク開口部5の前縁5aに沿って車両左右方向に伸びる前縁部材15上に形成されている。前縁部材15は、左右一対の側縁部材13の前端部間で架設されている。前縁部材15の後縁部は上方に向けて屈曲されて略断面U字状に形成されており、この後縁部を上方から覆うように、シール部材としてのウエザーストリップ10が取り付けられている。ウエザーストリップ10は、エラストマ等の弾性部材によって形成されており、基部10bに形成される凹部10cを前縁部材15の後縁部に上方から被せるようにして取り付けられている。本実施形態では、前縁部材15の後縁部とウエザーストリップ10の基部10bとによって、左右排水路8が形成されている。
【0014】
基部10bの上部には、断面略O字状のシール部10aが設けられる。トランクリッド7が閉じられた際には、シール部10aがトランクリッド7によって上方から押さえつけられ、トランクリッド7の下面に密着して、シールが確保される。なお、前縁部材15の前縁部上には、リヤウインドウパネル2が載置されている。
【0015】
上記構成によって、図2に示す水Wの流れが形成されるのであるが、排水路8,9内に許容範囲を超える大量の水Wが流れ込んだときには、排水路8,9内で水圧が高くなり、ウエザーストリップ10,11のシール部10a,11aがトランク開口部5の中央側に押されて変形し、排水路8,9からトランクルームT内へ水漏れが生じる虞がある。発明者らの研究により、特に図3のAの領域で、水圧が高くなりやすいことが判明した。
【0016】
そこで、本実施形態では、図6〜図9に示すように、左右排水路8の下流側の端部となる左右の端部8aに、左右排水路8に沿って流れる水Wを前後排水路9の前端部9aを跨ぐように跳ね上げさせてトランクリッド7と車体外板(本実施形態ではリヤフェンダパネル6)との間の隙間G(図1,図9参照)に向かわせるジャンプ部12を設けてある。すなわち、図9に示すように、左右排水路8を流れる水Wの勢い(動圧、運動エネルギ)を利用してジャンプ部12で水Wを跳ね上げ、前後排水路9の前端部9aの上方を飛ばして、前端部9aに対して左右排水路8の端部8aの反対側に位置する隙間Gから車体外方に排出し、左右排水路8から前後排水路9に水Wが流れるのを抑制するようにしたものである。
【0017】
ジャンプ部12は、本実施形態では、ウエザーストリップ10の一部として設けられており、具体的には、左右の端部10dから前方に向けて突出させてある。そして、その上面12aを、水Wを跳ね上げさせるための傾斜面としてある。左右排水路8の底面に対する上面12aの傾斜角度は、想定される流量や、隙間Gとの相対的な位置関係に応じて、適切な値に設定される。
【0018】
また、左右排水路8の左右の端部8aでは、凹溝の底面となる前縁部材15の後縁部の上面15aと、ジャンプ部12の下面12bとの間に、間隙16を形成し、この間隙16を介して左右排水路8から前後排水路9の前端部9aに水Wが流れるようにしてある。すなわち、本実施形態ではこの間隙16がバイパス路に相当する。したがって、流量が比較的少ないときには、水Wは、左右排水路8から間隙16を介して前後排水路9の前端部9aに導入され、前後排水路9を後方に流れて排出される。
【0019】
以上、説明したように、本実施形態では、左右排水路8の左右の端部8aに、当該左右排水路8に沿って流れる水Wを前後排水路9の前端部9aを跨ぐように跳ね上げさせてトランクリッド7と車体外板としてのリヤフェンダパネル6との間の隙間Gから車体外方に向かわせるジャンプ部12を設けた。すなわち、ジャンプ部12で跳ね上げた水Wを、前後排水路9の前端部9aを跨がせて隙間Gから車体外方に排出することができるため、左右排水路8から前後排水路9に流れ込む水Wの流量を減らして、前後排水路9からトランクルームT内への水漏れをより一層抑制することができる。かかる構成は、大雨等で左右排水路8に大量の水が流れ込んだ場合や、洗車時等に左右排水路8に勢いよく水が流れ込んだ場合等に特に有効となる。
【0020】
また、本実施形態では、ジャンプ部12の下に、左右排水路8から前後排水路9の前端部9aに水Wを流すバイパス路として間隙16を形成した。このため、水Wの流量が比較的少なくジャンプ部12で跳ね上がらない状態でも、左右排水路8に流れ込んだ水Wを、間隙16を介して前後排水路9に導入し、前後排水路9に沿って後方へ排出することができる。
【0021】
また、本実施形態では、ジャンプ部12を、前縁部材15に取り付けられるシール部材としてのウエザーストリップ10に設けた。よって、ウエザーストリップ10を前縁部材15の所定位置に取り付けることにより、ジャンプ部12を所定位置に比較的容易に配置することができる。特に、バイパス路を設ける場合には、ウエザーストリップ10に左右排水路8の底面から離間させた位置にジャンプ部12を設けるだけで間隙16を確保して、バイパス路を得ることができる。すなわち、かかる構成によれば、ジャンプ部12およびバイパス路としての間隙16を、比較的簡素な構成として比較的容易に得ることができる。
【0022】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。上記実施形態では本発明を固定ルーフの自動車に適用した場合を例示したが、コンバーチブル車等の可動ルーフを有する車両にも、本発明を同様に適用することができる。また、左右排水路や、前後排水路、前縁部材、側縁部材等のスペックは、上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。
【0023】
また、ジャンプ部の形状その他のスペックも上記実施形態には限定されない。また、ジャンプ部を前縁部材を突設することで設けてもよいし、前縁部材およびシール部材とは別の部品を前縁部材あるいはシール部材に取り付けて構成してもよい。また、バイパス路も、ジャンプ部に設けた孔によって形成するなど、種々に変形可能である。また、ジャンプ部で跳ね上げた水が隙間G以外から車体外方に排出されるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態にかかる車両後部排水構造を備える車両の後部を示す斜視図である。
【図2】図1からトランクリッドを取り除いた状態を示す図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる車両後部排水構造を備える車両のトランク開口部の前縁と左側縁とがつながる隅部を拡大して示す斜視図である。
【図4】図1のIV−IV断面図である。
【図5】図1のV−V断面図である。
【図6】本発明の実施形態にかかる車両後部排水構造を備える車両を図2のVI方向から見た斜視図である。
【図7】本発明の実施形態にかかる車両後部排水構造においてジャンプ部を設けた部分の拡大図である。
【図8】図7のVIII−VIII断面図である。
【図9】図2のIX−IX断面図である。
【符号の説明】
【0025】
T トランクルーム
W 水
1 自動車(車両)
5 トランク開口部
5a 前縁
5b 側縁(左右両側縁)
6 リヤフェンダパネル(車体外板)
7 トランクリッド
8 左右排水路
8a 左右の端部
9 前後排水路
9a 前端部
10,11 ウエザーストリップ(シール部材)
12 ジャンプ部
12a 上面
13 側縁部材
15 前縁部材
15a 上面
16 間隙(バイパス路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体後部に形成されたトランク開口部の左右両側縁に沿って車両前後方向に伸びる一対の側縁部材と、前記トランク開口部の前縁に沿って前記一対の側縁部材間を結ぶ前縁部材と、前記トランク開口部を開閉可能に塞ぐトランクリッドと、を備え、前記前縁部材上にその延伸方向に沿って伸びる凹溝としての左右排水路が形成されるとともに、前記側縁部材上にその延伸方向に沿って伸びる凹溝としての前後排水路が形成され、前記左右排水路に入った水がその左右端部に向けて流れ、当該左右端部から前記前後排水路の前端部に導入され、当該前後排水路を後方に向けて流れるように構成された車両後部排水構造において、
前記左右排水路の左右端部に、当該左右排水路に沿って流れる水を前記前後排水路の前端部を跨ぐように跳ね上げさせて車体外方に向かわせるジャンプ部を設けたことを特徴とする車両後部排水構造。
【請求項2】
前記ジャンプ部の下に、前記左右排水路から前記前後排水路の前端部に水を流すバイパス路を形成したことを特徴とする請求項1に記載の車両後部排水構造。
【請求項3】
前記ジャンプ部を、前記前縁部材に取り付けられるシール部材に設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両後部排水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−125940(P2010−125940A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301369(P2008−301369)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(000196107)西川ゴム工業株式会社 (454)
【Fターム(参考)】