説明

車両用の冷却装置

【課題】衝突等による車両変形時に冷却器より突出配置されている流入及び流出用パイプと冷却器本体との連結部にかかる荷重を緩和させることが可能な車両用の冷却装置の提供にある。
【解決手段】ケース12と、該ケース12に収納されるとともに、表面に回路基板14を介して発熱素子としてのパワーデバイス13が搭載され、該パワーデバイス13からの熱を内部に設けられた冷媒流路21内を流通する冷却媒体としての冷却水に伝導し放熱する冷却器11とを備えた車両用の冷却装置10であって、冷却器11は、ケース12外部へと連通し、冷却水を流入又は流出する流入パイプ16及び流出パイプ17を備え、流入パイプ16及び流出パイプ17はケース12外部に取り付けられたパイプ規制部材25によりケース12に対して変位を規制されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用の冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1で開示された従来技術においては、発熱素子を冷却する冷却器としてのパワーモジュール用ヒートシンクが開示されている。パワーモジュール用ヒートシンクは表面側に絶縁回路基板を介して発熱素子が搭載され、発熱素子からの熱を内部に設けられた冷媒流路内を流通する冷却媒体に伝導し放熱するものであり、積層体と第1側板と第2側板とを備えている。積層体内には複数の平行流路が形成されており、第1側板及び第2側板には各平行流路に連通し、冷却媒体を各平行流路に流入させる流入路及び、冷却媒体を各平行流路から流出させる流出路が形成されている。流入路及び流出路はヒートシンクの第1側板及び第2側板より外側に突出するパイプ内にそれぞれ形成されており、各パイプは第1側板及び第2側板の側端部に連結固定されている。
【0003】
特許文献1には開示されていないが、図5に示すように、パワーモジュール用ヒートシンク50(以下、ヒートシンク50とする)はケース51内に収納されて、例えば、車両内の所定の位置に固定されているが、流入路及び流出路に相当する各パイプ52はケース51に形成された孔53に挿通されてケース51外へと突出するように配置されている。孔53と各パイプ52との間にはゴムシール54が装着されており、ゴムシール54を介して各パイプ52はケース51に支持されると共に、ゴムシール54によりケース51内とケース51外とがシールされている。ケース51より突出する各パイプ52の先端部は、ホース55を介して図示しない冷却媒体の貯留装置に連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−310485号公報(第7〜9頁、図1〜図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記構造を有する従来技術においては、ヒートシンク50を搭載した車両が衝突し車両変形が発生した場合には、ケース51外部に突出したパイプ52が周辺の他部品と干渉することにより、例えば、図5に二点鎖線で示すように、パイプ52に矢印方向の外力が作用し、ゴムシール54が上方に変形することによりパイプ52の先端部は上向きに変形する。このため、パイプ52のヒートシンク50本体への連結部に外力による変形荷重が直接作用し、連結部が損傷する恐れがある。その結果、損傷したパイプ52の連結部から冷却媒体がケース51内に漏れ、ケース51内部の電気部品が故障してしまう問題がある。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、衝突等による車両変形時に冷却器より突出配置されている流入及び流出用パイプと冷却器本体との連結部にかかる荷重を緩和させることが可能な車両用の冷却装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、ケースと、該ケースに収納されるとともに、表面に発熱素子が搭載され該発熱素子からの熱を内部に設けられた冷媒流路内を流通する冷却媒体へ伝導させることにより放熱する冷却器とを備えた車両用の冷却装置であって、前記冷却器は、ケース外部へと連通し、前記冷却媒体を流入又は流出するパイプを備え、前記パイプはケース外部に設けられたパイプ規制部材により前記ケースに対して変位を規制されていることを特徴とする。
【0008】
請求項1記載の発明によれば、衝突等による車両変形時にケース外部へと連通するパイプの先端部に外力が加わっても、パイプはケース外部に設けられたパイプ規制部材によりケースに対して変位を規制されていることによって、パイプと冷却器本体との連結部に作用する外力による変形荷重を緩和させることができる。よって、連結部の破損による冷却媒体のケース内への漏れを防止できる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の車両用の冷却装置において、前記パイプ規制部材は、中心部に前記パイプを挿通する貫通孔を有し、前記貫通孔の周囲に前記ケースへの取付孔が形成されていることを特徴とする。
請求項2記載の発明によれば、パイプ規制部材の中心部に形成された貫通孔にパイプを挿通させて、貫通孔の周囲に形成された取付孔にボルトを通してケースに固定すればよいので、取り付けが簡単であり、大きな設置スペースを必要としない。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2に記載の車両用の冷却装置において、前記パイプ規制部材は、前記パイプの軸心方向に突出する突出部を備え、該突出部には前記貫通孔が形成されていることを特徴とする。
請求項3記載の発明によれば、パイプの軸心方向に突出する突出部には貫通孔が形成されているので、貫通孔に挿通されるパイプの外周面と貫通孔の内周面との接触面積を大きくすることができ、パイプの変位規制を確実に行えると共に、パイプと冷却器本体との連結部に作用する変形荷重を一層緩和させることができる。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用の冷却装置において、前記ケースとケース外部へ連通する前記パイプとの間にゴムシールが設けられていることを特徴とする。
請求項4記載の発明によれば、ゴムシールによってパイプはケースに支持されると共に、ケース内とケース外とをシールすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ケース外部にパイプの変位を規制するパイプ規制部材を設けることにより、衝突等による車両変形時におけるパイプと冷却器本体との連結部にかかる荷重を緩和させることができ、連結部の破損による冷却媒体のケース内への漏れを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用の冷却装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る車両用の冷却装置の作用説明用の模式図である。(a)外力が作用した時の状態を示す、(b)比較例における外力作用時の状態を示す。
【図4】その他の実施形態に係るパイプ規制部材の全体構成を示す斜視図である。
【図5】従来技術における冷却装置の全体構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(本発明の実施形態)
以下、本発明の実施形態に係る車両用の冷却装置を図1〜図3に基づいて説明する。
図1に示すように、冷却装置10は、表面に絶縁性の回路基板14を介して発熱素子であるパワーデバイス13が搭載され、該回路基板14の下方に設けられ内部に冷却媒体が流通する冷媒流路が形成された箱型の筐体15を備えた冷却器11と、該冷却器11を収納するケース12とにより構成されている。なお、筐体15は冷却器11本体に相当する。冷却装置10は、車両におけるエンジンルーム内の所定位置に配設されている。筐体15及びケース12としてはアルミニウムなどの金属部材が用いられている。
冷却器11の上部には、流入パイプ16及び流出パイプ17がそれぞれ外側に突出するように設けられている。流入パイプ16及び流出パイプ17は、ケース12外部へと連通し、冷媒流路に冷却媒体を流入又は流出するパイプに相当する。
【0015】
図2に示すように、回路基板14はセラミック基板31の両面にエッチング処理により金属層18、19を形成させたものであり、回路基板14上の表面側の金属層18には複数個のパワーデバイス13が半田を介して接合されている。また、回路基板14の裏面側の金属層19は筐体15の上壁部15aと半田を介して接合されている。
筐体15内には金属製の波状フィン20が配設されており、波状フィン20の山頂部と谷底部とはそれぞれ筐体15の上壁部15a及び下壁部15bにロウ材によりロウ付けされている。このことにより、波状フィン20と筐体15の上壁部15a及び下壁部15bとの間には複数個の冷媒流路21が形成されている。冷媒流路21は、図2において、紙面に直角方向に形成されている。
【0016】
筐体15の上壁部15aの回路基板14に隣接する端部には、流入パイプ16が連結固定されている。流入パイプ16は円筒部16aと扁平部16bとを有し、内部に冷媒流路が形成された筒状のパイプである。扁平部16bの下部には孔16cが形成されている。また、扁平部16bにおける円筒部16aと反対側の端部は栓部材16dで密閉されている。
筐体15の上壁部15aに形成された入口孔22に対向して流入パイプ16の扁平部16bの孔16cを配置し、上壁部15aと扁平部16bとをロウ付けすることにより流入パイプ16が筐体15の上壁部15aに連結固定されている。この扁平部16bと上壁部15aとの接合部が流入パイプ16と筐体15との連結部に相当する。
なお、筐体15はケース12に図示しない固定手段により固定されている。
【0017】
流入パイプ16はケース12に形成された孔23に挿通されてケース12外へと突出するように配置されている。孔23と流入パイプ16の円筒部16aとの間には弾性を有するゴムシール24が装着されており、ゴムシール24によって流入パイプ16はケース12に支持されると共に、ケース12内とケース12外とがシールされた状態にある。
【0018】
ケース12外部には流入パイプ16のケース12に対する変位を規制するパイプ規制部材25が取り付けられている。パイプ規制部材25は、中心部に流入パイプ16を挿通する貫通孔26を有し、貫通孔26の周囲にケース12への取付孔27が2個形成された平板状の金属部材である。
パイプ規制部材25の貫通孔26に流入パイプ16の円筒部16aを挿通させ、取付孔27に通したネジ28をケース12に形成されたネジ孔29に螺合させることにより、パイプ規制部材25はケース12に取り付けられている。パイプ規制部材25によって流入パイプ16の中心軸線mを中心としたパイプの径方向の変位規制が行われている。
パイプ規制部材25より外側にある流入パイプ16の先端部は、ホース30を介して図示しない冷却媒体の貯留装置に連結されている。
なお、この実施形態においては、冷却媒体として冷却水を用いている。
【0019】
筐体15の上壁部15aの流入パイプ16が連結固定されている端部と反対側には、流出パイプ17が連結固定されている(図1参照)が取り付け構造は流入パイプ16の場合と同等なので説明を省略する。
流入パイプ16を通って筐体15内に導入された冷却水は、筐体15内の冷媒流路21を流通したのち流出パイプ17を通って外部に排出される。冷媒流路21の流通の途中でパワーデバイス13からの熱が冷却水に伝導され放熱されることで、パワーデバイス13の冷却が行われる。
【0020】
次に、上記構成を有する車両用の冷却装置10について作用説明を行う。
図3(a)に示すように、流入パイプ16を通って筐体15内に導入された冷却水は、筐体15内の冷媒流路21を流通し、流通の途中でパワーデバイス13からの熱が回路基板14を介して冷却水に伝導され放熱されて、パワーデバイス13の冷却が行われる。
【0021】
ここで、冷却装置10を搭載した車両が衝突し車両変形が発生した場合には、ケース12外部に突出した流入パイプ16が周辺の他部品と干渉することにより、例えば、図3(a)に二点鎖線で示すように、流入パイプ16の先端部に矢印方向の外力が作用する。しかし、流入パイプ16はケース12外部に設けられたパイプ規制部材25によってパイプの径方向の変位規制が行われた状態にあるので、ケース12内部にあり流入パイプ16と筐体15との連結部、即ち、扁平部16bと上壁部15aとの接合部に作用する外力による変形荷重を緩和させることができる。よって、接合部の破損による冷却水のケース12内への漏れを防止できる。
【0022】
もし、流入パイプ16の先端部に作用する外力が大きい場合には、図3(a)に二点鎖線で示すように、流入パイプ16の先端部はパイプ規制部材25の貫通孔26の箇所で折れ曲がり変形する。このことにより、流入パイプ16の折れ曲がり変形部に亀裂が発生して流入パイプ16内の冷却水はこの亀裂より外部に漏れる。しかし、ケース12内部とはゴムシール24によりシールされているので、この漏れた冷却水がケース12内部に侵入することが防止される。
【0023】
一方、図3(b)では、パイプ規制部材25が設けられていない比較例を示している。この場合には、流入パイプ16の先端部に矢印方向の外力が作用すると、流入パイプ16はゴムシール24で支持されているだけなので、図3(b)に二点鎖線で示すように、ゴムシール24が上方に変形することにより流入パイプ16の全体が上向きに変形する。このため、流入パイプ16の扁平部16bと筐体15の上壁部15aとの接合部に変形荷重が直接作用し、接合部が剥離損傷してしまう。その結果、剥離した部分より冷却水がケース12内部に漏れ、回路基板14上の電気部品がショートし故障してしまう。
【0024】
このように、パイプ規制部材25を設けることにより、扁平部16bと上壁部15aとの接合部の破損を防いで冷却水のケース12内への漏れを防止できるので、回路基板14上の電気部品が漏れた冷却水によって故障することを防止できる。
なお、流出パイプ17についても上記流入パイプ16の場合と同等の作用効果を得ることができる。
【0025】
この本発明の実施形態に係る車両用の冷却装置10によれば以下の効果を奏する。
(1)ケース12外部に流入パイプ16の径方向の変位を規制するパイプ規制部材25が取り付けられていることにより、例えば、車両が衝突し車両変形が発生した場合でも、流入パイプ16の扁平部16bと筐体15の上壁部15aとの接合部に作用する外力による変形荷重を緩和させることができる。よって、接合部の破損による冷却水のケース12内への漏れを防止でき、回路基板14上の電気部品が漏れた冷却水によって故障することを防止できる。
(2)流入パイプ16の先端部に作用する外力が大きい場合であっても、流入パイプ16の先端部はパイプ規制部材25の貫通孔26の箇所で折れ曲がり変形する。このことにより、流入パイプ16の折れ曲がり変形部に亀裂が発生して流入パイプ16内の冷却水はこの亀裂より外部に漏れる。しかし、ケース12内部とはゴムシール24によりシールされているので、この漏れた冷却水がケース12内部に侵入することが防止される。
(3)パイプ規制部材25は、中心部に流入パイプ16を挿通する貫通孔26を有し、貫通孔26の周囲にケース12への取付孔27が2個形成された構造であり、パイプ規制部材25の貫通孔26に流入パイプ16の円筒部16aを挿通させ、取付孔27に通したネジ28をケース12に形成されたネジ孔29に螺合させればよい。よって、取り付けが簡単であり、大きな設置スペースを必要としない利点を有する。
【0026】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更しても良い。
○ 本発明の実施形態では、平板状のパイプ規制部材25の中心部に流入パイプ16を挿通する貫通孔26を設けるとして説明したが、図4に示すように、パイプ規制部材40が流入パイプ16の軸心方向に突出する突出部41を備え、該突出部41に貫通孔42が形成されていてもよい。この場合には、貫通孔42に挿通される流入パイプ16の外周面と貫通孔42の内周面との接触面積を大きくすることができ、流入パイプ16の変位規制を確実に行えると共に、流入パイプ16と筐体15との連結部に作用する変形荷重を一層緩和させることができる。
○ 上記突出部41をバーリングにより形成してもよい。この場合には、板材にバーリング加工を行うだけで突出部を形成することができるので、部品コストを低減可能である。
○ 本発明の実施形態では、冷却器11の表面に回路基板14を介してパワーデバイス13が搭載されているとして説明したが、冷却器11の表面と裏面の両面に回路基板14を介してパワーデバイス13を搭載しても良い。
○ 本発明の実施形態において、パイプ規制部材25の貫通孔26と該貫通孔26に挿通される流入パイプ16の円筒部16aとはある程度遊嵌していても良い。すなわち、貫通孔26と円筒部16aとの間に若干の隙間があっても、流入パイプ16の先端部に作用する外力による流入パイプ16の径方向への変位を微少レベルに抑えることができ、流入パイプ16と筐体15との連結部に作用する変形荷重を緩和させることができる。
【符号の説明】
【0027】
10 冷却装置
11 冷却器
12 ケース
13 発熱素子
14 回路基板
15 筐体
16 流入パイプ
17 流出パイプ
21 冷媒流路
24 ゴムシール
25 パイプ規制部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、該ケースに収納されるとともに、表面に発熱素子が搭載され該発熱素子からの熱を内部に設けられた冷媒流路内を流通する冷却媒体へ伝導させることにより放熱する冷却器とを備えた車両用の冷却装置であって、
前記冷却器は、ケース外部へと連通し、前記冷却媒体を流入又は流出するパイプを備え、
前記パイプはケース外部に設けられたパイプ規制部材により前記ケースに対して変位を規制されていることを特徴とする車両用の冷却装置。
【請求項2】
前記パイプ規制部材は、中心部に前記パイプを挿通する貫通孔を有し、前記貫通孔の周囲に前記ケースへの取付孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用の冷却装置。
【請求項3】
前記パイプ規制部材は、前記パイプの軸心方向に突出する突出部を備え、該突出部には前記貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用の冷却装置。
【請求項4】
前記ケースとケース外部へ連通する前記パイプとの間にゴムシールが設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−163018(P2010−163018A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−6338(P2009−6338)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】