車両用の導風ダクト構造
【課題】側壁ダクトの剛性を確保するとともに、側壁ダクトから補強用の骨材を不要にすることができる車両用の導風ダクト構造を提供する。
【解決手段】車両用の導風ダクト構造20は、フロントバンパフェイス19を支えるフロントバンパビーム18および冷却機器16を支えるフロントバルクヘッド14間に設けられ、車両前方の空気を冷却機器16側に冷却風として導くものである。導風ダクト構造20は、冷却機器の左右側に設けられ、かつ車体前後方向に延出されたゴム製の左右の側壁ダクト46,68と、冷却機器の下側に設けられた硬質樹脂製の下部ダクト44とを備えている。下部ダクト44に左右の側壁ダクトの下部54,74がそれぞれ設けられている。
【解決手段】車両用の導風ダクト構造20は、フロントバンパフェイス19を支えるフロントバンパビーム18および冷却機器16を支えるフロントバルクヘッド14間に設けられ、車両前方の空気を冷却機器16側に冷却風として導くものである。導風ダクト構造20は、冷却機器の左右側に設けられ、かつ車体前後方向に延出されたゴム製の左右の側壁ダクト46,68と、冷却機器の下側に設けられた硬質樹脂製の下部ダクト44とを備えている。下部ダクト44に左右の側壁ダクトの下部54,74がそれぞれ設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントバンパビームおよびフロントバルクヘッド間に設けられ、車両前方の空気を冷却機器側に冷却風として導く車両用の導風ダクト構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の導風ダクト構造のなかには、冷却装置のケース内に冷却機器(ラジエータなど)を収納し、ケースの左右側に導風ダクト(以下、「側壁ダクト」という)を備えたものがある。
この側壁ダクトは、側壁板状のダクト本体がゴム材で形成されている。このため、ダクト本体の剛性を確保するためにダクト本体を補強する骨部が設けられている。
【0003】
この導風ダクト構造によれば、車両の走行時に、左右の側壁ダクトで車両前方の空気をケース内に冷却風(走行風)として導き、導いた冷却風で冷却機器を冷却することが可能である(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−15487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の導風ダクト構造は、側壁ダクトのダクト本体がゴム材で形成されている。
このため、ダクト本体の剛性を確保するために、ダクト本体を補強する骨部が必要とされ、そのことが部品点数を抑える妨げになっていた。
【0006】
本発明は、側壁ダクトの剛性を確保するとともに、側壁ダクトから補強用の骨材を不要にすることができる車両用の導風ダクト構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、フロントバンパフェイスを支えるフロントバンパビームおよび冷却機器を支えるフロントバルクヘッド間に設けられ、車両前方の空気を前記冷却機器側に冷却風として導く車両用の導風ダクト構造において、前記冷却機器の左右側に設けられ、かつ車体前後方向に延出されたゴム製の側壁ダクトと、前記冷却機器の下側に設けられた硬質樹脂製の下部ダクトと、を備え、前記下部ダクトに前記左右の側壁ダクトの下端部がそれぞれ設けられたことを特徴とする。
【0008】
請求項2は、前記下部ダクトは、衝突エネルギーを吸収するために衝突エネルギー吸収構造を有することを特徴とする。
【0009】
請求項3は、前記下部ダクトは、前記フロントバルクヘッドに後端部が設けられ、前記後端部から車体前方に向けて上り勾配に傾斜部が張り出され、前記傾斜部から車体前方に向けて略水平に水平部が張り出され、前記水平部および前記傾斜部を低剛性に形成することで前記衝突エネルギー吸収構造とし、前記水平部から車体前方に向けて前端部が張り出され、前記前端部に補強リブが設けられることで高剛性に形成し、前記高剛性の前端部で前記フロントバンパフェイスを支持可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明では、冷却機器の左右側にゴム製の側壁ダクトを設けた。そして、左右の側壁ダクトの下端部を下部ダクトに設けることで、左右の側壁ダクトを下部ダクトで補強して左右の側壁ダクトの剛性を高めることができる。
すなわち、下部ダクトを左右の側壁ダクトの補強部材として兼用することができる。
よって、左右の側壁ダクトの剛性を確保するために、従来必要とされていた骨材を不要にできる。
このように、左右の側壁ダクトの下端部を下部ダクトに設けることで、側壁ダクトの剛性を確保するとともに、側壁ダクトから補強用の骨材を不要にすることができる
【0011】
請求項2に係る発明では、下部ダクトが衝突エネルギー吸収構造を有している。
これにより、車両が障害物に衝突した場合に、衝突エネルギー吸収構造で衝突エネルギーを吸収して障害物を保護することができる。
【0012】
請求項3に係る発明では、下部ダクトの後端部から車体前方に向けて上り勾配に傾斜部を張り出し、傾斜部から車体前方に向けて略水平に水平部を張り出した。そして、水平部および傾斜部を低剛性に形成することで衝突エネルギー吸収構造とした。
これにより、車両が障害物に衝突した場合に、水平部および傾斜部を折り曲げることで、衝突エネルギー吸収構造で衝突エネルギーを吸収して障害物を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る車両用の導風ダクト構造を備えた車体前部構造を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る車両用の導風ダクト構造を示す斜視図である。
【図3】図2の左側部ダクトユニットを示す斜視図である。
【図4】図2の右側部ダクトユニットを示す斜視図である。
【図5】図1の5−5線断面図である。
【図6】本発明に係る導風ダクト構造の下部ダクトを車体前方下方から見た状態を示す斜視図である。
【図7】図1の7−7線断面図である。
【図8】図7の下部ダクトから下バンパフェイスを分解した状態を示す断面図である。
【図9】図1の9−9線断面図である。
【図10】本発明に係る右シール部をラジエータから離した状態に保つ例を説明する図である。
【図11】本発明に係る左右の側壁ダクトで冷却風を導く例を説明する図である。
【図12】本発明に係る右シール部をラジエータに接触させる例を説明する図である。
【図13】本発明に係る導風ダクト構造の下部ダクトで衝突エネルギーを吸収する例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は運転者から見た方向にしたがい、前側をFr、後側をRr、左側をL、右側をRとして示す。
【実施例】
【0015】
実施例に係る車両用の導風ダクト構造20について説明する。
図1に示すように、車体前部構造10は、車体前後方向に延出された左右のフロントサイドフレーム11,12と、左右のフロントサイドフレーム11,12のそれぞれの前端部に設けられたフロントバルクヘッド14と、フロントバルクヘッド14に設けられた(支えられた)冷却機器16と、左右のフロントサイドフレーム11,12の前端部にそれぞれ連結されたフロントバンパビーム18と、フロントバルクヘッド14およびフロントバンパビーム18に設けられた導風ダクト構造(車両用の導風ダクト構造)20とを備えている。
【0016】
左フロントサイドフレーム11の車体外側(左側)に左アッパメンバー22が設けられている。
右フロントサイドフレーム12の車体外側(右側)に右アッパメンバー23が設けられている。
【0017】
フロントバルクヘッド14は、左フロントサイドフレーム11に設けられた左ステイ25と、右フロントサイドフレーム12に設けられた右ステイ26(図5参照)と、左右のステイ25,26の上端部に架け渡されたアッパメンバー27と、左右のステイの下端部に架け渡されたロアメンバー28(図5参照)とを備えている。
【0018】
フロントバルクヘッド14に冷却機器16が支えられることで、フロントバルクヘッド14の前方、またはフロントバルクヘッド14内に冷却機器16が設けられている。
冷却機器16は、ラジエータ31やコンデンサ32を備え、フロントバルクヘッド14の前方にラジエータ31が設けられ、ラジエータ31の前方にコンデンサ32が設けられている(図5も参照)。
ラジエータ31は、エンジンの冷却水を外気(空気)で冷却するための熱交換器である。
コンデンサ32は、エアコン(空調)の冷凍サイクルで使用する冷媒を外気(空気)で冷却するための熱交換器である。
【0019】
アッパメンバー27の左端部および左アッパメンバー22が左連結バー34で連結されている。
アッパメンバー27の右端部および右アッパメンバー23が右連結バー35で連結されている。
【0020】
フロントバンパビーム18は、左端部18a近傍の部位18bが左フロントサイドフレーム11の前端部11aにボルト(図示せず)で取り付けられ、右端部18c近傍の部位18dが右フロントサイドフレーム12の前端部12aにボルト(図示せず)で取り付けられ、左端部18aが左アッパメンバー22の前端部22aにボルト38…で取り付けられ、右端部18cが右アッパメンバー23の前端部23aにボルト38…で取り付けられている。
【0021】
フロントバンパビーム18の車体前方側にフロントバンパフェイス(フロントバンパ表皮)19(図7参照)が設けられている。
【0022】
導風ダクト構造20は、フロントバルクヘッド14およびフロントバンパビーム18間に設けられ、車両前方の空気を冷却機器16側に冷却風として導くものである。
この導風ダクト構造20は、冷却機器16の左右側にそれぞれ設けられた左右の側壁ダクトユニット41,42と、左右の側壁ダクトユニット41,42のそれぞれの上端部に連結された上部ダクト43と、左右の側壁ダクトユニット41,42のそれぞれの下端部に連結された下部ダクト44とを備えている。
【0023】
図2、図3に示すように、左側壁ダクトユニット41は、ゴム材で形成された部材であり、冷却機器16(図1参照)の左側に設けられた左側壁ダクト(側壁ダクト)46と、左側壁ダクト46に設けられた左シール部47とを備えている。
【0024】
ゴム材としては、一例として、オレフィン系の熱可塑性エラストマー(TPO、すなわちThermo Plastic Olefin)が用いられる。
熱可塑性エラストマーは、常温ではゴムの特性を備え、高温では熱可塑性プラスチックと同様に、軟化して圧縮、押出、射出などが可能な特性を備えている。
よって、熱可塑性エラストマーを高温で軟化させることにより、左側壁ダクトユニット41を容易に成形することができる。
【0025】
左側壁ダクト46は、車体前後方向に延出され、車両前方の空気を冷却機器16(図1参照)側に冷却風(走行風)として導くダクトである。
この左側壁ダクト46は、上部51が車体前方に向けて下り勾配に延出され、前部52に収納凹部53が形成され、下部(下端部)54が略水平に形成され、後部55が略鉛直に形成された板状の部材である。
収納凹部53は、フロントバンパビーム18(図1参照)を収容するために側面視で略コ字状に形成された窪みである。
【0026】
さらに、左側壁ダクト46は、上部51から車体外側に向けて折り曲げられた上折曲片57と、前部下半部52aから車体外側に向けて折り曲げられた前折曲片58と、後部55から車体外側に向けて折り曲げられたステイ取付片61と、収納凹部53から車体内側に向けて折り曲げられたバンパ取付フラップ(取付フラップ)62とを有している。
【0027】
また、左側壁ダクト46は、略中央部に膨出部63が設けられている。膨出部63は、レシーバタンク33(図5参照)を収容するために車体外側に向けて膨出された部位である。
レシーバタンク33は、コンデンサ32で液化した冷媒を一時的に蓄えるタンクである。
【0028】
左側壁ダクト46に上折曲片57、前折曲片58、ステイ取付片61、バンパ取付フラップ62および膨出部63を形成することで、左側壁ダクト46の剛性を高めることができる。
【0029】
ステイ取付片61は、ステイ取付孔61a…が形成されている。ステイ取付孔61a…に差し込んだステイクリップ64…で左ステイ25(図1、図5参照)にステイ取付片61が取り付けられている。
【0030】
バンパ取付フラップ62は、左側壁ダクト46の側壁に対して略直交するように設けられている。このバンパ取付フラップ62にバンパ取付孔62a…が形成されている。
バンパ取付孔62a…に差し込んだバンパクリップ65…でバンパ取付フラップ62がフロントバンパビーム18に取り付けられている(設けられている)(図5も参照)。
【0031】
さらに、左側壁ダクト46は、下部54にダクト取付孔(取付孔)54a…が形成されている。
また、下部ダクト44の左端部44bにダクト取付孔(取付孔)44d…が形成されている。
ダクト取付孔54a…およびダクト取付孔44d…にダクトクリップ(クリップ)66…が差し込まれている(嵌合されている)。
これにより、下部ダクト44の左端部44bに下部54がダクトクリップ66…で取り付けられている(設けられている)。
【0032】
以上説明したように、左側壁ダクト46を各クリップ64…,65…,66…で左ステイ25、フロントバンパビーム18や下部ダクト44に取り付けることで、左側壁ダクト46がラジエータ31やコンデンサ32の車幅方向左側に配置されている(図1、図5参照)。
【0033】
図5に示すように、左シール部47は、左側壁ダクト46の内壁面46aからラジエータ31の左側縁前面(側縁前面)31aに向けて略車幅方向に張り出された弾性変形可能なゴム製の部材である。
なお、左シール部47については後で詳しく説明する。
【0034】
図2、図4に示すように、右側壁ダクトユニット42は、左側壁ダクトユニット41と同様に、ゴム材で形成された部材である。
この右側壁ダクトユニット42は、冷却機器16(図1参照)の右側に設けられた右側壁ダクト(側壁ダクト)68と、右側壁ダクト68に設けられた右シール部69とを備えている。
【0035】
ゴム材としては、左側壁ダクトユニット41と同様に、オレフィン系の熱可塑性エラストマー(TPO、すなわちThermo Plastic Olefin)などが用いられる。
よって、左側壁ダクトユニット41と同様に、熱可塑性エラストマーを高温で軟化させることにより、右側壁ダクトユニット42を容易に成形することができる。
【0036】
右側壁ダクト68は、左側壁ダクト46と略左右対称の部材であり、車体前後方向に延出され、車両前方の空気を冷却機器16(図1参照)側に冷却風(走行風)として導くダクトである。
この右側壁ダクト68は、上部71が車体前方に向けて下り勾配に延出され、前部72に収納凹部73が形成され、下部(下端部)74が略水平に形成され、後部75が略鉛直に形成された板状の部材である。
収納凹部73は、フロントバンパビーム18(図1参照)を収容するために側面視で略コ字状に形成された窪みである。
【0037】
さらに、右側壁ダクト68は、上部71から車体外側に向けて折り曲げられた上折曲片77と、前部下半部72aから車体外側に向けて折り曲げられた前折曲片78と、後部75から車体外側に向けて折り曲げられたステイ取付片81と、収納凹部73から車体内側に向けて折り曲げられたバンパ取付フラップ(取付フラップ)82とを有している。
【0038】
右側壁ダクト68に上折曲片77、前折曲片78、ステイ取付片81およびバンパ取付フラップ82を形成することで、右側壁ダクト68の剛性を高めることができる。
【0039】
ステイ取付片81は、ステイ取付孔81a…が形成されている。ステイ取付孔81a…に差し込んだステイクリップ84…で右ステイ26(図1、図5参照)にステイ取付片81が取り付けられている。
【0040】
バンパ取付フラップ82は、右側壁ダクト68の側壁に対して略直交するように設けられている。このバンパ取付フラップ82にバンパ取付孔82a…が形成されている。
バンパ取付孔82a…に差し込んだバンパクリップ85…でフロントバンパビーム18にバンパ取付フラップ82が取り付けられている(設けられている)(図5も参照)。
【0041】
さらに、右側壁ダクト68は、下部74にダクト取付孔(取付孔)74a…が形成されている。
また、下部ダクト44の右端部44cにダクト取付孔(取付孔)44e…が形成されている。
ダクト取付孔74a…およびダクト取付孔44e…にダクトクリップ(クリップ)86…が差し込まれている(嵌合されている)。
これにより、下部ダクト44の右端部44cに下部74がダクトクリップ86…で取り付けられている(設けられている)。
【0042】
以上説明したように、右側壁ダクト68を各クリップ84…,85…,86…で右ステイ26、フロントバンパビーム18や下部ダクト44に取り付けることで、右側壁ダクト68がラジエータ31やコンデンサ32の車幅方向右側に配置されている(図1、図5参照)。
【0043】
また、前述したように、左側壁ダクト46の側壁に対してバンパ取付フラップ62を略直交するように設け、右側壁ダクト68の側壁に対してバンパ取付フラップ82を略直交するように設けた。
これにより、左側壁ダクト46の側壁をバンパ取付フラップ62で補強することができ、かつ、右側壁ダクト68をバンパ取付フラップ82で補強することができる。
【0044】
さらに、バンパ取付フラップ62をフロントバンパビーム18に設け、バンパ取付フラップ82をフロントバンパビーム18に設けた。
これにより、フロントバンパビーム18で左右の側壁ダクト46,68を補強して左右の側壁ダクト46,68の剛性を高めることができる。
すなわち、フロントバンパビーム18を左右の側壁ダクト46,68の補強部材として兼用することができる。
【0045】
加えて、前述したように、下部ダクト44の左端部44bに左側壁ダクト46(具体的には、下部54)がダクトクリップ66…で設けられ、下部ダクト44の右端部44cに右側壁ダクト68(具体的には、下部74)がダクトクリップ86…で設けられている。
よって、左右の側壁ダクト46,68を下部ダクト44で補強して左右の側壁ダクト46,68の剛性を高めることができる。
【0046】
すなわち、下部ダクト44を左右の側壁ダクト46,68の補強部材として兼用することができる。
よって、左右の側壁ダクト46,68の剛性を確保するために、従来必要とされていた骨材を不要にできる。
このように、左右の側壁ダクト46,68の下部54,74を下部ダクト44に設けることで、左右の側壁ダクト46,68の剛性を確保するとともに、左右の側壁ダクト46,68から補強用の骨材を不要にすることができる
【0047】
また、左側壁ダクト46の下部54にダクト取付孔54a…を設け、下部ダクト44の左端部44bにダクト取付孔44d…を設けた。さらに、右側壁ダクト68の下部74にダクト取付孔74a…を設け、下部ダクト44の右端部44cにダクト取付孔44e…を設けた。
【0048】
ここで、左右の側壁ダクト46,68をゴム材で形成することで下部ダクト44と比して柔らかい部材とした。
よって、左側壁ダクト46のダクト取付孔54a…を下部ダクト44のダクト取付孔44d…に簡単に合わせることができる。
これにより、左側壁ダクト46のダクト取付孔54a…および下部ダクト44のダクト取付孔44d…にダクトクリップ66…を容易に嵌合させることができる。
【0049】
同様に、右側壁ダクト68のダクト取付孔74a…を下部ダクト44のダクト取付孔44e…に簡単に合わせることができる。
これにより、右側壁ダクト68のダクト取付孔74a…および下部ダクト44のダクト取付孔44e…にダクトクリップ86…を容易に嵌合させることができる。
【0050】
図5に示すように、右シール部69は、右側壁ダクト68の内壁面68aからラジエータ31の右側縁前面(側縁前面)31bに向けて略車幅方向に張り出された弾性変形可能なゴム製の部材である。
【0051】
右シール部69は、先端部69aがラジエータ31の右側縁前面31bまで延出され、かつ、ラジエータ31の右側縁前面31bから先端部69aが車体前方側に所定間隔S1だけ離間して配置されている。
【0052】
この右シール部69は、後壁面69bに補強用の右リブ93…が設けられている。
右リブ93…は、右シール部69の後壁面69bから右側壁ダクト68の内壁面68aに連なるように略三角形に形成されている。
【0053】
この右リブ93は、右シール部69に沿って所定間隔をおいて複数個設けられている(図4参照)。
これにより、補強用の右リブ93…で右シール部69の剛性を好適に設定することが可能になり、右シール部69の精度を高めることができる。
【0054】
左シール部47は、右シール部69と左右対称の部材であり、先端部47aがラジエータ31の左側縁前面31aまで延出され、かつ、ラジエータ31の左側縁前面31aから先端部47aが車体前方側に所定間隔S1だけ離間して配置されている。
【0055】
この左シール部47は、後壁面47bに補強用の左リブ91…が設けられている。
左リブ91…は、左シール部47の後壁面47bから左側壁ダクト46の内壁面46aに連なるように略三角形に形成されている。
【0056】
この左リブ91は、右リブ93と同様に、左シール部47に沿って所定間隔をおいて複数個設けられている。
これにより、補強用の左リブ91…で左シール部47の剛性を好適に設定することが可能になり、左シール部47の精度を高めることができる。
【0057】
なお、左右のシール部47,69をラジエータ31の左右の側縁前面31a,31bから車体前方側に所定間隔S1だけ離間させた理由については図10で詳しく説明する。
【0058】
ここで、左右の側壁ダクトユニット41,42をそれぞれ単一のゴム材で形成(成形)した。
左側壁ダクトユニット41の左側壁ダクト46および左シール部47を2色成形(二色成形)を用いることなく単一のゴム材で成形できる。
右側壁ダクトユニット42の右側壁ダクト68および右シール部69を2色成形を用いることなく単一のゴム材で成形できる。
【0059】
これに対して、側壁ダクトを樹脂材で形成し、シール部をゴム材で形成する場合、側壁ダクトおよびシール部を2色成形で成形する必要がある。
これにより、左右の側壁ダクトユニット41,42を単一のゴム材で形成することで、左右の側壁ダクトユニット41,42の成形が容易になり、左右の側壁ダクトユニット41,42のコストを抑えることができる。
【0060】
図1、図2に示すように、左右の側壁ダクト46,68のそれぞれの上部51,71側に上部ダクト43が設けられている。
上部ダクト43は、平面視で略矩形状に形成された硬質樹脂製(樹脂製)の板材である。
硬質樹脂材としては、一例として、ポリプロピレン樹脂(PP)が用いられる。
【0061】
この上部ダクト43は、後部94にアッパ取付孔43a…が形成され、アッパ取付孔43a…に差し込んだアッパクリップ95…でフロントバルクヘッド14のアッパメンバー27に取り付けられている。
この上部ダクト43は、冷却機器16(ラジエータ31やコンデンサ32)の上側に設けられている。
【0062】
このように、冷却機器16の上側に硬質樹脂製の上部ダクト43を設けることで、上部ダクト43を空気のガイド面とすることができる。
これにより、車両前方の空気を上部ダクト43で冷却機器16側に冷却風として一層良好に導くことができる。
【0063】
さらに、冷却機器16の上側に硬質樹脂製の上部ダクト43を設けることで、上部ダクト43でフロントバルクヘッド14や冷却機器16を覆うことができる。
これにより、エンジンフード(図示せず)を開けた際に、フロントバルクヘッド14や冷却機器16を上部ダクト43で隠すことができるので、見栄えを良好に確保して商品性の向上を図ることができる。
【0064】
また、左右の側壁ダクト46,68のそれぞれの下部54,74に下部ダクト44が連結されている(設けられている)。
下部ダクト44は、平面視で略矩形状に形成された硬質樹脂製(樹脂製)の板材である。
硬質樹脂材としては、一例として、ポリプロピレン樹脂(PP)が用いられる。
【0065】
この下部ダクト44は、後部97にロア取付孔44a…が形成され、ロア取付孔44a…に差し込んだロアクリップ96でフロントバルクヘッド14のロアメンバー28(図5参照)に取り付けられている。
この下部ダクト44は、冷却機器16(ラジエータ31やコンデンサ32)の下側に設けられている。
なお、下部ダクト44については図6〜図9で詳しく説明する。
【0066】
以上説明したように、ラジエータ31やコンデンサ32の左右側に左右の側壁ダクトユニット41,42をそれぞれ配置し、ラジエータ31やコンデンサ32の上下側に上下部のダクト43,44をそれぞれ配置することで、左右の側壁ダクトユニット41,42および上下部のダクト43,44はラジエータ31やコンデンサ32を囲むように設けられている。
すなわち、左右の側壁ダクトユニット41,42および上下部のダクト43,44は、正面視で略矩形状に形成されている。
【0067】
また、車両用の導風ダクト構造20を左右の側壁ダクト46,68および上下部のダクト43,44の4つのダクトに分割した。そして、左右の側壁ダクト46,68をゴム材で形成し、上下部のダクト43,44を硬質樹脂材で形成した。
【0068】
このように、車両用の導風ダクト構造20を左右の側壁ダクト46,68および上下部のダクト43,44に4分割することで、導風ダクト構造20の取付作業を容易におこなうことができる。
さらに、上下部のダクト43,44を硬質樹脂材で形成することで、ゴム材で形成した場合と比べて取扱いの容易化が図れ、導風ダクト構造20の取付作業を一層容易におこなうことができる。
【0069】
図6に示すように、下部ダクト44は、フロントバルクヘッド14に設けられた後端部101と、後端部101の前側に設けられた衝突エネルギー吸収構造102と、衝突エネルギー吸収構造102から下方に突出された複数の突出支持部103と、衝突エネルギー吸収構造102の前側に設けられた張出部104とを有する。
【0070】
図7、図8に示すように、下部ダクト44の後端部101は、フロントバルクヘッド14のロアメンバー28の前端部28aに沿って略水平に形成されている。
ロアメンバー28の前端部28aに下部ダクト44の後端部101が載置され、この状態で前端部28aに後端部101が複数のロアクリップ96(図2も参照)で取り付けられている(設けられている)。
【0071】
図9に示すように、衝突エネルギー吸収構造102は、後端部101から車体前方に向けて上り勾配に張り出された傾斜部107と、傾斜部107から車体前方に向けて略水平に張り出された水平部108を有する。
傾斜部107および水平部108は略へ字状に形成されている。
よって、衝突エネルギー吸収構造102は、傾斜部107および水平部108を衝突荷重F1で折り曲げることができるように低剛性に形成されている。
このように、衝突荷重で傾斜部107および水平部108を折り曲げることで衝突エネルギーを吸収することができる。
【0072】
図7、図8に示すように、突出支持部103は、水平部108から下方に向けて突出され、底部103aがフロントバンパフェイス19(具体的には、下バンパフェイス123のバンパ底部127)に接触されている。
この状態で、突出支持部103の底部103aにバンパ底部127が複数のクリップ111で取り付けられている(設けられている)。
【0073】
張出部104は、水平部108から車体前方に向けて略水平に張り出された前端部113と、前端部113の前端113aから下方に向けて折り曲げられた折曲片114と、前端部113の後端113bから下方に向けて折り曲げられた張出片115と、前端部113、折曲片114および張出片115に設けられた複数の補強リブ116(図6も参照)とを有する。
【0074】
前端部113、折曲片114および張出片115に複数の補強リブ116を設けることで、張出部104を高剛性に形成することができる。
張出部104を高剛性に形成することで、張出部104(具体的には、前端部113)でフロントバンパフェイス19の上後辺128aを支持することができる。
【0075】
図7〜図9に示すように、フロントバンパフェイス19は、上下方向の中央下寄りの部位にグリル開口(エア導入口)121が形成され、グリル開口121の上側に上バンパフェイス122を備え、グリル開口121の下側に下バンパフェイス123を備えている。
上バンパフェイス122はフロントバンパビーム18の前方に設けられている。フロントバンパビーム18の前壁18eに衝突吸収部材125が設けられている。
【0076】
下バンパフェイス123は、略水平に形成されたバンパ底部127と、バンパ底部127の前端部に設けられたバンパ先端部128とを有する。
バンパ底部127は、後端部127aがロアメンバー28に複数のクリップ129で取り付けられ、前段部127bが突出支持部103の底部103aに複数のクリップ111で取り付けられている。
【0077】
バンパ先端部128は、車体前方に向けて断面略先細状に形成され、上後辺128aが下部ダクト44の前端部113に載置されている。
【0078】
つぎに、車両用の導風ダクト構造20の左右のシール部47,69の作用を図10〜図12に基づいて説明する。なお、左右のシール部47,69は左右対称の部材であり、図10〜図12では右シール部69について説明して左シール部47の説明を省略する。
【0079】
まず、車両のアイドリング時に右シール部69をラジエータ31の右側縁前面31bから離した状態に保つ例を図10に基づいて説明する。
図10に示すように、右シール部69の先端部69aをラジエータ31の右側縁前面31bに対して車体前方側に所定間隔S1だけ離間させた。
【0080】
よって、車両のアイドリング時には、右シール部69の先端部69aを右側縁前面31bから離した状態に保つことができる。
これにより、アイドリング時のラジエータ31の振動特性に右シール部69が影響を与えることがなく、例えば右シール部69が共振して振動が増大することを抑制できる。
【0081】
ここで、右シール部69は、後壁面69bに補強用の右リブ93が設けられている。よって、補強用の右リブ93で右シール部69の剛性を好適に設定して右シール部69の精度を高めることができる。
これにより、車両のアイドリング時に右シール部69の先端部69aを右側縁前面31bから確実に離した状態に保つことができる。
【0082】
つぎに、車両の走行時に右シール部69で右側壁ダクト68およびラジエータ31の右側縁31c間の隙間(空間)S2を塞ぐ例を図11、図12に基づいて説明する。
図11(a)に示すように、車両の走行時に、車両前方の空気が左右の側壁ダクト46,68および上下部のダクト43,44(図2参照)で案内されて、冷却機器16側に冷却風(走行風)として矢印Aの如く導かれる。
【0083】
図11(b)に示すように、冷却風が矢印Aの如く導かれることで、走行風圧F2が右シール部69に作用する。
右シール部69は車幅方向に張り出された弾性変形可能なゴム製の部材である。
この右シール部69に走行風圧F2を略直交させるように作用させることができる。
よって、走行風圧F2で右シール部69をラジエータ31の右側縁前面31bに向けて矢印Bの如く弾性変形させることができる。
【0084】
図12に示すように、右シール部69を右側縁前面31bに向けて弾性変形させることで、右シール部69の先端部69aを右側縁前面31bに接触させることができる。
よって、右側壁ダクト68および右側縁31c間の隙間(空間)S2を右シール部69で塞ぐことができる。
これにより、右側壁ダクト68でラジエータ31側に導いた冷却風(走行風)を矢印Cの如くラジエータ31に効率よく導くことができる。
【0085】
ここで、右シール部69は、後壁面69bに補強用の右リブ93が設けられている。補強用の右リブ93を設けることで、右シール部69の剛性を好適に設定して右シール部69の精度を高めることができる。
【0086】
よって、車両の走行時に、右シール部69の先端部69aを右側縁前面31bに確実に接触させることができる。
これにより、右側壁ダクト68および右側縁31c間の隙間(空間)S2を右シール部69で一層良好に塞ぐことができる。
【0087】
さらに、右側壁ダクトユニット42(右シール部69)をゴム製の柔らかい部材とした。
よって、右シール部69の先端部69aを右側縁前面31bに接触させた際に、右シール部69でラジエータ31を損傷させる虞はない。
【0088】
つぎに、車両用の導風ダクト構造20の下部ダクト44で衝突エネルギーを吸収する例を図13に基づいて説明する。
図13(a)に示すように、車両が低速走行で矢印Dの如く移動してフロントバンパフェイス19のバンパ先端部128が障害物132に衝突する。
【0089】
図13(b)に示すように、フロントバンパフェイス19のバンパ先端部128が変形して、下部ダクト44の張出部104に当接する。
よって、下部ダクト44の張出部104に衝突荷重F1が矢印の如く作用する。
【0090】
ここで、下部ダクト44は張出部104の後側に衝突エネルギー吸収構造102(すなわち、水平部108および傾斜部107)を備えている。
これにより、車両が障害物132に衝突して下部ダクト44の張出部104に衝突荷重F1が矢印の如く作用した場合に、水平部108および傾斜部107を折り曲げる。
このように、水平部108および傾斜部107を折り曲げることで、衝突エネルギー吸収構造102で衝突エネルギーを吸収して障害物132を保護することができる。
【0091】
なお、本発明に係る車両用の導風ダクト構造20は、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例で示したフロントバルクヘッド11、冷却機器16、フロントバンパビーム18、フロントバンパフェイス19、導風ダクト構造20、上部ダクト43、下部ダクト44、左側壁ダクト46、左側壁ダクトの下部54、右側壁ダクト68、右側壁ダクトの下部74、後端部101、衝突エネルギー吸収構造102、傾斜部107、水平部108、前端部113および補強リブ116などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、フロントバンパビームおよびフロントバルクヘッド間に設けられ、車両前方の空気を冷却機器側に冷却風として導く導風ダクト構造を備えた自動車への適用に好適である。
【符号の説明】
【0093】
10…車体前部構造、14…フロントバルクヘッド、16…冷却機器、18…フロントバンパビーム、19…フロントバンパフェイス、20…導風ダクト構造(車両用の導風ダクト構造)、43…上部ダクト、44…下部ダクト、46…左側壁ダクト(側壁ダクト)、54…左側壁ダクトの下部(下端部)、68…右側壁ダクト(側壁ダクト)、74…右側壁ダクトの下部(下端部)、101…後端部、102…衝突エネルギー吸収構造、107…傾斜部、108…水平部、113…前端部、116…補強リブ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントバンパビームおよびフロントバルクヘッド間に設けられ、車両前方の空気を冷却機器側に冷却風として導く車両用の導風ダクト構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の導風ダクト構造のなかには、冷却装置のケース内に冷却機器(ラジエータなど)を収納し、ケースの左右側に導風ダクト(以下、「側壁ダクト」という)を備えたものがある。
この側壁ダクトは、側壁板状のダクト本体がゴム材で形成されている。このため、ダクト本体の剛性を確保するためにダクト本体を補強する骨部が設けられている。
【0003】
この導風ダクト構造によれば、車両の走行時に、左右の側壁ダクトで車両前方の空気をケース内に冷却風(走行風)として導き、導いた冷却風で冷却機器を冷却することが可能である(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−15487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の導風ダクト構造は、側壁ダクトのダクト本体がゴム材で形成されている。
このため、ダクト本体の剛性を確保するために、ダクト本体を補強する骨部が必要とされ、そのことが部品点数を抑える妨げになっていた。
【0006】
本発明は、側壁ダクトの剛性を確保するとともに、側壁ダクトから補強用の骨材を不要にすることができる車両用の導風ダクト構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、フロントバンパフェイスを支えるフロントバンパビームおよび冷却機器を支えるフロントバルクヘッド間に設けられ、車両前方の空気を前記冷却機器側に冷却風として導く車両用の導風ダクト構造において、前記冷却機器の左右側に設けられ、かつ車体前後方向に延出されたゴム製の側壁ダクトと、前記冷却機器の下側に設けられた硬質樹脂製の下部ダクトと、を備え、前記下部ダクトに前記左右の側壁ダクトの下端部がそれぞれ設けられたことを特徴とする。
【0008】
請求項2は、前記下部ダクトは、衝突エネルギーを吸収するために衝突エネルギー吸収構造を有することを特徴とする。
【0009】
請求項3は、前記下部ダクトは、前記フロントバルクヘッドに後端部が設けられ、前記後端部から車体前方に向けて上り勾配に傾斜部が張り出され、前記傾斜部から車体前方に向けて略水平に水平部が張り出され、前記水平部および前記傾斜部を低剛性に形成することで前記衝突エネルギー吸収構造とし、前記水平部から車体前方に向けて前端部が張り出され、前記前端部に補強リブが設けられることで高剛性に形成し、前記高剛性の前端部で前記フロントバンパフェイスを支持可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明では、冷却機器の左右側にゴム製の側壁ダクトを設けた。そして、左右の側壁ダクトの下端部を下部ダクトに設けることで、左右の側壁ダクトを下部ダクトで補強して左右の側壁ダクトの剛性を高めることができる。
すなわち、下部ダクトを左右の側壁ダクトの補強部材として兼用することができる。
よって、左右の側壁ダクトの剛性を確保するために、従来必要とされていた骨材を不要にできる。
このように、左右の側壁ダクトの下端部を下部ダクトに設けることで、側壁ダクトの剛性を確保するとともに、側壁ダクトから補強用の骨材を不要にすることができる
【0011】
請求項2に係る発明では、下部ダクトが衝突エネルギー吸収構造を有している。
これにより、車両が障害物に衝突した場合に、衝突エネルギー吸収構造で衝突エネルギーを吸収して障害物を保護することができる。
【0012】
請求項3に係る発明では、下部ダクトの後端部から車体前方に向けて上り勾配に傾斜部を張り出し、傾斜部から車体前方に向けて略水平に水平部を張り出した。そして、水平部および傾斜部を低剛性に形成することで衝突エネルギー吸収構造とした。
これにより、車両が障害物に衝突した場合に、水平部および傾斜部を折り曲げることで、衝突エネルギー吸収構造で衝突エネルギーを吸収して障害物を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る車両用の導風ダクト構造を備えた車体前部構造を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る車両用の導風ダクト構造を示す斜視図である。
【図3】図2の左側部ダクトユニットを示す斜視図である。
【図4】図2の右側部ダクトユニットを示す斜視図である。
【図5】図1の5−5線断面図である。
【図6】本発明に係る導風ダクト構造の下部ダクトを車体前方下方から見た状態を示す斜視図である。
【図7】図1の7−7線断面図である。
【図8】図7の下部ダクトから下バンパフェイスを分解した状態を示す断面図である。
【図9】図1の9−9線断面図である。
【図10】本発明に係る右シール部をラジエータから離した状態に保つ例を説明する図である。
【図11】本発明に係る左右の側壁ダクトで冷却風を導く例を説明する図である。
【図12】本発明に係る右シール部をラジエータに接触させる例を説明する図である。
【図13】本発明に係る導風ダクト構造の下部ダクトで衝突エネルギーを吸収する例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は運転者から見た方向にしたがい、前側をFr、後側をRr、左側をL、右側をRとして示す。
【実施例】
【0015】
実施例に係る車両用の導風ダクト構造20について説明する。
図1に示すように、車体前部構造10は、車体前後方向に延出された左右のフロントサイドフレーム11,12と、左右のフロントサイドフレーム11,12のそれぞれの前端部に設けられたフロントバルクヘッド14と、フロントバルクヘッド14に設けられた(支えられた)冷却機器16と、左右のフロントサイドフレーム11,12の前端部にそれぞれ連結されたフロントバンパビーム18と、フロントバルクヘッド14およびフロントバンパビーム18に設けられた導風ダクト構造(車両用の導風ダクト構造)20とを備えている。
【0016】
左フロントサイドフレーム11の車体外側(左側)に左アッパメンバー22が設けられている。
右フロントサイドフレーム12の車体外側(右側)に右アッパメンバー23が設けられている。
【0017】
フロントバルクヘッド14は、左フロントサイドフレーム11に設けられた左ステイ25と、右フロントサイドフレーム12に設けられた右ステイ26(図5参照)と、左右のステイ25,26の上端部に架け渡されたアッパメンバー27と、左右のステイの下端部に架け渡されたロアメンバー28(図5参照)とを備えている。
【0018】
フロントバルクヘッド14に冷却機器16が支えられることで、フロントバルクヘッド14の前方、またはフロントバルクヘッド14内に冷却機器16が設けられている。
冷却機器16は、ラジエータ31やコンデンサ32を備え、フロントバルクヘッド14の前方にラジエータ31が設けられ、ラジエータ31の前方にコンデンサ32が設けられている(図5も参照)。
ラジエータ31は、エンジンの冷却水を外気(空気)で冷却するための熱交換器である。
コンデンサ32は、エアコン(空調)の冷凍サイクルで使用する冷媒を外気(空気)で冷却するための熱交換器である。
【0019】
アッパメンバー27の左端部および左アッパメンバー22が左連結バー34で連結されている。
アッパメンバー27の右端部および右アッパメンバー23が右連結バー35で連結されている。
【0020】
フロントバンパビーム18は、左端部18a近傍の部位18bが左フロントサイドフレーム11の前端部11aにボルト(図示せず)で取り付けられ、右端部18c近傍の部位18dが右フロントサイドフレーム12の前端部12aにボルト(図示せず)で取り付けられ、左端部18aが左アッパメンバー22の前端部22aにボルト38…で取り付けられ、右端部18cが右アッパメンバー23の前端部23aにボルト38…で取り付けられている。
【0021】
フロントバンパビーム18の車体前方側にフロントバンパフェイス(フロントバンパ表皮)19(図7参照)が設けられている。
【0022】
導風ダクト構造20は、フロントバルクヘッド14およびフロントバンパビーム18間に設けられ、車両前方の空気を冷却機器16側に冷却風として導くものである。
この導風ダクト構造20は、冷却機器16の左右側にそれぞれ設けられた左右の側壁ダクトユニット41,42と、左右の側壁ダクトユニット41,42のそれぞれの上端部に連結された上部ダクト43と、左右の側壁ダクトユニット41,42のそれぞれの下端部に連結された下部ダクト44とを備えている。
【0023】
図2、図3に示すように、左側壁ダクトユニット41は、ゴム材で形成された部材であり、冷却機器16(図1参照)の左側に設けられた左側壁ダクト(側壁ダクト)46と、左側壁ダクト46に設けられた左シール部47とを備えている。
【0024】
ゴム材としては、一例として、オレフィン系の熱可塑性エラストマー(TPO、すなわちThermo Plastic Olefin)が用いられる。
熱可塑性エラストマーは、常温ではゴムの特性を備え、高温では熱可塑性プラスチックと同様に、軟化して圧縮、押出、射出などが可能な特性を備えている。
よって、熱可塑性エラストマーを高温で軟化させることにより、左側壁ダクトユニット41を容易に成形することができる。
【0025】
左側壁ダクト46は、車体前後方向に延出され、車両前方の空気を冷却機器16(図1参照)側に冷却風(走行風)として導くダクトである。
この左側壁ダクト46は、上部51が車体前方に向けて下り勾配に延出され、前部52に収納凹部53が形成され、下部(下端部)54が略水平に形成され、後部55が略鉛直に形成された板状の部材である。
収納凹部53は、フロントバンパビーム18(図1参照)を収容するために側面視で略コ字状に形成された窪みである。
【0026】
さらに、左側壁ダクト46は、上部51から車体外側に向けて折り曲げられた上折曲片57と、前部下半部52aから車体外側に向けて折り曲げられた前折曲片58と、後部55から車体外側に向けて折り曲げられたステイ取付片61と、収納凹部53から車体内側に向けて折り曲げられたバンパ取付フラップ(取付フラップ)62とを有している。
【0027】
また、左側壁ダクト46は、略中央部に膨出部63が設けられている。膨出部63は、レシーバタンク33(図5参照)を収容するために車体外側に向けて膨出された部位である。
レシーバタンク33は、コンデンサ32で液化した冷媒を一時的に蓄えるタンクである。
【0028】
左側壁ダクト46に上折曲片57、前折曲片58、ステイ取付片61、バンパ取付フラップ62および膨出部63を形成することで、左側壁ダクト46の剛性を高めることができる。
【0029】
ステイ取付片61は、ステイ取付孔61a…が形成されている。ステイ取付孔61a…に差し込んだステイクリップ64…で左ステイ25(図1、図5参照)にステイ取付片61が取り付けられている。
【0030】
バンパ取付フラップ62は、左側壁ダクト46の側壁に対して略直交するように設けられている。このバンパ取付フラップ62にバンパ取付孔62a…が形成されている。
バンパ取付孔62a…に差し込んだバンパクリップ65…でバンパ取付フラップ62がフロントバンパビーム18に取り付けられている(設けられている)(図5も参照)。
【0031】
さらに、左側壁ダクト46は、下部54にダクト取付孔(取付孔)54a…が形成されている。
また、下部ダクト44の左端部44bにダクト取付孔(取付孔)44d…が形成されている。
ダクト取付孔54a…およびダクト取付孔44d…にダクトクリップ(クリップ)66…が差し込まれている(嵌合されている)。
これにより、下部ダクト44の左端部44bに下部54がダクトクリップ66…で取り付けられている(設けられている)。
【0032】
以上説明したように、左側壁ダクト46を各クリップ64…,65…,66…で左ステイ25、フロントバンパビーム18や下部ダクト44に取り付けることで、左側壁ダクト46がラジエータ31やコンデンサ32の車幅方向左側に配置されている(図1、図5参照)。
【0033】
図5に示すように、左シール部47は、左側壁ダクト46の内壁面46aからラジエータ31の左側縁前面(側縁前面)31aに向けて略車幅方向に張り出された弾性変形可能なゴム製の部材である。
なお、左シール部47については後で詳しく説明する。
【0034】
図2、図4に示すように、右側壁ダクトユニット42は、左側壁ダクトユニット41と同様に、ゴム材で形成された部材である。
この右側壁ダクトユニット42は、冷却機器16(図1参照)の右側に設けられた右側壁ダクト(側壁ダクト)68と、右側壁ダクト68に設けられた右シール部69とを備えている。
【0035】
ゴム材としては、左側壁ダクトユニット41と同様に、オレフィン系の熱可塑性エラストマー(TPO、すなわちThermo Plastic Olefin)などが用いられる。
よって、左側壁ダクトユニット41と同様に、熱可塑性エラストマーを高温で軟化させることにより、右側壁ダクトユニット42を容易に成形することができる。
【0036】
右側壁ダクト68は、左側壁ダクト46と略左右対称の部材であり、車体前後方向に延出され、車両前方の空気を冷却機器16(図1参照)側に冷却風(走行風)として導くダクトである。
この右側壁ダクト68は、上部71が車体前方に向けて下り勾配に延出され、前部72に収納凹部73が形成され、下部(下端部)74が略水平に形成され、後部75が略鉛直に形成された板状の部材である。
収納凹部73は、フロントバンパビーム18(図1参照)を収容するために側面視で略コ字状に形成された窪みである。
【0037】
さらに、右側壁ダクト68は、上部71から車体外側に向けて折り曲げられた上折曲片77と、前部下半部72aから車体外側に向けて折り曲げられた前折曲片78と、後部75から車体外側に向けて折り曲げられたステイ取付片81と、収納凹部73から車体内側に向けて折り曲げられたバンパ取付フラップ(取付フラップ)82とを有している。
【0038】
右側壁ダクト68に上折曲片77、前折曲片78、ステイ取付片81およびバンパ取付フラップ82を形成することで、右側壁ダクト68の剛性を高めることができる。
【0039】
ステイ取付片81は、ステイ取付孔81a…が形成されている。ステイ取付孔81a…に差し込んだステイクリップ84…で右ステイ26(図1、図5参照)にステイ取付片81が取り付けられている。
【0040】
バンパ取付フラップ82は、右側壁ダクト68の側壁に対して略直交するように設けられている。このバンパ取付フラップ82にバンパ取付孔82a…が形成されている。
バンパ取付孔82a…に差し込んだバンパクリップ85…でフロントバンパビーム18にバンパ取付フラップ82が取り付けられている(設けられている)(図5も参照)。
【0041】
さらに、右側壁ダクト68は、下部74にダクト取付孔(取付孔)74a…が形成されている。
また、下部ダクト44の右端部44cにダクト取付孔(取付孔)44e…が形成されている。
ダクト取付孔74a…およびダクト取付孔44e…にダクトクリップ(クリップ)86…が差し込まれている(嵌合されている)。
これにより、下部ダクト44の右端部44cに下部74がダクトクリップ86…で取り付けられている(設けられている)。
【0042】
以上説明したように、右側壁ダクト68を各クリップ84…,85…,86…で右ステイ26、フロントバンパビーム18や下部ダクト44に取り付けることで、右側壁ダクト68がラジエータ31やコンデンサ32の車幅方向右側に配置されている(図1、図5参照)。
【0043】
また、前述したように、左側壁ダクト46の側壁に対してバンパ取付フラップ62を略直交するように設け、右側壁ダクト68の側壁に対してバンパ取付フラップ82を略直交するように設けた。
これにより、左側壁ダクト46の側壁をバンパ取付フラップ62で補強することができ、かつ、右側壁ダクト68をバンパ取付フラップ82で補強することができる。
【0044】
さらに、バンパ取付フラップ62をフロントバンパビーム18に設け、バンパ取付フラップ82をフロントバンパビーム18に設けた。
これにより、フロントバンパビーム18で左右の側壁ダクト46,68を補強して左右の側壁ダクト46,68の剛性を高めることができる。
すなわち、フロントバンパビーム18を左右の側壁ダクト46,68の補強部材として兼用することができる。
【0045】
加えて、前述したように、下部ダクト44の左端部44bに左側壁ダクト46(具体的には、下部54)がダクトクリップ66…で設けられ、下部ダクト44の右端部44cに右側壁ダクト68(具体的には、下部74)がダクトクリップ86…で設けられている。
よって、左右の側壁ダクト46,68を下部ダクト44で補強して左右の側壁ダクト46,68の剛性を高めることができる。
【0046】
すなわち、下部ダクト44を左右の側壁ダクト46,68の補強部材として兼用することができる。
よって、左右の側壁ダクト46,68の剛性を確保するために、従来必要とされていた骨材を不要にできる。
このように、左右の側壁ダクト46,68の下部54,74を下部ダクト44に設けることで、左右の側壁ダクト46,68の剛性を確保するとともに、左右の側壁ダクト46,68から補強用の骨材を不要にすることができる
【0047】
また、左側壁ダクト46の下部54にダクト取付孔54a…を設け、下部ダクト44の左端部44bにダクト取付孔44d…を設けた。さらに、右側壁ダクト68の下部74にダクト取付孔74a…を設け、下部ダクト44の右端部44cにダクト取付孔44e…を設けた。
【0048】
ここで、左右の側壁ダクト46,68をゴム材で形成することで下部ダクト44と比して柔らかい部材とした。
よって、左側壁ダクト46のダクト取付孔54a…を下部ダクト44のダクト取付孔44d…に簡単に合わせることができる。
これにより、左側壁ダクト46のダクト取付孔54a…および下部ダクト44のダクト取付孔44d…にダクトクリップ66…を容易に嵌合させることができる。
【0049】
同様に、右側壁ダクト68のダクト取付孔74a…を下部ダクト44のダクト取付孔44e…に簡単に合わせることができる。
これにより、右側壁ダクト68のダクト取付孔74a…および下部ダクト44のダクト取付孔44e…にダクトクリップ86…を容易に嵌合させることができる。
【0050】
図5に示すように、右シール部69は、右側壁ダクト68の内壁面68aからラジエータ31の右側縁前面(側縁前面)31bに向けて略車幅方向に張り出された弾性変形可能なゴム製の部材である。
【0051】
右シール部69は、先端部69aがラジエータ31の右側縁前面31bまで延出され、かつ、ラジエータ31の右側縁前面31bから先端部69aが車体前方側に所定間隔S1だけ離間して配置されている。
【0052】
この右シール部69は、後壁面69bに補強用の右リブ93…が設けられている。
右リブ93…は、右シール部69の後壁面69bから右側壁ダクト68の内壁面68aに連なるように略三角形に形成されている。
【0053】
この右リブ93は、右シール部69に沿って所定間隔をおいて複数個設けられている(図4参照)。
これにより、補強用の右リブ93…で右シール部69の剛性を好適に設定することが可能になり、右シール部69の精度を高めることができる。
【0054】
左シール部47は、右シール部69と左右対称の部材であり、先端部47aがラジエータ31の左側縁前面31aまで延出され、かつ、ラジエータ31の左側縁前面31aから先端部47aが車体前方側に所定間隔S1だけ離間して配置されている。
【0055】
この左シール部47は、後壁面47bに補強用の左リブ91…が設けられている。
左リブ91…は、左シール部47の後壁面47bから左側壁ダクト46の内壁面46aに連なるように略三角形に形成されている。
【0056】
この左リブ91は、右リブ93と同様に、左シール部47に沿って所定間隔をおいて複数個設けられている。
これにより、補強用の左リブ91…で左シール部47の剛性を好適に設定することが可能になり、左シール部47の精度を高めることができる。
【0057】
なお、左右のシール部47,69をラジエータ31の左右の側縁前面31a,31bから車体前方側に所定間隔S1だけ離間させた理由については図10で詳しく説明する。
【0058】
ここで、左右の側壁ダクトユニット41,42をそれぞれ単一のゴム材で形成(成形)した。
左側壁ダクトユニット41の左側壁ダクト46および左シール部47を2色成形(二色成形)を用いることなく単一のゴム材で成形できる。
右側壁ダクトユニット42の右側壁ダクト68および右シール部69を2色成形を用いることなく単一のゴム材で成形できる。
【0059】
これに対して、側壁ダクトを樹脂材で形成し、シール部をゴム材で形成する場合、側壁ダクトおよびシール部を2色成形で成形する必要がある。
これにより、左右の側壁ダクトユニット41,42を単一のゴム材で形成することで、左右の側壁ダクトユニット41,42の成形が容易になり、左右の側壁ダクトユニット41,42のコストを抑えることができる。
【0060】
図1、図2に示すように、左右の側壁ダクト46,68のそれぞれの上部51,71側に上部ダクト43が設けられている。
上部ダクト43は、平面視で略矩形状に形成された硬質樹脂製(樹脂製)の板材である。
硬質樹脂材としては、一例として、ポリプロピレン樹脂(PP)が用いられる。
【0061】
この上部ダクト43は、後部94にアッパ取付孔43a…が形成され、アッパ取付孔43a…に差し込んだアッパクリップ95…でフロントバルクヘッド14のアッパメンバー27に取り付けられている。
この上部ダクト43は、冷却機器16(ラジエータ31やコンデンサ32)の上側に設けられている。
【0062】
このように、冷却機器16の上側に硬質樹脂製の上部ダクト43を設けることで、上部ダクト43を空気のガイド面とすることができる。
これにより、車両前方の空気を上部ダクト43で冷却機器16側に冷却風として一層良好に導くことができる。
【0063】
さらに、冷却機器16の上側に硬質樹脂製の上部ダクト43を設けることで、上部ダクト43でフロントバルクヘッド14や冷却機器16を覆うことができる。
これにより、エンジンフード(図示せず)を開けた際に、フロントバルクヘッド14や冷却機器16を上部ダクト43で隠すことができるので、見栄えを良好に確保して商品性の向上を図ることができる。
【0064】
また、左右の側壁ダクト46,68のそれぞれの下部54,74に下部ダクト44が連結されている(設けられている)。
下部ダクト44は、平面視で略矩形状に形成された硬質樹脂製(樹脂製)の板材である。
硬質樹脂材としては、一例として、ポリプロピレン樹脂(PP)が用いられる。
【0065】
この下部ダクト44は、後部97にロア取付孔44a…が形成され、ロア取付孔44a…に差し込んだロアクリップ96でフロントバルクヘッド14のロアメンバー28(図5参照)に取り付けられている。
この下部ダクト44は、冷却機器16(ラジエータ31やコンデンサ32)の下側に設けられている。
なお、下部ダクト44については図6〜図9で詳しく説明する。
【0066】
以上説明したように、ラジエータ31やコンデンサ32の左右側に左右の側壁ダクトユニット41,42をそれぞれ配置し、ラジエータ31やコンデンサ32の上下側に上下部のダクト43,44をそれぞれ配置することで、左右の側壁ダクトユニット41,42および上下部のダクト43,44はラジエータ31やコンデンサ32を囲むように設けられている。
すなわち、左右の側壁ダクトユニット41,42および上下部のダクト43,44は、正面視で略矩形状に形成されている。
【0067】
また、車両用の導風ダクト構造20を左右の側壁ダクト46,68および上下部のダクト43,44の4つのダクトに分割した。そして、左右の側壁ダクト46,68をゴム材で形成し、上下部のダクト43,44を硬質樹脂材で形成した。
【0068】
このように、車両用の導風ダクト構造20を左右の側壁ダクト46,68および上下部のダクト43,44に4分割することで、導風ダクト構造20の取付作業を容易におこなうことができる。
さらに、上下部のダクト43,44を硬質樹脂材で形成することで、ゴム材で形成した場合と比べて取扱いの容易化が図れ、導風ダクト構造20の取付作業を一層容易におこなうことができる。
【0069】
図6に示すように、下部ダクト44は、フロントバルクヘッド14に設けられた後端部101と、後端部101の前側に設けられた衝突エネルギー吸収構造102と、衝突エネルギー吸収構造102から下方に突出された複数の突出支持部103と、衝突エネルギー吸収構造102の前側に設けられた張出部104とを有する。
【0070】
図7、図8に示すように、下部ダクト44の後端部101は、フロントバルクヘッド14のロアメンバー28の前端部28aに沿って略水平に形成されている。
ロアメンバー28の前端部28aに下部ダクト44の後端部101が載置され、この状態で前端部28aに後端部101が複数のロアクリップ96(図2も参照)で取り付けられている(設けられている)。
【0071】
図9に示すように、衝突エネルギー吸収構造102は、後端部101から車体前方に向けて上り勾配に張り出された傾斜部107と、傾斜部107から車体前方に向けて略水平に張り出された水平部108を有する。
傾斜部107および水平部108は略へ字状に形成されている。
よって、衝突エネルギー吸収構造102は、傾斜部107および水平部108を衝突荷重F1で折り曲げることができるように低剛性に形成されている。
このように、衝突荷重で傾斜部107および水平部108を折り曲げることで衝突エネルギーを吸収することができる。
【0072】
図7、図8に示すように、突出支持部103は、水平部108から下方に向けて突出され、底部103aがフロントバンパフェイス19(具体的には、下バンパフェイス123のバンパ底部127)に接触されている。
この状態で、突出支持部103の底部103aにバンパ底部127が複数のクリップ111で取り付けられている(設けられている)。
【0073】
張出部104は、水平部108から車体前方に向けて略水平に張り出された前端部113と、前端部113の前端113aから下方に向けて折り曲げられた折曲片114と、前端部113の後端113bから下方に向けて折り曲げられた張出片115と、前端部113、折曲片114および張出片115に設けられた複数の補強リブ116(図6も参照)とを有する。
【0074】
前端部113、折曲片114および張出片115に複数の補強リブ116を設けることで、張出部104を高剛性に形成することができる。
張出部104を高剛性に形成することで、張出部104(具体的には、前端部113)でフロントバンパフェイス19の上後辺128aを支持することができる。
【0075】
図7〜図9に示すように、フロントバンパフェイス19は、上下方向の中央下寄りの部位にグリル開口(エア導入口)121が形成され、グリル開口121の上側に上バンパフェイス122を備え、グリル開口121の下側に下バンパフェイス123を備えている。
上バンパフェイス122はフロントバンパビーム18の前方に設けられている。フロントバンパビーム18の前壁18eに衝突吸収部材125が設けられている。
【0076】
下バンパフェイス123は、略水平に形成されたバンパ底部127と、バンパ底部127の前端部に設けられたバンパ先端部128とを有する。
バンパ底部127は、後端部127aがロアメンバー28に複数のクリップ129で取り付けられ、前段部127bが突出支持部103の底部103aに複数のクリップ111で取り付けられている。
【0077】
バンパ先端部128は、車体前方に向けて断面略先細状に形成され、上後辺128aが下部ダクト44の前端部113に載置されている。
【0078】
つぎに、車両用の導風ダクト構造20の左右のシール部47,69の作用を図10〜図12に基づいて説明する。なお、左右のシール部47,69は左右対称の部材であり、図10〜図12では右シール部69について説明して左シール部47の説明を省略する。
【0079】
まず、車両のアイドリング時に右シール部69をラジエータ31の右側縁前面31bから離した状態に保つ例を図10に基づいて説明する。
図10に示すように、右シール部69の先端部69aをラジエータ31の右側縁前面31bに対して車体前方側に所定間隔S1だけ離間させた。
【0080】
よって、車両のアイドリング時には、右シール部69の先端部69aを右側縁前面31bから離した状態に保つことができる。
これにより、アイドリング時のラジエータ31の振動特性に右シール部69が影響を与えることがなく、例えば右シール部69が共振して振動が増大することを抑制できる。
【0081】
ここで、右シール部69は、後壁面69bに補強用の右リブ93が設けられている。よって、補強用の右リブ93で右シール部69の剛性を好適に設定して右シール部69の精度を高めることができる。
これにより、車両のアイドリング時に右シール部69の先端部69aを右側縁前面31bから確実に離した状態に保つことができる。
【0082】
つぎに、車両の走行時に右シール部69で右側壁ダクト68およびラジエータ31の右側縁31c間の隙間(空間)S2を塞ぐ例を図11、図12に基づいて説明する。
図11(a)に示すように、車両の走行時に、車両前方の空気が左右の側壁ダクト46,68および上下部のダクト43,44(図2参照)で案内されて、冷却機器16側に冷却風(走行風)として矢印Aの如く導かれる。
【0083】
図11(b)に示すように、冷却風が矢印Aの如く導かれることで、走行風圧F2が右シール部69に作用する。
右シール部69は車幅方向に張り出された弾性変形可能なゴム製の部材である。
この右シール部69に走行風圧F2を略直交させるように作用させることができる。
よって、走行風圧F2で右シール部69をラジエータ31の右側縁前面31bに向けて矢印Bの如く弾性変形させることができる。
【0084】
図12に示すように、右シール部69を右側縁前面31bに向けて弾性変形させることで、右シール部69の先端部69aを右側縁前面31bに接触させることができる。
よって、右側壁ダクト68および右側縁31c間の隙間(空間)S2を右シール部69で塞ぐことができる。
これにより、右側壁ダクト68でラジエータ31側に導いた冷却風(走行風)を矢印Cの如くラジエータ31に効率よく導くことができる。
【0085】
ここで、右シール部69は、後壁面69bに補強用の右リブ93が設けられている。補強用の右リブ93を設けることで、右シール部69の剛性を好適に設定して右シール部69の精度を高めることができる。
【0086】
よって、車両の走行時に、右シール部69の先端部69aを右側縁前面31bに確実に接触させることができる。
これにより、右側壁ダクト68および右側縁31c間の隙間(空間)S2を右シール部69で一層良好に塞ぐことができる。
【0087】
さらに、右側壁ダクトユニット42(右シール部69)をゴム製の柔らかい部材とした。
よって、右シール部69の先端部69aを右側縁前面31bに接触させた際に、右シール部69でラジエータ31を損傷させる虞はない。
【0088】
つぎに、車両用の導風ダクト構造20の下部ダクト44で衝突エネルギーを吸収する例を図13に基づいて説明する。
図13(a)に示すように、車両が低速走行で矢印Dの如く移動してフロントバンパフェイス19のバンパ先端部128が障害物132に衝突する。
【0089】
図13(b)に示すように、フロントバンパフェイス19のバンパ先端部128が変形して、下部ダクト44の張出部104に当接する。
よって、下部ダクト44の張出部104に衝突荷重F1が矢印の如く作用する。
【0090】
ここで、下部ダクト44は張出部104の後側に衝突エネルギー吸収構造102(すなわち、水平部108および傾斜部107)を備えている。
これにより、車両が障害物132に衝突して下部ダクト44の張出部104に衝突荷重F1が矢印の如く作用した場合に、水平部108および傾斜部107を折り曲げる。
このように、水平部108および傾斜部107を折り曲げることで、衝突エネルギー吸収構造102で衝突エネルギーを吸収して障害物132を保護することができる。
【0091】
なお、本発明に係る車両用の導風ダクト構造20は、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例で示したフロントバルクヘッド11、冷却機器16、フロントバンパビーム18、フロントバンパフェイス19、導風ダクト構造20、上部ダクト43、下部ダクト44、左側壁ダクト46、左側壁ダクトの下部54、右側壁ダクト68、右側壁ダクトの下部74、後端部101、衝突エネルギー吸収構造102、傾斜部107、水平部108、前端部113および補強リブ116などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、フロントバンパビームおよびフロントバルクヘッド間に設けられ、車両前方の空気を冷却機器側に冷却風として導く導風ダクト構造を備えた自動車への適用に好適である。
【符号の説明】
【0093】
10…車体前部構造、14…フロントバルクヘッド、16…冷却機器、18…フロントバンパビーム、19…フロントバンパフェイス、20…導風ダクト構造(車両用の導風ダクト構造)、43…上部ダクト、44…下部ダクト、46…左側壁ダクト(側壁ダクト)、54…左側壁ダクトの下部(下端部)、68…右側壁ダクト(側壁ダクト)、74…右側壁ダクトの下部(下端部)、101…後端部、102…衝突エネルギー吸収構造、107…傾斜部、108…水平部、113…前端部、116…補強リブ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントバンパフェイスを支えるフロントバンパビームおよび冷却機器を支えるフロントバルクヘッド間に設けられ、車両前方の空気を前記冷却機器側に冷却風として導く車両用の導風ダクト構造において、
前記冷却機器の左右側に設けられ、かつ車体前後方向に延出されたゴム製の側壁ダクトと、
前記冷却機器の下側に設けられた硬質樹脂製の下部ダクトと、
を備え、
前記下部ダクトに前記左右の側壁ダクトの下端部がそれぞれ設けられたことを特徴とする車両用の導風ダクト構造。
【請求項2】
前記下部ダクトは、衝突エネルギーを吸収するために衝突エネルギー吸収構造を有することを特徴とする請求項1記載の車両用の導風ダクト構造。
【請求項3】
前記下部ダクトは、
前記フロントバルクヘッドに後端部が設けられ、
前記後端部から車体前方に向けて上り勾配に傾斜部が張り出され、
前記傾斜部から車体前方に向けて略水平に水平部が張り出され、
前記水平部および前記傾斜部を低剛性に形成することで前記衝突エネルギー吸収構造とし、
前記水平部から車体前方に向けて前端部が張り出され、前記前端部に補強リブが設けられることで高剛性に形成し、
前記高剛性の前端部で前記フロントバンパフェイスを支持可能としたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の車両用の導風ダクト構造。
【請求項1】
フロントバンパフェイスを支えるフロントバンパビームおよび冷却機器を支えるフロントバルクヘッド間に設けられ、車両前方の空気を前記冷却機器側に冷却風として導く車両用の導風ダクト構造において、
前記冷却機器の左右側に設けられ、かつ車体前後方向に延出されたゴム製の側壁ダクトと、
前記冷却機器の下側に設けられた硬質樹脂製の下部ダクトと、
を備え、
前記下部ダクトに前記左右の側壁ダクトの下端部がそれぞれ設けられたことを特徴とする車両用の導風ダクト構造。
【請求項2】
前記下部ダクトは、衝突エネルギーを吸収するために衝突エネルギー吸収構造を有することを特徴とする請求項1記載の車両用の導風ダクト構造。
【請求項3】
前記下部ダクトは、
前記フロントバルクヘッドに後端部が設けられ、
前記後端部から車体前方に向けて上り勾配に傾斜部が張り出され、
前記傾斜部から車体前方に向けて略水平に水平部が張り出され、
前記水平部および前記傾斜部を低剛性に形成することで前記衝突エネルギー吸収構造とし、
前記水平部から車体前方に向けて前端部が張り出され、前記前端部に補強リブが設けられることで高剛性に形成し、
前記高剛性の前端部で前記フロントバンパフェイスを支持可能としたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の車両用の導風ダクト構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−254116(P2010−254116A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106216(P2009−106216)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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