説明

車両後部構造

【課題】車両走行時にリアフロアサイドメンバに対してロアバックパネルの閉断面部が車両前後方向に変形することを抑制し、NV性能を向上する。
【解決手段】車両10の後部10Aにおけるリアフロアサイドメンバ14等の後方側に、車両上下方向に沿ってロアバックパネル18が配設されており、ロアバックパネル18等を挟んで車両後方側にバンパアーム22が接合されている。ロアバックパネル18の上部18Cにはロアバックリインフォース30が接合され、ロアバックパネル18との間で閉断面部31を構成している。バンパアーム22とロアバックパネル18の閉断面部31との間にはガセット50が架け渡されている。ガセット50の上部の取付部50D等には、車両後方側からの衝突時にバンパアーム22の変形に伴ってロアバックパネル18との連結を解除する切り欠き部52が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ロアバックパネルの車両前側にロアバックリインフォースメントが設けられており、リアフロアパネルの下側のガセットがロアバックリインフォースメントとリアフロアサイドメンバとを車両幅方向外方へ向かって傾斜方向に連結した構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−083840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では、リアフロアパネルの下側のガセットがロアバックリインフォースメントとリアフロアサイドメンバとを連結するものであり、ロアバックパネルの上部と車両前後方向の骨格部材との間の構造については提案されていない。例えば、リアフロアサイドメンバの後方側に配置されたバンパアームの車両上方側に、ロアバックパネルの上部とロアバックリインフォースとを接合して閉断面を形成した場合、車両走行時にリアフロアサイドメンバに対してロアバックパネルの閉断面が車両前後方向に弾性変形する可能性があり、改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、車両走行時にリアフロアサイドメンバに対してロアバックパネルの閉断面部が車両前後方向に弾性変形することを抑制し、NV(ノイズ・アンド・バイブレーション)性能を向上することができる車両後部構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係る車両後部構造は、車両後部に車両前後方向に沿って延在されるリアフロアサイドメンバの後端側に接合され、車両上下方向及び車両幅方向に沿って延在されるロアバックパネルと、前記リアフロアサイドメンバの後端側に前記ロアバックパネルを挟んで取り付けられるバンパアームと、前記ロアバックパネルの上部に接合され、前記ロアバックパネルとの間で閉断面部を形成するロアバックリインフォースと、前記バンパアームと前記ロアバックパネルの閉断面部との間に架け渡され、車両後方側からの衝突時に前記バンパアームの変形に伴って前記バンパアームと前記ロアバックパネルの閉断面部との連結状態を解除する解除部を備えた連結部材と、を有するものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1記載の車両後部構造において、前記連結部材と前記バンパアーム又は前記ロアバックパネルの閉断面部とが締結部で固定されており、前記解除部は、前記連結部材に設けられ、車両後方側からの衝突時に前記バンパアームの変形に伴って前記締結部が前記連結部材から外れるように形成された脆弱部であるものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1に記載の車両後部構造において、前記連結部材は、前記バンパアームに接合される第1連結部と、前記ロアバックパネルの閉断面部に接合される第2連結部と、を備え、前記解除部は、前記第1連結部と前記第2連結部とを接着する接着部であるものである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1に記載の車両後部構造において、前記解除部は、前記連結部材と前記バンパアームとの間及び前記連結部材と前記ロアバックパネルの閉断面部との間の少なくとも一方に設けられ、両者を接着する接着部であるものである。
【0010】
請求項1記載の本発明によれば、車両後部に車両前後方向に沿って延在されるリアフロアサイドメンバの後端側に、車両上下方向及び車両幅方向に沿って延在されるロアバックパネルが接合されており、リアフロアサイドメンバの後端側にロアバックパネルを挟んでバンパアームが取り付けられている。ロアバックパネルの上部には、ロアバックリインフォースが接合されて閉断面部を形成しており、バンパアームとロアバックパネルの閉断面部との間に連結部材が架け渡されている。この連結部材により、バンパアームとリアフロアサイドメンバとで構成される車両前後方向の骨格に対するロアバックパネルの閉断面部の剛性を高めることができる。このため、車両走行時にリアフロアサイドメンバに対してロアバックパネルの閉断面部が車両前後方向に変形することが抑制される。
【0011】
また、連結部材は、バンパアームとロアバックパネルの閉断面部との連結状態を解除する解除部を備えており、車両後方側からの衝突時にバンパアームの変形に伴って、解除部によりバンパアームとロアバックパネルの閉断面部との連結状態が解除される。これによって、バンパアームからロアバックパネルの閉断面部には、荷重が伝達されず、ロアバックパネルの閉断面部へのダメージを低減することができる。
【0012】
請求項2記載の本発明によれば、連結部材とバンパアーム又はロアバックパネルの閉断面部とが締結部で固定されており、連結部材には締結部が連結部材から外れるように形成された脆弱部が設けられている。これによって、車両後方側からの衝突時にバンパアームの変形に伴って、締結部が連結部材の脆弱部から外れることで、バンパアームとロアバックパネルの閉断面部との連結状態が解除される。これにより、簡易な構成により、バンパアームとリアフロアサイドメンバとで構成される車両前後方向の骨格に対するロアバックパネルの閉断面部の剛性を高めることができると共に、車両後方側からの衝突時に、バンパアームとロアバックパネルの閉断面部との連結状態を解除することができる。
【0013】
請求項3記載の本発明によれば、連結部材は、バンパアームに接合される第1連結部と、ロアバックパネルの閉断面部に接合される第2連結部と、を備えており、第1連結部と第2連結部とが解除部としての接着部で接着されている。これによって、車両後方側からの衝突時にバンパアームの変形に伴って、第1連結部と第2連結部との接着部が剥がれることで、バンパアームとロアバックパネルの閉断面部との連結状態が解除される。このため、簡易な構成により、バンパアームとリアフロアサイドメンバとで構成される車両前後方向の骨格に対するロアバックパネルの閉断面部の剛性を高めることができると共に、車両後方側からの衝突時に第1連結部と第2連結部との連結を解除することができる。
【0014】
請求項4記載の本発明によれば、連結部材とバンパアームとの間及び連結部材とロアバックパネルの閉断面部との間の少なくとも一方に、両者を接着する解除部としての接着部が設けられている。これによって、車両後方側からの衝突時にバンパアームの変形に伴って、接着部が剥がれることで、バンパアームとロアバックパネルの閉断面部との連結状態が解除される。このため、簡易な構成により、バンパアームとリアフロアサイドメンバとで構成される車両前後方向の骨格に対するロアバックパネルの閉断面部の剛性を高めることができると共に、車両後方側からの衝突時に、バンパアームとロアバックパネルの閉断面部との連結状態を解除することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る車両後部構造によれば、車両走行時にリアフロアサイドメンバに対してロアバックパネルの閉断面部が車両前後方向に変形することを抑制し、NV性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態に係る車両後部構造の構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示す車両後部構造の縦断面図である。
【図3】図1に示す車両後部構造のガセットの上部とロアバックパネルの閉断面部との連結を解除する切り欠き部を示す斜視図である。
【図4】第2実施形態に係る車両後部構造の構成を示す斜視図である。
【図5】図4に示す車両後部構造の縦断面図である。
【図6】第3実施形態に係る車両後部構造の構成を示す斜視図である。
【図7】図6に示す車両後部構造の縦断面図である。
【図8】比較例に係る車両後部構造の構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1〜図3を用いて、本発明に係る車両後部構造の第1実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印RRは車両後方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印OUTは車両幅方向外側を示している。
【0018】
図1には、本実施形態に係る車両後部構造の構成が斜視図にて示されており、図2には、本実施形態に係る車両後部構造の構成が車両前後方向に沿った縦断面図にて示されている。図2に示されるように、車両10の後部10Aには、車両下部側に略水平方向にフロアパネル12が配設されており、フロアパネル12の下部には、車両前後方向に沿って延在するリアフロアサイドメンバ14が配設されている。リアフロアサイドメンバ14は、車両幅方向に沿った断面が略ハット型に形成されており、上部の車両幅方向両側に形成されたフランジ部がフロアパネル12の下面に溶接等により接合されることにより、リアフロアサイドメンバ14とフロアパネル12とで閉断面が形成されている。図示を省略するが、リアフロアサイドメンバ14は、車両10の後部10Aの両サイドに車両前後方向に沿って配設されている。
【0019】
リアフロアサイドメンバ14の車両前後方向の後端部には、リアフロアサイドメンバ14の内側に挿入された後方側リアサイドメンバ16が設けられている。後方側リアサイドメンバ16は、リアフロアサイドメンバ14の車両上方側に配置されており、リアフロアサイドメンバ14と後方側リアサイドメンバ16とは締結具17により締結固定されている。
【0020】
後方側リアサイドメンバ16の後端部には、車両下方側に屈曲された屈曲部16Aが形成されている。後方側リアサイドメンバ16の車両後方側には、車両上下方向上方側に延在されるロアバックパネル18が配設されている。ロアバックパネル18の下部18Aの前壁面と後方側リアサイドメンバ16の屈曲部16Aとは面接触状態で配置されている。フロアパネル12の後端部には、車両上方側に屈曲したフランジ部12Aが形成されており、フランジ部12Aがロアバックパネル18の前壁面に溶接等により接合されている。
【0021】
後方側リアサイドメンバ16の車両後方側には、ロアバックパネル18の下部18A及びその車両後方側に配置されたロアバックサイドリインフォース20を挟んでバンパアーム22が配置されている。すなわち、バンパアーム22は、ロアバックパネル18の下部18A及びロアバックサイドリインフォース20を挟んでリアフロアサイドメンバ14及びフロアパネル12と車両前後方向に相対する位置に設けられている。
【0022】
図1及び図2に示されるように、バンパアーム22の前端部には、車両下方側及び車両幅方向両側に取付部22Aが形成されている。後方側リアサイドメンバ16の屈曲部16Aとロアバックパネル18の下部18Aとロアバックサイドリインフォース20とバンパアーム22の取付部22Aとが車両前方側から順に面接触状態で配置され、締結具23で締結固定されている。ロアバックサイドリインフォース20の上端部には、車両後方側に屈曲された屈曲部20Aが設けられており、屈曲部20Aがバンパアーム22の上面に溶接等により接合されている(図2参照)。
【0023】
バンパアーム22は、多角形の閉断面からなり、車両幅方向両側には、車両前後方向に沿って凹部22Bが形成されている(図1参照)。バンパアーム22は、閉断面の長手方向が車両前後方向に沿って配置されている。バンパアーム22の前端部の左右両側には、バンパアーム22とロアバックサイドリインフォース20の取付部を補強する補強部材24が設けられている。図示を省略するが、バンパアーム22は、車両10の後部10Aの両サイドに設けられている。
【0024】
この車両10の後部10Aでは、リアフロアサイドメンバ14及び後方側リアサイドメンバ16とバンパアーム22とが車両前後方向の軸荷重を受け持つように構成されている。なお、後方側リアサイドメンバ16にロアバックパネル18を介してバンパアーム22を取り付ける構造は、本実施形態のようにロアバックサイドリインフォース20を介在する構造に限定するものではなく、適宜変更が可能である。例えば、ロアバックサイドリインフォース20を介在しない構造でもよい。
【0025】
バンパアーム22及びロアバックサイドリインフォース20が取り付けられたロアバックパネル18の下部18Aの車両上方側には、車両後方側に上り勾配となるように斜め方向に屈曲された傾斜部18Bが形成されている。傾斜部18Bより車両上方側におけるロアバックパネル18の上部18Cは、車両上下方向に沿った断面が略ハット状に形成されており、車両上下方向中間部が車両後方側に突出している。ロアバックパネル18の上部18Cの上端には、フランジ部18Dが形成されている。
【0026】
ロアバックパネル18の上部18Cの車両前方側には、断面が略ハット状に形成されたロアバックリインフォース30が配置されている。ロアバックリインフォース30の上下に形成されたフランジ部30A、30Bがロアバックパネル18の上部18Cのフランジ部18Dと、傾斜部18Bの上方側の縦壁部18Eに面接触状態で配置されて溶接等により接合されることで、ロアバックリインフォース30とロアバックパネル18の上部18Cとで閉断面部31が形成されている。この閉断面部31は、車両幅方向に延在する骨格メンバを構成している。
【0027】
図2に示されるように、フロアパネル12の上面部とロアバックパネル18の下部18A(傾斜部18Bの下方側)との間には、車両後方側に上り勾配となるようにフロアパネルリインフォース32が掛け渡されている。フロアパネルリインフォース32の車両前後にフランジ部が形成されており、フランジ部がフロアパネル12の上面部とロアバックパネル18の下部18Aの前壁面にそれぞれ溶接により接合されている。
【0028】
フロアパネル12の車両上方側には、車両上下方向及び車両前後方向に所定のスペースを形成するように屈曲されたデッキボード34が配設されている。デッキボード34の下端部34Aはフロアパネルリインフォース32のフランジ部の上面に接合されている。さらに、デッキボード34の車両上方側には、取付部材36を介して車両前後方向及び車両幅方向に延在するリアフロアボード38が取り付けられている。
【0029】
また、車両10の後端部には、バンパアーム22、及びロアバックリインフォース30とロアバックパネル18の上部18Cとで形成された閉断面部31を覆うように、バンパカバー40が図示しない取付部材により取り付けられている(図2参照)。
【0030】
図1及び図2に示されるように、車両10の後部10Aには、ロアバックリインフォース30とロアバックパネル18の上部18Cとで形成された閉断面部31と、バンパアーム22の上部とを連結するように連結部材としてのガセット50が架け渡されている。ガセット50は、車両前後方向に沿った断面が略「コ」字状に形成された連結部50Aと、連結部50Aの下端部の車両幅方向中央部が車両後方側に屈曲された取付部50Bと、連結部50Aの下端部の車両幅方向両側が車両斜め下方側にそれぞれ屈曲された左右両側の取付部50Cと、を備えている(図1では、車両幅方向外側の取付部は図示されていない)。
【0031】
さらに、図2及び図3に示されるように、ガセット50は、連結部50Aの上端部の車両幅方向中央部が車両後方側の斜め上方に屈曲された取付部50Dと、連結部50Aの上端部の車両幅方向両側が車両幅方向両側にそれぞれ屈曲された左右両側の取付部50Eと、を備えている。
【0032】
図1及び図2に示されるように、ガセット50の下部側の取付部50Bと左右両側の取付部50Cは、バンパアーム22の上部に面接触状態で配置されて溶接により接合されている。なお、ガセット50の下部側の取付部50B及び左右両側の取付部50Cとバンパアーム22の上部とは、溶接に限らず、接着又はボルト締結等でもよい。
【0033】
また、図2及び図3に示されるように、閉断面部31を構成するロアバックパネル18の上部18Cには、バンパアーム22の上面と対向する位置に、車両前後方向の後端部から前端部に向かって下り勾配となるように傾斜面31Aが形成されている。ガセット50の取付部50Dと左右の取付部50Eには、車両後方側に開口するように切り欠かれた脆弱部としての切り欠き部52が形成されている。傾斜面31Aには、ガセット50の取付部50Dと左右両側の取付部50Eを締結固定するための3つの貫通孔54が形成されている。取付部50Dと左右両側の取付部50Eは、ロアバックパネル18の傾斜面31Aに面接触状態で配置され、切り欠き部52の位置と傾斜面31Aの貫通孔54の位置とを合わせる。この状態で、切り欠き部52及び貫通孔54にボルト56を挿通してナット58と螺合させることで、ガセット50の上部側の取付部50Dと左右両側の取付部50Eがロアバックパネル18の傾斜面31Aに締結固定されている(図2参照)。
【0034】
本実施形態では、ガセット50は、連結部50Aとその下部側の取付部50Bとの角度が、連結部50Aとその上部側の取付部50Dとの角度よりも大きくなるように形成されている(図2参照)。
【0035】
これにより、ガセット50は、閉断面部31を構成するロアバックパネル18の傾斜面31Aとバンパアーム22の上部との間に、連結部50Aが傾斜面31Aからバンパアーム22に向かって車両後方側に下り勾配となるように斜めに架け渡されている。このガセット50により、車両走行時にフロアパネル12及びリアフロアサイドメンバ14とバンパアーム22とで構成された車両前後方向の骨格に対してロアバックパネル18の上部18Cとロアバックリインフォース30とで形成された閉断面部31が車両前後方向に変形することが抑制されるようになっている。
【0036】
また、取付部50Dと左右両側の取付部50Eに切り欠き部52を設けることで、車両10の後部10A側からの衝突時にバンパアーム22が圧縮変形すると、ガセット50の取付部50Dと左右の取付部50Eが、傾斜面31Aの貫通孔54に締結されたボルト56とナット58(締結部)から車両前方側に抜ける(外れる)ように構成されている。
【0037】
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0038】
図1及び図2に示されるように、リアフロアサイドメンバ14の車両後方側に接合された後方側リアサイドメンバ16の車両後方側には、ロアバックパネル18とロアバックサイドリインフォース20を介してバンパアーム22が取り付けられている。バンパアーム22の車両上方側には、ロアバックパネル18の上部18Cとロアバックリインフォース30とで閉断面部31が形成されており、閉断面部31を構成するロアバックパネル18の傾斜面31Aとバンパアーム22の上部との間にガセット50が架け渡されている。このガセット50により、バンパアーム22とリアフロアサイドメンバ14及び後方側リアサイドメンバ16で構成される車両前後方向の骨格と、ロアバックパネル18の上部18Cの閉断面部31とを繋ぐ部位の結合剛性を高めることができる。
【0039】
これにより、車両走行時にバンパアーム22とリアフロアサイドメンバ14等で構成される車両前後方向の骨格に対してロアバックパネル18の上部18Cの閉断面部31が変形するのを抑制することができる。例えば、車両走行時に車両10のサスペンション支持部(図示省略)に車両上下方向の荷重が入力され、リアフロアサイドメンバ14の後部が車両上下方向に振動した場合に、ロアバックパネル18の上部18Cとロアバックリインフォース30とで形成される閉断面部31が車両前後方向に変形することを抑制することができる。これにより、簡易な構成により、車両10の走行時のNV性能及び操縦安定性を向上することができる。
【0040】
また、図2及び図3に示されるように、ガセット50の上部側の取付部50Dと左右両側の取付部50Eに切り欠き部52が設けられており、切り欠き部52と傾斜面31Aの貫通孔54とを貫通するようにボルト56とナット58を螺合させることで、ガセット50の取付部50Dと左右両側の取付部50Eがロアバックパネル18の傾斜面31Aに締結固定されている(締結部)。ガセット50の取付部50Dと左右両側の取付部50Eに切り欠き部52を設けることで、車両10の後部10A側からの衝突時にバンパアーム22が圧縮変形すると、ガセット50の取付部50Dと左右両側の取付部50Eが、傾斜面31Aの貫通孔54のボルト56とナット58から車両前方側に抜ける(外れる)。すなわち、ガセット50の取付部50Dと左右両側の取付部50Eがロアバックパネル18の傾斜面31Aの締結部から離脱する。これによって、ガセット50によるバンパアーム22とロアバックパネル18の傾斜面31Aとの連結状態が解除され、荷重伝達経路が遮断される。このため、バンパアーム22からロアバックパネル18の閉断面部31には、荷重が伝達されず、ロアバックパネル18の閉断面部31へのダメージを低減することができる。
【0041】
本実施形態では、ボルト56の締結トルクによって、ガセット50の切り欠き部52の離脱荷重をコントロールすることができる。
【0042】
図8には、比較例に係る車両後部構造が適用された車両200の後部200Aが示されている。車両200の後部200Aには、閉断面部31を構成するロアバックパネル18とバンパアーム22の上部との間に連結部材が設けられていない。この構造では、車両200の走行時に、バンパアーム22とリアフロアサイドメンバ14等で構成される車両前後方向の骨格に対して、ロアバックパネル18の上部18Cの閉断面部31がオフセットしているため、ロアバックパネル18の傾斜部18B付近を基点としてロアバックパネル18の上部18Cの閉断面部31が車両前後方向に倒れこみやすくなる。
【0043】
これに対して、本実施形態の車両10の後部10Aでは、閉断面部31を構成するロアバックパネル18の傾斜面31Aとバンパアーム22の上部との間にガセット50が架け渡されており、車両10の走行時にバンパアーム22とリアフロアサイドメンバ14等で構成される車両前後方向の骨格に対してロアバックパネル18の上部18Cの閉断面部31が変形することを抑制することができる。
【0044】
次に、図4及び図5を用いて、本発明に係る車両後部構造の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0045】
図4及び図5に示されるように、車両70の後部70Aには、ロアバックリインフォース30とロアバックパネル18の上部18Cとで形成された閉断面部31と、バンパアーム22とを連結するように連結部材としてのガセット72が架け渡されている。ガセット72は、バンパアーム22の上面に接合される下部側の第1連結部74と、ロアバックパネル18の閉断面部31の傾斜面31Aに接合される上部側の第2連結部76と、を備えている。第1連結部74の下端部には、車両後方側に屈曲された取付部50Bと取付部50Cが設けられており、取付部50Bと取付部50Cがバンパアーム22の上面に溶接により接合されている。第2連結部76の上端部には、車両後方側に屈曲された取付部76A等(車両幅方向両側に屈曲された取付部は図示省略)が設けられており、取付部76A等が閉断面部31の傾斜面31Aに溶接により接合されている。
なお、取付部50B及び取付部50Cとバンパアーム22、取付部76Aと閉断面部31の傾斜面31Aとは、溶接に限らず、接着又はボルト締結等でもよい。
【0046】
第1連結部74の上端部に上方に第2連結部76の下端部が重ね合わされており、第1連結部74の上端部と第2連結部76の下端部とが解除部としての接着部78で接着されている(図5参照)。すなわち、ガセット72は、第1連結部74と第2連結部76とに分割された2部品で構成されており、ガセット72の中間部で第1連結部74と第2連結部76とが接着部78で接着されている。接着部78には、車両で一般的に使用されている構造用接着剤が用いられている。すなわち、接着部78には、車両70の後方側からの衝突時に、第1連結部74の上端部と第2連結部76の下端部とが離れる方向の力が働くと、接着部78が剥離するような接着剤が使用されている。
【0047】
このような車両後部構造では、閉断面部31を構成するロアバックパネル18の傾斜面31Aとバンパアーム22の上部との間にガセット72が架け渡されており、ガセット72は、第1連結部74の上端部と第2連結部76の下端部とを接着部78で接着したものである。これにより、車両走行時に起こりうるロアバックパネル18の上部18Cの倒れ込み変形に対しては、接着部78は、矢印Aに示されるように、せん断方向で荷重を受けるため、結合剛性を高めることができる。このため、車両走行時にバンパアーム22とリアフロアサイドメンバ14等で構成される車両前後方向の骨格に対するロアバックパネル18の上部18Cの閉断面部31の変形を抑制することができる。従って、簡易な構成により、車両10の走行時のNV性能及び操縦安定性を向上することができる。
【0048】
また、車両70の後部70A側からの衝突時にバンパアーム22が圧縮変形すると、ガセット72の第1連結部74が車両前方側に移動し、接着部78は剥離方向の荷重を受けるため、接着部78が剥がれやすくなる。これにより、ガセット72を構成する第1連結部74と第2連結部76とが外れて(第1連結部74と第2連結部76との連結が解除され)、バンパアーム22からロアバックパネル18の閉断面部31には荷重が伝達されない。このため、ロアバックパネル18の閉断面部31へのダメージを低減することができる。
【0049】
次に、図6及び図7を用いて、本発明に係る車両後部構造の第3実施形態について説明する。なお、前述した第1及び第2実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0050】
図6及び図7に示されるように、車両90の後部90Aには、ロアバックリインフォース30とロアバックパネル18の上部18Cとで形成された閉断面部31と、バンパアーム22とを連結するように連結部材としてのガセット92が架け渡されている。ガセット92は、断面が略「コ」字状に形成された連結部92Aと、連結部92Aの下端部に設けられた車両幅方向中央部の取付部50B及び車両幅方向両側の取付部50Cと、を備えている(図6では、車両幅方向外側の取付部は図示されていない)。さらに、ガセット92は、連結部92Aの上端部の車両幅方向中央部が車両後方側に屈曲された取付部92Bと、連結部92Aの上端部の車両幅方向両側が車両幅方向両側に屈曲された左右両側の取付部(図示省略)と、を備えている。
【0051】
ガセット92の取付部50B及び取付部50Cは、バンパアーム22の上面に接着部94で接着されている。ガセット92の取付部92B及び左右両側の取付部(図示省略)は、閉断面部31を構成するロアバックパネル18の傾斜面31Aに接着部96で接着されている。接着部94、96には、車両で一般的に使用されている構造用接着剤が用いられている。
【0052】
このような車両後部構造では、閉断面部31を構成するロアバックパネル18の傾斜面31Aとバンパアーム22の上部との間にガセット92が架け渡されており、車両走行時にバンパアーム22とリアフロアサイドメンバ14等で構成される車両前後方向の骨格に対してロアバックパネル18の上部18Cが倒れ込み変形するのを抑制することができる。
【0053】
また、車両90の後部90A側からの衝突時にバンパアーム22が圧縮変形すると、ガセット92の取付部50B及び取付部50Cとバンパアーム22の上面との接着部94、又はガセット92の取付部92B及び左右両側の取付部(図示省略)とロアバックパネル18の傾斜面31Aとの接着部96が剥離する。すなわち、ガセット92がバンパアーム22の上面又はロアバックパネル18の傾斜面31Aから離脱する。本実施形態では、バンパアーム22が圧縮変形したときに、ガセット92の取付部50B及び取付部50Cとバンパアーム22との接着部94が、ガセット92の取付部92B等とロアバックパネル18の傾斜面31Aとの接着部96よりも剥がれやすい。これによって、ガセット92によるバンパアーム22とロアバックパネル18の傾斜面31Aとの連結状態が解除され、バンパアーム22からロアバックパネル18の閉断面部31には荷重が伝達されない。このため、ロアバックパネル18の閉断面部31へのダメージを低減することができる。
【0054】
なお、第1実施形態では、ガセット50の上部側の取付部50D、50Eにロアバックパネル18の傾斜面31Aとの連結を解除する切り欠き部52が設けられているが、これに限定されず、ガセット50の下部側の取付部にバンパアーム22との連結を解除する切り欠き部を設けてもよい。この場合、例えば、バンパアーム22の圧縮変形に伴って、ガセットとの締結部が車両前方側に抜ける(外れる)ように、ガセットの取付部に車両前方側に開口するように切り欠き部を設けることが好ましい。
【0055】
また、第1実施形態では、ガセット50の上部側の取付部50D、50Eに切り欠き部52を設けたが、これに限定されず、一部が薄肉部等で繋がった脆弱部としてもよい。すなわち、車両の後方側からの衝突時に、バンパアームの変形に伴って、連結部材の脆弱部により締結部が外れるような構成であればよい。
【0056】
また、第3実施形態では、ガセット92の上端と下端が解除部としての接着部94、96により接着されているが、ガセットの上端と下端の少なくとも一方に接着部を設ける構成でもよい。
【0057】
また、第1〜第3実施形態では、リアフロアサイドメンバ14および後方側リアサイドメンバ16等とフロアパネル12とで閉断面を構成しているが、これに限定されず、他の構成でもよい。例えばリアサイドメンバを1部品で構成してもよい。
【符号の説明】
【0058】
10 車両
10A 後部
14 リアフロアサイドメンバ
16 後方側リアサイドメンバ
18 ロアバックパネル
18C 上部
22 バンパアーム
30 ロアバックリインフォース
31 閉断面部
50 ガセット(連結部材)
52 切り欠き部(脆弱部)
56 ボルト(締結部)
58 ナット(締結部)
70 車両
70A 後部
72 ガセット(連結部材)
74 第1連結部
76 第2連結部
78 接着部(解除部)
90 車両
90A 後部
92 ガセット(連結部材)
94 接着部(解除部)
96 接着部(解除部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後部に車両前後方向に沿って延在されるリアフロアサイドメンバの後端側に接合され、車両上下方向及び車両幅方向に沿って延在されるロアバックパネルと、
前記リアフロアサイドメンバの後端側に前記ロアバックパネルを挟んで取り付けられるバンパアームと、
前記ロアバックパネルの上部に接合され、前記ロアバックパネルとの間で閉断面部を形成するロアバックリインフォースと、
前記バンパアームと前記ロアバックパネルの閉断面部との間に架け渡され、車両後方側からの衝突時に前記バンパアームの変形に伴って前記バンパアームと前記ロアバックパネルの閉断面部との連結状態を解除する解除部を備えた連結部材と、
を有する車両後部構造。
【請求項2】
前記連結部材と前記バンパアーム又は前記ロアバックパネルの閉断面部とが締結部で固定されており、
前記解除部は、前記連結部材に設けられ、車両後方側からの衝突時に前記バンパアームの変形に伴って前記締結部が前記連結部材から外れるように形成された脆弱部である請求項1に記載の車両後部構造。
【請求項3】
前記連結部材は、前記バンパアームに接合される第1連結部と、前記ロアバックパネルの閉断面部に接合される第2連結部と、を備え、
前記解除部は、前記第1連結部と前記第2連結部とを接着する接着部である請求項1に記載の車両後部構造。
【請求項4】
前記解除部は、前記連結部材と前記バンパアームとの間及び前記連結部材と前記ロアバックパネルの閉断面部との間の少なくとも一方に設けられ、両者を接着する接着部である請求項1に記載の車両後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−224279(P2012−224279A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95247(P2011−95247)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】