説明

車両減速ハンプ

【課題】
いろいろな車種、状況の変化等に対応することができるハンプを提供する。
【解決手段】
道路を走行する車両を減速させるために、道路に対して隆起して設置される隆起部10と、この隆起部10を支える緩衝器4を備え、この緩衝器4にいろいろな 条件に基づいて該緩衝器4の抵抗値を変化させ、もって車両への衝撃度を最適に変化させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、低速運転が要求される道路において、車両の走行速度を抑制するために、道路に設置されるハンプ(又はバンプ)に関する。
【背景技術】
【0002】
ハンプ又はバンプに関する先行技術として、道路の一部を台形状断面となるように盛り上げることによって車両に対して減速を強要する車両減速用バンプの形成方法であって、断面がほぼ直角三角形状の傾斜体を道路方向に沿って前後に間隔をあけて固着し、その前後の傾斜体の垂直面間にアスファルトやコンクリート等の塗装材を充填すると共にその塗装材の上面をほぼ平坦にすることを特徴とするものが開示されている(特許文献1)。これにより、施工に熟練を要さず、施工性が向上し、施工期間が短縮できるとされている。
【0003】
また、別の先行技術として、ハンプを両側が平坦面で中央を円弧またはサイン曲線カーブまたは台形に膨出させた膨出部とする細長いブロック体に形成し、ハンプ自体をやや硬質のゴムまたは樹脂から成る弾性体で形成するものが開示されている(特許文献2)。これにより、車両が十分に減速してハンプを通過する場合には、車両の加重でハンプ自体即ち弾性体が圧縮されて変形し、車両への衝撃を緩和させることができると共に、減速せずにハンプを通過する場合には、車両に強い衝撃を加えることができるとされている。
【特許文献1】特開平11−13029号公報
【特許文献2】特開2003−49414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
公知のハンプは、その設置される道路から隆起部の最高部までの高さであるハンプ高さが常に一定であったため、様々な車種、状況の変化等に対する適応が不十分であった。上記特許文献2に開示されるハンプは、通過しようとする車両の走行速度に応じて衝撃を変化させようとするものであるが、ハンプによる車両への衝撃は、車両の速度のみならず、その重量にも大きく依存する。また救急車、消防車、パトカー等の緊急車両に対しては、ハンプによる衝撃を与えないことが最も好ましいが、従来のハンプのように、道路に一定のハンプ高さをもって固定された状態では、衝撃を避けることはできない。
【0005】
そこで、出願人は、これらの不都合を改善するため、様々な車種、状況の変化等に対して適応することができるハンプを提案した(特許文献3)。その構成は、道路に対して隆起するように設置される隆起部2,3と、前記道路から前記隆起部の最高部までの高さであるハンプ高さを変化させる昇隆手段5,6と、所定の条件に基づいて前記昇隆手段5,6を制御する制御手段25とを具備している。
【特許文献3】特願2007−16317号
【0006】
前述の発明は、ハンプの高さを変化させる昇隆手段として、油圧ポンプ、電動モータを用いなければならず、大規模な装置を必要とするため、電力の消費のみならず装置の価格が高く、普及に大きな障害となっていた。
【0007】
そこで、この発明にあっては、車両に与える衝撃度を可変として様々な車種、状況の変化等に対して適応することができるハンプを提供すること並びに、構造の簡素化、価格の引き下げに寄与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る車両減速ハンプは、道路を走行する車両を減速させるために、該道路に対して隆起して設置される隆起部と、前記道路から前記隆起部を支える支持手段と、前記隆起部が車両に与える衝撃度の変化を制御する制御手段と、
を具備することを特徴とするものである(請求項1)。これにより、ハンプ高が一定であるにも拘わらず、通過する車両に最良の衝撃度を与えることができる。例えば、軽量車では、抵抗力を大きくすること、重量車では、抵抗力を小さくすることで可能となるし、救急車、消防車等の緊急車両の通過の際に抵抗値は最も小さくすることで可能となる。
【0009】
この発明に係る他の車両用減速ハンプは、道路を走行する車両を減速させるために、路面に対して水平に設置され、車両が通過時に自重により降下される降下部と、前記道路から前記降下部を支える支持手段と、前記降下部が車両に与える衝撃度の変化を制御する制御手段と、を具備することを特徴とするものである(請求項2)。これにより道路面に対して水平に設置されるにも拘わらず、通過する車両の自重により降下部の降下によって、最良の衝撃度を与えることができる。例えば、軽量車では、抵抗力を小さくすること、重量車では、抵抗力を大きくすることで可能となるし、救急車、消防車当の緊急車両の通過の際に抵抗力を最大とすることで可能となる。
【0010】
上記請求項1又は2の記載の構成において、前記隆起部又は降下部が車両に与える衝撃度の制御は、支持手段である緩衝器の抵抗力を変化させることにより行うことが好ましく(請求項3)、前記緩衝器として、可変オリフィスを用いた油圧緩衝器(請求項4)が、または磁性流体を用いた緩衝器(請求項5)が用いられている。
【0011】
前記可変オリフィスを用いた油圧緩衝器は、シリンダとこのシリンダ内に挿入するピストンチューブを有し、前記ピストンヘッド側室には、加圧気体と、これにより加圧された流体が封入され、またピストンチューブ内に前記シリンダに固定のプランジャチューブの摺動部が配されて該摺動部によりピストンチューブ室が形成され、該ピストンチューブ室はストローク形のオリフィスと回転形のオリフィスを介して前記ピストンヘッド側室と連通し、前記回転形のオリフィスを回動することにより圧縮方向の抵抗力が変化される。即ち、外部からの信号に比して緩衝器の抵抗力を任意に変化させることができる。
【0012】
また、前記磁性流体を用いた緩衝器は、シリンダとこのシリンダ内に挿入するピストンを有し、前記ピストンのヘッド側室と加圧気体にて加圧された室とを連通路にて連通し、前記連通路に磁性材とコイルを配した抵抗可変効果発生用オリフィスを持ち、前記コイルに印加される電流値に比例して磁性流体の粘性抵抗が変化し、この粘性抵抗力により圧縮方向の抵抗力が変化される。即ち、外部からの信号に比して緩衝器の抵抗力を任意に変化させることができる。
【0013】
さらに、上記請求項1,2又は3の記載の構成において、車両の走行速度を検知する速度検知手段を具備し、前記制御手段は前記速度検知手段により検知された車両の走行速度に基づいて、前記支持手段である緩衝器の抵抗力を変化させるようにすることが好ましい(請求項6)。これにより、ハンプを通過しようとする車両の速度が大きい時には、小さい時に比べてハンプの抵抗力が大きくなるので、より減速を促す効果が大きくなる。
【0014】
また上記請求項1,2又は3の記載の構成において、車両の重量を検知する重量検知手段を具備し、前記制御手段は前記重量検知手段により検知された車両の重量に基づいて、前記支持手段である緩衝器の抵抗力を変化させるようにすることが好ましい(請求項7)。これにより、請求項1にあって、隆起部を越えようとする車両の重量が大きい時には、小さいときに比べてハンプの抵抗力を小さくすることで、軽量車のみならず重量車にも十分なる衝撃を与えることができる。また、請求項2にあって、降下部を通過しようとする車両の重量が大きい時には、小さい時に比べて降下部の抵抗力を大きくすることで、軽量車のみならず重量車にも十分なる衝撃を与えることができる。
【0015】
さらに、上記請求項1,2又は3の記載の構成において、特定の車両の存在を検知する特定車両検知手段を具備し、前記制御手段は前記特定車両検知手段により特定の車両の存在を検知した場合に、前記緩衝器の抵抗力を変化させるようにすることが好ましい(請求項8)。これにより、救急車、消防車、パトカー等の緊急車両、その他ハンプの設置者が許可した者の車両が、通過する際には、隆起部を用いる場合では、抵抗力を最小とし、降下部を用いる場合では、抵抗力を最大として、ハンプを無衝撃状態にすることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、請求項1の発明によれば、隆起部のハンプ高を一定であるにも拘わらず、通過する車両に最良の衝撃度を与えることができる。即ち、軽量車では抵抗力を大きく、重量車では抵抗力を小さくすること、救急車等の緊急車両の通過の際に抵抗力は最も小さくする(請求項1)。また、請求項2の発明によれば、降下部の降下方向への抵抗力を可変とすることで、通過する車両に最良の衝撃度を与えることができる(請求項2)。
【0017】
また、請求項1の隆起部又は請求項2の降下部が車両に与える衝撃度の制御は支持手段となる緩衝器の抵抗力を変化させることにより行われ、緩衝器は可変オリフィスを用いた油圧緩衝器や磁性流体を用いた緩衝器が用いられることから、油圧式や電動式の可動式ハンプと違い、ハンプを上下させる手段を持たせず、予め封入の加圧気体を用いることから、省エネルギータイプである。即ち、油圧ポンプ、大きな電動機を用いずコンパクトに作られ、且つ信整性を高くすることができる(請求項3,4,5)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の実施例を図面にもとづいて説明する。
【実施例1】
【0019】
図1において、この実施例1に係る車両減速ハンプ(以下ハンプという)1は、天板2、斜板3、緩衝器4及びコントロールユニット5とより構成され、更にこのハンプ1には車両の走行速度を検知する車速検知手段6、車両の重量を検知する重量検知手段7、受音装置8、受信装置9が備えられている。
【0020】
天板2及び斜板3は、それぞれ直方形状を有する板状の部材であり、これら天板2と斜板とは、図示しない連絡装置により互いのなす角度を変化可能に連結されている。天板2及び斜板3は、これらの上を車両が通過するものであるため、車両の重量に耐えられる強度を有する素材により構成されなければならない。例えば厚さ20mm程の鉄板などが採用される。そして、天板2及び斜板3は、通常時では、緩衝器4により支えられ、路面より突出して隆起部10を構成している。
【0021】
そして、前記コントロールユニット5には、前記車速検知手段6、重量検知手段7、受音装置8、受信装置9からの信号が入力され、所定のソフトに従って処理され、前記天板2を支える緩衝器4へ所望の電気信号が出力される。このハンプ1の特徴は、当出願人の提案の可動ハンプの特許文献3に比して、隆起部10のハンプ高が一定である点であり、衝撃度はハンプ1を支えている緩衝器4の抵抗力を変化させることで行われている。
【0022】
図2において、隆起部10である天板2を支える緩衝器4は、圧油を用いるタイプで、シリンダ15にピストンチューブ16が嵌挿されており、ピストンヘッド側室17には加圧気体で加圧付勢の圧油が封入されている。ピストンチューブ16内には、その凹部20に前記シリンダ15に固定のプランジャチューブ19の摺動部21が挿入されている。そのために、凹部20と摺動部21とでピストンチューブ室23が形成されている。
【0023】
ピストンチューブ室23は、前記ピストンヘッド側室17とは、2つのルートで連通されている。1つは前記摺動部21に形成のストローク形のオリフィス24により、外の1つは前記ピストンチューブ室23内に設けられ、該ピストンチューブ16に固着の中空調整円錐筒25よりそれぞれ圧油が流動する。
【0024】
前記中空調整円錐筒25は、外面が円錐に形成され、前記プランジャチューブ19の摺動部21との相対的な位置関係により、ストローク形のオリフィス24の断面積が変化し、流量が変化され作用を司ると共に、その中空部26は一端が前記ピストンヘッド側室17に入り込み、基端が前記ピストンチューブ16に固着されている。
【0025】
この中空調整円錐筒25内には、回転形のオリフィス30を構成する制御筒28が嵌入され、この制御筒28にオリフィス孔29aが形成され、前記中空調整円錐筒25に形成のオリフィス孔29bとにより、回転することで断面積を変化せしめ、流量を制御している。前記制御筒28は回転させる手段を持っており、具体的にはモータ31が採用され、その回転力が軸32を介して伝えられている。このモータ31は、コントロールユニット5より制御信号が入力され、その入力信号に応じて制御筒28が回転され、断面積を変化させて通過する流量が制御される。
【0026】
なお、34はロッドで、前記した天板2の下面に固着されている。また35は前記プランジャチューブ19に形成の貫通孔で、流体(圧油)及び気体が通過する圧力均等用のものである。
【0027】
上述の構成において、可変オリフィスを用いた緩衝器4がハンプ1に採用されると、ロッド34が天板2を下面から支えることになる。緩衝器4は加圧気体にて、内部の圧油を加圧していることから、緩衝器4はその長手方向が最大長となって図2のようになり、天板2を押し上げて、隆起部10のハンプ高が一定の高さとなっている。
【0028】
車両がハンプ1に差し掛かると、車両の車速検知手段6により車速が検知され、重量検知手段7により重量が検知され、受音装置8によりサイレン等を検知されまた受信装置9により特定の信号が受信され、これらの検知信号は、コントロールユニット5に入力され、車両の速度、重量等から、コントロールユニット5内で所定のプログラムに従って処理され、緩衝器4に制御信号が出力される。この制御信号によりモータ31が回転され、回転形のオリフィス30の開度(開口断面積)が決定される。
【0029】
したがって、車両がハンプ1の隆起部10に乗り上げ時に、ピストンチューブ室23内の圧油には、ロッド34を介して車両の重量、速度に比した力が加えられるが、最適な衝撃が加えられるように、圧油の流動が制御され、緩衝器4のロッドに最適な抵抗力となって表れる。したがって、この緩衝器4を採用することで、隆起部10のハンプ高を上げ下げすることなく、抵抗力の可変にて車両に最適な衝撃を与えることができる。
【0030】
なお、救急車などの緊急車両にあっては、受音装置8や受信装置9からの信号により、抵抗力を最小とするように、回転形のオリフィス30の開度(開口断面積)が決定される。したがって、ハンプ1上を衝撃なくスムーズに走行することができる。
【0031】
前記実施例の緩衝器4には、中空調整円錐筒25の変位によるストローク形のオリフィスが設けられているが、図3に示すように、これを除外して中空円筒25′とすることで、ストローク形のオリフィスをなくし、固定のオリフィス24′として、回転形のオリフィス30の開度(開口面積)による流量制御のみとしている。その他の部分は前記実施例と同一のため、同一又は均等部分は同一の符号を付して説明を省略している。これによっても、ハンプ高を上げ下げすることなく、流量の制御による抵抗力の可変にて車両に最適な衝撃を与えることができる。
【0032】
図4において、隆起部10である天板2を支える緩衝器4は、磁性流体を用いたタイプで、シリンダ42が縦方向に配され、その内部にピストン44が摺動自在に挿入され、該ピストン44には、ピストンロッド45が固着され、前記シリンダ42より外部へ突出している。このピストン44の前後にピストンヘッド側室49とピストンロッド側室63とを形成している。
【0033】
また前記シリンダ42には、周囲壁に長手方向に適宜な間隙をあけて多数のオリフィス孔46が形成され、この多数のオリフィス孔46と前記ピストン44とにより面積可変オリフィス47が構成される。前記ピストン44と多数のオリフィス46との関係は、ピストン44が最も押し込まれてピストンヘッド側室49の容積を最小とする時でも、該ピストンの後端を越えないように構成されている。
【0034】
粘性可変流体の通路52は、前記シリンダ42とその外周に設けられた磁性材より成る中間筒53との間及び中間筒53とその外側に配されるケース54の間とより成り、前記中間筒53は、径寸法を交互に変更することで、凹部55aと凸部55bが多数連続的に縦方向に形成している。
【0035】
前記凹部55aには、コイル57が配され、また前記凸部55bは、前記ケース54との間で絞り作用を有する隙間が多数形成されている。この隙間の寸法は実験の結果から得られる。この隙間は粘性可変流体により抵抗可変効果発生用オリフィス59となっている。
【0036】
また、前記粘性可変流体の通路52は、一方を前記オリフィス孔46と連通し、他方をシリンダ42の下方で該シリンダ42に延設の加圧気体室61とピストン62を介して圧力が伝えられる加圧された室60と連通している。この加圧気体にて付加された室20は、加圧気体が粘性可変流体(MR流体)に圧力を加える作用をしている。即ち、加圧気体は、ピストン44を上方へ動かす復元ばね作用をしている。
【0037】
粘性可変流体の通路55中を流れる粘性可変流体は、コイル57に電流を印加することで励磁され、その粘性を変化させることができ、例えばMR流体である。即ち、この通路52の抵抗可変効果発生用オリフィス59を通る際には大きな抵抗力が発生する。この抵抗力は、電流値の増加により増加する関係となっている。
【0038】
コイルに印加する電流は、外部に設けられたコントロールユニット5から出力され、このコントロールユニット5の出力は、種々の検出器6,7,8,9から入力される情報信号の値によって変化される。なお、ピストンロッド室63は、孔64を介して前記通路52に連通している。
【0039】
上述の構成において、磁性流体を用いた緩衝器4がハンプ1に採用されると、ピストンロッド45が天板2を下面から支えることになる。緩衝器4は加圧気体にて、内部の磁性流体を加圧していることから、緩衝器4はその長手方向が最大長となって図3のようになり、天板2を押し上げてハンプ高が一定の高さとなっている。
【0040】
車両がハンプ1に差し掛かると、車両の車速検知手段6により車速が検知され、重量検知手段7により重量が検知され、受音装置8によりサイレン等を検知されまた受信装置9により特定の信号が受信され、これらの検知信号は、コントロールユニット5に入力され、車両の速度、重量等から、コントロールユニット5内で所定のプログラムに従って処理され、緩衝器4に制御信号が出力される。この制御信号によりコイルに発生する磁気力が制御され、磁気流体の粘性抵抗が変化し、この粘性抵抗力により圧縮方向の抵抗力が変化される。
【0041】
したがって、車両がハンプの隆起部10に乗り上げた時に、ピストンヘッド側室49内に入っていた粘性可変流体は、まず面積可変オリフィス47において動圧による抵抗力が発生すること、そして粘性可変流体の通路52を通ることで、自らの粘性抵抗により、抵抗力が発生する。
【0042】
ロッド45を介して車両の重量、速度に比した力が加えられるが、最適な衝撃が加えられるように、磁性流体の粘性の流動が制御され、緩衝器4のロッドに最適な抵抗力となって表れる。したがって、この緩衝器4を採用することで、ハンプ高を上げ下げすることなく、抵抗力の可変にて車両に最適な衝撃を与えることができる。
【0043】
なお、救急車などの緊急車両にあっては、受音装置8や受信装置9からの信号により、抵抗力を最小とするように、コイル57への電流値が決定される。したがって、ハンプ1上を衝撃なくスムーズに走行することができる。なお、この実施例の緩衝器4には、面積可変形のオリフィス47を設けているがこれを除外しても磁性流体の粘性の制御から緩衝器4の抵抗力の制御ができることは勿論である。
【実施例2】
【0044】
図5において、この実施例2に係る車両減速ハンプ(以下ハンプという)1は、天板2、斜板3、緩衝器4及びコントロールユニット5とより構成され、更にこのハンプ1には車両の走行速度を検知する車速検知手段6、車両の重量を検知する重量検知手段7、受音装置8、受信装置9が備えられている。
【0045】
天板2及び斜板3は、それぞれ直方形状を有する板状の部材であり、これら天板2と斜板3とは、図示しない連絡装置により互いのなす角度を変化可能に連結されている。天板2及び斜板3は、これらの上を車両が通過するものであるため、車両の重量に耐えられる強度を有する素材により構成されなければならない。例えば厚さ20mm程の鉄板などが採用される。そして、天板2及び斜板3は、通常時では、緩衝器4により支えられ、路面に面一に設置され、車両が載ると降下する降下部11となっている。
【0046】
そして、前記コントロールユニット5には、前記車速検知手段6、重量検知手段7、受音装置8、受信装置9からの信号が入力され、所定のソフトに従って処理され、前記天板2を支える緩衝器4へ所望の電気信号が出力される。このハンプ1の特徴は、前記実施例1に比して車両が載ると降下部11が降下して衝撃を与える点である。
【0047】
隆起部10である天板2を支える緩衝器4は、圧油を用いるタイプで、図6に示す構造のものが用いられる。この緩衝器4は、前記実施例1の図3に示す
例に対して固定オリフィス24をなくして、オイルシール36を設けている点のみ相違している。前述の図3の例のものを用いると、救急車などの緊急車両の通過時に、オリフィス24を介して圧油が流れて天板2は降下することになり、少なからず衝撃を与えることになる。
【0048】
これでは、緊急車両がスムーズに走行することができなくなるため、オイルシール36を設けて回転形のオリフィス30の開度が0の際に、ピストンチューブ室23からの圧油の流出を無くして、降下部11が路面に対し面一状態が維持されるようになる。その他の部分は図3に示す緩衝器4と同一のため、図面に同一の番号を付し、説明を省略するが、詳細は段落0022から段落0026までに記述されている。
【0049】
上述の構成において、可変オリフィスを用いた緩衝器4がハンプ1に採用されると、ロッド34が天板2を下面から支えることになる。緩衝器4は加圧気体にて、内部の圧油を加圧していることから、緩衝器4はその長手方向が最大長となって図2のようになり、天板2を押し上げて、路面に対して面一となっている。
【0050】
車両がハンプ1に差し掛かると、車両の車速検知手段6により車速が検知され、重量検知手段7により重量が検知され、受音装置8によりサイレン等を検知されまた受信装置9により特定の信号が受信され、これらの検知信号は、コントロールユニット5に入力され、車両の速度、重量等から、コントロールユニット5内で所定のプログラムに従って処理され、緩衝器4に制御信号が出力される。この制御信号によりモータ31が回転され、回転形のオリフィス30の開度(開口断面積)が決定される。
【0051】
したがって、車両がハンプ1に載った時に、ピストンチューブ室23内の圧油には、ロッド34を介して車両の重量、速度に比した力が加えられるが、最適な衝撃が加えられるように、圧油の流動が制御される。即ち、例えば軽量車では、抵抗は小さく、逆に重量車では、抵抗は大きくし、降下部11の降下速度を調節して、車両に最適な衝撃を与えることができる。
【0052】
なお、救急車などの緊急車両にあっては、受音装置8や受信装置9からの信号により、抵抗力を最小とするように、回転形のオリフィス30の開度(開口断面積)を0に決定される。したがって、ハンプ1は路面に対しては面一あるから、その上を衝撃なくスムーズに走行することができる。なお、緩衝器4は、前述した実施例1に示した、磁性流体を用いるタイプでも良く、その詳細は段落0032から段落0043までに記述されている。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】この発明の実施例1に係る車両減速ハンプの設置状態を示す概略図である。
【図2】緩衝器として可変オリフィスを用いた油圧緩衝器の断面図である。
【図3】緩衝器として可変オリフィスを用いた油圧緩衝器の変形例の断面図である。
【図4】緩衝器として磁性流体を用いた緩衝器の断面図である。
【図5】この発明の実施例2に係る車両減速ハンプの設置状態を示す概略図である。
【図6】前記実施例2に用いられる緩衝器の断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 ハンプ
2 天板
3 斜板
4 緩衝器
5 コントロールユニット
6 速度検知器
7 重量検知器
8 受音装置
9 受信装置
10 隆起部
11 降下部
15 シリンダ
16 ピストンチューブ
17 ピストンヘッド側室
23 ピストンチューブ室
24 ストローク形のオリフィス
25 中空調整円錐筒
26 中空部
28 制御筒
30 回転形のオリフィス
31 モータ
34 ロッド
42 シリンダ
44 ピストン
45 ピストンロッド
47 面積可変オリフィス
49 ピストンヘッド側室
52 粘性可変流体の通路
57 コイル
59 抵抗可変効果発生用オリフィス
61 加圧気体室


【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路を走行する車両を減速させるために、該道路に対して隆起して設置される隆起部と、
前記道路から前記隆起部を支える支持手段と、
前記隆起部が車両に与える衝撃度の変化を調節する制御手段と、
を具備することを特徴とする車両減速ハンプ。
【請求項2】
道路を走行する車両を減速させるために、路面に対して水平に設置され、車両が通過時に自重により降下される降下部と、
前記道路から前記降下部を支える支持手段と、
前記降下部が車両に与える衝撃度の変化を制御する制御手段と、を具備することを特徴とする車両減速ハンプ。
【請求項3】
前記隆起部又は前記降下部が車両に与える衝撃度の制御は、支持手段である緩衝器の抵抗力を変化させることにより行うことを特徴とする請求項1又は2記載の車両減速ハンプ。
【請求項4】
前記緩衝器として可変オリフィスを用いた油圧緩衝器であることを特徴とする請求項3記載の車両減速ハンプ。
【請求項5】
前記緩衝器として磁性流体を用いた緩衝器であることを特徴とする請求項3記載の車両減速ハンプ。
【請求項6】
車両の走行速度を検出する速度検知手段を具備し、
前記制御手段は前記速度検知手段により検知された車両の走行速度に基づいて、前記支持手段である緩衝器の抵抗力を変化させることを特徴とする請求項1,2又は3記載の車両減速ハンプ。
【請求項7】
車両の重量を検出する重量検知手段を具備し、
前記制御手段は前記重量検知手段により検知された車両の重量に基づいて、前記支持手段である緩衝器の抵抗力を変化させることを特徴とする請求項1,2又は3記載の車両減速ハンプ。
【請求項8】
特定の車両の存在を検知する特定車両検知手段を具備し、
前記制御手段は前記特定車両検知手段により特定の車両の存在を検知した場合に、前記支持手段である緩衝器の抵抗力を最小とすることを特徴とする請求項1,2又は3記載の車両減速ハンプ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−308982(P2008−308982A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−125449(P2008−125449)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(592218300)学校法人神奈川大学 (243)
【Fターム(参考)】