説明

車両操作診断装置、車両操作診断方法及びコンピュータプログラム

【課題】適切に運転者の車両操作の診断を行うことを可能にした車両操作診断装置、車両操作診断方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】各車両から走行時の周辺環境を対応づけた走行データを取得し(S12)、走行データDBへと累積的に格納する(S17)。また、車両から走行データが送信された場合には、走行データDBに記憶された走行データの履歴の内、診断対象とする走行データの車両操作が行われた際の周辺環境に対応する走行データの履歴を抽出し(S13)、抽出された走行データと診断対象とする走行データとを比較することにより、運転者の車両操作を診断する(S14、S15)ように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者の車両操作を診断する車両操作診断装置、車両操作診断方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、運転者の安全運転技量を向上させる為、及び運転者に安全運転に対する興味を持たせる為に、走行時に運転者が行った車両操作が安全性の面で適切であったか否かを診断するシステムが知られている。そして、運転者は前記システムの診断結果を参照することによって、自らの車両操作特性や各状況下での適切な車両操作内容を学習することができ、学習結果に基づいてブレーキ、アクセル、ハンドル等の操作量を補正することにより、それ以後、安全性の高い、より適切な車両操作を行うことが可能となる。更に、運転者に安全運転を継続させるモチベーションを与えることが可能となる。
【0003】
また、上記システムでは、運転者の車両操作の診断を行う為に、車両の過去の走行データを累積して記憶し、記憶された過去の走行データと比較することにより運転者の車両操作の診断を行うことが行われていた(例えば、特開2006−350567号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−350567号(第4頁〜第6頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1に記載の技術は、過去の走行データと比較を行う際に、車両の周辺環境(例えば、走行時刻、天気、気温等)については考慮されていなかった。しかしながら、運転者の車両操作は、車両の周辺環境によって大きく変化する。例えば、天気が晴れのときと天気が雨のときでは運転者の車両操作は大きく異なるので、天気が晴れのときの車両操作と天気が雨のときの車両操作を比較したとしても、運転者の車両操作を適切に判断することは難しい。
【0006】
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、過去の車両の走行データの内、診断対象とする運転者の車両操作が行われた際の車両の周辺環境に対応する走行データに基づいて運転者の車両操作の診断を行うことにより、適切に運転者の車両操作の診断を行うことを可能にした車両操作診断装置、車両操作診断方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため本願の請求項1に係る車両操作診断装置(1)は、車両(4)の周辺環境を取得する環境取得手段と、前記車両が走行した際の走行データを取得する走行データ取得手段と、前記走行データ取得手段により取得された前記走行データの履歴を、該走行データの走行が行われた際の前記車両の周辺環境と対応付けて累積的に記憶する走行データ履歴記憶手段と、前記走行データ履歴記憶手段により記憶された前記走行データの履歴の内、診断対象とする運転者の車両操作が行われた際の前記車両の周辺環境に対応する前記走行データの履歴を抽出する履歴抽出手段と、前記履歴抽出手段により抽出された前記走行データの履歴に基づいて、前記診断対象とする運転者の車両操作を診断する車両操作診断手段と、を有することを特徴とする。
ここで、「診断対象とする運転者の車両操作が行われた際の前記車両の周辺環境に対応する前記走行データ」とは、診断対象とする運転者の車両操作が行われた際の前記車両の周辺環境と完全に一致する周辺環境が対応付けられた走行データでも良いし、一部のみが一致する周辺環境が対応付けられた走行データでも良い。更に、類似する周辺環境や同じ区分の周辺環境が対応付けられた走行データでも良い。
【0008】
また、請求項2に係る車両操作診断装置(1)は、請求項1に記載の車両操作診断装置であって、前記環境取得手段により取得される前記車両の周辺環境は、時刻、天気、気温のいずれかを含むことを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る車両操作診断装置(1)は、請求項1又は請求項2に記載の車両操作診断装置であって、前記走行データ履歴記憶手段は、複数の運転者毎に前記走行データの履歴を記憶し、前記履歴抽出手段は、前記走行データ履歴記憶手段に記憶された前記複数の運転者の走行データの履歴の内、診断対象とする運転者以外の前記走行データの履歴を抽出することを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に係る車両操作診断方法は、車両(4)の周辺環境を取得する環境取得ステップと、前記車両が走行した際の走行データを取得する走行データ取得ステップと、前記走行データ取得ステップにより取得された前記走行データの履歴を、該走行データの走行が行われた際の前記車両の周辺環境と対応付けて累積的に記憶する走行データ履歴記憶ステップと、前記走行データ履歴記憶ステップにより記憶された前記走行データの履歴の内、診断対象とする運転者の車両操作が行われた際の前記車両の周辺環境に対応する前記走行データの履歴を抽出する履歴抽出ステップと、前記履歴抽出ステップにより抽出された前記走行データの履歴に基づいて、前記診断対象とする運転者の車両操作を診断する車両操作診断ステップと、を有することを特徴とする。
【0011】
更に、請求項5に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに搭載され、車両(4)の周辺環境を取得する環境取得機能と、前記車両が走行した際の走行データを取得する走行データ取得機能と、前記走行データ取得機能により取得された前記走行データの履歴を、該走行データの走行が行われた際の前記車両の周辺環境と対応付けて累積的に記憶する走行データ履歴記憶機能と、前記走行データ履歴記憶機能により前記記憶媒体に記憶された前記走行データの履歴の内、診断対象とする運転者の車両操作が行われた際の前記車両の周辺環境に対応する前記走行データの履歴を抽出する履歴抽出機能と、前記履歴抽出機能により抽出された前記走行データの履歴に基づいて、前記診断対象とする運転者の車両操作を診断する車両操作診断機能と、をプロセッサに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
前記構成を有する請求項1に係る車両操作診断装置では、走行データの履歴と比較することにより運転者の車両操作を診断する際に、走行時の周辺環境を考慮することにより、走行データの履歴の内、車両操作の診断を行う際に比較対象として適切な走行データを抽出し比較することが可能となる。また、様々な周辺環境下の走行時においても、適切に運転者の車両操作の診断を行うことが可能となる。
【0013】
また、請求項2に係る車両操作診断装置では、走行時の時刻、天気、気温を考慮することにより、昼間、夜間、晴天時、雨天時、路面凍結時等の周辺環境の異なる様々な走行データの履歴の内から、走行データ車両操作の診断を行う際に比較対象として適切な走行データを選択することが可能となる。また、積雪時や夜間等の様々な周辺環境下の走行時においても、適切に運転者の車両操作の診断を行うことが可能となる。
【0014】
また、請求項3に係る車両操作診断装置では、他者の走行データと比較することにより運転者の車両操作の診断を行うので、より多くの走行データの履歴に基づいて、且つ客観的に適切な車両操作の診断を行うことが可能となる。
【0015】
また、請求項4に係る車両操作診断方法では、走行データの履歴と比較することにより運転者の車両操作を診断する際に、走行時の周辺環境を考慮することにより、走行データの履歴の内、車両操作の診断を行う際に比較対象として適切な走行データを抽出して比較することが可能となる。また、様々な周辺環境下において、適切に運転者の車両操作の診断を行うことが可能となる。
【0016】
更に、請求項5に係るコンピュータプログラムでは、走行データの履歴と比較することにより運転者の車両操作を診断する際に、走行時の周辺環境を考慮することにより、走行データの履歴の内、車両操作の診断を行う際に比較対象として適切な走行データを抽出させて比較させることが可能となる。また、様々な周辺環境下において、適切に運転者の車両操作の診断を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係る運転診断システムを示した概略構成図である。
【図2】本実施形態に係る運転診断システムの構成を示したブロック図である。
【図3】走行データDBに記憶される走行データの一例を示した図である。
【図4】本実施形態に係るナビゲーション装置の制御系を模式的に示すブロック図である。
【図5】本実施形態に係る運転診断処理プログラムのフローチャートである。
【図6】ステップ13の走行データの抽出処理について説明した図である。
【図7】ステップ15の車両操作の診断処理について説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る車両操作診断装置について運転診断センタに具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。先ず、本実施形態に係る運転診断センタ1を含む運転診断システム2の概略構成について図1及び図2を用いて説明する。図1は本実施形態に係る運転診断システム2を示した概略構成図である。図2は本実施形態に係る運転診断システム2の構成を示したブロック図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係る運転診断システム2は、ナビゲーション装置3を搭載した各車両4と、各車両4から走行データを収集し、収集した走行データに基づいて各車両4における運転者の車両操作を診断するとともに、診断結果を各車両4に配信する運転診断センタ1とから基本的に構成されている。
【0020】
ここで、本実施形態に係る運転診断システム2において車両4が取得し、運転診断センタ1に対して送信する走行データとしては、特に、車両の走行距離、燃費、個別走行診断結果に関する情報が含まれる。更に、本実施形態では走行データに対して、該走行データの走行が行われた際の車両の周辺環境(走行時刻、天気、気温等)に関する情報について付加される。そして、運転診断センタ1は、後述のように車両4から送信された走行データを周辺環境毎に分類し、比較することによって、運転者の車両操作を診断する。尚、走行データに含まれる個別走行診断結果とは、ナビゲーション装置3において運転者の車両操作(アクセル操作、ブレーキ操作等)を複数の診断項目で診断した結果であり、例えば、『発進』、『定常』、『減速』の3項目について5段階で評価した結果などが該当する。
【0021】
また、車両4にはナビゲーション装置3が設置されている。ナビゲーション装置3は格納する地図データに基づいて自車位置周辺の地図を表示したり、設定された目的地までの経路の探索及び案内を行う車載機である。また、ナビゲーション装置3は運転診断センタ1から受信した運転者の車両操作の診断結果を利用者に対して案内することも行う。尚、ナビゲーション装置3の詳細については後述する。
【0022】
次に、図2を用いて運転診断センタ1についてより詳細に説明する。運転診断センタ1は、図2に示すようにサーバ11と、サーバ11に接続された情報記録手段としての走行データDB12と、センタ通信装置13とから基本的に構成されている。
【0023】
サーバ11は、図2に示すように運転診断センタ1における各種制御を行う電子制御ユニットである。そして、演算装置及び制御装置としてのCPU21、並びにCPU21が各種の演算処理を行うに当たってワーキングメモリとして使用されるRAM22、各種制御プログラムの他、後述の車両操作診断処理プログラム(図5)等が記憶されたROM23等の内部記憶装置を備えている。尚、サーバ11は、処理アルゴリズムとしての各種手段を構成する。例えば、環境取得手段は、車両4の周辺環境を取得し、走行データ取得手段は、車両4が走行した際の走行データを取得する。走行データ履歴記憶手段は、走行データ取得手段により取得された走行データの履歴を、該走行データの走行が行われた際の車両4の周辺環境と対応付けて走行データDB12に累積的に記憶する。履歴抽出手段は、走行データDB12に記憶された走行データの履歴の内、診断対象とする運転者の車両操作が行われた際の車両4の周辺環境に対応する走行データの履歴を抽出する。車両操作診断手段は、履歴抽出手段により抽出された走行データの履歴に基づいて、診断対象とする運転者の車両操作を診断する。
【0024】
また、走行データDB12は、全国を走行する各車両4から収集した走行データを累積的に記憶する記憶手段である。尚、本実施形態においては、走行データとして車両の走行距離、燃費、個別走行診断結果に関する情報が含まれる。また、走行データは、走行データの走行が行われた際の車両の周辺環境が対応付けられて記憶される。
【0025】
以下に、図3を用いて走行データDB12に記憶される走行データについてより詳細に説明する。図3は走行データDB12に記憶される走行データの一例を示した図である。
図3に示すように走行データは、車両が送信元の車両を識別する車両IDと、走行データの走行を行った走行日及び走行時刻と、天気と、気温と、走行距離と、燃費と、個別走行診断結果とから構成される。ここで、走行データは、車両4が所定距離(40km)走行する毎又は所定時間(例えば1週間)経過する毎にナビゲーション装置3から運転診断センタ1へと送信される。また、各走行データは、前回走行データをナビゲーション装置3から運転診断センタ1へと送信してから当該走行データを送信するまでの間の車両4の走行に関するデータである。尚、各走行データを、当該走行データを送信する直前の所定期間(例えば1時間、40km走行する期間)の車両4の走行に関するデータとしても良い。
【0026】
例えば、図3に示す走行データでは、2010/11/1の7:10〜8:20の間にID“A”の車両4が走行した走行データが記憶されている。更に、走行時の周辺環境として、走行時の天気は晴れで且つ気温が19℃であったことについても走行データとともに記憶されている。同様に他の走行データについても記憶されている。
そして、サーバ11は、走行データDB12に記憶される走行データを用いることにより、車両4の運転者の車両操作を診断する。より具体的には、診断対象とする車両4の走行データと同じ周辺環境(時刻、天気、気温)が対応付けられた走行データを走行データDB12から抽出し、抽出した走行データと診断対象とする走行データとを比較することにより、車両4の運転者の車両操作を診断する。尚、サーバ11による車両4の運転者の車両操作の診断方法については後に詳細に説明する。
【0027】
また、センタ通信装置13は、車両4とネットワーク15を介して通信を行う為の通信装置である。本実施形態では、センタ通信装置13を介して走行データや診断結果を各車両4との間で送受信する。
【0028】
次に、車両4に搭載されたナビゲーション装置3の概略構成について図4を用いて説明する。図4は本実施形態に係るナビゲーション装置3の制御系を模式的に示すブロック図である。
【0029】
図4に示すように本実施形態に係るナビゲーション装置3は、車両の現在位置を検出する現在位置検出部31と、各種のデータが記録されたデータ記録部32と、入力された情報に基づいて、各種の演算処理を行うナビゲーションECU33と、ユーザからの操作を受け付ける操作部34と、ユーザに対して地図や運転者の車両操作を診断した診断結果の案内等に関する各種情報を表示する液晶ディスプレイ35と、経路案内に関する音声ガイダンスを出力するスピーカ36と、記憶媒体であるDVDを読み取るDVDドライブ37と、運転診断センタ1やVICS(登録商標:Vehicle Information and Communication System)センタ等の情報センタとの間で通信を行う通信モジュール38と、CANインターフェース39とから構成されている。
【0030】
以下に、ナビゲーション装置3を構成する各構成要素について順に説明する。
現在位置検出部31は、GPS41、車速センサ42、ステアリングセンサ43、ジャイロセンサ44等からなり、現在の車両の位置、方位、車両の走行速度、現在時刻等を検出することが可能となっている。ここで、特に車速センサ42は、車両の移動距離や車速を検出する為のセンサであり、車両の駆動輪の回転に応じてパルスを発生させ、パルス信号をナビゲーションECU33に出力する。そして、ナビゲーションECU33は発生するパルスを計数することにより駆動輪の回転速度や移動距離を算出する。尚、上記5種類のセンサをナビゲーション装置3が全て備える必要はなく、これらの内の1又は複数種類のセンサのみをナビゲーション装置3が備える構成としても良い。
【0031】
また、データ記録部32は、外部記憶装置及び記録媒体としてのハードディスク(図示せず)と、ハードディスクに記録された地図情報DB45や走行履歴DB46や所定のプログラム等を読み出すとともにハードディスクに所定のデータを書き込む為のドライバである記録ヘッド(図示せず)とを備えている。尚、データ記録部32をハードディスクの代わりにメモリーカードやCDやDVD等の光ディスクにより構成しても良い。
【0032】
ここで、地図情報DB45は、例えば、道路(リンク)に関するリンクデータ、ノード点に関するノードデータ、施設等の地点に関する地点データ、地図を表示するための地図表示データ、各交差点に関する交差点データ、経路を探索するための探索データ、地点を検索するための検索データ等が記憶された記憶手段である。
【0033】
また、走行履歴DB46は、ナビゲーション装置3が搭載された車両4の走行に関する履歴が記憶された記憶手段である。具体的には、車両4の過去の走行毎に、走行日、走行時刻と、天気と、気温と、走行距離と、燃費と、個別走行診断結果とが記憶される。そして、ナビゲーションECU33は、走行履歴DB46に記憶された走行履歴に基づいて運転診断センタ1へと送信する走行データを生成する。尚、走行履歴DB46に記憶される上記走行履歴の内、走行日、走行時刻はGPS41により検出される。また、天気は、CANを介し取得したワイパ作動状態に基づいて検出される。また、気温は、CANを介し取得したエアコン消費量に基づいて検出される。また、走行距離は、車速センサ42から発せられるパルスを計数することにより検出される。また、燃費は、CANを介し取得したガソリン消費量と走行距離に基づいて検出される。また、個別走行診断結果は、前記したように運転者の車両操作(アクセル操作、ブレーキ操作等)を複数の診断項目で診断した結果であり、CANを介して取得したアクセル開度、ブレーキ量等に基づいてナビゲーションECU33により決定される。例えば、『発進』、『定常』、『減速』の3項目について5段階で評価する。尚、天気や気温については外部機関(気象センタ)等と通信を行うことにより取得する構成としても良い。
【0034】
一方、ナビゲーションECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)33は、ナビゲーション装置3の全体の制御を行う電子制御ユニットであり、演算装置及び制御装置としてのCPU51、並びにCPU51が各種の演算処理を行うにあたってワーキングメモリとして使用されるとともに、経路が探索されたときの経路データ等が記憶されるRAM52、制御用のプログラムのほか、後述の車両操作診断処理プログラム(図5)等が記録されたROM53、ROM53から読み出したプログラムを記憶するフラッシュメモリ54等の内部記憶装置を備えている。
【0035】
操作部34は、走行開始地点としての出発地及び走行終了地点としての目的地を入力する際等に操作され、各種のキー、ボタン等の複数の操作スイッチ(図示せず)から構成される。そして、ナビゲーションECU33は、各スイッチの押下等により出力されるスイッチ信号に基づき、対応する各種の動作を実行すべく制御を行う。尚、操作部34は液晶ディスプレイ35の前面に設けたタッチパネルによって構成することもできる。また、マイクと音声認識装置によって構成することもできる。
【0036】
また、液晶ディスプレイ35には、道路を含む地図画像、交通情報、操作案内、操作メニュー、キーの案内、出発地から目的地までの走行予定経路、走行予定経路に沿った案内情報、ニュース、天気予報、時刻、メール、テレビ番組等が表示される。特に本実施形態では、車両操作の診断結果についても表示する。
【0037】
また、スピーカ36は、ナビゲーションECU33からの指示に基づいて走行予定経路に沿った走行を案内する音声ガイダンスや、交通情報の案内を出力する。特に本実施形態では、車両操作の診断結果についても出力する。
【0038】
また、DVDドライブ37は、DVDやCD等の記録媒体に記録されたデータを読み取り可能なドライブである。そして、読み取ったデータに基づいて音楽や映像の再生、地図情報DB45の更新等が行われる。
【0039】
また、通信モジュール38は、交通情報センタ、例えば、VICSセンタやプローブセンタ等から送信された渋滞情報、規制情報、交通事故情報等の各情報から成る交通情報を受信する為の通信装置であり、例えば携帯電話機やDCMが該当する。また、運転診断センタ1との間で走行データを送信したり、診断結果を受信するのにも用いられる。
【0040】
また、CAN(コントローラエリアネットワーク)インターフェース39は、車両内に設置された各種制御ECU間で多重通信を行う車載ネットワーク規格であるCANに対して、データの入出力を行うインターフェースである。そして、ナビゲーションECU33は、CANを介して、車両を制御する各種制御ECU(例えば、ブレーキ制御ECU、アクセル制御ECU、ワイパ制御ECU、エンジン制御ECU、エアコン制御ECUなど)と相互通信可能に接続される。更に、ナビゲーションECU33は、CANを介して各種制御ECUから取得した各パラメータ(アクセル開度、ブレーキ量、ワイパの作動状態、ガソリン消費量、エアコン消費量など)に基づいて、車両4の走行履歴(天気、気温、燃費、個別走行診断結果等)を取得し、走行履歴DB46に記憶する。
【0041】
続いて、前記構成を有する運転診断システム2を構成するナビゲーション装置3及び運転診断センタ1において実行する運転診断処理プログラムについて図5に基づき説明する。図5は本実施形態に係る運転診断処理プログラムのフローチャートである。ここで、運転診断処理プログラムは車両のACCがONされた後に実行され、車両4の走行データを運転診断センタ1へと送信するとともに、運転診断センタ1は受信した走行データに基づいて車両4の運転者の車両操作の診断を行うプログラムである。尚、以下の図5にフローチャートで示されるプログラムは、ナビゲーションECU33が備えているRAM52やROM53又はサーバ11が備えているRAM22やROM23等に記憶されており、CPU51又はCPU21により実行される。
【0042】
先ず、ナビゲーション装置3において実行される運転診断処理プログラムについて説明する。
ステップ(以下、Sと略記する)1においてCPU51は、走行データを運転診断センタ1に対して送信するタイミングか否かを判定する。ここで、走行データは、車両4が所定距離(40km)走行する毎又は所定時間(例えば1週間)経過する毎にナビゲーション装置3から運転診断センタ1へと送信される。従って、前記S1でCPU51は、前回走行データを送信してから車両4が所定距離(40km)走行、又は所定時間(例えば1週間)経過した場合に、走行データを運転診断センタ1に対して送信するタイミングであると判定する。尚、送信タイミングは上記タイミングに限られることはなく、他のタイミングとしても良い。
【0043】
そして、走行データを運転診断センタ1に対して送信するタイミングであると判定された場合(S1:YES)には、S2へと移行する。それに対して、走行データを運転診断センタ1に対して送信するタイミングでないと判定された場合(S1:NO)には、当該運転診断処理プログラムを終了する。
【0044】
次に、S2においてCPU51は、運転診断センタ1へと送信する走行データを生成する。ここで、走行データは、前回走行データをナビゲーション装置3から運転診断センタ1へと送信してから現時点までの間の車両4の走行に関するデータであり、走行履歴DB46に記憶された車両4の走行履歴に基づいて生成される。具体的には、送信元の車両を識別する“車両ID”と、“走行日”と、“走行距離”と、“燃費”と、“個別走行診断結果”とを含む走行データを生成する(図3参照)。
【0045】
続いて、S3においてCPU51は、運転診断センタ1へと送信する走行データの走行が行われた際の車両4の周辺環境を、走行履歴DB46に記憶された車両4の走行履歴から取得する。ここで、車両4の周辺環境としては、走行データの走行を行った“走行時刻”と、“天気”と、“気温”がある。尚、“走行時刻”は、例えば走行データの対象となる走行を開始した時刻と走行を終了した時刻とがそれぞれ取得される。また、“天気”は、例えば「晴」、「曇」、「雨」、「雪」の内、走行中の割合が最も高い天気が取得される。また、“気温”は走行中の気温の平均値が取得される。
尚、天気、気温については運転診断センタ側で取得する構成としても良い。その場合には、運転診断センタ1において、受信した走行データに対応する日時の天気、気温に関する情報を外部機関(例えば気象センタ)から取得し、受信した走行データに付加する構成とすることが望ましい。
【0046】
その後、S4では前記S2で生成された走行データに、前記S3取得した車両4の周辺環境を対応づけて運転診断センタ1へと送信する。尚、走行データを受信した運転診断センタ1は後述のように、受信した走行データを対象として車両操作の診断を行う(S13〜S15)。
【0047】
次に、S5においてCPU51は、運転診断センタ1から送信された診断結果を受信する。尚、前記S5で受信する診断結果は、前記S4で送信した走行データを対象として運転診断センタ1により運転者の車両操作を診断した結果のデータであり、後述のS16において運転診断センタ1から送信される。
【0048】
その後、S6においてCPU51は、前記S5において運転診断センタ1から受信した診断結果を液晶ディスプレイ35やスピーカ36を介して案内する。例えば、診断結果が“アクセルの踏み過ぎ”であった場合には、「アクセルの踏み過ぎですので、注意して下さい。」との文章や音声を出力する。また、診断結果が“減速不足”であった場合には、「カーブ手前では減速を十分に行ってください。」との文章や音声を出力する。その結果、ユーザの運転操作を適切な方向へと導くことが可能となる。
【0049】
次に、運転診断センタ1において実行される運転診断処理プログラムについて説明する。
S11においてCPU21は、車両4から走行データの送信があったか否かを判定する。尚、走行データは前記S4において車両4に搭載されたナビゲーション装置3から送信される。
【0050】
そして、車両4から走行データの送信があったと判定された場合(S11:YES)には、S12へと移行する。それに対して、車両4から走行データの送信がないと判定された場合(S11:NO)には、当該運転診断処理プログラムを終了する。
【0051】
S12においてCPU21は、車両4から送信された走行データを受信する。
【0052】
次に、S13においてCPU21は、走行データDB12に記憶された走行データの内、“受信した走行データに対応付けられた周辺環境と対応する周辺環境が対応付けられた走行データ(以下、対応走行データという)”を抽出する。尚、対応走行データとしては、診断対象とする走行データである前記S12で受信した走行データの送信元の車両と異なる車両の走行データ(即ち、診断対象とする運転者以外の走行データ)を対象として抽出する。また、「対応する周辺環境」とは、全ての周辺環境(例えば走行時刻、天気、気温)が一致することを条件としても良いし、一部の周辺環境(例えば天気)のみ一致することを条件としても良い。更に、一致とは完全に一致することに限定されない。例えば、本実施形態では、走行時刻は5:00〜12:00、12:00〜18:00、18:00〜5:00のいずれの時間帯に含まれるかで一致判定を行う。また、天気は「晴」と「曇」、「曇」と「雨」であっても一致すると判定する。また、気温は0℃未満、0℃〜10℃、10℃〜20℃、20〜30℃、30℃以上のいずれの気温帯に含まれるかで一致判定を行う。
【0053】
以下に、前記S13の走行データの抽出処理について具体例を挙げて説明する。例えば、以下の例では、前記S12において図6に示す車両ID「M」の走行データを受信し、図3に示す走行データが走行データDB12に記憶されている場合について説明する。
ここで、図6にように、受信した車両ID「M」の走行データは、走行時刻が9:20〜10:30であるので、同じ時間帯である5:00〜12:00に含まれる走行データとして、車両ID「A」、「C」、「G」の走行データを特定する。また、受信した車両ID「M」の走行データは、天気が「晴」であるので、天気が「晴」又は「曇」の走行データとして、車両ID「A」、「B」、「E」〜「H」の走行データを特定する。また、受信した車両ID「M」の走行データは、気温が15℃であるので、同じ気温帯である10℃〜20℃に含まれる走行データとして、車両ID「A」〜「D」、「G」の走行データを特定する。
そして、走行時刻、天気、気温の全ての周辺環境が一致する走行データである、車両ID「A」の走行データと車両ID「G」の走行データとが、走行データDB12より対応走行データとして抽出される。尚、周辺環境が少なくとも一つ又は2つ一致する走行データを対応走行データとして抽出しても良い。
【0054】
続いて、S14においてCPU21は、前記S12で受信した走行データと前記S13で抽出された走行データとを比較する。尚、前記S13で抽出された走行データが複数ある場合には、複数ある走行データ毎に比較を行う。また、複数ある走行データの平均値と比較するように構成しても良い。
【0055】
その後、S15においてCPU21は、前記S14の比較結果に基づいて、走行データの送信元の車両4における運転者の車両操作を診断する。
【0056】
以下に、前記S15の運転者の車両操作の診断処理について具体例を挙げて説明する。例えば、以下の例では、前記S12において図7に示す車両ID「M」の走行データを受信し、図3に示す走行データの内、対応走行データとして車両ID「A」の走行データと車両ID「G」の走行データとが対応走行データとして抽出された場合について説明する。
図7に示すように、先ず、車両ID「M」の走行データと、比較対象となる車両ID「A」、「G」の走行データとで、燃費を比較すると、車両ID「M」の走行データが高い値を示している。従って、運転者はアクセルやブレーキを踏み過ぎることなく燃費の良い車両操作を行っていると診断できる。
また、車両ID「M」の走行データと、比較対象となる車両ID「A」、「G」の走行データとで、『発進』の個別走行診断結果を比較すると、車両ID「M」の走行データがより高い評価を示している。従って、運転者はアクセルの急な踏み込みを行うことなくスムーズな発進操作を行っていると診断できる。
また、車両ID「M」の走行データと、比較対象となる車両ID「A」、「G」の走行データとで、『定常』の個別走行診断結果を比較すると、車両ID「M」の走行データと比較対象の走行データは共に同程度の値を示している。従って、定常時においては運転者は平均的な車両操作を行っていると診断できる。
また、車両ID「M」の走行データと、比較対象となる車両ID「A」、「G」の走行データとで、『減速』の個別走行診断結果を比較すると、車両ID「M」の走行データがより低い評価を示している。従って、運転者はカーブ手前等での減速が十分に行われていないと診断できる。
従って、車両ID「M」の車両の診断結果としては、『燃費の良い車両操作が行われ、スムーズな発進操作が行われているが、カーブ手前等での減速が十分に行われていない。』となる。
【0057】
次に、S16においてCPU21は、前記S15の診断結果を、診断対象の車両4(前記S12で受信した走行データの送信元の車両)へと送信する。尚、診断結果を受信した車両4は、前記したようにナビゲーション装置3において診断結果の案内を行う(S6)。
【0058】
続いて、S17においてCPU21は、前記S12で受信した走行データを走行データDB12に累積的に格納する。そして、次回以降の処理で車両操作の診断を行う際の比較対象の走行データとして利用する。
【0059】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係る運転診断センタ1、運転診断センタ1による車両操作診断方法及び運転診断センタ1のサーバ11により実行されるコンピュータプログラムでは、各車両4から走行時の周辺環境を対応づけた走行データを取得し(S12)、走行データDB12へと累積的に格納する(S17)。また、車両4から走行データが送信された場合には、走行データDB12に記憶された走行データの履歴の内、診断対象とする走行データの車両操作が行われた際の周辺環境に対応する走行データの履歴を抽出し(S13)、抽出された走行データと診断対象とする走行データとを比較することにより、運転者の車両操作を診断する(S14、S15)ので、走行データDB12に記憶された走行データの履歴の内、車両操作の診断を行う際に比較対象として適切な走行データを抽出し比較することが可能となる。また、様々な周辺環境下の走行時においても、適切に運転者の車両操作の診断を行うことが可能となる。
特に、走行時の車両の周辺環境として走行時の時刻、天気、気温を考慮するので、昼間、夜間、晴天時、雨天時、路面凍結時等の周辺環境の異なる様々な走行データの履歴の内から、走行データ車両操作の診断を行う際に比較対象として適切な走行データを選択することが可能となる。また、積雪時や夜間等の様々な周辺環境下の走行時においても、適切に運転者の車両操作の診断を行うことが可能となる。
また、走行データDB12に記憶された走行データの内、診断対象の運転者以外の走行データと比較することにより運転者の車両操作の診断を行うので、より多くの走行データの履歴に基づいて、且つ客観的に適切な車両操作の診断を行うことが可能となる。
【0060】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、本実施形態では運転診断処理プログラム(図5)のS11〜S17の処理を運転診断センタ1が実行する構成としているが、ナビゲーション装置3が実行する構成としても良い。その場合には、他車両の走行データは車車間通信やセンタを介して取得し、ナビゲーション装置3のDBに累積的に記憶する構成とすることが望ましい。また、他車両の走行データについては比較せず、自車両の走行データのみと比較することにより車両操作の診断を行う構成としても良い。更に、他車両と自車両の両方の走行データと比較することにより車両操作の診断を行う構成としても良い。
【0061】
また、本実施形態では車両の周辺環境として、走行時の時刻、天気、気温を取得し走行データに対応づけることとしているが、他の周辺環境についても考慮する構成としても良い。例えば、走行する地域、走行する道路の道路種別等を周辺環境として取得し走行データに対応づける構成としても良い。
【0062】
また、本実施形態では車両から走行データを受信した場合に、走行データDB12の中から比較対象となる走行データを抽出する構成としているが、予め走行データDB12に記憶された走行データを対応づけられた周辺環境毎に分類して記憶する構成としても良い。そのような構成とすることによって、比較対象となる走行データを抽出する処理を簡略化することが可能となる。
【符号の説明】
【0063】
1 運転診断センタ
2 運転診断システム
3 ナビゲーション装置
4 車両
11 サーバ
12 走行データDB
21 CPU
22 RAM
23 ROM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周辺環境を取得する環境取得手段と、
前記車両が走行した際の走行データを取得する走行データ取得手段と、
前記走行データ取得手段により取得された前記走行データの履歴を、該走行データの走行が行われた際の前記車両の周辺環境と対応付けて累積的に記憶する走行データ履歴記憶手段と、
前記走行データ履歴記憶手段により記憶された前記走行データの履歴の内、診断対象とする運転者の車両操作が行われた際の前記車両の周辺環境に対応する前記走行データの履歴を抽出する履歴抽出手段と、
前記履歴抽出手段により抽出された前記走行データの履歴に基づいて、前記診断対象とする運転者の車両操作を診断する車両操作診断手段と、を有することを特徴とする車両操作診断装置。
【請求項2】
前記環境取得手段により取得される前記車両の周辺環境は、時刻、天気、気温のいずれかを含むことを特徴とする請求項1に記載の車両操作診断装置。
【請求項3】
前記走行データ履歴記憶手段は、複数の運転者毎に前記走行データの履歴を記憶し、
前記履歴抽出手段は、前記走行データ履歴記憶手段に記憶された前記複数の運転者の走行データの履歴の内、診断対象とする運転者以外の前記走行データの履歴を抽出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両操作診断装置。
【請求項4】
車両の周辺環境を取得する環境取得ステップと、
前記車両が走行した際の走行データを取得する走行データ取得ステップと、
前記走行データ取得ステップにより取得された前記走行データの履歴を、該走行データの走行が行われた際の前記車両の周辺環境と対応付けて累積的に記憶する走行データ履歴記憶ステップと、
前記走行データ履歴記憶ステップにより記憶された前記走行データの履歴の内、診断対象とする運転者の車両操作が行われた際の前記車両の周辺環境に対応する前記走行データの履歴を抽出する履歴抽出ステップと、
前記履歴抽出ステップにより抽出された前記走行データの履歴に基づいて、前記診断対象とする運転者の車両操作を診断する車両操作診断ステップと、を有することを特徴とする車両操作診断方法。
【請求項5】
コンピュータに搭載され、
車両の周辺環境を取得する環境取得機能と、
前記車両が走行した際の走行データを取得する走行データ取得機能と、
前記走行データ取得機能により取得された前記走行データの履歴を、該走行データの走行が行われた際の前記車両の周辺環境と対応付けて累積的に記憶する走行データ履歴記憶機能と、
前記走行データ履歴記憶機能により前記記憶媒体に記憶された前記走行データの履歴の内、診断対象とする運転者の車両操作が行われた際の前記車両の周辺環境に対応する前記走行データの履歴を抽出する履歴抽出機能と、
前記履歴抽出機能により抽出された前記走行データの履歴に基づいて、前記診断対象とする運転者の車両操作を診断する車両操作診断機能と、
をプロセッサに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−3887(P2013−3887A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135047(P2011−135047)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】