説明

車両用の電池パックユニット

【課題】本発明は、電池パックユニットの冷却ファンが車両衝突時の衝撃荷重を受けた場合でもその衝突荷重がケース内の電池に加わり難い構造にして、漏電防止、及び電池の破損防止を図ることを目的とする。
【解決手段】本発明は、車両用電源である電池と、空間を介した状態で電池を収納するケース13と、そのケース13内の空間にダクト14を介して空気を供給し、電池を冷却する冷却ファン15とを備える車両用の電池パックユニットであって、ケース13と冷却ファン15との間には、冷却ファン15をケース13の方向に押圧するような衝突荷重Fがその冷却ファン15に加わったときに、冷却ファン15をケース13から逸れる方向にガイドするガイド部材27が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電源である電池と、空間を介した状態で電池を収納するケースと、そのケース内の空間にダクトを介して空気を供給し、前記電池を冷却する冷却ファンとを備える車両用の電池パックユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の電池パックユニットに関する技術が特許文献1に記載されている。
特許文献1に係る車両用の電池パックユニット100は、ハイブリッド車等に使用される電池パックユニットであり、平面長方形の細長い箱状に形成されて、車幅方向に延びるように車両フロア上に設置されている。
電池パックユニット100は、図9の縦断面図に示すように、電池101と、その電池101を収納するケース103と、ケース103内の空間にダクト105を介して空気を供給し、電池101を冷却する冷却ファン107とから構成されている。
冷却ファン107は、車幅方向に延びるように配置された電池101の延長線上の位置で、その電池101とほぼ等しい高さ位置に設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−231321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成により、車両が側面衝突されて、図9に示すように、冷却ファン107に対して衝突荷重Fが加わると、冷却ファン107が前記衝突荷重Fによって押し込まれる。前述のように、冷却ファン107は電池101の延長線上の位置で、その電池101とほぼ等しい高さ位置に設置されている。このため、衝突荷重Fによって押し込まれた冷却ファン107は、ダクト105を破壊してケース103にまともに衝突する。この結果、衝突荷重がケース103を介して電池101に加わり、電池101と導体との接続が外れて漏電が発生したり、電池101の液漏れ等が発生するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、電池パックユニットの冷却ファンが車両衝突時の衝撃荷重を受けた場合でもその衝突荷重がケース内の電池に加わり難いようにして、漏電防止、及び電池の破損防止を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、車両用電源である電池と、空間を介した状態で前記電池を収納するケースと、そのケース内の空間にダクトを介して空気を供給し、前記電池を冷却する冷却ファンとを備える車両用の電池パックユニットであって、前記ケースと前記冷却ファンとの間には、前記冷却ファンを前記ケースの方向に押圧するような衝突荷重がその冷却ファンに加わったときに、前記冷却ファンを前記ケースから逸れる方向にガイドするガイド部材が設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、ケースと冷却ファンとの間にはガイド部材が設けられている。このため、冷却ファンに対して、その冷却ファンをケースの方向に押圧するような衝突荷重が加わっても、冷却ファンがガイド部材によってケースから逸れる方向にガイドされる。これにより、冷却ファンがまともにケースに衝突することがなくなり、そのケースに収納されている電池に対して衝突荷重が加わり難くなる。この結果、電池と導体との外れによる漏電、及び電池の破損を防止できるようになる。
【0008】
請求項2の発明によると、ガイド部材は、ケースと冷却ファンとを載せて固定できるように構成されたトレイであり、前記トレイは、前記ケースと前記冷却ファンとの間に開口が形成されて、前記ケースの位置から前記冷却ファンの方向に向かって徐々に高くなるように傾斜しており、前記トレイは、前記冷却ファンに対して、その冷却ファンを前記ケースの方向に押圧するような衝突荷重が加わったときに、前記ケースの近傍で上方に折れ曲がり、前記冷却ファンを前記ケースの上方に導けるように構成されている。
このように、トレイは、ケースと冷却ファンとの間に開口が形成されているため、前記ケースと冷却ファンとの間の部分の強度が低くなる。さらに、トレイは、ケースの位置から冷却ファンの方向に向かって徐々に高くなるように傾斜している。このため、冷却ファンに対して、その冷却ファンをケースの方向に押圧するような衝突荷重が加わった場合に、トレイはケースの近傍で上方に折れ曲がり易くなる。
【0009】
請求項3の発明によると、ケースは車両フロア面上に設置されており、トレイにおいて冷却ファンを載せる部位が車両フロア面に対して上方に浮いた状態で配置されていることを特徴とする車両用の電池パックユニット。
このため、トレイがさらに上方に折れ曲がり易くなる。
【0010】
請求項4の発明によると、ガイド部材は、ケースと冷却ファンとの間に配置され、前記冷却ファンに対して、その冷却ファンを前記ケースの方向に押圧するような衝突荷重が加わったときに、前記冷却ファンを前記ケースの上方にガイドできるように構成された傾斜面を備える架台であることを特徴とする。
このため、トレイを有しない電池パックユニットにおいても、前記架台により、冷却ファンをケースの上方にガイドできるようになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、電池パックユニットの冷却ファンが車両衝突時の衝撃荷重を受けた場合でも、その電池パックユニットのケース内の電池に衝突荷重が加わり難くなるため、漏電、及び電池の破損を防止できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態1に係る電池パックユニットを備える車両の模式平面図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る電池パックユニットの全体斜視図である。
【図3】前記電池パックユニットの側面図(図2のIII-III矢視図)である。
【図4】前記電池パックユニットの模式縦断面図である。
【図5】電池パックユニットのケースと冷却ファン間のトレイを表す斜視図である。
【図6】図2のVI部拡大側面図である。
【図7】側面衝突時におけるトレイの動作を表す側面図である。
【図8】変更例に係る電池パックユニットの側面図である。
【図9】従来の電池パックユニットの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態1]
以下、図1から図8に基づいて本発明の実施形態1に係る車両用の電池パックユニットについて説明する。本実施形態に係る電池パックユニットは、ワンボックスタイプのハイブリッド車(乗用車)において使用される電池パックユニットである。
ここで、図中の前後左右、及び上下は乗用車の前後左右、及び上下に対応している。
【0014】
<電池パックユニット10の概要について>
電池パックユニット10は、乗用車Cの電源であり、平面長方形の細長い箱状に形成されて、図1に示すように、左右の前列シート3の下側に設置されている。
電池パックユニット10は、図2〜図4の斜視図、側面図、及び縦断面図に示すように、電池12(図4参照)と、空間を介した状態で前記電池12を収納する箱型のケース13と、そのケース13内に空気を供給して電池12を冷却する冷却ファン15とを備えている。冷却ファン15の上部の空気放出口15nとケース13の上部とは樹脂製の吸気ダクト14によって連結されており、その冷却ファン15から放出された空気が前記吸気ダクト14によって前記ケース13内に供給される。前記ケース13内に供給された空気は、図4の白矢印に示すように、電池12の周囲を流れて、その電池12を冷却した後、前記ケース13の下部から樹脂製の排気ダクト16によって外部に排出される。
電池12を収納する箱型のケース13と冷却ファン15とは、図2等に示すように、略長方形をしたトレイ20の上面所定位置に取付けられた状態で、そのトレイ20を介して車室のフロア面FLに固定される。
【0015】
<トレイ20について>
トレイ20は、前述のように、電池パックユニット10の箱型のケース13と冷却ファン15とを車室のフロア面FLに固定するとともに、車両側面衝突時の衝突荷重Fが冷却ファン15に対してケース13(電池12)の方向に押圧するように加わった場合に、冷却ファン15をケース13から逸れる方向にガイドする部材である。
トレイ20は、鋼板をプレス成形したものであり、図2、図3に示すように、電池12を収納したケース13を載せるケース載置部23と、冷却ファン15を載せるファン載置部25と、ケース載置部23とファン載置部25間に位置するガイド部27とから構成されている。
トレイ20のケース載置部23は、そのトレイ20の左端部を除く平板部分であり、トレイ20の主要部である。ケース載置部23の前後左右の四隅には、トレイ20を車室のフロア面FLにボルト止めするためフランジ部23fが前後方向に水平に突出するように形成されている。
【0016】
トレイ20のケース載置部23の左側(図2、図3等では右側に記載)には、図3に示すように、車室のフロア面FLから浮いた状態でガイド部27が設けられており、そのガイド部27の左側に同じく車室のフロア面FLから浮いた状態でファン載置部25が設けられている。
トレイ20のファン載置部25は、前述のように、冷却ファン15を支持する部分であり、図2等に示すように、略中央位置に冷却ファン15が取付けられるベース部25bが一段高い状態で形成されている。冷却ファン15は、空気放出口15nが右向きとなるように位置決めされた状態で、前記ベース部25bにボルト止めされる。
【0017】
トレイ20のガイド部27は、冷却ファン15に対して、図6に示すように、左方向から衝突荷重Fが加わった場合に、上方に折れ曲がるように構成された部分である。ガイド部27は、図5に示すように、中央に形成された開口27hと、その開口27hの前後でケース載置部23とファン載置部25とをつなぐ前辺部27fと後辺部27bとから構成されている。このように、ガイド部27は中央に開口27hが形成されているため、ケース載置部23、ファン載置部25と比較して強度が低下している。なお、ガイド部27の強度は、冷却ファン15とケース13とをつなぐ吸気ダクト14、及び排気ダクト16の強度よりは十分大きな値に設定されている。
ここで、図5では、ガイド部27を見易くするため、吸気ダクト14と排気ダクト16等は省略されている。
ガイド部27の前辺部27fと後辺部27bとは、断面L字形に折り曲げ成形された梁状に形成されており、側面形状が、図6等に示すように、上方に凸となるように湾曲している。即ち、前辺部27fと後辺部27bとは、ケース載置部23の左端位置からファン載置部25に向かって徐々に高くなるように傾斜しており、ケース載置部23とファン載置部25との中間位置(左右方向中央位置)で最も高くなる。そして、前記中間位置(最高位置)からファン載置部25に向かって徐々に低くなるように傾斜している。
【0018】
<車両側面衝突時のトレイ20の動作について>
次に、車両側面衝突時におけるトレイ20の動作について説明する。
例えば、乗用車Cの左方向から車両が衝突した場合、図6の白矢印に示すように、電池パックユニット10の冷却ファン15に対して左側からほぼ水平に衝突荷重Fが加わるようになる。これにより、冷却ファン15が取付けられたトレイ20のファン載置部25に対しても、冷却ファン15を介して水平方向に衝突荷重Fが加わるようになる。即ち、トレイ20のファン載置部25には、そのファン載置部25をケース載置部23の方に押圧するように衝突荷重Fが加わるようになる。
前述のように、トレイ20のガイド部27とファン載置部25とは、車室のフロア面FLから浮いた状態であり、前記ガイド部27はファン載置部25、及びケース載置部23よりも強度が低い状態で形成されている。さらに、ガイド部27の前辺部27f、後辺部27bはケース載置部23の左端位置からファン載置部25に向かって徐々に高くなるように傾斜している。
このため、ファン載置部25に対し、そのファン載置部25をケース載置部23の方に押圧するように衝突荷重Fが加わると、図6に示すように、ガイド部27がケース13の近傍位置27wで上方に折れ曲がるようになる。
【0019】
即ち、トレイ20のガイド部27とケース載置部23とは、そのガイド部27におけるケース13の近傍位置27wを中心にして上方に回動するようになる。これにより、ケース載置部23に取付けられている冷却ファン15が、図6の黒矢印に示すように、上方に移動する。このとき、冷却ファン15に接続されている吸気ダクト14、及び冷却ファン15の近傍に位置する排気ダクト16は破壊される。さらに、冷却ファン15が上方に移動する過程で、ガイド部27の前辺部27f、後辺部27bの上方湾曲部分がさらに折れ曲がるようになる。そして、冷却ファン15が電池パックユニット10のケース13の上方まで移動する(図6の点線、図7参照)。このように、冷却ファン15がトレイ20のガイド部27によってケース13から逸れる方向にガイドされることで、冷却ファン15がケース13にまともに衝突しなくなる。
即ち、前記トレイ20のガイド部27が本発明のガイド部材に相当する。
【0020】
<本実施形態に係る電池パックユニット10の長所について>
本実施形態に係る電池パックユニット10によると、電池12を収納するケース13と冷却ファン15との間にはトレイ20のガイド部27が設けられている。このため、冷却ファン15に対して、その冷却ファン15をケース13の方向に押圧するような衝突荷重Fが加わっても、冷却ファン15がトレイ20のガイド部27の働きでケース13から逸れる方向にガイドされる。これにより、冷却ファン15がまともにケース13に衝突することがなくなり、そのケース13に収納されている電池12に対して衝突荷重Fが加わり難くなる。この結果、電池12と導体との外れによる漏電、及び電池12の破損を防止できるようになる。
また、ケース13は車両フロア面FL上に設置されており、トレイ20において冷却ファンを載せるファン載置部25が車両フロア面FLに対して上方に浮いた状態で配置されている。このため、トレイ20がケース13の近傍位置27wでさらに上方に折れ曲がり易くなる。
【0021】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態に係る電池パックユニット10では、冷却ファン15に対して左方向から衝突荷重Fが加わった場合にトレイ20のガイド部27を上方に変形させて、前記冷却ファン15を電池12のケース13に対して上方に逸らす例を示した。しかし、トレイ20を使用する代わりに、図8に示すように、電池12を収納するケース13と冷却ファン15との間に傾斜面32を備える架台30を設置し、冷却ファン15に対して左方向から衝突荷重Fが加わった場合に架台30の傾斜面32で冷却ファン15をケース13に対して上方に逸らすようにすることも可能である。この場合、前記架台30が本発明のガイド部材に相当する。
また、本実施形態では、冷却ファンをケース13に対して上方に逸らす例を示したが、前記ガイド部材により水平方向に逸らすようにしても良い。
【符号の説明】
【0022】
12・・・・電池
13・・・・ケース
14・・・・吸気ダクト
15・・・・冷却ファン
20・・・・トレイ
23・・・・ケース載置部
25・・・・ファン載置部
27・・・・ガイド部(ガイド部材)
27h・・・開口
30・・・・架台
32・・・・傾斜面
F・・・・・衝突荷重
FL・・・・フロア面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用電源である電池と、空間を介した状態で前記電池を収納するケースと、そのケース内の空間にダクトを介して空気を供給し、前記電池を冷却する冷却ファンとを備える車両用の電池パックユニットであって、
前記ケースと前記冷却ファンとの間には、前記冷却ファンを前記ケースの方向に押圧するような衝突荷重がその冷却ファンに加わったときに、前記冷却ファンを前記ケースから逸れる方向にガイドするガイド部材が設けられていることを特徴とする車両用の電池パックユニット。
【請求項2】
請求項1に記載された車両用の電池パックユニットであって、
前記ガイド部材は、前記ケースと前記冷却ファンとを載せて固定できるように構成されたトレイであり、
前記トレイは、前記ケースと前記冷却ファンとの間に開口が形成されて、前記ケースの位置から前記冷却ファンの方向に向かって徐々に高くなるように傾斜しており、
前記トレイは、前記冷却ファンに対して、その冷却ファンを前記ケースの方向に押圧するような衝突荷重が加わったときに、前記ケースの近傍で上方に折れ曲がり、前記冷却ファンを前記ケースの上方に導けるように構成されていることを特徴とする車両用の電池パックユニット。
【請求項3】
請求項2に記載された車両用の電池パックユニットであって、
前記ケースは車両フロア面上に設置されており、前記トレイにおいて前記冷却ファンを載せる部位が前記車両フロア面に対して上方に浮いた状態で配置されていることを特徴とする車両用の電池パックユニット。
【請求項4】
請求項1に記載された車両用の電池パックユニットであって、
前記ガイド部材は、前記ケースと前記冷却ファンとの間に配置され、前記冷却ファンに対して、その冷却ファンを前記ケースの方向に押圧するような衝突荷重が加わったときに、前記冷却ファンを前記ケースの上方にガイドできるように構成された傾斜面を備える架台であることを特徴とする車両用の電池パックユニット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−86605(P2013−86605A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227596(P2011−227596)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】