説明

車両感知器

【課題】併設される際の干渉を防止するともに、ハードウェア構成を共通とした車両感知器の実現。
【解決手段】車両感知器100は、位相差方式の光波距離センサである距離センサ10を内蔵し、この距離センサ10による計測距離Lに基づいて、車両の有無を判定する。距離センサ10では、分周器14の分周比Nを変更することで、送信波の周波数を変更できるとともに、2位相ロックインアンプ30によって、受信信号から、送信波の周波数と同じ反射波の信号のみを抽出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両感知器に関する。
【背景技術】
【0002】
車両感知器の一種として、路面に向けて超音波や光を照射し、反射波の受信タイミングや受信レベルに基づいて、車両の有無を検出する感知器が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−174832号公報
【特許文献2】特開平10−222795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような車両感知器を複数車線それぞれに設置(併設)する場合、他の車両感知器の反射波をも受信してしまい、干渉による誤感知が問題となっていた。これを防止するために、車両感知器を併設する場合には、車両感知器毎に送信周波数を異ならせる必要がある。そこで、メーカ側は、送信周波数別に複数種類の車両感知器を製造する必要があり、車両感知器の設置・利用者側(設置事業者や警察庁)は、感知器の設置・管理に留意する必要があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、併設時の干渉を防止する新たな車両感知器の実現を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の形態は、
互いの反射波の到達圏内に併設され、自感知器の反射波に基づいて対象車線における車両の有無を感知する車両感知器(例えば、図1の車両感知器100)であって、
所定周波数のクロック信号を分周する分周比を変更可能な分周器(例えば、図4の分周器14)と、
前記分周器による分周信号から送信波を生成し、前記対象車線に向けて送信する送信部(例えば、図4の発光部16)と、
前記分周器の分周比を変更設定することで、前記送信波の周波数を変化させる送信波周波数設定部(例えば、図4の周波数設定部52)と、
前記送信波の反射波を受信する受信部(例えば、図4の受光部18)と、
前記送信波と前記受信部で受信された反射波である受信波との位相差を検出する位相差検出部(例えば、図4の距離算出部22)と、
前記検出された位相差に基づいて、前記対象車線までの計測距離を算出する距離算出部(例えば、図4の距離算出部22)と、
前記計測距離に基づいて、前記対象車線の車両の有無を判定する判定部(車両有無判定部54)と、
を備えた車両感知器である。
【0007】
この第1の形態によれば、送信波と受信波との位相差に基づいて対象車線までの計測距離を算出し、この計測距離に基づいて対象車線の車両の有無を判定する車両感知器において、所定の基準周波数のクロック信号を分周した分周信号から送信波が生成されるが、このクロック信号を分周する分周器の分周比が変更可能に構成されている。つまり、分周器の分周比を変更するだけで、送信波の周波数を変更できる。これにより、併設された車両感知器間の送信波及び反射波の干渉を防止できるとともに、併設する複数の車両感知器のハードウェア構成を共通とすることができる。
【0008】
第2の形態として、第1の形態の車両感知器であって、
前記位相差検出部は、
前記分周信号を用いて前記受信波を同期検波し、当該同期検波した信号から直流成分を抽出する2位相ロックインアンプ回路(例えば、図4の2位相ロックインアンプ30)を有し、
前記抽出された2つの直流成分の正負の組合せと当該直流成分とを用いて、前記送信波と前記受信波との位相差を検出する、
車両感知器を構成しても良い。
【0009】
この第2の形態によれば、送信波と受信波の位相差の検出は、2位相ロックインアンプを用いて実現される。これにより、送信波と同じ周波数の反射波を容易に検出でき、雑音に強く且つ精確な位相差の検出が実現される。
【0010】
第3の形態として、第1又は第2の形態の車両感知器であって、
前記判定部は、前記計測距離が、当該車両感知器から路面までの距離とみなす路面距離に基づき定められる閾値距離条件を満たすか否かによって、前記対象車線の車両の有無を判定し、
前記路面距離を、前記判定部により車両無しと判定されているときの計測距離に追従させるように変更することで前記閾値距離条件を変更する閾値距離条件変更部(例えば、図4の車両有無判定部54)、
を更に備える、
車両感知器を構成しても良い。
【0011】
この第3の形態によれば、計測距離が、路面距離に基づき定められる閾値条件を満たすか否かによって、対象車線の車両の有無が判定される。ところで、実際の車両感知器から路面までの距離は、例えば積雪等によって変動し得る。このため、路面距離を、車両無しと判定されているときの計測距離に追従させるように変更することで、より精確な車両有無の判定が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】車両感知器の設置例。
【図2】光波距離センサによる距離計測の概要図。
【図3】送信周波数による検出精度の違いの説明図。
【図4】車両感知器の構成図。
【図5】算出される位相差と実際の位相差との対応関係。
【図6】位相差補正テーブルのデータ構成例。
【図7】分周比と計測可能な最大距離との対応関係例。
【図8】計測距離に基づく車両有無の判定原理の説明図。
【図9】車両検知処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明するが、本発明の適用可能な実施形態がこれに限定されるものではない。
【0014】
[設置例]
図1は、本実施形態における車両感知器100の設置例を示す図である。図1に示すように、複数車線でなる道路において、各車線を感知対象とした複数の車両感知器100が、道路上方に設置された柱に、感知対象の車線を俯瞰するように設置(併設)されている。
【0015】
車両感知器100は距離センサ10を内蔵し、この距離センサ10による計測距離によって、感知対象の車線における車両の有無を示す感知信号を生成する。車両感知器100から出力された感知信号は、例えば、柱の下方に設置され、有線/無線によって通信可能に接続された制御装置200に出力される。
【0016】
[距離センサの原理]
車両感知器100に内蔵される距離センサ10は、赤外線やレーザ光等の光波を用いた光波距離センサであり、位相方式によって測定対象物までの距離Lを計測する。
【0017】
図2は、距離センサ10による距離計測の概要図である。図2(a)に示すように、距離センサ10は、光波である送信波を測定対象物90に向けて射出し、測定対象物90で反射された反射波を受信する。そして、図2(b)に示すように、この送信波と受信した反射波(以下、「受信波」という)との位相差φから、測定対象物90までの距離Lを算出する。測定対象物90までの距離Lは、L=(C・φ/2πf)/2、と算出される。ここで、「C」は光速であり、C≒3×10m/s、である。
【0018】
また、送信波と受信波との位相差φから距離Lを算出するため、1つの送信周波数のみで距離Lを算出する場合には、位相差φは、送信周波数の1周期以内となる。このため、測定可能な最大距離Lm(いわゆる「距離レンジ」)は、理論的には、送信波の周波数fによって決まり、Lm=λ/2=C/(2・f)、となる。例えば、送信波の周波数を「25MHz」とすると、波長λは「12m」であり、測定可能な最大距離Lmは「6m」となる。
【0019】
また、位相方式の距離センサによる測定距離Lの算出精度は、送信波の周波数によって異なり、具体的には、送信波の周波数が高いほど、算出精度が良い。
【0020】
図3は、送信波の周波数の違いによる測定距離Lの算出精度の違いを説明するための図である。図中、上側は、周波数faの送信波及び受信波を示し、下側は、周波数faより高い周波数fb(=3・fa)の送信波及び受信波を示している。
【0021】
同じ距離Lを測定する場合、周波数fが異なると波長λが異なることにより、送信波と受信波との位相差φは異なる。具体的には、高周波であるほど、位相差φが大きくなる。図3では、周波数fbの場合の位相差φbのほうが、周波数faの場合の位相差φaよりも大きく、φb=3・φa、となっている。
【0022】
二つの信号の位相差φを検出する場合、その位相差φが小さいほど、その検出誤差が発生し易い。つまり、送信波の周波数fが低周波であるほど、位相差φの検出誤差が発生し易く、測定距離Lの算出精度が低下する。逆に言えば、送信波の周波数fが高周波であるほど、位相差φの検出誤差が発生しにくく、測定距離Lの算出精度が向上する。
【0023】
ところで、光波等の電磁波を距離計測用信号として用いた距離センサを内蔵する車両感知器100を、複数車線それぞれに設置(併設)する場合、距離計測用の信号の干渉、つまり、他の車両感知器100が送信した送信波やその反射波も受信してしまうという事態が起こり得る。これを解決するため、本実施形態の車両感知器100は、距離計測用信号(送信波)の周波数を変更可能に構成されている。これにより、隣接する車線に配置(併設)された複数の車両感知器100それぞれの送信波の周波数を異なるように設定し、車両感知器100間の干渉の影響を防止することができる。
【0024】
[構成]
図4は、車両感知器100の構成図である。図4に示すように、車両感知器100は、距離センサ10と、周波数設定部52と、車両有無判定部54とを備えて構成される。
【0025】
距離センサ10は、2位相ロックインアンプを用いて送信波と受信波との位相差φを検出するものであり、発振器12と、分周器14と、発光部16と、受光部18と、BPF20と、2位相ロックインアンプ30とを備えて構成される。
【0026】
発振器12は、例えば、水晶振動子を有して構成され、基準周波数fの基準信号Fを生成する。この基準周波数fは、例えば「25MHz」とされる。
【0027】
分周器14は、発振器12から出力された基準信号Fの周波数fを1/Nに分周し、送信信号Vとして出力する。この分周器14の分周比Nは、「N=2(nは正数)」であり、周波数設定部52によって変更制御される。
【0028】
発光部16は、例えば、レーザダイオード等の発光素子を有して構成され、分周器14から出力された送信信号Vの周波数で強度変調された光信号を、送信波として射出する。つまり、周波数が「f/N」の送信波が射出される。
【0029】
受光部18は、例えば、フォトダイオード等の受光素子を有して構成され、受光した光波を電気信号に変換し、受信信号Vとして出力する。
【0030】
BPF20は、受信信号Vに対して、所定帯域の信号を通過させ、帯域外の周波数成分を遮断する。このBPF20の中心周波数foは、受信信号Vから、送信波と同じ周波数である反射波の信号のみを抽出するため、周波数設定部52によって、fo=f/N、に設定される。
【0031】
2位相ロックインアンプ30は、分周器14から出力される送信信号Vを「参照信号」とし、受信信号Vを「計測信号」として、受信信号Vを送信信号Vで同期検波(位相検波)し、直交する二つの交流信号X,Yを出力する。この2位相ロックインアンプ30は、原理的には、遅延回路32と、ミキサ34,36と、LPF38,40とを有して構成される。
【0032】
遅延回路32は、送信信号V(参照信号)の位相を「π/2(90°)」だけ遅らせる。
【0033】
ミキサ34は、BPF20から出力された信号と、送信信号V(参照信号)とを乗算(合成)して出力する。ミキサ36は、BPF20から出力された信号と、遅延回路32から出力された信号とを乗算する。
【0034】
LPF38は、ミキサ34の出力信号に対して、所定の低帯域の信号を通過させ、帯域外の周波数成分を遮断する。このLPF38のカットオフ周波数fcは、周波数設定部52によって、fc=f/2N、に設定される。
【0035】
LPF40は、ミキサ36の出力信号に対して、所定の低帯域の信号を通過させ、帯域外の周波数成分を遮断する。このLPF40のカットオフ周波数fcは、周波数設定部52によって、fc=f/2N、に設定される。
【0036】
この距離センサ10において、発振器12が生成する基準信号Fを、F1=sin(ωt)、とすると、分周器14の出力信号、すなわち送信信号V(参照信号)は、V=sin(ωt/N)、となる。そして、遅延回路32の出力信号Dは、D=sin(ωt/N−π/2)=cos(ωt/N)、となる。
【0037】
また、送信信号Vと受信信号Vとの位相差を「φ」とすると、受信信号Vは、V=sin(ωt/N−φ)、となる。この受信信号Vは、そのまま、BPF20を通過する。
【0038】
そして、ミキサ34の出力信号MIX1は、次式(1)となる。
MIX1=sin(ωt/N)×sin(ωt/N−φ)
=−(cos(2ωt−φ)−cosφ)/2 ・・(1)
この信号MIX1は、LPF38を通過することで高周波成分が遮断される。そして、LPF38の出力信号Xは、X=(cosφ)/2、となる。
【0039】
また、ミキサ36の出力信号MIX2は、次式(2)となる。
MIX2=cos(ωt/N)×sin(ωt/N−φ)
=(sin(2ωt−φ)+sinφ)/2 ・・(2)
この信号MIX2は、LPF40を通過することで高周波成分が遮断される。そして、LPF40の出力信号Yは、Y=(sinφ)/2、となる。
【0040】
従って、これらの信号X,Yから、送信信号Vと受信信号Vとの位相差φは、式(3)となる。
φ=tan−1(Y/X) ・・(3)
【0041】
ところで、送信信号Vと受信信号Vとの実際の位相差φrは、「0≦φr<2π(360°)」である。しかし、上式(3)によって算出される位相差φは、「−π/2(−90°)≦φ≦π/2(90°)」の値である。このため、算出した位相差φを、実際の位相差φrとなるように補正する必要がある。具体的には、信号X,Yの正負の組み合わせによって、算出した位相差φを補正する。
【0042】
図5は、実際の位相差φrと信号X,Yの正負との関係を示す図である。図5では、横軸を送信信号Vと受信信号Vとの実際の位相差φrとして、信号X,Yそれぞれと、この信号X,Yから算出される位相差φと、実際の位相差φrとを示している。
【0043】
図5に示すように、「0≦φr<π/2(90°)」では、φ=φr、であるが、「π/2(90°)≦φr<2π(360°)」では、φ≠φr、となっている。具体的には、「π/2(90°)≦φr<3π/2(270°)」では、φ=φr−π(180°)、であり、「3π/2≦φr<2π」では、φ=φr−2π、となっている。このため、実際の位相差φrとなるよう、算出した位相差φを補正する必要がある。信号X,Yそれぞれの値の正負の組合せは象限毎に異なるので、この信号X,Yの値の正負の組合せから、必要な補正量Δφを判断する。
【0044】
距離算出部22は、DSP(Digital Signal Processor)等の演算装置(プロセッサ)を有して構成され、測定対象物までの距離Lを算出する。すなわち、LPF38,40から出力される信号X,Yをもとに、上式(3)に従って、送信信号Vと受信信号Vとの位相差φを算出する。続いて、信号X,Yの正負の組合せをもとに、位相差補正テーブル60に従って、算出した位相差φを補正する。
【0045】
図6は、位相差補正テーブル60のデータ構成の一例を示す図である。図6によれば、位相差補正テーブル60は、信号Xの値の正負61と、信号Yの値の正負62との組合せそれぞれに、位相差φの補正量63を対応付けて格納している。この位相差補正テーブル60は、距離算出部22内に記憶されている。そして、この位相差φから計測距離Lを算出する。計測距離Lは、L=(C・φ・N)/(2・ω)、で与えられる。
【0046】
周波数設定部52は、DSP(Digital Signal Processor)等の演算装置(プロセッサ)を有して構成され、例えば、管理者の操作入力や制御装置200からの制御信号等の外部入力に従って、距離センサ10の送信波の周波数を設定する。具体的には、分周器14の分周比Nを、指定された値に設定する。また、設定した分周比Nに合わせて、BPF20の中心周波数foを設定するとともに、LPF38,40のカットオフ周波数fcを設定する。中心周波数foは、fo=f/N、で与えられ、カットオフ周波数fcは、fc=f/2N、で与えられる。
【0047】
図7は、分周比Nの具体的な設定例を示す図であり、分周比Nと、計測可能な最大距離Lmとの対応関係を示している。但し、本実施形態において設定可能な分周比Nは、2のべき乗である「N=1,2,4・・・」であり、基準周波数fは「f=25MHz」であるとする。
【0048】
車両感知器100は、通常、路面からの高さが「5〜6m」程度の位置に設置される。つまり、計測可能な距離Lmが「5〜6m」以上、すなわち、分周比Nを「N=1」以上に設定すればよい。また、送信波の周波数が高いほど、計測精度が高い。このため、複数の車両感知器100を併設する場合には、各車両感知器100分周器14の分周比Nを、「N=1,2,4・・・」の順に割り当てる。具体的には、例えば、2台の車両感知器100a,100bを併設する場合には、一方の車両感知器100aの分周比Nを「N=1」とし、他方の車両感知器100bの分周比Nを「N=2」とする。また、3台の車両感知器100a〜100cを併設する場合には、1台目の車両感知器100aの分周比Nを「N=1」とし、2台目の車両感知器100bの分周比Nを「N=2」とし、3台目の車両感知器100cの分周比Nを「N=4」とする。
【0049】
車両有無判定部54は、DSP(Digital Signal Processor)等の演算装置(プロセッサ)を有して構成され、距離算出部22によって算出された計測距離Lに基づいて対象車線における車両の有無を判定し、判定結果である感知信号を出力する。
【0050】
図8は、計測距離Lに基づく車両の有無の判定原理を説明する図である。図8に示すように、車両感知器100から路面までの距離である「路面レベル」を基準とした「閾値レベル」を定める。具体的には、路面レベルから、車両の高さを想定して定められる所定距離(例えば、30cm程度)だけ高い位置までの距離を、閾値レベルとして定める。そして、計測距離Lが、閾値距離条件である「閾値レベルに達しないこと」を満たす場合には「車両有り」と判定し、閾値距離条件を満たさない(すなわち、計測距離Lが閾値レベルに達した)場合には「車両無し」と判定する。
【0051】
なお、実際の路面の高さは常に一定ではなく、例えば積雪などによって変動する。このため、計測距離Lに基づき、路面レベルを、実際の路面の高さの変動に追従させる。
【0052】
具体的には、現在の路面レベルが実際の路面にほぼ一致している場合、車両が存在するならば、計測距離Lは閾値レベルに達しておらず、車両が存在しないならば、計測距離Lは路面レベルにほぼ一致するはずである。このため、判定結果が「車両無し」の場合に、計測距離Lに近づけるように、路面レベルを徐々に変更する。すなわち、計測距離Lが路面レベルを超える場合には、路面レベルを徐々に増加させ、計測距離Lが閾値レベルと路面レベルとの間である場合には、路面レベルを徐々に減少させる。このとき、路面レベルの変更量は、増加量のほうが減少量よりも大きくする。そして、この路面レベルの変動に応じて、閾値レベルも変動することになる。
【0053】
なお、距離算出部22、周波数設定部52及び車両有無判定部54のうち、2つ或いは全部が、同一の制御部によって構成されることにしても良い。
【0054】
[処理の流れ]
図9は、車両有無判定部54が実行する車両検知処理の流れを説明するフローチャートである。図9によれば、車両有無判定部54は、先ず、距離算出部22による計測距離Lの算出が正常に行われたか否かを判定する。ここで、計測距離Lの算出が正常に行われない場合としては、例えば、送信波を送出したが反射波が受信されない場合などである。
【0055】
計測距離Lの算出が正常に行われていない場合(ステップA1:NO)、ここまでの感知結果が所定時間(例えば、5分)以上連続して「異常」であるならば(ステップA3:YES)、引き続いて感知結果を「異常」とし(ステップA5)、そうでないならば(ステップA3:NO)、感知結果を「有り」とする(ステップA7)。
【0056】
一方、計測距離Lの算出が正常に行われたならば(ステップA1:YES)、算出された計測距離Lと路面レベルとを比較する。そして、計測距離Lが路面レベルを超えるならば(ステップA9:YES)、路面レベルを所定の増加量だけ上昇させ(ステップA11)、上昇後の路面レベルに合わせて、閾値レベルを変更する(ステップA13)。
【0057】
また、計測距離Lが路面レベルに一致するならば(ステップA15:YES)、感知結果を「無し」とする(ステップA17)。
【0058】
また、計測距離Lが路面レベルに達しないならば(ステップA15:NO)、続いて、
計測距離とLと閾値レベルとを比較する。計測距離Lが閾値レベルに達しないならば(ステップA19:YES)、感知結果を「有り」とする(ステップA21)。
【0059】
一方、計測距離Lが閾値レベルに達するならば(ステップA19:NO)、路面レベルを所定の減少量だけ減少させ(ステップA23)、減少後の路面レベルに合わせて、閾値レベルを変更する(ステップA25)。そして、感知結果を「無し」とする(ステップA27)。
【0060】
その後、車両感知を終了するか否かを判断し、終了しないならば(ステップA29:NO)、ステップA1に戻り、終了するならば(ステップA29:YES)、車両感知処理を終了する。
【0061】
[作用・効果]
このように、本実施形態の車両感知器100は、位相差方式の光波距離センサである距離センサ10を内蔵し、この距離センサ10による計測距離Lに基づいて、車両の有無を判定する。距離センサ10では、分周器14の分周比Nを変更することで、送信波の周波数を変更できるとともに、2位相ロックインアンプ30によって、受信信号から、送信波の周波数と同じ反射波の信号のみを抽出することができる。
【0062】
これにより、隣接する車線を対象として設置(併設)する複数の車両感知器100のハードウェアを共通とすることができる。そして、各車両感知器100における分周器14の分周比Nを、異なる分周比Nに設定して送信波の周波数を異ならせることで、併設された車両感知器100間の反射波の干渉を防止することができる。
【0063】
[変形例]
なお、本発明の適用可能な実施形態は、上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なのは勿論である。
【0064】
(A)閾値距離条件
例えば、上述の実施形態では、車両有無の判定基準となる閾値距離条件を「計測距離Lが閾値レベルを満たさない」ことにしたが、これ以外の条件としても良い。具体的には、例えば、閾値距離条件を「計測距離と路面レベルとの差が所定距離以上」とし、計測距離Lと路面レベルとの差が、車両の高さを想定して定められる所定距離(例えば、30cm程度)以上ならば「車両有り」と判定し、所定距離以下ならば「車両無し」と判定する。
【0065】
(B)距離センサ10
また、上述に実施形態では、車両感知器100が内蔵する距離センサ10を光波距離センサとしたが、電磁波や超音波を用いた距離センサであっても、同様に本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
100 車両感知器
10 距離センサ
12 発振器、14 分周器、16 発光部、18 受光部、20 BPF
30 2位相ロックインアンプ
32 遅延回路、34,36 ミキサ、38,40 LPF、22 距離算出部
52 周波数設定部、54 車両有無判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いの反射波の到達圏内に併設され、自感知器の反射波に基づいて対象車線における車両の有無を感知する車両感知器であって、
所定周波数のクロック信号を分周する分周比を変更可能な分周器と、
前記分周器による分周信号から送信波を生成し、前記対象車線に向けて送信する送信部と、
前記分周器の分周比を変更設定することで、前記送信波の周波数を変化させる送信波周波数設定部と、
前記送信波の反射波を受信する受信部と、
前記送信波と前記受信部で受信された反射波である受信波との位相差を検出する位相差検出部と、
前記検出された位相差に基づいて、前記対象車線までの計測距離を算出する距離算出部と、
前記計測距離に基づいて、前記対象車線の車両の有無を判定する判定部と、
を備えた車両感知器。
【請求項2】
前記位相差検出部は、
前記分周信号を用いて前記受信波を同期検波し、当該同期検波した信号から直流成分を抽出する2位相ロックインアンプ回路を有し、
前記抽出された2つの直流成分の正負の組合せと当該直流成分とを用いて、前記送信波と前記受信波との位相差を検出する、
請求項1に記載の車両感知器。
【請求項3】
前記判定部は、前記計測距離が、当該車両感知器から路面までの距離とみなす路面距離に基づき定められる閾値距離条件を満たすか否かによって、前記対象車線の車両の有無を判定し、
前記路面距離を、前記判定部により車両無しと判定されているときの計測距離に追従させるように変更することで前記閾値距離条件を変更する閾値距離条件変更部、
を更に備える、
請求項1又は2に記載の車両感知器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−48366(P2012−48366A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188213(P2010−188213)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000001292)株式会社京三製作所 (324)
【Fターム(参考)】