車両後部構造
【課題】空気通路部に雪が付着・堆積することを抑制することができる車両後部構造を得る。
【解決手段】リアバンパカバーの内側かつリアホイールハウスの車両後方側に、リアホイールハウス内の空気をリアバンパカバーの車両後部側に向けて排出するダクト20が設けられている。ダクト20の通路部21の下部には、密閉空間Sを形成する矩形状の閉断面部34が設けられており、密閉空間Sには空気36が充填されている。閉断面部34は、エンジンからの排気を車両外部へ排出する排気管40に設けられたマフラー42と対向する位置に配置されている。
【解決手段】リアバンパカバーの内側かつリアホイールハウスの車両後方側に、リアホイールハウス内の空気をリアバンパカバーの車両後部側に向けて排出するダクト20が設けられている。ダクト20の通路部21の下部には、密閉空間Sを形成する矩形状の閉断面部34が設けられており、密閉空間Sには空気36が充填されている。閉断面部34は、エンジンからの排気を車両外部へ排出する排気管40に設けられたマフラー42と対向する位置に配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、リアバンパとクォータパネルとによって形成された通路部を備え、リアホイールハウス内の空気を通路部によりリアバンパの車両後部に向けて排出する構造が開示されている。この構造では、リアホイールハウス内の空気をリアバンパの車両後部に向けて排出することで、空気抵抗の低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−25369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、リアホイールハウス内に配置されるリアタイヤの後方に、空気を排出する通路部を設けると、降雪時にリアタイヤによってかき上げられた雪が通路部の入口付近に付着・堆積し、通路部の開口面積を狭める可能性がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、空気通路部に雪が付着・堆積することを抑制することができる車両後部構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係る車両後部構造は、リアバンパカバーの内側で、かつリアホイールハウスの車両後方側に設けられ、前記リアホイールハウス内の空気を前記リアバンパカバーの後部域に設けられた排出開口から車両後方へ排出する空気通路部と、前記空気通路部に設けられ、少なくとも車両後部に配置される熱源と対向する位置に密閉空間を形成する閉断面部と、を有するものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の車両後部構造において、前記密閉空間には、気体、又は液体が充填されているものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両後部構造において、前記熱源は、エンジンからの排気を前記リアバンパカバーの後部域から車両外部へ排出する排気管であるものである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両後部構造において、前記熱源は、電気自動車又はハイブリット自動車に搭載される電池であるものである。
【0010】
請求項1記載の本発明によれば、リアバンパカバーの内側かつリアホイールハウスの車両後方側に空気通路部が設けられており、この空気通路部によって、リアホイールハウス内の空気がリアバンパカバーの後部域に設けられた排出開口から車両後方へ排出される。空気通路部には、少なくとも車両後部に配置される熱源と対向する位置に密閉空間を形成する閉断面部が設けられており、熱源によって、閉断面部の密閉空間の内部が暖められる。その閉断面部の密閉空間からの熱によって、空気通路部に雪が付着・堆積することが抑制される。
【0011】
請求項2記載の本発明によれば、閉断面部の密閉空間には、気体又は液体が充填されており、熱源によって、閉断面部の内部の気体又は液体が暖められる。その閉断面部の気体又は液体の熱によって、空気通路部に雪が付着・堆積することがより効果的に抑制される。
【0012】
請求項3記載の本発明によれば、熱源が、エンジンからの排気をリアバンパカバーの後部域から車両外部へ排出する排気管であり、排気管からの熱によって、閉断面部の密閉空間の内部(気体又は液体)が暖められる。このため、空気通路部に雪が付着・堆積することがより効果的に抑制される。
【0013】
請求項4記載の本発明によれば、熱源が、電気自動車又はハイブリット自動車に搭載される電池であり、電池の発熱によって、閉断面部の密閉空間の内部(気体又は液体)が暖められる。このため、空気通路部に雪が付着・堆積することがより効果的に抑制される。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る車両後部構造によれば、空気通路部に雪が付着・堆積することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態に係る車両後部構造が適用された車両を示す側面図である。
【図2】第1実施形態に係る車両後部構造が適用された車両の後部のダクト付近の構成を示す背面図である。
【図3】第1実施形態に係る車両後部構造に用いられるリアバンパカバーの内側のダクト付近の構成を示す斜視図である。
【図4】第1実施形態に係る車両後部構造に用いられるダクト及びマフラーを示す斜視図である。
【図5】ダクトの流入開口及び排出開口付近に雪の付着や着氷が生じる状態を模式的に示す斜視図である。
【図6】図4に示すダクトの閉断面部を示す縦断面図であって、閉断面部内の空気をマフラーの熱により暖める状態を示す図である。
【図7】第2実施形態に係る車両後部構造に用いられるダクト及びマフラーを示す斜視図である。
【図8】図7に示すダクトの閉断面部を示す縦断面図であって、閉断面部内の空気をマフラーの熱により暖める状態を示す図である。
【図9】第3実施形態に係る車両後部構造に用いられるダクト及びマフラーを示す斜視図である。
【図10】図9に示すダクトの閉断面部を示す縦断面図であって、閉断面部内の空気をマフラーの熱により暖める状態を示す図である。
【図11】第4実施形態に係る車両後部構造に用いられるダクト及びマフラーを示す斜視図である。
【図12】図11に示すダクトの閉断面部を示す縦断面図であって、閉断面部内の液体をマフラーの熱により暖める状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1〜図6を用いて、本発明に係る車両後部構造の第1実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印RRは車両後方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印OUTは車両幅方向外側を示している。
【0017】
図1には、本実施形態に係る車両後部構造が適用される車両が側面図にて示されている。図2には、本実施形態に係る車両後部構造が適用される車両の後部の車両幅方向一方側が背面図にて示されており、図3には、本実施形態に係る車両後部構造の構成が斜視図にて示されている。これらの図に示されるように、車両10の後部11には、車両下方側の後端部に樹脂製のリアバンパカバー12が取り付けられている。リアバンパカバー12は、車両10の後端部に車両幅方向に沿って配置される後面部12Aと、後面部12Aの車両幅方向両端部から車両前方側に延びる側面部12Bと、を備えている。車両10の後部11には、リアバンパカバー12の後面部12Aと側面部12Bとが交差する位置の上方側にリアコンビネーションランプ22が取り付けられている。なお、図1及び図3では、車両10の一方の側部のリアバンパカバー12の側面部12Bのみが図示されており、図2では、車両10の後部11の車両幅方向の一方側のみが図示されている。車両10の他方の側部は左右対称であるので図示を省略している。
【0018】
車両10の後部11には、リアバンパカバー12の側面部12Bの車両前方側に、リアタイヤ14を格納するリアホイールハウス16が設けられている。リアバンパカバー12の側面部12Bの前端には、リアタイヤ14と対向する位置にフェンダライナー18が設けられている。フェンダライナー18は、リアタイヤ14の周面に沿って車両上下方向及び車両幅方向に湾曲して形成されている。
【0019】
リアバンパカバー12の側面部12Bの車両幅方向内側には、車両前後方向に沿って空気通路部の一例としてのダクト(リアアウトレットとも言う)20が設けられている。ダクト20は、リアバンパカバー12とは別部材で形成されており、車両10の後部11の両サイドに設けられている(図3参照)。すなわち、ダクト20は、リアバンパカバー12の側面部12Bとその車両幅方向内側の車両本体との間に配置されており、車両本体に図示しない取付具により固定されている。ダクト20は、リアホイールハウス16の車両後方側に配置されている。車両10の後部11の両サイドのダクト20は左右対称に形成されている。
【0020】
図2〜図4に示されるように、ダクト20は、略車両前後方向に沿って配置された筒状体からなり、車両幅方向に沿った断面が車両上下方向に長い矩形状に形成されている。すなわち、ダクト20は、空気が流れる通路部21の車両幅方向内側と車両幅方向外側の側面を形成する側壁20A、20Bと、通路部21の上下面を形成する上壁20C及び下壁20Dと、を備えている。ダクト20の通路部21の前端部には、リアホイールハウス16内の空気が流入される流入開口30が形成されており、ダクト20の通路部21の後端部には、通路部21を通った空気が排出される排出開口32が形成されている。
【0021】
図4及び図6に示されるように、ダクト20の下壁20Dの下部には、車両前後方向に沿って密閉空間Sを形成する閉断面部34が設けられている。閉断面部34は、車両幅方向に沿った断面が矩形状に形成されており、下壁20Dの下方側に、左右両側の側壁20A、20Bと連続して車両上下方向に配置された側壁34A、34Bと、側壁34A、34Bの下端部を繋ぐように車両幅方向に沿って配置された底壁34Cと、を備えている(図6参照)。下壁20Dは、閉断面部34の上面部を形成している。また、閉断面部34は、閉断面部34の前端部を塞ぐように車両上下方向に沿って配置された前壁34Dと、閉断面部34の前端部を塞ぐように車両上下方向に沿って配置された後壁34Eと、を備えている(図4参照)。また、閉断面部34の前端部と後端部には、閉断面部34の内部を塞ぐように車両上下方向に沿って配置される前壁34Dと後壁34Eとが設けられている(図4参照)。この閉断面部34により、ダクト20の下壁20Dに沿って車両前後方向に密閉空間Sが形成されている。本実施形態では、密閉空間Sに気体の一例としての空気36が充填されている。
【0022】
図3に示されるように、フェンダライナー18には、ダクト20の流入開口30とほぼ同じ形状の開口が設けられており、ダクト20の流入開口30がフェンダライナー18の開口に連結されている。図2に示されるように、リアバンパカバー12の後面部12Aには、ダクト20の排出開口32とほぼ同じ形状の開口が設けられており、ダクト20の排出開口32が後面部12Aの開口に連結されている。すなわち、ダクト20の流入開口30はフェンダライナー18の開口を介してリアホイールハウス16と連通している。また、ダクト20の排出開口32はリアバンパカバー12の後面部12Aの開口を介して車両10の後部11の外部側と連通している。これによって、図3中の矢印に示されるように、リアホイールハウス16内の空気が流入開口30からダクト20の通路部21に流入し、空気がダクト20の通路部21を通って排出開口32からリアバンパカバー12の後面部12Aの後方側に向けて排出されるようになっている。
【0023】
図4及び図6に示されるように、車両10には、エンジン(図示省略)からの排気を車両10の後部11の後方側(車両外部)へ排出する排気管40が設けられている。排気管40の排気方向の先端部は、リアバンパカバー12の後面部12Aの下方側に配置されている(図2参照)。排気管40の排気方向の先端部付近には、排気ガスが外部へ排出される際の排気音を低減するためのマフラー42が取り付けられている。また、本実施形態では、リアバンパカバー12の後面部12Aの下方側に排気管40及びマフラー42が設けられているが、リアバンパカバー12の後面部12Aの下部に開口を設けて排気管40及びマフラー42を配設してもよい。
【0024】
ダクト20の閉断面部34は、マフラー42(又は排気管40)と対向する位置に設けられている。本実施形態では、ダクト20の閉断面部34は、マフラー42の車両幅方向外側における斜め上方側に所定の間隔をおいて配置されている。ダクト20の閉断面部34とマフラー42との間隔は、マフラー42からの熱が閉断面部34に伝達され、閉断面部34の密閉空間Sの空気36が暖められる距離に設定されている。すなわち、排気管40及びマフラー42は、閉断面部34の密閉空間Sの空気36を暖めるための「熱源」として作用する。
【0025】
これにより、ダクト20の流入開口30及び排出開口32付近に雪や氷が付着しても、閉断面部34の空気36が暖められていることにより、雪や氷が溶けるため、雪の付着・堆積や着氷が抑制されるようになっている。
【0026】
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0027】
図3及び図4等に示されるように、リアバンパカバー12の側面部12Bの車両幅方向内側には、車両前後方向に沿って筒状のダクト20が設けられており、ダクト20の前端部の流入開口30はフェンダライナー18の開口に連通され、ダクト20の後端部の排出開口32はリアバンパカバー12の後面部12Aの開口に連通されている。これによって、図3中の矢印に示されるように、リアホイールハウス16内の空気が流入開口30からダクト20の通路部21に流入し、更に空気が通路部21を通って排出開口32からリアバンパカバー12の後面部12Aの後方側(外部側)に排出される。これにより、空力性能が向上する。
【0028】
図4及び図6に示されるように、ダクト20の下壁20Dの下部には、車両前後方向に沿って密閉空間Sを形成する閉断面部34が設けられており、密閉空間Sには空気36が充填されている。ダクト20の閉断面部34は、マフラー42の車両幅方向外側における斜め上方側に所定の間隔をおいて配置されており、マフラー42からの熱によって、閉断面部34の密閉空間Sの空気36が暖められる。閉断面部34は密閉空間Sであるため、密閉空間Sの空気36が保温されると共に、密閉空間Sの空気36のほぼ全体に熱が伝わる。
【0029】
図5に示されるように、降雪時には、リアタイヤ14によってかき上げられた雪50がリアホイールハウス16内のフェンダライナー18付近に付着し、ダクト20の通路部21の下壁20D付近(特に流入開口30付近)に雪50が入り込む可能性がある。また、リアホイールハウス16内のフェンダライナー18及びダクト20の流入開口30付近に着氷が発生する可能性もある。さらに、降雪時には、リアバンパカバー12の後面部12Aのダクト20の排出開口32付近に雪50が入り込み、又は着氷が発生する可能性がある。
【0030】
本実施形態では、図6等に示されるように、マフラー42からの熱によって、閉断面部34の密閉空間Sの空気36が暖められていることで、ダクト20の通路部21に雪50が入り込んでも、閉断面部34の熱により雪50が溶ける。このため、ダクト20の通路部21(特に流入開口30及び排出開口32付近)への雪の付着・堆積や着氷を抑制することができる。したがって、着雪や着氷によりダクト20の通路部21の開口面積が狭まることを抑制することができる。
【0031】
次に、図7及び図8を用いて、本発明に係る車両後部構造の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0032】
図7及び図8に示されるように、本実施形態の車両後部構造に用いられる空気通路部の一例としてのダクト60には、通路部21の下部の下方側及び車両幅方向両側を略U字状に囲むように密閉空間Sを形成する閉断面部62が設けられている。すなわち、ダクト60の閉断面部62は、車両幅方向に沿った断面視にて、ダクト60の車両幅方向内側の側壁20Aから車両幅方向内側に延びた横壁62Aと、横壁62Aの車両幅方向内側端部から車両下方側に延びた縦壁62Bと、縦壁62Bの下端部から車両幅方向外側に延び、下壁20Dとほぼ平行に配置された底壁62Cと、底壁62Cの車両幅方向外側端部から車両上方側に延びた縦壁62Dと、縦壁62Dの上端部とダクト60の車両幅方向外側の側壁20Bとを繋ぐ横壁62Eと、を備えている。また、ダクト60の閉断面部62は、閉断面部62の前端部を塞ぐ前壁63Aと、閉断面部62の後端部を塞ぐ後壁63Bと、を備えている(図7参照)。これによって、閉断面部62は、通路部21の下部を囲むように車両前後方向に沿って配置された密閉空間Sとされており、密閉空間Sには空気36が充填されている。
【0033】
ダクト60の閉断面部62は、マフラー42の車両幅方向外側における斜め上方側に所定の間隔をおいて配置されている。これにより、マフラー42からの熱によって、閉断面部62の密閉空間Sの空気36が暖められる。
【0034】
このため、降雪時にダクト60の通路部21に雪が入り込んでも、閉断面部62の熱により雪が溶ける。これにより、ダクト60の通路部21(特に流入開口30及び排出開口32付近)への雪の付着・堆積や着氷を抑制することができる。また、ダクト60の通路部21の下部を囲むように閉断面部62が設けられているので、通路部21の下壁20Dへの雪の堆積や着氷をより確実に抑制することができる。
【0035】
次に、図9及び図10を用いて、本発明に係る車両後部構造の第3実施形態について説明する。なお、前述した第1及び第2実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0036】
図9及び図10に示されるように、本実施形態の車両後部構造に用いられる空気通路部の一例としてのダクト80には、通路部21の周囲を囲むように密閉空間Sを形成する閉断面部82が設けられている。ダクト80の閉断面部82は、通路部21の周囲に配置された矩形状の部材で構成されている。すなわち、ダクト80の閉断面部82は、車両幅方向に沿った断面視にて、上壁20Cの上方側に上壁20Cとほぼ平行に配置された横壁82Aと、横壁62Aの車両幅方向内側端部から車両下方側に延び、側壁20Aとほぼ平行に配置された縦壁82Bと、縦壁82Bの下端部から車両幅方向外側に延び、下壁20Dとほぼ平行に配置された底壁82Cと、底壁82Cの車両幅方向外側端部から車両上方側に延び、側壁20Bとほぼ平行に配置された縦壁82Dと、を備えている。また、ダクト80の閉断面部82は、閉断面部82の前端部を塞ぐ枠状の前壁83Aと、閉断面部82の後端部を塞ぐ枠状の後壁83Bと、を備えている(図9参照)。これによって、閉断面部82は、通路部21の周囲を囲むように車両前後方向に沿って配置された密閉空間Sとされており、密閉空間Sには空気36が充填されている。
【0037】
ダクト80の閉断面部82は、マフラー42の車両幅方向外側における斜め上方側に所定の間隔をおいて配置されている。これにより、マフラー42からの熱によって、閉断面部82の密閉空間Sの空気36が暖められる。
【0038】
このため、降雪時にダクト80の通路部21に雪が入り込んでも、閉断面部82の熱により雪が溶ける。これにより、ダクト80の通路部21(特に流入開口30及び排出開口32付近)への雪の付着・堆積や着氷を抑制することができる。また、ダクト80の通路部21の周囲を囲むように閉断面部82が設けられているので、通路部21の側壁20A、20Bへの雪の付着や着氷を抑制することができる。
【0039】
次に、図11及び図12を用いて、本発明に係る車両後部構造の第4実施形態について説明する。なお、前述した第1〜第3実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0040】
図11及び図12に示されるように、本実施形態の車両後部構造に用いられる空気通路部の一例としてのダクト100には、下壁20Dの下部に密閉空間Sを形成する閉断面部34が設けられている。閉断面部34の後壁34Eの上部には、密閉空間Sに液体110を注入するための筒状の注入口102が設けられている。注入口102の先端には、注入口102を塞ぐキャップ104が取り付けられている。
【0041】
ダクト100の閉断面部34には、注入口102から液体110を注入し、注入口102の先端にキャップ104を取り付けることで、液体110の漏れ出しが防止されるようになっている。液体110としては、寒冷地でも凍らず、かつマフラー42からの熱によって温度が上昇しやすい液体を用いることができ、例えば、エチレングリコールを主成分とする不凍液などが用いられる。
【0042】
ダクト100の閉断面部34は、マフラー42の車両幅方向外側における斜め上方側に所定の間隔をおいて配置されている。これにより、マフラー42からの熱によって、閉断面部34の密閉空間Sに充填されている液体110が暖められる。閉断面部82は密閉空間Sであるため、液体110が保温されると共に、液体110のほぼ全体に熱が伝わる。
【0043】
このため、ダクト100の通路部21に雪が入り込んでも、閉断面部34の熱により雪が溶ける。これにより、ダクト100の通路部21(特に流入開口30及び排出開口32付近)への雪の付着・堆積や着氷を抑制することができる。また、閉断面部34の密閉空間Sに液体110が充填されているため、液体110の種類を適切に選択することにより、閉断面部34の温度管理が容易となる。
【0044】
なお、第1〜第3実施形態では、ダクトの閉断面部に空気36が充填されているが、空気36以外の気体を充填してもよい。また、第2及び第3実施形態においても、ダクトの閉断面部に気体に限らず、液体を充填する構成としてもよい。
【0045】
また、第1〜第4実施形態では、マフラー42を熱源として、ダクトの閉断面部の密閉空間Sに充填された気体又は液体を暖める構成であるが、排気管40を熱源として用いる構成でもよい。すなわち、本発明の熱源としての「排気管」には、排気管単体のみならず、排気管に取り付けられるマフラーも含む。
【0046】
また、排気管以外の他の熱源を利用する構成でもよい。例えば、電気自動車又はハイブリット自動車に搭載される電池を熱源とし、閉断面部の密閉空間Sに充填された気体又は液体を暖める構成でもよい。電気自動車又はハイブリット自動車では、例えばリアフロアの床下に電池が搭載されており、この電池と対向する位置にダクトの閉断面部を配置する。これにより、電池の発熱を利用して閉断面部の密閉空間Sに充填された気体又は液体を暖めることができる。
【0047】
また、第1〜第4実施形態では、車両幅方向に沿った断面が車両上下方向に長い筒状のダクトを設けたが、これに限定されず、リアバンパカバーとその車両幅方向内側に配置されるインナパネルとを用いてダクト(空気通路部)を形成してもよい。この構成では、例えば、インナパネルに密閉空間Sを形成する閉断面部を設け、閉断面部の密閉空間Sに気体又は液体を充填する。これにより、車両後部の熱源からの熱を利用して閉断面部の気体又は液体を暖めることができる。
【符号の説明】
【0048】
10 車両
11 後部
12 リアバンパカバー
16 リアホイールハウス
20 ダクト(空気通路部)
21 通路部
32 排出開口
34 閉断面部
36 空気(気体)
40 排気管
42 マフラー
60 ダクト(空気通路部)
62 閉断面部
80 ダクト(空気通路部)
82 閉断面部
100 ダクト(空気通路部)
110 液体
S 密閉空間
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、リアバンパとクォータパネルとによって形成された通路部を備え、リアホイールハウス内の空気を通路部によりリアバンパの車両後部に向けて排出する構造が開示されている。この構造では、リアホイールハウス内の空気をリアバンパの車両後部に向けて排出することで、空気抵抗の低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−25369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、リアホイールハウス内に配置されるリアタイヤの後方に、空気を排出する通路部を設けると、降雪時にリアタイヤによってかき上げられた雪が通路部の入口付近に付着・堆積し、通路部の開口面積を狭める可能性がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、空気通路部に雪が付着・堆積することを抑制することができる車両後部構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係る車両後部構造は、リアバンパカバーの内側で、かつリアホイールハウスの車両後方側に設けられ、前記リアホイールハウス内の空気を前記リアバンパカバーの後部域に設けられた排出開口から車両後方へ排出する空気通路部と、前記空気通路部に設けられ、少なくとも車両後部に配置される熱源と対向する位置に密閉空間を形成する閉断面部と、を有するものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の車両後部構造において、前記密閉空間には、気体、又は液体が充填されているものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両後部構造において、前記熱源は、エンジンからの排気を前記リアバンパカバーの後部域から車両外部へ排出する排気管であるものである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両後部構造において、前記熱源は、電気自動車又はハイブリット自動車に搭載される電池であるものである。
【0010】
請求項1記載の本発明によれば、リアバンパカバーの内側かつリアホイールハウスの車両後方側に空気通路部が設けられており、この空気通路部によって、リアホイールハウス内の空気がリアバンパカバーの後部域に設けられた排出開口から車両後方へ排出される。空気通路部には、少なくとも車両後部に配置される熱源と対向する位置に密閉空間を形成する閉断面部が設けられており、熱源によって、閉断面部の密閉空間の内部が暖められる。その閉断面部の密閉空間からの熱によって、空気通路部に雪が付着・堆積することが抑制される。
【0011】
請求項2記載の本発明によれば、閉断面部の密閉空間には、気体又は液体が充填されており、熱源によって、閉断面部の内部の気体又は液体が暖められる。その閉断面部の気体又は液体の熱によって、空気通路部に雪が付着・堆積することがより効果的に抑制される。
【0012】
請求項3記載の本発明によれば、熱源が、エンジンからの排気をリアバンパカバーの後部域から車両外部へ排出する排気管であり、排気管からの熱によって、閉断面部の密閉空間の内部(気体又は液体)が暖められる。このため、空気通路部に雪が付着・堆積することがより効果的に抑制される。
【0013】
請求項4記載の本発明によれば、熱源が、電気自動車又はハイブリット自動車に搭載される電池であり、電池の発熱によって、閉断面部の密閉空間の内部(気体又は液体)が暖められる。このため、空気通路部に雪が付着・堆積することがより効果的に抑制される。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る車両後部構造によれば、空気通路部に雪が付着・堆積することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態に係る車両後部構造が適用された車両を示す側面図である。
【図2】第1実施形態に係る車両後部構造が適用された車両の後部のダクト付近の構成を示す背面図である。
【図3】第1実施形態に係る車両後部構造に用いられるリアバンパカバーの内側のダクト付近の構成を示す斜視図である。
【図4】第1実施形態に係る車両後部構造に用いられるダクト及びマフラーを示す斜視図である。
【図5】ダクトの流入開口及び排出開口付近に雪の付着や着氷が生じる状態を模式的に示す斜視図である。
【図6】図4に示すダクトの閉断面部を示す縦断面図であって、閉断面部内の空気をマフラーの熱により暖める状態を示す図である。
【図7】第2実施形態に係る車両後部構造に用いられるダクト及びマフラーを示す斜視図である。
【図8】図7に示すダクトの閉断面部を示す縦断面図であって、閉断面部内の空気をマフラーの熱により暖める状態を示す図である。
【図9】第3実施形態に係る車両後部構造に用いられるダクト及びマフラーを示す斜視図である。
【図10】図9に示すダクトの閉断面部を示す縦断面図であって、閉断面部内の空気をマフラーの熱により暖める状態を示す図である。
【図11】第4実施形態に係る車両後部構造に用いられるダクト及びマフラーを示す斜視図である。
【図12】図11に示すダクトの閉断面部を示す縦断面図であって、閉断面部内の液体をマフラーの熱により暖める状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1〜図6を用いて、本発明に係る車両後部構造の第1実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印RRは車両後方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印OUTは車両幅方向外側を示している。
【0017】
図1には、本実施形態に係る車両後部構造が適用される車両が側面図にて示されている。図2には、本実施形態に係る車両後部構造が適用される車両の後部の車両幅方向一方側が背面図にて示されており、図3には、本実施形態に係る車両後部構造の構成が斜視図にて示されている。これらの図に示されるように、車両10の後部11には、車両下方側の後端部に樹脂製のリアバンパカバー12が取り付けられている。リアバンパカバー12は、車両10の後端部に車両幅方向に沿って配置される後面部12Aと、後面部12Aの車両幅方向両端部から車両前方側に延びる側面部12Bと、を備えている。車両10の後部11には、リアバンパカバー12の後面部12Aと側面部12Bとが交差する位置の上方側にリアコンビネーションランプ22が取り付けられている。なお、図1及び図3では、車両10の一方の側部のリアバンパカバー12の側面部12Bのみが図示されており、図2では、車両10の後部11の車両幅方向の一方側のみが図示されている。車両10の他方の側部は左右対称であるので図示を省略している。
【0018】
車両10の後部11には、リアバンパカバー12の側面部12Bの車両前方側に、リアタイヤ14を格納するリアホイールハウス16が設けられている。リアバンパカバー12の側面部12Bの前端には、リアタイヤ14と対向する位置にフェンダライナー18が設けられている。フェンダライナー18は、リアタイヤ14の周面に沿って車両上下方向及び車両幅方向に湾曲して形成されている。
【0019】
リアバンパカバー12の側面部12Bの車両幅方向内側には、車両前後方向に沿って空気通路部の一例としてのダクト(リアアウトレットとも言う)20が設けられている。ダクト20は、リアバンパカバー12とは別部材で形成されており、車両10の後部11の両サイドに設けられている(図3参照)。すなわち、ダクト20は、リアバンパカバー12の側面部12Bとその車両幅方向内側の車両本体との間に配置されており、車両本体に図示しない取付具により固定されている。ダクト20は、リアホイールハウス16の車両後方側に配置されている。車両10の後部11の両サイドのダクト20は左右対称に形成されている。
【0020】
図2〜図4に示されるように、ダクト20は、略車両前後方向に沿って配置された筒状体からなり、車両幅方向に沿った断面が車両上下方向に長い矩形状に形成されている。すなわち、ダクト20は、空気が流れる通路部21の車両幅方向内側と車両幅方向外側の側面を形成する側壁20A、20Bと、通路部21の上下面を形成する上壁20C及び下壁20Dと、を備えている。ダクト20の通路部21の前端部には、リアホイールハウス16内の空気が流入される流入開口30が形成されており、ダクト20の通路部21の後端部には、通路部21を通った空気が排出される排出開口32が形成されている。
【0021】
図4及び図6に示されるように、ダクト20の下壁20Dの下部には、車両前後方向に沿って密閉空間Sを形成する閉断面部34が設けられている。閉断面部34は、車両幅方向に沿った断面が矩形状に形成されており、下壁20Dの下方側に、左右両側の側壁20A、20Bと連続して車両上下方向に配置された側壁34A、34Bと、側壁34A、34Bの下端部を繋ぐように車両幅方向に沿って配置された底壁34Cと、を備えている(図6参照)。下壁20Dは、閉断面部34の上面部を形成している。また、閉断面部34は、閉断面部34の前端部を塞ぐように車両上下方向に沿って配置された前壁34Dと、閉断面部34の前端部を塞ぐように車両上下方向に沿って配置された後壁34Eと、を備えている(図4参照)。また、閉断面部34の前端部と後端部には、閉断面部34の内部を塞ぐように車両上下方向に沿って配置される前壁34Dと後壁34Eとが設けられている(図4参照)。この閉断面部34により、ダクト20の下壁20Dに沿って車両前後方向に密閉空間Sが形成されている。本実施形態では、密閉空間Sに気体の一例としての空気36が充填されている。
【0022】
図3に示されるように、フェンダライナー18には、ダクト20の流入開口30とほぼ同じ形状の開口が設けられており、ダクト20の流入開口30がフェンダライナー18の開口に連結されている。図2に示されるように、リアバンパカバー12の後面部12Aには、ダクト20の排出開口32とほぼ同じ形状の開口が設けられており、ダクト20の排出開口32が後面部12Aの開口に連結されている。すなわち、ダクト20の流入開口30はフェンダライナー18の開口を介してリアホイールハウス16と連通している。また、ダクト20の排出開口32はリアバンパカバー12の後面部12Aの開口を介して車両10の後部11の外部側と連通している。これによって、図3中の矢印に示されるように、リアホイールハウス16内の空気が流入開口30からダクト20の通路部21に流入し、空気がダクト20の通路部21を通って排出開口32からリアバンパカバー12の後面部12Aの後方側に向けて排出されるようになっている。
【0023】
図4及び図6に示されるように、車両10には、エンジン(図示省略)からの排気を車両10の後部11の後方側(車両外部)へ排出する排気管40が設けられている。排気管40の排気方向の先端部は、リアバンパカバー12の後面部12Aの下方側に配置されている(図2参照)。排気管40の排気方向の先端部付近には、排気ガスが外部へ排出される際の排気音を低減するためのマフラー42が取り付けられている。また、本実施形態では、リアバンパカバー12の後面部12Aの下方側に排気管40及びマフラー42が設けられているが、リアバンパカバー12の後面部12Aの下部に開口を設けて排気管40及びマフラー42を配設してもよい。
【0024】
ダクト20の閉断面部34は、マフラー42(又は排気管40)と対向する位置に設けられている。本実施形態では、ダクト20の閉断面部34は、マフラー42の車両幅方向外側における斜め上方側に所定の間隔をおいて配置されている。ダクト20の閉断面部34とマフラー42との間隔は、マフラー42からの熱が閉断面部34に伝達され、閉断面部34の密閉空間Sの空気36が暖められる距離に設定されている。すなわち、排気管40及びマフラー42は、閉断面部34の密閉空間Sの空気36を暖めるための「熱源」として作用する。
【0025】
これにより、ダクト20の流入開口30及び排出開口32付近に雪や氷が付着しても、閉断面部34の空気36が暖められていることにより、雪や氷が溶けるため、雪の付着・堆積や着氷が抑制されるようになっている。
【0026】
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0027】
図3及び図4等に示されるように、リアバンパカバー12の側面部12Bの車両幅方向内側には、車両前後方向に沿って筒状のダクト20が設けられており、ダクト20の前端部の流入開口30はフェンダライナー18の開口に連通され、ダクト20の後端部の排出開口32はリアバンパカバー12の後面部12Aの開口に連通されている。これによって、図3中の矢印に示されるように、リアホイールハウス16内の空気が流入開口30からダクト20の通路部21に流入し、更に空気が通路部21を通って排出開口32からリアバンパカバー12の後面部12Aの後方側(外部側)に排出される。これにより、空力性能が向上する。
【0028】
図4及び図6に示されるように、ダクト20の下壁20Dの下部には、車両前後方向に沿って密閉空間Sを形成する閉断面部34が設けられており、密閉空間Sには空気36が充填されている。ダクト20の閉断面部34は、マフラー42の車両幅方向外側における斜め上方側に所定の間隔をおいて配置されており、マフラー42からの熱によって、閉断面部34の密閉空間Sの空気36が暖められる。閉断面部34は密閉空間Sであるため、密閉空間Sの空気36が保温されると共に、密閉空間Sの空気36のほぼ全体に熱が伝わる。
【0029】
図5に示されるように、降雪時には、リアタイヤ14によってかき上げられた雪50がリアホイールハウス16内のフェンダライナー18付近に付着し、ダクト20の通路部21の下壁20D付近(特に流入開口30付近)に雪50が入り込む可能性がある。また、リアホイールハウス16内のフェンダライナー18及びダクト20の流入開口30付近に着氷が発生する可能性もある。さらに、降雪時には、リアバンパカバー12の後面部12Aのダクト20の排出開口32付近に雪50が入り込み、又は着氷が発生する可能性がある。
【0030】
本実施形態では、図6等に示されるように、マフラー42からの熱によって、閉断面部34の密閉空間Sの空気36が暖められていることで、ダクト20の通路部21に雪50が入り込んでも、閉断面部34の熱により雪50が溶ける。このため、ダクト20の通路部21(特に流入開口30及び排出開口32付近)への雪の付着・堆積や着氷を抑制することができる。したがって、着雪や着氷によりダクト20の通路部21の開口面積が狭まることを抑制することができる。
【0031】
次に、図7及び図8を用いて、本発明に係る車両後部構造の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0032】
図7及び図8に示されるように、本実施形態の車両後部構造に用いられる空気通路部の一例としてのダクト60には、通路部21の下部の下方側及び車両幅方向両側を略U字状に囲むように密閉空間Sを形成する閉断面部62が設けられている。すなわち、ダクト60の閉断面部62は、車両幅方向に沿った断面視にて、ダクト60の車両幅方向内側の側壁20Aから車両幅方向内側に延びた横壁62Aと、横壁62Aの車両幅方向内側端部から車両下方側に延びた縦壁62Bと、縦壁62Bの下端部から車両幅方向外側に延び、下壁20Dとほぼ平行に配置された底壁62Cと、底壁62Cの車両幅方向外側端部から車両上方側に延びた縦壁62Dと、縦壁62Dの上端部とダクト60の車両幅方向外側の側壁20Bとを繋ぐ横壁62Eと、を備えている。また、ダクト60の閉断面部62は、閉断面部62の前端部を塞ぐ前壁63Aと、閉断面部62の後端部を塞ぐ後壁63Bと、を備えている(図7参照)。これによって、閉断面部62は、通路部21の下部を囲むように車両前後方向に沿って配置された密閉空間Sとされており、密閉空間Sには空気36が充填されている。
【0033】
ダクト60の閉断面部62は、マフラー42の車両幅方向外側における斜め上方側に所定の間隔をおいて配置されている。これにより、マフラー42からの熱によって、閉断面部62の密閉空間Sの空気36が暖められる。
【0034】
このため、降雪時にダクト60の通路部21に雪が入り込んでも、閉断面部62の熱により雪が溶ける。これにより、ダクト60の通路部21(特に流入開口30及び排出開口32付近)への雪の付着・堆積や着氷を抑制することができる。また、ダクト60の通路部21の下部を囲むように閉断面部62が設けられているので、通路部21の下壁20Dへの雪の堆積や着氷をより確実に抑制することができる。
【0035】
次に、図9及び図10を用いて、本発明に係る車両後部構造の第3実施形態について説明する。なお、前述した第1及び第2実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0036】
図9及び図10に示されるように、本実施形態の車両後部構造に用いられる空気通路部の一例としてのダクト80には、通路部21の周囲を囲むように密閉空間Sを形成する閉断面部82が設けられている。ダクト80の閉断面部82は、通路部21の周囲に配置された矩形状の部材で構成されている。すなわち、ダクト80の閉断面部82は、車両幅方向に沿った断面視にて、上壁20Cの上方側に上壁20Cとほぼ平行に配置された横壁82Aと、横壁62Aの車両幅方向内側端部から車両下方側に延び、側壁20Aとほぼ平行に配置された縦壁82Bと、縦壁82Bの下端部から車両幅方向外側に延び、下壁20Dとほぼ平行に配置された底壁82Cと、底壁82Cの車両幅方向外側端部から車両上方側に延び、側壁20Bとほぼ平行に配置された縦壁82Dと、を備えている。また、ダクト80の閉断面部82は、閉断面部82の前端部を塞ぐ枠状の前壁83Aと、閉断面部82の後端部を塞ぐ枠状の後壁83Bと、を備えている(図9参照)。これによって、閉断面部82は、通路部21の周囲を囲むように車両前後方向に沿って配置された密閉空間Sとされており、密閉空間Sには空気36が充填されている。
【0037】
ダクト80の閉断面部82は、マフラー42の車両幅方向外側における斜め上方側に所定の間隔をおいて配置されている。これにより、マフラー42からの熱によって、閉断面部82の密閉空間Sの空気36が暖められる。
【0038】
このため、降雪時にダクト80の通路部21に雪が入り込んでも、閉断面部82の熱により雪が溶ける。これにより、ダクト80の通路部21(特に流入開口30及び排出開口32付近)への雪の付着・堆積や着氷を抑制することができる。また、ダクト80の通路部21の周囲を囲むように閉断面部82が設けられているので、通路部21の側壁20A、20Bへの雪の付着や着氷を抑制することができる。
【0039】
次に、図11及び図12を用いて、本発明に係る車両後部構造の第4実施形態について説明する。なお、前述した第1〜第3実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0040】
図11及び図12に示されるように、本実施形態の車両後部構造に用いられる空気通路部の一例としてのダクト100には、下壁20Dの下部に密閉空間Sを形成する閉断面部34が設けられている。閉断面部34の後壁34Eの上部には、密閉空間Sに液体110を注入するための筒状の注入口102が設けられている。注入口102の先端には、注入口102を塞ぐキャップ104が取り付けられている。
【0041】
ダクト100の閉断面部34には、注入口102から液体110を注入し、注入口102の先端にキャップ104を取り付けることで、液体110の漏れ出しが防止されるようになっている。液体110としては、寒冷地でも凍らず、かつマフラー42からの熱によって温度が上昇しやすい液体を用いることができ、例えば、エチレングリコールを主成分とする不凍液などが用いられる。
【0042】
ダクト100の閉断面部34は、マフラー42の車両幅方向外側における斜め上方側に所定の間隔をおいて配置されている。これにより、マフラー42からの熱によって、閉断面部34の密閉空間Sに充填されている液体110が暖められる。閉断面部82は密閉空間Sであるため、液体110が保温されると共に、液体110のほぼ全体に熱が伝わる。
【0043】
このため、ダクト100の通路部21に雪が入り込んでも、閉断面部34の熱により雪が溶ける。これにより、ダクト100の通路部21(特に流入開口30及び排出開口32付近)への雪の付着・堆積や着氷を抑制することができる。また、閉断面部34の密閉空間Sに液体110が充填されているため、液体110の種類を適切に選択することにより、閉断面部34の温度管理が容易となる。
【0044】
なお、第1〜第3実施形態では、ダクトの閉断面部に空気36が充填されているが、空気36以外の気体を充填してもよい。また、第2及び第3実施形態においても、ダクトの閉断面部に気体に限らず、液体を充填する構成としてもよい。
【0045】
また、第1〜第4実施形態では、マフラー42を熱源として、ダクトの閉断面部の密閉空間Sに充填された気体又は液体を暖める構成であるが、排気管40を熱源として用いる構成でもよい。すなわち、本発明の熱源としての「排気管」には、排気管単体のみならず、排気管に取り付けられるマフラーも含む。
【0046】
また、排気管以外の他の熱源を利用する構成でもよい。例えば、電気自動車又はハイブリット自動車に搭載される電池を熱源とし、閉断面部の密閉空間Sに充填された気体又は液体を暖める構成でもよい。電気自動車又はハイブリット自動車では、例えばリアフロアの床下に電池が搭載されており、この電池と対向する位置にダクトの閉断面部を配置する。これにより、電池の発熱を利用して閉断面部の密閉空間Sに充填された気体又は液体を暖めることができる。
【0047】
また、第1〜第4実施形態では、車両幅方向に沿った断面が車両上下方向に長い筒状のダクトを設けたが、これに限定されず、リアバンパカバーとその車両幅方向内側に配置されるインナパネルとを用いてダクト(空気通路部)を形成してもよい。この構成では、例えば、インナパネルに密閉空間Sを形成する閉断面部を設け、閉断面部の密閉空間Sに気体又は液体を充填する。これにより、車両後部の熱源からの熱を利用して閉断面部の気体又は液体を暖めることができる。
【符号の説明】
【0048】
10 車両
11 後部
12 リアバンパカバー
16 リアホイールハウス
20 ダクト(空気通路部)
21 通路部
32 排出開口
34 閉断面部
36 空気(気体)
40 排気管
42 マフラー
60 ダクト(空気通路部)
62 閉断面部
80 ダクト(空気通路部)
82 閉断面部
100 ダクト(空気通路部)
110 液体
S 密閉空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リアバンパカバーの内側で、かつリアホイールハウスの車両後方側に設けられ、前記リアホイールハウス内の空気を前記リアバンパカバーの後部域に設けられた排出開口から車両後方へ排出する空気通路部と、
前記空気通路部に設けられ、少なくとも車両後部に配置される熱源と対向する位置に密閉空間を形成する閉断面部と、
を有する車両後部構造。
【請求項2】
前記密閉空間には、気体、又は液体が充填されている請求項1に記載の車両後部構造。
【請求項3】
前記熱源は、エンジンからの排気を前記リアバンパカバーの後部域から車両外部へ排出する排気管である請求項1又は請求項2に記載の車両後部構造。
【請求項4】
前記熱源は、電気自動車又はハイブリット自動車に搭載される電池である請求項1又は請求項2に記載の車両後部構造。
【請求項1】
リアバンパカバーの内側で、かつリアホイールハウスの車両後方側に設けられ、前記リアホイールハウス内の空気を前記リアバンパカバーの後部域に設けられた排出開口から車両後方へ排出する空気通路部と、
前記空気通路部に設けられ、少なくとも車両後部に配置される熱源と対向する位置に密閉空間を形成する閉断面部と、
を有する車両後部構造。
【請求項2】
前記密閉空間には、気体、又は液体が充填されている請求項1に記載の車両後部構造。
【請求項3】
前記熱源は、エンジンからの排気を前記リアバンパカバーの後部域から車両外部へ排出する排気管である請求項1又は請求項2に記載の車両後部構造。
【請求項4】
前記熱源は、電気自動車又はハイブリット自動車に搭載される電池である請求項1又は請求項2に記載の車両後部構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−52787(P2013−52787A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192942(P2011−192942)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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