説明

車両後部構造

【課題】サイドメンバアウタパネルの後下端部に作用する応力集中を緩和することができる車両後部構造を得る。
【解決手段】サイドメンバアウタパネル50の後下端部52には、後端フランジ部54に連続して設けられて略車両幅方向外側へ向けられた側面56Aを備えた基板部56と、基板部56から曲げられて車両幅方向外側へ立設された立設部58と、立設部58の車両幅方向外側の端部から曲げられて略車両幅方向外側へ向けられた頂面60Aを備えた頂部60とが形成されている。頂部60には、頂部60の一部を頂部60の他の部位に比べて弱体化させる段差構造62が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
サイドメンバアウタパネルにおいては、その後下端部にロアバックパネルの車両幅方向外側の端部が結合されると共に、その結合部位の車両前方側近傍に車両幅方向外側へ隆起した隆起部が形成された構造がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−166634公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような構造では、悪路走行時等の路面入力に起因してリアサイドメンバ側からロアバックパネルを介してサイドメンバアウタパネルの後下端部に荷重が入力されると、サイドメンバアウタパネルの隆起部後面の車両幅方向内側端に沿った稜線部に応力が集中してしまう場合がある。このような応力の緩和については改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、サイドメンバアウタパネルの後下端部に作用する応力集中を緩和することができる車両後部構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載する本発明の車両後部構造は、車体後下部に配置され、車両幅方向に延在するロアバックパネルと、車体側部を構成し、後下端部に形成された後端フランジ部が前記ロアバックパネルの車両幅方向外側の端部に結合されたサイドメンバアウタパネルと、前記サイドメンバアウタパネルの後下端部に形成され、前記後端フランジ部に連続して設けられて略車両幅方向外側へ向けられた側面を備えた基板部と、前記サイドメンバアウタパネルの後下端部に形成され、前記基板部から曲げられて車両幅方向外側へ立設されると共に、略車両後方側へ向けられた後面と、前記後面に連続して略車両下方側へ向けられた下面と、を備えた立設部と、前記サイドメンバアウタパネルの後下端部に形成され、前記立設部の車両幅方向外側の端部から曲げられて略車両幅方向外側へ向けられた頂面を備えた頂部と、前記頂部に設けられ、前記頂部の一部を前記頂部の他の部位に比べて弱体化させる低剛性構造と、を有する。
【0007】
請求項1に記載する本発明の車両後部構造によれば、ロアバックパネルは車体後下部に配置されて車両幅方向に延在するのに対して、サイドメンバアウタパネルは車体側部を構成して後端フランジ部がロアバックパネルの車両幅方向外側の端部に結合されている。このため、例えば、悪路走行時等に車体が車両正面視で平行四辺形状に変形する際には、路面入力荷重が相対的に大きい車両幅方向の一方側へ向けた荷重がロアバックパネルに作用するのに対して、サイドメンバアウタパネルは当初位置に留まろうとするので、前記車両幅方向の一方側ではロアバックパネルの端部が車両後方側へ車両平面視で略V字状に弾性変形する。
【0008】
一方、サイドメンバアウタパネルの後下端部には、後端フランジ部に連続して設けられて略車両幅方向外側へ向けられた側面を備えた基板部と、基板部から曲げられて車両幅方向外側へ立設されると共に略車両後方側へ向けられた後面を備えた立設部とが形成されている。このため、ロアバックパネルの弾性変形に伴って、基板部と立設部の後面との境界部には車両前方側への成分を含む荷重が作用する。
【0009】
ここで、サイドメンバアウタパネルの後下端部には、立設部の後面に連続して略車両下方側へ向けられた下面が立設部の一部を構成すると共に、立設部の車両幅方向外側の端部から曲げられて略車両幅方向外側へ向けられた頂面を備えた頂部が形成されている。このため、基板部と立設部の後面との境界部に車両前方側への成分を含む荷重が作用した場合には、頂部が略車両前後方向に突っ張って反力を発生させると、基板部と立設部の後面とがなす角度を小さくしようとする荷重が発生する。
【0010】
しかしながら、本発明では、頂部には、頂部の一部を頂部の他の部位に比べて弱体化させる低剛性構造が設けられているので、頂部に対して車両前方側への成分を含む荷重が入力された場合には、低剛性構造が設けられていない対比構造に比べて頂部の弾性変形量が増す。このため、基板部と立設部の後面との境界部に車両前方側への成分を含む荷重が作用した場合、頂部による反力が抑えられるので、基板部と立設部の後面とがなす角度を小さくしようとする荷重が抑えられる。すなわち、基板部と立設部の後面側とがなす屈曲形状部が変形しようとする際に、その変形を吸収するように低剛性構造をなす部分が変形することで、基板部と立設部の後面の境界部に作用する応力が緩和される。
【0011】
請求項2に記載する本発明の車両後部構造は、請求項1記載の構成において、前記立設部の後下端部は、車両側面視で円弧状のコーナ部とされており、前記低剛性構造は、車両側面視で、前記コーナ部の円弧ラインと、前記コーナ部の円弧上端から車両前方側に引いた第一仮想直線と、前記コーナ部の円弧前端から車両上方側に引いた第二仮想直線と、で囲まれた範囲を含む位置に形成されている。
【0012】
請求項2に記載する本発明の車両後部構造によれば、立設部の後下端部は、車両側面視で円弧状のコーナ部となっており、悪路走行時等には、このコーナ部の後面側と基板部との境界部に車両前方側への成分を含む荷重が作用する。ここで、車両側面視で、コーナ部の円弧ラインと、コーナ部の円弧上端から車両前方側に引いた第一仮想直線と、コーナ部の円弧前端から車両上方側に引いた第二仮想直線と、で囲まれた範囲を含む位置に低剛性構造が形成されている。このため、コーナ部の後面側と基板部との境界部に車両前方側への成分を含む荷重が作用した場合、頂部は前記境界部に近い部位で弾性変形する。
【0013】
請求項3に記載する本発明の車両後部構造は、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記低剛性構造は、車両幅方向に段状の高低差を形成する段差構造を備えている。
【0014】
請求項3に記載する本発明の車両後部構造によれば、低剛性構造は、車両幅方向に段状の高低差を形成する段差構造を備えているので、頂部に対して車両前方側への成分を含む荷重が繰り返し作用して頂部が繰り返し弾性変形しても、頂部の弾性復帰力が容易に維持される。
【0015】
請求項4に記載する本発明の車両後部構造は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の構成において、前記低剛性構造は、前記頂部に対して車両後方側から車両前方側への荷重が入力された場合に前記頂部を略車両幅方向内側へ向けて弾性変形させる第一低剛性部と前記頂部を略車両幅方向外側へ向けて弾性変形させる第二低剛性部とを備え、前記第一低剛性部及び前記第二低剛性部が、車両前後方向に異なる位置に対で形成されている。
【0016】
請求項4に記載する本発明の車両後部構造によれば、低剛性構造を構成する第一低剛性部及び第二低剛性部が車両前後方向に異なる位置に対で形成されており、頂部に対して車両後方側から車両前方側への荷重が入力された場合には、第一低剛性部によって頂部を略車両幅方向内側へ向けて変形させると共に第二低剛性部によって頂部を略車両幅方向外側へ向けて変形させる。このため、頂部に対して車両後方側から車両前方側への荷重が入力された場合には、頂部の車両前後方向への弾性収縮量が確保されやすい。
【0017】
請求項5に記載する本発明の車両後部構造は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の構成において、前記低剛性構造は、前記頂部から前記立設部にかけての部位に形成されている。
【0018】
請求項5に記載する本発明の車両後部構造によれば、低剛性構造は、頂部から立設部にかけての部位に形成されているので、頂部から立設部にかけての剛性が低下し、頂部に対して車両前方側への成分を含む荷重が入力された場合に、頂部の弾性変形量が確保されやすい。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の車両後部構造によれば、サイドメンバアウタパネルの後下端部に作用する応力集中を緩和することができるという優れた効果を有する。
【0020】
請求項2に記載の車両後部構造によれば、サイドメンバアウタパネルにおけるコーナ部の後面と基板部との境界部に車両前方側への成分を含む荷重が作用した場合に、頂部を前記境界部に近い部位で弾性変形させることができるので、サイドメンバアウタパネルの頂部による反力を効果的に抑制することができるという優れた効果を有する。
【0021】
請求項3に記載の車両後部構造によれば、サイドメンバアウタパネルの後下端部の耐久強度を容易に確保することができるという優れた効果を有する。
【0022】
請求項4に記載の車両後部構造によれば、サイドメンバアウタパネルの頂部に対して車両後方側から車両前方側への荷重が入力された場合に、第一低剛性部及び第二低剛性部によって頂部が逆方向に曲げられることで、頂部による反力を効果的に抑制することができるという優れた効果を有する。
【0023】
請求項5に記載の車両後部構造によれば、頂部から立設部にかけての剛性を効果的に低下させることができ、サイドメンバアウタパネルの頂部に対して車両前方側への成分を含む荷重が入力された場合に、頂部による反力を効果的に抑制することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車両後部構造が適用された車体を示す斜視図である。
【図2】図1の車体後部の右下端部を拡大して示す斜視図である。
【図3】図2を分解して示す分解斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る車両後部構造の要部を拡大して示す図である。図4(A)は車両幅方向外側から見た側面図である。図4(B)は車両下方側から見た底面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る車両後部構造の車両右側を模式的に示す平面視の断面図である(図2の5−5線に沿った断面図に相当する。)。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る車両後部構造の作用を説明するための平面視の断面図である。図6(A)は図2の6A−6A線に沿った拡大断面図である。図6(B)は図6(A)の状態からサイドメンバアウタパネル等が弾性変形した状態を示す。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る車両後部構造の要部を示す平面視の断面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る車両後部構造の要部を示す平面視の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る車両後部構造について図1〜図6を用いて説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印REは車両後方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印OUTは車両幅方向外側を示している。
【0026】
図1には、本発明の第1の実施形態に係る車両後部構造が適用された車体10の斜視図が示されている。図1に示されるように、車体後部10A側の側部には、図示しないリアサイドドアによって開閉されるリア側ドア開口部12が形成されている。リア側ドア開口部12の下縁側には、車両前後方向に沿ってロッカリア14が延在している。ロッカリア14は、詳細図示を省略するが、基本的には、インナパネル及びアウタパネルのそれぞれの上下フランジ部が接合されることによって車両前後方向に沿って延在する閉断面構造を形成している。ロッカリア14の後端側には、リアホイールハウス16が配置されている。リアホイールハウス16は、図示しない後輪タイヤの上方側を覆う部材であり、リアホイールハウス16の上部前端側は、なだらかな曲線を描きながらロッカリア14の後端部側に接続されている。
【0027】
図2には、図1の車体後部10Aの右下端部が拡大された状態の斜視図にて示され、図3には図2を分解した状態の分解斜視図が示されている。図3に示されるように、リアホイールハウス16は、その車両幅方向内側の構成部であるホイールハウスインナ18と、その車両幅方向外側の構成部であるホイールハウスアウタ20と、を備えている。
【0028】
ホイールハウスインナ18は、車両幅方向内側に向けて膨出されており、後端側の車両幅方向外側の部位には車両幅方向へ向けられた接合面を備えた後端フランジ部18Aを備えると共に、後端下部側には一般面が略車両後方側へ向けられた縦壁部18Bが形成されている。これに対して、ホイールハウスアウタ20は、車両幅方向外側に向けて若干隆起されており、後端側の車両幅方向内側の部位には車両幅方向へ向けられた接合面を備えた後端フランジ部20Aを備えると共に後端下部側には一般面が略車両後方側へ向けられた縦壁部20Bが形成されている。ホイールハウスインナ18の後端フランジ部18Aとホイールハウスアウタ20の後端フランジ部20Aとは互いに接合されている(図6(A)参照)。
【0029】
なお、図示しないリアサスペンションを構成するショックアブソーバの上端側取付部(車体10側への後側取付部)は、他部材(図示省略)を介してホイールハウスインナ18に取り付けられている。また、ホイールハウスアウタ20の車両幅方向外側には車体側部を構成するサイドメンバアウタパネル50の一部が重ね合わせられている。ホイールハウスアウタ20の下端には湾曲状の下端フランジ部20Cが形成され、これに対応するように、サイドメンバアウタパネル50の下端には湾曲状の下端フランジ部50Aが形成されている。これらの下端フランジ部20C、50Aは互いに接合されている。
【0030】
ホイールハウスインナ18の縦壁部18Bの前面には、ホイールハウスエクステンション22の前端フランジ部22Aが接合され、ホイールハウスアウタ20の縦壁部20Bの前面には、ホイールハウスエクステンション22の前端フランジ部22Bが接合されている(図6(A)参照)。ホイールハウスエクステンション22は、車両上下方向に延在して一般面が車両幅方向へ向けられた一般部22Cを備えている。前述した前端フランジ部22Aは、一般部22Cの前端から曲げられて車両幅方向内側へ延設された部位であり、前述した前端フランジ部22Bは、一般部22Cから切り起こされて一般部22Cの前端から車両幅方向外側へ延設された部位である。
【0031】
また、ホイールハウスエクステンション22の後端には一般部22Cの後端から曲げられて車両幅方向内側へ延設された後端フランジ部22Dが形成されている。図2の6A−6A線に沿った拡大断面図に相当する図6(A)に示されるように、ホイールハウスエクステンション22の後端フランジ部22Dは、サイドメンバアウタパネル50の後端フランジ部54(詳細後述)の前面及びロアバックパネル40の車両幅方向外側の端部40Aの前面に接合されている。これにより、ホイールハウスアウタ20と、ホイールハウスエクステンション22と、サイドメンバアウタパネル50とで閉断面C1が形成されている。
【0032】
図1及び図2に示されるように、ロアバックパネル40は、バックドア開口部42の下縁側(すなわち車体後下部)に配置されて車両幅方向に延在しており、一般面が車両前後方向に向けられている。なお、バックドア開口部42の側縁側には、バックサイドパネル44が配置されており、ロアバックパネル40の車両幅方向外側の端部40A側の後面には、ロアバックガセット(操安パッチ)46が接合されている。
【0033】
図2に示されるように、ロアバックパネル40の車両前方側には、リアフロアパン26が配置されている。リアフロアパン26は、車両背面視で略逆ハット形状にプレス成形等によって形成されている。すなわち、リアフロアパン26は、図3に示されるように、底部26Aと、底部26Aの車両幅方向両端部から曲げられて略車両上方側へ立設された左右一対の側部26Bと、側部26Bの上端から曲げられて車両幅方向外側へ延設された左右一対の端末フランジ部26Cと、を備えている。また、リアフロアパン26は、その後端部で曲げられて車両上方側へ延設された後端フランジ部26Dがロアバックパネル40の下端部に接合されている。
【0034】
リアフロアパン26の端末フランジ部26Cにおける車両幅方向外側の端部の上面には、リアフロアサイドパネル28の内側フランジ部28Aが接合されている。リアフロアサイドパネル28は、長尺板状とされてリアフロアパン26の端末フランジ部26Cに沿って略車両前後方向に延在しており、車両幅方向内側の端部に内側フランジ部28Aが形成されると共に車両幅方向外側の端部に外側フランジ部28Cが形成されている。
【0035】
なお、リアフロアサイドパネル28の外側フランジ部28Cの前端部(図示省略)は、前述したロッカリア14(図1及び図5参照)の上面側でかつ車両幅方向内側の端部に接合されている。また、リアフロアサイドパネル28は、その後端部で曲げられて車両上方側へ延設された後端フランジ部28Dがロアバックパネル40に接合されている。図2に示されるように、後端フランジ部28Dの配置位置は、ロアバックパネル40の車両上下方向中間部でやや下部寄りに設定されている。
【0036】
リアフロアサイドパネル28の車両幅方向外側の端部の上方側には、リアフロアエクステンション24の下端部が隣接して配置されている。リアフロアエクステンション24は、ホイールハウスエクステンション22の車両幅方向内側に(図6(A)参照)隣接して配置され、図3に示されるように、一般面が車両幅方向へ向けられた縦壁部24Aと、縦壁部24Aの上端から曲げられて車両幅方向外側へ延設された上壁部24Bと、を備えている。また、図6(A)に示されるように、リアフロアエクステンション24は、その後端部に形成された後端フランジ部24Cがロアバックパネル40の車両幅方向外側の端部40A寄りの前面に接合されると共に、前端部24Dがホイールハウスインナ18の後端側に接合されている。これにより、ホイールハウスインナ18と、ホイールハウスエクステンション22と、リアフロアエクステンション24と、ロアバックパネル40とで閉断面C2が形成されている。
【0037】
図2及び図3に示されるように、リアフロアサイドパネル28の下面側(換言すれば、車体後部10Aの両サイド)には、リアサイドメンバ30が車両前後方向に延在している。なお、図2の6A−6A線に沿った拡大断面図に相当する図6(A)では、図2の6A−6A線よりも下方側に配置されるリアサイドメンバ30を想像線(二点鎖線)で図示している(図6(B)も同様)。図3に示されるように、リアサイドメンバ30は、車体上方側が開放された断面逆ハット形の強度部材である。すなわち、リアサイドメンバ30は、底部30Dと、底部30Dの車両幅方向両端部から曲げられて略車両上方側へ立設された左右一対の側部30E、30Fと、一対の側部30E、30Fの上端から曲げられて互いに離反する方向へ延設された左右一対のフランジ部30G、30Hと、を備えている。
【0038】
リアサイドメンバ30の車両幅方向内側のフランジ部30Gは、リアフロアパン26の端末フランジ部26Cの車両幅方向外側端、及びリアフロアサイドパネル28の内側フランジ部28Aに接合されている。また、リアサイドメンバ30の車両幅方向外側のフランジ部30Hは、リアフロアサイドパネル28の外側フランジ部28Cに接合されている。これらによって、リアサイドメンバ30は、リアフロアサイドパネル28とで閉断面C3(図2参照)を形成している。
【0039】
図5には、車体後部10Aの右側部分が平面視の模式的な断面図(図2の5−5線に沿った断面図に相当)で示されている。なお、車体後部10Aの図示しない左側部分は、図5に示される車体後部10Aの右側部分を左右反転させた構造となっている。また、図示を省略するが、左右のリアサイドメンバ30間には、車幅方向を長手方向とするリアクロスメンバが掛け渡されている。さらに、図5では、図2の5−5線よりも上方側に配置されるロアバックパネル40の一部及びサイドメンバアウタパネル50の後下端部52を想像線(二点鎖線)で図示している。
【0040】
図5に示されるように、左右一対(図5では右側のみ図示)のリアサイドメンバ30は、後輪32を迂回することによって後部30Cが前部30Aに対して車両幅方向内側にオフセットされている。リアサイドメンバ30の前部30Aは、ロッカリア14の後端部の車両幅方向内側に配置され、ロッカリア14の後端部に結合されている。これに対して、リアサイドメンバ30の後端部30Iは、ロアバックパネル40の車両幅方向外側の端部40Aの前面に突き当てられており、トランスポートフック34を介してロアバックパネル40に結合されている。
【0041】
図3に示されるように、トランスポートフック34は、その車両幅方向内側の構成部であるトランスポートフックリア36と、その車両幅方向外側の構成部であるトランスポートフックリアリインフォース38と、を備えている。
【0042】
トランスポートフックリア36の上部36Bは、リアサイドメンバ30の車両幅方向内側の側部30Eに車両幅方向内側から重ね合わせられて接合されている。また、トランスポートフックリア36の上端部にて車両幅方向内側へ曲げられた上端フランジ部36Aは、リアサイドメンバ30の車両幅方向内側のフランジ部30Gに接合されている。
【0043】
トランスポートフックリア36は、上部36Bの下端から略車両幅方向外側へ曲げられてリアサイドメンバ30に対して車両下方側に配置される中間部36Cと、中間部36Cの車両幅方向外側端から車両下方側に垂下された下部36Dと、を備えている。トランスポートフックリア36の下部36Dにはフック孔36Fが形成されている。また、トランスポートフックリア36の後端部には曲げられて車両幅方向内側へ延設された後端フランジ部36Eが形成されている。この後端フランジ部36Eは、ロアバックパネル40の前面に接合されている(図5参照)。
【0044】
トランスポートフックリアリインフォース38は、トランスポートフックリア36の補強用とされ、車両背面視で略車両上下方向を長手方向として配置されている。トランスポートフックリアリインフォース38の上部38Aは、リアサイドメンバ30の車両幅方向外側の側部30Fに車両幅方向外側から重ね合わせられて接合されている。トランスポートフックリアリインフォース38の下部38Bは、トランスポートフックリア36の下部36Dに車両幅方向外側から重ね合わせられて接合されている。トランスポートフックリアリインフォース38の下部38Bにはトランスポートフックリア36のフック孔36Fに対応する位置にフック孔38Dが形成されている。また、トランスポートフックリアリインフォース38の後端部には曲げられて車両幅方向外側へ延設された後端フランジ部38Cが形成されている。この後端フランジ部38Cは、ロアバックパネル40の前面に接合されている(図5参照)。
【0045】
このように、トランスポートフックリア36及びトランスポートフックリアリインフォース38によってリアサイドメンバ30の後端部30Iにロアバックパネル40が結合されている。
【0046】
また、図5に示されるように、リアサイドメンバ30には、前部30Aと後部30Cとを連結する中間部30Bにリアサスペンション(図示省略)からの荷重入力点Aが設定されている。換言すれば、リアサイドメンバ30の中間部30Bには、前記リアサスペンションの車体10側への前側取付部が取り付けられており、悪路走行時等には、前記リアサスペンションの前側取付部からリアサイドメンバ30の荷重入力点Aに対して略車両上下方向の荷重が入力されるようになっている。
【0047】
一方、図3に示されるロアバックパネル40の車両幅方向外側の端部40Aには、サイドメンバアウタパネル50の後下端部52に形成された後端フランジ部54が結合されている(図6(A)参照)。後端フランジ部54は、サイドメンバアウタパネル50の外周端の一部とされ、ロアバックパネル40との接合面が概ね車両後方側へ向けられている。
【0048】
図4(A)に示されるように、サイドメンバアウタパネル50の後下端部52には、後端フランジ部54に連続して設けられて略車両幅方向外側へ向けられた側面56Aを備えた基板部56が形成されている。換言すれば、前述した後端フランジ部54は、基板部56の後端から曲げられて車両幅方向内側へ延設された部位とされている。基板部56は、後端フランジ部54よりも幅狭で略車両上下方向に延在すると共に下端部では後端フランジ部54よりも若干幅広で車両前後方向に延在している。
【0049】
また、サイドメンバアウタパネル50の後下端部52には、基板部56から曲げられて車両幅方向外側へ立設された立設部58が形成されている。立設部58は、略車両後方側へ向けられた後面58Aと、後面58Aに連続して略車両下方側へ向けられた下面58Bと、を備えている。また、立設部58の後下端部は、ロアバックパネル40の車両上下方向中間部に対応する高さ位置に設定されて車両側面視で円弧状のコーナ部58C(袋形状部)とされており、コーナ部58Cよりも車両前方側の下面58B側(平板状部分)には、電着塗装液(ED)を抜くための孔部70が形成されている。また、コーナ部58Cの円弧上端における車両幅方向内側端付近は、立設部58と基板部56との接続部位である稜線M1、及び基板部56と後端フランジ部54との接続部位である稜線M2が集まる部位(形状変化部)となっている。
【0050】
また、サイドメンバアウタパネル50の後下端部52には、立設部58の車両幅方向外側の端部から曲げられて略車両幅方向外側へ向けられた頂面60Aを備えた頂部60が形成されている。
【0051】
頂部60には、車両側面視で、コーナ部58Cの円弧ラインと、コーナ部58Cの円弧上端から車両前方側に(水平方向に)引いた第一仮想直線L1と、コーナ部58Cの円弧前端から車両上方側に(鉛直方向に)引いた第二仮想直線L2と、で囲まれた範囲を含む位置に低剛性構造としての段差構造62が形成されている。図4(A)及び図4(B)に示されるように、段差構造62は、車両幅方向に段状の高低差を形成しており、頂部60から立設部58にかけての部位に形成されている。図4(B)に示されるように、サイドメンバアウタパネル50の後下端部52では、後部側の絞り深さD1が前部側の絞り深さD2に比べて小さくなっている。そして、頂部60から立設部58にかけての部位を車両幅方向内側へ凹ませた形状とすることで、頂部60に対して車両幅方向内側へ一段下がった下段部64と、下段部64と頂部60とを繋ぐ傾斜部66と、が形成されている。
【0052】
また、段差構造62には、下段部64と傾斜部66との接続部位(稜線)を備えた第一低剛性部としての第一折曲部68Aと、傾斜部66と頂部60との接続部位(稜線)を備えた第二低剛性部としての第二折曲部68Bとが、車両前後方向に異なる位置に対で形成されている。第一折曲部68Aは、頂部60に対して車両後方側から車両前方側への荷重が入力された場合に頂部60を略車両幅方向内側へ向けて弾性変形させるようになっている。これに対して、第二折曲部68Bは、頂部60に対して車両後方側から車両前方側への荷重が入力された場合に頂部60を略車両幅方向外側へ向けて弾性変形させるようになっている。すなわち、段差構造62は、頂部60の一部を頂部60の他の部位に比べて弱体化させる構造となっている。
【0053】
(作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。
【0054】
図5に示されるリアサイドメンバ30の荷重入力点Aには、リアサスペンション(図示省略)から略車両上下方向の荷重が入力される。そして、悪路走行時等にリアサイドメンバ30の荷重入力点Aへの入力荷重の大きさが左右のリアサイドメンバ30で異なると、車体10(図1参照)は車両正面視で平行四辺形状に変形(いわゆるマッチ箱変形)しようとする。このとき、左右一対のリアサイドメンバ30のうち入力荷重が大きい一方側には、車両上方に対して斜め車両幅方向外側へ向けた荷重が作用するので、前記一方側のリアサイドメンバ30には、中間部30Bと後部30Cとの間の曲部Xを起点としてリアサイドメンバ30の後端部30Iを車両幅方向外側へ変位させようとする荷重F1が作用することになる。その結果、リアサイドメンバ30の後部30Cは、図5の想像線(二点鎖線)で示される位置へ移動しようとするので、当初位置に留まろうとするサイドメンバアウタパネル50の後下端部52に対して、リアサイドメンバ30の後端部30Iが相対的に接近しようとする。
【0055】
これに対して、図6(B)に示されるように、リアサイドメンバ30の後端部30Iとサイドメンバアウタパネル50の後下端部52とを連結するロアバックパネル40は、その連結部分40Cがリアサイドメンバ30とサイドメンバアウタパネル50との相対的な変位差を吸収するために車両後方側へ弾性変形(車両平面視で略V字状に面外変形)する。そして、図6(A)に示されるように、サイドメンバアウタパネル50の後下端部52には、後端フランジ部54に連続して設けられて略車両幅方向外側へ向けられた側面56Aを備えた基板部56と、基板部56から曲げられて車両幅方向外側へ立設されると共に略車両後方側へ向けられた後面58Aを備えた立設部58とが形成されているので、図6(B)に示されるように、ロアバックパネル40の変形に伴って、後端フランジ部54の車両幅方向内側端が車両後方側へ引かれながら、基板部56と立設部58の後面58Aとの境界部Bには車両幅方向外側で斜め車両前方側へ向けた荷重F2が作用する。
【0056】
ここで、図4(A)に示されるように、サイドメンバアウタパネル50の後下端部52には、立設部58の後面58Aに連続して略車両下方側へ向けられた下面58Bが立設部58の一部を構成すると共に、立設部58の車両幅方向外側の端部から曲げられて略車両幅方向外側へ向けられた頂面60Aを備えた頂部60が形成されている。このため、図6(B)に示されるように、基板部56と立設部58の後面58Aとの境界部Bに車両前方側への成分を含む荷重F2が作用した場合には、頂部60が略車両前後方向に突っ張って反力F3を発生させると、基板部56と立設部58の後面58Aとがなす角度を小さくしようとする荷重が発生する。
【0057】
しかしながら、本実施形態では、頂部60には、頂部60の一部を頂部60の他の部位に比べて弱体化させる段差構造62が形成されているので、頂部60に対して車両前方側への成分を含む荷重が入力された場合には、段差構造62が形成されていない対比構造に比べて頂部60の弾性変形量が増す。このため、基板部56と立設部58の後面58Aとの境界部Bに車両前方側への成分を含む荷重が作用した場合、頂部60による反力F3が抑えられるので、基板部56と立設部58の後面58Aとがなす角度を小さくしようとする荷重が抑えられる。
【0058】
つまり、頂部60に段差構造62が設けられることにより、局所的な変形モードが変わり、第一折曲部68A及び第二折曲部68Bでの変形によって頂部60による反力F3が抑えられることで、基板部56と立設部58の後面58Aとがなす角度の変化が抑えられる。そして、基板部56と立設部58の後面58A側とがなす屈曲形状部が変形しようとする際に、その変形を吸収するように第一折曲部68A及び第二折曲部68Bが変形することで、基板部56と立設部58の後面58Aとの境界部Bに作用する応力が緩和される。
【0059】
また、図4(A)に示されるように、立設部58の後下端部は、車両側面視で円弧状のコーナ部58Cとなっており、悪路走行時等には、このコーナ部58Cの後面58A側と基板部56との境界部Bに車両前方側への成分を含む荷重が作用する。ここで、本実施形態では、車両側面視で、コーナ部58Cの円弧ラインと、コーナ部58Cの円弧上端から車両前方側に引いた第一仮想直線L1と、コーナ部58Cの円弧前端から車両上方側に引いた第二仮想直線L2と、で囲まれた範囲を含む位置に段差構造62が形成されている。このため、コーナ部58Cの後面58A側と基板部56との境界部Bに車両前方側への成分を含む荷重が作用した場合、頂部60は境界部Bに近い部位で弾性変形する。従って、サイドメンバアウタパネル50の頂部60による反力F3(図6(B)参照)が効果的に抑制される。
【0060】
なお、段差構造62が、コーナ部58Cの円弧ラインと、第一仮想直線L1と、第二仮想直線L2と、で囲まれた範囲を含む位置に形成されることで、電着塗装液(ED)を抜くための孔部70を立設部58の下面58Bの平板状部分に形成しつつ頂部60の効果的な弱体化を図ることができる。
【0061】
また、本実施形態に係る車両後部構造では、車両幅方向に段状の高低差を形成して第一折曲部68A及び第二折曲部68Bを備えた段差構造62によって、低剛性構造を構成している。このため、頂部60に対して車両前方側への成分を含む荷重が繰り返し作用して頂部60が繰り返し弾性変形しても、頂部60の弾性復帰力が容易に維持される。そして、サイドメンバアウタパネル50の後下端部52の耐久強度が容易に確保される。
【0062】
また、第一折曲部68A及び第二折曲部68Bが車両前後方向に異なる位置に対で形成されており、図6(B)に示されるように、頂部60に対して車両後方側から車両前方側への荷重(車両前方側への成分を含む荷重)が入力された場合には、第一折曲部68Aによって頂部60を略車両幅方向内側(矢印P方向参照)へ向けて変形させると共に第二折曲部68Bによって頂部60を略車両幅方向外側(矢印Q方向参照)へ向けて変形させる。このため、頂部60に対して車両後方側から車両前方側への荷重(車両前方側への成分を含む荷重)が入力された場合には、頂部60が所謂Z字状に折れ変形するので、頂部60の車両前後方向への弾性収縮量が確保されやすく、頂部60による反力F3が効果的に抑制される。
【0063】
また、図4(A)に示されるように、段差構造62は、頂部60から立設部58にかけての部位に形成されている。このため、頂部60から立設部58にかけての剛性が低下し、頂部60に対して車両前方側への成分を含む荷重が入力された場合に、頂部60の弾性変形量が確保されやすく、この点でも頂部60による反力F3(図6(B)参照)が効果的に抑制される。
【0064】
以上説明したように、本実施形態に係る車両後部構造によれば、サイドメンバアウタパネル50の後下端部52に作用する応力集中を緩和することができる。
【0065】
また、本実施形態では、サイドメンバアウタパネル50の後下端部52の面形状を変えるのみで局所への応力集中が低減できるので、重量及びコストの増加が抑えられる。また、サイドメンバアウタパネル50の後下端部52における絞り深さが減ることで成形性も向上する。
【0066】
なお、本実施形態では、サイドメンバアウタパネル50の後下端部52において局所的に変形する箇所を変えていることから、車両の全体的な変形は変わらない(車両全体の剛性低下はない)ため、操縦安定性への悪影響はない。むしろ、ロアバックパネル40の車両幅方向外側の両端部の面外変形(車両後方側への変形)が小さくなることで、操縦安定性は向上する。
【0067】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る車両後部構造について、図7を用いて説明する。図7には、本発明の第2の実施形態に係る車両後部構造の要部が平面視の断面図(第1の実施形態の図6(A)に相当する断面図)にて示されている。
【0068】
図7に示されるように、第2の実施形態に係る車両後部構造は、段差構造62(図4(A)参照)に代えて、段差構造62とは異なる位置に形成された低剛性構造としてのビード72を設けた点が特徴である。他の構成は、第1の実施形態と同様の構成となっている。よって、第1の実施形態と同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0069】
ビード72は、頂部60の車両前後方向中間部から立設部58の下面58B(図示省略、図4参照)側にかけての部位に形成されている。換言すれば、ビード72の下端部は、頂部60の頂面60Aと立設部58の下面58B(図示省略、図4参照)との接続部位である稜線を跨ぐように設定されている。ビード72は、車両幅方向内側に凹んでおり、頂部60の一部を頂部60の他の部位に比べて弱体化させる構造となっている。
【0070】
上記構成によれば、悪路走行時等に基板部56と立設部58の後面58A側とがなす屈曲形状部が変形しようとする際に、その変形を吸収するようにビード72が変形することで、基板部56と立設部58の後面58Aとの境界部Bに作用する応力が緩和される。このため、本実施形態の構成によっても、悪路走行時等にサイドメンバアウタパネル50の後下端部52に作用する応力集中を緩和することができる。
【0071】
なお、ビード72によって頂部60をより効果的に弱体化させるためには、ビード72の車両幅方向内側への深さはより深いほうが好ましく、ビード72の車両前後方向の幅はより広いほうが好ましい。また、第2の実施形態では、頂部60には弱体化用のビード72が一つ形成されているが、頂部60をより効果的に弱体化させるために、複数の弱体化用のビードを形成してもよい。さらに、第2の実施形態の変形例として、車両幅方向内側に凹んだビード72に代えて車両幅方向外側に凸となる低剛性構造としてのビードを形成してもよい。また、ビード72の下端部が頂部60の頂面60Aと立設部58の下面58B(図示省略、図4参照)との接続部位である稜線を跨がない構成とすることも可能である。
【0072】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係る車両後部構造について、図8を用いて説明する。図8には、本発明の第3の実施形態に係る車両後部構造の要部が平面視の断面図(第1の実施形態の図6(A)に相当する断面図)にて示されている。
【0073】
図8に示されるように、第3の実施形態に係る車両後部構造は、段差構造62(図4(A)参照)に代えて、低剛性構造としての孔部74を設けた構成としている点が特徴である。他の構成は、第1の実施形態と同様の構成となっている。よって、第1の実施形態と同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0074】
孔部74は、頂部60の車両前後方向中間部から立設部58の下面58B(図示省略、図4参照)側にかけての部位に貫通形成されている。換言すれば、孔部74の下端部は、頂部60の頂面60Aと立設部58の下面58B(図示省略、図4参照)との接続部位である稜線を跨ぐように設定されている。また、頂部60に対して車両前方側への成分を含む荷重が作用した際に孔部74の開口周端に過度の応力集中が生じるのを避けるため、孔部74の開口周端には、バーリング加工が施され、車両幅方向内側に延設されたフランジ76が形成されている。孔部74は、頂部60の一部を頂部60の他の部位に比べて弱体化させる構造となっている。
【0075】
上記構成によれば、悪路走行時等に基板部56と立設部58の後面58A側とがなす屈曲形状部が変形しようとする際に、その変形を吸収するように孔部74の開口周端が変形することで、基板部56と立設部58の後面58Aとの境界部Bに作用する応力が緩和される。このため、本実施形態の構成によっても、悪路走行時等にサイドメンバアウタパネル50の後下端部52に作用する応力集中を緩和することができる。
【0076】
なお、孔部74によって頂部60をより効果的に弱体化させるためには、孔部74の車両前後方向の長さは長いほうが好ましい。また、第3の実施形態では、頂部60には弱体化用の孔部74が一つ形成されているが、頂部60をより効果的に弱体化させるために、複数の弱体化用の孔部が形成されてもよい。また、孔部74の下端部が頂部60の頂面60Aと立設部58の下面58B(図示省略、図4参照)との接続部位である稜線を跨がない構成とすることも可能である。
【0077】
[実施形態の補足説明]
なお、上記第1の実施形態では、図4(A)に示されるように、段差構造62は、車両側面視で、コーナ部58Cの円弧ラインと、コーナ部58Cの円弧上端から車両前方側に引いた第一仮想直線L1と、コーナ部58Cの円弧前端から車両上方側に引いた第二仮想直線L2と、で囲まれた範囲を含む位置に形成されており、このような構成がより好ましいが、低剛性構造は、車両側面視で、コーナ部58Cの円弧ラインと、第一仮想直線L1と、第二仮想直線L2と、で囲まれた範囲を含まない位置に形成されてもよい。
【0078】
また、上記第1の実施形態では、段差構造62は、頂部60から立設部58にかけての部位に形成されており、このような構成がより好ましいが、低剛性構造は頂部にのみ形成されてもよい。
【0079】
また、上記第1の実施形態では、低剛性構造としての段差構造62は、頂部60から立設部58にかけての部位を車両幅方向内側へ凹ませた形状(凹状の段差部)とされているが、低剛性構造は、頂部に対して車両幅方向外側へ凸となる形状(凸状の段差部)とされてもよい。
【0080】
なお、上記実施形態及び上述の複数の変形例は、適宜組み合わされて実施可能である。
【符号の説明】
【0081】
40 ロアバックパネル
50 サイドメンバアウタパネル
54 後端フランジ部
56 基板部
56A 側面
58 立設部
58A 後面
58B 下面
58C コーナ部
60 頂部
60A 頂面
62 段差構造(低剛性構造)
68A 第一折曲部(第一低剛性部)
68B 第二折曲部(第二低剛性部)
72 ビード(低剛性構造)
74 孔部(低剛性構造)
L1 第一仮想直線
L2 第二仮想直線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体後下部に配置され、車両幅方向に延在するロアバックパネルと、
車体側部を構成し、後下端部に形成された後端フランジ部が前記ロアバックパネルの車両幅方向外側の端部に結合されたサイドメンバアウタパネルと、
前記サイドメンバアウタパネルの後下端部に形成され、前記後端フランジ部に連続して設けられて略車両幅方向外側へ向けられた側面を備えた基板部と、
前記サイドメンバアウタパネルの後下端部に形成され、前記基板部から曲げられて車両幅方向外側へ立設されると共に、略車両後方側へ向けられた後面と、前記後面に連続して略車両下方側へ向けられた下面と、を備えた立設部と、
前記サイドメンバアウタパネルの後下端部に形成され、前記立設部の車両幅方向外側の端部から曲げられて略車両幅方向外側へ向けられた頂面を備えた頂部と、
前記頂部に設けられ、前記頂部の一部を前記頂部の他の部位に比べて弱体化させる低剛性構造と、
を有する車両後部構造。
【請求項2】
前記立設部の後下端部は、車両側面視で円弧状のコーナ部とされており、
前記低剛性構造は、車両側面視で、前記コーナ部の円弧ラインと、前記コーナ部の円弧上端から車両前方側に引いた第一仮想直線と、前記コーナ部の円弧前端から車両上方側に引いた第二仮想直線と、で囲まれた範囲を含む位置に形成されている、請求項1記載の車両後部構造。
【請求項3】
前記低剛性構造は、車両幅方向に段状の高低差を形成する段差構造を備えている、請求項1又は請求項2に記載の車両後部構造。
【請求項4】
前記低剛性構造は、前記頂部に対して車両後方側から車両前方側への荷重が入力された場合に前記頂部を略車両幅方向内側へ向けて弾性変形させる第一低剛性部と前記頂部を略車両幅方向外側へ向けて弾性変形させる第二低剛性部とを備え、前記第一低剛性部及び前記第二低剛性部が、車両前後方向に異なる位置に対で形成されている、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の車両後部構造。
【請求項5】
前記低剛性構造は、前記頂部から前記立設部にかけての部位に形成されている、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の車両後部構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−52783(P2013−52783A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192901(P2011−192901)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】