説明

車両用の水銀フリーメタルハライドランプ

【課題】25Wの電力で点灯しても高色温度で、かつ高光束な新規の車両用の水銀フリーメタルハライドランプを提供する。
【解決手段】本発明は、安定点灯時に25Wの電力で点灯される車両用の水銀フリーメタルハライドランプであって、内部に放電空間111を有する発光部11を備えた気密容器1と、放電空間111に封入されたインジウムのハロゲン化物を含む金属ハロゲン化物2およびキセノンを含む希ガスと、放電空間111内で先端部が対設された電極32と、を具備し、発光部11の放電空間111の容積は16〜22mmであり、インジウムのモル数[mol]をQ、キセノンの圧力[atm]をPとしたとき、0.97×10−7≦Q≦2.9×10−7、かつ8.5≦P≦13を満足する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの前照灯に使用される水銀フリーメタルハライドランプに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、自動車前照灯には、ショートアーク高圧放電タイプのメタルハライドランプが使用されるようになってきている。このメタルハライドランプには、内部に金属ハロゲン化物や希ガスが封入されており、約35Wの電力を投入することで、安定点灯時に全光束は約3000lm、色温度は約4000Kの高光束な白色系の発光を得ることができる。
【0003】
このランプに対し、最近では低電力化の市場ニーズが高まっている。具体的には、電力を従来の35Wから25Wに低減することが望まれている。特許文献1〜3には、電力を低減しても高光束のランプを実現することを主目的とした発明が提案されている。
【0004】
上記で説明したメタルハライドランプはいわゆる標準的な白色のランプであるが、青みがかった白色系の発光を得られる色温度の高いメタルハライドランプもユーザーから要望がある。ランプの発光色を青みがかった白色系にするには、色温度を5000K程度に高める必要がある。このような高色温度のランプは、35W用のランプでは特許文献4や特許文献5などで実現されているが、25W用のランプでは実現されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2008/110967号
【特許文献2】国際公開第2009/127993号
【特許文献3】国際公開第2010/54872号
【特許文献4】特開2008−98045号公報
【特許文献5】特開2008−123742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、25Wの電力で点灯しても高色温度で、かつ高光束な新規の車両用の水銀フリーメタルハライドランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、安定点灯時に25Wの電力で点灯される車両用の水銀フリーメタルハライドランプであって、
内部に放電空間を有する発光部を備えた気密容器と、前記放電空間に封入されたインジウムのハロゲン化物を含む金属ハロゲン化物およびキセノンを含む希ガスと、前記放電空間内で先端部が対設された一対の電極と、を具備し、前記発光部の放電空間の容積は16〜22mmであり、前記インジウムのモル数[mol]をQ、前記キセノンの圧力[atm]をPとしたとき、0.97×10−7≦Q≦2.9×10−7、かつ8.5≦P≦13を満足することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、25Wの電力で点灯しても高色温度で、かつ高光束な新規の車両用の水銀フリーメタルハライドランプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施の形態の放電ランプを説明するための図である。
【図2】図1で示した放電ランプの要部を拡大した部分断面図である。
【図3】インジウムの封入量Qと、全光束・色温度の関係を示す図である。
【図4】キセノンの圧力Pと、全光束・色温度の関係を示す図である。
【図5】インジウムの封入量Q・キセノンの圧力Pと、全光束・色温度の関係を示す図である。
【図6】実施例1、2および比較例1、2の色度を示す図である。
【図7】インジウムの封入量Q・キセノンの圧力Pと、全光束・色温度・色度の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施の形態)
図1および図2を参照して、本発明の実施形態の一例について説明する。図1は、本発明に係る放電ランプの一実施形態を説明するための全体図であり、図2は、図1に示した放電ランプの要部断面を拡大した部分断面図である。
【0011】
本形態のメタルハライドランプは、自動車などの前照灯用の光源として用いることができるもので、気密容器として内管1を備えている。内管1は細長い形状であり、その中央付近には略楕円形の発光部11が形成されている。発光部11の両端には、ピンチシールにより形成された板状のシール部12、その両端には境界部13を介して円筒部14が連続形成されている。この内管1としては、例えば石英ガラスなどの耐熱性と透光性を具備した材料で構成されるのが望ましい。また、シール部12はシュリンクシールにより形成されることにより円柱状の形状であってもよい。
【0012】
発光部11の内部には、中央が略円柱状で、両端に向かってテーパ状となっている放電空間111が形成されている。放電空間111には、金属ハロゲン化物2および希ガスが封入されている。
【0013】
金属ハロゲン化物2は、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化スカンジウム、ヨウ化亜鉛、臭化インジウムで構成されている。ただし、金属ハロゲン化物2の組合せはこれに限らず、スズ、セシウムのハロゲン化物等を追加するなどしてもよい。放電空間111に存在するハロゲン原子は、本実施の形態のようにその大部分をヨウ素原子と臭素原子とで構成するのが望ましい。「大部分」とは、放電空間111に存在するハロゲン原子金属ハロゲン化物2に結合されたハロゲン原子の個数のうち、ヨウ素原子の個数と臭素原子の個数が全体の80%以上を占めていることを意味するものであり、上記のような割合であれば、塩素原子等を一部混在させることもできる。なお、金属ハロゲン化物2の総封入量は、ランプ電圧を好適な数値とするために、0.15〜0.35mgであるのが望ましい。
【0014】
希ガスは、キセノンが使用されている。また、希ガスとしてはキセノンとネオン、アルゴン、クリプトンなどを組み合わせた混合ガスで使用することもできる。
【0015】
ここで、本実施の形態のランプは、水銀フリーメタルハライドランプである。この「水銀フリー」とは、水銀を実質的に含んでいないという意味である。本明細書における「水銀を実質的に含んでいない」とは、水銀の封入量が0mgである場合に限られず、従来の水銀入りの放電ランプと比較してほとんど封入されていないに等しい程度の量、例えば1mlあたり2mg未満、好ましくは1mg以下の水銀量を封入している場合を含む意味に解釈すべきである。
【0016】
発光部11の両側に形成されたシール部12には、それぞれ電極マウント3が封着されている。電極マウント3は、金属箔31、電極32、コイル33およびリード線34により構成されている。
【0017】
金属箔31は、例えば、モリブデンからなる薄板状の部材である。
【0018】
電極32は、例えば、タングステンに酸化トリウムをドープした、いわゆるトリエーテッドタングステンから構成された棒状の部材である。その一端は金属箔31の発光部11側の端部に載置される形態で溶接されており、他端は放電空間111内に突出し、所定の距離を保って互いの先端部同士が対向するように対設されている。自動車前照灯の用途の場合には、電極32同士の先端間の距離を、外管5を通して観察したときに3.7〜4.4mmの範囲に位置決めするのが好ましい。なお、電極32の形状は、径が管軸方向に略一定の直棒状に限らず、先端部の径を基端部の径よりも大きくした非直棒状のもの、先端が球体であるもの、直流点灯タイプのように一方の電極径と他方の電極径が異なる形状であってもよい。また、電極材料は、純タングステン、ドープタングステン、レニウムタングステンなどであってもよい。
【0019】
コイル33は、例えば、ドープタングステンからなる金属線であって、シール部12に封着される電極32の軸部の軸周りに螺旋状に巻装されている。
【0020】
リード線34は、例えば、モリブデンからなる金属線である。リード線34の一端は、発光部11から遠位側の金属箔31の端部に載置される形態で接続されており、他端は内管1の外部まで管軸に略平行に延出されている。ランプの前端側、すなわちソケット6から遠位側に延出されたリード線34には、例えば、ニッケルからなるL字状のサポートワイヤ35の一端がレーザ溶接により接続されている。このサポートワイヤ35には、内管1と平行に延在する部位に、例えば、セラミックからなるスリーブ4が装着されている。
【0021】
上記で構成された内管1の外側には、発光部11を覆うように筒状の外管5が内管1とほぼ同心状に設けられている。これら内外管の接続は、内管1の円筒部14付近に外管5の端部をそれぞれ溶着することにより行なわれている。内管1と外管5との間に形成された閉空間51には、ガスが封入されている。このガスには、誘電体バリア放電可能なガス、例えばネオン、アルゴン、キセノン、窒素から選択された一種のガスまたは混合ガスを使用することができる。ガスの圧力は0.3atm以下、特に0.1atm以下であるのが望ましい。なお、外管5としては、内管1に熱膨張係数が近く、かつ紫外線遮断性を有する材料で構成するのが望ましく、例えば、チタン、セリウム、アルミニウム等の酸化物を添加した石英ガラスを使用することができる。
【0022】
外管5が接続された内管1の一端には、ソケット6が接続されている。これらの接続は、外管5の外周面に金属バンド71を装着し、その金属バンド71をソケット6から突出形成させた金属製の舌片72で把持することで行なっている。また、ソケット6の底部には底部端子81、側部には側部端子82が形成されており、底部端子81と側部端子82には、それぞれリード線34とサポートワイヤ35が接続されている。
【0023】
これらで構成された放電ランプは、底部端子81が高圧側、側部端子82が低圧側になるように点灯回路と接続される。自動車前照灯として使用する場合は、ランプの管軸が略水平の状態で、かつサポートワイヤ35が下方に位置するように取り付けられて点灯される。
【0024】
ここで、本形態のメタルハライドランプは、25Wの電力で点灯しても高色温度で、かつ高光束な新規の車両用の水銀フリーメタルハライドランプを実現することを目的とするものである。そのためには、まず電力を25Wに下げても、点灯中の発光部11の温度を従来の35Wのときと同程度の約920℃に維持する必要がある。電力を下げると発光部11の温度が低下する傾向があるため、発光部11を好適な温度に維持するには、放電空間111の容積を35W用のランプよりも小さくすればよい。放電空間111の容積を小さくすれば、発光部11の温度が上昇するためである。ただし、放電空間111の容積は小さすぎると寿命特性が低下する。そこで、35W用のランプの放電空間111の容積は約25mmであるのに対して、25Wで点灯する場合のランプの放電空間111の容積は、16〜22mm、特には17〜21mmに設定するのがよい。
【0025】
ただし、発光部11の温度は放電空間111の容積のみならず、キセノンの圧力や、発光部11の肉厚、内径にも影響する。発光部11の温度は、キセノンの圧力は高いほど、発光部11の肉厚、内径は小さいほど高くなる。発明者等の検討の結果、上記のような放電空間111の容積の大きさに加え、安定点灯時に供給される電力をa[W]、放電空間内に封入されたキセノンの圧力P[atm]、発光部の肉厚が最大となる部位の厚さをt[mm]、発光部の肉厚が最大となる部位の内径をd[mm]としたとき、−20≦(a−35)×5.5+(P−13.5)×10+(1.85−t)×100+(2.5−d)×100≦20を満足するように設計すれば、点灯中の発光部11の温度をさらに好適に保ちやすいことがわかった(上記数式の詳細は、特願2010−52890号を参照)。
【0026】
次に、高色温度で、かつ高光束なランプを実現するにはインジウムの封入量とキセノンの封入圧力が重要である。それらは、図3、図4に示すように、全光束及び色温度に大きな影響を与えるためである。インジウムの量を増やしたり、キセノンの圧力を減らしたりすると、安定点灯中にランプから発せられる光の全光束は減少し、色温度は増加する。発明者等の検討の結果、後述するように、インジウムのモル数[mol]をQとしたとき、0.97×10−7≦Q≦2.9×10−7を満足するとともに、常温(25℃)のときのキセノンの圧力をP[atm]としたとき、8.5≦P≦13を満足するように設計すれば、実用的な全光束および色温度を得ることができることがわかった。なお、キセノンの圧力Pは、水中で発光部11とシール部12の境界を破壊して放電空間111内部のガスを収集、測量し、その後に放電空間111の容積を測定することにより、算出することができる。
【0027】
インジウムの封入量とキセノンの封入圧力を変更して、ランプから所望の全光束および色温度を得るため、次の仕様の車両用放電ランプを基本設計の実施例として特性試験をおこなった。
(実施例1)
発光部11;石英ガラス製、放電空間111の内容積=18.4mm、最大内径=2.2mm、最大外径d=5.2mm、最大肉厚t=1.5mm、長手方向の球体長b=7.8mm、
シール部12;肉厚=2.8mm、幅=4.1mm、
金属ハロゲン化物2;ScI、NaI、ZnI、InBr(=1.0:0.6:0.12:0.34、インジウムのモル数Q=1.7×10−7mol)、合計=0.2mg、
希ガス;キセノン、ガス圧P=12atm、
水銀;0mg、
金属箔31;モリブデン製、長さ×幅=6.5mm×1.5mm、厚さ=0.02mm、
電極32;トリエーテッドタングステン製、直径=0.28mm、外観上の電極間距離=3.9mm、
コイル33;ドープタングステン製、線径=0.09mm、ピッチ=200%、電極軸におけるコイル巻装長L=3.5mm、
リード線34;モリブデン製、直径=0.4mm、
外管5;内径=7.0mm、肉厚=1.0mm、
この仕様では始動時電力55W、安定時電力25Wで点灯した場合、全光束は1952lm、色温度は4830Kであった。
【0028】
次に、インジウムの封入量とキセノンの圧力を変化させたときの全光束および色温度について試験した。その結果を図5に示す。ここで、この図において全光束が1700〜2300lm、かつ色温度が4500〜5200Kである場合を○、少なくとも一方が上記範囲外である場合を×で示している。
【0029】
結果から、インジウムの封入量Qとキセノンの圧力Pによって、全光束と色温度が変化し、全光束と色温度が望ましい場合と望ましくない場合があることがわかる。例えば、Q=1.7×10−7mol、P=10atmとしたランプ(実施例2)は、全光束は1985lm、色温度は5011Kであり、望ましい特性を備えている。一方、Q=2.5×10−9mol、P=12.5atmとしたランプ(比較例1)は、全光束は2027lm、色温度は4303Kであり、色温度が低く、Q=5.04×10−7mol、P=10.5atmとしたランプ(比較例2)は、全光束は1627lm、色温度は5879Kであり、全光束が低く、色温度は高すぎるため、望ましい特性ではない。同様にインジウムの封入量Qとキセノンの圧力Pを変化させた複数のランプについて試験した結果、インジウムの封入量Q(mol)とキセノンの圧力P(atm)が少なくとも、0.97×10−7≦Q≦2.9×10−7、かつ8.5≦P≦13を満足すれば、25Wの電力で点灯しても高色温度で、かつ高光束な新規の車両用の水銀フリーメタルハライドランプを実現可能であることがわかった。
【0030】
次に、実施例1、2および比較例1、2の安定点灯中の色度について試験した。その結果を図6に示す。なお、図中に実線で示した平行四辺形状の範囲は、JEL215で定められている自動車前照灯の白色範囲(色度(x、y)=(0.345、0.3085)、(0.345、0.3708)、(0.405、0.4092)、(0.405、0.35375)の4点で囲まれた範囲)、破線で示した複数の斜線は色温度を示している。
【0031】
結果から、実施例1、2および比較例1、2のうち、白色範囲にも入る、すなわち、図中に太線で示した範囲内に入るランプは、実施例1と実施例2だけであることがわかる。また、実施例1と実施例2とは、キセノンの圧力Pが2atm違うだけであるが、実施例2は白色範囲ぎりぎりの色度であることがわかる。つまり、高色温度、高光束で、かつ白色範囲に入るランプを実現するには、インジウムの封入量Qとキセノンの圧力Pをさらに厳しく規制する必要がある。図5で作成したランプについて色度を測定した結果、図7の◎で示したランプであれば、上記特性を満たすことがわかった。すなわち、インジウムの封入量Q(mol)とキセノンの圧力P(atm)が少なくとも、1.3×10−7≦Q≦2.54×10−7、かつ9≦P≦13を満足すれば、25Wの電力で点灯しても高色温度、高光束で、かつ白色範囲に入る新規の車両用の水銀フリーメタルハライドランプを実現することができる。
【0032】
なお、本発明のようなインジウムハロゲン化物を多量に封入する低電力のランプにおいて、寿命や特性をより向上させるため、次のような構成をさらに適用するのが望ましい。
【0033】
(1)放電空間111内の全ハロゲン原子に対する臭素原子のモル比を3%以上、30%以下にする。
【0034】
放電空間111にインジウムハロゲン化物を多く封入したり、キセノンの圧力を高めたりすると、アークの幅が細くなりやすい。アークの幅が細くなると、配光に悪影響を及ぼしかねない。これに対し、放電空間111に封入するハロゲン原子のうち、臭素原子の割合を多くすると、アークの幅が太くなる傾向がある。例えば、放電空間111中のハロゲン原子の全てがヨウ素原子である場合と比較して、臭素原子のモル比を3%にすれば、アークの幅は約3%太くなる。さらに、臭素原子を10%にすれば、アークの幅は約5%太くなり、30%にすればアークの幅は約10%太くなる。このようなことから、放電空間111内の全ハロゲン原子に対する臭素原子のモル比を3%以上、特に10%以上とするのが望ましい。ただし、臭素原子の個数の割合が多くなるとランプ電圧が低くなりやすいので、上限は30%以下であるのが望ましい。なお、放電空間111内の全ハロゲン原子の個数等は、例えばイオンクロマトグラフ測定法により、放電空間111中の陰イオンを定量分析することにより測定できる。ちなみに、実施例1では、インジウムを臭化物、ナトリウム、スカンジウム、亜鉛をヨウ化物とすることで、全ハロゲン原子に対する臭化原子のモル比を12.9%としているが、例えばスカンジウムを臭化物としたり、同じ金属でも大部分はヨウ化物、一部は臭化物としたり、ハロゲンを単体で封入するなどにより、臭化原子の封入量を調整しても構わない。
【0035】
(2)コイル33の巻装長L1(mm)を電極封着長さL2(mm)に対して0.55〜0.90、コイル径を0.05mm〜0.11mm、コイルピッチを100%〜300%、コイル33の外表面における長大結晶の割合を20%以下に設定する。
【0036】
放電空間111にインジウムハロゲン化物が多く封入されたランプでは、インジウムハロゲン化物が電極32軸に沿ってシール部12内に入り込みやすくなる。シール部12内にインジウムハロゲン化物が入り込むと電極32が封着されているシール部12においてリークに繋がるクラックが発生する可能性が高まる。このクラックを防止するには、シール部12内に封着される電極32にコイル33を巻装すると効果的であるのは公知である。が、本発明のようなランプでは、単にコイルを巻装するだけではクラックを有効に防止できないので、コイル巻装長L1(mm)と電極封着長さL2(mm)の関係L1/L2を、従来よりも長い0.55≦L1/L2にした方がよい(ただし、L1/L2≦0.90)。さらに上記のように電極32にコイル33を巻装しても、コイル33を巻装した部分においてクラックが発生しやすい。そこで、コイル径は太めの0.05mm以上(ただし、0.11mm以下)、コイルピッチは小さめの300%以下(ただし、100%以上)、コイル33の外表面における長大結晶の割合は少なめの20%以下にすることで、リークには至らないクラックをコイル33を起点とするように封止ガラスに故意に形成し、リークの原因となるクラックの成長を阻止するのが望ましい。長大結晶とは、再結晶することで長大化した結晶のことであり、長大結晶の割合とはコイル33の径方向の断面における、ガラスと接触する部分(=電極と接触する部分は除く)のコイル外周長に対する長大結晶部分のコイル外周長の割合を意味するものである。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、車両用ヘッドランプ、フォグランプその他車両用照明など種々の用途の照明装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 内管
11 発光部
111 放電空間
2 金属ハロゲン化物
3 電極マウント
31 金属箔
32 電極
5 外管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定点灯時に25Wの電力で点灯される車両用の水銀フリーメタルハライドランプであって、
内部に放電空間を有する発光部を備えた気密容器と、前記放電空間に封入されたインジウムのハロゲン化物を含む金属ハロゲン化物およびキセノンを含む希ガスと、前記放電空間内で先端部が対設された一対の電極と、を具備し、
前記発光部の放電空間の容積は16〜22mmであり、
前記インジウムのモル数[mol]をQ、前記キセノンの圧力[atm]をPとしたとき、0.97×10−7≦Q≦2.9×10−7、かつ8.5≦P≦13を満足することを特徴とする車両用の水銀フリーメタルハライドランプ。
【請求項2】
前記インジウムのモル数Q[mol]と前記キセノンの圧力P[atm]が、1.3×10−7≦Q≦2.54×10−7、かつ9≦P≦13を満足することを特徴とする請求項1に記載の車両用の水銀フリーメタルハライドランプ。
【請求項3】
前記金属ハロゲン化物に結合されたハロゲン原子には臭素原子が含まれており、前記全ハロゲン原子に対する前記臭素原子のモル比が3%以上、30%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用の水銀フリーメタルハライドランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−38612(P2012−38612A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178513(P2010−178513)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】