説明

車両後部構造

【課題】リアサイドメンバよりも高い位置に荷重入力位置がある車両の後面衝突時にリアシートに衝撃が伝わるのを抑制することができる車両後部構造を得る。
【解決手段】車両10の後部10Aに車両前後方向に沿ってリアサイドメンバ12が配設されている。リアサイドメンバ12の上方には、リアフロアパネル20を介して車両前後方向に沿ってパイプ34が配設され、パイプ34の後端部34Aにはガセット30が配設されている。ガセット30の外壁部30Bの内側には、車両前方側に下り勾配となるように支点部材48が配設されており、支点部材48の角部48Cがパイプ34に接触している。リアサイドメンバ12より荷重入力位置が高い車両の後面衝突時に、ガセット30に作用した荷重が支点部材48を介してパイプ34に伝達され、支点部材48の角部48Cとパイプ34との接点を起点としてパイプ34が曲げ変形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、リアサイドメンバの上部にガセットを配設し、車両後方から車高の高い自動車が衝突してきたときに、ロッカリアでリアサイドメンバを側面視でZ字モード変形させる構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】発明協会公開技報、公技番号2009−501276号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記先行技術による場合、一例としてコンパクトカーのような車両後端からリアシートまでの距離が短い場合には、Z字モード変形によってリアシートに衝撃が伝わる可能性がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、リアサイドメンバよりも高い位置に荷重入力位置がある車両が車両後方から衝突した時(以下、「後面衝突時」という。)にリアシートに衝撃が伝わるのを抑制することができる車両後部構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係る車両後部構造は、車両後部の両サイドに車両前後方向に沿ってそれぞれ延在されるリアサイドメンバと、前記リアサイドメンバの車両前後方向後端部の車両上方側に設けられ、前記リアサイドメンバよりも高い位置に荷重入力位置がある車両との後面衝突時の荷重を受ける荷重受け部材と、前記リアサイドメンバの車両上方側にて前記荷重受け部材から車両前方側に車両前後方向に沿って配設され、後面衝突時に前記リアサイドメンバに荷重を伝達し、かつ曲げ変形が可能な曲げ変形部材と、一部が前記荷重受け部材に結合された状態で配置され、前記荷重受け部材に作用した荷重を前記曲げ変形部材に伝達すると共に、前記曲げ変形部材の曲げ変形の起点を与える曲げ変形起点付与部材と、を有するものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1記載の車両後部構造において、前記曲げ変形起点付与部材は、少なくとも前記曲げ変形部材の曲げ変形時に、当該曲げ変形部材の表面に接触する接触部を有するものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2記載の車両後部構造において、前記接触部は、前記曲げ変形起点付与部材に形成された角部であるものとする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の車両後部構造において、前記荷重受け部材は、車両幅方向に離間して配置された両側壁と、当該両側壁間に架け渡された補強部と、を有するものである。
【0010】
請求項5の発明は、請求項4に記載の車両後部構造において、車両側面視にて前記補強部と前記起点とを結んだ線上に沿って前記曲げ変形起点付与部材が配設されているものである。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の車両後部構造において、前記曲げ変形起点付与部材は、前記荷重受け部材の後端かつ上端と前記起点とを結んだ直線上に沿って配置され、又は前記直線よりも車両下方側に配置されているものである。
【0012】
請求項1記載の本発明によれば、リアサイドメンバの車両前後方向後端部の車両上方側に荷重受け部材が配設されると共に、リアサイドメンバの車両上方側にて荷重受け部材から車両前方側に車両前後方向に沿って曲げ変形部材が配設されており、リアサイドメンバよりも高い位置に荷重入力位置がある車両が後面衝突したときに荷重受け部材で荷重を受け、荷重受け部材から荷重が曲げ変形部材、リアサイドメンバに伝達される。その際、曲げ変形起点付与部材の一部が荷重受け部材に結合された状態で配置されており、荷重受け部材に作用した荷重は、曲げ変形起点付与部材が曲げ変形部材に接することで曲げ変形起点付与部材を介して曲げ変形部材に伝達される。そして、曲げ変形部材によって必要な反力を生じさせた後、曲げ変形起点付与部材と曲げ変形部材との接点が変形の起点となって曲げ変形部材が曲げ変形することで、衝撃を吸収することができる。そのため、従来技術のリアサイドメンバをZ字モード変形させる場合と比較して、曲げ変形部材の変形部をリアシートから車両後方側の離れた位置に設定できるので、リアシートに衝撃が伝わるのを抑制することができる。
【0013】
請求項2記載の本発明によれば、曲げ変形起点付与部材は、少なくとも曲げ変形部材の曲げ変形時に、曲げ変形部材の表面に接触する接触部を有しており、曲げ変形起点付与部材の接触部が変形の起点となって、狙い通りの位置で曲げ変形部材を曲げ変形させることができる。そのため、リアシートに衝撃が伝わるのをより確実に抑制することができる。
【0014】
請求項3記載の本発明によれば、曲げ変形起点付与部材に形成された角部が曲げ変形部材の表面に接触するため、角部が起点となり、曲げ変形部材が曲げ変形しやすい。
【0015】
請求項4記載の本発明によれば、荷重受け部材には、車両幅方向に離間して配置された両側壁間に補強部が架け渡されている。これによって、荷重受け部材の板厚を抑えつつ補強部で荷重受け部材を剛体化することができる。
【0016】
請求項5記載の本発明によれば、車両側面視にて補強部と、曲げ変形起点付与部材が曲げ変形部材の表面に接触する起点と、を結んだ線上に沿って曲げ変形起点付与部材が配設されており、後面衝突時に荷重受け部材に作用した荷重は、補強部、曲げ変形起点付与部材、曲げ変形部材へと効率的に伝達される。このため、より安価かつ簡素な構成で曲げ変形部材を曲げ変形させることができる。
【0017】
請求項6記載の本発明によれば、曲げ変形起点付与部材は、荷重受け部材の後端かつ上端と、曲げ変形起点付与部材が曲げ変形部材の表面に接触する起点とを結んだ直線上に沿って配置され、又は直線よりも車両下方側に配置されており、荷重受け部材に作用した荷重を曲げ変形起点付与部材を介して曲げ変形部材に伝達しやすくすることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係る車両後部構造は、リアサイドメンバよりも高い位置に荷重入力位置がある車両の後面衝突時にリアシートに衝撃が伝わるのを抑制することができるという優れた効果を有する。
【0019】
請求項2記載の本発明に係る車両後部構造は、リアサイドメンバよりも高い位置に荷重入力位置がある車両の後面衝突時にリアシートに衝撃が伝わるのをより確実に抑制することができるという優れた効果を有する。
【0020】
請求項3記載の本発明に係る車両後部構造は、曲げ変形部材が曲げ変形しやすく、狙い通りの位置で曲げ変形部材を曲げ変形させることができるという優れた効果を有する。
【0021】
請求項4記載の本発明に係る車両後部構造は、荷重受け部材の板厚を抑えつつ補強部で荷重受け部材を剛体化し、コストを削減することができるという優れた効果を有する。
【0022】
請求項5記載の本発明に係る車両後部構造は、後面衝突時により安価かつ簡素な構成で曲げ変形部材を曲げ変形させることができるという優れた効果を有する。
【0023】
請求項6記載の本発明に係る車両後部構造は、後面衝突時に荷重受け部材に作用した荷重を曲げ変形起点付与部材を介して曲げ変形部材に伝達しやすくすることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】一実施形態に係る車両後部構造を備えた車両の後部を示す側面図であって、車両の後部にリアサイドメンバよりも高い位置に荷重入力位置がある自動車が後面衝突する状態を示す図である。
【図2】図1に示す車両後部構造を車両前方側から見た斜視図である。
【図3】図1に示す車両後部構造を車両後方側から見た斜視図である。
【図4】図1に示す車両後部構造のリアサイドメンバ、パイプ及びガセットを車両幅方向に沿った断面にて示す縦断面図である。
【図5】図1に示す車両後部構造を示す側面図である。
【図6】図1に示す車両後部構造を示す平面図である。
【図7】図4に示す車両後部構造のリアサイドメンバ、パイプ及びガセットを拡大した縦断面図である。
【図8】(A)、(B)は、図1に示す車両後部構造における後面衝突時のパイプが変形する過程を示す側面図である。
【図9】図1に示す車両後部構造の後面衝突時の反力とストロークとの関係を示すグラフである。
【図10】比較例の車両後部構造における後面衝突時にパイプが変形した状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図1〜図9を用いて、本発明に係る車両後部構造の一実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印OUTは車両幅方向外側を示している。
【0026】
図1には、本実施形態に係る車両後部構造を備えた車両の後部が示されている。図2には、この車両後部構造が車両前方側から見た斜視図にて示されており、図3には、この車両後部構造が車両後方側から見た斜視図にて示されている。また、図4には、この車両後部構造が車両幅方向に沿った断面にて示されている。図1に示されるように、自動車の車両10の後部10Aには、車両下部における両サイドに車両前後方向に沿って延在するリアサイドメンバ12が配設されている。リアサイドメンバ12の車両前後方向後端部には、後面衝突時の衝撃を吸収するクラッシュボックス14が配設されている。車両10の両サイドのクラッシュボックス14の車両後方側には、車両幅方向に沿って延在するリアバンパーリインホースメント16が配設されている。リアバンパーリインホースメント16の車両後方側には、車両幅方向及び車両上下方向に沿ってリアバンパーカバー18が配設されている。リアバンパーカバー18は、図示しない取付部材によって、車両10の後端部に取り付けられている。
【0027】
図3及び図4に示されるように、リアサイドメンバ12の上部には、車両幅方向及び車両前後方向に沿ってリアフロアパネル20が配設されている。リアサイドメンバ12は、車両幅方向に沿った断面がハット型に形成されており、上部の幅方向両側にフランジ部12A、12Bが形成されている。リアサイドメンバ12は、幅方向両側のフランジ部12A、12Bがリアフロアパネル20の下面にスポット溶接等で接合されることにより、リアフロアパネル20とで閉断面を形成している。
【0028】
リアフロアパネル20には、両サイドのリアサイドメンバ12の間に車両下方側に窪んだ凹状部20Aが形成されている(図4参照)。凹状部20Aの上方側には、リアシート50を構成するシートクッション50Aが配設されている。
【0029】
リアフロアパネル20の車両幅方向両端部には、車両上方側に屈曲されたフランジ部20Bが形成されている。リアサイドメンバ12には、車両幅方向外側のフランジ部12Bの端部が車両上方側に屈曲された屈曲部12Cが形成されており、フランジ部20Bに屈曲部12Cが面接触状態で配置されている。車両10の両サイドのリアサイドメンバ12の車両幅方向外側には、ホイールハウス22が配設されている。リアサイドメンバ12の屈曲部12Cの車両幅方向外側には、ホイールハウス22の下端部22Aが面接触状態で配置されており、フランジ部20Bと屈曲部12Cと下端部22Aが溶接等により接合されている。
【0030】
図1〜図4に示されるように、リアサイドメンバ12の後端部の車両上方側におけるリアフロアパネル20の上部には、リアサイドメンバ12よりも高い位置に荷重入力位置がある自動車の後面衝突時の荷重を受ける荷重受け部材としてのガセット30が配設されている。ガセット30は、車両幅方向に沿った断面が上方に開口された略コ字状に形成されており、リアフロアパネル20の上面に面接触状態で配置された平面状の底面部30Aと、この底面部30Aの車両幅方向外側端部から車両上方側に屈曲された外壁部30Bと、底面部30Aの車両幅方向内側端部から車両上方側に屈曲された内壁部30Cと、を備えている。
【0031】
また、リアサイドメンバ12の車両上方側におけるリアフロアパネル20の上部には、後面衝突時にリアサイドメンバ12に荷重を伝達し、かつ曲げ変形が可能な曲げ変形部材としてのパイプ34が配設されている。パイプ34は、ガセット30から車両前方側に車両前後方向に沿って配設されている。パイプ34の後端部34Aは、ガセット30の底面部30Aの上面に接触している。パイプ34の前端部34Bとリアフロアパネル20との間には、ブラケット36が配設されている(図3参照)。
【0032】
ガセット30の底面部30Aの前端部は、底面部30Aの後端部よりも車両幅方向の長さが短く形成されており、底面部30Aの前端部における車両幅方向内側端部には、車両上方側に屈曲された屈曲部30Dが形成されている。屈曲部30Dは、パイプ34の周面と接触する位置に設けられており、パイプ34の後端部34Aが外壁部30Bと底面部30Aと屈曲部30Dに接触した状態で、パイプ34の後端部34Aがガセット30に溶接等により接合されている(図6及び図7参照)。
【0033】
図4、図5及び図7に示されるように、ガセット30の底面部30Aには、車両前後方向に離れた位置にボルト貫通孔31(図6参照)が形成されており、底面部30Aの車両上方側からボルト貫通孔31にボルト38が挿通されている。ボルト38は、底面部30Aのボルト貫通孔31と、リアフロアパネル20に形成されたボルト貫通孔と、リアサイドメンバ12に形成されたボルト貫通孔に挿通されており、ボルト38の下端部38Aがリアサイドメンバ12の下面に予め固着されたナット40に螺合されている。これによって、ガセット30がリアフロアパネル20を挟んでリアサイドメンバ12に締結固定されている。また、リアフロアパネル20の下面とリアサイドメンバ12の上面との間には、車両上下方向に沿ってボルト38が挿通される円筒状の筒部42が配設されている。また、両サイドのガセット30の車両幅方向内側には、リアシート50との間に車両上下方向に沿ってトリム52が配設されている(図4及び図7参照)。
【0034】
図2及び図3に示されるように、ガセット30の後端部には、車両上下方向に沿って外壁部30Bと内壁部30Cとに掛け渡された連結部32が設けられている。本実施形態では、リアサイドメンバ12よりも高い位置に荷重入力位置がある自動車が車両10に後面衝突したときの「荷重受け部材」が、ガセット30と連結部32とで構成されている。連結部32は、車両幅方向に沿った断面が略コ字状に形成されており、連結部32の外側端部32Aが外壁部30Bの車両幅方向外側に面接触状態で配置されると共に、内側端部32Bが内壁部30Cの車両幅方向内側に面接触状態で配置され、外側端部32Aと外壁部30B、内側端部32Bと内壁部30Cとがそれぞれ溶接等により接合されている。連結部32の後面部32Cは、上端部よりも下端部が車両前方側に傾斜している。
【0035】
図2、図3及び図6に示されるように、ガセット30の車両前後方向中間部には、外壁部30Bと内壁部30Cとの間に車両幅方向に沿って架け渡された2本の円筒状のパイプからなる補強部44、46が配設されている。補強部44、46は、車両上下方向の上方側と下方側に離間して配置されている。補強部44、46の車両幅方向の両端部は、外壁部30Bと内壁部30Cにそれぞれ溶接又は締結固定等により連結されている。
【0036】
図3に示されるように、ガセット30の後端部の下部側には、車両下方側に延びた下部側ガセット58が配設されている。下部側ガセット58は、車両幅方向両側に配置された側壁部58A、58Bを備えており、側壁部58A、58Bの下端部が溶接等により接合されて略V字状に形成されている。側壁部58A、58Bの上端部は、リアサイドメンバ12の車両幅方向の両側面に溶接等により接合されている。
【0037】
図2、図3及び図5に示されるように、ガセット30の外壁部30Bの車両幅方向の内側面には、車両側面視にて後端部48Aに対して前端部48Bが下り勾配となるように斜め方向に配置された曲げ変形起点付与部材としての支点部材48が設けられている。支点部材48は、車両幅方向に沿った断面が略L字状に形成されており、前端部48Bに形成された略直線状の角部48Cがパイプ34の周面に接触(又は近接)した状態で配置されている。支点部材48の車両幅方向外側の壁部48Dは、外壁部30Bに前後方向の2箇所でボルトとナット(図示省略)により締結固定されている。支点部材48は、リアサイドメンバ12よりも高い位置に荷重入力位置がある自動車の後面衝突時に、ガセット30に作用した荷重を角部48Cがパイプ34の周面と接触することによりにパイプ34に伝達すると共に、パイプ34の曲げ変形の起点を与えるものである。
また、支点部材48の壁部48Dを外壁部30Bに前後方向の2箇所でボルトとナット(図示省略)により締結固定することで、支点部材48の取り付け状態が安定化する。
【0038】
図2、図3、図5及び図6に示されるように、ブラケット36は、車両前後方向の後端部36Aが前端部36Bよりも車両幅方向の長さが短く形成されている。ブラケット36の後端部36Aと前端部36Bは、車両幅方向に沿った断面が上方に開口された略コ字状に形成されている。ブラケット36の後端部36Aの上方には、パイプ34の前端部34Bが挿入されており、後端部36Aの略コ字状の底面部及び車両幅方向両側の側面部が前端部34Bの周面に接触している。パイプ34の前端部34Bは、ブラケット36の後端部36Aに溶接等により接合されている。
【0039】
ブラケット36の前端部36Bは、リアフロアパネル20の上面に面接触状態で配置された底面部36Cを備えており、底面部36Cにボルト貫通孔37(図6参照)が形成されている。底面部36Cの車両上方側からボルト貫通孔37にボルト38が挿通されており、ボルト38は、リアフロアパネル20に形成されたボルト貫通孔と、リアサイドメンバ12に形成されたボルト貫通孔に挿通され、ボルト38の下端部38Aがリアサイドメンバ12の下面に予め固着されたナット40に螺合されている。これによって、ブラケット36がリアフロアパネル20を挟んでリアサイドメンバ12に締結固定されている。また、リアフロアパネル20の下面とリアサイドメンバ12の上面との間には、車両上下方向に沿ってボルト38が挿通される円筒状の筒部42が配設されている(図5参照)。
【0040】
パイプ34は、円筒状のパイプであり、後面衝突時の反力をコントロールするための機能を有している。本実施形態では、リアサイドメンバ12よりも高い位置に荷重入力位置がある自動車(例えば、車両10よりも車高の高い自動車)の後面衝突時に入力に対して必要な反力値をパイプ34の径、材質等によりコントロールしている。
【0041】
図5に示されるように、車両側面視にて車両上方側の補強部44の中心と、支点部材48の角部48Cがパイプ34の周面に接触又は近接した位置(リアサイドメンバ12よりも高い位置に荷重入力位置がある自動車の後面衝突時にパイプ34の曲げ変形の起点となる部分)と、を結んだ線54に沿って支点部材48が配設されている。これによって、リアサイドメンバ12よりも高い位置に荷重入力位置がある自動車の後面衝突時に、ガセット30に作用した荷重が補強部44、支点部材48、パイプ34へと効率的に伝達されるようになっている。
なお、本実施形態では、車両側面視にて支点部材48の下部付近が線54に沿って配置されているが、支点部材48の長手方向における中心線付近が線54に沿って配置されるようにしてもよい。
【0042】
また、支点部材48は、ガセット30(連結部32)の後端と上端が交わる部分32D(ガセット30への荷重作用位置に近い部分)と、支点部材48の角部48Cがパイプ34の周面に接触又は近接した位置(リアサイドメンバ12よりも高い位置に荷重入力位置がある自動車の後面衝突時にパイプ34の曲げ変形の起点となる部分)と、を結んだ直線56に沿って配置されている。これによって、リアサイドメンバ12よりも高い位置に荷重入力位置がある自動車の後面衝突時に、ガセット30に作用した荷重が支点部材48を介してパイプ34に伝達されやすくなる。
なお、本実施形態では、車両側面視にて支点部材48の下部が直線56に沿って配置されているが、支点部材48の長手方向における中心線付近が直線56に沿って配置されるようにしてもよい。
また、支点部材48をガセット30の後端と上端が交わる部分32D(ガセット30への荷重作用位置に近い部分)と、支点部材48の角部48Cがパイプ34の周面に接触又は近接した位置(後面衝突時にパイプ34の曲げ変形の起点となる部分)と、を結んだ上記直線56よりも車両下方側に配置してもよい。
【0043】
図1に示されるように、本実施形態の車両10は小型車であり、車両10の後部10Aにおけるパイプ34の車両上方側には、リアシート50のシートクッション50Aが配設されている。シートクッション50Aの後端部から車両上方側にシートバック50Bが配設されている。リアシート50には乗員が着座可能となっている。
【0044】
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0045】
図1に示されるように、リアサイドメンバ12よりも高い位置に荷重入力位置がある自動車60(例えば、車両10よりも車高の高い自動車)が車両10の後部10Aに衝突(後面衝突)すると、リアサイドメンバ12の車両上方に配置されたガセット30で荷重を受ける。そして、図8(A)中の矢印で示されるように、ガセット30から荷重がパイプ34に伝達されると共に、ガセット30の下方側の筒部42を介して荷重がリアサイドメンバ12に伝達される。さらに、パイプ34に伝達された荷重は、パイプ34の前端部34Bのブラケット36に伝達され、ブラケット36の下方側の筒部42を介してリアサイドメンバ12に伝達される。
【0046】
さらに、図8(A)に示されるように、支点部材48の角部48Cがパイプ34に接触することにより、ガセット30に作用した荷重が支点部材48を介してパイプ34に伝達される。そして、パイプ34によって必要な反力を生じさせた後、図8(B)に示されるように、支点部材48の角部48Cとパイプ34との接点が変形の起点となってパイプ34が折れ変形(曲げ変形)し、パイプ34と共にリアサイドメンバ12が折れ変形することで、衝撃を吸収することができる。
【0047】
これをより詳細に説明すると、ガセット30に支点部材48を設けることでガセット30に断面耐力差を設定し、支点部材48の角部48Cを支点として支点部材48が回転しながらエネルギーを吸収する。その際、支点部材48の直線状の角部48Cがパイプ34の周面に接触し、この接触部で応力集中を起し、パイプ34が曲げ変形するので、支点部材48の角部48Cでパイプ34の曲げ位置をコントロールすることができる。そのため、従来技術のリアサイドメンバを車両側面視でZ字モード変形させる場合と比較して、パイプ34及びリアサイドメンバ12の変形部をリアシート50(図1参照)から車両後方側の離れた位置に設定することができ、リアシート50に衝撃が伝わるのを抑制することができる。
【0048】
また、図9に示されるように、本実施形態のガセット30及び支点部材48を設けた構成では、後面衝突時に少ないストロークで、ストロークが大きい場合とほぼ同じだけのエネルギーを吸収することができる。
【0049】
一方、図10に示されるように、ガセット30に支点部材を設けない場合には、ガセット30によりパイプ34との断面耐力差を設けても、パイプ34の曲げ変形の位置をコントロールできず、狙い通りの位置でパイプ34を曲げ変形させることができない可能性がある。これに対して、本実施形態では、ガセット30に支点部材48を設け、支点部材48の角部48Cとパイプ34の周面とを接触させることで、狙い通りの位置でパイプ34を曲げ変形させることができる。
【0050】
さらに、本実施形態では、図2及び図3等に示されるように、ガセット30の外壁部30B、内壁部30Cに車両幅方向に沿って補強部44、46が架け渡されており、これによって、ガセット30の板厚を抑えつつ補強部44、46でガセット30を剛体化することができる。このため、ガセットの板厚を厚くする場合よりもコストを削減することができる。
【0051】
また、図5に示されるように、車両側面視にて車両上方側の補強部44の中心と、支点部材48の角部48Cがパイプ34の周面に接触又は近接した位置(リアサイドメンバ12よりも高い位置に荷重入力位置がある自動車60の後面衝突時にパイプ34の曲げ変形の起点となる部分)と、を結んだ線54に沿って支点部材48が配設されている。これによって、リアサイドメンバ12よりも高い位置に荷重入力位置がある自動車60の後面衝突時に、ガセット30に作用した荷重を補強部44、支点部材48、パイプ34へと効率的に伝達することができる。このため、より安価かつ簡素な構成でパイプ34を曲げ変形させることができる。
【0052】
また、支点部材48は、ガセット30(連結部32)の後端と上端が交わる部分32D(ガセット30への荷重作用位置に近い部分)と、支点部材48の角部48Cがパイプ34の周面に接触又は近接した位置(後面衝突時にパイプ34の曲げ変形の起点となる部分)と、を結んだほぼ直線56に沿って配置されている。これによって、リアサイドメンバ12よりも高い位置に荷重入力位置がある自動車60の後面衝突時に、ガセット30に作用した荷重が支点部材48を介してパイプ34に伝達されやすくなる。
【0053】
また、図4に示されるように、本実施形態の車両10の後部10Aのパイプ34、ガセット30及び支点部材48は、トリム52とホイールハウス22との間に納まるので、後面衝突時にリアシート50に伝わる衝撃を抑制するために車両10の後端部を後方に伸ばしたり、リアサイドメンバの後端部の位置を車両上方側にオフセットさせたりする必要がなく、車両10のパッケージに及ぼす影響が少ない。
【0054】
なお、ガセット30の形状は、リアサイドメンバ12よりも高い位置に荷重入力位置がある自動車の後面衝突時に荷重を受けることができる形状であれば、上記実施形態に限定されず、変更が可能である。例えば、車両側面視にて略三角形状、略四角形状としてもよく、ガセット30の上端の開口を塞ぐ形状としてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、支点部材48は、断面が略L字状であるが、これに限定されず、リアサイドメンバ12よりも高い位置に荷重入力位置がある自動車の後面衝突時に支点部材がパイプ34に接触して曲げ変形の起点をとりうる形状であれば、変更が可能である。例えば、矩形状の支点部材でもよい。
また、支点部材48の角部48Cはパイプ34に最初から接触していてもよいし、後から(後面衝突時に)支点部材48の角部48Cをパイプ34に接触させるようにしてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、支点部材48は、車両側面視にてガセット30の外壁部30Bの範囲内に配置されているが(図5参照)、支点部材の一部がガセット30に結合された状態で配置される構成でもよい。例えば、車両側面視にて支点部材の後端側がガセット30にオーバーラップされた状態で配置されてガセット30に結合され、支点部材の前端部がガセット30の前端縁よりも車両前方側に配置される構成でもよい。また、車両側面視にて支点部材48の角部48Cをガセット30の前端縁と合致する位置に配置してもよい。
【0057】
さらに、上記実施形態では、パイプ34は、円筒状であるが、これに限定されず、楕円状や多角形状のパイプ、矩形状の長尺部材などからなる曲げ変形部材でもよい。
【0058】
さらにまた、上記実施形態では、補強部44、46は、円筒状のパイプであるが、これに限定されず、多角形状のパイプ、矩形状部材などでもよい。
【符号の説明】
【0059】
10 車両
10A 後部
12 リアサイドメンバ
30 ガセット(荷重受け部材)
30B 外壁部(側壁)
30C 内壁部(側壁)
32 連結部(荷重受け部材)
32D 後端と上端が交わる部分(荷重受け部材の後端かつ上端)
34 パイプ(曲げ変形部材)
44 補強部
48 支点部材(曲げ変形起点付与部材)
48C 角部(接触部)
50 リアシート
54 線
56 直線
60 自動車(高い位置に荷重入力位置がある車両)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後部の両サイドに車両前後方向に沿ってそれぞれ延在されるリアサイドメンバと、
前記リアサイドメンバの車両前後方向後端部の車両上方側に設けられ、前記リアサイドメンバよりも高い位置に荷重入力位置がある車両との後面衝突時の荷重を受ける荷重受け部材と、
前記リアサイドメンバの車両上方側にて前記荷重受け部材から車両前方側に車両前後方向に沿って配設され、後面衝突時に前記リアサイドメンバに荷重を伝達し、かつ曲げ変形が可能な曲げ変形部材と、
一部が前記荷重受け部材に結合された状態で配置され、前記荷重受け部材に作用した荷重を前記曲げ変形部材に伝達すると共に、前記曲げ変形部材の曲げ変形の起点を与える曲げ変形起点付与部材と、
を有する車両後部構造。
【請求項2】
前記曲げ変形起点付与部材は、少なくとも前記曲げ変形部材の曲げ変形時に、当該曲げ変形部材の表面に接触する接触部を有する請求項1に記載の車両後部構造。
【請求項3】
前記接触部は、前記曲げ変形起点付与部材に形成された角部である請求項2に記載の車両後部構造。
【請求項4】
前記荷重受け部材は、車両幅方向に離間して配置された両側壁と、当該両側壁間に架け渡された補強部と、を有する請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の車両後部構造。
【請求項5】
車両側面視にて前記補強部と前記起点とを結んだ線上に沿って前記曲げ変形起点付与部材が配設されている請求項4に記載の車両後部構造。
【請求項6】
前記曲げ変形起点付与部材は、前記荷重受け部材の後端かつ上端と前記起点とを結んだ直線上に沿って配置され、又は前記直線よりも車両下方側に配置されている請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の車両後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−246009(P2011−246009A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121925(P2010−121925)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】