説明

車両玩具

【課題】この発明は、複数のエネルギー源を組合わせて効率的に走行する車両に関する児童の理解を支援するための教材としても使用できるような車両玩具を提供することを目的とする。
【解決手段】上述の課題を解決するため、この発明の車両玩具1は、車体2と、走行部材3と、走行部材3を駆動する電動モーター4と、第1電源5と、第2電源6と、車体2の進行方向に概ね沿ったレール8と、このレール8上を前後動する移動体12とを有し、移動体12がレールの端部9の一方にある場合は第1電源5と電動モーター4が接続され、移動体12がレールの他方の端部10にある場合は第2電源6と電動モーター4が接続されることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、駆動力を有する車両の玩具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車など車両を模した玩具は、子供の興味を引く遊び道具として普及している。特に、電動モーターを備えて自走できる車両玩具は、実物の車両の仕組みやエネルギーの利用を学習するための教材としても適しており、たとえば小学校用の教科書である非特許文献1においても、乾電池を有する自動車玩具(22ページ)や太陽電池を有する自動車玩具(32ページ)が、エネルギー学習の教材として記載されている。
【0003】
また、特許文献1にも教材および玩具として使用できるミニチュアカーとして、太陽電池を備えた電源板と乾電池を備えた電源板を選択的に車体に装着させるものが記載されている。
【特許文献1】実開平6−57395号
【非特許文献1】みんなと学ぶ小学校理科4年、学校図書株式会社刊
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のミニチュアカーや非特許文献1に記載の自動車玩具は、いずれも太陽電池と乾電池を選択的に取り付けて使用するものであり、使用するときにおいては、単なる乾電池駆動または太陽電池駆動の車両玩具に過ぎない。したがって、通常の遊び道具として動きに関する興味を児童に対して喚起することはできても、走行の仕組みに対しての関心を喚起し難く、教材としても効果は限られる。
【0005】
現実の車両を見れば、蓄電池を電源とする電動モーターと内燃機関を組合わせて走行するハイブリッドカーが実用化されており、このようなハイブリッドカーは省エネルギーの面において期待が高いものである。したがって、車両玩具をエネルギーに関する教材として使用する場合にも、複数の駆動源を組合わせて効率的に走行する車両についての理解も得られるようなものが望まれる。しかし、従来の車両玩具では、このような教材としては使用できない。この発明は、複数のエネルギー源を組合わせて効率的に走行する車両に関する児童の理解を支援するための教材としても使用できるような車両玩具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、この発明の車両玩具は、車体と、走行部材と、走行部材を駆動する電動モーターと、第1電源と、第2電源と、車体の進行方向に概ね沿ったレールと、このレール上を前後動する移動体とを有し、移動体がレールの端部の一方にある場合は第1電源と電動モーターが接続され、移動体がレールの他方の端部にある場合は第2電源と電動モーターが接続されることを特徴とするものである。たとえば、第1電源としては乾電池を、第2電源として太陽電池を使用することができる。また、移動体として金属球を使用することができる。
【発明の効果】
【0007】
この発明の車両玩具は、走行面の傾きに合わせて2種類の電源を切替えながら走行する様子が容易に見てとれ、複数のエネルギー源を組合わせて効果的に運用することを学習するのに適した教材として使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明を実施するための最良の形態について、図面に基づいて説明する。図1は車両玩具の平面図、図2は同正面図、図3は使用状態を示す説明図である。
【0009】
図1に示す車両玩具1は4輪自動車を模したものであり、車体2と、走行部材として動輪3を有する。さらに、動輪3を駆動するための電動モーター4と、電動モーターに電力を供給するための第1電源5と第2電源6が備えられている。
【0010】
走行部材は、車体2を支持するとともに接地して走行できる構造のものであればよく、たとえば無限軌道であってもよい。ここでは、2軸の車輪のうちの1軸が動輪となっており、ベルト7によって電動モーター4より駆動力が伝達されるようになっている。
【0011】
第1電源5と第2電源6とは、異なる種類の電源であればよく、例えば、電圧の異なる乾電池の組合せでもよい。本例では、第1電源5は乾電池であり、第2電源6 は太陽電池である。
【0012】
車体2には、レール8が進行方向に概ね沿って設けられている。レール8の一端側が第1端部9であり、他端側が第2端部10である。本例の車両玩具1は図1、図2において右向きに走行するものであるが、第1端部9が第2端部10よりやや高くなるようにレール8が傾斜している。移動体12はこのレール8に沿って移動可能なものであり、本例では金属球である。レール8に沿って導体11が設けられている。第1端部9には第1端子13が、第2端部10には第2端子14が設けられている。そして、導体11と第1端子13および第2端子14の間には若干の隙間がある。
【0013】
第1電源5の電極の一方は電動モーター4に接続されており、電極の他方は第1端子13に接続されている。また、第2電源6の電極の一方は電動モーター4に接続されており、電極の他方は第2端子14に接続されている。図4は車両玩具の電気回路図であり、上記の電気的な接続が示されている。図3(a)に示すように車両玩具1が水平な面にあるときには第2端部10の方が低いので移動体12は第2端部10上にある。このとき、導体11と第2端子14は移動体である金属球によって電気的に接続される。一方、導体11と第1端子13は遮断された状態である。したがって、第2電源6より電力が電動モーター4に供給される。図3(b)に示すように走行面が下り坂であるときも移動体12は第2端部10にあり、第2電源6より電力が供給される。
【0014】
そして、図3(c)に示すように走行面が上り坂になり、第1端部9が第2端部10より低くなるようにレール8が傾斜したとき、移動体12はレール8上を移動し、第1端部9へ移る。このとき、電動モーター4には第1電源5から電力が供給される。
【0015】
以上、水平面または下り坂にあるときは、太陽電池である第2電源6の電力によって走行する。しかし、ある程度以上の傾斜の上り坂になると乾電池である第1電源の電力によって走行する。そして、走行面の傾斜によって第1電源5と第2電源6が切り替わるときには、レール8に沿って移動体12が移動する。この移動体12の移動は目で見て把握しやすいものであり、この車両玩具1で学習する児童は、電源の切り替わりを実感することができる。
【0016】
負担が大きい上り坂においては安定して大きな電力を供給できる乾電池を使用し、 水平面または下り坂においてはクリーンエネルギーである太陽電池を使用するということで、複数のエネルギー源をその長所が発揮されるように切替えている。現実の太陽電池自動車においても、曇りなどの場合には蓄電池など他のエネルギー源を併用しており、また、ハイブリッドカーも蓄電池の充電量の大小によって蓄電池と内燃機関を切替えながら走行する。本例の車両玩具1は、乾電池と太陽電池という異なる2種類の駆動源をその特性を生かすように切替えながら走行するものであり、単純ながらもハイブリッドカーの模型となっている。そして、2種類の電源の切替えが移動体の動きによって分りやすく示されており、児童にも理解しやすく、教材として適したものである。また、走行面の傾斜の変化によって移動体がレール上を移動する動きも児童の関心を喚起するものであり、遊び道具としても適している。
【0017】
次に、別の実施の形態について説明する。図5はレールの例を示す説明図である。この実施の形態では、レール8が支点15を軸に揺動可能なシーソー型となっている。導体11はレール8の両端部9,10まで延びている。第1端部9側には第1端子13が設けられているが、この第1端子13はレール側に取り付けられた金属のボルトなどレール側接点13aと、その下部に設けられた車体側接点13bを有する。第2端部10側には第2端子14が設けられていて、この第2端子14もレール側に取り付けられたレール側接点14aと、その下部に設けられた車体側接点14bを有する。そして、レール8の揺動によってレール側接点13aと車体側接点13b(レール側接点14aと車体側接点14b)は接触したり離れたりする。
【0018】
第1端子13の車体側接点13bは第1電源5に接続されており、第2端子14の車体側接点14bは第2電源6に接続されている。また、レール8の導体11は電動モーター4に接続されている。
【0019】
図5(a)は移動体12が第2端部10側にある状態を示す。本例においても、平面や下り坂などを走行する場合には、移動体12が第2端部10側に位置するように設定されている。このとき、移動体12の重量によってレール8の第2端部10側が下がり、レール側接点14aと車体側接点14bが接触する。したがって、第2電源6より電動モーター4へ電力が供給されるような回路が形成される。一方、レール側接点13aと車体側接点13bは離れており、第1電源5からは電力は供給されない。
【0020】
上り坂に入ると第2端部10側が高くなり、傾斜がある程度以上になるとレール8の第2端部10が第1端部9より高くなる。このとき、移動体12は第2端部10から第1端部9へ移動する。移動体12の重量によってレール8は支点15を中心に回転し、第1端部9が下がる。こうして図5(b)に示すように、レール側接点13aと車体側接点13bが接触して、第1電源5より電動モーター4へ電力が供給されるような回路が形成される。一方、レール側接点14aと車体側接点14bは離れるため、第2電源6からの電力の供給は遮断される。
【0021】
図5の例においては、移動体12はレール8をシーソーのように切替える作用をする。したがって、特に金属製である必要はなく、ガラス玉のような絶縁体でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0022】
この発明の車両玩具は、エネルギーの学習のための理科教材として利用することができ、特に複数のエネルギー源を組合わせて使用するハイブリッドシステムの理解のための教材として適している。また、遊び道具としても利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】車両玩具の平面図である。
【図2】同正面図である。
【図3】車両玩具の使用状態を示す説明図である。
【図4】車両玩具の電気回路図である。
【図5】レールの例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0024】
1.車両玩具
2.車体
3.走行部材(動輪)
4.電動モーター
5.第1電源(乾電池)
6.第2電源(太陽電池)
7.ベルト
8.レール
9. 第1端部
10.第2端部
11.導体
12.移動体(金属球)
13.第1端子
14.第2端子
15.支点


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、走行部材と、走行部材を駆動する電動モーターと、第1電源と、第2電源と、車体の進行方向に概ね沿ったレールと、このレール上を前後動する移動体とを有し、移動体がレールの端部の一方にある場合は第1電源と電動モーターが接続され、移動体がレールの他方の端部にある場合は第2電源と電動モーターが接続されることを特徴とする車両玩具。
【請求項2】
第1電源が電池であり、第2電源が太陽電池である請求項1に記載の車両玩具。
【請求項3】
移動体が金属球である請求項1または請求項2に記載の車両玩具。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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