説明

車両後部構造

【課題】リアバンパカバーの後面の排出開口から泥水が流出すること抑制することができる車両後部構造を得る。
【解決手段】リアバンパカバー12の内側かつリアホイールハウス16の車両後方側に、リアホイールハウス16内の空気をリアバンパカバー12の車両後部側に向けて排出する空気通路部としてのリアアウトレット20が設けられている。リアアウトレット20の下部を構成する底壁26には、流入開口30から排出開口32に向けて車両上方に傾斜するように形成された前側傾斜面26Aと後側傾斜面26Bが形成されており、前側傾斜面26Aと後側傾斜面26Bとの間には、車両外部と連通する貫通穴34が設けられている。貫通穴34は、穴部36から前側傾斜面26Aの下方側に設けられた排出通路部38を介して開口部40により車両外部と連通している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、リアバンパとクォータパネルとによって形成された通路部を備え、リアホイールハウス内の空気を通路部によりリアバンパの後面に設けられた開口から車両後方へ排出する構造が開示されている。この構造では、リアホイールハウス内の空気を通路部からリアバンパの開口の車両後方に向けて吹き出すことで、車両の空気抵抗の低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−25369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、雨天の車両走行時などに、リアタイヤによって巻き上げられた泥水がリアホイールハウスの後方に設けられた通路部を通り、リアバンパの後面の開口から泥水がリアバンパの下方に伝い流れ、リアバンパ後部の見栄えを悪化させる可能性がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、リアバンパカバーの後面の排出開口から泥水が流出すること抑制することができる車両後部構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係る車両後部構造は、リアバンパカバーの内側で、かつリアホイールハウスの車両後方側に設けられ、前記リアホイールハウス内の空気を前記リアバンパカバーの後部域に設けられた排出開口から車両後方へ排出する空気通路部と、前記空気通路部の下部を構成する底壁に設けられ、前記空気通路部に空気が流入する流入開口から前記排出開口に向けて車両上方に傾斜した傾斜面と、前記傾斜面の車両前後方向の途中に設けられ、車両外部と連通する少なくとも1つの貫通穴と、を有するものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1記載の車両後部構造において、前記貫通穴より車両前方側に配置された前側傾斜面の水平面に対する傾斜角度をθ1とし、前記貫通穴より車両後方側に配置された後側傾斜面の水平面に対する傾斜角度をθ2としたとき、θ1≧θ2とされているものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両後部構造において、前記貫通穴の車両後方に、前記貫通穴の壁面から車両上方側に延びると共に、車両幅方向に沿って配置された縦壁部を有するものである。
【0009】
請求項1記載の本発明によれば、リアバンパカバーの内側かつリアホイールハウスの車両後方側に設けられた空気通路部によって、リアホイールハウス内の空気がリアバンパカバーの後部域に設けられた排出開口から車両後方へ排出される。空気通路部の下部を構成する底壁には、空気通路部の流入開口から排出開口に向けて車両上方に傾斜した傾斜面が設けられており、傾斜面の車両前後方向の途中には、車両外部と連通する少なくとも1つの貫通穴が設けられている。これによって、雨天の車両走行時などに、空気通路部内に泥水が浸入したときに、泥水は流入開口から排出開口に向けて車両上方に傾斜した傾斜面に沿って移動し、傾斜面に沿って移動してきた泥水が貫通穴から車両外部に排出される。これにより、泥水が空気通路部の排出開口に至る前に車両外部に排出され、排出開口から泥水が流出することが抑制される。このため、リアバンパカバーからの泥水の垂れ下がりなどのリアバンパカバーの後面の見栄えの悪化を抑制することができる。
【0010】
請求項2記載の本発明によれば、貫通穴より車両前方側に配置された前側傾斜面の水平面に対する傾斜角度をθ1とし、貫通穴より車両後方側に配置された後側傾斜面の水平面に対する傾斜角度をθ2としたとき、θ1≧θ2とされており、空気通路部内を流入開口から排出開口に向けて空気が流れるときに、前側傾斜面に沿って流れる空気が後側傾斜面に当たることが抑制される。このため、空気通路部内の空気の流れに乱れを生じさせることを抑制することができる。
【0011】
請求項3記載の本発明によれば、貫通穴の車両後方に、貫通穴の壁面から車両上方側に延びると共に、車両幅方向に沿って配置された縦壁部が設けられており、貫通穴の車両前側の傾斜面に沿って飛ばされた泥水が縦壁部に当り、縦壁部を伝って貫通穴に落下する。このため、空気通路部の排出開口から泥水が流出することがより効果的に抑制される。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る車両後部構造によれば、リアバンパカバーの後面の排出開口から泥水が流出すること抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態に係る車両後部構造が適用された車両を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る車両後部構造が適用された車両の後部のリアアウトレット付近の構成を示す側面図である。
【図3】第1実施形態に係る車両後部構造が適用された車両の後部のリアアウトレット付近の構成を示す斜視図である。
【図4】第1実施形態に係る車両後部構造に用いられるリアアウトレットを示す車両前後方向に沿った縦断面図である。
【図5】図4に示すリアアウトレットの貫通穴の前後における傾斜面の水平面に対する傾斜角度を示す縦断面図である。
【図6】第2実施形態に係る車両後部構造に用いられるリアアウトレットを示す車両前後方向に沿った縦断面図である。
【図7】第3実施形態に係る車両後部構造に用いられるリアアウトレットを示す車両前後方向に沿った縦断面図である。
【図8】第4実施形態に係る車両後部構造に用いられるリアアウトレットを示す車両前後方向に沿った縦断面図である。
【図9】参考例に係る車両後部構造に用いられるリアアウトレットを示す車両前後方向に沿った縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1〜図5を用いて、本発明に係る車両後部構造の第1実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印RRは車両後方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印OUTは車両幅方向外側を示している。
【0015】
図1には、本実施形態に係る車両後部構造が適用される車両が斜視図にて示されている。図2には、本実施形態に係る車両後部構造が適用される車両の後部が側面図にて示されており、図3には、本実施形態に係る車両後部構造が適用される車両の後部が斜視図にて示されている。これらの図に示されるように、車両10の後部11には、車両下方側の後端部に樹脂製のリアバンパカバー12が取り付けられている。リアバンパカバー12は、車両10の後端部に車両幅方向に沿って配置される後面部12A(図2参照)と、後面部12Aの車両幅方向両端部から車両前方側に延びる側面部12Bと、を備えている。車両10の後部11には、リアバンパカバー12の後面部12Aと側面部12Bとが交差する位置の上方側にリアコンビネーションランプ22が取り付けられている。なお、図2、図3では、車両10の一方の側部のリアバンパカバー12の側面部12Bのみが図示されており、車両10の他方の側部は左右対称であるので図示を省略している。
【0016】
車両10の後部11には、リアバンパカバー12の側面部12Bの車両前方側に、リアタイヤ14を格納するリアホイールハウス16が設けられている。リアバンパカバー12の側面部12Bの前端には、リアタイヤ14と対向する位置にフェンダライナー18が設けられている。フェンダライナー18は、リアタイヤ14の周面に沿って車両上下方向及び車両幅方向に湾曲して形成されている。
【0017】
リアバンパカバー12の側面部12Bの車両幅方向内側には、車両前後方向に沿って空気通路部の一例としてのリアアウトレット(ダクト)20が設けられている。リアアウトレット20は、車両10の後部11の両サイドに設けられている。リアアウトレット20は、リアバンパカバー12の側面部12Bとその車両幅方向内側の車両本体との間に配置されており、車両本体に図示しない取付具により固定されている。リアアウトレット20は、リアホイールハウス16の車両後方側に配置されている。車両10の後部の両サイドのリアアウトレット20は左右対称に形成されている。
【0018】
図2〜図4に示されるように、リアアウトレット20は、内部に通路部21を備えた筒状体からなり、車両幅方向に沿った断面が車両上下方向に長い矩形状に形成されている。リアアウトレット20の通路部21の前端部には、リアホイールハウス16内の空気が流入される流入開口30が形成されており、リアアウトレット20の通路部21の後端部には、リアアウトレット20内を通った空気が排出される排出開口32が形成されている。
【0019】
より詳細には、リアアウトレット20は、空気が流れる通路部21の側面を形成する左右一対の側壁24と、車両下方に車両前後方向に沿って配置されて通路部21の下面(底面)を形成する底壁26と、車両上方に車両前後方向に沿って配置されて通路部21の上面を形成する天井壁28と、を備えている。
【0020】
フェンダライナー18には、リアアウトレット20の流入開口30とほぼ同じ形状の開口(図示省略)が設けられており、リアアウトレット20の流入開口30がフェンダライナー18の開口に接続されている(図1及び図3参照)。リアバンパカバー12の後面部12Aには、リアアウトレット20の排出開口32とほぼ同じ形状の開口(図示省略)が設けられており、リアアウトレット20の排出開口32が後面部12Aの開口に接続されている(図2参照)。すなわち、リアアウトレット20の流入開口30はフェンダライナー18の開口を介してリアホイールハウス16と連通している。また、リアアウトレット20の排出開口32はリアバンパカバー12の後面部12Aの開口を介して車両10の後部11の外部側と連通している。これによって、リアホイールハウス16内の空気が流入開口30からリアアウトレット20の通路部21に流入し、空気がリアアウトレット20の通路部21を通って排出開口32からリアバンパカバー12の後面部12Aの後方側(車両外部)へ排出されるようになっている。
【0021】
図4に示されるように、リアアウトレット20の通路部21の下面を構成する底壁26は、車両側面視にて流入開口30から車両後方側に向かって上り勾配となるように傾斜する前側傾斜面26Aと、前側傾斜面26Aの車両後方に設けられた穴部36と、穴部36の車両後方側に配置されて排出開口32に向かって上り勾配となるように傾斜する後側傾斜面26Bと、を備えている。言い換えると、車両側面視にて底壁26の車両前後方向の途中に、すなわち、前側傾斜面26Aの後端部と後側傾斜面26Bの前端部との間に、車両外部と連通する貫通穴34が設けられている。
【0022】
リアアウトレット20の底壁26の車両前後方向の途中に設けられた貫通穴34は、底壁26に凹状に形成された穴部36と、穴部36と連通し前側傾斜面26Aの下方側に車両前後方向に沿って形成された排出通路部38と、流入開口30の下方側に排出通路部38と連通する開口部40と、を含んで構成されている。すなわち、穴部36は、排出通路部38を介して開口部40と連通している。開口部40は、フェンダライナー18に設けられた開口(図示省略)に接続されている。
【0023】
車両側面視にて排出通路部38の下面には、穴部36から車両前方側の開口部40に向かって下り勾配となる傾斜面42が形成されている。貫通穴34を構成する穴部36と排出通路部38と開口部40は、リアアウトレット20の下部の車両幅方向のほぼ全幅に設けられている。リアアウトレット20には、貫通穴34と後側傾斜面26Bの下方側、及び穴部36と排出通路部38の車両幅方向両側等を囲むように壁体44が設けられている。
【0024】
このリアアウトレット20では、雨天の車両走行時などに、リアタイヤ14によって路面50から巻き上げられた(跳ね上げられた)泥水52がリアアウトレット20の通路部21に浸入したときに、泥水52が前側傾斜面26Aに沿って車両後方側に移動し(泥水52が前側傾斜面26Aを車両後方側に上がっていき)、泥水52が前側傾斜面26Aの後方の貫通穴34の穴部36に落下する。そして、泥水52は、貫通穴34を通って車両外部に排出されるようになっている。言い換えると、泥水52は、穴部36から排出通路部38の傾斜面42を伝って車両前方側の開口部40から車両外部に排出されるようになっている。これにより、泥水52がリアアウトレット20の排出開口32からリアバンパカバー12の後面部12A側に流出することが抑制されるようになっている。
【0025】
図5に示されるように、貫通穴34の穴部36より車両前方側に配置された前側傾斜面26Aの水平面(例えば、路面50など)に対する傾斜角度をθ1とし、穴部36より車両後方側に配置された後側傾斜面26Bの水平面に対する傾斜角度をθ2としたとき、前側傾斜面26Aの傾斜角度θ1と後側傾斜面26Bの傾斜角度θ2とがほぼ同じ(θ1=θ2)になるように設定されている。また、前側傾斜面26Aの延長線上に後側傾斜面26Bが配置されるように設定されている。これによって、リアアウトレット20の流入開口30から通路部21に流入した空気が、前側傾斜面26Aと後側傾斜面26Bに沿ってスムーズに流れ、排出開口32から排出されるようになっている。このため、通路部21の整流効果が低下することが抑制されるようになっている。
【0026】
また、リアアウトレット20の通路部21の上面を構成する天井壁28は、車両側面視にて流入開口30から排出開口32に向かってやや上り勾配となるように傾斜した傾斜面とされている。なお、天井壁28は、必ずしも流入開口30から排出開口32に向かって上り勾配となる傾斜面とする必要はなく、例えば、流入開口30から排出開口32に向かってほぼ水平に形成してもよい。
【0027】
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0028】
リアバンパカバー12の側面部12Bの車両幅方向内側には、車両前後方向に沿ってリアアウトレット20が設けられており、リアアウトレット20の前端部の流入開口30はフェンダライナー18の開口に連通されており、リアアウトレット20の排出開口32はリアバンパカバー12の後面部12Aの開口に連通されている。これによって、リアホイールハウス16内の空気が流入開口30からリアアウトレット20の通路部21に流入し、更に空気がリアアウトレット20の通路部21を通って排出開口32からリアバンパカバー12の後面部12Aの後方側(車両10の後部11の外部側)へ排出される。すなわち、図4に示されるように、リアアウトレット20の流入開口30から排出開口32に向かって矢印A方向に空気が流れる。
【0029】
図4に示されるように、リアアウトレット20の通路部21の下面を構成する底壁26には、車両側面視にて流入開口30から車両後方側の排出開口32に向かって上り勾配となる前側傾斜面26A及び後側傾斜面26Bと、前側傾斜面26Aと後側傾斜面26Bとの間に車両外部と連通するように形成された貫通穴34と、が設けられている。貫通穴34は、底壁26に形成された穴部36と、穴部36と連通し前側傾斜面26Aの下方側に車両前後方向に沿って形成された排出通路部38と、排出通路部38と連通し車両前方側のフェンダライナー18に開口(図示省略)に接続される開口部40と、を備えている。
【0030】
このような車両後部構造では、雨天の車両走行時などに、リアタイヤ14により路面50から巻き上げられた(跳ね上げられた)重量物としての泥水52がリアアウトレット20の流入開口30から通路部21に浸入したときに、泥水52が前側傾斜面26Aに沿って車両後方側に移動する。すなわち、泥水52が前側傾斜面26Aを車両後方側に向かって上がっていく。
【0031】
そして、泥水52は、矢印Bに示されるように前側傾斜面26Aの後方(底壁26の車両前後方向の途中)に設けられた貫通穴34の穴部36に落下し、泥水52は排出通路部38の傾斜面42を伝って矢印Cに示されるように車両前方側の開口部40から車両外部に排出される。これにより、リアアウトレット20の通路部21に入り込んだ泥水52が排出開口32に至る前に、泥水52は貫通穴34を通って車両外部に排出される。このため、泥水52がリアアウトレット20の通路部21の排出開口32からリアバンパカバー12の後面部12A側へ流出することを抑制することができる。したがって、リアバンパカバー12の後面部12Aの車両下方側への泥水52の垂れ下がりを抑制することができ、リアバンパカバー12の後面部12Aの見栄えを悪化させることを抑制することができる。
【0032】
また、図5に示されるように、穴部36より車両前方側に配置された前側傾斜面26Aの水平面(例えば、路面50など)に対する傾斜角度θ1と、穴部36より車両後方側に配置された後側傾斜面26Bの水平面に対する傾斜角度θ2とが、ほぼ同じ(θ1=θ2)になるように設定されている。これによって、リアアウトレット20の流入開口30から通路部21に流入した空気が、前側傾斜面26Aと後側傾斜面26Bに沿ってスムーズに流れ、排出開口32から排出される。このため、前側傾斜面26Aと後側傾斜面26Bとの間に貫通穴34を設けても、通路部21の整流効果が低下することを抑制することができる。
【0033】
また、本実施形態の車両後部構造では、リアタイヤ14によって巻き上げられた泥水52が、リアホイールハウス16と連通する開口部40から排出通路部38に浸入する可能性があるが、排出通路部38の車両後方側に穴部36の後壁面36A(図4参照)が設けられているため、泥水52が後壁面36Aを越えて後側傾斜面26Bに浸入することが阻止される。
【0034】
本実施形態の車両後部構造では、図5に示されるように、リアアウトレット20における前側傾斜面26Aの水平面に対する傾斜角度θ1と、穴部36より車両後方側に配置された後側傾斜面26Bの水平面に対する傾斜角度θ2とが、ほぼ同じ(θ1=θ2)になるように設定されているが、これに代えて、θ1>θ2となるように設定してもよい。θ1>θ2となるように設定することで、リアアウトレット20の通路部21に流入した空気は前側傾斜面26Aに沿ってスムーズに流れ、空気が前側傾斜面26Aより傾斜角度が小さい後側傾斜面26Bに当たることが抑制される。このため、後側傾斜面26Bによって空気の流れが妨げられることが抑制される。
したがって、前側傾斜面26Aの水平面(例えば、路面50など)に対する傾斜角度θ1と、後側傾斜面26Bの水平面に対する傾斜角度θ2とは、θ1≧θ2となるように設定することが好ましい。これによって、リアアウトレット20の通路部21での空気の流れに乱れを生じさせず、整流効果が低下することを抑制することができる。
【0035】
図9には、参考例に係る車両後部構造が示されている。図9に示されるように、リアアウトレット100には、車両側面視にて通路部21の下面を形成する底壁102が設けられている。底壁102には、流入開口30から車両後方側に向かって上り勾配となるように傾斜した前側傾斜面102Aと、前側傾斜面102Aの後方に形成された貫通穴34としての穴部36と、穴部36の車両後方側に排出開口32に向かって上り勾配となるように傾斜した後側傾斜面102Bと、を備えている。このリアアウトレット100では、前側傾斜面102Aの水平面(例えば、路面50など)に対する傾斜角度θ1よりも、後側傾斜面102Bの水平面に対する傾斜角度θ2が大きくなる(θ1<θ2)ように設定されている。
【0036】
このリアアウトレット100では、第1実施形態と同様に、雨天の車両走行時などに、リアタイヤ14により路面50から巻き上げられた(跳ね上げられた)泥水がリアアウトレット100の流入開口30から通路部21に浸入したときに、泥水が前側傾斜面102Aを車両後方側に向かって上がっていく。そして、泥水は、前側傾斜面102Aの後方(底壁102の車両前後方向の途中)に設けられた貫通穴34の穴部36に落下し、排出通路部38の傾斜面42を伝って車両前方側の開口部40から車両外部に排出される。これにより、泥水がリアアウトレット100の通路部21の排出開口32からリアバンパカバー12の後面部12A側へ流出することを抑制することができる。
【0037】
一方、このリアアウトレット100では、前側傾斜面102Aの水平面に対する傾斜角度θ1よりも、後側傾斜面102Bの水平面に対する傾斜角度θ2が大きくなる(θ1<θ2)ように設定されている。これにより、リアアウトレット100の通路部21に流入した空気は、車両側面視にて前側傾斜面102Aに沿って車両後方側に流れ、さらに穴部36より車両後方側の後側傾斜面102Bに沿って斜め上方側に流れる。その際、前側傾斜面102Aの傾斜角度θ1よりも後側傾斜面102Bの傾斜角度θ2が大きいため、前側傾斜面102Aに沿って流れる空気が後側傾斜面102Bに当たり、空気の流れの角度が変わる。このため、リアアウトレット100の通路部21では、矢印に示されるように、穴部36付近で空気の流れに乱れが生じる可能性がある。
【0038】
したがって、前述のように、前側傾斜面26Aの水平面に対する傾斜角度θ1と後側傾斜面26Bの水平面に対する傾斜角度θ2とは、θ1≧θ2となるように設定することが好ましい(図5参照)。これによって、リアアウトレット20(図5参照)の通路部21での空気の流れに乱れを生じさせず、整流効果が低下することを抑制することができる。
但し、図9に示すリアアウトレット100では、前側傾斜面26Aがない場合に比べると、リアアウトレット100内を流れる風が後壁面36Aに当たることが抑制され、整流効果が得られる。
【0039】
次に、図6を用いて、本発明に係る車両後部構造の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0040】
図6に示されるように、リアバンパカバー12の側面部12Bの車両幅方向内側には、車両前後方向に沿って空気通路部の一例としてのリアアウトレット200が設けられている。リアアウトレット200は、底壁26を構成する前側傾斜面26Aと後側傾斜面26Bとの間に、車両外部と連通する貫通穴34が設けられている。貫通穴34は、底壁26に形成された穴部36と、穴部36と連通し前側傾斜面26Aの下方側に車両前後方向に沿って形成された排出通路部202と、排出通路部202と連通しリアアウトレット200の下部に車両下方側に開口するように形成された開口部206と、を備えている。車両側面視にて排出通路部202の下面には、穴部36から車両前方側の開口部206に向かって下り勾配となる傾斜面204が形成されている。
【0041】
このような車両後部構造では、リアホイールハウス16内の空気が流入開口30からリアアウトレット200の通路部21に流入し、更に空気がリアアウトレット200の通路部21を矢印A方向に流れて、排出開口32からリアバンパカバー12の後面部12Aの後方側(車両10の後部11の外部側)へ排出される。
【0042】
さらに、車両後部構造では、雨天の車両走行時などに、リアタイヤ14により路面50から巻き上げられた(跳ね上げられた)泥水52がリアアウトレット200の流入開口30から通路部21に浸入したときに、泥水52が前側傾斜面26Aを車両後方側に向かって上がっていく。そして、泥水52は、矢印Bに示されるように前側傾斜面26Aの後方(底壁26の車両前後方向の途中)に設けられた貫通穴34としての穴部36に落下し、泥水52は排出通路部202の傾斜面204を伝って矢印Dに示されるように開口部206に落下して車両外部に排出される。このため、泥水52がリアアウトレット200の通路部21の排出開口32から流出することを抑制することができ、リアバンパカバー12の後面部12Aの車両下方側への泥水52の垂れ下がりを抑制することができる。
【0043】
また、本実施形態の車両後部構造では、リアアウトレット200の下部に開口部206が設けられ、開口部206がリアホイールハウス16と連通しないため、開口部206からの泥水52の浸入を抑制することができる。
【0044】
次に、図7を用いて、本発明に係る車両後部構造の第3実施形態について説明する。なお、前述した第1及び第2実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0045】
図7に示されるように、リアバンパカバー12の側面部12Bの車両幅方向内側には、車両前後方向に沿って空気通路部の一例としてのリアアウトレット220が設けられている。リアアウトレット220の通路部21の下面を構成する底壁222には、後側傾斜面26Bの車両前方側に、車両外部と連通する貫通穴34が設けられている。さらに、底壁222には、貫通穴34としての穴部36の車両前方側に配置された傾斜面222Bと、傾斜面222Aの車両前方側に車両外部と連通するように形成された貫通穴224と、貫通穴224の車両前方側に配置された傾斜面222Aと、を備えている。貫通穴224は、底壁222に形成された穴部225を備えており、穴部225は、傾斜面222A及び傾斜面222Bの下方側に設けられた排出通路部38と連通している。穴部225の下方側における排出通路部38の傾斜面42には、車両下方側に開口するように形成された開口部226が設けられている。すなわち、貫通穴224は、穴部225と連通する排出通路部38を介して開口部40と開口部226とに連通している。
【0046】
車両側面視にて傾斜面222Aは、流入開口30から車両後方側に向かって上り勾配となるように形成されている。傾斜面222Bは、貫通穴224の穴部225とその車両後方側の貫通穴34の穴部36との間に配置されると共に、車両後方側に向かって上り勾配となるように形成されている。言い換えると、リアアウトレット220の底壁222の車両前後方向の途中に貫通穴224、34を構成する2つの穴部225、36が設けられている。
【0047】
このような車両後部構造では、リアホイールハウス16内の空気が流入開口30からリアアウトレット220の通路部21に流入し、更に空気がリアアウトレット220の通路部21を矢印A方向に流れて、排出開口32からリアバンパカバー12の後面部12Aの後方側(車両10の後部11の外部側)へ排出される。
【0048】
さらに、車両後部構造では、雨天の車両走行時などに、リアタイヤ14により路面50から巻き上げられた(跳ね上げられた)泥水52がリアアウトレット220の流入開口30から通路部21に浸入したときに、泥水52が傾斜面222Aを車両後方側に向かって上がっていく。そして、泥水52は、傾斜面222Aの後方に設けられた貫通穴224としての穴部225に落下し、開口部226から車両外部に排出される。又は、泥水52は排出通路部38の傾斜面42を伝って車両前方側の開口部40から車両外部に排出される。また、泥水52が車速や風圧によって押されて傾斜面222Bに飛ばされたときは、泥水52は、傾斜面222Bの後方に設けられた貫通穴34としての穴部36に落下し、排出通路部38の傾斜面42を伝って開口部226又は開口部40から車両外部に排出される。
【0049】
このため、泥水52がリアアウトレット220の通路部21の排出開口32から流出することをより確実に抑制することができる。したがって、リアバンパカバー12の後面部12Aの車両下方側への泥水52の垂れ下がりをより確実に抑制することができ、リアバンパカバー12の後面部12Aの見栄えを悪化させることを抑制することができる。
【0050】
次に、図8を用いて、本発明に係る車両後部構造の第4実施形態について説明する。なお、前述した第1〜第3実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0051】
図8に示されるように、リアバンパカバー12の側面部12Bの車両幅方向内側には、車両前後方向に沿って空気通路部の一例としてのリアアウトレット240が設けられている。リアアウトレット240には、車両側面視にて通路部21の底壁242を構成する前側傾斜面26Aの後方に貫通穴34が設けられている。さらに、リアアウトレット240には、貫通穴34を構成する穴部36の後壁面36A(穴部36の車両後方の壁面)から車両上方側に延びた縦壁部244が設けられている。縦壁部244は、車両上下方向に沿って配置されると共に、通路部21の車両幅方向のほぼ全幅に設けられている。縦壁部244は、前側傾斜面26Aの後端部に対して所定の高さhとなるように形成されている。
【0052】
底壁242には、車両側面視にて縦壁部244の上端部から車両後方側に、排出開口32に向かって上り勾配となるように後側傾斜面246が設けられている。本実施形態では、前側傾斜面26Aの水平面(例えば、路面50など)に対する傾斜角度θ1(図5参照)と、穴部36より車両後方側に配置された後側傾斜面246の水平面に対する傾斜角度θ2(図5参照)とが、ほぼ同じになるように設定されている。
【0053】
このような車両後部構造では、リアホイールハウス16内の空気が流入開口30からリアアウトレット240の通路部21に流入し、更に空気がリアアウトレット240の通路部21を矢印A方向に流れて、排出開口32からリアバンパカバー12の後面部12Aの後方側(車両10の後部11の外部側)へ排出される。
【0054】
さらに、車両後部構造では、雨天の車両走行時などに、リアタイヤ14により路面50から巻き上げられた(跳ね上げられた)泥水52がリアアウトレット240の流入開口30から通路部21に浸入したときに、泥水52が前側傾斜面26Aを車両後方側に向かって上がっていく。そして、泥水52は、前側傾斜面26Aの後方に設けられた貫通穴34としての穴部36に落下する。また、泥水52が車速や風圧によって押されて、矢印Eに示されるように穴部36上に飛ばされても、泥水52は穴部36の後側の縦壁部244に当たり、縦壁部244を伝って穴部36に落下する。穴部36に落下した泥水52は、排出通路部38の傾斜面42を伝って車両前方側の開口部40から車両外部に排出される。このため、泥水52がリアアウトレット240の通路部21の排出開口32から流出することをより確実に抑制することができる。したがって、リアバンパカバー12の後面部12Aの車両下方側への泥水52の垂れ下がりをより確実に抑制することができ、リアバンパカバー12の後面部12Aの見栄えを悪化させることを抑制することができる。
【0055】
なお、第4実施形態では、縦壁部244は、車両上下方向に配置されているが、穴部36の後壁面36Aから車両上方側に突出する形状であれば、車両前方側から車両後方側に斜め上方に突出する形状でもよい。
【0056】
また、第4実施形態では、前側傾斜面26Aの水平面(例えば、路面50など)に対する傾斜角度θ1(図5参照)と、貫通穴34の穴部36より車両後方側に配置された後側傾斜面246の水平面に対する傾斜角度θ2(図5参照)とが、ほぼ同じに設定されているが、これに限定されず、前側傾斜面26Aの水平面に対する傾斜角度θ1が、後側傾斜面246の水平面に対する傾斜角度θ2(図5参照)よりも大きくなるように設定してもよい。
【0057】
なお、第1〜第4実施形態において、リアアウトレットの通路部の底壁に設けた貫通穴の位置及び個数は、底壁の車両前後方向の途中であれば変更可能である。また、貫通穴を構成する穴部と排出通路部と開口部の形状及び位置は、泥水を車両外部に排出できる形状であれば変更可能である。
【0058】
また、第1〜第4実施形態では、車両幅方向に沿った断面が車両上下方向に長い筒状の通路部を備えたリアアウトレットを設けたが、筒状の通路部(ダクト)の形状は変更可能である。
【0059】
また、第1〜第4実施形態では、リアバンパカバー12の側面部12Bの車両幅方向内側に、筒状体からなるリアアウトレットを設けたが、この構成に限定されず、例えば、リアバンパカバー12の側面部12Bの内壁と車両本体を構成するパネル部材とで空気通路部(ダクト)を形成してもよい。
【符号の説明】
【0060】
10 車両
11 後部
12 リアバンパカバー
16 リアホイールハウス
20 リアアウトレット(空気通路部)
21 通路部
26 底壁
26A 前側傾斜面(傾斜面)
26B 後側傾斜面(傾斜面)
32 排出開口
34 貫通穴
36 穴部(貫通穴)
36A 後壁面(壁面)
38 排出通路部(貫通穴)
40 開口部(貫通穴)
200 リアアウトレット(空気通路部)
202 排出通路部(貫通穴)
206 開口部(貫通穴)
220 リアアウトレット(空気通路部)
222 底壁
222A 傾斜面(前側傾斜面)
222B 傾斜面(後側傾斜面)
224 貫通穴
225 穴部(貫通穴)
226 開口部(貫通穴)
240 リアアウトレット(空気通路部)
242 底壁
244 縦壁部
246 後側傾斜面(傾斜面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リアバンパカバーの内側で、かつリアホイールハウスの車両後方側に設けられ、前記リアホイールハウス内の空気を前記リアバンパカバーの後部域に設けられた排出開口から車両後方へ排出する空気通路部と、
前記空気通路部の下部を構成する底壁に設けられ、前記空気通路部に空気が流入する流入開口から前記排出開口に向けて車両上方に傾斜した傾斜面と、
前記傾斜面の車両前後方向の途中に設けられ、車両外部と連通する少なくとも1つの貫通穴と、
を有する車両後部構造。
【請求項2】
前記貫通穴より車両前方側に配置された前側傾斜面の水平面に対する傾斜角度をθ1とし、前記貫通穴より車両後方側に配置された後側傾斜面の水平面に対する傾斜角度をθ2としたとき、
θ1≧θ2
とされている請求項1に記載の車両後部構造。
【請求項3】
前記貫通穴の車両後方に、前記貫通穴の壁面から車両上方側に延びると共に、車両幅方向に沿って配置された縦壁部を有する請求項1又は請求項2に記載の車両後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−56583(P2013−56583A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195107(P2011−195107)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】