説明

車両搭載用電力供給ユニット

【課題】車両搭載用の電力供給システムにおいて、電気回路に接続された電力伝送線に現れるノイズを低減することを目的とする。
【解決手段】車両搭載用電力供給システムは、電気回路ユニットに電力を伝送する正極バスバー30Pおよび負極バスバー30Nを備える。正極バスバー30Pおよび負極バスバー30Nは、これらのバスバーが互いの板面を向き合わせて平行に配置された平板対向区間を有する。正極バスバー30Pは、上側の板面がユニットケース26の内面に向けられ、下側の板面が負極バスバー30Nの上側の板面に向けられるよう配置されている。負極バスバー30Nは、下側の板面がユニットケース26の内面に向けられ、上側の板面が正極バスバー30Pの下側の板面に向けられるよう配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両搭載用のシステムに関し、特に、電気回路に接続される電力伝送線の特性を改善した車両搭載用電力供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンおよびモータジェネレータを用いて走行するハイブリッド自動車、モータジェネレータを用いて走行する電気自動車等の電動車両が広く用いられている。このような電動車両は、二次電池、電圧の昇降圧を行うDCDCコンバータ回路、直流交流変換を行うインバータ回路等の電気回路を備える。
【0003】
車両加速時には、DCDCコンバータ回路は二次電池の出力電圧を昇圧し、昇圧電圧に基づく直流電力をインバータ回路に出力する。インバータ回路は、DCDCコンバータ回路から供給される直流電力を交流電力に変換し、その交流電力をモータジェネレータに供給する。そして、車両回生制動時には、インバータ回路は、モータジェネレータの交流発電電力を直流電力に変換し、その直流電力をDCDCコンバータ回路に出力する。DCDCコンバータ回路は、その直流電力に基づく電圧を降圧して二次電池に印加して電池を充電する。インバータ回路には、このようにDCDCコンバータ回路とモータジェネレータとの間で直流交流変換を行うものの他、電池に直接接続され、電池とモータジェネレータとの間で直流交流変換を行うものがある。
【0004】
なお、以下の特許文献1には、車両搭載用の配線構造体が記載されている。この配線構造体は、インバータブリッジが取り付けられる配線用ブロックを備える。配線用ブロックには、インバータブリッジと電源装置とを接続する正極側のバスバーおよび負極側のバスーバーが埋め込まれている。正極側のバスバーおよび負極側のバスバーは平行に配置されるが、これらのバスバーは、各板面を向き合わせて配置されたものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−304679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
DCDCコンバータ回路においては、スイッチング素子のスイッチングにより電圧の昇降圧が行われ、インバータ回路においては、スイッチング素子のスイッチングにより直流交流変換が行われる。したがって、電池とこれらの電気回路とを接続する電力伝送線には、スイッチングに基づくノイズが現れることがある。このノイズは、車両に搭載される他の電気機器が最大限の性能を発揮することを妨げることがある。
【0007】
本発明は、このような課題に対してなされたものである。すなわち、車両搭載用の電力供給システムにおいて、電気回路に接続された電力伝送線に現れるノイズを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、電力を蓄える蓄電手段との間で電力を授受する電気回路ユニットと、前記蓄電手段と前記電気回路ユニットとを接続し、板形状に形成された平板区間をそれぞれが有する複数の電力伝送線と、を備え、前記複数の電力伝送線は、隣接する電力伝送線の平板区間の板面が向き合うよう配置されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る車両搭載用電力供給システムは、望ましくは、前記電気回路ユニットは、前記蓄電手段との間でそれぞれが電力を授受する複数の電気回路を備え、前記複数の電力伝送線のそれぞれは、平板区間の一端が前記蓄電手段に接続され、平板区間から各電気回路に分岐する分岐区間を有し、前記複数の電力伝送線は、隣接する電力伝送線の平板区間の板面が、各分岐区間よりも前記蓄電手段側で向き合うよう配置されている。
【0010】
また、本発明に係る車両搭載用電力供給システムは、望ましくは、前記複数の電気回路のうち少なくとも1つ、および前記複数の電力伝送線の一部を収容する導電性のユニットケースを備え、前記複数の電力伝送線のうち、前記ユニットケースの内面に近接する電力伝送線は、その平板区間の板面を前記ユニットケースの内面に向けて配置されている。
【0011】
また、本発明に係る車両搭載用電力供給システムは、望ましくは、前記ユニットケースの内面、および当該内面と向き合う平板区間の板面のそれぞれには、複数の突起部が配列され、当該平板区間の板面に配列された複数の突起部、および、前記ユニットケースの内面に配列された複数の突起部は、互いに隙間に入り込むよう位置する。
【0012】
また、本発明に係る車両搭載用電力供給システムは、望ましくは、前記複数の電力伝送線の各平板区間が貫通する導体筒と、前記複数の電気回路のうち少なくとも1つ、前記複数の電力伝送線の一部、および前記導体筒を収容する導電性のユニットケースと、を備え、前記導体筒は、前記ユニットケースに導電接続されている。
【0013】
また、本発明に係る車両搭載用電力供給システムは、望ましくは、前記導体筒の内面と、前記複数の電力伝送線の各平板区間との間に充填される誘電体部材を備える。
【0014】
また、本発明に係る車両搭載用電力供給システムは、望ましくは、前記導体筒の内面、および当該内面に向き合う平板区間の板面のそれぞれには、複数の突起部が配列され、当該平板区間の板面に配列された複数の突起部、および、前記導体筒の内面に配列された複数の突起部は、互いに隙間に入り込むよう位置する。
【0015】
また、本発明に係る車両搭載用電力供給システムは、望ましくは、互いに隣接する平板区間における互いに向き合う2つ板面のそれぞれには、複数の突起部が配列され、一方の板面に配列された複数の突起部、および、他方の板面に配列された複数の突起部は、互いに隙間に入り込むよう位置する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、車両搭載用の電力供給システムにおいて、電気回路に接続された電力伝送線に現れるノイズを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態に係る車両搭載用電力供給システムの構成を示す図である。
【図2】コネクタ接続端部および平板対向区間の一部をユニットケースと共に例示する図である。
【図3】ユニットケース、正極バスバーおよび負極バスバーの断面を模式的に示した図である。
【図4】導体筒を用いた平板対向区間の構造を示す図である。
【図5】平板対向区間の構造の応用例における、正極バスバー、負極バスバー、および導体筒の内側壁面の構成を示す図である。
【図6】平板対向区間の構造の応用例についての断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1には本発明の実施形態に係る車両搭載用電力供給システム10が示されている。このシステムは、二次電池12と電気回路ユニット18とを備え、これらが一対の電力ケーブル14、正極バスバー30Pおよび負極バスバー30Nからなる電力伝送線によって接続されているものである。電気回路ユニット18は、車両の駆動に用いられる電力、アクセサリ機器に供給される電力等を調整する。
【0019】
二次電池12は充放電が可能な蓄電手段である。二次電池12には、その他の蓄電手段として、充電容量を増大させるキャパシタが並列に接続されていてもよい。二次電池12の正極および負極には、それぞれ電力ケーブル14の一端が接続されている。各電力ケーブル14の他端にはケーブルコネクタ16が接続されている。このケーブルコネクタ16は、電気回路ユニット18において電力伝送線をなす正極バスバー30Pおよび負極バスバー30Nの各終端に着脱可能である。ここで、バスバーとは、電力伝送方向に延伸する板形状の導体をいう。
【0020】
電気回路ユニット18は、第1電力回路20、第2電力回路22、および降圧コンバータ回路24を備える。これらの電気回路のうち第1電力回路20および第2電力回路22は、導電性のユニットケース26に収納されている。また、降圧コンバータ回路24は、ユニットケース26の外側に配置され、ユニットケース26に設けられた降圧コンバータコネクタ28に接続されている。
【0021】
第1電力回路20、第2電力回路22、および降圧コンバータ回路24は、ケーブルコネクタ16からそれぞれに向けて分岐した正極バスバー30Pと負極バスバー30Nとに接続されている。正極バスバー30Pは、電力ケーブル14と第1電力回路20との間を接続する第1正極バスバー32P、第1正極バスバー32Pと第2電力回路22との間を接続する第2正極バスバー34P、および第1正極バスバー32Pと降圧コンバータコネクタ28との間を接続する第3正極バスバー36Pを含む。
【0022】
負極バスバー30Nは、電力ケーブル14と第1電力回路20との間を接続する第1負極バスバー32N、第1負極バスバー32Nと第2電力回路22との間を接続する第2負極バスバー34N、および第1負極バスバー32Nと降圧コンバータコネクタ28との間を接続する第3負極バスバー36Nを含む。
【0023】
このような構成により、第1電力回路20、第2電力回路22、および降圧コンバータ回路24は、正極バスバー30P、負極バスバー30Nおよび一対の電力ケーブル14を介して二次電池12に接続される。
【0024】
第1電力回路20および第2電力回路22のそれぞれは、電圧の昇降圧を行うDCDCコンバータ回路、直流交流変換を行うインバータ回路等の電気回路のうち少なくとも1つを含む。第1電力回路20には、例えば、車両駆動用モータジェネレータが接続される。この場合、第1電力回路は、二次電池12と車両駆動用モータジェネレータとの間で授受される電力を調整する。第2電力回路22には、別の車両駆動用モータジェネレータが接続されてもよい。この場合、第2電力回路22は、第1電力回路20と同様、二次電池12と車両駆動用モータジェネレータとの間で授受される電力を調整する。第1電力回路20および第2電力回路22には、車両駆動用モータジェネレータの他、車両の走行駆動等に用いられるその他の電気機器が接続されていてもよい。降圧コンバータ回路24は、二次電池12の電圧を降圧し、降圧された電圧を車両搭載用のアクセサリ機器に出力する。
【0025】
第1電力回路20、第2電力回路22および降圧コンバータ回路24は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、パワーMOSFET等のスイッチング素子を用いて構成される。これらの電気回路は、スイッチング素子による基本回路が予め組み込まれたインテリジェントパワーモジュール(IPM:Intelligent Power Module)を用いて構成してもよい。
【0026】
正極バスバー30Pおよび負極バスバー30Nは、これらのバスバーが互いの板面を向き合わせて平行に配置された平板対向区間38を有する。平板対向区間38は、正極バスバー30Pおよび負極バスバー30Nが各電気回路へ分岐する区間よりも二次電池12側に設けられている。
【0027】
図2には、正極バスバー30Pのコネクタ接続端部40P、負極バスバー30Nのコネクタ接続端部40N、および平板対向区間38の一部がユニットケース26と共に例示されている。正極バスバー30Pは、上側の板面がユニットケース26の内面に向けられ、下側の板面が負極バスバー30Nの上側の板面に向けられるよう配置されている。負極バスバー30Nは、下側の板面がユニットケース26の内面に向けられ、上側の板面が正極バスバー30Pの下側の板面に向けられるよう配置されている。正極バスバー30Pおよび負極バスバー30Nは平行に配置されており、正極バスバー30Pの上側の板面とユニットケース26の内面は平行であり、負極バスバー30Nの下側の板面とユニットケース26の内面は平行である。
【0028】
正極バスバー30Pのコネクタ接続端部40Pは右方向に、負極バスバー30Nのコネクタ接続端部40Nは左方向に、それぞれ幅が広くなっている。コネクタ接続端部40Pおよび40Nには、それぞれ、コネクタ取り付け穴42Pおよび42Nが設けられている。ケーブルコネクタ16は、正極バスバー30Pのコネクタ接続端部40Pの上面または下面に重ねられる導体片44P、および負極バスバー30Nのコネクタ接続端部40Nの上面または下面に重ねられる導体片44Nを有する。導体片44Pには、正極バスバー30Pのコネクタ取り付け穴42Pと合致するねじ穴46Pが設けられ、導体片44Nには、負極バスバー30Nのコネクタ取り付け穴42Nと合致するねじ穴46Nが設けられている。
【0029】
ケーブルコネクタ16の取り付けに際しては、図2の破線の矢印で示されるように、正極側の導体片44Pが正極バスバー30Pのコネクタ接続端部40Pに重ねられ、負極側の導体片44Nが負極バスバー30Nのコネクタ接続端部40Nに重ねられる。その上で、コネクタ取り付け穴42Pおよびねじ穴46Pにボルトが通され、さらに、コネクタ取り付け穴42Nおよびねじ穴46Nにボルトが通される。そして、ボルトとそのボルトに締結されるナットによって、正極側の導体片44Pと正極バスバー30Pとが固定接続され、負極側の導体片44Nと負極バスバー30Nとが固定接続される。
【0030】
図3は、平板対向区間38におけるユニットケース26、正極バスバー30Pおよび負極バスバー30Nの断面を模式的に示したものである。図2に示される構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。上述の構成によれば、図3に示されるように、正極バスバー30Pと負極バスバー30Nとの間に線間コンデンサCxが形成される。また、正極バスバー30Pとユニットケース26との間に、ラインバイパスコンデンサCypが形成され、負極バスバー30Nとユニットケース26との間には、ラインバイパスコンデンサCynが形成される。
【0031】
線間コンデンサCxは、正極バスバー30Pと負極バスバー30Nとの間に現れるノイズ電圧を低減する。すなわち、線間コンデンサCxは、ディファレンシャルモードノイズを低減する。また、ラインバイパスコンデンサCypおよびCynは、それぞれ、正極バスバー30Pとユニットケース26との間に現れるノイズ電圧、および負極バスバー30Nとユニットケース26との間に現れるノイズ電圧を低減する。すなわち、ラインバイパスコンデンサCypおよびCynは、コモンモードノイズを低減する。
【0032】
第1電力回路20、第2電力回路22、および降圧コンバータ回路24はスイッチングにより動作するため、正極バスバー30Pおよび負極バスバー30Nにスイッチングに基づくノイズを出力することがある。各電気回路から出力され平板対向区間38に至ったノイズは、平板対向区間38に形成された線間コンデンサおよびラインバイパスコンデンサによって、レベルが低減された上で電力ケーブル14に出力される。したがって、電力ケーブル14を介して車両内の広い範囲に亘ってノイズが伝えられることが回避される。これによって、ノイズが他の電気機器の動作性能に与える影響を抑制することができる。
【0033】
なお、ここでは、電気回路ユニット18として3つの電気回路、すなわち、第1電力回路20、第2電力回路22および降圧コンバータ回路24を含むものについて説明した。電気回路ユニット18には、2つの電気回路、または4つ以上の電気回路を含むものを採用してもよい。電気回路ユニット18を4つ以上の電気回路を含むものとする場合、第1正極バスバー32Pおよび第1負極バスバー32Nからバスバーをさらに分岐させ、分岐したバスバーに追加の電気回路を接続する。
【0034】
次に、平板対向区間38の構成の応用例について説明する。図4には導体筒48を用いた平板対向区間38の構造が示されている。この構造は、ユニットケース26に導電接続された導体筒48に正極バスバー30Pおよび負極バスバー30Nを貫通させ、ラインバイパスコンデンサの容量を増加させるものである。
【0035】
導体筒48は、四方を導体板で囲まれた長方形の筒穴を有する。導体筒48は、ユニットケース26の内面に固定される。導体筒48の固定に際しては、導体筒48が、その底面がユニットケース26の内面54に導電接触するよう、ユニットケース26の内面に配置される。その上で、ユニットケース26の内面54、導体筒48の側面、および導体筒48の上面に沿った形状を有する帯状金具50が導体筒48の上に嵌め合わされる。帯状金具50には、ユニットケース26に接触する区間にねじ穴52が設けられている。このねじ穴52およびユニットケース26に設けられたねじ穴に通されたボルトと、そのボルトに締結されるナットによって、帯状金具50がユニットケース26に固定されることで、導体筒48がユニットケース26に固定される。
【0036】
このようにボルトおよびナットによって導体筒48をユニットケース26に固定する代わりに、導体筒48を溶接によってユニットケース26に固定してもよい。また、鋳造、焼結、プレス等の技術によって、導体筒48およびユニットケース26を一体形成してもよい。
【0037】
正極バスバー30Pは、上側の板面が導体筒48の内側壁面に向けられ、下側の板面が負極バスバー30Nの上側の板面に向けられるよう配置されている。負極バスバー30Nは、下側の板面が導体筒48の内側壁面に向けられ、上側の板面が正極バスバー30Pの下側の板面に向けられるよう配置されている。正極バスバー30Pおよび負極バスバー30Nは平行に配置されており、正極バスバー30Pの上側の板面と導体筒48の内側壁面は平行であり、負極バスバー30Nの下側の板面と導体筒48の内側壁面は平行である。
【0038】
このような構造によれば、正極バスバー30Pの板面と導体筒48の内側壁面との間の距離、または、負極バスバー30Nの板面と導体筒48の内側壁面との間の距離を小さくし、ラインバイパスコンデンサの容量を大きくすることができる。
【0039】
図4に示す構造においては、導体筒48の内側壁面と各バスバーとの間にプラスチック、ゴム、セラミック等の誘電体部材を充填してもよい。これによって、正極バスバー30Pおよび負極バスバー30Nのそれぞれと導体筒48との間の絶縁性能、ならびに、正極バスバー30Pと負極バスバー30Nとの間の絶縁性能を向上させることができる。これによって、正極バスバー30Pの板面と導体筒48の内側壁面との間の距離、または、負極バスバー30Nの板面と導体筒48の内側壁面との間の距離を小さくすることができ、ラインバイパスコンデンサの容量を大きくすることができる。さらに、正極バスバー30Pと負極バスバー30Nとの間の距離を小さくすることができ、線間コンデンサの容量を大きくすることができる。また、誘電体部材の電気的作用により、ラインコンデンサの容量および線間コンデンサの容量を大きくすることができる。
【0040】
次に、平板対向区間38の構造の応用例について説明する。図5(a)には、本応用例に用いられる正極バスバー30Pおよび負極バスバー30Nの構成が示されている。また、図5(b)には、導体筒48の内側壁面の構成が示されている。さらに、図6には、導体筒48、正極バスバー30Pおよび負極バスバー30Nが図5に示されるように構成された場合における、導体筒48、正極バスバー30Pおよび負極バスバー30Nの断面が示されている。図2および図4に示す構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0041】
正極バスバー30Pの両板面には、それぞれの法線方向を正極バスバー30Pの延伸方向に一致させて、複数の板状突起56が延伸方向に配列されている。同様に、負極バスバー30Nの両板面には、それぞれの法線方向を負極バスバー30Nの延伸方向に一致させて、複数の板状突起56が延伸方向に配列されている。正極バスバー30Pおよび負極バスバー30Nは、一方に配列された板状突起56が、他方に配列された板状突起56の間に入り込むよう配置されている。
【0042】
また、導体筒48の上側の内側壁面には、それぞれの法線方向を正極バスバー30Pの延伸方向に一致させて、複数の板状突起56が正極バスバー30Pに沿って配列されている。導体筒48の上側の内側壁面の各板状突起56は、正極バスバー30Pの板状突起56の間に位置する。さらに、導体筒48の下側の内側壁面には、それぞれの法線方向を負極バスバー30Nの延伸方向に一致させて、複数の板状突起56が負極バスバー30Nに沿って配列されている。導体筒48の下側の内側壁面の各板状突起56は、負極バスバー30Nの板状突起56の間に位置する。
【0043】
このような構成によれば、導体筒48の内側壁面と正極バスバー30Pとの間の対向面積、および導体筒48の内側壁面と負極バスバー30Nとの間の対向面積が大きくなり、ラインバイパスコンデンサの容量が大きくなる。また、正極バスバー30Pと負極バスバー30Nとの間の対向面積が大きくなり、線間コンデンサの容量が大きくなる。これによって、ノイズ低減効果を向上させることができる。
【0044】
なお、導体筒48の内側壁面と正極バスバー30Pとの間の領域、導体筒48の内側壁面と負極バスバー30Nとの間の領域、および、正極バスバー30Pと負極バスバー30Nとの間の領域の総てに板状突起56を配列する必要はなく、これらの領域のうち少なくともいずれかに板状突起56を配列した構成とし、板状突起56を配列した部分のみにおいてノイズ低減効果を向上する構成としてもよい。
【0045】
また、板状突起を配列する構成は、図2に示す平板対向区間38において採用してもよい。すなわち、ユニットケース26の上側の内面と正極バスバー30Pとの間の領域、または、ユニットケース26の下側の内面と負極バスバー30Nとの間の領域の少なくともいずれかに板状突起を配列した構成とし、ラインバイパスコンデンサの容量を大きくしてもよい。さらに、正極バスバー30Pと負極バスバー30Nとの間の領域に板状突起を配列した構成とし、線間コンデンサの容量を大きくしてもよい。
【0046】
上記では、正極バスバー30Pおよび負極バスバー30Nが平板対向区間38を有し、この平板対向区間38において、線間コンデンサおよびラインバイパスコンデンサの容量を大きくする構成について説明した。本発明は、3本以上のバスバーについて平板対向区間が形成される構成としてもよい。3本以上のバスバーとしては、多相交流電力を伝送するものがある。この場合、平板対向区間においては、隣接するバスバーの板面が互いに向き合うよう複数のバスバーが配置される。複数のバスバーのうち、ユニットケースの内面に近接するバスバーは、その平板区間の板面をユニットケースの内面に向けて配置される。また、複数のバスバーを上記の導体筒48のような導体筒に貫通させてもよい。3本以上のバスバーについて平板対向区間が形成される場合においても、図5および図6に示すように各バスバー、およびユニットケースの内面若しくは導体筒の内壁に板状突起を配列した構成としてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10 車両搭載用電力供給システム、12 二次電池、14 電力ケーブル、16 ケーブルコネクタ、18 電気回路ユニット、20 第1電力回路、22 第2電力回路、24 降圧コンバータ回路、26 ユニットケース、28 降圧コンバータコネクタ、30P 正極バスバー、30N 負極バスバー、32P 第1正極バスバー、32N 第1負極バスバー、34P 第2正極バスバー、34N 第2負極バスバー、36P 第3正極バスバー、36N 第3負極バスバー、38 平板対向区間、40P,40N コネクタ接続端部、42P,42N コネクタ取り付け穴、44P,44N 導体片、46P,46N,52 ねじ穴、48 導体筒、50 帯状金具、54 ユニットケースの内面、56 板状突起。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を蓄える蓄電手段との間で電力を授受する電気回路ユニットと、
前記蓄電手段と前記電気回路ユニットとを接続し、板形状に形成された平板区間をそれぞれが有する複数の電力伝送線と、
を備え、
前記複数の電力伝送線は、隣接する電力伝送線の平板区間の板面が向き合うよう配置されていることを特徴とする車両搭載用電力供給システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両搭載用電力供給システムにおいて、
前記電気回路ユニットは、
前記蓄電手段との間でそれぞれが電力を授受する複数の電気回路を備え、
前記複数の電力伝送線のそれぞれは、平板区間の一端が前記蓄電手段に接続され、平板区間から各電気回路に分岐する分岐区間を有し、
前記複数の電力伝送線は、隣接する電力伝送線の平板区間の板面が、各分岐区間よりも前記蓄電手段側で向き合うよう配置されていることを特徴とする車両搭載用電力供給システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両搭載用電力供給システムにおいて、
前記複数の電気回路のうち少なくとも1つ、および前記複数の電力伝送線の一部を収容する導電性のユニットケースを備え、
前記複数の電力伝送線のうち、前記ユニットケースの内面に近接する電力伝送線は、その平板区間の板面を前記ユニットケースの内面に向けて配置されていることを特徴とする車両搭載用電力供給システム。
【請求項4】
請求項3に記載の車両搭載用電力供給システムにおいて、
前記ユニットケースの内面、および当該内面と向き合う平板区間の板面のそれぞれには、複数の突起部が配列され、
当該平板区間の板面に配列された複数の突起部、および、前記ユニットケースの内面に配列された複数の突起部は、互いに隙間に入り込むよう位置することを特徴とする車両搭載用電力供給システム。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の車両搭載用電力供給システムにおいて、
前記複数の電力伝送線の各平板区間が貫通する導体筒と、
前記複数の電気回路のうち少なくとも1つ、前記複数の電力伝送線の一部、および前記導体筒を収容する導電性のユニットケースと、
を備え、
前記導体筒は、前記ユニットケースに導電接続されていることを特徴とする車両搭載用電力供給システム。
【請求項6】
請求項5に記載の車両搭載用電力供給システムにおいて、
前記導体筒の内面と、前記複数の電力伝送線の各平板区間との間に充填される誘電体部材を備えることを特徴とする車両搭載用電力供給システム。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の車両搭載用電力供給システムにおいて、
前記導体筒の内面、および当該内面に向き合う平板区間の板面のそれぞれには、複数の突起部が配列され、
当該平板区間の板面に配列された複数の突起部、および、前記導体筒の内面に配列された複数の突起部は、互いに隙間に入り込むよう位置することを特徴とする車両搭載用電力供給システム。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の車両搭載用電力供給システムにおいて、
互いに隣接する平板区間における互いに向き合う2つ板面のそれぞれには、複数の突起部が配列され、
一方の板面に配列された複数の突起部、および、他方の板面に配列された複数の突起部は、互いに隙間に入り込むよう位置することを特徴とする車両搭載用電力供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−170193(P2012−170193A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27515(P2011−27515)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】