説明

車両情報データ記録システム、車両情報記録装置、車両情報記録サーバ、車両情報記録方法

【課題】個人情報などの取り扱いを定める各国の法令に応じて車両情報データを記憶する車両情報データ記録システム、車両情報記録装置、車両情報記録サーバ及び車両情報記録方法を提供すること。
【解決手段】車載装置11から取得される車両情報データを記録する車両情報記録システム100において、車両情報データを記憶する車両情報データ記憶手段26と、車両30の位置情報から車両30が存在する国を判別する国判別手段21と、国を識別する国情報に対応づけて、車両情報データ記憶手段26に記録する車両情報データを記憶する選択テーブル記憶手段25と、国判別手段21が判別した国に基づき選択テーブル記憶手段25を参照し、車両情報データ記憶手段26に記録する車両情報データの種別を可変に制御するデータ記録手段22と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載装置から取得される車両情報データを記録する、車両情報データ記録システム、車両情報記録装置、車両情報記録サーバ及び車両情報記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両では、各種の電子制御ユニットがセンサにより検出される検出信号に応じてアクチュエータに制御信号を供給しエンジン等の車載装置を制御している。これら検出信号や制御信号は車両情報データとして一定周期毎に記憶装置に記憶されていき、また、各電子制御ユニットも不具合の発生時などに車両情報データを記憶するようになっている。ここで、記憶装置が記憶する車両情報データは、その全てが不具合の解析に役立つわけではないので、記憶する車両情報データを選別する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1には、不具合が発生した発生元信号に応じて記憶する車両情報データを設定する車両用電子制御装置が記載されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
ところで、車両情報データには、GPS(Global Positioning System)等により検出された位置情報が記憶されることがあるが、記憶装置に記憶された位置情報により車両ユーザの過去の行動を第3者により特定されるおそれがある。そこで、不具合が発生した時の車両の位置情報を、所定の基準点に対する相対位置情報により表すドライブレコーダが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2によれば、所定の基準点の絶対座標を記憶装置と異なるメモリーカード等に記憶するので、記憶装置に記憶された位置情報のみでは、車両ユーザの過去の行動を特定できないようになっている。
【0004】
また、車両は携帯電話や路側の通信装置を介して外部と通信することが可能となっており、外部から記憶装置にアクセスすることを防止する技術が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。特許文献3には、記憶装置へのアクセスを許可するアクセス許可条件を設定しておき、アクセス許可条件に基づき外部から記憶装置にアクセスを許可するか否かを判定する車両診断システムが記載されている。
【特許文献1】特開2000−145533号公報
【特許文献2】特開2007−4378号公報
【特許文献3】特開2004−192277号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両は各国向けに仕様を決定して製造されることが多いが、国別に製造・出荷しても欧州のように車両が国境を越えて頻繁に往来するような地域では、往来する国によっては、必ずしも車両の仕様がその国に適合しないことも生じうる。例えば、上記の車両情報データ(特に位置情報)は、個人情報に類するものであるため各国の法令でその取り扱いが定められていることが多い。しかしながら、法令に定める取り扱いの態様が各国毎に同じであるとは限らず、ある国では適法であった車両情報データの記憶が、国境を越えると不適法となるおそれがある。また、国の法令によっては、記憶する車両情報データの種類に関わらず、車両情報データを個人と結びづけて記憶することを不適法と取り扱う場合もある。
【0006】
このため、特許文献2記載のドライブレコーダのように、絶対的な位置の特定が困難であっても必ずしも法令に適合しているとは限らず、特許文献3に記載された車両診断システムのように車両情報データを記憶することを前提に、記憶した後にアクセスの許可を判定するのでは、国によっては適切な仕様でないと判断されるおそれがある。
【0007】
個人情報の取り扱いが最も厳格な国の法令に従うことも考えられるが、一律に厳しい法令に則り記憶する車両情報データを制限すると、不具合の解析に有効な車両情報データを記憶できない場合が生じ、記憶装置の有効性が大幅に低減してしまうという問題がある。この点、特許文献2及び3のいずれの技術も、国毎に異なる態様で取り扱いを定める可能性がある車両情報データの記録について考慮されていない。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、個人情報などの取り扱いを定める各国の法令に応じて車両情報データを記憶する車両情報データ記録システム、車両情報記録装置、車両情報記録サーバ及び車両情報記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題に鑑み、本発明は、車載装置から取得される車両情報データを記録する車両情報記録システムにおいて、車両情報データを記憶する車両情報データ記憶手段と、車両の位置情報から車両が存在する国を判別する国判別手段と、国を識別する国情報に対応づけて車両情報データ記憶手段に記録する車両情報データを記憶した選択テーブル記憶手段と、国判別手段が判別した国に基づき選択テーブル記憶手段を参照し、車両情報データ記憶手段に記録する車両情報データの種別を可変に制御するデータ記録手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、車両の存在する位置(国)に応じて記録する車両情報データの種別を可変にすることができ、出荷時に、国毎に記録する車両情報データを設定しておく必要がない。
【0011】
また、本発明の一形態において、不具合が発生した場合に車両情報データが記録される不具合データ記憶手段、を有することを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、不具合が発生した際に記録される車両情報データに対しても、車両の存在する位置(国)に応じて可変にすることができる。
【0013】
また、本発明の一形態において、国判別手段が判別した国に基づき選択テーブル記憶手段を参照し、車両情報データ記憶手段に記録された車両情報データのうち、当該国で記録される車両情報データでない車両情報データの読み出しを禁止するか、又は、消去する読み出し禁止手段、を有することを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、国境を越えたことで既に記録した車両情報データの記録が適切でない場合でも、少なくとも読み出しを禁止することで、その国の法令を遵守することができる。
【発明の効果】
【0015】
個人情報などの取り扱いを定める各国の法令に応じて車両情報データを記憶する車両情報データ記録システム、車両情報記録装置、車両情報記録サーバ及び車両情報記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【0017】
図1は、国毎に記録される車両情報データの一例を示す図である。図示するように、車両30がX国を走行中は、車両30は位置情報、道路種別及び制御データ、を記録するが、Y国を走行中は道路種別及び制御データを記録し、Z国を走行中は車両情報データを記録しない。
【0018】
各国でどの車両情報データを記録するかは、車両30の位置情報に基づき決定した車両30の存在する国の国情報に基づき、国毎に記録する車両情報データを定めた記録データ選択テーブルを参照することで決定することができる。
【0019】
したがって、1つの車両情報記憶システムにより各国の法令が定める個人情報の多様な取り扱いに対応することができる。また、国毎に記録する車両情報データを決定できるので、最も個人情報の取り扱いが厳格な国の法令に一律に従う必要がなく、車両情報記録システム100による不具合の解析機能を最大限に活用できるようになる。
【0020】
ところで、一般には車両30が車両情報データを記憶するが、所定のサーバが車両情報データを記録する場合があることを考慮すると、本実施形態の車両情報記録システム100は以下の実施形態が考えられる。
1)車両30が記録データ選択テーブルを有し、車両30が記録データ選択テーブルを参照して記録する車両情報データを決定し、車両30に車両情報データを記録する。
2)サーバが記録データ選択テーブルを有し、車両30がサーバに指示された車両情報データを記録する。
3)サーバが記録データ選択テーブルを有し、サーバが記録データ選択テーブルを参照して記録する車両情報データを決定し、車両情報データを記録する。
4)車両30が記録データ選択テーブルを有し、サーバが車両30から送信された車両情報データを記録する。
以下、各形態について実施例に基づき説明する。
【実施例1】
【0021】
本実施例では、1)車両30が記録データ選択テーブルを有し、車両30が記録データ選択テーブルを参照して記録する車両情報データを決定し、車両30に車両情報データを記録する、形態の車両情報記録システム100について説明する。
【0022】
図2は、本実施例の車両情報記録装置50の機能ブロック図の一例を示す。車両情報記録装置50は車両情報記録ECU(Electronic Control Unit)12により制御され、車両情報記録ECU12にはCAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)等の車載LANを介して、ECU11A〜11C(区別しない場合、単にECU11という)及びGPS(Global Positioning System)受信機13が接続されている。なお、本実施例では実施例2以降で説明する車両情報記録システム100と車両情報記録装置50とが一体である。
【0023】
各ECU11には、アクチュエータ、センサ及びスイッチ(ECU、アクチュエータ、センサ及びスイッチの1以上を車載装置という場合がある)のうちそれぞれゼロ以上が接続されている。各ECU11にはセンサが検出した検出信号、乗員の操作又は車載装置の動作に連動して切り替わるスイッチのオン/オフ信号が入力され、各ECU11は検出信号やオン/オフ信号に基づき、制御信号を生成しアクチュエータを制御する。また、所定のECU11に検出された検出信号、オン/オフ信号及び制御情報は、例えばCANが提供する時分割多重通信により他のECU11に送信され得る。したがって、各ECU11は、自らに接続されたセンサ等が検出する検出信号等だけでなく、他のECU11に接続されたセンサ等の検出信号等を用いて、アクチュエータ等の制御を実行している。
【0024】
本実施形態では、これら検出信号、オン/オフ信号及び制御情報が、車両情報データとなるが、車両内で車両情報記録ECU12が取得可能なデータは全て車両情報データとなりうる。各ECU11には、車両情報記録ECU12に送信する車両情報データが定められており、主に、所定のサイクル時間毎に、各ECU11は車両情報データを車両情報記録ECU12に送信する。また、各ECU11は、不具合が検出されるような予め定めたイベントが発生した場合、又は、車両情報記録ECU12が要求した場合にも、車両情報データを車両情報記録ECU12に送信する。本実施形態では、例えばECU11AがA1〜A3の車両情報データを、ECU11BがB1〜B3の車両情報データを、ECU11CがC1〜C3の車両情報データを、それぞれ車両情報記録ECU12に送信する。
【0025】
なお、各ECU11は、例えばエンジンECU、ブレーキECU、ナビECU又はハイブリッドECU等である。2以下又は4以上のECU11が車両情報記録ECU12に接続されていてもよい。エンジンECUの車両情報データは、例えばエンジン回転数、吸入空気量、吸気温度等であり、ブレーキECUの車両情報データは、例えば車輪速、減速度、マスタシリンダ圧等であり、ナビECUの車両情報データは、例えば位置情報、進行方向、GPS時刻、道路種別等であり、ハイブリッドECUの車両情報データは、例えばモータ駆動トルク、バッテリ残量等である。
【0026】
ところで、各ECU11はアクチュエータ、センサ及びスイッチの無応答や検出信号の異常値に基づき不具合を検出した場合、フリーズフレームデータ(以下、FFDという)をECU11内の不揮発メモリに記憶するようになっている。各ECU11はFFD記録部14A〜14C(以下、区別しない場合、単にFFD記録部14という)及びFFDを記憶するFFD記憶手段15A〜15C(以下、区別しない場合、単にFFD記憶手段15という)を有する。各ECU11のFFD記録部14は、不具合が検出された場合、予め定められたFFDをFFD記憶手段15に記録する。なお、FFD記録部14は、異常の内容を示すDTC(Diagnosis Trouble Code)をFFDに対応づけて記憶する。DTCは、記号、番号又は記号と番号の組み合わせより不具合の内容を示し、予め定めたコード表と対応づけることでサービスマン等が不具合の内容が把握できるようになっている。
【0027】
FFDと車両情報データとは一部が重複するものであるため、車両情報データと同様に国毎の取り扱いが必要となる。そこで、FFD記録部14は、後述するデータ決定部22が記録を許可した車両情報データのみを記録することが好ましい。なお、車両情報記録ECU12が記録する車両情報データは時系列に記録されそのデータ量も多いのに比べ、FFDは不具合の検出時にのみ記録されるので、個人を特定する情報としての重要性が異なる。このため、FFDを車両情報データと同様に扱うか否かは各国の法令に従う。
【0028】
GPS受信機13は、GPS衛星から発信される電波の到達時間に基づき車両30の位置を検出する。車両情報記録ECU12は、GPS受信機13が検出した位置の位置情報を起点に、ジャイロセンサにより検出する走行方向に車輪速センサにより検出した走行距離を累積して、走行中の車両30の位置を高精度に推定する。
【0029】
車両情報記録ECU12について説明する。車両情報記録ECU12は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェイス、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、CAN通信部及びメモリ等を備え、CPUがROM等に記憶されたプログラムを実行するか又はASIC等のハードウェアにより実現される、国判別部21、データ決定部22及びデータ記録部23を有する。また、フラッシュメモリやハードディスクドライブ、RAMなどのメモリには、国境情報を記憶する国境情報記憶手段24、記録データ選択テーブルを記憶する選択テーブル記憶手段25及び車両情報データを記憶する車両情報データ記憶手段26が実装される。
【0030】
なお、車両情報記録ECU12は、車両情報データを記憶するメモリを備えていればよいので車両情報記録ECU12を単体で設けるのでなく、例えば、ナビゲーションシステムを制御するECUにより兼用してもよいし、いずれかのECU11が兼用してもよい。兼用することで、車両重量や車載スペースを抑制できる。
【0031】
国判別部21は、位置情報に基づき国境情報記憶手段24を参照して現在走行している国を判別する。国境情報記憶手段24には、国境の座標情報(緯度・経度・標高)が国毎に登録されている。国判別部21は、車両30の位置情報に最寄りの国境の座標情報を検出し、その座標が国境の一部となる2国のうち一方の国境の座標を辿っていく。最終的に受信した位置情報がその国の国境に囲まれていれば、その国を走行していると判別する。囲まれていなければ、他方の国の国境の座標を辿っていき、同様の判定を繰り返す。国判別部21は、判別により得られた国情報をデータ決定部22に送出する。
【0032】
データ決定部22は、国情報に基づき選択テーブル記憶手段25に記憶された記録データ選択テーブルを参照し、その国で記録する車両情報データを決定する。決定された車両情報データの識別情報はデータ記録部23に通知される。
【0033】
図3は記録データ選択テーブルの一例を示す。記録データ選択テーブルには国情報に対応づけて、記録する車両情報データの識別情報が登録されている。記録が制限される可能性が高いのは、例えば位置情報、進行方向、GPS時刻、道路種別、車速、等である。例えば、X国ではA1〜A3、B1〜B3及びC1〜C3が登録されており、Y国にはB1、B3及びC1、C2が登録されており、Z国には車両情報データが登録されていない。したがって、データ決定部22は記録データ選択テーブルを参照することで、記録する(記録が許可された)車両情報データを決定することができる。なお、選択テーブル記憶手段25には、記録する車両情報データの識別情報でなく、記録を禁止する車両情報データの識別情報を国毎に登録しておいてもよい。記録する車両情報データが多い場合は、記録を制限する車両情報データを登録しておくことで選択テーブル記憶手段25の容量を節約することができる。
【0034】
記録データ選択テーブルは、メーカからの車両30の出荷時に車両30に記憶されるが、各国の法令の改正に対応できるよう、上記のサーバにアクセスすることで随時更新できるようになっている。
【0035】
データ記録部23は、ECU11から送信される車両情報データのうち、データ決定部22が決定した車両情報データのみを車両情報データ記憶手段26に記録する。すなわち、各ECU11が車両情報データを送信しても、車両情報記録ECU12はそのうち、記録が許可された車両情報データのみを記録しその他を破棄する。車両情報データは車両情報データ記憶手段26に時系列に記憶され、記憶容量が制限されている場合は古いものから順に上書きされる。
【0036】
なお、各ECU11が、記録が許可された車両情報データのみを車両情報記録ECU12に送信することとしてもよい。この場合、データ決定部22が記録する車両情報データの識別情報を各ECU11に送信し、各ECU11はデータ決定部22が送信した車両情報データのみを車両情報記録ECU12に送信し、データ記録部23は各ECU11から受信した車両情報データを全て車両情報データ記憶手段26に記録する。各ECU11が送信する車両情報データを低減できるので、CAN上の通信混雑を低減することができる。
【0037】
また、各ECU11が車両情報データと同様にFFDの記録を制限する場合、各ECU11は、データ決定部22から記録が許可された車両情報データを受信しておく。そして、不具合が検出された場合、FFD記録部14は記録が許可されたFFDのみをFFD記憶手段15に記録する。
【0038】
図4は、車両情報記録装置50が車両情報データを記録する手順を示すフローチャート図の一例を示す。図4のフローチャート図は例えばイグニッションがオンになるとスタートする。
【0039】
車両情報記録ECU12はGPS受信機13、ジャイロセンサ、及び、車輪速センサを用いて位置情報を検出する(S10)。国判別部21は、位置情報に基づき国境情報記憶手段24を参照し、現在走行している国を判別する(S20)。データ決定部22は、国判別部21から国情報を取得し、国情報に基づき選択テーブル記憶手段25を参照して記録する車両情報データを決定する(S30)。なお、データ決定部22は、FFDにおいても各国の法令に従って記録できるよう、記録すると決定した車両情報データの識別情報を各ECU11に送信する。
【0040】
データ記録部23は、記録が許可された車両情報データのみを所定のサイクル時間毎に車両情報データ記憶手段26に記憶していく(S40)。また、不具合があった場合(S50のYes)、FFD記録部14は記録が許可されたFFDのみをFFD記憶手段15に記録する(S60)。
【0041】
ついで、国判別部21は最後に国を判別してから所定距離走行したか否かを判定する(S70)。国境を超えることはそれほど頻繁に発生することではないので、このように所定距離毎に判定すればよい。所定距離は例えば1km〜5km程度である。所定距離走行していなければ(S70のNo)、データ記録部23はサイクル時間毎に車両情報データを車両情報データ記憶手段26に記録し、所定距離走行したら(S70のYes)、国判別部21は再度国を判別する(S10)。車両情報記憶装置50がイグニッションオンの間、以上の処理を繰り返すことで、その国で記録が許可された車両情報データのみを記録することができる。
【0042】
以上説明したように、本実施例の車両情報記録装置50は、個人情報などの取り扱いを定める各国の種々の法令に則り、車両情報データを記録することができる。
【実施例2】
【0043】
本実施例では、2)サーバが記録データ選択テーブルを有し、車両30がサーバに指示された車両情報データを記録する、形態の車両情報記録システム100について説明する。
【0044】
図5は、車両情報記録システム100の概略構成図を示す。本実施例では車両30が車両情報データ記憶手段26を有し、サーバ40が選択テーブル記憶手段25を有している。すなわち、車両情報記録ECU12は、自らは記録する車両情報データを決定せず、サーバ40から記録してもよい(又は記録が禁止される)車両情報データの識別情報を受信する。また、車両30は、サーバ40に記録する車両情報データを決定してもらうため、走行している国の国情報をサーバ40に送信する。
【0045】
したがって、本実施例では、車両情報記録ECU12が選択テーブル記憶手段25を記憶している必要がないのでコスト増を抑制できる。また、各車両30でなくサーバ40が記録データ選択テーブルを更新するので記録データ選択テーブルの更新が容易である。
【0046】
図6は、本実施例の車両情報記録システム100の機能ブロック図の一例を示す。図6において図2と同一部分には同一の符号を付しその説明は省略する。図6では、サーバ40がデータ決定部22及び選択テーブル記憶手段25を有する一方で、車両情報記録ECU12は、記録する車両情報データを決定しないので、データ決定部22及び選択テーブル記憶手段25を有さない。
【0047】
各機能ブロックの機能は実施例1と同様である。したがって、国判別部21は位置情報に基づき国境情報記憶手段24を参照し、現在走行している国を判別する。また、データ記録部23は、サーバ40のデータ決定部22が記録してよいと決定した車両情報データのみを車両情報データ記憶手段26に記録する。
【0048】
なお、車両30が有する通信ユニット33は、例えば携帯電話の基地局31や無線LANのアクセスポイントに接続して、所定の通信プロトコル(例えば、TCP/IP)に従い、国情報を送信する。国情報は携帯電話等の通信事業者のデータサーバを介してインターネットなどのネットワーク32を介してサーバ40に送信される。
【0049】
サーバ40は、CPU、ROM、RAM、不揮発メモリ及び入出力インターフェイスを備えたコンピュータを実体とし、CPUが不揮発メモリに記憶されたプログラムを実行するか又はASIC等のハードウェアにより実装される、データ決定部22を有し、また、不揮発メモリには選択テーブル記憶手段25を実装している。
【0050】
通信部34は、例えばNIC(Network Interface Card)であって、ネットワーク32を介して通信事業者のデータサーバから送信されるデータにプロトコル処理等を施して国情報を受信する。データ決定部22は、国情報に基づき選択テーブル記憶手段25を参照し記録する車両情報データを決定する。そして、サーバ40は決定された車両情報データの識別情報を、車両30を宛先にして通信部34を介して送信する。
【0051】
ところで、車両情報記録ECU12は国情報をサーバ40に送信するとしたが、サーバ40が車両30の位置情報から車両30が走行している国を判別できるのであれば、車両情報記録ECU12は位置情報をサーバ40に送信してもよい。しかしながらこの場合、車両30が存在する現在の国における位置情報の取り扱いが問題となる。サーバ40に位置情報を送信した場合でも、車両30の識別情報(例えば、基地局31に接続するための電話番号)に対応づけられた形で位置情報がサーバ40に送信されてしまうため、個人情報と個人との関係を特定することができてしまう。
【0052】
その国では位置情報の記録が禁止されていることが車両情報記録ECU12にとって予め既知であれば国情報を送信すればよいが、位置情報を送信して、サーバ40から記録する車両情報データの識別情報を受信するまで、車両情報記録ECU12では位置情報を送信してよいか否かが不明である。そこで、車両30が位置情報をサーバ40に送信する場合、サーバ40では車両情報データの識別情報を決定したあと、位置情報を破棄する。また、コピーワンスのような仕組みを位置情報に施し、サーバ40は車両情報データの識別情報と共に位置情報を車両30が送信するようにして、車両情報記録ECU12が位置情報を破棄してもよい。いずれにしても、車両情報データの識別情報を受信するためにサーバ40に送信された位置情報は破棄されるので、その国の法令を遵守することができる。
【0053】
図7は、車両情報記録システム100が車両情報データを記録する手順を示すシーケンス図の一例を示す。図7のシーケンス図は例えば車両30のイグニッションがオンになるとスタートする。
【0054】
車両情報記録ECU12はGPS受信機13、ジャイロセンサ、及び、車輪速センサを用いて位置情報を検出する(S110)。国判別部21は、位置情報に基づき国境情報記憶手段24を参照し、現在走行している国を判別し(S120)、通信ユニット33を介して国情報をサーバ40に送信する(S130)。
【0055】
サーバ40の処理に移行し、サーバ40は通信部34を介して国情報を受信する(S210)。そして、サーバ40のデータ決定部22は、国情報に基づき選択テーブル記憶手段25を参照し、車両30が走行している国で記録する車両情報データを決定し(S220)、サーバ40は通信部34を介して車両情報データの識別情報を車両30に送信する(S230)。
【0056】
車両30の処理に移行し、車両情報記録ECU12は通信ユニット33を介して車両情報データの識別情報を受信する(S140)。車両情報記録ECU12は、FFDにおいても各国の法令に従って記録できるよう、受信した車両情報データの識別情報を各ECU11に送信する。
【0057】
データ記録部23は、記録が許可された車両情報データのみを所定のサイクル時間毎に車両情報データ記憶手段26に記憶していく(S150)。また、不具合があった場合(S160のYes)、FFD記録部14は記録が許可されたFFDのみをFFD記憶手段15に記録する(S170)。
【0058】
ついで、国判別部21は最後に国を判別してから所定距離走行したか否かを判定する(S180)。国境を超えることはそれほど頻繁に発生することではないので、このように所定距離毎に判定すればよい。所定距離は例えば1km〜5km程度である。
【0059】
所定距離走行していなければ(S180のNo)、データ記録部23はサイクル時間毎に車両情報データを車両情報データ記憶手段26に記録し、所定距離走行したら(S180のYes)、位置情報を検出し(S110)、国判別部21は位置情報に基づき国境情報記憶手段24を参照し、現在走行している国を判別する(S120)。そして、車両情報記録ECU12は、車両30が存在する国が変わっていれば通信ユニット33を介して再度、国情報をサーバ40に送信する(S130)。
【0060】
以上説明したように、本実施例の車両情報記録システム100は、実施例1の効果に加え、サーバ40が選択テーブル記憶手段25を有するので記録データ選択テーブルの更新が容易であり、また、車両情報記録ECU12の構成を簡易化してコスト増を抑制できる。
【実施例3】
【0061】
本実施例では、3)サーバが記録データ選択テーブルを有し、サーバが記録データ選択テーブルを参照して記録する車両情報データを決定し、車両情報データを記録する、形態の車両情報記録システム100について説明する。
【0062】
図8は、車両情報記録システム100の概略構成図を示す。なお、図8において図5と同一部分には同一の符号を付しその説明は省略する。本実施例ではサーバ40が、選択テーブル記憶手段25及び車両情報データ記憶手段26を有する。すなわち、車両情報記録ECU12は、自らは記録する車両情報データを決定することも、記録することもせず、車両30は記録可能な車両情報データを全てサーバ40に送信する。
【0063】
サーバ40は、位置情報から車両30が走行している国を判別し、その国の国情報に基づき記録する車両情報データを決定し、決定された車両情報データのみを記録し、その他の車両情報データを破棄する。
【0064】
したがって、本実施例では、車両情報記録ECU12が選択テーブル記憶手段25及び車両情報データ記憶手段26を備えている必要がないので、実施例2と比較してさらに車両情報記録ECU12のコスト増を抑制できる。
【0065】
図9は、本実施例の車両情報記録システム100の機能ブロック図の一例を示す。図9において図6と同一部分には同一の符号を付しその説明は省略する。図9では、サーバ40が、国判別部21、データ決定部22及びデータ記録部23、国境情報記憶手段24、選択テーブル記憶手段25及び車両情報データ記憶手段26を有する。各機能ブロックの機能は実施例1と同様である。
【0066】
車両30の車両情報記録ECU12は、通信ユニット33を介して、ECU11から受信した全ての車両情報データをサーバ40に送信する。送信のタイミングは、例えば実施例1で車両情報データを記憶する所定のサイクル時間毎でもよいし、サイクル時間よりも間隔の長い定期的なタイミングでもよいし、1組の車両情報データが所定数バッファリングされる毎でもよい。
【0067】
また、本実施例では、サーバ40が車両30の存在する国を判別するため、車両情報記録ECU12が送信する車両情報データに少なとも位置情報が含まれる。位置情報を含む全ての車両情報データが送信されるので、サーバ40が車両情報データを受信した時点では、その国の法令を遵守していない場合があるが、法令で記録が認められていない車両情報データはサーバ40で破棄されるので、法令違背となることはない。
【0068】
図10は、車両情報記録システム100が車両情報データを記録する手順を示すシーケンス図の一例を示す。図10のシーケンス図は例えば車両30のイグニッションがオンになるとスタートする。
【0069】
車両情報記録ECU12はGPS受信機13、ジャイロセンサ、及び、車輪速センサを用いて位置情報を検出する(S310)。位置情報がないと国の判別が困難なためである。そして所定のタイミングになると、車両情報記録ECU12はECU11から受信した全ての車両情報データ及び位置情報をサーバ40に送信する(S320)。
【0070】
サーバ40の処理に移行し、サーバ40が車両情報データを受信すると(S410)、サーバ40の国判別部21は、位置情報に基づき国境情報記憶手段24を参照し、現在走行している国を判別する(S420)。そして、サーバ40のデータ決定部22は、国情報に基づき選択テーブル記憶手段25を参照し、車両30が存在する国で記録する車両情報データを決定する(S430)。
【0071】
記録する車両情報データを決定されると、データ記録部23はその国で記録が許可されている車両情報データのみを車両情報データ記憶手段26に記録し、それ以外の車両情報データを破棄する(S440)。
【0072】
なお、以上の処理で車両情報データについては記録が許可された車両情報データのみが記録されるが、FFDについては記録してよいFFDが決定されていない。FFDについては車両30で記録する方法と、FFDも車両情報データと同様サーバ40で記録する方法がある。車両30にてFFDを記録する場合、実施例2と同様に、記録してよい車両情報データの識別情報をサーバ40から車両30に送信することが好適となる。これにより、車両30のECU11が不具合を検出した場合、FFD記録部14は記録が許可されたFFDのみをFFD記憶手段15に記録することができる。
【0073】
また、FFDをサーバ40にて記録する場合、不具合の検出に応じて車両30がFFDをサーバ40に送信する。サーバ40に送信することで車両情報データと同様に扱うことができる。
【0074】
以上説明したように、本実施例の車両情報記録システム100は、実施例2の効果に加え、サーバ40で車両情報データを記録するので、車両情報記録ECU12の構成を実施例2よりも簡易化してコスト増を抑制できる。
【実施例4】
【0075】
本実施例では、4)車両が記録データ選択テーブルを有し、サーバが車両から送信された車両情報データを記録する、形態の車両情報記録システム100について説明する。
【0076】
図11は、車両情報記録システム100の概略構成図を示す。なお、図11において図8と同一部分には同一の符号を付しその説明は省略する。本実施例では車両30が選択テーブル記憶手段25を有し、サーバ40が車両情報データ記憶手段26を有する。すなわち、車両情報記録ECU12は、記録する車両情報データを決定し、その国で記録が許可された車両情報データのみをサーバ40に送信する。そして、サーバ40は、受信した車両情報データを全て車両情報データ記憶手段26に記録する。
【0077】
したがって、本実施例では、位置情報を含めその国で記録が許可されていない車両情報データがサーバ40へ送信されることがなく、実施例2、3と比較して法令の遵守が容易である。また、サーバ40が車両情報データ記憶手段26を有するので、実施例1と比較して車両情報記録ECU12のコスト増を抑制できる。
【0078】
図12は、本実施例の車両情報記録システム100の機能ブロック図の一例を示す。図12において図9と同一部分には同一の符号を付しその説明は省略する。図12では、車両30の車両情報記録ECU12が国判別部21、データ決定部22、国境情報記憶手段24及び選択テーブル記憶手段25を有する。また、サーバ40はデータ記録部23及び車両情報データ記憶手段26を有する。
【0079】
国判別部21は位置情報に基づき走行している国を判別し、データ決定部22は選択テーブル記憶手段25を参照してその国で記録する車両情報データを決定する。そして、車両情報記録ECU12は、各ECU11から送信された車両情報データのうち、記録してより車両情報データのみをサーバ40に送信する。なお、車両情報記録ECU12は記録が許可されていない車両情報データを破棄する。
【0080】
送信のタイミングは、実施例3と同様、例えば車両30で車両情報データを記憶する所定のサイクル時間毎でもよいし、サイクル時間よりも間隔の長い定期的なタイミングでもよいし、1組の車両情報データが所定数バッファリングされる毎でもよい。
【0081】
サーバ40は通信部34を介して車両情報データを受信する。受信した車両情報データはその国で記録してよい車両情報データであるので、サーバ40のデータ記録部23が受信した全ての車両情報データ記憶手段26に記録する。
【0082】
なお、FFDの取り扱いについては実施例3と同様である。すなわち、サーバ40が記録してもよいし、車両30が記録してもよい。
【0083】
図13は、車両情報記録システム100が車両情報データを記録する手順を示すシーケンス図の一例を示す。図13のシーケンス図は例えば車両30のイグニッションがオンになるとスタートする。
【0084】
車両情報記録ECU12はGPS受信機13、ジャイロセンサ、及び、車輪速センサを用いて位置情報を検出する(S510)。国判別部21は、位置情報に基づき国境情報記憶手段24を参照し、現在走行している国を判別する(S520)。データ決定部22は、国判別部21から国情報を取得し、国情報に基づき選択テーブル記憶手段25を参照して記録が許可された車両情報データを決定する(S530)。なお、データ決定部22は、FFDにおいても各国の法令に従って記録できるよう、記録が許可された車両情報データの識別情報を各ECU11に送信する。車両情報記録ECU12は、その国で記録が許可された車両情報データをサーバ40に送信する(S540)。
【0085】
サーバ40に処理が移り、サーバ40が車両情報データを受信すると(S610)、データ記録部23は、受信した車両情報データを全て車両情報データ記憶手段26に記憶していく(S620)。
【0086】
また、車両30では、不具合があった場合(S550のYes)、FFD記録部14は記録が許可されたFFDのみをFFD記憶手段15に記録する(S560)。各ECU11が記録が許可されたFFDを車両情報記録ECU12に送信し、車両情報記録ECU12がFFDをサーバ40に送信してもよい。これにより、FFDも車両情報データと同様に扱うことができる。
【0087】
ついで、国判別部21は最後に国を判別してから所定距離走行したか否かを判定する(S570)。国境を超えることはそれほど頻繁に発生することではないので、このように所定距離毎に判定すればよい。所定距離は例えば1km〜5km程度である。所定距離走行していなければ(S570のNo)、ステップS540に進み、車両情報記録ECU12はECU11から送信される車両情報データのうち、記録が許可された車両情報データのみをサーバ40に送信する。車両情報記録ECU12は、所定距離走行した場合(S570のYes)、ステップS110に進み位置情報の検出(S510)、国の判別(S520)、記録する車両情報データの決定(S530)を実行する。
【0088】
以上説明したように、本実施例の車両情報記録システム100は、実施例1の効果に加え、サーバ40で車両情報データを記録するので、車両情報記録ECU12の構成を実施例1よりも簡易化してコスト増を抑制できる。また、その国で記録が許可されていない車両情報データがサーバ40へ送信されることがないので、実施例2、3と比較して法令の遵守が容易である。
【実施例5】
【0089】
実施例1〜4のいずれの形態によっても、各国の法令に則り車両情報データを記録することができる。しかしながら、車両30が車両情報データ記憶手段26を有している場合(実施例1、2)、車両30は国境を越えて移動しうるため、X国では記録が適法であった車両情報データがY国では不適法となる場合がある。この場合、次のような考え方を取り得る。
a)まず、Y国の法令に従うことが優先される。すなわち、Y国の法令が、Y国に入国する前の車両情報データについては、Y国で記録が許可されていなくても消去を義務づけていない場合、車両30がそのままX国で記録した車両情報データを保持する。
【0090】
また、Y国の法令が、Y国に入国する前の車両情報データについて、消去を義務づけている場合、車両30はX国で記録した車両情報データのうち、Y国で記録が禁止されている車両情報データを消去する。
b)また、Y国の法令が、Y国に入国する前の車両情報データについて特に定めていない場合がある。しかしながら、この場合であってもY国で記録が許可されていないデータを使用すること(例えば、車両情報データを読み出すこと、車両情報データから個人を特定すること、車両情報データを転送すること等)は禁止されていると考えられるので、X国で記録された車両情報データのうち、Y国で記録が許可されていない車両情報データの取り扱いを定める必要がある。
【0091】
この場合の取り扱いとして、1つは消去する方法と、もう1つは消去せずに読み出しのみを禁止する方法とがある。消去であれば、Y国の法令の運用にかかわらず確実にY国の法令に従うことができる。また、読み出しを禁止する場合は、後にX国に戻った場合に、過去の車両情報データを不具合の解析に利用することができる。
【0092】
そこで、本実施例では、X国で記録した車両情報データを消去せずに、Y国では車両情報データの読み出しを禁止する車両情報記録システム100について説明する。
【0093】
本実施例では、実施例1又は2のように車両30が車両情報データ記憶手段26を有していることになるので、機能ブロック図は図2又は図6を使用することができるが、ここでは実施例1の図2を例に説明する。
【0094】
図14は、本実施例の車両情報記録システム100の機能ブロック図の一例を示す。なお、図14において図2と同一部分には同一の符号を付しその説明は省略する。図14の車両情報記録ECU12は、読み出し禁止部27を有する。読み出し禁止部27は、データ決定部22から記録してもよい(又は記録が禁止された)車両情報データの識別情報を取得し、記録が禁止された車両情報データが既に記録されている場合、その車両情報データの読み出しを禁止する。例えば、外部から車両情報データの読み出し要求があると、読み出し禁止部27が車両情報データ記憶手段26に記憶された車両情報データに、その国で記録が禁止された車両情報データが記録されているか否かを改めて検査し、記録が禁止されている車両情報データの読み出しを禁止する。
【0095】
FFDについても同様に取り扱うべきなので、FFD記憶手段15に記憶されたFFDのうち、記録が禁止された車両情報データと同じFFDは読み出しが禁止される。
【0096】
なお、外部からの読み出しとは、サーバ40からの車両情報データの送信要求のように無線を介する態様、診断ツールのように有線で車載LANとCAN通信して車両情報データを読み出す態様等があるが、その態様を問わずに車両情報データが読み出されることをいう。
【0097】
図15は、車両情報データ及びFFDの読み出しの手順を示すフローチャート図の一例である。図15では、既に車両30の車両情報データ記憶手段26に車両情報データが記録されており、不具合が生じていた場合はFFD記憶手段15にFFDが記憶されている。
【0098】
図15のフローチャート図は、外部からの車両情報データ又はFFDの読み出し要求があるとスタートする(S710)。
【0099】
読み出し要求が検出されると、読み出し禁止部27は、その国で読み出しが禁止されてる車両情報データを確定する(S720)。その国とは、例えばサービスセンタで車両情報データを読み出す場合は現在位置から判定される国である。また、サーバ40から読み出し要求がある場合は、例えばサーバ40が設置された国である。なお、サーバ40の属する国(サーバ40が従うべき法令)の判断については各国の法令に従うことが好ましい。
【0100】
国判別部21が位置情報に基づき判別した国情報に基づき、データ決定部22が記録してよい車両情報データ又は記録が禁止された車両情報データの識別情報を読み出し禁止部27に通知するので、読み出し禁止部27はその情報に基づき、既に車両情報データ記憶手段26に記憶された車両情報データからその国で読み出しが禁止されている車両情報データを確定する。
【0101】
なお、車両情報データの読み出し要求があった場合、FFDも同様に読み出し要求されることが多いが、FFDは各ECU11が直接外部に提供するのでなく、車両情報記録ECU12が各ECU11のFFDをまとめて外部に提供するので、読み出し禁止部27により車両情報データと同様にFFDの読み出しを禁止できる。
【0102】
ついで、車両情報記録ECU12は、読み出しが禁止されていない車両情報データ及びFFDのみを外部に提供する(S730)。
【0103】
本実施例によれば、車両情報データの読み出し要求があった時点で、車両情報データの読み出しを禁止/許可を判定するので、国境を越えたことで不適法となった車両情報データが記録されていても、法令を遵守することができる。
【0104】
なお、読み出しを禁止するのでなく消去する場合、消去するタイミングとして、外部から読み出し要求があった時、又は、国境を越えた時、が考えられる。国境を越えた時に消去する場合、その国では不適法な車両情報データが記録されている時間を最短にできる。また、外部から読み出し要求があった時に消去する場合、車両情報データが古いものから上書きされていくことを考慮すると読み出し要求があった時には既に上書きにより消去されていることが期待できるので、消去処理による処理負荷の増大を最小限に抑制できる。
【0105】
以上説明したように、本実施形態の車両情報記録システム100は、個人情報などの取り扱いを定める各国の種々の法令に則り、車両情報データを記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】国毎に記録される車両情報データの一例を示す図である。
【図2】車両情報記録システムの機能ブロック図の一例である(実施例1)。
【図3】記録データ選択テーブルの一例を示す図である。
【図4】車両情報記録システムが車両情報データを記録する手順を示すフローチャート図の一例である(実施例1)。
【図5】車両情報記録システムの概略構成図の一例である(実施例2)。
【図6】車両情報記録システムの機能ブロック図の一例である(実施例2)。
【図7】車両情報記録システムが車両情報データを記録する手順を示すシーケンス図の一例である(実施例2)。
【図8】車両情報記録システムの概略構成図の一例である(実施例3)。
【図9】車両情報記録システムの機能ブロック図の一例である(実施例3)。
【図10】車両情報記録システムが車両情報データを記録する手順を示すシーケンス図の一例である(実施例3)。
【図11】車両情報記録システムの概略構成図の一例である(実施例4)。
【図12】車両情報記録システムの機能ブロック図の一例である(実施例4)。
【図13】車両情報記録システムが車両情報データを記録する手順を示すシーケンス図の一例である(実施例4)。
【図14】車両情報記録システムの機能ブロック図の一例である(実施例5)。
【図15】車両情報データ及びFFDの読み出しの手順を示すフローチャート図の一例である。
【符号の説明】
【0107】
11、11A〜11C ECU
12 車両情報記録ECU
13 GPS受信機
14、14A〜14C FFD記録部
15、15A〜15C FFD記憶手段
21 国判別部
22 データ決定部
23 データ記録部
24 国境情報記憶手段
25 選択テーブル記憶手段
26 車両情報データ記憶手段
27 読み出し禁止部
30 車両
40 サーバ
50 車両情報記録装置
100 車両情報記録システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載装置から取得される車両情報データを記録する車両情報記録システムにおいて、
前記車両情報データを記憶する車両情報データ記憶手段と、
車両の位置情報から車両が存在する国を判別する国判別手段と、
国を識別する国情報に対応づけて、前記車両情報データ記憶手段に記録する前記車両情報データを記憶する選択テーブル記憶手段と、
前記国判別手段が判別した国に基づき前記選択テーブル記憶手段を参照し、前記車両情報データ記憶手段に記録する前記車両情報データの種別を可変に制御するデータ記録手段と、
を有することを特徴とする車両情報記録システム。
【請求項2】
不具合が発生した場合に前記車両情報データが記録される不具合データ記憶手段、を有することを特徴とする請求項1記載の車両情報記録システム。
【請求項3】
前記国判別手段が判別した国に基づき前記選択テーブル記憶手段を参照し、前記車両情報データ記憶手段に記録された前記車両情報データのうち、当該国で記録される前記車両情報データでない前記車両情報データの読み出しを禁止するか、又は、消去する読み出し禁止手段、
を有することを特徴とする請求項1記載の車両情報記録システム。
【請求項4】
車載装置から取得される車両情報データを記録する車載された車両情報記録装置において、
前記車両情報データを記憶する車両情報データ記憶手段と、
車両の位置情報から車両が存在する国を判別する国判別手段と、
国を識別する国情報に対応づけて、前記車両情報データ記憶手段に記録する前記車両情報データを記憶する選択テーブル記憶手段と、
前記国判別手段が判別した国に基づき前記選択テーブル記憶手段を参照し、前記車両情報データ記憶手段に記録する前記車両情報データの種別を可変に制御するデータ記録手段と、
を有することを特徴とする車両情報記録装置。
【請求項5】
車載装置から取得される車両情報データを記録する車載された車両情報記録装置において、
前記車両情報データを記憶する車両情報データ記憶手段と、
車両の位置情報から車両が存在する国を判別する国判別手段と、
前記国判別手段が判別した国の国情報をサーバに送信する送信手段と、
前記サーバが、国を識別する国情報に対応づけて前記車両情報データ記憶手段に記録する前記車両情報データを記憶する選択テーブル記憶手段を参照して決定した、前記車両情報データの識別情報、を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した前記車両情報データの識別情報に基づき、前記車両情報データ記憶手段に記録する前記車両情報データの種別を可変に制御するデータ記録手段と、
を有することを特徴とする車両情報記録装置。
【請求項6】
車載装置から取得される車両情報データを、車両から受信して記録する車両情報記録サーバにおいて、
車両の位置情報及び前記車両情報データを受信する受信手段と、
前記車両情報データを記憶する車両情報データ記憶手段と、
車両の位置情報から車両が存在する国を判別する国判別手段と、
国を識別する国情報に対応づけて、前記車両情報データ記憶手段に記録する前記車両情報データを記憶する選択テーブル記憶手段と、
前記国判別手段が判別した国に基づき前記選択テーブル記憶手段を参照し、前記車両情報データ記憶手段に記録する前記車両情報データの種別を可変に制御するデータ記録手段と、
を有することを特徴とする車両情報記録サーバ。
【請求項7】
車載装置から取得される車両情報データを、車両から受信して記録する車両情報記録サーバにおいて、
前記車両が、該車両の位置情報から判別した国情報に基づき、国を識別する国情報に対応づけて前記車両情報データ記憶手段に記録する前記車両情報データを記憶した選択テーブル記憶手段を参照して決定した、サーバに送信する前記車両情報データを、受信する受信手段と、
受信した前記車両情報データを記憶する車両情報データ記憶手段と、
を有することを特徴とする車両情報記録サーバ。
【請求項8】
車載装置から取得される車両情報データを車両情報データ記憶手段に記録する車両情報記録方法において、
国判別手段が、車両の位置情報から車両が存在する国を判別するステップと、
データ決定手段が、前記国判別手段が判別した国に基づき、国を識別する国情報に対応づけて前記車両情報データ記憶手段に記録する前記車両情報データを記憶した選択テーブル記憶手段を参照し、前記車両情報データ記憶手段に記録する前記車両情報データを決定するステップと、
データ記録手段が、データ決定手段が決定した前記車両情報データを、前記車両情報データ記憶手段に記録するステップと、
を有することを特徴とする車両情報記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−33165(P2010−33165A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−192393(P2008−192393)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】