説明

車両検知装置

【課題】光学窓による光減衰を考慮した光軸調整が可能な車両検知装置を提供する。
【解決手段】走行路を走行する車両を、複数の発光部34を有する発光装置21と当該発光装置21の発光部34に対向する受光部43を有する受光装置22とによって検出する車両検知装置であって、前記発光装置21は、前記発光部34に供給する発光制御電流を通常電流と前記発光部及び受光部間に介挿される光学窓による光減衰分に応じて制限した制限電流とに切替える電流切替手段36を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行路を走行する車両を、複数の発光部を有する発光装置と当該発光装置の発光部に対向する受光部を有する受光装置とによって検出する車両検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両検知装置は、乗用車、トラック、オートバイ等の道路通行車両の通過を検知して、通過台数を計数したり、料金所で通行券を発券させる信号を送信したり、あるいはETC(Electronic Toll Collection System)レーンにおける車両の進入、退出を検知するために使用されている。
自動発券機やETCレーンの導入により、料金所ゲートの省力化、無人化が進んで来ている。こうした中で、車両検知装置については、あらゆる車種について確実に車両を検知する必要がある。特に、ETCレーンにおいては、異常車両は遮断器により進行を阻止するシステムとなっているため、遮断バーと車両の接触事故や後続車の追突事故などを避けるため、運転者には十分な安全配慮が要求されるが、このような事故のリスク低減のためには、車両検知の信頼性そのものを高めていく必要がある。
【0003】
現在の車両検知装置の主な課題は、1台の通行車両が2台あるいはそれ以上に分離することが挙げられる。本来1台の車両が2台に認識されると、ETCレーンの場合では、遮断バーの誤作動の原因となる。
また、有料道路の入口料金所に配設された自動発券レーンの場合には、順次2枚の通行券が発行されてしまうため、後続車両が1台分ずれた通行券を受け取ることとなり、車種により異なる料金体系の場合では、適正に課金できないおそれや出口料金所で訂正処理を行わなければならず、交通渋滞の原因となる。また、自動発券機では通常は発券される路面からの高さは、低、中、高の3段階があり、普通車、中型車、大型車などの運転席から最も取り易い位置から自動発券されるように制御しているが、台数ずれが発生すると、普通車のときに最上段より発券されたり、あるいは大型車のときに最下段より発券されたりして、結局は異常ボタンを介して係員が呼び出されることとなり、その対応のために料金所の渋滞を引き起こすこととなる。
【0004】
前述した1台の車両が分離してしまう原因として、検出の難しい車両の連結部の存在が挙げられる。例えば、アウトドアライフの多様化の影響を受け、小型トレーラを牽引して、ボートやカヌー、水上バイク、キャンプ用品等のレジャー用品を運搬するケースが増えている。牽引側車両と小型トレーラの連結部は多種多様であり、中には非常に小形の連結部となっているものがある。車両検知用の光センサは、透過型の場合は、道路を横断して発光器アレイ、受光器アレイを配し、発光器側で赤外線ビームを発生させ、受光側で光信号の有無を検出する方式が主流であるが、このような小形の連結部を検出するためには、発光器アレイ、受光器アレイの配置密度を高めて、十分に前述した接続が検出できる空間分解能を確保しなければならない。
【0005】
ところが、発光器、受光器の数が増加してくると検出のための光軸数も増加し、車両検知装置を設置する際の光軸調整に大変な時間を要してしまう。
この問題を解決するために、例えば車線の幅方向に相対して配置された複数個の発光器及び受光器を備え、信号光を授受する発光器と受光器との位置で決まる光軸を車両が妨げることによって受光器の信号レベルが所定値未満に低下することを検出して車両の通過を検知する車両検知装置の光軸を調整する際に、最下段の発光器から順に点灯してその有効性を判定して最下位有効光軸を選別し、それが要求仕様を満足しない場合には関係する発光器及び受光器の向きを調整して要求仕様を満足させ、続いて同様にして、下から順に要求分解能を満足する検知用光軸を選定し、要求分解能を満足しない場合には関係する発光器及び受光器の向きを調整して要求分解能を満足させて全光軸を決定するようにした車両光検知装置の光軸調整方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、複数の発光器が所定の位置に配置されかつそれらの光軸が互いに平行に調整されて一体にまとめられている発光ブロックと、同様に構成された受光ブロックと、それらのブロックの光軸をブロック単位で調整する手段としての中央ピン、2つの上下調整用ねじ、2つの上下調整用長孔、支点ネジ、左右調整用ネジ、及び左右調整用長孔を備えた発光ブロック取付金具とを備えた車両検知装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−271466号公報
【特許文献2】特開平11−257916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載された従来例にあっては、光軸調整の最適化方法が開示されているが、特許文献2に記載された従来例のように、複数素子を纏めて発光ブロック及び受光ブロックを構成する場合には、より簡単な方法で所定の基準の空間分解能を満たす調整方法が求められている。
一方、発光部及び受光部の部分は、ガラスや透明樹脂などの光学窓を介して対向配置されているが、当該車両検知装置は屋外に設置されているため、風雨、降雪、直射日光などの自然環境に晒される他、車両通行の際に発生する排気ガスの影響を受けて、光学窓部分が次第に汚れてきて、光学窓部分の赤外線透過率が低下し、光強度が低下してくる。また、光学窓の材料自体の赤外線透過率もそれほど高いものではなく、例えば光学窓に熱線式ヒータガラスを用いる場合は、合わせガラス内に絶縁用のポリイミドフィルムなどがあり、またコスト面でガラス自体も青色ガラスであるため、発光側及び受光側にそれぞれガラスがあることを想定すると、赤外線の透過率は50〜60%程度である。
【0009】
よって、光学窓の赤外線透過特性及び車両検知装置設置後の汚れによる光強度の減衰を補償するように設置当初の光強度を設計する必要があるが、これはガラス等の光学窓を介する場合よりもかなり強いレベルである。
ところが、光センサの光軸を調整する場合は、上下角、左右角を調整する金具は、構造上光センサユニットの支持部付近にあるが、センサの前面側にガラス等の光学窓があるため、ガラス等を取り外した状態、或いは解除した状態で行わざるを得ず、この場合は前述のように本来の光信号の強度が大きいため、受光側は信号が飽和してしまい、信号レベルの判断が困難である。また、車両検知装置の筐体構造により、光学窓をそのままとし、側面及び背面から光センサユニットの調整を行うことも考えられるが、作業空間として常に確保できるのは道路側からのスペースであり,設置の条件によっては適用困難な場合がある。
【0010】
よって、現状では、調整後に光学窓を取りつけた状態あるいは、回復させた状態で信号を減衰させ、信号のピークレベルを確認する必要があり、調整段階ではこのような操作を繰り返すこととなって作業効率が非常に悪いという未解決の課題がある。
また、信号のピークレベルの確認方法についても、従来は受光側のアナログ信号をオシロスコープで光軸ごとに確認するなどしていたが、光軸数の増加やデジタル信号処理の比重が高まるにつれて、波形による信号確認は難しい状況となっている。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、光学窓による光減衰を考慮した光軸調整が可能な車両検知装置を提供するとともに、オシロスコープなどの特別な機材を使用することなく光軸調整を行うことができる車両検知装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の一の形態に係る車両検知装置は、走行路を走行する車両を、複数の発光部を有する発光装置と当該発光装置の発光部に対向する受光部を有する受光装置とによって検出する車両検知装置であって、前記発光装置は、前記発光部に供給する発光制御電流を通常電流と前記発光部及び受光部間に介挿される光学窓による光減衰分に応じて制限した制限電流とに切替える電流切替手段を備えていることを特徴としている。
【0012】
この構成によると、発光装置に通常電流と光学窓による光減衰分に応じて制限した制限電流とに切替える電流切替手段を備えているので、発光部及び受光部間に光学窓を介在させない光軸調整時に電流切替手段で、発光部に供給する発光制御電流を制限電流とすることにより、受光部で受光する受光量が、光学窓を透過したと等価な受光量となり、正確な光軸調整を行うことができるとともに、発光部及び受光部間に光学窓を介在させた状態での確認作業を省略して光軸調整を簡易に行うことができる。
【0013】
また、本発明の他の形態に係る車両検知装置は、走行路を走行する車両を、複数の発光部を有する発光装置と当該発光装置の発光部に対向する受光部を有する受光装置とによって検出する車両検知装置であって、前記発光装置は、前記発光部に供給する発光制御電流を通常電流と前記発光部及び受光部間に介挿される光学窓による減衰分に応じて制限した制限電流とに切替える電流切替手段を備え、前記受光装置は、前記受光部の受光レベルに応じた表示を行う表示手段を備えていることを特徴としている。
この構成によると、上記一の形態の作用に加えて、受光部の受光レベルが表示手段に表示されるので、別途オシロスコープ等の測定機材を設けることなく容易に光軸調整を行うことができる。
【0014】
また、本発明の他の形態に係る車両検知装置は、前記表示手段は、前記受光部をグループ化して最小受光レベルに応じた表示を行うように構成されていることを特徴としている。
この構成によると、複数の受光部をグループ化してその最小受光レベルに応じた表示を行うので、表示手段での表示素子数を減少させることができる。
【0015】
また、本発明の他の形態に係る車両検知装置は、前記表示手段は、光軸調整時の調整前後の受光レベルを差分表示可能に構成されていることを特徴としている。
この構成によると、表示手段で光軸調整時の調整前後の受光レベルを差分表示できるので、調整後の受光レベルが調整前に比較して増加したのか減少したのかを明確に判別することができ、光軸調整作業を容易に行うことができる。
【0016】
また、本発明の他の形態に係る車両検知装置は、前記表示手段は、LED表示器で構成されていることを特徴としている。
この構成によれば、簡易なLED表示器を使用して、点灯、消灯、点滅等で受光レベルの表示や差分表示を行うことできる。
また、本発明の他の形態に係る車両検知装置は、前記受光装置に通信回線を介して接続され、各受光部の受光情報を収集する情報端末を備えたことを特徴としている。
この構成とすることにより、情報端末で、受光部の受光情報を収集することができるので、全ての受光部についての受光レベルを管理することができる。
【0017】
また、本発明の他の形態に係る車両検知装置は、前記情報端末は、受光部毎の受光レベルを記憶する受光レベル記憶部を備えていることを特徴としている。
この構成によると、受光部毎の受光レベルを受光レベル記憶部に記憶するので、光軸調整終了後でも受光レベルを保持することができ、受光レベルを出力して表示又は印刷することができる。
【0018】
また、本発明の他の形態に係る車両検知装置は、前記情報端末は、受光部毎の受光レベルを記憶する受光レベル記憶部と、該受光レベル記憶部に記憶されている受光毎の受光レベルに基づいて品質保証情報を形成する品質保証情報形成手段とを備えていることを特徴としている。
この構成によると、受光レベル記憶部に記憶した受光部毎の受光レベルを品質保証情報形成手段で、品質保証情報を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、発光部及び受光部間に光学窓を介在させない光軸調整時に電流切替手段で、発光部に供給する発光制御電流を制限電流とすることにより、受光部で受光する受光量が、光学窓を透過したと等価な受光量となり、正確な光軸調整を行うことができるとともに、発光部及び受光部間に光学窓を介在させた状態での確認作業を省略して光軸調整を簡易に行うことができるという効果が得られる。
また、本発明によれば、受光装置に、前記受光部の受光レベルに応じた表示を行う表示手段を設けることにより、受光部の受光レベルが表示手段に表示されるので、別途オシロスコープ等の測定機材を設けることなく容易に光軸調整を行うことができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用し得る有料道路の料金所のシステム構成図である。
【図2】図2は車両検知装置の設置状態を示す図である。
【図3】車両検知装置の斜視図であって、(a)は光学窓を閉じた状態を示す外観図、(b)は光学窓を開いた状態の斜視図である。
【図4】車両検知装置の具体的構成を示すブロック図である。
【図5】受光部での受光信号波形を示す図であって、(a)は制限電流時の受光信号波形を示し、(b)は通常電流時の受光信号波形を示す。
【図6】マイクロコンピュータで実行する光軸調整処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図7】光軸調整方法を示すフローチャートである。
【図8】本発明の他の実施形態を示す車両検知装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明を適用した有料道路の料金所におけるETC(Electronic Toll Collection System)装着車及びETC未装着の一般車の共用レーンのシステム構成図であって、図中、1は車両の入口側に配設された車両検知装置、2はETC車種表示板3を設けたゲート、4はETC車種表示板3に設置した車両5に搭載されたETC車載器6と交信する路側無線装置である。
【0022】
ゲート2の内側にも車両検知装置7が配設され、車両検知装置7の後方側にナンバープレート読取装置8、路側無線装置9、分電盤10、車両検知装置1の車両検知情報に基づいて発券高さを選択する通行券発行装置11、インターホン12、車両検知装置7の車両検知情報に基づいて車種を表示する車種表示器13がその順に配設されている。
また、車種表示器13の後方側には路側無線装置4及び9のETC装着車検知情報と車両検知装置7の車両検知情報とに基づいて開閉される開閉機を有する発進制御機14が配設されている。この発進制御機14の後方側に車両検知装置15が配設され、この車両検知装置15の後方側に車種監視カメラ16及び路側無線装置4と同様の路側無線装置17が配設されている。
【0023】
各車両検知装置1、7及び15の夫々は、図2に示すように、車両5の走行路を挟んで対向する発光装置21及び受光装置22を有する。
発光装置21は、図3に示すように、筐体31と、この筐体31の受光装置22と対向する位置に上下に延長するヒータガラスを内装した光学窓32を有する開閉扉33とを有する。そして、筐体31内に赤外光を発光する発光部としての多数の赤外線発光ダイオードLDを所定間隔で上下方向に配置した赤外線LEDアレイ34が配設されている。
【0024】
また、発光装置21は、図4に示すように、赤外線LEDアレイ34の各赤外線発光ダイオードLDに発光制御電流を供給する定電流回路35と、この定電流回路35から出力される通常電流とこれを制限した制限電流とを選択して切り替える電流切替手段としての電流切替回路36とを備えている。
定電流回路35は、光学窓32及び後述する受光装置22の光学窓42での光減衰分を考慮した発光量を得るに必要な定電流値の通常電流を発光制御電流として出力する。電流切替回路36は、定電流回路35から出力される通常電流が直接入力される固定接点t1と、定電流回路35から出力される通常電流を、光学窓32及び42での光減衰分に応じた発光量となるように所定の抵抗値を有する制限抵抗Rで制限した制限電流が入力される固定接点t2と、可動接点t3とを備えている。そして、可動接点t3から出力される発光制御電流が赤外線LEDアレイ34の各赤外線発光ダイオードLDのカソードに供給される。
【0025】
赤外線LEDアレイ34は、各赤外線発光ダイオードLDのカソードが信号線を介して受光装置22の後述するスイッチ素子アレイ49に接続されて所定周波数で点灯制御される。そして、赤外線LEDアレイ34の赤外線発光ダイオードLDで発光された赤外光は、筐体31に形成されたヒータガラスを内装した光学窓32を介して外部の受光装置22側に出射される。
【0026】
受光装置22は、発光装置21と同様の筐体41と、この筐体41の発光装置21との対向面に形成されたヒータガラスを内装した光学窓42とを有し、筐体41内に光学窓42と対向して受光部となる多数のフォトダイオードPDを上下方向に所定間隔を保って整列したフォトダイオードアレイ43が配置されている。そして、フォトダイオードアレイ43の各フォトダイオードPDから出力される受光信号は後述するスイッチ素子アレイ49のスイッチング周波数の周波数帯のみを通過させるバンドパスフィルタ(BPF)45を通じ、A/D変換器46でデジタル信号に変換されて制御装置47に入力される。
【0027】
ここで、フォトダイオードアレイ43の各フォトダイオードPDでは、後述する光学窓32を開いた状態での光軸調整時に制限電流によって赤外線LEDアレイ34の赤外線発光ダイオードLDからの赤外光を受信したときには、出力信号が、図5(a)に示すように、信号立ち上がり時は急峻に増加し、その後緩やかに増加してピーク値に達し、次いでピーク値から急峻に減少し、その後緩やかに減少する鋸歯状波となる。一方、フォトダイオードPDで、光学窓32を開いた状態での光軸調整時に通常電流によって赤外線発光ダイオードLDから赤外光を受信したときには、出力信号が、図5(b)に示すように、飽和レベルに達して台形状波形となる。
【0028】
この制御装置47には、中央処理装置(CPU)48と、スイッチ素子アレイ49とが設けられている。中央処理装置48は、光軸調整時に、バンドパスフィルタ45を通過した受光信号のデジタル受光信号Idを予め設定した所定時間毎に読込み、読込んだデジタル受光信号Idが予め設定した第1の受光閾値Ith1以上であるか否かを判定するとともに、デジタル受光信号Idが“0”に近い第2の受光閾値Ith2以下であるか否かを判定し、その判定結果が、デジタル受光信号Idが第1の受光閾値Ith1以上であるときすなわちId≧Ith1であるときに制御装置47に接続された赤外線LEDアレイ34の赤外線発光ダイオードLDの数と同数の緑色発光ダイオードLD1を有するLED表示器50の調整中の光軸に対応する発光ダイオードLD1を点灯させ、Ith1<Id<Ith2であるときに、対応する発光ダイオードLD1を点滅させ、Id≦Ith2であるときに、対応する発光ダイオードLD1を消灯させる。
【0029】
具体的には、中央処理装置48で、図6に示すように、光軸調整処理を実行する。この光軸調整処理は、発光装置21に設けられた光軸調整開始スイッチ37をオン状態とすることにより実行開始され、先ず、ステップS1で、光軸調整順位を示す変数nを“1”に設定し、次いでステップS2に移行し、赤外線LEDアレイ34の最下段から第n番目の赤外線発光ダイオードLDnに対するスイッチ素子を所定周波数で所定時間オン状態となるようにスイッチング制御する。
次いで、ステップS3に移行して、フォトダイオードアレイ43に接続されたマルチプレクサ44で最下段から第n番目のフォトダイオードPDnを選択し、次いでステップS4に移行してA/D変換器46から入力されるデジタル受光信号Idを読込んでからステップS5に移行する。
【0030】
このステップS5では、読込んだデジタル受光信号Idが予め設定した光軸調整が良好であるか否かを判定する第1の受光閾値Ith1以上であるか否かを判定し、Id≧Ith1であるときには光軸調整が良好であると判断してステップS6に移行してLED表示器50の最下段から第n番目の緑色発光ダイオードGLDnを点灯表示してからステップS7に移行する。
このステップS7では、変数nを“1”だけインクリメントし、次いでステップS8に移行して、変数nが最大値Nmaxを超えたか否かを判定し、n≦Nmaxであるときには光軸調整処理が未完了であると判断して前記ステップS2に戻り、n>Nmaxであるときには光軸調整処理が全て終了したものとして光軸調整処理を終了する。
【0031】
一方、ステップS5の判定結果がId<Ith1であるときにはステップS9に移行して、デジタル受光信号Idが、“0”に近い値に設定された第2の閾値Ith2以下であるか否かを判定し、Id>Ith2であるときには、最下段から第n番目のフォトダイオードPDnで赤外光を受光しているものと判断してステップS10に移行して、LED表示器50の最下段から第n番目の緑色発光ダイオードGLDnを点滅させてから前記ステップS2に戻る。
一方、ステップS9の判定結果が、Id≦Ith2であるときには、最下段から第n番目のフォトダイオードPDnで発光装置21からの赤外光を受信していないものと判断してステップS11に移行し、LED表示器50の最下段から第n番目の緑色発光ダイオードGLDnを消灯させてから前記ステップS2に戻る。
【0032】
次に、上記実施形態の動作を図7の動作フローチャートに従って説明する。
先ず、車両検知装置1、7、15の発光装置21及び受光装置22の設置が完了し、両者間の電気的接続が完了した時点で、作業者が発光装置21及び受光装置22の各赤外線発光ダイオードLD及びフォトダイオードPD間の光軸調整を行う。
この光軸調整を行うには、先ず、発光装置21の筐体31の開閉扉33を開いて光学窓32を開放するとともに、受光装置22の筐体41の開閉扉を開いて光学窓42を開放する(ステップS21)。これによって、発光装置21の赤外線LEDアレイ34の各赤外線発光ダイオードLD1〜LDmaxと、受光装置22のフォトダイオードアレイ43の各フォトダイオードPD1〜PDmaxとが光学窓32及び42を介在させることなく直接対向することになる。
【0033】
この状態で、電流切替回路36を操作して可動接点t3を固定接点t2側に切替えて定電流回路35から出力される通常電流を制限抵抗Rで制限した制限電流を赤外線LEDアレイ34の各赤外線発光ダイオードLDに供給する(ステップS22)。この状態で、発光装置21に配設された光軸調整開始スイッチ37をオン状態とする。
次いで、赤外線LEDアレイ34の各赤外線発光ダイオードLD1〜LDmaxの光軸調整を行う(ステップS23)。この光軸調整は、先ず、n=1となる最下段の赤外線発光ダイオードLD1から光軸調整を開始する。このとき、図示しないが赤外線LEDアレイ34の各赤外線発光ダイオードLDnは赤外光を出射する光軸を上下及び左右に調整可能に取付金具で筐体31に取付けられており、その赤外光を出射する光軸が受光装置22の最下段のフォトダイオードPDnの光軸と一致するように取付金具で上下左右に光軸を移動させる。
【0034】
一方、受光装置22では、光軸調整開始スイッチ37がオン状態となることにより、中央処理装置48で図6に示す光軸調整処理が実行開始される。これによって、スイッチ素子アレイ49の最下段の赤外線発光ダイオードLD1に対応するスイッチ素子が所定周波数で所定時間オン状態となるように制御され、これによって最下段の赤外線発光ダイオードLD1が所定周波数で赤外光を出射する。この赤外光が受光装置22のフォトダイオードアレイ43の最下段のフォトダイオードPD1で良好に受光されている光軸が一致している状態では、フォトダイオードアレイ43の最下段のフォトダイオードPD1で図5(a)に示すような受光信号レベルの大きい受光信号が出力される。このため、図6のステップS5でId≧Ith1と判定されるので、LED表示器50の最下段の発光ダイオードGLD1が点灯される(ステップS6)。このように、LED表示器50の最下段の発光ダイオードGLD1が点灯されることにより、最下段の光軸調整が完了したものと作業者が判断することができる。
【0035】
ところが、最下段の赤外線発光ダイオードLD1から出射された赤外光の一部がフォトダイオードPD1にかかっている場合には、フォトダイオードPD1から出力される受光信号の受光信号レベルが低くなり、前述したステップS5ではId<Ith1と判断され、受光信号レベルが“0”近傍ではないので、ステップS9からステップS10に移行して、LED表示器50の最下段の発光ダイオードGLD1が点滅制御される。このため、作業者が光軸が僅かにずれていることを認識して、取付金具を微調整して光軸が一致してLED表示器50の最下段の発光ダイオードGLD1が点灯するように調整する。
【0036】
さらに、赤外線発光ダイオードLD1の光軸が受光部となるフォトダイオードPD1から完全にずれている場合には、フォトダイオードPD1から出力される受光信号の受光信号レベルが略ゼロとなることから、ステップS9からステップS11に移行して、LED表示器50の最下段の発光ダイオードGLD1が消灯制御される。このため、作業者は赤外線発光ダイオードLD1の光軸が完全にずれていることを認識することができ、取付金具を比較的大きく調整して光軸が一致してLED表示器50の最下段の発光ダイオードGLD1が点灯するように調整する。
【0037】
そして、最下段の光軸調整が完了すると、図6の光軸調整処理でステップS6からステップS7に移行して、変数nが“1”だけインクリメントされるので、最下段から2番目の赤外線発光ダイオードLD2について上記したと同様の光軸調整を行う。
このとき、作業者はLED表示器50の発光ダイオードGLD1が点灯しただけであり、全ての発光ダイオードGLD1〜GLDmaxが点灯したわけではないので、ステップS24からステップS21に戻って最下段から第2番目の光軸調整を開始する。
【0038】
このようにして最上段の赤外線発光ダイオードLDmaxについての光軸調整が終了すると、図6の光軸調整処理で、ステップS7からステップS8に移行したときに、n>Nmaxとなることにより、光軸調整処理が終了される。
このときには、LED表示器50の全ての発光ダイオードGLD1〜GLDmaxが点灯状態となることにより、作業者が光軸調整の終了を確認することができ、これに応じて電流切替回路36の可動接点t3を固定接点t1側に切替えて、赤外線LEDアレイ34の各赤外線発光ダイオードLD1〜LDmaxに対して定電流回路35から出力される通常電流値の発光制御電流を供給する状態とする(ステップS25)。
【0039】
そして、発光装置21の開閉扉33を閉じ、光学窓32を元の赤外線LEDアレイ34の各赤外線発光ダイオードLD1〜LDmaxから発光される赤外光を透過する状態に復帰させ、受光側で同様に扉を閉めて光軸調整作業を終了する。光軸調整作業を終了した通常状態では、車両検知装置1,7及び15で車両を検知して、ETC未装着車については通行券発行装置11での発券位置を選択し、ETC装着車については発進制御機14を開状態に制御する。
【0040】
このように、上記実施形態によると、光軸調整する際に、発光装置21の光学窓32及び受光装置22の光学窓42を開けて、発光装置21の赤外線LEDアレイ34の赤外線発光ダイオードLD1〜LDmaxと受光装置22のフォトダイオードアレイ43のフォトダイオードPD1〜PDmaxとを直接対向させた状態で光軸調整を正確に行うことができる。すなわち、光軸調整の開始時に電流切替回路36で、定電流回路35から出力される発光装置21の光学窓32及び受光装置22の光学窓42での光減衰分を考慮した比較的大きな通常電流値の発光制御電流に代えて、制限抵抗Rで通常電流値を制限して光学窓32及び42の光減衰分に合わせて電流値を減少させた制限電流を選択して赤外線LEDアレイ34の各赤外線発光ダイオードLD1〜LDmaxに供給する。このため、受光装置22のフォトダイオードアレイ43の各フォトダイオードPD1〜PDmaxで受光した赤外光による受信信号レベルが図5(a)に示すように鋸歯状波となり、図5(b)に示す通常電流値で発光させた赤外光を受光した場合のように受信信号レベルが飽和することがないので、正確に光軸が一致しているか否かを判断することができ、正確な光軸調整を行うことができる。しかも、光学窓32及び42を介在させない状態で、正確な光軸調整を行うことができるので、光学窓32及び42を介在させてから再度受光信号を再検査する必要がなく、光軸調整作業を簡易化して短時間で行うことができる。
【0041】
また、上記実施形態では、受光装置22の中央処理装置48で図6に示す光軸調整処理を行うことにより、フォトダイオードアレイ43の各フォトダイオードPD1〜PDmaxの受信信号レベルに基づいて光軸の調整が良好であるか否かを判断し、判断結果をLED表示器50の緑色発光ダイオードGLD1〜GLDmaxの点灯状態(良好)、点滅状態(光軸は一致していないが赤外光の受光状態)及び消灯状態(赤外光の非受光状態)で表すことができ、別途オシロスコープ等の測定装置で受信レベルを測定することなく簡易な構成で光軸の調整状態を作業者に認識させることができる。
なお、上記実施形態においては、受光装置22の受光部としてフォトダイオードを適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、フォトトランジスタ等の任意の受光素子を適用することができる。
【0042】
また、上記実施形態においては、光軸調整時に受光装置22の開閉扉も開状態として光学窓42を開いた状態とした場合について説明したが、これに限定されるものではなく、受光装置22の開閉扉は閉状態としてフォトダイオードアレイ43の各フォトダイオードで光学窓42を介して赤外光を受光するようにしてもよい。この場合には、発光装置21側の制限抵抗Rの抵抗値を受光装置22の光学窓42の光減衰分に応じた抵抗値分小さい抵抗値に設定すればよい。
また、上記実施形態においては、定電流回路35から出力される発光制御電流を制限抵抗Rで制限して制限電流を形成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、通常電流を形成する定電流回路と制限電流を形成する定電流回路との2つの定電流回路を設けるようにしてもよい。
【0043】
また、上記実施形態においては、受光装置22で、光軸調整時にフォトダイオードアレイ43のフォトダイオードから出力される受光信号をデジタル値に変換したデジタル受光信号Idを第1の閾値Ith1及び第2の閾値Ith2と比較して光軸の調整状態をLED表示器50の緑色発光ダイオードGLDで表示する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、LED表示器50に光軸の調整状態を表す緑色発光ダイオードGLD1〜GLDmaxと平行に光軸調整前後の差分を表す例えば赤色発光ダイオードを配設するとともに、制御装置47の中央処理装置48で実行する図6の光軸調整処理で、前回のデジタル受光信号Id(n-1)と今回のデジタル受光信号Id(n)との差分ΔI(ΔI=Id(n)−Id(n-1))を算出し、差分ΔIが正であるときすなわち受光レベルが増加したには、赤色発光ダイオードを点灯させ、差分ΔIが負であるときすなわち受光レベルが減少したときには赤色発光ダイオードを点滅させる制御を付加することにより、光軸調整前後の受光レベル変化を作業が容易に視認することが可能となる。
【0044】
また、上記実施形態では、LED表示器50を緑色発光ダイオードGLD1〜GLDmaxで構成した場合について説明したが、発光色は任意に設定することができる。
また、上記実施形態では、LED表示器50で検査対象となる赤外線発光ダイオードLD1〜LDmaxと同数の発光ダイオードGLD1〜GLDmaxを配置した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、複数の赤外線発光ダイオードをグループ化して光軸調整を行い、図6の光軸調整処理で、グループ化した赤外線発光ダイオードに対応する複数のフォトダイオードをグループ化して、各フォトダイオードのデジタル受光信号を記憶し、最小値のデジタル受光信号に基づいて第1の閾値Ith1及び第2の閾値Ith2と比較して光軸良否判定を行い、その判定結果をLED表示器50の1つの発光ダイオードで表示するようにして、LED表示器50の発光ダイオード数を減少させることもできる。
【0045】
また、上記実施形態では、光軸調整処理について説明したが、図8に示すように、受光装置22の中央処理装置48に有線又は無線通信路60を介して例えばノート型パーソナルコンピュータでなる情報端末61を接続し、図6の光軸調整処理に、光軸調整が良好と判断されたときに、そのときのデジタル受光信号の値と光軸番号(変数n)とを対応付けて光軸情報として逐次情報端末61に送信する送信処理を付加し、情報端末61では、中央処理装置48から受信する光軸調整が良好と判断されたときのデジタル受光信号及び光軸番号(変数n)でなる光軸情報をRAM又はハードディスクに形成した受光レベル記憶部62に逐次記憶し、光軸調整が完了した時点で、品質保証情報形成手段となる品質保証情報形成処理を実行して、受光レベル記憶部62に記憶されている光軸番号(変数n)とデジタル受光信号の値とを所定形式の品質保証書フォーマットに書込んで、品質保証書情報を形成し、形成した品質保証書情報をディスプレイに出力するか外部の印刷装置に出力して、品質保証書を表示又は印刷するようにしてもよい。この場合には、正確な品質保証書を作成することができるとともに、品質保証書を作成する手間を省略することができる利点がある。
【0046】
また、上記実施形態においては、筐体31に設けた開閉扉33に光学窓32を形成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、筐体31の開口部を閉塞する取り外し可能な蓋に光学窓を形成するようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、車両検知装置をETC/一般車共用レーンに配置した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ETC専用レーンや一般車専用レーンに配置することもでき、さらには駐車場の出入り口に配置することもできる。
また、上記実施形態においては、表示手段としてLED表示器50を適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、液晶表示器等の他の表示装置を適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1,7,15…車両検知装置、21…発光装置、22…受光装置、31…筐体、32…光学窓、33…開閉扉、34…赤外線LEDアレイ、35…定電流回路、R…制限抵抗、36…電流切替回路、37…光軸調整開始スイッチ、41…筐体、42…光学窓、43…フォトダイオードアレイ、44…マルチプレクサ、45…バンドパスフィルタ、46…A/D変換器、47…制御装置、48…中央処理装置、49…スイッチ素子アレイ、50…LED表示器、60…有線又は無線通信路、61…情報端末、62…受光レベル記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行路を走行する車両を、複数の発光部を有する発光装置と当該発光装置の発光部に対向する受光部を有する受光装置とによって検出する車両検知装置であって、
前記発光装置は、前記発光部に供給する発光制御電流を通常電流と前記発光部及び受光部間に介挿される光学窓による光減衰分に応じて制限した制限電流とに切替える電流切替手段を備えている
ことを特徴とする車両検知装置。
【請求項2】
走行路を走行する車両を、複数の発光部を有する発光装置と当該発光装置の発光部に対向する受光部を有する受光装置とによって検出する車両検知装置であって、
前記発光装置は、前記発光部に供給する発光制御電流を通常電流と前記発光部及び受光部間に介挿される光学窓による減衰分に応じて制限した制限電流とに切替える電流切替手段を備え、
前記受光装置は、前記受光部の受光レベルに応じた表示を行う表示手段を備えている
ことを特徴とする車両検知装置。
【請求項3】
前記表示手段は、前記受光部をグループ化してその最小受光レベルに応じた表示を行うように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両検知装置。
【請求項4】
前記表示手段は、光軸調整時の調整前後の受光レベルを差分表示可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の車両検知装置。
【請求項5】
前記表示手段は、LED表示器で構成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の車両検知装置。
【請求項6】
前記受光装置に通信回線を介して接続され、各受光部の受光情報を収集する情報端末を備えたことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の車両検知装置。
【請求項7】
前記情報端末は、受光部毎の受光レベルを記憶する受光レベル記憶部を備えていることを特徴とする請求項6に記載の車両検知装置。
【請求項8】
前記情報端末は、受光部毎の受光レベルを記憶する受光レベル記憶部と、該受光レベル記憶部に記憶されている受光部毎の受光レベルに基づいて品質保証情報を形成する品質保証情報形成手段とを備えていることを特徴とする請求項6又は7に記載の車両検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−112547(P2011−112547A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270215(P2009−270215)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】