車両用の電動式ブレーキ装置
【課題】車両用の電動式ブレーキ装置において、電気モータの長寿命化を図る。
【解決手段】車両用の電動式ブレーキ装置は、アクセルペダルが操作量減少側に移動している際の速度であるアクセル減少速度を検出するアクセル減少速度検出手段(ステップ108)と、アクセル減少速度検出手段により検出されているアクセル減少速度が小さいほど電気モータに小さな電流を通電して、ブレーキ操作部材が操作される前に制動部材と被制動部材との隙間を第1隙間所定値になるまで小さくするモータ制御手段(ステップ108〜112,124)と、を備えている。
【解決手段】車両用の電動式ブレーキ装置は、アクセルペダルが操作量減少側に移動している際の速度であるアクセル減少速度を検出するアクセル減少速度検出手段(ステップ108)と、アクセル減少速度検出手段により検出されているアクセル減少速度が小さいほど電気モータに小さな電流を通電して、ブレーキ操作部材が操作される前に制動部材と被制動部材との隙間を第1隙間所定値になるまで小さくするモータ制御手段(ステップ108〜112,124)と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の電動式ブレーキ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用の電動式ブレーキ装置の一形式として、特許文献1に示されているものが知られている。特許文献1の図1に示されているように、車両用の電動式ブレーキ装置は、車輪と一体的に回転する被制動部材に対して押圧されることにより制動トルクを発生させる制動部材と、供給される電流により所定方向に回転されて前記制動部材を前記被制動部材に押圧する電動モータ11と、車両の状態量を検出する状態量検出手段と、検出された車両の状態量に基づいて制動トルクの変更要求量が所定量より大きいと判定されたとき前記電動モータへの電流の供給を開始する電流供給手段とを備えている。
【0003】
これによれば、車両の状態量に基づく制動トルクの変更要求量、即ち、検出された実加圧力Pと決定された目標加圧力P*との差が所定量より大きくなったときにのみ前記電動モータへの電流の供給が開始され、同電動モータが回転される。このように、電動モータの作動頻度を低減することにより、同電動モータ(特に、ブラシ付きモータ)の寿命を延ばそうとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−247306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電気モータの作動頻度の低減だけでは、ブラシの磨耗を十分に抑制することができず、ひいては電気モータの長寿命化を十分に図ることができない。
【0006】
そこで、本発明は、上述した問題を解消するためになされたもので、車両用の電動式ブレーキ装置において、電気モータの長寿命化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の構成上の特徴は、電気モータにより制動部材を被制動部材に押圧して制動力を発生させる車両用の電動式ブレーキ装置において、アクセル操作部材が操作量減少側に移動している際の速度であるアクセル減少速度を検出するアクセル減少速度検出手段と、アクセル減少速度検出手段により検出されているアクセル減少速度が小さいほど電気モータに小さな電流を通電して、ブレーキ操作部材が操作される前に制動部材と被制動部材との隙間を第1隙間所定値になるまで小さくするモータ制御手段と、を備えていることである。
【0008】
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、アクセル操作部材が操作量増加側に移動されていることを検出するアクセル操作量増加検出手段を備え、モータ制御手段は、アクセル操作量増加検出手段によりアクセル操作部材が操作量増加側に操作されていることが検出されている場合に、電気モータに電流を通電して制動部材と被制動部材との隙間を大きくすることである。
【0009】
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項1または請求項2において、アクセル操作部材が操作量増加側に移動している際の速度であるアクセル増加速度を検出するアクセル増加速度検出手段を備え、モータ制御手段は、アクセル増加速度検出手段により検出されているアクセル増加速度が小さいほど、電気モータに小さな電流を通電して制動部材と被制動部材との隙間を大きくすることである。
【0010】
請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項2または請求項3において、制動部材と被制動部材との隙間を取得する隙間取得手段を備え、モータ制御手段は、隙間取得手段により取得されている隙間が第1隙間所定値よりも大きい第2隙間所定値以下である場合に、電気モータに電流を通電して制動部材と被制動部材との隙間を大きくすることである。
【0011】
請求項5に係る発明の構成上の特徴は、請求項1乃至請求項4の何れか一項において、アクセル操作部材の操作量が0になった後の経過時間を計時する計時手段を備え、モータ制御手段は、アクセル操作部材の操作量が0となった後にブレーキ操作部材が操作されることなく計時手段により計時された経過時間が所定時間以上になった場合に、電気モータに電流を通電して制動部材と被制動部材との隙間を大きくすることである。
【0012】
請求項6に係る発明の構成上の特徴は、請求項1乃至請求項5の何れか一項において、車両状態を検出する車両状態検出手段を備え、モータ制御手段は、車両状態検出手段により検出されている車両状態が所定状態である場合に、電気モータに電流を通電して制動部材と被制動部材との隙間を変更することである。
【0013】
請求項7に係る発明の構成上の特徴は、請求項1乃至請求項6の何れか一項において、アクセル操作部材の操作量が0になった後、ブレーキ操作部材が操作された場合に、その操作当初の操作速度であるブレーキ操作開始速度を算出するブレーキ操作開始速度算出手段を備え、モータ制御手段は、ブレーキ操作開始速度算出手段により算出されているブレーキ操作開始速度が小さいほど、電気モータに小さな電流を通電して、制動部材と被制動部材との隙間を第1隙間所定値より小さくすることである。
【0014】
請求項8に係る発明の構成上の特徴は、電気モータにより制動部材を被制動部材に押圧して制動力を発生させる車両用の電動式ブレーキ装置において、ブレーキ操作部材が操作量減少側に移動する際の速度であるブレーキ減少速度を検出するブレーキ減少速度検出手段と、ブレーキ減少速度検出手段により検出されたブレーキ減少速度が小さいほど、ブレーキ操作部材の操作量が0になった後に電気モータに小さな電流を通電して制動部材と被制動部材との隙間を大きくするモータ制御手段と、を備えていることである。
【0015】
請求項9に係る発明の構成上の特徴は、請求項8において、ブレーキ操作部材が操作量減少側に移動している際の車両状態を検出する車両状態検出手段を備え、モータ制御手段は、車両状態検出手段により検出された車両状態が所定状態である場合に、電気モータに電流を通電して制動部材と被制動部材との隙間を大きくすることである。
【発明の効果】
【0016】
上記のように構成した請求項1に係る発明では、電気モータのブラシの磨耗量が当該電気モータに流れる電流の大きさの二乗に比例すること、電気モータに流れる電流のうちで始動電流の大きさが極めて大きいことに着目して、ブレーキ操作部材が操作される前に制動部材と被制動部材との隙間を第1隙間所定値になるまで小さくするようにしている。このようにブレーキ操作部材が操作される前に制動部材と被制動部材との隙間を小さくしておくことにより、ブレーキ操作部材が操作されたときの電気モータの始動電流の大きさを小さくすることができる。
【0017】
ここで、アクセル減少速度が小さいほど、アクセル操作部材の操作量が0になるまでの時間が長く、アクセル操作部材の操作量が0になった後にブレーキ操作部材が操作されるまでの時間が長くなると考えられる。そこで請求項1に係る発明では、アクセル減少速度が小さいほど電気モータに小さな電流を通電して制動部材と被制動部材との隙間を第1隙間所定値になるまで小さくしている。これにより、上述の如くブレーキ操作部材が操作される前に上記隙間を小さくするときの電気モータの始動電流の大きさを小さくすることができる。
以上説明したように電気モータの始動電流の大きさを小さくすることにより、電気モータのブラシの磨耗を抑制し、電気モータの長寿命化を図ることができる。
【0018】
ここで、アクセル操作部材が操作量増加側に移動されている場合には、アクセル操作部材の操作量が増加しておりブレーキ操作部材が操作される蓋然性が小さくなる。そこで請求項2に記載の発明では、前述の構成により、アクセル操作部材が操作量増加側に操作されていることが検出されている場合に電気モータに電流を通電して制動部材と被制動部材との隙間を大きくするようにしている。これにより、電気モータのブラシの摩耗を抑制しつつ引き摺りを低減すること(電気モータの磨耗抑制と引き摺り低減との両立を図ること)ができる。
【0019】
また、アクセル増加速度が小さいほど、アクセル操作部材が再び操作量減少側に移動する蓋然性が高い。そこで請求項3に記載の発明では、アクセル増加速度が小さいほど、電気モータに小さな電流を通電して制動部材と被制動部材との隙間を大きくするようにしている。これにより、アクセル操作部材が再び操作量減少側に移動する蓋然性が高い場合に、制動部材と被制動部材との隙間を大きくするときの始動電流の大きさが小さくなるため、制動部材と被制動部材との隙間を大きくすることに伴う電気モータのブラシの摩耗を抑制することができる。
【0020】
請求項4に記載の発明では、前述の構成により、制動部材と被制動部材との隙間が第2隙間所定値以下である場合に、すなわち引き摺りが発生する蓋然性が高い場合に電気モータに電流を通電して制動部材と被制動部材との隙間を大きくするようにしている。これにより、電気モータのブラシの摩耗抑制と引き摺り低減とを一層好適に両立させることができる。
【0021】
また、アクセル操作部材の操作量が0となった後にブレーキ操作部材が操作されることなく所定時間が経過した場合には、その後、ブレーキ操作部材が操作される蓋然性が低い。そこで請求項5に記載の発明では、前述の構成により、アクセル操作部材の操作量が0となった後にブレーキ操作部材が操作されることなく所定時間が経過した場合に、電気モータに電流を通電して制動部材と被制動部材との隙間を大きくするようにしている。これにより、電気モータのブラシの摩耗抑制と引き摺り低減とをより一層好適に両立させることができる。
【0022】
また、車両状態によっては制動部材と被制動部材との隙間を変更しないことが好ましい場合がある。そこで請求項6に記載の発明では、前述の構成により、車両状態が所定状態である場合に、電気モータに電流を通電して制動部材と被制動部材との隙間を変更するようにしている。これにより、車両の制動性能に影響を与えることなく電気モータのブラシの摩耗を抑制することができる。
【0023】
請求項7に記載の発明では、前述の構成により、アクセル操作部材の操作量が0になった後、ブレーキ操作部材が操作された場合に、ブレーキ操作開始速度が小さいほど、電気モータに小さな電流を通電して、制動部材と被制動部材との隙間を第1隙間所定値より小さくするようにしている。このように、ブレーキ操作部材の操作に応じて当該ブレーキ操作部材の操作開始に伴う電気モータの始動電流の大きさを一層小さくすることができ、電気モータのブラシの摩耗量を一層抑制することができる。
【0024】
ところで、ブレーキ減少速度が小さいほど、ブレーキ操作部材の操作量が0になった後にアクセル操作部材が直ちに操作される蓋然性が低い。そこで請求項8に記載の発明では、上述の構成により、ブレーキ減少速度が小さいほど、ブレーキ操作部材の操作量が0になった後に電気モータに小さな電流を通電して制動部材と被制動部材との隙間を大きくするようにしている。これにより、当該隙間を大きくするときの電気モータの始動電流の大きさが小さくなるため、電気モータのブラシの摩耗を抑制することができる。
【0025】
ここで、車両状態によっては制動部材と被制動部材との隙間を変更しないことが好ましい場合がある。そこで請求項9に記載の発明では、前述の構成により、車両状態が所定状態である場合に、電気モータに電流を通電して制動部材と被制動部材との隙間を変更するようにしている。これにより、車両の制動性能に影響を与えることなく、制動部材と被制動部材との隙間を大きくするときの電気モータのブラシの摩耗を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による電気式ブレーキ装置の一実施形態の構成を示す概要図である。
【図2】図1に示すブレーキECUにて実行される制御プログラム(アクセルペダルを戻す際にパッドとロータとの隙間を埋める場合)のフローチャートの一例である。
【図3】図1に示すブレーキECUにて実行される制御プログラム(アクセルペダルを戻した後にブレーキペダルを踏む場合)のフローチャートの一例である。
【図4】図1に示すブレーキECUにて実行される制御プログラム(ブレーキペダルを戻した後にアクセルペダルを踏む場合)のフローチャートの一例である。
【図5】図1に示すブレーキECUにて実行される制御プログラム(ブレーキペダルを戻した後に隙間を拡げる場合)のフローチャートの一例である。
【図6】アクセル減少速度とモータ電流との相関関係を示すマップである。
【図7】上から順番にアクセル開度、アクセル減少速度、モータ電流および隙間埋め率の各時間変化を示している図である。
【図8】上から順番に要求制動力、制動上昇速度、モータ起動電流およびピストンストロークの各時間変化を示している図である。
【図9】本発明を適用した場合の実施例のタイムチャートであり、上から順番に、アクセル量、ブレーキ量、隙間Sおよび始動電流を示している。
【図10】本発明を適用しない場合に実施例のタイムチャートであり、上から順番に、アクセル量、ブレーキ量、隙間Sおよび始動電流を示している。
【図11】アクセル増加速度とモータ電流との相関関係を示すマップである。
【図12】上から順番にアクセル開度、アクセル増加速度、モータ電流および隙間埋め率の各時間変化を示している図である。
【図13】ブレーキ減少速度とモータ電流との相関関係を示すマップである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る車両用の電気式ブレーキ装置(以下、単に電気式ブレーキ装置という。)を車両に適用した一実施形態を図面を参照して説明する。図1は電気式ブレーキ装置の構成を示す概要図である。
【0028】
電気式ブレーキ装置は、電気モータの駆動力によって発生される制動力によって車両を制動させるためのものであり、図1に示すように、ブレーキ操作部材であるブレーキペダル11、アクセル操作部材であるアクセルペダル12、左右前後輪W(図1ではそのうちの1輪(左前輪Wfl)のみ示している。)にそれぞれ設けられた電動ディスクブレーキ20と、制御装置であるブレーキECU30とを含んで構成されている。
【0029】
ブレーキペダル11には、ブレーキストロークセンサ11aが付設されている。ブレーキストロークセンサ11aは、ブレーキペダル11のストロークすなわち踏込量を検出するものであり、その検出結果はブレーキECU30に送信されるようになっている。
【0030】
アクセルペダル12には、アクセル開度センサ12aが付設されている。アクセル開度センサ12aは、アクセルペダル12の開度すなわち踏込量を検出するものであり、その検出結果はブレーキECU30に送信されるようになっている。
【0031】
電動ディスクブレーキ20は、ディスクロータ(ロータと略す場合あり)21と、一対のブレーキパッド(パッドと略す場合あり)22a,22bと、マウンティングブラケット23と、キャリパ24と、ピストン(加圧部材)25と、電気モータ26と、ボールねじ27と、位置センサ28と、圧力センサ29とを含んで構成されている。
【0032】
ディスクロータ21は、車輪Wと一体的に回転軸線Cまわりに回転する被制動部材である。ディスクロータ21の両面はそれぞれ摩擦面(図示省略)とされ、それら摩擦面に対向して一対のブレーキパッド22a,22bがそれぞれ配設されている。
【0033】
一対のブレーキパッド22a,22bは、ディスクロータ21を両側から押圧して制動力を発生させる制動部材である。各ブレーキパッド22a,22bは、前面においてディスクロータ21の各摩擦面と接触する摩擦材(図示省略)をそれぞれ備えるとともに、各摩擦材の背面に鋼製の裏板(図示省略)が固着された構造を有している。
【0034】
マウンティングブラケット23は、一対のブレーキパッド22a,22bを跨ぐ状態で車体側部材(例えば、ナックルなどのサスペンション。図示省略)に回転不能に取付けられている。マウンティングブラケット23は、一対のブレーキパッド22a,22bをディスクロータ21の回転軸線Cに平行な方向(パッド移動方向)に移動可能となるように保持している。
【0035】
キャリパ24は、パッド移動方向に沿って相対移動可能にマウンティングブラケット23に保持されている。本実施形態においては、キャリパ24は、例えばいわゆる浮動キャリパ型で構成されている。キャリパ24は、アーム(図示省略)を一体に備えていて、このアームからパッド移動方向に平行に伸びる一対のピン24a(一方のみ図示)がマウンティングブラケット23のピン孔23aに摺動可能に嵌合されている。なお、キャリパ24は、浮動キャリパ型に限らず、浮動ヨーク型または対向ピストン型で構成するようにしてもよい。
【0036】
一対のブレーキパッド22a,22bのうちの内側のインナパッド22aの背後には、ピストン25が軸方向に移動可能に配設されている。ピストン25は、所定量だけインナパッド22a方向に移動したとき、その前面において同インナパッド22aの背面に当接させられるようになっている。また、ピストン25の背後には電気モータ26が配置されている。ピストン25と電気モータ26は、パッド移動方向に平行に互いに同軸に配置されるとともに、運動変換機構としてのボールねじ27により互いに連結されている。
【0037】
電気モータ26のハウジング(図示省略)は、キャリパ24に固定されている。電気モータ26のステータ(図示省略)は、ハウジングの内側に固定されていて、金属製のコアと、コアに巻回されたコイルとを備えている。また、ステータの内側に僅かな距離を隔てて対向する状態で、永久磁石が設けられている。永久磁石は、ボールねじ27のナット(図示省略)に固定され、同ナットとともに電気モータ26のロータ(図示省略)を構成している。
【0038】
このような構成により、電気モータ26が正転(所定の方向に回転)されると、ボールねじ27の作用によりピストン25が図1において右方向に移動され、ピストン25が制動部材であるインナパッド22aを被制動部材であるディスクロータ21に向けて押動するとともに、同ディスクロータ21を押圧する。このとき、ディスクロータ21は軸方向には移動不能であるため、ピストン25がディスクロータ21を押圧すると、その反力でキャリパ24がパッド移動方向に沿って左方向にスライドする。よって、制動部材であるアウタパッド22bを被制動部材であるディスクロータ21に向けて押動するとともに、同ディスクロータ21を押圧する。
【0039】
逆に、電気モータ26が逆転(前記所定の方向と反対方向に回転)されると、ピストン25が図1において左方向に移動され、ピストン25がインナパッド22aをディスクロータ21から遠ざかる方向に移動する。このとき、キャリパ24が右方向にスライドする。よって、アウタパッド22bをディスクロータ21遠ざかる方向に移動する。
【0040】
位置センサ28は、電気モータ26のロータの回転(回転位置、回転角度)を検出するものであり、検出結果をブレーキECU30に送信している。電気モータ26のロータの回転(回転位置、回転角度)を検出することで、インナパッド22aのモータ11に対する相対位置を検出することができる。位置センサ28は、永久磁石とホール素子との組み合わせで構成されるものである。位置センサ28は、レゾルバで構成するようにしてもよい。
【0041】
ピストン25のインナパッド22aに当接する面には、歪センサである圧力センサ29が埋設されている。圧力センサ29は、ピストン25がインナパッド22aを押圧する実際の加圧力をピストン25に生じる歪み量から検出するようになっている。この検出結果はブレーキECU30に送信されている。
【0042】
ブレーキECU30は、マイクロコンピュータにより構成され、予め記憶されている制御プログラムにしたがって電気モータ26を制御、駆動する。すなわち、通常のブレーキ制御においては、ブレーキECU30は、ブレーキストロークセンサ11aにより検出されたストロークに相当する要求制動力(目標制動力)を演算し、その演算した目標制動力と圧力センサ29により検出された実際の加圧力とからフィードバック制御により駆動電流を決定し、この駆動電流により電気モータ26を駆動する。
【0043】
ブレーキECU30には、各車輪Wにそれぞれ設けられ各輪の車輪速度を検出する車輪速センサ41と、図示しない変速機の出力軸の回転を検出することにより車両の速度(以下、車速と云う。)を検出する車速センサ42と、車両の勾配を検出する勾配センサ43と、電気モータ26に通電される電流の電流値を検出するモータ電流センサ44とが接続され、各センサによって検出された検出結果が入力されるようになっている。
【0044】
次に、上記のように構成した電動式ブレーキ装置の作動について図2〜図5に示すフローチャートを参照して説明する。
【0045】
1)アクセルペダルを戻す際にパッドとロータとの隙間を埋める場合
ブレーキECU30は、図示しないイグニッションスイッチがオンされると、図2に示す電動式ブレーキ装置の制御プログラムを所定の短時間ごとに繰り返し実行する。ブレーキECU30は、ステップ102において、アクセルオフ時隙間埋めモードであるか否かを判定する。アクセルオフ時隙間埋めモードとは、アクセルペダル12が戻されている場合に、ブレーキパッド22a,22bとディスクロータ21との隙間S(以下、単に隙間Sという。)を埋める制御(隙間埋め制御)が行わるモードをいう。ブレーキECU30は、「アクセルオフ時隙間埋めモード」に設定されていれば、アクセルオフ時隙間埋めモードであると判定し、「アクセルオフ時隙間埋めモード」に設定されていなければ、アクセルオフ時隙間埋めモードでないと判定する。イグニッションスイッチオン直後は、ブレーキECU30は、「アクセルオフ時隙間埋めモード」に設定されていないので、アクセルオフ時隙間埋めモードでないと判定する。
【0046】
ブレーキECU30は、ステップ104において、アクセルペダル12の踏込量であるアクセル量が減少しているか否かを判定する。ブレーキECU30は、アクセル開度センサ12aからの検出結果を取得し、今回取得したアクセル開度と前回取得し記憶していたアクセル開度との差に基づいてアクセル量が減少しているか否かを判定する。ブレーキECU30は、今回取得したアクセル開度が前回取得し記憶していたアクセル開度より小さい場合には、アクセル量が減少していると判定し、プログラムをステップ106に進める。ブレーキECU30は、今回取得したアクセル開度が前回取得し記憶していたアクセル開度と同じまたは大きい場合には、アクセル量が一定または増加していると判定し、プログラムを一旦終了する。
【0047】
ブレーキECU30は、アクセル量の減少が開始されると、アクセルオフ時隙間埋めモードに設定する(ステップ106)。次回からステップ102にて「YES」と判定して、プログラムをステップ114の処理にジャンプさせるためである。そして、ブレーキECU30は、ステップ108において、アクセルペダル12が操作量減少側に移動している際(戻されている際)の速度であるアクセル減少速度を検出する(アクセル減少速度検出手段)。具体的には、ブレーキECU30は、ステップ104と同様に今回取得したアクセル開度と前回取得し記憶していたアクセル開度との差に基づいてアクセル減少速度を算出する。また、今回以前に取得して記憶しておいた複数のアクセル開度を平均し、その平均値からアクセル減少速度を算出するようにしてもよい。
【0048】
ブレーキECU30は、ステップ110において、電気モータ26に通電する電流値であるモータ電流(目標モータ電流値)を算出する。ブレーキECU30は、アクセル減少速度とモータ電流との関係を示すマップ(図6参照)と、先に検出したアクセル減少速度とから、ステップ108にて今回検出されたアクセル減少速度に応じたモータ電流を算出する。
【0049】
図6に示すように、アクセル減少速度とモータ電流との関係を示すマップは、アクセル減少速度が小さいほどモータ電流が小さくなるように設定されている。これは次の理由による。アクセル減少速度が小さいほど、アクセルペダル12の操作量が0になった時点からその後ブレーキペダル11の操作が開始される時点までにかかる時間が長くなると考えられる。また、電気モータ26に流れる電流を小さく抑制するためには、アクセルペダル12の操作量が0になった時点からその後ブレーキペダル11の操作が開始される時点まで隙間埋めが完了していることが必要である。よって、アクセル減少速度が小さい場合には、比較的長い時間をかけて隙間Sを埋めることができるが、一方、アクセル減少速度が大きい場合には、比較的短い時間で隙間Sを埋めなければならないからである。
【0050】
さらに、アクセル操作から隙間埋め時のモータ電流値を設定する場合について図7を参照して説明する。図7は上から順番にアクセル開度、アクセル減少速度、モータ電流および隙間埋め率の各時間変化を示している。図7においては、実線、破線、二点破線の順番にアクセルペダル12の減少速度が小さくなっている。
【0051】
アクセル開度は、アクセル開度センサ12aによって検出されている。アクセル減少速度は、アクセル開度から算出されており、アクセル開度が0になるまでにかかる時間が長いほど小さくなっている。モータ電流は、図6に示すマップと算出したアクセル減少速度とから算出される。算出されたモータ電流を電気モータ26に印可する。これにより、アクセル減少速度が小さいほど、小さいモータ電流値で隙間Sを埋めることができ、隙間Sを埋めるのにかかる時間が大きくなる。
【0052】
ブレーキECU30は、ステップ112において、ステップ110で算出したモータ電流を通電して電気モータ26を駆動させる。このとき例えば、ブレーキECU30は、モータ電流に応じたデューティ比でPWM制御を行う。すなわち、ブレーキECU30は、アクセル戻しが開始されると、同時に電気モータ26による隙間埋め制御を開始する。
【0053】
ブレーキECU30は、車両状態に応じて第1隙間所定値を第1規定値または第2規定値に切り替える。最初にブレーキECU30は、ステップ114において、車両状態を検出する(車両状態検出手段)。車両状態とは、例えば車両の走行状態のことをいい、低車速状態、高車速状態、下り坂走行状態、上り坂走行状態などがある。低車速状態および高車速状態は、車速センサ42が検出している車速と車速閾値とを比較することで検出することができる。下り坂走行状態および上り坂走行状態は、勾配センサ43が検出している勾配に基づいて検出することができる。
【0054】
次にブレーキECU30は、ステップ116〜120において、車両状態検出手段により検出されている車両状態が所定状態である場合に、電気モータ26に電流を通電して隙間(第1隙間所定値)を変更する。ブレーキECU30は、ステップ116において、ステップ114にて検出した車両状態が所定状態であるか否かを判定する。本実施形態において、所定状態は、低車速状態、下り坂走行状態である。
【0055】
ブレーキECU30は、車両状態が所定状態でないと判定した場合には、ステップ116にて「NO」と判定し、第1隙間所定値を第1規定値に設定する(ステップ118)。ブレーキECU30は、車両状態が所定状態であると判定した場合には、ステップ116にて「NO」と判定し、第1隙間所定値を第2規定値に設定する(ステップ120)。
【0056】
第1隙間所定値は、アクセルペダル12を戻す際に隙間Sを埋めるにあたってその隙間Sの所定値(目標値)を示すものである。第1規定値は、パッド22a,22bがロータ21に当接する直前であって若干の隙間が生じる値に設定されている通常の隙間所定値である。第2規定値は第1規定値より大きい値に設定されている。第2規定値は、渋滞時の低車速状態に、運転者がアクセルオフでクリープ走行させる場合に、また、下り坂走行時に運転者がアクセルオフで惰性走行させる場合に、パッド22a,22bとロータ21との間の引き摺りが発生しないような値に設定されている。
【0057】
よって、アクセルペダル12を戻す際に隙間Sを埋めるにあたってその隙間の目標値は、車両状態が所定状態でない場合には、次にブレーキペダル11が操作されることを考慮して比較的小さい隙間となる第1規定値に設定され、一方、車両状態が所定状態である場合には、パッド22a,22bとロータ21との間の引き摺りを防止する観点から通常の隙間所定値より大きい隙間である第2規定値に設定される。これにより、車両状態検出手段により検出されている車両状態が所定状態である場合に、電気モータ26に電流を通電して隙間(第1隙間所定値)を変更することができる。
【0058】
ブレーキECU30は、ステップ122において、隙間Sを取得する。隙間Sは、位置センサ28によって検出されている電気モータ26のロータの回転(回転位置、回転角度)から算出されるロータの軸方向の移動距離とロータの初期位置とから推定すればよい。なお、推定する代わりに、パッド22a,22bとロータ21との隙間Sを検出する隙間センサを設けて検出するような構成としてもよい。ブレーキECU30は、電気モータ26が駆動されているなか、隙間Sが第1隙間所定値となると、ステップ124にて「YES」と判定し、隙間埋め制御を停止する。具体的には、ブレーキECU30は、ステップ124において、隙間Sが第1隙間所定値以上であるか否かを判定する。
【0059】
ブレーキECU30は、隙間Sが第1隙間所定値未満である場合には、ステップ124にて「NO」と判定し、プログラムを一旦終了させる。ブレーキECU30は、隙間Sが第1隙間所定値以上である場合には、ステップ124にて「YES」と判定し、電気モータ26の駆動を停止させ(ステップ126)、アクセルオフ時隙間埋めモードを解除する(ステップ128)。
【0060】
2)アクセルペダルを戻した後にブレーキペダルを踏む場合
ブレーキECU30は、図示しないイグニッションスイッチがオンされると、図3に示す電動式ブレーキ装置の制御プログラムを所定の短時間ごとに繰り返し実行する。ブレーキECU30は、ステップ202において、モータ駆動中であるか否かを判定する。モータ駆動は、後述するステップ218〜222,224による電気モータ26の駆動のことをいう。ブレーキECU30は、モータ駆動中であれば(モータ駆動中フラグが1であれば)「YES」と判定し、モータ駆動中でなければ(モータ駆動中フラグが0であれば)「NO」と判定する。モータ駆動中フラグは、電気モータ26が後述するステップ218〜222,224による電気モータ26の駆動中であることを示すフラグである。イグニッションスイッチオン直後は、ブレーキECU30は、モータ駆動中でないので、ステップ202にて「NO」と判定する。
【0061】
ブレーキECU30は、ステップ204において、計時中であるか否かを判定する。計時は、アクセルペダル12が完全オフとなった時点(アクセル量=0になった時点)以降の経過時間を計測することをいう。ブレーキECU30は、計時中であれば(計時中フラグが1であれば)「YES」と判定し、計時中でなければ(計時中フラグが0であれば)「NO」と判定する。計時中フラグは、アクセル量が0になった時点以降の経過時間を計時中であることを示すフラグである。イグニッションスイッチオン直後は、ブレーキECU30は、計時中でないので、ステップ204にて「NO」と判定する。
【0062】
ブレーキECU30は、ステップ206において、上述したステップ102と同様にアクセルオフ時隙間埋めモードであるか否かを判定する。アクセルオフ時隙間埋めモードであれば「YES」と判定し、アクセルオフ時隙間埋めモードでなければ「NO」と判定する。イグニッションスイッチオン直後は、ブレーキECU30は、「アクセルオフ時隙間埋めモード」に設定されていないので、アクセルオフ時隙間埋めモードでないと判定する。
【0063】
モータ駆動中でなく、計時中でもなく、アクセルオフ時隙間埋めモードに設定されている場合には、ブレーキECU30は、ステップ202,204,206にて「NO」,「NO」,「YES」と判定し、プログラムをステップ208に進める。
【0064】
ブレーキECU30は、ステップ208において、アクセルペダル12の踏込量であるアクセル量が0になったか否かを判定する。すなわち、ブレーキECU30は、アクセルペダル12を戻すにあたって隙間Sを埋める場合に、アクセルペダル12が完全に踏み込み前の位置(初期位置)に戻ったか否かを判定する。ブレーキECU30は、アクセル開度センサ12aからの検出結果を取得し、その検出結果であるアクセル開度が0であればアクセル量が0になったと判定する。
【0065】
そして、ブレーキECU30は、ステップ210において、アクセル量が0になった時点からの経過時間の計時を開始する。すなわち、アクセルペダル12の操作量が0になった後の経過時間を計時する(計時手段)。さらに、ブレーキECU30は、ステップ212において、計時中フラグを1に設定する。なお、ブレーキECU30は、アクセル開度が0より大きい場合には、アクセル量が0になっていないと判定し、プログラムをステップ214に進める。
【0066】
ブレーキECU30は、ステップ214において、アクセル量が0になった時点からの経過時間が所定時間より小さいか否か(アクセル量が0になった時点からの経過時間が所定時間に達したか否か)を判定する。ブレーキECU30は、前記経過時間が所定時間に達するまでは、ステップ214にて「YES」と判定しプログラムをステップ216に進める。なお、所定時間は、アクセル量が0となった後に、ブレーキペダル11を操作されないと判断できる時間に設定されている。
【0067】
ブレーキECU30は、ステップ216において、ブレーキペダル11が踏み込まれたか否か(踏込開始されたか否か)を判定する。ブレーキECU30は、ブレーキストロークセンサ11aからの検出結果を取得し、その結果が0より大きい値となればブレーキペダル11が踏み込まれたと判定する。なお、ブレーキECU30は、取得した検出結果が0であればブレーキペダル11が踏み込まれていないと判定し、プログラムを一旦終了する。
【0068】
そして、ブレーキECU30は、前記経過時間が所定時間に達する前にブレーキペダル11の踏込みが開始された場合には、ステップ214,216にてそれぞれ「YES」と判定し、ステップ218〜222において、ブレーキ操作開始速度に応じて電気モータ26を駆動する。すなわち、ブレーキECU30は、ブレーキペダル11の踏込状態に応じて電気モータ26を駆動させて制動力を付与する制御を行う。
【0069】
ブレーキ操作開始速度に応じた電気モータ26の駆動について、図8を参照して説明する。図8は上から順番に要求制動力、制動上昇速度、モータ起動電流およびピストンストロークの各時間変化を示している。図8においては、実線、破線、二点破線の順番にブレーキペダル11の踏込速度が小さくなっている。
【0070】
ブレーキECU30は、ブレーキストロークセンサ11aによって検出されている踏込状態であるブレーキストロークから運転者の要求制動力を算出する。ブレーキストロークと要求制動力とは正比例の関係にある。さらに、ブレーキECU30は、ブレーキストロークまたは運転者の要求制動力から単位時間あたりの要求制動力である制動上昇速度(=ブレーキ操作開始速度)を算出する(ステップ218)。ブレーキECU30は、制動上昇速度が小さいほど小さくなるモータ起動電流(モータ電流)を算出する(ステップ220)。そして、ブレーキECU30は、その算出したモータ起動電流を電気モータ26に印加して電気モータ26を駆動する(ステップ222)。
【0071】
これにより、制動上昇速度が小さいほどすなわちブレーキペダル11の踏込速度が小さいほど、電動ディスクロータ20のピストン25のストローク速度を小さく抑制することができる。すなわち、ロータ21に対して第1隙間所定値の隙間をおいて停止しているパッド22aまたは22bの動き始めの立ち上がり速度を小さく抑制することで、電気モータ26の始動電流を小さく抑制することができる。
【0072】
一方、ブレーキECU30は、ブレーキペダル11が踏み込まれることなく、前記経過時間が所定時間を超えた場合には、ステップ214にてそれぞれ「NO」と判定し、ステップ224において、隙間Sを適正隙間とするように電気モータ26を駆動する。
【0073】
ブレーキECU30は、ステップ224において、ロータ21に対して第1隙間所定値の隙間をおいて停止しているパッド22aまたは22bをその隙間を広げるように電気モータ26を駆動する。隙間Sが適正隙間となったら、ブレーキECU30は、電気モータ30の駆動を停止する。適正隙間は、第1隙間所定値より大きく、例えばパッド22a,22bが初期位置にあるときの隙間である。
これにより、アクセルペダル12の操作量が0となった後にブレーキペダル11が操作されることなくステップ210(計時手段)により計時された経過時間が所定時間以上になった場合に、電気モータ26に電流を通電してパッド22a,22bとロータ21との隙間Sを大きくすることができる。
【0074】
前述したステップ218〜222またはステップ224の処理の後に、ブレーキECU30は、電気モータ26が駆動中であることを示すモータ駆動中フラグを1に設定する(ステップ226)。これにより、ブレーキECU30は、次回以降の上述したステップ202にて「YES」と判定し、プログラムをステップ230を経由してステップ228にジャンプすることができる。
【0075】
ブレーキECU30は、ステップ230において、現在の電気モータ26の制御が隙間Sを埋める制御であるか否かを判定する。ブレーキECU30は、上述したステップ218〜222による制御を行っている場合には、隙間Sを埋める制御であると判定し、上述したステップ224による制御を行っている場合には、隙間Sを埋める制御でない(隙間Sを拡げる制御である)と判定する。
【0076】
隙間Sを埋める制御でない場合には、ブレーキECU30は、ステップ230にて「NO」と判定し、プログラムをステップ228に進める。一方、隙間Sを埋める制御である場合には、ブレーキECU30は、ステップ230にて「YES」と判定し、プログラムをステップ232に進める。
【0077】
ブレーキECU30は、ステップ218〜222の処理によって電気モータ26が駆動されているなか、隙間Sが第1隙間所定値より小さくとなると、ステップ232にて「YES」と判定し、ステップ234のブレーキ制御に切り替える。ブレーキ制御は、電気モータ26を制御してブレーキペダル11の踏込量に応じた制動力を付与する制御である。一方、ブレーキECU30は、隙間Sが第1隙間所定値以上である場合には、ステップ232にて「NO」と判定し、プログラムをステップ228に進める。
【0078】
ブレーキECU30は、ステップ228において、電気モータ26の駆動が終了したか否かを判定する。具体的には、ブレーキECU30は、ステップ218〜222にてブレーキ操作開始速度に応じて電気モータ26の駆動を開始した場合には、ブレーキペダル11の踏込量が0になった場合に電気モータ26の駆動が終了したと判定する。また、ブレーキECU30は、ステップ224にて隙間Sを適正隙間とするように電気モータ26の駆動を開始した場合には、隙間Sが適正隙間となった場合に電気モータ26の駆動が終了したと判定する。
【0079】
ブレーキECU30は、電気モータ26の駆動が終了していない場合には、ステップ228にて「NO」と判定し、プログラムを一旦終了する。ブレーキECU30は、電気モータ26の駆動が終了した場合には、ステップ228にて「YES」と判定し、計時中フラグを0に設定し(ステップ236)、モータ駆動中フラグも0に設定する(ステップ238)。
【0080】
さらに、図2、図3に示すフローチャートによる作動について図9,10を参照して説明する。図9は本発明を適用した場合の実施例であり、図10は本発明を適用しない場合に実施例である。図9,10は、上から順番に、アクセル量、ブレーキ量、隙間Sおよび始動電流を示している。
【0081】
最初に本発明を適用した場合について説明する。時刻t1において、それまで踏み込まれていたアクセルペダル12の戻しが開始されると、同時に電気モータ26による隙間埋め制御が開始される(ステップ104〜112)。その後、隙間Sが第1隙間所定値となると隙間埋め制御が停止される(時刻t3、ステップ124,126)。このとき、アクセル減少速度が小さいほど小さなモータ電流値で電気モータ26を駆動させることで、最適(最小)のモータ電流値で隙間Sを第1隙間所定値に狭めることができる。よって、始動電流を小さく抑制することができ、電気モータ26のブラシの磨耗低減を小さく抑制することができる。
【0082】
アクセル量が0になった時点(時刻t2)から所定時間経過する前である時刻t4にブレーキペダル11の踏み込みが開始されると(ステップ208〜216)、ブレーキペダル11の踏込開始速度に応じて電気モータ26が駆動される(ステップ218〜222)。このとき、上述したように、ロータ21に対して第1隙間所定値の隙間をおいて停止しているパッド22aまたは22bの動き始めの立ち上がり速度を小さく抑制することで、電気モータ26の始動電流を小さく抑制することができる。
【0083】
その後、さらに隙間埋め制御が行われ、時刻t5に隙間Sは0となり、さらにピストン25による加圧が開始される。よって、時刻t5において、加圧時の抵抗があるので比較的大きな始動電流が流れる。
【0084】
このように、制動制御が開始される前に、予め隙間Sを第1隙間所定値まで埋めることで、始動電流を最小限に小さく抑制することができる。さらに、制動制御時には、電動ディスクブレーキ10のピストンストロークをゆっくり立ち上がらせることで、始動電流を最小限に小さく抑制することができる。
【0085】
次に本発明を適用しない場合について説明する。時刻t11において、それまで踏み込まれていたアクセルペダル12の戻しが開始され、時刻t12において、アクセル量が0になる。その後、時刻t13において、ブレーキペダル11の踏み込みが開始されると、同時に電気モータ26による隙間埋め制御が開始される。このとき、比較的大きい隙間Sを短時間で埋める必要があるため、電気モータ26を大きな電流で動作させなければならず、始動電流が本発明と比較して大きくなっていた。なお、その後、時刻t14に隙間Sは0となるが、時刻t14における始動電流は本発明の場合と同じである。
【0086】
以上のことから明らかなように、本発明を適用することで、本発明を適用しない場合と比べて、隙間を埋め始める際の始動電流を小さく抑制することができ、ひいては、電気モータ26のブラシの磨耗低減を抑制することができる。
【0087】
3)ブレーキペダルを戻した後にアクセルペダルを踏む場合
ブレーキECU30は、図示しないイグニッションスイッチがオンされると、図4に示す電動式ブレーキ装置の制御プログラムを所定の短時間ごとに繰り返し実行する。ブレーキECU30は、ステップ302において、アクセルオン時隙間開けモードであるか否かを判定する。アクセルオン時隙間開けモードとは、ブレーキペダル11が戻された後にアクセルペダル12が踏み込まれている場合に、隙間Sを開ける(拡げる)制御(隙間開け制御)が行わるモードをいう。ブレーキECU30は、「アクセルオン時隙間開けモード」に設定されていれば、アクセルオン時隙間開けモードであると判定し、「アクセルオン時隙間開けモード」に設定されていなければ、アクセルオン時隙間開けモードでないと判定する。イグニッションスイッチオン直後は、ブレーキECU30は、「アクセルオン時隙間開けモード」に設定されていないので、アクセルオン時隙間開けモードでないと判定する。
【0088】
ブレーキECU30は、ステップ304において、アクセルペダル12の踏込量であるアクセル量が増加しているか否かを判定する。すなわち、ブレーキECU30は、アクセルペダル12が操作量増加側に移動されていることを検出する(アクセル操作量増加検出手段)。ブレーキECU30は、アクセル開度センサ12aからの検出結果を取得し、今回取得したアクセル開度と前回取得し記憶していたアクセル開度との差に基づいてアクセル量が増加しているか否かを判定する。ブレーキECU30は、今回取得したアクセル開度が前回取得し記憶していたアクセル開度より大きい場合には、アクセル量が増加していると判定し、プログラムをステップ306に進める。ブレーキECU30は、今回取得したアクセル開度が前回取得し記憶していたアクセル開度と同じまたは小さい場合には、アクセル量が一定または減少していると判定し、プログラムを一旦終了する。
【0089】
ブレーキECU30は、ステップ306において、上述したステップ122と同様に隙間Sを取得する(隙間取得手段)。ブレーキECU30は、ステップ308において、隙間Sが第2隙間所定値より小さいか否かを判定する。第2隙間所定値は上述した第1隙間所定値より大きい値に設定されており、パッド22a,22bとロータ21との間で引き摺りが発生しない程度の隙間となるように設定されている。ブレーキECU30は、隙間Sが第2隙間所定値以上である場合には、すでに隙間Sはパッド22a,22bとロータ21との間で引き摺りが発生しない程度に広がっているので、それ以上拡げる必要はないため、電気モータ26を駆動しない。
【0090】
一方、ブレーキECU30は、隙間Sが第2隙間所定値未満である場合には、例えばブレーキペダル11の操作が終了した直後に隙間Sが比較的狭くなっている場合には、隙間Sはパッド22a,22bとロータ21との間で引き摺りが発生するおそれがあるので、隙間Sを拡げるべく電気モータ26を駆動する。
【0091】
詳しくは、ブレーキECU30は、アクセル量の増加が開始され、かつ、隙間Sが第2隙間所定値より小さい場合には、ステップ304,308にてそれぞれ「YES」と判定し、アクセルオン時隙間開けモードに設定する(ステップ310)。次回からステップ302にて「YES」と判定して、プログラムをステップ318の処理にジャンプさせるためである。そして、ブレーキECU30は、ステップ312において、アクセルペダル12が操作量増加側に移動している際(戻されている際)の速度であるアクセル増加速度を検出する(アクセル増加速度検出手段)。具体的には、ブレーキECU30は、ステップ304と同様に今回取得したアクセル開度と前回取得し記憶していたアクセル開度との差に基づいてアクセル増加速度を算出する。また、今回以前に取得して記憶しておいた複数のアクセル開度を平均し、その平均値からアクセル増加速度を算出するようにしてもよい。
【0092】
ブレーキECU30は、ステップ314において、電気モータ26に通電する電流値であるモータ電流(目標モータ電流値)を算出する。ブレーキECU30は、アクセル増加速度とモータ電流との関係を示すマップ(図11参照)と、先に検出したアクセル増加速度とから、ステップ312にて今回検出されたアクセル増加速度に応じたモータ電流を算出する。
【0093】
図11に示すように、アクセル増加速度とモータ電流との関係を示すマップは、アクセル増加速度が小さいほどモータ電流が小さくなるように設定されている。これは次の理由による。アクセルペダル12が操作量増加側に移動されている場合には、アクセルペダル12の操作量が大きいほどブレーキペダル11が操作される蓋然性が小さくなる。また、アクセル増加速度が小さいほど、アクセルペダル12が再び操作量減少側に移動する蓋然性が高い。よって、アクセル増加速度が小さい場合には、アクセル増加速度が大きい場合と比べてブレーキペダル11が操作されるまでの時間が短いため、隙間Sが小さい場合が好ましいからである。
【0094】
さらに、アクセル操作から隙間開け時のモータ電流値を設定する場合について図12を参照して説明する。図12は上から順番にアクセル開度、アクセル増加速度、モータ電流および隙間埋め率の各時間変化を示している。図12においては、実線、破線、二点破線の順番にアクセルペダル12の増加速度が小さくなっている。
【0095】
アクセル開度は、アクセル開度センサ12aによって検出されている。アクセル増加速度は、アクセル開度から算出されており、アクセル開度が所定の開度になるまでにかかる時間が長いほど小さくなっている。モータ電流は、図11に示すマップと算出したアクセル増加速度とから算出される。算出されたモータ電流を電気モータ26に印可する。これにより、アクセル増加速度が小さいほど、小さいモータ電流値で隙間Sを拡げることができ、隙間Sを所定の広さまで拡げるのにかかる時間が大きくなる。
【0096】
ブレーキECU30は、ステップ316において、上述したステップ112と同様にステップ314で算出したモータ電流を通電して電気モータ26を駆動させる。ブレーキECU30は、アクセル踏込が開始されると、同時に電気モータ26による隙間開け制御を開始する。
【0097】
ブレーキECU30は、上述したステップ306と同様に隙間Sを取得し(ステップ318)、電気モータ26が駆動されているなか、隙間Sが第2隙間所定値となると、ステップ320にて「YES」と判定し、隙間開け制御を停止する。具体的には、ブレーキECU30は、ステップ320において、隙間Sが第2隙間所定値以上であるか否かを判定する。
【0098】
ブレーキECU30は、隙間Sが第2隙間所定値未満である場合には、ステップ320にて「NO」と判定し、プログラムを一旦終了させる。ブレーキECU30は、隙間Sが第2隙間所定値以上である場合には、ステップ320にて「YES」と判定し、電気モータ26の駆動を停止させ(ステップ322)、アクセルオン時隙間開けモードを解除する(ステップ324)。
【0099】
4)ブレーキペダルを戻した後に隙間を拡げる場合
ブレーキECU30は、図示しないイグニッションスイッチがオンされると、図5に示す電動式ブレーキ装置の制御プログラムを所定の短時間ごとに繰り返し実行する。ブレーキECU30は、ステップ402において、ブレーキオフ時隙間開けモードであるか否かを判定する。ブレーキオフ時隙間開けモードとは、ブレーキペダル11が戻された後に隙間Sを拡げる(開ける)制御(隙間開け制御)が行わるモードをいう。ブレーキECU30は、「ブレーキオフ時隙間開けモード」に設定されていれば、ブレーキオフ時隙間開けモードであると判定し、「ブレーキオフ時隙間開けモード」に設定されていなければ、ブレーキオフ時隙間開けモードでないと判定する。イグニッションスイッチオン直後は、ブレーキECU30は、「ブレーキオフ時隙間開けモード」に設定されていないので、ブレーキオフ時隙間開けモードでないと判定する。
【0100】
ブレーキECU30は、ステップ404において、ブレーキペダル11の踏込量であるブレーキ量が減少しているか否かを判定する。ブレーキECU30は、ブレーキストロークセンサ11aからの検出結果を取得し、今回取得したブレーキストロークと前回取得し記憶していたブレーキストロークとの差に基づいてブレーキ量が減少しているか否かを判定する。ブレーキECU30は、今回取得したブレーキストロークが前回取得し記憶していたブレーキストロークより小さい場合には、ブレーキ量が減少していると判定し、プログラムをステップ408に進める。ブレーキECU30は、今回取得したブレーキストロークが前回取得し記憶していたブレーキストロークと同じまたは大きい場合には、ブレーキ量が一定または増加していると判定し、電気モータ26を制御してブレーキペダル11の踏込量に応じた制動力を付与する(ステップ406)。
【0101】
ブレーキECU30は、ステップ408において、ブレーキペダル11が操作量減少側に移動している際(戻されている際)の速度であるブレーキ減少速度を検出する(ブレーキ減少速度検出手段)。具体的には、ブレーキECU30は、ステップ404と同様に今回取得したブレーキストロークと前回取得し記憶していたブレーキストロークとの差に基づいてブレーキ減少速度を算出する。また、今回以前に取得して記憶しておいた複数のブレーキストロークを平均し、その平均値からブレーキ減少速度を算出するようにしてもよい。
【0102】
ブレーキECU30は、ステップ410において、ブレーキペダル11の踏込量であるブレーキ量が0になったか否かを判定する。すなわち、ブレーキECU30は、ブレーキペダル11を戻した後に隙間Sを埋める場合に、ブレーキペダル11が完全に踏み込み前の位置(初期位置)に戻ったか否かを判定する。ブレーキECU30は、ブレーキストロークセンサ11aからの検出結果を取得し、その検出結果であるブレーキストロークが0であればブレーキ量が0になったと判定する。
【0103】
そして、ブレーキECU30は、ステップ406によるブレーキ制御を一旦停止し(ステップ412)、ブレーキオフ時隙間開けモードに設定する(ステップ414)。次回からステップ402にて「YES」と判定して、プログラムをステップ420の処理にジャンプさせるためである。なお、ブレーキECU30は、ブレーキストロークが0より大きい場合には、ブレーキ量が0になっていないと判定し、プログラムをステップ406に進める。
【0104】
運転者によって踏込中のブレーキペダル11が完全に戻されると(ブレーキ量が0になると)、隙間Sを拡げる制御が行われる。すなわち、ブレーキECU30は、ステップ416において、電気モータ26に通電する電流値であるモータ電流(目標モータ電流値)を算出する。ブレーキECU30は、ブレーキ減少速度とモータ電流との関係を示すマップ(図13参照)と、今回検出したブレーキ減少速度とから、今回検出されたブレーキ減少速度に応じたモータ電流を算出する。
図13に示すように、ブレーキ減少速度とモータ電流との関係を示すマップは、ブレーキ減少速度が小さいほどモータ電流が小さくなるように設定されている。これは、ブレーキ減少速度が小さいほど、ブレーキペダル11の操作量が0になった後にアクセルペダル12が直ちに操作される蓋然性が低いからである。
【0105】
ブレーキECU30は、ステップ418において、ステップ416で算出したモータ電流を通電して電気モータ26を駆動させる。このとき例えば、ブレーキECU30は、モータ電流に応じたデューティ比でPWM制御を行う。すなわち、ブレーキECU30は、ブレーキペダル11が完全に戻されると、同時に電気モータ26による隙間開け制御を開始する。
【0106】
ブレーキECU30は、車両状態に応じて第3隙間所定値を第3規定値または第4規定値に切り替える。最初にブレーキECU30は、ステップ420において、上述したステップ114と同様に車両状態を検出する(車両状態検出手段)。次にブレーキECU30は、ステップ422〜426において、車両状態検出手段により検出されている車両状態が所定状態である場合に、電気モータ26に電流を通電して隙間(第3隙間所定値)を変更する。ブレーキECU30は、ステップ422において、ステップ420にて検出した車両状態が所定状態であるか否かを判定する。本実施形態において、所定状態は、低車速状態、下り坂走行状態である。
【0107】
ブレーキECU30は、車両状態が所定状態でないと判定した場合には、ステップ422にて「NO」と判定し、第3隙間所定値を第3規定値に設定する(ステップ424)。ブレーキECU30は、車両状態が所定状態であると判定した場合には、ステップ422にて「NO」と判定し、第3隙間所定値を第4規定値に設定する(ステップ426)。
【0108】
第3隙間所定値は、ブレーキペダル11を戻した後に隙間Sを拡げるにあたってその隙間Sの所定値(目標値)を示すものである。第3規定値は、パッド22a,22bが初期位置に戻ってロータ21との間に形成される隙間(上述した適正隙間)と同じ値に設定されている。第4規定値は第3規定値より小さい値に設定されており、例えば上述した第2規定値と同じ値に設定してもよい。
【0109】
よって、ブレーキペダル11を戻した後に隙間Sを拡げるにあたってその隙間Sの目標値は、車両状態が所定状態でない場合には、次にブレーキペダル11が操作されない蓋然性が低いことを考慮して比較的大きい隙間となる第3規定値に設定される。一方、車両状態が所定状態(例えば渋滞時の低車速状態や下り坂の慣性走行状態)である場合には、比較的早いタイミングでブレーキ操作をする可能性が高いため予め隙間Sを小さくすることで次回のブレーキ操作時にモータ電流を小さく抑制する観点とパッド22a,22bとロータ21との間の引き摺りを防止する観点との両立を図るため、適正隙間より小さい隙間である第4規定値に設定される。これにより、車両状態検出手段により検出されている車両状態が所定状態である場合に、電気モータ26に電流を通電して隙間(第3隙間所定値)を変更することができる。
【0110】
ブレーキECU30は、ステップ428において、上述したステップ122と同様に隙間Sを取得する。ブレーキECU30は、電気モータ26が駆動されているなか、隙間Sが第3隙間所定値となると、ステップ430にて「YES」と判定し、隙間開け制御を停止する。具体的には、ブレーキECU30は、ステップ430において、隙間Sが第3隙間所定値以上であるか否かを判定する。
ブレーキECU30は、隙間Sが第3隙間所定値未満である場合には、ステップ430にて「NO」と判定し、プログラムを一旦終了させる。ブレーキECU30は、隙間Sが第3隙間所定値以上である場合には、ステップ430にて「YES」と判定し、電気モータ26の駆動を停止させ(ステップ432)、ブレーキオフ時隙間開けモードを解除する(ステップ434)。
【0111】
上述したことから明らかなように、本実施形態によれば、電気モータ26のブラシの磨耗量が当該電気モータ26に流れる電流の大きさの二乗に比例すること、電気モータ26に流れる電流のうちで始動電流の大きさが極めて大きいことに着目して、ブレーキペダル11が操作される前にパッド22a,22bとロータ21との隙間Sを第1隙間所定値になるまで小さくするようにしている。このようにブレーキペダル11が操作される前にパッド22a,22bとロータ21との隙間Sを小さくしておくことにより、ブレーキペダル11が操作されたときの電気モータ26の始動電流の大きさを小さくすることができる。
【0112】
ここで、アクセル減少速度が小さいほど、アクセルペダル12の操作量が0になるまでの時間が長く、アクセルペダル12の操作量が0になった後にブレーキペダル11が操作されるまでの時間が長くなると考えられる。そこで本実施形態では、アクセル減少速度が小さいほど電気モータ26に小さな電流を通電してパッド22a,22bとロータ21との隙間Sを第1隙間所定値になるまで小さくしている。これにより、上述の如くブレーキペダル11が操作される前に上記隙間Sを小さくするときの電気モータ26の始動電流の大きさを小さくすることができる。
以上説明したように電気モータ26の始動電流の大きさを小さくすることにより、電気モータ26のブラシの磨耗を抑制し、電気モータ26の長寿命化を図ることができる。
【0113】
ここで、アクセルペダル12が操作量増加側に移動されている場合には、アクセルペダル12の操作量が増加しておりブレーキペダル11が操作される蓋然性が小さくなる。そこで、アクセルペダル12が操作量増加側に移動されていることを検出するアクセル操作量増加検出手段(ステップ304)を備え、モータ制御手段は、アクセル操作量増加検出手段によりアクセルペダル12が操作量増加側に操作されていることが検出されている場合に、電気モータ26に電流を通電してパッド22a,22bとロータ21との隙間Sを大きくする(ステップ316)。よって、アクセルペダル12が操作量増加側に操作されていることが検出されている場合に電気モータ26に電流を通電してパッド22a,22bとロータ21との隙間Sを大きくするようにしている。これにより、電気モータ26のブラシの摩耗を抑制しつつ引き摺りを低減すること(電気モータ26の磨耗抑制と引き摺り低減との両立を図ること)ができる。
【0114】
また、アクセル増加速度が小さいほど、アクセルペダル12が再び操作量減少側に移動する蓋然性が高い。そこで、アクセルペダル12が操作量増加側に移動している際の速度であるアクセル増加速度を検出するアクセル増加速度検出手段(ステップ312)を備え、モータ制御手段は、アクセル増加速度検出手段により検出されているアクセル増加速度が小さいほど、電気モータ26に小さな電流を通電してパッド22a,22bとロータ21との隙間Sを大きくする(ステップ314,316)。よって、アクセル増加速度が小さいほど、電気モータ26に小さな電流を通電してパッド22a,22bとロータ21との隙間Sを大きくするようにしている。これにより、アクセルペダル12が再び操作量減少側に移動する蓋然性が高い場合に、パッド22a,22bとロータ21との隙間Sを大きくするときの始動電流の大きさが小さくなるため、パッド22a,22bとロータ21との隙間Sを大きくすることに伴う電気モータ26のブラシの摩耗を抑制することができる。
【0115】
また、パッド22a,22bとロータ21との隙間Sを取得する隙間取得手段(ステップ306,318)を備え、モータ制御手段は、隙間取得手段により取得されている隙間Sが第1隙間所定値よりも大きい第2隙間所定値以下である場合に、電気モータ26に電流を通電してパッド22a,22bとロータ21との隙間Sを大きくする(ステップ312〜316,320)。これにより、パッド22a,22bとロータ21との隙間Sが第2隙間所定値以下である場合に、すなわち引き摺りが発生する蓋然性が高い場合に電気モータ26に電流を通電してパッド22a,22bとロータ21との隙間Sを大きくするようにしている。これにより、電気モータ26のブラシの摩耗抑制と引き摺り低減とを一層好適に両立させることができる。
【0116】
また、アクセルペダル12の操作量が0となった後にブレーキペダル11が操作されることなく所定時間が経過した場合には、その後、ブレーキペダル11が操作される蓋然性が低い。そこで、アクセルペダル12の操作量が0になった後の経過時間を計時する計時手段(ステップ210)を備え、モータ制御手段は、アクセルペダル12の操作量が0となった後にブレーキペダル11が操作されることなく計時手段により計時された経過時間が所定時間以上になった場合に、電気モータ26に電流を通電してパッド22a,22bとロータ21との隙間Sを大きくする(ステップ214,224)。よって、アクセルペダル12の操作量が0となった後にブレーキペダル11が操作されることなく所定時間が経過した場合に、電気モータ26に電流を通電してパッド22a,22bとロータ21との隙間Sを大きくするようにしている。これにより、電気モータ26のブラシの摩耗抑制と引き摺り低減とをより一層好適に両立させることができる。
【0117】
また、車両状態によってはパッド22a,22bとロータ21との隙間Sを変更しないことが好ましい場合がある。そこで、車両状態を検出する車両状態検出手段(ステップ114)を備え、モータ制御手段は、車両状態検出手段により検出されている車両状態が所定状態である場合に、電気モータ26に電流を通電してパッド22a,22bとロータ21との隙間Sを変更する(ステップ116,120)。よって、車両状態が所定状態である場合に、電気モータ26に電流を通電してパッド22a,22bとロータ21との隙間Sを変更するようにしている。これにより、車両の制動性能に影響を与えることなく電気モータ26のブラシの摩耗を抑制することができる。
【0118】
また、アクセルペダル12の操作量が0になった後、ブレーキペダル11が操作された場合に、その操作当初の操作速度であるブレーキ操作開始速度を算出するブレーキ操作開始速度算出手段(ステップ218)を備え、モータ制御手段は、ブレーキ操作開始速度算出手段により算出されているブレーキ操作開始速度が小さいほど、電気モータ26に小さな電流を通電して、パッド22a,22bとロータ21との隙間Sを第1隙間所定値より小さくする(ステップ218〜222,232)。これにより、アクセルペダル12の操作量が0になった後、ブレーキペダル11が操作された場合に、ブレーキ操作開始速度が小さいほど、電気モータ26に小さな電流を通電して、パッド22a,22bとロータ21との隙間Sを第1隙間所定値より小さくするようにしている。このように、ブレーキ操作部材の操作に応じて当該ブレーキペダル11の操作開始に伴う電気モータ26の始動電流の大きさを一層小さくすることができ、電気モータ26のブラシの摩耗量を一層抑制することができる。
【0119】
ところで、ブレーキ減少速度が小さいほど、ブレーキペダル11の操作量が0になった後にアクセルペダル12が直ちに操作される蓋然性が低い。そこで、上述した実施形態では、ブレーキ減少速度が小さいほど、ブレーキペダル11の操作量が0になった後に電気モータ26に小さな電流を通電してパッド22a,22bとロータ21との隙間Sを大きくするようにしている(ステップ410,416,418)。これにより、当該隙間Sを大きくするときの電気モータ26の始動電流の大きさが小さくなるため、電気モータ26のブラシの摩耗を抑制することができる。
【0120】
ここで、車両状態によってはパッド22a,22bとロータ21との隙間Sを変更しないことが好ましい場合が考えられる。そこで、ブレーキペダル11が操作量減少側に移動している際の車両状態を検出する車両状態検出手段(ステップ420)を備え、モータ制御手段は、車両状態検出手段により検出された車両状態が所定状態である場合に、電気モータ26に電流を通電してパッド22a,22bとロータ21との隙間Sを大きくする(ステップ422,426)。よって、車両状態が所定状態である場合に、電気モータ26に電流を通電してパッド22a,22bとロータ21との隙間Sを変更するようにしている。これにより、車両の制動性能に影響を与えることなく、パッド22a,22bとロータ21との隙間Sを大きくするときの電気モータ26のブラシの摩耗を抑制することができる。
【0121】
なお、上述した電気式ブレーキ装置に係る実施形態においては、電動ディスクブレーキを採用するようにしたが、電動ドラムブレーキを採用するようにしてもよい。この場合、電動ドラムブレーキは、車輪と一体的に回転する被制動部材であるドラムと、車体側部材であるバッキングプレートに回転不能に保持されるとともに前記ドラムに対して所定のクリアランス(間隔)を有するように配設された制動部材としてのブレーキシューと、供給される電流に応じた力を発生する直流電気モータと、前記ブレーキシューの位置を検出する位置センサと、加圧力センサとを含んでいて、前記電気モータの発生する力により前記ブレーキシューを前記ドラムの内周面に向けて移動(押動)させて当接させ、さらに同ブレーキシューを同ドラムの内周面に押圧することで車輪の回転を抑制する制動トルクを発生するようになっている。
【符号の説明】
【0122】
11…ブレーキペダル(ブレーキ操作部材)、11a…ブレーキストロークセンサ(ブレーキ踏込状態検出手段)、12…アクセルペダル(アクセル操作部材)、12a…アクセル開度センサ(アクセル踏込状態検出手段)、20…電動ディスクブレーキ、21…ディスクロータ(被制動部材)、22a,22b…ブレーキパッド(制動部材)、25…ピストン、26…電気モータ、30…ブレーキECU(モータ制御手段、アクセル減少速度検出手段、アクセル操作量増加検出手段、アクセル増加速度検出手段、隙間取得手段、計時手段、車両状態検出手段、ブレーキ操作開始速度算出手段、ブレーキ減少速度検出手段)、41…車輪速センサ、42…車速センサ、43…勾配センサ、W…車輪。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の電動式ブレーキ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用の電動式ブレーキ装置の一形式として、特許文献1に示されているものが知られている。特許文献1の図1に示されているように、車両用の電動式ブレーキ装置は、車輪と一体的に回転する被制動部材に対して押圧されることにより制動トルクを発生させる制動部材と、供給される電流により所定方向に回転されて前記制動部材を前記被制動部材に押圧する電動モータ11と、車両の状態量を検出する状態量検出手段と、検出された車両の状態量に基づいて制動トルクの変更要求量が所定量より大きいと判定されたとき前記電動モータへの電流の供給を開始する電流供給手段とを備えている。
【0003】
これによれば、車両の状態量に基づく制動トルクの変更要求量、即ち、検出された実加圧力Pと決定された目標加圧力P*との差が所定量より大きくなったときにのみ前記電動モータへの電流の供給が開始され、同電動モータが回転される。このように、電動モータの作動頻度を低減することにより、同電動モータ(特に、ブラシ付きモータ)の寿命を延ばそうとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−247306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電気モータの作動頻度の低減だけでは、ブラシの磨耗を十分に抑制することができず、ひいては電気モータの長寿命化を十分に図ることができない。
【0006】
そこで、本発明は、上述した問題を解消するためになされたもので、車両用の電動式ブレーキ装置において、電気モータの長寿命化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の構成上の特徴は、電気モータにより制動部材を被制動部材に押圧して制動力を発生させる車両用の電動式ブレーキ装置において、アクセル操作部材が操作量減少側に移動している際の速度であるアクセル減少速度を検出するアクセル減少速度検出手段と、アクセル減少速度検出手段により検出されているアクセル減少速度が小さいほど電気モータに小さな電流を通電して、ブレーキ操作部材が操作される前に制動部材と被制動部材との隙間を第1隙間所定値になるまで小さくするモータ制御手段と、を備えていることである。
【0008】
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、アクセル操作部材が操作量増加側に移動されていることを検出するアクセル操作量増加検出手段を備え、モータ制御手段は、アクセル操作量増加検出手段によりアクセル操作部材が操作量増加側に操作されていることが検出されている場合に、電気モータに電流を通電して制動部材と被制動部材との隙間を大きくすることである。
【0009】
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項1または請求項2において、アクセル操作部材が操作量増加側に移動している際の速度であるアクセル増加速度を検出するアクセル増加速度検出手段を備え、モータ制御手段は、アクセル増加速度検出手段により検出されているアクセル増加速度が小さいほど、電気モータに小さな電流を通電して制動部材と被制動部材との隙間を大きくすることである。
【0010】
請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項2または請求項3において、制動部材と被制動部材との隙間を取得する隙間取得手段を備え、モータ制御手段は、隙間取得手段により取得されている隙間が第1隙間所定値よりも大きい第2隙間所定値以下である場合に、電気モータに電流を通電して制動部材と被制動部材との隙間を大きくすることである。
【0011】
請求項5に係る発明の構成上の特徴は、請求項1乃至請求項4の何れか一項において、アクセル操作部材の操作量が0になった後の経過時間を計時する計時手段を備え、モータ制御手段は、アクセル操作部材の操作量が0となった後にブレーキ操作部材が操作されることなく計時手段により計時された経過時間が所定時間以上になった場合に、電気モータに電流を通電して制動部材と被制動部材との隙間を大きくすることである。
【0012】
請求項6に係る発明の構成上の特徴は、請求項1乃至請求項5の何れか一項において、車両状態を検出する車両状態検出手段を備え、モータ制御手段は、車両状態検出手段により検出されている車両状態が所定状態である場合に、電気モータに電流を通電して制動部材と被制動部材との隙間を変更することである。
【0013】
請求項7に係る発明の構成上の特徴は、請求項1乃至請求項6の何れか一項において、アクセル操作部材の操作量が0になった後、ブレーキ操作部材が操作された場合に、その操作当初の操作速度であるブレーキ操作開始速度を算出するブレーキ操作開始速度算出手段を備え、モータ制御手段は、ブレーキ操作開始速度算出手段により算出されているブレーキ操作開始速度が小さいほど、電気モータに小さな電流を通電して、制動部材と被制動部材との隙間を第1隙間所定値より小さくすることである。
【0014】
請求項8に係る発明の構成上の特徴は、電気モータにより制動部材を被制動部材に押圧して制動力を発生させる車両用の電動式ブレーキ装置において、ブレーキ操作部材が操作量減少側に移動する際の速度であるブレーキ減少速度を検出するブレーキ減少速度検出手段と、ブレーキ減少速度検出手段により検出されたブレーキ減少速度が小さいほど、ブレーキ操作部材の操作量が0になった後に電気モータに小さな電流を通電して制動部材と被制動部材との隙間を大きくするモータ制御手段と、を備えていることである。
【0015】
請求項9に係る発明の構成上の特徴は、請求項8において、ブレーキ操作部材が操作量減少側に移動している際の車両状態を検出する車両状態検出手段を備え、モータ制御手段は、車両状態検出手段により検出された車両状態が所定状態である場合に、電気モータに電流を通電して制動部材と被制動部材との隙間を大きくすることである。
【発明の効果】
【0016】
上記のように構成した請求項1に係る発明では、電気モータのブラシの磨耗量が当該電気モータに流れる電流の大きさの二乗に比例すること、電気モータに流れる電流のうちで始動電流の大きさが極めて大きいことに着目して、ブレーキ操作部材が操作される前に制動部材と被制動部材との隙間を第1隙間所定値になるまで小さくするようにしている。このようにブレーキ操作部材が操作される前に制動部材と被制動部材との隙間を小さくしておくことにより、ブレーキ操作部材が操作されたときの電気モータの始動電流の大きさを小さくすることができる。
【0017】
ここで、アクセル減少速度が小さいほど、アクセル操作部材の操作量が0になるまでの時間が長く、アクセル操作部材の操作量が0になった後にブレーキ操作部材が操作されるまでの時間が長くなると考えられる。そこで請求項1に係る発明では、アクセル減少速度が小さいほど電気モータに小さな電流を通電して制動部材と被制動部材との隙間を第1隙間所定値になるまで小さくしている。これにより、上述の如くブレーキ操作部材が操作される前に上記隙間を小さくするときの電気モータの始動電流の大きさを小さくすることができる。
以上説明したように電気モータの始動電流の大きさを小さくすることにより、電気モータのブラシの磨耗を抑制し、電気モータの長寿命化を図ることができる。
【0018】
ここで、アクセル操作部材が操作量増加側に移動されている場合には、アクセル操作部材の操作量が増加しておりブレーキ操作部材が操作される蓋然性が小さくなる。そこで請求項2に記載の発明では、前述の構成により、アクセル操作部材が操作量増加側に操作されていることが検出されている場合に電気モータに電流を通電して制動部材と被制動部材との隙間を大きくするようにしている。これにより、電気モータのブラシの摩耗を抑制しつつ引き摺りを低減すること(電気モータの磨耗抑制と引き摺り低減との両立を図ること)ができる。
【0019】
また、アクセル増加速度が小さいほど、アクセル操作部材が再び操作量減少側に移動する蓋然性が高い。そこで請求項3に記載の発明では、アクセル増加速度が小さいほど、電気モータに小さな電流を通電して制動部材と被制動部材との隙間を大きくするようにしている。これにより、アクセル操作部材が再び操作量減少側に移動する蓋然性が高い場合に、制動部材と被制動部材との隙間を大きくするときの始動電流の大きさが小さくなるため、制動部材と被制動部材との隙間を大きくすることに伴う電気モータのブラシの摩耗を抑制することができる。
【0020】
請求項4に記載の発明では、前述の構成により、制動部材と被制動部材との隙間が第2隙間所定値以下である場合に、すなわち引き摺りが発生する蓋然性が高い場合に電気モータに電流を通電して制動部材と被制動部材との隙間を大きくするようにしている。これにより、電気モータのブラシの摩耗抑制と引き摺り低減とを一層好適に両立させることができる。
【0021】
また、アクセル操作部材の操作量が0となった後にブレーキ操作部材が操作されることなく所定時間が経過した場合には、その後、ブレーキ操作部材が操作される蓋然性が低い。そこで請求項5に記載の発明では、前述の構成により、アクセル操作部材の操作量が0となった後にブレーキ操作部材が操作されることなく所定時間が経過した場合に、電気モータに電流を通電して制動部材と被制動部材との隙間を大きくするようにしている。これにより、電気モータのブラシの摩耗抑制と引き摺り低減とをより一層好適に両立させることができる。
【0022】
また、車両状態によっては制動部材と被制動部材との隙間を変更しないことが好ましい場合がある。そこで請求項6に記載の発明では、前述の構成により、車両状態が所定状態である場合に、電気モータに電流を通電して制動部材と被制動部材との隙間を変更するようにしている。これにより、車両の制動性能に影響を与えることなく電気モータのブラシの摩耗を抑制することができる。
【0023】
請求項7に記載の発明では、前述の構成により、アクセル操作部材の操作量が0になった後、ブレーキ操作部材が操作された場合に、ブレーキ操作開始速度が小さいほど、電気モータに小さな電流を通電して、制動部材と被制動部材との隙間を第1隙間所定値より小さくするようにしている。このように、ブレーキ操作部材の操作に応じて当該ブレーキ操作部材の操作開始に伴う電気モータの始動電流の大きさを一層小さくすることができ、電気モータのブラシの摩耗量を一層抑制することができる。
【0024】
ところで、ブレーキ減少速度が小さいほど、ブレーキ操作部材の操作量が0になった後にアクセル操作部材が直ちに操作される蓋然性が低い。そこで請求項8に記載の発明では、上述の構成により、ブレーキ減少速度が小さいほど、ブレーキ操作部材の操作量が0になった後に電気モータに小さな電流を通電して制動部材と被制動部材との隙間を大きくするようにしている。これにより、当該隙間を大きくするときの電気モータの始動電流の大きさが小さくなるため、電気モータのブラシの摩耗を抑制することができる。
【0025】
ここで、車両状態によっては制動部材と被制動部材との隙間を変更しないことが好ましい場合がある。そこで請求項9に記載の発明では、前述の構成により、車両状態が所定状態である場合に、電気モータに電流を通電して制動部材と被制動部材との隙間を変更するようにしている。これにより、車両の制動性能に影響を与えることなく、制動部材と被制動部材との隙間を大きくするときの電気モータのブラシの摩耗を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による電気式ブレーキ装置の一実施形態の構成を示す概要図である。
【図2】図1に示すブレーキECUにて実行される制御プログラム(アクセルペダルを戻す際にパッドとロータとの隙間を埋める場合)のフローチャートの一例である。
【図3】図1に示すブレーキECUにて実行される制御プログラム(アクセルペダルを戻した後にブレーキペダルを踏む場合)のフローチャートの一例である。
【図4】図1に示すブレーキECUにて実行される制御プログラム(ブレーキペダルを戻した後にアクセルペダルを踏む場合)のフローチャートの一例である。
【図5】図1に示すブレーキECUにて実行される制御プログラム(ブレーキペダルを戻した後に隙間を拡げる場合)のフローチャートの一例である。
【図6】アクセル減少速度とモータ電流との相関関係を示すマップである。
【図7】上から順番にアクセル開度、アクセル減少速度、モータ電流および隙間埋め率の各時間変化を示している図である。
【図8】上から順番に要求制動力、制動上昇速度、モータ起動電流およびピストンストロークの各時間変化を示している図である。
【図9】本発明を適用した場合の実施例のタイムチャートであり、上から順番に、アクセル量、ブレーキ量、隙間Sおよび始動電流を示している。
【図10】本発明を適用しない場合に実施例のタイムチャートであり、上から順番に、アクセル量、ブレーキ量、隙間Sおよび始動電流を示している。
【図11】アクセル増加速度とモータ電流との相関関係を示すマップである。
【図12】上から順番にアクセル開度、アクセル増加速度、モータ電流および隙間埋め率の各時間変化を示している図である。
【図13】ブレーキ減少速度とモータ電流との相関関係を示すマップである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る車両用の電気式ブレーキ装置(以下、単に電気式ブレーキ装置という。)を車両に適用した一実施形態を図面を参照して説明する。図1は電気式ブレーキ装置の構成を示す概要図である。
【0028】
電気式ブレーキ装置は、電気モータの駆動力によって発生される制動力によって車両を制動させるためのものであり、図1に示すように、ブレーキ操作部材であるブレーキペダル11、アクセル操作部材であるアクセルペダル12、左右前後輪W(図1ではそのうちの1輪(左前輪Wfl)のみ示している。)にそれぞれ設けられた電動ディスクブレーキ20と、制御装置であるブレーキECU30とを含んで構成されている。
【0029】
ブレーキペダル11には、ブレーキストロークセンサ11aが付設されている。ブレーキストロークセンサ11aは、ブレーキペダル11のストロークすなわち踏込量を検出するものであり、その検出結果はブレーキECU30に送信されるようになっている。
【0030】
アクセルペダル12には、アクセル開度センサ12aが付設されている。アクセル開度センサ12aは、アクセルペダル12の開度すなわち踏込量を検出するものであり、その検出結果はブレーキECU30に送信されるようになっている。
【0031】
電動ディスクブレーキ20は、ディスクロータ(ロータと略す場合あり)21と、一対のブレーキパッド(パッドと略す場合あり)22a,22bと、マウンティングブラケット23と、キャリパ24と、ピストン(加圧部材)25と、電気モータ26と、ボールねじ27と、位置センサ28と、圧力センサ29とを含んで構成されている。
【0032】
ディスクロータ21は、車輪Wと一体的に回転軸線Cまわりに回転する被制動部材である。ディスクロータ21の両面はそれぞれ摩擦面(図示省略)とされ、それら摩擦面に対向して一対のブレーキパッド22a,22bがそれぞれ配設されている。
【0033】
一対のブレーキパッド22a,22bは、ディスクロータ21を両側から押圧して制動力を発生させる制動部材である。各ブレーキパッド22a,22bは、前面においてディスクロータ21の各摩擦面と接触する摩擦材(図示省略)をそれぞれ備えるとともに、各摩擦材の背面に鋼製の裏板(図示省略)が固着された構造を有している。
【0034】
マウンティングブラケット23は、一対のブレーキパッド22a,22bを跨ぐ状態で車体側部材(例えば、ナックルなどのサスペンション。図示省略)に回転不能に取付けられている。マウンティングブラケット23は、一対のブレーキパッド22a,22bをディスクロータ21の回転軸線Cに平行な方向(パッド移動方向)に移動可能となるように保持している。
【0035】
キャリパ24は、パッド移動方向に沿って相対移動可能にマウンティングブラケット23に保持されている。本実施形態においては、キャリパ24は、例えばいわゆる浮動キャリパ型で構成されている。キャリパ24は、アーム(図示省略)を一体に備えていて、このアームからパッド移動方向に平行に伸びる一対のピン24a(一方のみ図示)がマウンティングブラケット23のピン孔23aに摺動可能に嵌合されている。なお、キャリパ24は、浮動キャリパ型に限らず、浮動ヨーク型または対向ピストン型で構成するようにしてもよい。
【0036】
一対のブレーキパッド22a,22bのうちの内側のインナパッド22aの背後には、ピストン25が軸方向に移動可能に配設されている。ピストン25は、所定量だけインナパッド22a方向に移動したとき、その前面において同インナパッド22aの背面に当接させられるようになっている。また、ピストン25の背後には電気モータ26が配置されている。ピストン25と電気モータ26は、パッド移動方向に平行に互いに同軸に配置されるとともに、運動変換機構としてのボールねじ27により互いに連結されている。
【0037】
電気モータ26のハウジング(図示省略)は、キャリパ24に固定されている。電気モータ26のステータ(図示省略)は、ハウジングの内側に固定されていて、金属製のコアと、コアに巻回されたコイルとを備えている。また、ステータの内側に僅かな距離を隔てて対向する状態で、永久磁石が設けられている。永久磁石は、ボールねじ27のナット(図示省略)に固定され、同ナットとともに電気モータ26のロータ(図示省略)を構成している。
【0038】
このような構成により、電気モータ26が正転(所定の方向に回転)されると、ボールねじ27の作用によりピストン25が図1において右方向に移動され、ピストン25が制動部材であるインナパッド22aを被制動部材であるディスクロータ21に向けて押動するとともに、同ディスクロータ21を押圧する。このとき、ディスクロータ21は軸方向には移動不能であるため、ピストン25がディスクロータ21を押圧すると、その反力でキャリパ24がパッド移動方向に沿って左方向にスライドする。よって、制動部材であるアウタパッド22bを被制動部材であるディスクロータ21に向けて押動するとともに、同ディスクロータ21を押圧する。
【0039】
逆に、電気モータ26が逆転(前記所定の方向と反対方向に回転)されると、ピストン25が図1において左方向に移動され、ピストン25がインナパッド22aをディスクロータ21から遠ざかる方向に移動する。このとき、キャリパ24が右方向にスライドする。よって、アウタパッド22bをディスクロータ21遠ざかる方向に移動する。
【0040】
位置センサ28は、電気モータ26のロータの回転(回転位置、回転角度)を検出するものであり、検出結果をブレーキECU30に送信している。電気モータ26のロータの回転(回転位置、回転角度)を検出することで、インナパッド22aのモータ11に対する相対位置を検出することができる。位置センサ28は、永久磁石とホール素子との組み合わせで構成されるものである。位置センサ28は、レゾルバで構成するようにしてもよい。
【0041】
ピストン25のインナパッド22aに当接する面には、歪センサである圧力センサ29が埋設されている。圧力センサ29は、ピストン25がインナパッド22aを押圧する実際の加圧力をピストン25に生じる歪み量から検出するようになっている。この検出結果はブレーキECU30に送信されている。
【0042】
ブレーキECU30は、マイクロコンピュータにより構成され、予め記憶されている制御プログラムにしたがって電気モータ26を制御、駆動する。すなわち、通常のブレーキ制御においては、ブレーキECU30は、ブレーキストロークセンサ11aにより検出されたストロークに相当する要求制動力(目標制動力)を演算し、その演算した目標制動力と圧力センサ29により検出された実際の加圧力とからフィードバック制御により駆動電流を決定し、この駆動電流により電気モータ26を駆動する。
【0043】
ブレーキECU30には、各車輪Wにそれぞれ設けられ各輪の車輪速度を検出する車輪速センサ41と、図示しない変速機の出力軸の回転を検出することにより車両の速度(以下、車速と云う。)を検出する車速センサ42と、車両の勾配を検出する勾配センサ43と、電気モータ26に通電される電流の電流値を検出するモータ電流センサ44とが接続され、各センサによって検出された検出結果が入力されるようになっている。
【0044】
次に、上記のように構成した電動式ブレーキ装置の作動について図2〜図5に示すフローチャートを参照して説明する。
【0045】
1)アクセルペダルを戻す際にパッドとロータとの隙間を埋める場合
ブレーキECU30は、図示しないイグニッションスイッチがオンされると、図2に示す電動式ブレーキ装置の制御プログラムを所定の短時間ごとに繰り返し実行する。ブレーキECU30は、ステップ102において、アクセルオフ時隙間埋めモードであるか否かを判定する。アクセルオフ時隙間埋めモードとは、アクセルペダル12が戻されている場合に、ブレーキパッド22a,22bとディスクロータ21との隙間S(以下、単に隙間Sという。)を埋める制御(隙間埋め制御)が行わるモードをいう。ブレーキECU30は、「アクセルオフ時隙間埋めモード」に設定されていれば、アクセルオフ時隙間埋めモードであると判定し、「アクセルオフ時隙間埋めモード」に設定されていなければ、アクセルオフ時隙間埋めモードでないと判定する。イグニッションスイッチオン直後は、ブレーキECU30は、「アクセルオフ時隙間埋めモード」に設定されていないので、アクセルオフ時隙間埋めモードでないと判定する。
【0046】
ブレーキECU30は、ステップ104において、アクセルペダル12の踏込量であるアクセル量が減少しているか否かを判定する。ブレーキECU30は、アクセル開度センサ12aからの検出結果を取得し、今回取得したアクセル開度と前回取得し記憶していたアクセル開度との差に基づいてアクセル量が減少しているか否かを判定する。ブレーキECU30は、今回取得したアクセル開度が前回取得し記憶していたアクセル開度より小さい場合には、アクセル量が減少していると判定し、プログラムをステップ106に進める。ブレーキECU30は、今回取得したアクセル開度が前回取得し記憶していたアクセル開度と同じまたは大きい場合には、アクセル量が一定または増加していると判定し、プログラムを一旦終了する。
【0047】
ブレーキECU30は、アクセル量の減少が開始されると、アクセルオフ時隙間埋めモードに設定する(ステップ106)。次回からステップ102にて「YES」と判定して、プログラムをステップ114の処理にジャンプさせるためである。そして、ブレーキECU30は、ステップ108において、アクセルペダル12が操作量減少側に移動している際(戻されている際)の速度であるアクセル減少速度を検出する(アクセル減少速度検出手段)。具体的には、ブレーキECU30は、ステップ104と同様に今回取得したアクセル開度と前回取得し記憶していたアクセル開度との差に基づいてアクセル減少速度を算出する。また、今回以前に取得して記憶しておいた複数のアクセル開度を平均し、その平均値からアクセル減少速度を算出するようにしてもよい。
【0048】
ブレーキECU30は、ステップ110において、電気モータ26に通電する電流値であるモータ電流(目標モータ電流値)を算出する。ブレーキECU30は、アクセル減少速度とモータ電流との関係を示すマップ(図6参照)と、先に検出したアクセル減少速度とから、ステップ108にて今回検出されたアクセル減少速度に応じたモータ電流を算出する。
【0049】
図6に示すように、アクセル減少速度とモータ電流との関係を示すマップは、アクセル減少速度が小さいほどモータ電流が小さくなるように設定されている。これは次の理由による。アクセル減少速度が小さいほど、アクセルペダル12の操作量が0になった時点からその後ブレーキペダル11の操作が開始される時点までにかかる時間が長くなると考えられる。また、電気モータ26に流れる電流を小さく抑制するためには、アクセルペダル12の操作量が0になった時点からその後ブレーキペダル11の操作が開始される時点まで隙間埋めが完了していることが必要である。よって、アクセル減少速度が小さい場合には、比較的長い時間をかけて隙間Sを埋めることができるが、一方、アクセル減少速度が大きい場合には、比較的短い時間で隙間Sを埋めなければならないからである。
【0050】
さらに、アクセル操作から隙間埋め時のモータ電流値を設定する場合について図7を参照して説明する。図7は上から順番にアクセル開度、アクセル減少速度、モータ電流および隙間埋め率の各時間変化を示している。図7においては、実線、破線、二点破線の順番にアクセルペダル12の減少速度が小さくなっている。
【0051】
アクセル開度は、アクセル開度センサ12aによって検出されている。アクセル減少速度は、アクセル開度から算出されており、アクセル開度が0になるまでにかかる時間が長いほど小さくなっている。モータ電流は、図6に示すマップと算出したアクセル減少速度とから算出される。算出されたモータ電流を電気モータ26に印可する。これにより、アクセル減少速度が小さいほど、小さいモータ電流値で隙間Sを埋めることができ、隙間Sを埋めるのにかかる時間が大きくなる。
【0052】
ブレーキECU30は、ステップ112において、ステップ110で算出したモータ電流を通電して電気モータ26を駆動させる。このとき例えば、ブレーキECU30は、モータ電流に応じたデューティ比でPWM制御を行う。すなわち、ブレーキECU30は、アクセル戻しが開始されると、同時に電気モータ26による隙間埋め制御を開始する。
【0053】
ブレーキECU30は、車両状態に応じて第1隙間所定値を第1規定値または第2規定値に切り替える。最初にブレーキECU30は、ステップ114において、車両状態を検出する(車両状態検出手段)。車両状態とは、例えば車両の走行状態のことをいい、低車速状態、高車速状態、下り坂走行状態、上り坂走行状態などがある。低車速状態および高車速状態は、車速センサ42が検出している車速と車速閾値とを比較することで検出することができる。下り坂走行状態および上り坂走行状態は、勾配センサ43が検出している勾配に基づいて検出することができる。
【0054】
次にブレーキECU30は、ステップ116〜120において、車両状態検出手段により検出されている車両状態が所定状態である場合に、電気モータ26に電流を通電して隙間(第1隙間所定値)を変更する。ブレーキECU30は、ステップ116において、ステップ114にて検出した車両状態が所定状態であるか否かを判定する。本実施形態において、所定状態は、低車速状態、下り坂走行状態である。
【0055】
ブレーキECU30は、車両状態が所定状態でないと判定した場合には、ステップ116にて「NO」と判定し、第1隙間所定値を第1規定値に設定する(ステップ118)。ブレーキECU30は、車両状態が所定状態であると判定した場合には、ステップ116にて「NO」と判定し、第1隙間所定値を第2規定値に設定する(ステップ120)。
【0056】
第1隙間所定値は、アクセルペダル12を戻す際に隙間Sを埋めるにあたってその隙間Sの所定値(目標値)を示すものである。第1規定値は、パッド22a,22bがロータ21に当接する直前であって若干の隙間が生じる値に設定されている通常の隙間所定値である。第2規定値は第1規定値より大きい値に設定されている。第2規定値は、渋滞時の低車速状態に、運転者がアクセルオフでクリープ走行させる場合に、また、下り坂走行時に運転者がアクセルオフで惰性走行させる場合に、パッド22a,22bとロータ21との間の引き摺りが発生しないような値に設定されている。
【0057】
よって、アクセルペダル12を戻す際に隙間Sを埋めるにあたってその隙間の目標値は、車両状態が所定状態でない場合には、次にブレーキペダル11が操作されることを考慮して比較的小さい隙間となる第1規定値に設定され、一方、車両状態が所定状態である場合には、パッド22a,22bとロータ21との間の引き摺りを防止する観点から通常の隙間所定値より大きい隙間である第2規定値に設定される。これにより、車両状態検出手段により検出されている車両状態が所定状態である場合に、電気モータ26に電流を通電して隙間(第1隙間所定値)を変更することができる。
【0058】
ブレーキECU30は、ステップ122において、隙間Sを取得する。隙間Sは、位置センサ28によって検出されている電気モータ26のロータの回転(回転位置、回転角度)から算出されるロータの軸方向の移動距離とロータの初期位置とから推定すればよい。なお、推定する代わりに、パッド22a,22bとロータ21との隙間Sを検出する隙間センサを設けて検出するような構成としてもよい。ブレーキECU30は、電気モータ26が駆動されているなか、隙間Sが第1隙間所定値となると、ステップ124にて「YES」と判定し、隙間埋め制御を停止する。具体的には、ブレーキECU30は、ステップ124において、隙間Sが第1隙間所定値以上であるか否かを判定する。
【0059】
ブレーキECU30は、隙間Sが第1隙間所定値未満である場合には、ステップ124にて「NO」と判定し、プログラムを一旦終了させる。ブレーキECU30は、隙間Sが第1隙間所定値以上である場合には、ステップ124にて「YES」と判定し、電気モータ26の駆動を停止させ(ステップ126)、アクセルオフ時隙間埋めモードを解除する(ステップ128)。
【0060】
2)アクセルペダルを戻した後にブレーキペダルを踏む場合
ブレーキECU30は、図示しないイグニッションスイッチがオンされると、図3に示す電動式ブレーキ装置の制御プログラムを所定の短時間ごとに繰り返し実行する。ブレーキECU30は、ステップ202において、モータ駆動中であるか否かを判定する。モータ駆動は、後述するステップ218〜222,224による電気モータ26の駆動のことをいう。ブレーキECU30は、モータ駆動中であれば(モータ駆動中フラグが1であれば)「YES」と判定し、モータ駆動中でなければ(モータ駆動中フラグが0であれば)「NO」と判定する。モータ駆動中フラグは、電気モータ26が後述するステップ218〜222,224による電気モータ26の駆動中であることを示すフラグである。イグニッションスイッチオン直後は、ブレーキECU30は、モータ駆動中でないので、ステップ202にて「NO」と判定する。
【0061】
ブレーキECU30は、ステップ204において、計時中であるか否かを判定する。計時は、アクセルペダル12が完全オフとなった時点(アクセル量=0になった時点)以降の経過時間を計測することをいう。ブレーキECU30は、計時中であれば(計時中フラグが1であれば)「YES」と判定し、計時中でなければ(計時中フラグが0であれば)「NO」と判定する。計時中フラグは、アクセル量が0になった時点以降の経過時間を計時中であることを示すフラグである。イグニッションスイッチオン直後は、ブレーキECU30は、計時中でないので、ステップ204にて「NO」と判定する。
【0062】
ブレーキECU30は、ステップ206において、上述したステップ102と同様にアクセルオフ時隙間埋めモードであるか否かを判定する。アクセルオフ時隙間埋めモードであれば「YES」と判定し、アクセルオフ時隙間埋めモードでなければ「NO」と判定する。イグニッションスイッチオン直後は、ブレーキECU30は、「アクセルオフ時隙間埋めモード」に設定されていないので、アクセルオフ時隙間埋めモードでないと判定する。
【0063】
モータ駆動中でなく、計時中でもなく、アクセルオフ時隙間埋めモードに設定されている場合には、ブレーキECU30は、ステップ202,204,206にて「NO」,「NO」,「YES」と判定し、プログラムをステップ208に進める。
【0064】
ブレーキECU30は、ステップ208において、アクセルペダル12の踏込量であるアクセル量が0になったか否かを判定する。すなわち、ブレーキECU30は、アクセルペダル12を戻すにあたって隙間Sを埋める場合に、アクセルペダル12が完全に踏み込み前の位置(初期位置)に戻ったか否かを判定する。ブレーキECU30は、アクセル開度センサ12aからの検出結果を取得し、その検出結果であるアクセル開度が0であればアクセル量が0になったと判定する。
【0065】
そして、ブレーキECU30は、ステップ210において、アクセル量が0になった時点からの経過時間の計時を開始する。すなわち、アクセルペダル12の操作量が0になった後の経過時間を計時する(計時手段)。さらに、ブレーキECU30は、ステップ212において、計時中フラグを1に設定する。なお、ブレーキECU30は、アクセル開度が0より大きい場合には、アクセル量が0になっていないと判定し、プログラムをステップ214に進める。
【0066】
ブレーキECU30は、ステップ214において、アクセル量が0になった時点からの経過時間が所定時間より小さいか否か(アクセル量が0になった時点からの経過時間が所定時間に達したか否か)を判定する。ブレーキECU30は、前記経過時間が所定時間に達するまでは、ステップ214にて「YES」と判定しプログラムをステップ216に進める。なお、所定時間は、アクセル量が0となった後に、ブレーキペダル11を操作されないと判断できる時間に設定されている。
【0067】
ブレーキECU30は、ステップ216において、ブレーキペダル11が踏み込まれたか否か(踏込開始されたか否か)を判定する。ブレーキECU30は、ブレーキストロークセンサ11aからの検出結果を取得し、その結果が0より大きい値となればブレーキペダル11が踏み込まれたと判定する。なお、ブレーキECU30は、取得した検出結果が0であればブレーキペダル11が踏み込まれていないと判定し、プログラムを一旦終了する。
【0068】
そして、ブレーキECU30は、前記経過時間が所定時間に達する前にブレーキペダル11の踏込みが開始された場合には、ステップ214,216にてそれぞれ「YES」と判定し、ステップ218〜222において、ブレーキ操作開始速度に応じて電気モータ26を駆動する。すなわち、ブレーキECU30は、ブレーキペダル11の踏込状態に応じて電気モータ26を駆動させて制動力を付与する制御を行う。
【0069】
ブレーキ操作開始速度に応じた電気モータ26の駆動について、図8を参照して説明する。図8は上から順番に要求制動力、制動上昇速度、モータ起動電流およびピストンストロークの各時間変化を示している。図8においては、実線、破線、二点破線の順番にブレーキペダル11の踏込速度が小さくなっている。
【0070】
ブレーキECU30は、ブレーキストロークセンサ11aによって検出されている踏込状態であるブレーキストロークから運転者の要求制動力を算出する。ブレーキストロークと要求制動力とは正比例の関係にある。さらに、ブレーキECU30は、ブレーキストロークまたは運転者の要求制動力から単位時間あたりの要求制動力である制動上昇速度(=ブレーキ操作開始速度)を算出する(ステップ218)。ブレーキECU30は、制動上昇速度が小さいほど小さくなるモータ起動電流(モータ電流)を算出する(ステップ220)。そして、ブレーキECU30は、その算出したモータ起動電流を電気モータ26に印加して電気モータ26を駆動する(ステップ222)。
【0071】
これにより、制動上昇速度が小さいほどすなわちブレーキペダル11の踏込速度が小さいほど、電動ディスクロータ20のピストン25のストローク速度を小さく抑制することができる。すなわち、ロータ21に対して第1隙間所定値の隙間をおいて停止しているパッド22aまたは22bの動き始めの立ち上がり速度を小さく抑制することで、電気モータ26の始動電流を小さく抑制することができる。
【0072】
一方、ブレーキECU30は、ブレーキペダル11が踏み込まれることなく、前記経過時間が所定時間を超えた場合には、ステップ214にてそれぞれ「NO」と判定し、ステップ224において、隙間Sを適正隙間とするように電気モータ26を駆動する。
【0073】
ブレーキECU30は、ステップ224において、ロータ21に対して第1隙間所定値の隙間をおいて停止しているパッド22aまたは22bをその隙間を広げるように電気モータ26を駆動する。隙間Sが適正隙間となったら、ブレーキECU30は、電気モータ30の駆動を停止する。適正隙間は、第1隙間所定値より大きく、例えばパッド22a,22bが初期位置にあるときの隙間である。
これにより、アクセルペダル12の操作量が0となった後にブレーキペダル11が操作されることなくステップ210(計時手段)により計時された経過時間が所定時間以上になった場合に、電気モータ26に電流を通電してパッド22a,22bとロータ21との隙間Sを大きくすることができる。
【0074】
前述したステップ218〜222またはステップ224の処理の後に、ブレーキECU30は、電気モータ26が駆動中であることを示すモータ駆動中フラグを1に設定する(ステップ226)。これにより、ブレーキECU30は、次回以降の上述したステップ202にて「YES」と判定し、プログラムをステップ230を経由してステップ228にジャンプすることができる。
【0075】
ブレーキECU30は、ステップ230において、現在の電気モータ26の制御が隙間Sを埋める制御であるか否かを判定する。ブレーキECU30は、上述したステップ218〜222による制御を行っている場合には、隙間Sを埋める制御であると判定し、上述したステップ224による制御を行っている場合には、隙間Sを埋める制御でない(隙間Sを拡げる制御である)と判定する。
【0076】
隙間Sを埋める制御でない場合には、ブレーキECU30は、ステップ230にて「NO」と判定し、プログラムをステップ228に進める。一方、隙間Sを埋める制御である場合には、ブレーキECU30は、ステップ230にて「YES」と判定し、プログラムをステップ232に進める。
【0077】
ブレーキECU30は、ステップ218〜222の処理によって電気モータ26が駆動されているなか、隙間Sが第1隙間所定値より小さくとなると、ステップ232にて「YES」と判定し、ステップ234のブレーキ制御に切り替える。ブレーキ制御は、電気モータ26を制御してブレーキペダル11の踏込量に応じた制動力を付与する制御である。一方、ブレーキECU30は、隙間Sが第1隙間所定値以上である場合には、ステップ232にて「NO」と判定し、プログラムをステップ228に進める。
【0078】
ブレーキECU30は、ステップ228において、電気モータ26の駆動が終了したか否かを判定する。具体的には、ブレーキECU30は、ステップ218〜222にてブレーキ操作開始速度に応じて電気モータ26の駆動を開始した場合には、ブレーキペダル11の踏込量が0になった場合に電気モータ26の駆動が終了したと判定する。また、ブレーキECU30は、ステップ224にて隙間Sを適正隙間とするように電気モータ26の駆動を開始した場合には、隙間Sが適正隙間となった場合に電気モータ26の駆動が終了したと判定する。
【0079】
ブレーキECU30は、電気モータ26の駆動が終了していない場合には、ステップ228にて「NO」と判定し、プログラムを一旦終了する。ブレーキECU30は、電気モータ26の駆動が終了した場合には、ステップ228にて「YES」と判定し、計時中フラグを0に設定し(ステップ236)、モータ駆動中フラグも0に設定する(ステップ238)。
【0080】
さらに、図2、図3に示すフローチャートによる作動について図9,10を参照して説明する。図9は本発明を適用した場合の実施例であり、図10は本発明を適用しない場合に実施例である。図9,10は、上から順番に、アクセル量、ブレーキ量、隙間Sおよび始動電流を示している。
【0081】
最初に本発明を適用した場合について説明する。時刻t1において、それまで踏み込まれていたアクセルペダル12の戻しが開始されると、同時に電気モータ26による隙間埋め制御が開始される(ステップ104〜112)。その後、隙間Sが第1隙間所定値となると隙間埋め制御が停止される(時刻t3、ステップ124,126)。このとき、アクセル減少速度が小さいほど小さなモータ電流値で電気モータ26を駆動させることで、最適(最小)のモータ電流値で隙間Sを第1隙間所定値に狭めることができる。よって、始動電流を小さく抑制することができ、電気モータ26のブラシの磨耗低減を小さく抑制することができる。
【0082】
アクセル量が0になった時点(時刻t2)から所定時間経過する前である時刻t4にブレーキペダル11の踏み込みが開始されると(ステップ208〜216)、ブレーキペダル11の踏込開始速度に応じて電気モータ26が駆動される(ステップ218〜222)。このとき、上述したように、ロータ21に対して第1隙間所定値の隙間をおいて停止しているパッド22aまたは22bの動き始めの立ち上がり速度を小さく抑制することで、電気モータ26の始動電流を小さく抑制することができる。
【0083】
その後、さらに隙間埋め制御が行われ、時刻t5に隙間Sは0となり、さらにピストン25による加圧が開始される。よって、時刻t5において、加圧時の抵抗があるので比較的大きな始動電流が流れる。
【0084】
このように、制動制御が開始される前に、予め隙間Sを第1隙間所定値まで埋めることで、始動電流を最小限に小さく抑制することができる。さらに、制動制御時には、電動ディスクブレーキ10のピストンストロークをゆっくり立ち上がらせることで、始動電流を最小限に小さく抑制することができる。
【0085】
次に本発明を適用しない場合について説明する。時刻t11において、それまで踏み込まれていたアクセルペダル12の戻しが開始され、時刻t12において、アクセル量が0になる。その後、時刻t13において、ブレーキペダル11の踏み込みが開始されると、同時に電気モータ26による隙間埋め制御が開始される。このとき、比較的大きい隙間Sを短時間で埋める必要があるため、電気モータ26を大きな電流で動作させなければならず、始動電流が本発明と比較して大きくなっていた。なお、その後、時刻t14に隙間Sは0となるが、時刻t14における始動電流は本発明の場合と同じである。
【0086】
以上のことから明らかなように、本発明を適用することで、本発明を適用しない場合と比べて、隙間を埋め始める際の始動電流を小さく抑制することができ、ひいては、電気モータ26のブラシの磨耗低減を抑制することができる。
【0087】
3)ブレーキペダルを戻した後にアクセルペダルを踏む場合
ブレーキECU30は、図示しないイグニッションスイッチがオンされると、図4に示す電動式ブレーキ装置の制御プログラムを所定の短時間ごとに繰り返し実行する。ブレーキECU30は、ステップ302において、アクセルオン時隙間開けモードであるか否かを判定する。アクセルオン時隙間開けモードとは、ブレーキペダル11が戻された後にアクセルペダル12が踏み込まれている場合に、隙間Sを開ける(拡げる)制御(隙間開け制御)が行わるモードをいう。ブレーキECU30は、「アクセルオン時隙間開けモード」に設定されていれば、アクセルオン時隙間開けモードであると判定し、「アクセルオン時隙間開けモード」に設定されていなければ、アクセルオン時隙間開けモードでないと判定する。イグニッションスイッチオン直後は、ブレーキECU30は、「アクセルオン時隙間開けモード」に設定されていないので、アクセルオン時隙間開けモードでないと判定する。
【0088】
ブレーキECU30は、ステップ304において、アクセルペダル12の踏込量であるアクセル量が増加しているか否かを判定する。すなわち、ブレーキECU30は、アクセルペダル12が操作量増加側に移動されていることを検出する(アクセル操作量増加検出手段)。ブレーキECU30は、アクセル開度センサ12aからの検出結果を取得し、今回取得したアクセル開度と前回取得し記憶していたアクセル開度との差に基づいてアクセル量が増加しているか否かを判定する。ブレーキECU30は、今回取得したアクセル開度が前回取得し記憶していたアクセル開度より大きい場合には、アクセル量が増加していると判定し、プログラムをステップ306に進める。ブレーキECU30は、今回取得したアクセル開度が前回取得し記憶していたアクセル開度と同じまたは小さい場合には、アクセル量が一定または減少していると判定し、プログラムを一旦終了する。
【0089】
ブレーキECU30は、ステップ306において、上述したステップ122と同様に隙間Sを取得する(隙間取得手段)。ブレーキECU30は、ステップ308において、隙間Sが第2隙間所定値より小さいか否かを判定する。第2隙間所定値は上述した第1隙間所定値より大きい値に設定されており、パッド22a,22bとロータ21との間で引き摺りが発生しない程度の隙間となるように設定されている。ブレーキECU30は、隙間Sが第2隙間所定値以上である場合には、すでに隙間Sはパッド22a,22bとロータ21との間で引き摺りが発生しない程度に広がっているので、それ以上拡げる必要はないため、電気モータ26を駆動しない。
【0090】
一方、ブレーキECU30は、隙間Sが第2隙間所定値未満である場合には、例えばブレーキペダル11の操作が終了した直後に隙間Sが比較的狭くなっている場合には、隙間Sはパッド22a,22bとロータ21との間で引き摺りが発生するおそれがあるので、隙間Sを拡げるべく電気モータ26を駆動する。
【0091】
詳しくは、ブレーキECU30は、アクセル量の増加が開始され、かつ、隙間Sが第2隙間所定値より小さい場合には、ステップ304,308にてそれぞれ「YES」と判定し、アクセルオン時隙間開けモードに設定する(ステップ310)。次回からステップ302にて「YES」と判定して、プログラムをステップ318の処理にジャンプさせるためである。そして、ブレーキECU30は、ステップ312において、アクセルペダル12が操作量増加側に移動している際(戻されている際)の速度であるアクセル増加速度を検出する(アクセル増加速度検出手段)。具体的には、ブレーキECU30は、ステップ304と同様に今回取得したアクセル開度と前回取得し記憶していたアクセル開度との差に基づいてアクセル増加速度を算出する。また、今回以前に取得して記憶しておいた複数のアクセル開度を平均し、その平均値からアクセル増加速度を算出するようにしてもよい。
【0092】
ブレーキECU30は、ステップ314において、電気モータ26に通電する電流値であるモータ電流(目標モータ電流値)を算出する。ブレーキECU30は、アクセル増加速度とモータ電流との関係を示すマップ(図11参照)と、先に検出したアクセル増加速度とから、ステップ312にて今回検出されたアクセル増加速度に応じたモータ電流を算出する。
【0093】
図11に示すように、アクセル増加速度とモータ電流との関係を示すマップは、アクセル増加速度が小さいほどモータ電流が小さくなるように設定されている。これは次の理由による。アクセルペダル12が操作量増加側に移動されている場合には、アクセルペダル12の操作量が大きいほどブレーキペダル11が操作される蓋然性が小さくなる。また、アクセル増加速度が小さいほど、アクセルペダル12が再び操作量減少側に移動する蓋然性が高い。よって、アクセル増加速度が小さい場合には、アクセル増加速度が大きい場合と比べてブレーキペダル11が操作されるまでの時間が短いため、隙間Sが小さい場合が好ましいからである。
【0094】
さらに、アクセル操作から隙間開け時のモータ電流値を設定する場合について図12を参照して説明する。図12は上から順番にアクセル開度、アクセル増加速度、モータ電流および隙間埋め率の各時間変化を示している。図12においては、実線、破線、二点破線の順番にアクセルペダル12の増加速度が小さくなっている。
【0095】
アクセル開度は、アクセル開度センサ12aによって検出されている。アクセル増加速度は、アクセル開度から算出されており、アクセル開度が所定の開度になるまでにかかる時間が長いほど小さくなっている。モータ電流は、図11に示すマップと算出したアクセル増加速度とから算出される。算出されたモータ電流を電気モータ26に印可する。これにより、アクセル増加速度が小さいほど、小さいモータ電流値で隙間Sを拡げることができ、隙間Sを所定の広さまで拡げるのにかかる時間が大きくなる。
【0096】
ブレーキECU30は、ステップ316において、上述したステップ112と同様にステップ314で算出したモータ電流を通電して電気モータ26を駆動させる。ブレーキECU30は、アクセル踏込が開始されると、同時に電気モータ26による隙間開け制御を開始する。
【0097】
ブレーキECU30は、上述したステップ306と同様に隙間Sを取得し(ステップ318)、電気モータ26が駆動されているなか、隙間Sが第2隙間所定値となると、ステップ320にて「YES」と判定し、隙間開け制御を停止する。具体的には、ブレーキECU30は、ステップ320において、隙間Sが第2隙間所定値以上であるか否かを判定する。
【0098】
ブレーキECU30は、隙間Sが第2隙間所定値未満である場合には、ステップ320にて「NO」と判定し、プログラムを一旦終了させる。ブレーキECU30は、隙間Sが第2隙間所定値以上である場合には、ステップ320にて「YES」と判定し、電気モータ26の駆動を停止させ(ステップ322)、アクセルオン時隙間開けモードを解除する(ステップ324)。
【0099】
4)ブレーキペダルを戻した後に隙間を拡げる場合
ブレーキECU30は、図示しないイグニッションスイッチがオンされると、図5に示す電動式ブレーキ装置の制御プログラムを所定の短時間ごとに繰り返し実行する。ブレーキECU30は、ステップ402において、ブレーキオフ時隙間開けモードであるか否かを判定する。ブレーキオフ時隙間開けモードとは、ブレーキペダル11が戻された後に隙間Sを拡げる(開ける)制御(隙間開け制御)が行わるモードをいう。ブレーキECU30は、「ブレーキオフ時隙間開けモード」に設定されていれば、ブレーキオフ時隙間開けモードであると判定し、「ブレーキオフ時隙間開けモード」に設定されていなければ、ブレーキオフ時隙間開けモードでないと判定する。イグニッションスイッチオン直後は、ブレーキECU30は、「ブレーキオフ時隙間開けモード」に設定されていないので、ブレーキオフ時隙間開けモードでないと判定する。
【0100】
ブレーキECU30は、ステップ404において、ブレーキペダル11の踏込量であるブレーキ量が減少しているか否かを判定する。ブレーキECU30は、ブレーキストロークセンサ11aからの検出結果を取得し、今回取得したブレーキストロークと前回取得し記憶していたブレーキストロークとの差に基づいてブレーキ量が減少しているか否かを判定する。ブレーキECU30は、今回取得したブレーキストロークが前回取得し記憶していたブレーキストロークより小さい場合には、ブレーキ量が減少していると判定し、プログラムをステップ408に進める。ブレーキECU30は、今回取得したブレーキストロークが前回取得し記憶していたブレーキストロークと同じまたは大きい場合には、ブレーキ量が一定または増加していると判定し、電気モータ26を制御してブレーキペダル11の踏込量に応じた制動力を付与する(ステップ406)。
【0101】
ブレーキECU30は、ステップ408において、ブレーキペダル11が操作量減少側に移動している際(戻されている際)の速度であるブレーキ減少速度を検出する(ブレーキ減少速度検出手段)。具体的には、ブレーキECU30は、ステップ404と同様に今回取得したブレーキストロークと前回取得し記憶していたブレーキストロークとの差に基づいてブレーキ減少速度を算出する。また、今回以前に取得して記憶しておいた複数のブレーキストロークを平均し、その平均値からブレーキ減少速度を算出するようにしてもよい。
【0102】
ブレーキECU30は、ステップ410において、ブレーキペダル11の踏込量であるブレーキ量が0になったか否かを判定する。すなわち、ブレーキECU30は、ブレーキペダル11を戻した後に隙間Sを埋める場合に、ブレーキペダル11が完全に踏み込み前の位置(初期位置)に戻ったか否かを判定する。ブレーキECU30は、ブレーキストロークセンサ11aからの検出結果を取得し、その検出結果であるブレーキストロークが0であればブレーキ量が0になったと判定する。
【0103】
そして、ブレーキECU30は、ステップ406によるブレーキ制御を一旦停止し(ステップ412)、ブレーキオフ時隙間開けモードに設定する(ステップ414)。次回からステップ402にて「YES」と判定して、プログラムをステップ420の処理にジャンプさせるためである。なお、ブレーキECU30は、ブレーキストロークが0より大きい場合には、ブレーキ量が0になっていないと判定し、プログラムをステップ406に進める。
【0104】
運転者によって踏込中のブレーキペダル11が完全に戻されると(ブレーキ量が0になると)、隙間Sを拡げる制御が行われる。すなわち、ブレーキECU30は、ステップ416において、電気モータ26に通電する電流値であるモータ電流(目標モータ電流値)を算出する。ブレーキECU30は、ブレーキ減少速度とモータ電流との関係を示すマップ(図13参照)と、今回検出したブレーキ減少速度とから、今回検出されたブレーキ減少速度に応じたモータ電流を算出する。
図13に示すように、ブレーキ減少速度とモータ電流との関係を示すマップは、ブレーキ減少速度が小さいほどモータ電流が小さくなるように設定されている。これは、ブレーキ減少速度が小さいほど、ブレーキペダル11の操作量が0になった後にアクセルペダル12が直ちに操作される蓋然性が低いからである。
【0105】
ブレーキECU30は、ステップ418において、ステップ416で算出したモータ電流を通電して電気モータ26を駆動させる。このとき例えば、ブレーキECU30は、モータ電流に応じたデューティ比でPWM制御を行う。すなわち、ブレーキECU30は、ブレーキペダル11が完全に戻されると、同時に電気モータ26による隙間開け制御を開始する。
【0106】
ブレーキECU30は、車両状態に応じて第3隙間所定値を第3規定値または第4規定値に切り替える。最初にブレーキECU30は、ステップ420において、上述したステップ114と同様に車両状態を検出する(車両状態検出手段)。次にブレーキECU30は、ステップ422〜426において、車両状態検出手段により検出されている車両状態が所定状態である場合に、電気モータ26に電流を通電して隙間(第3隙間所定値)を変更する。ブレーキECU30は、ステップ422において、ステップ420にて検出した車両状態が所定状態であるか否かを判定する。本実施形態において、所定状態は、低車速状態、下り坂走行状態である。
【0107】
ブレーキECU30は、車両状態が所定状態でないと判定した場合には、ステップ422にて「NO」と判定し、第3隙間所定値を第3規定値に設定する(ステップ424)。ブレーキECU30は、車両状態が所定状態であると判定した場合には、ステップ422にて「NO」と判定し、第3隙間所定値を第4規定値に設定する(ステップ426)。
【0108】
第3隙間所定値は、ブレーキペダル11を戻した後に隙間Sを拡げるにあたってその隙間Sの所定値(目標値)を示すものである。第3規定値は、パッド22a,22bが初期位置に戻ってロータ21との間に形成される隙間(上述した適正隙間)と同じ値に設定されている。第4規定値は第3規定値より小さい値に設定されており、例えば上述した第2規定値と同じ値に設定してもよい。
【0109】
よって、ブレーキペダル11を戻した後に隙間Sを拡げるにあたってその隙間Sの目標値は、車両状態が所定状態でない場合には、次にブレーキペダル11が操作されない蓋然性が低いことを考慮して比較的大きい隙間となる第3規定値に設定される。一方、車両状態が所定状態(例えば渋滞時の低車速状態や下り坂の慣性走行状態)である場合には、比較的早いタイミングでブレーキ操作をする可能性が高いため予め隙間Sを小さくすることで次回のブレーキ操作時にモータ電流を小さく抑制する観点とパッド22a,22bとロータ21との間の引き摺りを防止する観点との両立を図るため、適正隙間より小さい隙間である第4規定値に設定される。これにより、車両状態検出手段により検出されている車両状態が所定状態である場合に、電気モータ26に電流を通電して隙間(第3隙間所定値)を変更することができる。
【0110】
ブレーキECU30は、ステップ428において、上述したステップ122と同様に隙間Sを取得する。ブレーキECU30は、電気モータ26が駆動されているなか、隙間Sが第3隙間所定値となると、ステップ430にて「YES」と判定し、隙間開け制御を停止する。具体的には、ブレーキECU30は、ステップ430において、隙間Sが第3隙間所定値以上であるか否かを判定する。
ブレーキECU30は、隙間Sが第3隙間所定値未満である場合には、ステップ430にて「NO」と判定し、プログラムを一旦終了させる。ブレーキECU30は、隙間Sが第3隙間所定値以上である場合には、ステップ430にて「YES」と判定し、電気モータ26の駆動を停止させ(ステップ432)、ブレーキオフ時隙間開けモードを解除する(ステップ434)。
【0111】
上述したことから明らかなように、本実施形態によれば、電気モータ26のブラシの磨耗量が当該電気モータ26に流れる電流の大きさの二乗に比例すること、電気モータ26に流れる電流のうちで始動電流の大きさが極めて大きいことに着目して、ブレーキペダル11が操作される前にパッド22a,22bとロータ21との隙間Sを第1隙間所定値になるまで小さくするようにしている。このようにブレーキペダル11が操作される前にパッド22a,22bとロータ21との隙間Sを小さくしておくことにより、ブレーキペダル11が操作されたときの電気モータ26の始動電流の大きさを小さくすることができる。
【0112】
ここで、アクセル減少速度が小さいほど、アクセルペダル12の操作量が0になるまでの時間が長く、アクセルペダル12の操作量が0になった後にブレーキペダル11が操作されるまでの時間が長くなると考えられる。そこで本実施形態では、アクセル減少速度が小さいほど電気モータ26に小さな電流を通電してパッド22a,22bとロータ21との隙間Sを第1隙間所定値になるまで小さくしている。これにより、上述の如くブレーキペダル11が操作される前に上記隙間Sを小さくするときの電気モータ26の始動電流の大きさを小さくすることができる。
以上説明したように電気モータ26の始動電流の大きさを小さくすることにより、電気モータ26のブラシの磨耗を抑制し、電気モータ26の長寿命化を図ることができる。
【0113】
ここで、アクセルペダル12が操作量増加側に移動されている場合には、アクセルペダル12の操作量が増加しておりブレーキペダル11が操作される蓋然性が小さくなる。そこで、アクセルペダル12が操作量増加側に移動されていることを検出するアクセル操作量増加検出手段(ステップ304)を備え、モータ制御手段は、アクセル操作量増加検出手段によりアクセルペダル12が操作量増加側に操作されていることが検出されている場合に、電気モータ26に電流を通電してパッド22a,22bとロータ21との隙間Sを大きくする(ステップ316)。よって、アクセルペダル12が操作量増加側に操作されていることが検出されている場合に電気モータ26に電流を通電してパッド22a,22bとロータ21との隙間Sを大きくするようにしている。これにより、電気モータ26のブラシの摩耗を抑制しつつ引き摺りを低減すること(電気モータ26の磨耗抑制と引き摺り低減との両立を図ること)ができる。
【0114】
また、アクセル増加速度が小さいほど、アクセルペダル12が再び操作量減少側に移動する蓋然性が高い。そこで、アクセルペダル12が操作量増加側に移動している際の速度であるアクセル増加速度を検出するアクセル増加速度検出手段(ステップ312)を備え、モータ制御手段は、アクセル増加速度検出手段により検出されているアクセル増加速度が小さいほど、電気モータ26に小さな電流を通電してパッド22a,22bとロータ21との隙間Sを大きくする(ステップ314,316)。よって、アクセル増加速度が小さいほど、電気モータ26に小さな電流を通電してパッド22a,22bとロータ21との隙間Sを大きくするようにしている。これにより、アクセルペダル12が再び操作量減少側に移動する蓋然性が高い場合に、パッド22a,22bとロータ21との隙間Sを大きくするときの始動電流の大きさが小さくなるため、パッド22a,22bとロータ21との隙間Sを大きくすることに伴う電気モータ26のブラシの摩耗を抑制することができる。
【0115】
また、パッド22a,22bとロータ21との隙間Sを取得する隙間取得手段(ステップ306,318)を備え、モータ制御手段は、隙間取得手段により取得されている隙間Sが第1隙間所定値よりも大きい第2隙間所定値以下である場合に、電気モータ26に電流を通電してパッド22a,22bとロータ21との隙間Sを大きくする(ステップ312〜316,320)。これにより、パッド22a,22bとロータ21との隙間Sが第2隙間所定値以下である場合に、すなわち引き摺りが発生する蓋然性が高い場合に電気モータ26に電流を通電してパッド22a,22bとロータ21との隙間Sを大きくするようにしている。これにより、電気モータ26のブラシの摩耗抑制と引き摺り低減とを一層好適に両立させることができる。
【0116】
また、アクセルペダル12の操作量が0となった後にブレーキペダル11が操作されることなく所定時間が経過した場合には、その後、ブレーキペダル11が操作される蓋然性が低い。そこで、アクセルペダル12の操作量が0になった後の経過時間を計時する計時手段(ステップ210)を備え、モータ制御手段は、アクセルペダル12の操作量が0となった後にブレーキペダル11が操作されることなく計時手段により計時された経過時間が所定時間以上になった場合に、電気モータ26に電流を通電してパッド22a,22bとロータ21との隙間Sを大きくする(ステップ214,224)。よって、アクセルペダル12の操作量が0となった後にブレーキペダル11が操作されることなく所定時間が経過した場合に、電気モータ26に電流を通電してパッド22a,22bとロータ21との隙間Sを大きくするようにしている。これにより、電気モータ26のブラシの摩耗抑制と引き摺り低減とをより一層好適に両立させることができる。
【0117】
また、車両状態によってはパッド22a,22bとロータ21との隙間Sを変更しないことが好ましい場合がある。そこで、車両状態を検出する車両状態検出手段(ステップ114)を備え、モータ制御手段は、車両状態検出手段により検出されている車両状態が所定状態である場合に、電気モータ26に電流を通電してパッド22a,22bとロータ21との隙間Sを変更する(ステップ116,120)。よって、車両状態が所定状態である場合に、電気モータ26に電流を通電してパッド22a,22bとロータ21との隙間Sを変更するようにしている。これにより、車両の制動性能に影響を与えることなく電気モータ26のブラシの摩耗を抑制することができる。
【0118】
また、アクセルペダル12の操作量が0になった後、ブレーキペダル11が操作された場合に、その操作当初の操作速度であるブレーキ操作開始速度を算出するブレーキ操作開始速度算出手段(ステップ218)を備え、モータ制御手段は、ブレーキ操作開始速度算出手段により算出されているブレーキ操作開始速度が小さいほど、電気モータ26に小さな電流を通電して、パッド22a,22bとロータ21との隙間Sを第1隙間所定値より小さくする(ステップ218〜222,232)。これにより、アクセルペダル12の操作量が0になった後、ブレーキペダル11が操作された場合に、ブレーキ操作開始速度が小さいほど、電気モータ26に小さな電流を通電して、パッド22a,22bとロータ21との隙間Sを第1隙間所定値より小さくするようにしている。このように、ブレーキ操作部材の操作に応じて当該ブレーキペダル11の操作開始に伴う電気モータ26の始動電流の大きさを一層小さくすることができ、電気モータ26のブラシの摩耗量を一層抑制することができる。
【0119】
ところで、ブレーキ減少速度が小さいほど、ブレーキペダル11の操作量が0になった後にアクセルペダル12が直ちに操作される蓋然性が低い。そこで、上述した実施形態では、ブレーキ減少速度が小さいほど、ブレーキペダル11の操作量が0になった後に電気モータ26に小さな電流を通電してパッド22a,22bとロータ21との隙間Sを大きくするようにしている(ステップ410,416,418)。これにより、当該隙間Sを大きくするときの電気モータ26の始動電流の大きさが小さくなるため、電気モータ26のブラシの摩耗を抑制することができる。
【0120】
ここで、車両状態によってはパッド22a,22bとロータ21との隙間Sを変更しないことが好ましい場合が考えられる。そこで、ブレーキペダル11が操作量減少側に移動している際の車両状態を検出する車両状態検出手段(ステップ420)を備え、モータ制御手段は、車両状態検出手段により検出された車両状態が所定状態である場合に、電気モータ26に電流を通電してパッド22a,22bとロータ21との隙間Sを大きくする(ステップ422,426)。よって、車両状態が所定状態である場合に、電気モータ26に電流を通電してパッド22a,22bとロータ21との隙間Sを変更するようにしている。これにより、車両の制動性能に影響を与えることなく、パッド22a,22bとロータ21との隙間Sを大きくするときの電気モータ26のブラシの摩耗を抑制することができる。
【0121】
なお、上述した電気式ブレーキ装置に係る実施形態においては、電動ディスクブレーキを採用するようにしたが、電動ドラムブレーキを採用するようにしてもよい。この場合、電動ドラムブレーキは、車輪と一体的に回転する被制動部材であるドラムと、車体側部材であるバッキングプレートに回転不能に保持されるとともに前記ドラムに対して所定のクリアランス(間隔)を有するように配設された制動部材としてのブレーキシューと、供給される電流に応じた力を発生する直流電気モータと、前記ブレーキシューの位置を検出する位置センサと、加圧力センサとを含んでいて、前記電気モータの発生する力により前記ブレーキシューを前記ドラムの内周面に向けて移動(押動)させて当接させ、さらに同ブレーキシューを同ドラムの内周面に押圧することで車輪の回転を抑制する制動トルクを発生するようになっている。
【符号の説明】
【0122】
11…ブレーキペダル(ブレーキ操作部材)、11a…ブレーキストロークセンサ(ブレーキ踏込状態検出手段)、12…アクセルペダル(アクセル操作部材)、12a…アクセル開度センサ(アクセル踏込状態検出手段)、20…電動ディスクブレーキ、21…ディスクロータ(被制動部材)、22a,22b…ブレーキパッド(制動部材)、25…ピストン、26…電気モータ、30…ブレーキECU(モータ制御手段、アクセル減少速度検出手段、アクセル操作量増加検出手段、アクセル増加速度検出手段、隙間取得手段、計時手段、車両状態検出手段、ブレーキ操作開始速度算出手段、ブレーキ減少速度検出手段)、41…車輪速センサ、42…車速センサ、43…勾配センサ、W…車輪。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モータ(26)により制動部材(22a,22b)を被制動部材(21)に押圧して制動力を発生させる車両用の電動式ブレーキ装置において、
アクセル操作部材(12)が操作量減少側に移動している際の速度であるアクセル減少速度を検出するアクセル減少速度検出手段(30、ステップ108)と、
前記アクセル減少速度検出手段により検出されているアクセル減少速度が小さいほど前記電気モータに小さな電流を通電して、ブレーキ操作部材が操作される前に前記制動部材と前記被制動部材との隙間を第1隙間所定値になるまで小さくするモータ制御手段(30、ステップ108〜112,124)と、
を備えていることを特徴とする車両用の電動式ブレーキ装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記アクセル操作部材が操作量増加側に移動されていることを検出するアクセル操作量増加検出手段(30、ステップ304)を備え、
前記モータ制御手段は、前記アクセル操作量増加検出手段により前記アクセル操作部材が操作量増加側に操作されていることが検出されている場合に、前記電気モータに電流を通電して前記制動部材と前記被制動部材との隙間を大きくする(ステップ316)ことを特徴とする車両用の電動式ブレーキ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記アクセル操作部材が操作量増加側に移動している際の速度であるアクセル増加速度を検出するアクセル増加速度検出手段(30、ステップ312)を備え、
前記モータ制御手段は、前記アクセル増加速度検出手段により検出されているアクセル増加速度が小さいほど、前記電気モータに小さな電流を通電して前記制動部材と前記被制動部材との隙間を大きくする(ステップ314,316)ことを特徴とする車両用の電動式ブレーキ装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3において、
前記制動部材と前記被制動部材との隙間を取得する隙間取得手段(30、ステップ306,318)を備え、
前記モータ制御手段は、前記隙間取得手段により取得されている前記隙間が前記第1隙間所定値よりも大きい第2隙間所定値以下である場合に、前記電気モータに電流を通電して前記制動部材と前記被制動部材との隙間を大きくする(ステップ312〜316,320)ことを特徴とする車両用の電動式ブレーキ装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか一項において、
前記アクセル操作部材の操作量が0になった後の経過時間を計時する計時手段(30、ステップ210)を備え、
前記モータ制御手段は、前記アクセル操作部材の操作量が0となった後に前記ブレーキ操作部材が操作されることなく前記計時手段により計時された経過時間が所定時間以上になった場合に、前記電気モータに電流を通電して前記制動部材と前記被制動部材との隙間を大きくする(ステップ208,214,224)ことを特徴とする車両用の電動式ブレーキ装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか一項において、
車両状態を検出する車両状態検出手段(30、ステップ114)を備え、
前記モータ制御手段は、前記車両状態検出手段により検出されている車両状態が所定状態である場合に、前記電気モータに電流を通電して前記制動部材と前記被制動部材との隙間を変更する(ステップ116,120)ことを特徴とする車両用の電動式ブレーキ装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れか一項において、
前記アクセル操作部材の操作量が0になった後、前記ブレーキ操作部材が操作された場合に、その操作当初の操作速度であるブレーキ操作開始速度を算出するブレーキ操作開始速度算出手段(30、ステップ218)を備え、
前記モータ制御手段は、前記ブレーキ操作開始速度算出手段により算出されているブレーキ操作開始速度が小さいほど、前記電気モータに小さな電流を通電して、前記制動部材と前記被制動部材との隙間を前記第1隙間所定値より小さくする(ステップ218〜222,232)ことを特徴とする車両用の電動式ブレーキ装置。
【請求項8】
電気モータ(26)により制動部材(22a,22b)を被制動部材(21)に押圧して制動力を発生させる車両用の電動式ブレーキ装置において、
ブレーキ操作部材(11)が操作量減少側に移動する際の速度であるブレーキ減少速度を検出するブレーキ減少速度検出手段(30、ステップ408)と、
前記ブレーキ減少速度検出手段により検出されたブレーキ減少速度が小さいほど、前記ブレーキ操作部材の操作量が0になった後に前記電気モータに小さな電流を通電して前記制動部材と前記被制動部材との隙間を大きくするモータ制御手段(30、ステップ410,416,418)と、
を備えていることを特徴とする車両用の電動式ブレーキ装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記ブレーキ操作部材が操作量減少側に移動している際の車両状態を検出する車両状態検出手段(30、ステップ420)を備え、
前記モータ制御手段は、前記車両状態検出手段により検出された車両状態が所定状態である場合に、前記電気モータに電流を通電して前記制動部材と前記被制動部材との隙間を大きくする(ステップ422,426)ことを特徴とする車両用の電動式ブレーキ装置。
【請求項1】
電気モータ(26)により制動部材(22a,22b)を被制動部材(21)に押圧して制動力を発生させる車両用の電動式ブレーキ装置において、
アクセル操作部材(12)が操作量減少側に移動している際の速度であるアクセル減少速度を検出するアクセル減少速度検出手段(30、ステップ108)と、
前記アクセル減少速度検出手段により検出されているアクセル減少速度が小さいほど前記電気モータに小さな電流を通電して、ブレーキ操作部材が操作される前に前記制動部材と前記被制動部材との隙間を第1隙間所定値になるまで小さくするモータ制御手段(30、ステップ108〜112,124)と、
を備えていることを特徴とする車両用の電動式ブレーキ装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記アクセル操作部材が操作量増加側に移動されていることを検出するアクセル操作量増加検出手段(30、ステップ304)を備え、
前記モータ制御手段は、前記アクセル操作量増加検出手段により前記アクセル操作部材が操作量増加側に操作されていることが検出されている場合に、前記電気モータに電流を通電して前記制動部材と前記被制動部材との隙間を大きくする(ステップ316)ことを特徴とする車両用の電動式ブレーキ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記アクセル操作部材が操作量増加側に移動している際の速度であるアクセル増加速度を検出するアクセル増加速度検出手段(30、ステップ312)を備え、
前記モータ制御手段は、前記アクセル増加速度検出手段により検出されているアクセル増加速度が小さいほど、前記電気モータに小さな電流を通電して前記制動部材と前記被制動部材との隙間を大きくする(ステップ314,316)ことを特徴とする車両用の電動式ブレーキ装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3において、
前記制動部材と前記被制動部材との隙間を取得する隙間取得手段(30、ステップ306,318)を備え、
前記モータ制御手段は、前記隙間取得手段により取得されている前記隙間が前記第1隙間所定値よりも大きい第2隙間所定値以下である場合に、前記電気モータに電流を通電して前記制動部材と前記被制動部材との隙間を大きくする(ステップ312〜316,320)ことを特徴とする車両用の電動式ブレーキ装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか一項において、
前記アクセル操作部材の操作量が0になった後の経過時間を計時する計時手段(30、ステップ210)を備え、
前記モータ制御手段は、前記アクセル操作部材の操作量が0となった後に前記ブレーキ操作部材が操作されることなく前記計時手段により計時された経過時間が所定時間以上になった場合に、前記電気モータに電流を通電して前記制動部材と前記被制動部材との隙間を大きくする(ステップ208,214,224)ことを特徴とする車両用の電動式ブレーキ装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか一項において、
車両状態を検出する車両状態検出手段(30、ステップ114)を備え、
前記モータ制御手段は、前記車両状態検出手段により検出されている車両状態が所定状態である場合に、前記電気モータに電流を通電して前記制動部材と前記被制動部材との隙間を変更する(ステップ116,120)ことを特徴とする車両用の電動式ブレーキ装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れか一項において、
前記アクセル操作部材の操作量が0になった後、前記ブレーキ操作部材が操作された場合に、その操作当初の操作速度であるブレーキ操作開始速度を算出するブレーキ操作開始速度算出手段(30、ステップ218)を備え、
前記モータ制御手段は、前記ブレーキ操作開始速度算出手段により算出されているブレーキ操作開始速度が小さいほど、前記電気モータに小さな電流を通電して、前記制動部材と前記被制動部材との隙間を前記第1隙間所定値より小さくする(ステップ218〜222,232)ことを特徴とする車両用の電動式ブレーキ装置。
【請求項8】
電気モータ(26)により制動部材(22a,22b)を被制動部材(21)に押圧して制動力を発生させる車両用の電動式ブレーキ装置において、
ブレーキ操作部材(11)が操作量減少側に移動する際の速度であるブレーキ減少速度を検出するブレーキ減少速度検出手段(30、ステップ408)と、
前記ブレーキ減少速度検出手段により検出されたブレーキ減少速度が小さいほど、前記ブレーキ操作部材の操作量が0になった後に前記電気モータに小さな電流を通電して前記制動部材と前記被制動部材との隙間を大きくするモータ制御手段(30、ステップ410,416,418)と、
を備えていることを特徴とする車両用の電動式ブレーキ装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記ブレーキ操作部材が操作量減少側に移動している際の車両状態を検出する車両状態検出手段(30、ステップ420)を備え、
前記モータ制御手段は、前記車両状態検出手段により検出された車両状態が所定状態である場合に、前記電気モータに電流を通電して前記制動部材と前記被制動部材との隙間を大きくする(ステップ422,426)ことを特徴とする車両用の電動式ブレーキ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−23144(P2013−23144A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162249(P2011−162249)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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