説明

車両用のデータ書き換えシステム、並びにこのデータ書き換えシステムに用いられる車載装置及び書き換え装置

【課題】車載装置の簡素な構成を維持しつつ、データの書き換えを高速化できる車両用のデータ書き換えシステム、車載装置、及び書き換え装置の提供。
【解決手段】データ書き換えシステム100は、コンビネーションメータ50等の車載装置と、書き換え装置30等により構成されている。コンビネーションメータ50のメモリ53は、複数の記憶領域に分割されており、当該メータ50を作動させる作動データ60が振り分けられて各記憶領域に格納されている。データの書き換えに際し、コンビネーションメータ50は、各記憶領域と各バージョン情報とを関連付けて、書き換え装置30に出力する。書き換え装置30は、取得したバージョン情報と更新データ40のバージョン情報とを比較して、更新すべき対象記憶領域69を選択し、選択した対象記憶領域について、現在の作動データを対応する更新データにて更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される車載装置と、車両に接続されて車載装置に記憶されたデータを書き換える書き換え装置とを備える車両用のデータ書き換えシステム、並びにこれら車載装置及び書き換え装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載された装置に記憶されたデータの書き換えに係わる技術として、例えば特許文献1には、車載用制御装置の記憶データの書き換えシステムが開示されている。特許文献1に開示の書き換えステムでは、書き換え装置が車両に接続されると、当該書き換え装置から車載制御装置に書き換えデータを送信する。以上により、書き換え装置は、車載用制御装置の不揮発性メモリに記憶されたデータを、新しい書き換えデータによって書き換える。
【0003】
また、車両ではなく、例えばデジタル複合機の不揮発性メモリに記憶されたデータの書き換えに係わる技術として、例えば特許文献2には、ワァームウェアのアップデート方法が開示されている。特許文献2において、デジタル複合機の不揮発性メモリが複数のセッションに分割されると共に、複数のウァームウェアが各セッションに振り分けられて格納されている。以上のデジタル複合機に、新しいバージョンのウァームウェアを格納した外部記憶媒体が接続されると、当該複合機は、現在の各ウァームウェアのバージョン情報と、外部記憶媒体に格納された各ウァームウェアのバージョン情報とをセッション毎に比較する。そして、デジタル複合機は、更新の候補となるウァ−ムウェアを選択して、作業者に向けて呈示する。作業者によって更新すべきウァ−ムウェアが選択されると、デジタル複合機は、選択されたウァ−ムウェアを格納するセッションについて、現在格納されているウァ−ムウェアを対応する新バージョンのウァ−ムウェアによって更新する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−332148号公報
【特許文献2】特開2007−310690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、特許文献2に開示のアップデート方法では、更新を要する一部のセッションについてウァ−ムウェアの更新が実施されるので、特許文献1のように全ての記憶領域のデータを書き換える形態よりも、データの書き換えに要する時間は、短縮され得る。そこで、本願発明者らは、特許文献2に開示のアップデート方法を、車載装置に記憶されたデータを書き換えるシステムに適用することを、新たに試みた。
【0006】
しかし、特許文献2に開示のアップデート方法では、デジタル複合機が、更新の対象となるウァ−ムウェアを格納するセッションを、複数のセッションから選択する処理を実施する。こうした現在の各ウァ−ムウェアの各バージョン情報と、外部記憶媒体に格納された各ウァ−ムウェアの各バージョン情報とを比較して、更新の対象となるセッションを選択する構成を車載装置に設けてしまうと、車載装置の複雑化は、不可避となる。故に、特許文献2に開示の技術は、データの書き換えに要する時間を短縮できるものの、車両用のデータ書き換えシステムに適用され難かった。
【0007】
本願発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、車載装置の簡素な構成を維持しつつ、データの書き換えを高速化できる車両用のデータ書き換えシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、車両に搭載される車載装置と、車両に接続されて車載装置に記憶されたデータを書き換える書き換え装置と、を備える車両用のデータ書き換えシステムであって、車載装置は、複数の記憶領域に分割され、車載装置の作動に用いられる複数の作動データが振り分けられて各記憶領域に格納されると共に、各作動データの各バージョン情報を記憶する作動データ記憶手段と、各記憶領域と各バージョン情報とを関連付けて、書き換え装置に出力する出力手段と、を有し、書き換え装置は、作動データ記憶手段に格納された各作動データに対応する複数の更新データが格納されると共に、各更新データの各バージョン情報を記憶する更新データ記憶手段と、出力手段から出力された各作動データの各バージョン情報と、更新データ記憶手段に格納された各更新データの各バージョン情報とを比較することにより、各記憶領域のうちで、データの更新の対象となる対象記憶領域を選択する選択手段と、選択手段によって選択された対象記憶領域について、現在格納されている作動データを対応する更新データにて更新する更新手段と、を有することを特徴とする。
【0009】
この発明では、車載装置にて、記憶領域とこの記憶領域に格納されている作動データのバージョン情報とを出力手段が関連付けて書き換え装置に出力することにより、更新の対象となる対象記憶領域を選択する選択手段は、書き換え装置に設けられ得る。以上のように、各作動データの各バージョン情報と、各更新データの各バージョン情報とを比較して対象記憶領域を選択する選択手段を書き換え装置に設けることで、当該選択手段に相当する構成を車載装置から省き得るので、車載装置の複雑化は、回避可能となる。
【0010】
そうしたうえで、作動データ記憶手段における複数の記憶領域のうちで、選択手段によって選択された対象記憶領域について、現在格納されている作動データが、対応する更新データにて更新手段によって更新される。故に、作動データ記憶手段のデータの書き換えに要する時間は、当該記憶手段の全記憶領域のデータを書き換える形態よりも、短縮可能となる。したがって、車載装置の簡素な構成を維持しつつ、データの書き換えを高速化できる車両用のデータ書き換えシステムが実現される。
【0011】
請求項2に記載の発明では、車載装置は、車両に係わる情報を画像により表示する表示手段と、画像の描画に用いられる意匠データを、作動データとして記憶領域に格納する作動データ記憶手段と、を有することを特徴とする。
【0012】
この発明のように、表示手段に表示される画像の描画に用いられる意匠データの容量は、例えば車載装置の制御に用いられるプログラム等のデータの容量と比較して、大きくなる傾向にある。加えて、このような意匠データの更新される頻度は、車載装置の使用者の嗜好に対応するために、プラグラム等の更新頻度よりも、高くなる傾向にある。故に、作動データ記憶領域を複数の記憶領域に分割したうえで、複数の作動データを各記憶領域に振り分ける構成は、情報を画像により表示する表示手段を備えた車載装置に適用されることにより、書き換え処理の高速化に顕著に寄与することができるのである。
【0013】
そして、以上の請求項1又は2に記載のデータ書き換えシステムに用いられる請求項3に記載の車載装置は、簡素な構成を維持し得るので、当該装置の搭載される車両の低コスト化に寄与することができる。また、請求項1又は2に記載のデータ書き換えシステムに用いられる請求項4に記載のデータ書き換え装置は、車載装置のデータを高速で書き換えし得るので、データの書き換え作業の効率化に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態によるデータ書き換えシステムの構成を説明するための図である。
【図2】本発明の一実施形態において、コンビネーションメータのデータの書き換えに際し実施される操作及び処理を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。本発明の一実施形態による車両用のデータ書き換えシステム100は、コンビネーションメータ50及び書き換え装置30等によって構成されている。このデータ書き換えシステム100では、書き換え装置30が、コンビネーションメータ50に記憶されているデータを書き換える。以下、図1に基づいて、データ書き換えシステム100の構成を詳細に説明する。
【0016】
コンビネーションメータ50は、車両に搭載されている複数の車載装置のうちの一つであって、車両に係わる種々の情報を車両の使用者に示す。コンビネーションメータ50は、表示制御回路51、通信インターフェース55、表示部57、及び表示用のメモリ53を備えている。
【0017】
表示制御回路51は、マイコン等によって構成されており、各種の演算処理を行うプロセッサ、演算の作業領域として機能するRAM、並びに通信インターフェース55及びメモリ53とデータを交換するための入出力インターフェースを有している。通信インターフェース55は、車両に搭載されたController Area Network(CAN)バス10に接続されている。CANバス10は、車両に搭載された複数の車載装置を相互に接続してなる車内通信ネットワークにおいて、各車載装置間でのデータの伝送に用いられる伝送路である。表示部57は、複数の指針計器及び液晶ディスプレイ58等によって構成されており、車両に係わる情報を運転者に向けて表示する。表示部57は、例えば車両の速度を示す速度計81を、指針計器として有している。また、表示部57は、例えば燃料タンク内の燃料の残量を示す燃料計82の画像等、複数の画像を液晶ディスプレイ58に切り換えて表示することができる。
【0018】
メモリ53は、例えばフラッシュメモリ等の不揮発性の半導体メモリである。メモリ53は、速度計領域61、燃料計領域62、フォント領域66、及び背景領域67等の複数の記憶領域に分割されている。メモリ53には、複数の作動データ60が格納されている。複数の作動データ60は、表示制御回路51のプロセッサに読み込まれることによってコンビネーションメータ50の作動に用いられるソフトウェア群であって、プログラム及び意匠データ等を含んでいる。複数の作動データ60は、予め規定された記憶領域に振り分けられて格納されている。具体的には、速度計領域61には、速度計81の指針の制御に用いられるプログラムが作動データ60として格納されている。燃料計領域62には、燃料計82として表示される画像の描画に用いられるプログラムが作動データ60として格納されている。フォント領域66には、液晶ディスプレイ58に表示される文字の形状を規定する意匠データが作動データ60として格納されている。背景領域67には、液晶ディスプレイ58に表示される画像の背景部分の描画に用いられる意匠データが作動データ60として格納されている。これら各記憶領域に格納された各作動データ60には、改訂の履歴等を示す数字よりなる固有のバージョン情報が付与されている。メモリ53は、現在、各記憶領域に格納されている各作動データ60について、それぞれのバージョン情報を記憶している。
【0019】
書き換え装置30は、車両に搭載されたCANバス10と接続されることにより、コンビネーションメータ50を含む複数の車載装置と通信可能である。書き換え装置30は、各車載装置との通信により、これら装置に記憶されているデータを書き換えることができる。書き換え装置30は、書き換え制御回路31、通信インターフェース35、表示部37、及び書き換え用のメモリ33を備えている。
【0020】
書き換え制御回路31は、マイコン等によって構成されており、各種の演算処理を行うプロセッサ、演算の作業領域として機能するRAM、並びに通信インターフェース35及びメモリ33とデータを交換するための入出力インターフェースを有している。通信インターフェース35は、書き換え装置30の備える一方のコネクタを、車両に設けられた他方のコネクタに嵌合させることにより、車両に搭載されたCANバス10と通信可能に接続される。表示部37は、液晶ディスプレイ等によって構成されており、CANバス10を通じて書き換え制御回路31に取得される各車載装置に係わる情報を表示する。
【0021】
メモリ33は、例えばフラッシュメモリ等の不揮発性の半導体メモリである。メモリ33には、書き換え装置30の作動に用いられる複数のソフトウェアを格納している記憶領域とは別に、複数の更新データ40を格納するための複数の記憶領域が確保可能である。具体的に、表示用のメモリ53に格納された各作動データ60を書き換える場合、メモリ33には、当該メモリ53に設けられた各記憶領域と対応するように、速度計領域41、燃料計領域42、フォント領域46、背景領域47等が設けられる。これらの各記憶領域には、複数の更新データ40が振り分けられて格納される。各更新データ40には、各作動データ60と同様に固有のバージョン情報が付与されている。メモリ33は、各記憶領域に格納されている各更新データ40について、それぞれのバージョン情報を記憶している。
【0022】
以上のデータ書き換えシステム100において、書き換え装置30をCANバス10に接続して、コンビネーションメータ50の作動データ60を書き換える工程について、図2及び図1に基づいて詳細に説明する。書き換え装置30及びコンビネーションメータ50は、各制御回路31,51に所定のプログラムを実行させることにより、後述する各処理を実施する。図2には、書き換え作業を行う作業者の操作、書き換え装置30にて実施される処理、及びコンビネーションメータ50にて実施される処理が示されている。図2において、縦軸は、時間の経過、即ち操作及び処理の流れを示している。
【0023】
作業者は、作動データ60に対応する最新のソフトウェアが格納された記憶媒体90を書き換え装置30に接続させる。そして、作業者は、記憶媒体90に格納された最新のソフトウェアを、書き換え装置30のメモリ33に登録させる操作を実施する(S101)。すると、書き換え装置30は、最新のソフトウェアを記憶媒体90から読み込み、更新データ40としてメモリ33の各記憶領域に登録する(S102)。さらに、書き換え装置30は、更新データ40に付与されているバージョン情報を、更新データ40を格納した記憶領域と関連付けて、メモリ33に登録する(S103)。以上の登録処理が終了すると、書き換え装置30は、表示部37の表示によって登録処理の完了を作業者に通知する(S104)。
【0024】
作業者は、記憶媒体90を書き換え装置30から取り外した後、当該装置30を車両のCANバス10に接続する。そして、作業者は、コンビネーションメータ50に記憶されている作動データ60の書き換え処理を開始させる操作を、書き換え装置30に対し実施する(S105)。すると、書き換え装置30は、表示用のメモリ53の各記憶領域に現在格納されている各作動データ60の各バージョン情報を読み出すよう、コンビネーションメータ50に対し要求する(S106)。以上により、コンビネーションメータ50の表示制御回路51は、メモリ53から各作動データ60の各バージョン情報を読み出すと共に、これらの作動データ60を格納する各記憶領域と、各バージョン情報とを関連付けたテーブルを生成する。そして、コンビネーションメータ50は、生成したテーブルをCANバス10に出力することにより、全ての記憶領域分のバージョン情報を書き換え装置30に通知する(S107)。
【0025】
書き換え装置30は、上述の通知に基づいて、書き換え装置30から出力された各作動データ60の各バージョン情報と、メモリ33に格納された各更新データ40の各バージョン情報とを比較する。そして、書き換え装置30は、各作動データ60と各更新データ40のバージョンの違いの有無を確認し、作動データ60よりも新しい更新データ40が登録されている記憶領域を、各記憶領域のうちで更新の対象となる対象記憶領域69として選択する。さらに、書き換え装置30は、コンビネーションメータ50から取得したバージョン情報に関する通知を、表示部37に表示する(S108)。
【0026】
ここで、以上のS108の通知として、表示部37による表示は、以下のような項目を含むことが望ましい。一つ目は、対象記憶領域69について、現在の作動データ60のバージョン情報と更新データ40のバージョン情報とを並べて比較表示する項目である。二つ目は、対象記憶領域69に格納されている作動データ60の詳細と書き換え処理に要する時間とを表示する項目である。三つ目は、使用者の嗜好等に応じて目的別に対象記憶領域69を変更可能である旨を通知する項目である。
【0027】
書き換え装置30は、表示部37による作業者への通知を実施した後、対象記憶領域69を選択していた場合、コンビネーションメータ50に対し、外部からのデータの書き換え防止するセキュリティの解除を要求する(S109)。すると、コンビネーションメータ50は、対象記憶領域69の更新を許可する旨のセキュリティ解除の通知を、書き換え装置30に対し出力する(S110)。
【0028】
以上のような書き換え装置30の認証処理が完了すると、書き換え装置30は、コンビネーションメータ50に対し、表示制御回路51を書き換えモードに移行させるよう要求する(S111)。コンビネーションメータ50は、表示制御回路51の作動モードを、情報を表示するために通常のメータの制御を行う通常モードから、メモリ53の書き換え専用の制御を行う書き換えモードに切り換える。そして、コンビネーションメータ50は、書き換えモードへの移行が完了した旨を書き換え装置30に通知する(S112)。
【0029】
次に書き換え装置30は、対象記憶領域69のうちの一つをコンビネーションメータ50に通知する(S113)。そして、書き換え装置30は、選択された一つの対象記憶領域69について、作動データ60に上書きされる更新データ40を、コンビネーションメータ50に送信する(S114)。コンビネーションメータ50の表示制御回路51は、書き換え装置30から通知された対象記憶領域69に、当該装置30から受信した更新データ40を記憶させる。書き換え制御回路31は、表示制御回路51への通知及びデータの送信により、対象記憶領域69に現在格納されている作動データ60を、更新データ40によって更新する。そして、一つの対象記憶領域69について、作動データ60の更新が完了すると、コンビネーションメータ50は、更新が完了した旨を書き換え装置30に通知する(S115)。
【0030】
書き換え装置30は、更新の完了通知を取得したことに基づいて、更新された作動データ60のチェックをコンビネーションメータ50に対し要求する(S116)。この要求に基づいて、コンビネーションメータ50は、更新された最新の作動データ60を確認し、正常に更新が完了していた場合には、その旨を書き換え装置30に通知する(S117)。書き換え装置30及びコンビネーションメータ50は、以上のS113〜S117の書き換え処理を、対象記憶領域分繰り返す。
【0031】
以上の書き換え処理により、全ての対象記憶領域69について作動データ60の更新が完了すると、書き換え装置30は、書き換えモードを終了するようにコンビネーションメータ50に要求する(S118)。コンビネーションメータ50は、表示制御回路51の作動モードを、書き換えモードから通常モードに切り換える。そして、コンビネーションメータ50は、書き換えモードが終了した旨を書き換え装置30に通知する(S119)。
【0032】
書き換え装置30は、表示用のメモリ53の各記憶領域に現在格納されている各作動データ60の各バージョン情報を読み出すよう、コンビネーションメータ50に対し、再び要求する(S120)。以上により、コンビネーションメータ50の表示制御回路51は、メモリ53から各作動データ60の各バージョン情報を読み出すと共に、これらの作動データ60を格納する各記憶領域と、各バージョン情報とを関連付けたテーブルを再び生成する。そして、コンビネーションメータ50は、生成したテーブルをCANバス10に出力することにより、書き換え処理後における全ての記憶領域分のバージョン情報を、書き換え装置30に通知する(S121)。
【0033】
書き換え装置30は、上述の通知に基づいて、書き換え処理後の各作動データ60の各バージョン情報と、メモリ33に格納された各更新データ40の各バージョン情報とを比較することにより、作動データ60の書き換えが正常に完了したか否かを確認する。そして、書き換え装置30は、現在の作動データ60のバージョン情報を、書き換え処理前のバージョン情報と並べて表示部37に表示する。以上のようにして、書き換え処理後の作動データ60のバージョン情報が書き換え装置30から作業者に通知されて、コンビネーションメータ50のデータを書き換える工程は、完了する。
【0034】
ここまで説明した本実施形態では、各記憶領域と各バージョン情報とを関連付けたテーブルを表示制御回路51が書き換え装置30に出力する構成とすることにより、対象記憶領域69を選択する処理が、書き換え装置30にて実施可能となる。このような選択処理を、コンビネーションメータ50ではなく、書き換え装置30にて実施する構成とすることにより、書き換え制御回路31に相当する構成は、コンビネーションメータ50から省き得る。故に、コンビネーションメータ50の複雑化は、回避可能となる。
【0035】
そうしたうえで、表示用のメモリ53における複数の記憶領域のうちで、書き換え制御回路31によって選択された対象記憶領域69について、作動データ60の更新がなされる。故に、メモリ53のデータの書き換えに要する時間は、当該メモリ53の全ての記憶領域を書き換える形態よりも、短縮可能となる。したがって、コンビネーションメータ50の簡素な構成を維持しつつ、データの書き換えを高速化できる車両用のデータ書き換えシステム100が実現される。
【0036】
加えて本実施形態のような意匠データの容量は、プログラム等の容量と比較して大きくなる傾向にある。加えて、使用者の嗜好に対応するために、意匠データの更新される頻度は、プログラム等の更新頻度よりも、高くなる傾向にある。故に、メモリ33を複数の記憶領域に分割したうえで、複数の作動データ60を振り分ける構成は、車載される複数の車載装置のうちで特にコンビネーションメータ50に適用されることにより、書き換え処理の高速化に顕著に寄与することができるのである。したがって、液晶ディスプレイ58に表示される複数の画像のうちの一つ、例えば警告画像の文言を僅かに変更した場合では、書き換え処理は、迅速に終了し得る。
【0037】
また本実施形態によれば、書き換え装置30の認証処理がコンビネーションメータ50によって実施されるので、不正な書き換え装置によってメモリ53のデータが不正に書き換えられる事態は、回避され得る。そして、本実施形態では、上述の認証処理は、対象記憶領域69が選択された場合に、実施される。故に、現在の各作動データ60と各更新データ40のバージョン情報が全て一致しており、書き換え処理が実施されない場合には、認証処理も実施されない。以上により、不要な認証処理に時間を要してしまう事態は、回避可能となる。したがって、データの書き換え処理を高速化できる確実性は、さらに向上する。
【0038】
そして、本実施形態に用いられるコンビネーションメータ50は、簡素な構成を維持し得るので、当該メータ50の搭載される車両の低コスト化に寄与し得る。一方で、本実施形態に用いられるデータ書き換え装置30は、コンビネーションメータ50等のデータを高速で書き換えし得るので、データの書き換え作業の効率化に寄与することができる。
【0039】
尚、本実施形態において、書き換え制御回路31が特許請求の範囲に記載の「選択手段」に相当し、書き換え制御回路31及び通信インターフェース35が協働で特許請求の範囲に記載の「更新手段」に相当し、書き換え用のメモリ33が特許請求の範囲に記載の「更新データ記憶手段」に相当し、コンビネーションメータ50が特許請求の範囲に記載の「車載装置」に相当し、表示制御回路51及び通信インターフェース55が協働で特許請求の範囲に記載の「出力手段」に相当し、表示用のメモリ53が特許請求の範囲に記載の「作動データ記憶手段」に相当し、液晶ディスプレイ58特許請求の範囲に記載の「表示手段」に相当し、速度計領域61,燃料計領域62,フォント領域66,及び背景領域67が特許請求の範囲に記載の「記憶領域」にそれぞれ相当する。
【0040】
(他の実施形態)
以上、本発明による一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定して解釈されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0041】
上記実施形態において、車載装置としてのコンビネーションメータ50のデータを書き換えるシステムに本発明を適用した例を説明したが、本発明の適用対象となる車載装置は、上記のコンビネーションメータ50に限定されない。例えば、内燃機関を制御する機関制御装置、変速機を制御する変速機制御装置、制動機を制御するブレーキ制御装置等、種々の車載装置のデータを書き換えるシステムに、本発明は適用可能である。
【0042】
上記実施形態において、コンビネーションメータ50による書き換え装置30の認証処理は、更新の対象となる対象記憶領域69がある場合に実施されていた。しかし、コンビネーションメータと書き換え装置との間における認証処理は、作業者によって書き換え処理を開始させる操作が書き換え装置に対してなされた直後、バージョン情報の読み出しよりも前に、コンビネーションメータによって実施されてもよい。また、書き換え装置の認証を実施する構成は、コンビネーションメータとは異なる車載装置であってもよい。
【0043】
上記実施形態において、書き換え装置30は、CANバス10を通じてコンビネーションメータ50とデータをやり取りしていた。しかし、データの伝送路となるバスは、上述のCANバス10に限定されない。例えば、書き換え装置は、Local Interconnect Network(LIN)バス、及びFlexRayバス等に接続されて、これらの車内ネットワーク上にある車載装置のデータを書き換えるものであってもよい。さらに、書き換え装置は、上述のような有線ではなく、無線によって車載装置と通信可能に接続されるものであってもよい。
【0044】
上記実施形態では、メモリ33,53及び記憶媒体90として、フラッシュメモリが用いられていた。しかし、データの記憶が可能であれば、種々のストレージが、これら「記憶手段」及び記憶媒体として用いられてよい。例えば、EEPROM及びハードディスクドライブ等が、「記憶手段」及び記憶媒体として使用可能である。
【0045】
また、上記実施形態では、書き換え装置30が、記憶媒体90に格納されたソフトウェアを更新データ40としてメモリ33に登録していた。しかし、書き換え装置をコンピュータに接続することにより、このコンピュータによって、書き換え装置のメモリに最新のソフトウェアを登録する処理がなされてもよい。
【0046】
上記実施形態において、書き換え制御回路31は、表示制御回路51に対し対象記憶領域を通知したうえで更新データを送信することにより、当該回路51を介して、メモリ53に格納されたデータを間接的に更新していた。しかし、書き換え制御回路は、表示制御回路を介することなく、コンビネーションメータのメモリに格納されている作動データを直接的に更新してもよい。加えて、複数の対象記憶領域が選択された場合、データを更新する順序は、更新データの容量が大きいものから順であってもよく、当該容量が小さいものから順であってもよい。又は、各記憶領域に通し番号が付与されており、データを更新する順序は、当該通し番号に従って決定されてもよい。
【0047】
上記実施形態において、最新のソフトウェアのバージョン情報は、S103にてソフトウェアのデータとは別に書き換え装置30のメモリ33に登録されていた。しかし、ソフトウェアの本体にバージョン情報が組み込まれている形態であれば、書き換え装置は、S102にて登録されたソフトウェアからバージョン情報を取得してもよい。
【0048】
上記実施形態において、バージョン情報は、便宜的に一桁の数字で記載されていた。しかし、バージョン情報の記載は、上記実施形態のものに限定されない。バージョン情報は、例えば複数桁の数字の組み合わせによって記載されていてもよく、又は数字とアルファベットとを組みわせて記載されていてもよい。
【0049】
上記実施形態において、メモリ53は、複数の記憶領域に分割されていた。各記憶領域は、例えば所定の容量毎に分割されていてもよい。又は、格納されるソフトウェアの容量が予め把握できるのであれば、各記憶領域は、格納するソフトウェアの容量に応じて分割されていてもよい。加えて、一つのソフトウェアは、一つの記憶領域に格納されることが望ましいが、分割されたうえで複数の記憶領域に格納されていてもよい。
【0050】
上記実施形態では、所定のプログラムを実行する書き換え制御回路31等によって、特許請求の範囲に記載の「選択手段」及び「更新手段」に相当する機能が果たされていた。加えて、所定のプログラムを実行する表示制御回路51等によって特許請求の範囲に記載の「出力手段」に相当する機能が果たされていた。しかし、これらの手段に相当する構成は、上記のものに限定されず、適宜変更されてよい。例えば、複数の回路又は装置を組み合わせた構成が、上述の各手段に相当する機能を果たしていてもよい。加えて、これらの回路又は装置は、上記実施形態の各制御回路31,51のようなプログラムを実行することにより所定の機能を果たす構成であってもよく、又はプログラムによらないで所定の機能を果たす構成であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 CANバス、30 書き換え装置、31 書き換え制御回路(選択手段,更新手段)、33 メモリ(更新データ記憶手段)、35 通信インターフェース(更新手段)、40 更新データ、41 速度計領域、42 燃料計領域、46 フォント領域、47 背景領域、50 コンビネーションメータ(車載装置)、51 表示制御回路(出力手段)、53 メモリ(作動データ記憶手段)、55 通信インターフェース(出力手段)、57 表示部、58 液晶ディスプレイ(表示手段)、60 作動データ、61 速度計領域(記憶領域)、62 燃料計領域(記憶領域)、66 フォント領域(記憶領域)、67 背景領域(記憶領域)、69 対象記憶領域、81 速度計、82 燃料計、90 記憶媒体、100 データ書き換えシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車載装置と、前記車両に接続されて前記車載装置に記憶されたデータを書き換える書き換え装置と、を備える車両用のデータ書き換えシステムであって、
前記車載装置は、
複数の記憶領域に分割され、前記車載装置の作動に用いられる複数の作動データが振り分けられて各前記記憶領域に格納されると共に、各前記作動データの各バージョン情報を記憶する作動データ記憶手段と、
前記各記憶領域と前記各バージョン情報とを関連付けて、前記書き換え装置に出力する出力手段と、を有し、
前記書き換え装置は、
前記作動データ記憶手段に格納された前記各作動データに対応する複数の更新データが格納されると共に、各前記更新データの各バージョン情報を記憶する更新データ記憶手段と、
前記出力手段から出力された前記各作動データの各バージョン情報と、前記更新データ記憶手段に記憶された前記各更新データの各バージョン情報とを比較することにより、前記各記憶領域のうちで、データの更新の対象となる対象記憶領域を選択する選択手段と、
前記選択手段によって選択された前記対象記憶領域について、現在格納されている前記作動データを対応する前記更新データにて更新する更新手段と、を有することを特徴とするデータ書き換えシステム。
【請求項2】
前記車載装置は、
前記車両に係わる情報を画像により表示する表示手段と、
前記画像の描画に用いられる意匠データを、前記作動データとして前記記憶領域に格納する前記作動データ記憶手段と、を有することを特徴とする請求項1に記載のデータ書き換えシステム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のデータ書き換えシステムに用いられることを特徴とする車載装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のデータ書き換えシステムに用いられることを特徴とする書き換え装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−107497(P2013−107497A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253975(P2011−253975)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)