説明

車両後部構造

【課題】自車のバンパレインフォース上端に相手車のバンパレインフォースが干渉する衝突の場合に、リアサイドメンバの後端下部やバンパステイ下部の強度を低強度にすることなく、これらリアサイドメンバやバンパステイ下部も上部とほぼ同等に圧壊させつつ、自車のバンパレインフォースの全面に相手車のバンパレインフォースが衝突する場合に、リアサイドメンバやバンパステイが受け持つエネルギ吸収量の低下を抑制する。
【解決手段】リアサイドメンバ1の後端にバンパステイ5を介してバンパレインフォースを取り付ける。リアサイドメンバ1の上方のクロスメンバ11に牽引フック13の上端部をボルト17により回転可能に連結し、リアサイドメンバ1の下面1cに牽引フック13の下端部を連結固定する。牽引フック13は、上下方向でリアサイドメンバ1に対応する部位において、上部が下部よりも車両後方となるよう傾斜している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車幅方向両側にて車両前後方向に延設される一対のリアサイドメンバの後部に車幅方向に延設されるバンパレインフォースを備えた車両後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自車のバンパレインフォースの上端に相手車のバンパレインフォースが干渉してくる衝突の場合、下記特許文献1に示す車両の後部車体構造では、リアサイドメンバ後端とバンパレインフォースとの間に設けてあるクラッシュボックスやリアサイドメンバの後端下部に設定してある低強度部を圧壊する構造となっている。
【特許文献1】特開2007−131040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記した従来構造では、バンパレインフォースの上端に入力された衝突荷重は、主にクラッシュボックスの上面に伝達され、クラッシュボックスの下面に伝達される荷重は上面と比較してはるかに低く、クラッシュボックスの下面を上面相当に圧壊させるには、上面より下面の座屈強度を大幅に下げる設計が必要である。
【0004】
そうした場合、自車のバンパレインフォースの全面に相手車のバンパレインフォースが衝突してくる全面衝突の際には、クラッシュボックスの上面と下面の強度が同じ場合の仕様と比較して、クラッシュボックスで受け持つエネルギ吸収量は低くなる問題がある。
【0005】
同様に、自車のバンパレインフォースの上端に相手車のバンパレインフォースが干渉してくる衝突の場合に、リアサイドメンバ後端下部に設定されている低強度部も、少ない衝突荷重で圧壊させるには、相当の低強度にする必要があり、したがって上記した全面衝突の場合にはリアサイドメンバが受け持つエネルギ吸収量がクラッシュボックスと同様に低くなる。
【0006】
そこで、本発明は、自車のバンパレインフォースの上端に相手車のバンパレインフォースが干渉する衝突の場合に、リアサイドメンバの後端下部やバンパステイの下部の強度を低強度にすることなく、これらリアサイドメンバやバンパステイの下部も上部とほぼ同等に圧壊させつつ、自車のバンパレインフォースの全面に相手車のバンパレインフォースが衝突する場合に、リアサイドメンバやバンパステイが受け持つエネルギ吸収量の低下を抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、バンパステイの上方に位置するクロスメンバとリアサイドメンバの下端とを連結する牽引フックを備え、この牽引フックは、上下方向でリアサイドメンバに対応する部位が、リアサイドメンバとバンパレインフォースとの間に位置するとともに、リアサイドメンバの上端部に対応する部位が下端部に対応する部位よりも車両後方に位置し、かつ、リアサイドメンバ後方の下端部の車両前後方向に対する座屈強度をA、クロスメンバの車両前後方向に対する座屈強度をB、クロスメンバの牽引フック取付部からバンパステイ上面までの車両上下方向距離をC、バンパステイ上面からリアサイドメンバ下面までの車両上下方向距離をDとすると、A<(C/D)×Bの関係が成り立つことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、自車のバンパレインフォースの上端に相手車のバンパレインフォースが干渉する衝突の場合、バンパレインフォースの下端より上端に大きな衝突荷重が入力され、バンパレインフォース上端を圧壊させ、これに続いてバンパステイの上端が圧壊する。その後、このバンパステイが圧壊する過程で、自車のバンパレインフォースは牽引フックのリアサイドメンバに対応する位置の上部に干渉して衝突荷重が伝達され、これに伴いクロスメンバの牽引フック取付部とリアサイドメンバ下端の牽引フック取付部に衝突荷重が伝達される。
【0009】
このとき、バンパステイ上面はまだ潰れきっておらず、リアサイドメンバ上面にはバンパステイ上面の座屈強度の反力以下しか伝達されないことや、牽引フックで衝突荷重を分散することによって、リアサイドメンバ上面より下面のほうに大きな衝突荷重が伝達される。よってリアサイドメンバには上に凸となるよう折り曲がるモーメントが発生する。
【0010】
したがって、この場合、リアサイドメンバの後端下部やバンパステイの下部の強度を低強度にすることなく、これらリアサイドメンバやバンパステイの下部も上部とほぼ同程度に圧壊させることができる。
【0011】
一方、自車のバンパレインフォースの全面に相手車両のバンパレインフォースが干渉して衝突する場合には、リアサイドメンバの後端下部やバンパステイの下部の強度を上部と同等にできるので、下部を上部に対して低強度にする場合に比較して、リアサイドメンバやバンパステイが受け持つエネルギ吸収量の低下を抑制することができ、リアサイドメンバやバンパステイの変形モードを安定的な軸圧壊モードにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0013】
図1は、本発明の第1の実施形態を示す車両後部構造の斜視図である。なお、図中のFRで示す方向が車両前方、UPで示す方向が車両上方、LHで示す方向が車両左方である。また、図1では、車両左側端部付近のみ示しているが、車両右側端部付近についても、図1と同様な構造としている。
【0014】
図1に示すように、本車両は、車幅方向両端に車両前後方向に延設される一対のリアサイドメンバ1を備えるとともに、このリアサイドメンバ1の車両後方にて車幅方向に延設されるバンパレインフォース3を備えている。リアサイドメンバ1の車両後端とバンパレインフォース3の車幅方向両端部付近との間には、バンパステイ5を設けている。リアサイドメンバ1とバンパステイ5とは、外向きのフランジ1a,5a相互を接合してリアエンドパネル7の下部を間に挟んで固定し、バンパステイ5とバンパレインフォース3とは、バンパステイ5の外向きのフランジ5bをバンパレインフォース3の前面3aに接合して固定する。
【0015】
ここでリアサイドメンバ1及びバンパステイ5は、互いに同等のほぼ正方形の閉断面形状としている。また、バンパレインフォース3は、縦長の四角形状の閉断面形状とし、図2に示すように、リアサイドメンバ1及びバンパステイ5に対し上下方向長さをやや長くしている。すなわち、バンパレインフォース3の上面3bは、リアサイドメンバ1及びバンパステイ5のそれぞれの上面1b及び上面5cよりも上方に位置し、バンパレインフォース3の下面3cは、リアサイドメンバ1及びバンパステイ5のそれぞれの下面1c及び下面5dよりも下方に位置している。
【0016】
なお、ここでの上記したリアサイドメンバ1の下面1cは、後述する図8におけるフロア部としてのフロアパネル25の車幅方向両端部で構成している。
【0017】
上記したバンパレインフォース3の後面3dには、上下方向下部側で、リアサイドメンバ1及びバンパステイ5のそれぞれの下面1c及び下面5dよりもやや上方位置に、内側(車両前方側)に向けて突出する脆弱部としての後面突起3eを、車幅方向に沿ってバンパレインフォース3の全長にわたり設けている。後面突起3eは、後面3dの壁部を、内側に向けて屈曲させて形成したもので、これにより後面3dの表面側にはスリット状の凹部3fが形成されることになる。
【0018】
前記したリアエンドパネル7は、リアサイドメンバ1,バンパステイ5相互間から上方に向けて延設される下部縦壁部7aと、下部縦壁部7aの上端から車両後方の斜め上方に向けて延びる傾斜壁部7bと、傾斜壁部7bの上端から下部縦壁部7aと平行に上方に向けて延設される上部縦壁部7cと、をそれぞれ備えている。
【0019】
そして、リアエンドパネル7の車両前方側に、上記した傾斜壁部7bを覆うようにしてクロスメンバ構成体9を取り付けてある。すなわち、このクロスメンバ構成体9は、下部縦壁部7aの上端からそのまま上方に向けて延設される縦壁部9aを有してこの縦壁部9aをリアエンドパネル7の下部縦壁部7aの上端に接合し、縦壁部9aの上端から車両後方に延設される横壁部9bを有してこの横壁部9bの後端のフランジ9cをリアエンドパネル7の上部縦壁部7cに接合している。
【0020】
したがって、ここでは、クロスメンバ構成体9と該クロスメンバ構成体9が接合される部分のリアエンドパネル7とで閉断面を形成し、これら閉断面を形成する部材相互でクロスメンバ11を構成している。
【0021】
そして、このクロスメンバ11を構成するリアエンドパネル7の上部縦壁部7cの下部に、牽引フック13の上部を取り付け、牽引フック13の下部は、リアサイドメンバ1の下端である下面1cに取り付けている。
【0022】
牽引フック13は、バンパステイ5の車幅方向両側に位置して互いに平行な状態で上下方向に延設される上部アーム13aを有し、この各上部アーム13aの上端を、取付具15を介してリアエンドパネル7(クロスメンバ11)に取り付けている。取付具15は、リアエンドパネル7の上部縦壁部7c及び傾斜壁部7bにそれぞれ取り付けた長方形状の取付板部15a及び15bと、各上部アーム13aの上端相互間に位置する円筒部15cとを有し、上部アーム13aの上端に形成した貫通孔13b及び円筒部15c内に連結ボルト17を挿入し、該連結ボルト17の先端にナット19を締結する。
【0023】
これにより牽引フック13は、クロスメンバ11に対し、車幅方向に延びる連結軸となる連結ボルト17を中心として回転可能に連結することになる。
【0024】
上記した牽引フック13の各上部アーム13aの下端相互は、車幅方向に延びる下端接続部13cによって互いに接続して車両前後方向から見てほぼU字形状としている。この下端接続部13cの車幅方向中央の下面には、車幅方向から見てほぼU字形状となるフック本体を構成する一対の下部アーム13dのうちの車両後方側に位置する一方の上端が接続している。これら一対の下部アーム13dの下端相互は、車両前後方向に延びるフック本体接続部13eによって互いに接続している。
【0025】
そして、一対の下部アーム13dのうち車両前方側に位置する他方の上端を、リアサイドメンバ1の下面1cの車幅方向中央に、取付板21を介し図示しないボルトなどの締結具を利用して取り付けている。このリアサイドメンバ1の下面1cにおける下部アーム13dの取付部位よりも車両前方側近傍には、車両上方に凸となる脆弱部としての下面突起23を形成している。
【0026】
また、図2に示すように、牽引フック13の一対の上部アーム13aは、車幅方向から見て上部が下部に比べて車両後方に位置するよう傾斜している。より詳細には、一対の上部アーム13aは、バンパステイ5の上方位置で、リアエンドパネル7の下部縦壁部7aとほぼ平行に上下方向に延びる上部13a1と、上部13a1の下端から車両前方に向けて僅かに屈曲して傾斜する傾斜部13a2と、をそれぞれ備えている。傾斜部13a2の下端は、リアサイドメンバ1の下面1cよりやや上方に位置し、該下端から下部アーム13dとほぼ平行に下方に延びる下部13a3を形成して下端接続部13cの端部に連続している。
【0027】
すなわち、牽引フック13は、上下方向でリアサイドメンバ1に対応する部位である傾斜部13a2が、リアサイドメンバ1とバンパレインフォース3との間に位置するとともに、リアサイドメンバ1の上端部に対応する部位が下端部に対応する部位よりも車両後方に位置していることになる。換言すると、車両前後方向において、リアサイドメンバ1の上部の後端部から牽引フック13までの距離が、リアサイドメンバ1の下部の後端部から牽引フック13までの距離より長いことになる。
【0028】
図8(a)に示すように、フロアパネル25は、リアサイドメンバ1の下面1cを構成する部位から車幅方向内側で上方に向けて屈曲して突出する凸部25aと、該凸部25aの内側端部から下方内側に向けてやや傾斜する側壁部25bと、左右の側壁部25b相互を接続するフロア本体部25cと、をそれぞれ備えている。
【0029】
そして、フロア本体部25cの下面には、左右一対のリアサイドメンバ相互間に位置して車幅方向に延設される下部クロスメンバ27を取り付けている。ここでのフロアパネル25は、上記した凸部25a及び側壁部25bを設けることで、リアサイドメンバ1と下部クロスメンバ27の車幅方向端部27aとを連結する長さが、リアサイドメンバと1と下部クロスメンバ27の車幅方向端部27aとを結ぶ直線Pの長さよりも長く設定していることになる。
【0030】
また、上記下部クロスメンバ27を設けた部位のフロアパネル25上には、図9にも示すように、スペアタイヤ29を取り付けている。このスペアタイヤ29のホイール31の上面部はバンパレインフォース3の下端部である下面3cよりも下方に位置している。なお、図9では、リアエンドパネル7を省略している。
【0031】
次に、車両前後方向から荷重を受けたときの各部材の座屈強度について説明する。まず、リアサイドメンバ1は、その上面1bと下面1c(フロアパネル25の一部に相当)とが同等で、バンパステイ5も、その上面5cと下面5dとが同等であり、さらに、バンパレインフォース3についても、その上面3bと下面3cとが同等である。また、これらリアサイドメンバ1,バンパステイ5及びバンパレインフォース3の座屈強度は、後方のバンパレインフォース3が最も低く、前方のリアサイドメンバ1が最も高くなるよう設定している。すなわち、これら3つの部材は、車両後方から前方に向けて強度を順次高くしている。
【0032】
また、リアサイドメンバ1後方の下端部(下面1c)の座屈強度をA、クロスメンバ11の座屈強度をB、クロスメンバ11の牽引フック13の取付部からバンパステイ5の上面5cまでの車両上下方向距離をC、バンパステイ5の上面5cからリアサイドメンバ1の下面1cまでの車両上下方向距離をDとすると、A<(C/D)×Bの関係が成り立つ。
【0033】
すなわちC=Dであれば、クロスメンバ11の座屈強度Bは、リアサイドメンバ1後方の下端部(下面1c)の座屈強度Aよりも高くなる。なお、ここでは、C>Dとしてあるが、その差はそれほど大きくないので、B>Aとしている。
【0034】
次に、作用効果について説明する。図2に示すように、自車のバンパレインフォース3の上部に相手車のバンパレインフォース30が干渉してくる衝突の場合、バンパレインフォース3の上面3bに下面3cより大きな衝突荷重が入力される。なお、図2中の符号10及び50は、相手車のリアサイドメンバ及びバンパステイである。
【0035】
このとき、バンパレインフォース3の後面3dに車両前方側に向けて突出する後面突起3eを設けているので、後面突起3eの形成部分が脆弱部の役割を担い、下面3cが上面3bより低い荷重を受けても、図3に示すように、後面突起3e部分から容易に変形し、バンパレインフォース3の上面3bの後端から後面突起3eまでのバンパレインフォース3の後面3dを、ほぼ上下鉛直方向の面を維持したまま押し込むことができる。
【0036】
その結果、相手車両の自車両に対する斜め上方へ向かう荷重の発生を抑制できるため、相手車両の自車両への乗り上げを抑制できる。
【0037】
なお、上記した後面突起3eを設定していない場合には、バンパレインフォース3の上面3bは容易に圧壊するものの下面3cが圧壊しにくいため、バンパレインフォース3の後面3dが斜め面を形成するように変形してしまい、相手車両が自車両に乗り上げる恐れがある。
【0038】
図3の状態から衝突がさらに進行すると、バンパステイ5が圧壊し、この圧壊中に、図4に示すように、バンパレインフォース3の上部が牽引フック13の傾斜部13a2の上部に干渉し、該干渉部位から牽引フック13に衝突荷重が伝達される。この際、バンパステイ5の上方のクロスメンバ11における牽引フック13の取付部と、リアサイドメンバ1の下面1cの牽引フック5の取付部に衝突荷重が伝達される。
【0039】
このとき、バンパステイ5の上面5cはまだ潰れきっておらず、リアサイドメンバ1の上面1bにはバンパステイ5の上面5cの座屈強度の反力以下しか伝達されないことや、牽引フック13で衝突荷重を分散していることによって、リアサイドメンバ1の上面1bよりも下面1cのほうに大きな衝突荷重が伝達される。よってリアサイドメンバ1には、図5のE部に示すように、上に凸となるように折り曲がるモーメントが発生する。
【0040】
また、本実施形態では、クロスメンバ11の座屈強度Bを、リアサイドメンバ1後方の下端部(下面1c)の座屈強度Aよりも高くしているので、先にリアサイドメンバ1の下面1cが座屈を開始し、前記したリアサイドメンバ1の図5に示した上に凸となるように折り曲がる挙動が助長され、図6のようにさらに大きく折れ曲がる。
【0041】
このとき、リアサイドメンバ1の上面1bの後端部と下面1cの後端部とをつなぐ面の面直方向が前方の斜め上方を向いていることや、リアサイドメンバ1の上面1b及び下面1cが後方より前方が上方となるよう傾斜していることにより、リアサイドメンバ1の前記した上に凸なる上折れの屈曲部分E(図5)を車両上方に押し上げることができる。
【0042】
また、本実施形態では、牽引フック13のクロスメンバ11に対する取付部を連結ボルト17によって回転できる構造としているので、上記取付部周りや取付部周辺の牽引フック13に折れ曲げを誘発するモーメントが減り、確実に牽引フック13からリアサイドメンバ1の下面1cに衝突荷重を伝達することができる。
【0043】
また、リアサイドメンバ1における牽引フック13の取付部の前方の下面1cに、車両上方に突出する下面突起23を設けることで、牽引フック13からリアサイドメンバ1に衝突荷重が伝達されたとき、下面突起23によってリアサイドメンバ1が上に凸なる上折れになる変形モードを誘発することができ、リアサイドメンバ1の上面1bより下面1cのほうから確実に座屈させることができる。
【0044】
また、リアサイドメンバ1の上記した上に凸となる折れ部が上方に移動していくときに、左右一対のリアサイドメンバ1相互を連結するフロアパネル25が張力を受ける。このとき、図8(a)に示すように、フロアパネル25は、下部クロスメンバ27とリアサイドメンバ1との間が、凸部25a及び側壁部25bを有することで長さに余長を持っているため、低い張力で引っ張られていく。
【0045】
そして、フロアパネル25は、図8(b),(c)に示すように、上記凸部25a及び側壁部25bを有する部分が延びきった際に高い張力を発生させて、リアサイドメンバ1の折れ部のさらなる上方への過剰な移動を抑制することで、リアサイドメンバ1の過剰な折れ曲がりを抑え、リアサイドメンバ1の前後方向の反力低下を抑制する。このため、リアサイドメンバ1の後端部は圧壊しやすくなる。
【0046】
さらに、上記フロアパネル25が張力を受けることで、左右一対のリアサイドメンバ1相互間の下部クロスメンバ27は、上方へ移動する荷重を受ける。このとき、衝突中にバンパレインフォース3が図9に示すスペアタイヤ29の上方に後方から移動してくるため、下部クロスメンバ27上のスペアタイヤ29の特にホイール31を介して、バンパレインフォース3に荷重を伝達させ、下部クロスメンバ27の上方への移動を抑制させる。これにより、フロアパネル25が延びきったときに、リアサイドメンバ1の折れ部の上方への過剰な移動をさらに抑制しやすくなる。
【0047】
以上により、衝突現象が進むにつれ、リアサイドメンバ1は、図7に示すように、後端部が圧壊しながら上折れの屈曲部分が相手車両のリアサイドメンバ10と上下方向でほぼ同等の高さ位置を確保するのと、牽引フック13で受圧面をつくり、相手車両の自車両への乗り上げを抑制する。その後、リアサイドメンバ1は圧壊していき、衝突エネルギを効率よく吸収する。
【0048】
本実施形態では、リアサイドメンバ1の上面1bと比較して下面1cの座屈強度を下げる必要がなく、これら上面1b及び下面1cを同程度の座屈強度とし、またバンパステイ5の上面5cと比較して下面5dの座屈強度を極度に下げる必要もなく、これら上面5c及び下面5dを同程度の座屈強度としている。
【0049】
このため、自車両のバンパレインフォース3の後面3dの全面に相手車両のバンパレインフォース30が衝突してくる場合には、バンパステイ5の上面5cと下面5dを同程度に潰すことができる。この結果、バンパステイ5の変形モードを安定的な軸圧壊モードにすることができるとともに、バンパステイ5の潰れ量に対するエネルギ吸収量割合も多くすることができる。
【0050】
図10(a)は、本発明の第2の実施形態を示す、前記図1に相当する車両後部構造の斜視図、図10(b)は(a)の要部を拡大した斜視図である。第2の実施形態では、牽引フック13のリアサイドメンバ1の下面1cに対する取付部の構造を第1の実施形態と異ならせている。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0051】
第2の実施形態では、リアサイドメンバ1の下面1cに取り付ける牽引フック13側の取付板21のボルト挿入孔21aを、車両前後方向に長い長穴とし、この長穴の車両前方側の端部に締結具としての締結ボルト33を挿入しナット35を締結してリアサイドメンバ1に固定する。
【0052】
このように、本実施形態では、牽引フック13は、ボルト挿入孔21aの車両前方側の端部に位置する締結ボルト33を介してリアサイドメンバ1に固定されているため、車両後方へ向かう衝突荷重が発生した場合には、車両との相対位置関係を維持することができる。
【0053】
一方、牽引フック13に車両前方へ向かう荷重が発生した場合には、締結ボルト33(リアサイドメンバ1)に対して長穴(牽引フック13)が車両前方へ相対移動する。この際、牽引フック13の取付板21は、リアサイドメンバ1の下面1cを若干上方に変形させながら下面1cに対して前方に動くとともに、リアサイドメンバ1の下面1cの後部(リアエンドパネル7)に牽引フック13が干渉するようになる。
【0054】
このため、リアサイドメンバ1の下面1cを大きく座屈させなくても、該下面1cに牽引フック13の荷重を伝達させることができる。
【0055】
なお、牽引フック13が、通常使用時の荷重レベルで、車両前方へ向かう荷重を受けた場合には、牽引フック13のクロスメンバ11に対する取付部において連結ボルト17を回転軸として、牽引フック13のリアサイドメンバ1に対する取付部を車両前方の斜め上方へ移動させる荷重に変換させる。このため、リアサイドメンバ1の下面1cが変形しない限り、牽引フック13がリアサイドメンバ1に対して前方へ動くことは抑制される。また、締結ボルト33の締め込みトルクでも牽引フック13の動きやすさをコントロールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す車両後部構造の斜視図である。
【図2】図1の車両後部構造において、相手車両のバンパレインフォースが自車両のバンパレインフォースの上部に向けて後方から衝突する状態を示す側面図である。
【図3】図2の状態から自車両のバンパレインフォースが潰れた状態を示す側面図である。
【図4】図3の状態から自車両のバンパレインフォースが牽引フックに干渉した状態を示す側面図である。
【図5】図4の状態から自車両のリアサイドメンバが上に凸となるよう屈曲変形し始めた状態を示す側面図である。
【図6】図5の状態から自車両のリアサイドメンバがさらに上に凸となるよう屈曲変形した状態を示す側面図である。
【図7】図6の状態から自車両のリアサイドメンバがさらに上に凸となるよう屈曲変形した状態を示す側面図である。
【図8】リアサイドメンバが上に凸となるよう屈曲変形する際に、フロアパネルに張力が発生する様子を(a),(b),(c)の順に説明した動作説明図である。
【図9】下部クロスメンバに対応するフロアパネル上にスペアタイヤを配置した状態を示す斜視図である。
【図10】本発明の第2の実施形態を示す、図1に相当する車両後部構造の斜視図である。
【符号の説明】
【0057】
1 リアサイドメンバ
1c リアサイドメンバの下面
3 バンパレインフォース
3d バンパレインフォースの後面(バンパレインフォースの車両後方側の部位)
3e 後面突起(脆弱部)
5 バンパステイ
5c バンパステイの上面
11 クロスメンバ
13 牽引フック
17 連結ボルト(連結軸)
21a ボルト挿入孔(長穴)
23 下面突起(脆弱部)
25 フロアパネル(フロア部)
27 下部クロスメンバ
29 スペアタイヤ
31 スペアタイヤのホイール
33 締結ボルト(締結具)
C クロスメンバの牽引フック取付部からバンパステイ上面までの車両上下方向距離
D バンパステイ上面からリアサイドメンバ下面までの車両上下方向距離
P リアサイドメンバと下部クロスメンバの車幅方向端部とを結ぶ直線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向両側において車両前後方向に延設される一対のリアサイドメンバと、このリアサイドメンバの車両後方にて車幅方向に延設されるバンパレインフォースと、このバンパレインフォースの両端部付近と前記リアサイドメンバの後端との間に設けたバンパステイと、このバンパステイの上方に位置して車幅方向に延設されるクロスメンバと、このクロスメンバと前記リアサイドメンバの下端とを連結する牽引フックと、をそれぞれ備え、
前記牽引フックは、上下方向で前記リアサイドメンバに対応する部位が、前記リアサイドメンバと前記バンパレインフォースとの間に位置するとともに、前記リアサイドメンバの上端部に対応する部位が下端部に対応する部位よりも車両後方に位置し、
かつ、前記リアサイドメンバ後方の下端部の車両前後方向に対する座屈強度をA、前記クロスメンバの車両前後方向に対する座屈強度をB、前記クロスメンバの前記牽引フック取付部から前記バンパステイ上面までの車両上下方向距離をC、前記バンパステイ上面から前記リアサイドメンバ下面までの車両上下方向距離をDとすると、A<(C/D)×Bの関係が成り立つことを特徴とする車両後部構造。
【請求項2】
前記左右一対のリアサイドメンバ相互を連結するフロア部に、前記左右一対のリアサイドメンバ相互間にて車幅方向に延設される下部クロスメンバを設け、前記フロア部の前記リアサイドメンバと前記下部クロスメンバの車幅方向端部とを連結する長さは、前記リアサイドメンバと前記下部クロスメンバの車幅方向端部とを結ぶ直線長さよりも長く設定したことを特徴とする請求項1に記載の車両後部構造。
【請求項3】
前記左右一対のリアサイドメンバ相互間に車幅方向に延設される下部クロスメンバを設け、この下部クロスメンバ上にスペアタイヤを配置し、このスペアタイヤのホイールの上面部は前記バンパレインフォースの下端部よりも下方に位置していることを特徴とする請求項1または2に記載の車両後部構造。
【請求項4】
前記牽引フックは、前記クロスメンバに対し車幅方向に延びる連結軸を中心として回転可能に連結してあることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の車両後部構造。
【請求項5】
前記バンパレインフォースの車両後方側の部位に脆弱部を設けたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の車両後部構造。
【請求項6】
前記リアサイドメンバ下端の前記牽引フックが連結される部位の牽引フック側に車両前後方向に長い長穴を設け、この長穴の車両前方側に締結具を挿入して前記牽引フックを前記リアサイドメンバ下端に連結することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の車両後部構造。
【請求項7】
前記リアサイドメンバ下端の前記牽引フックが連結される部位よりも車両前方位置に、他の部位よりも強度の低い脆弱部を設けたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の車両後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−116085(P2010−116085A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291683(P2008−291683)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】