説明

車両用の電源装置

【課題】出力端子と接続端子を連結している止ネジを出力端子から絶縁して、安全に止ネジを外せるようにする。
【解決手段】 車両用の電源装置は、複数の電池20を内蔵するケース1の外部に設けている出力端子4と、外部接続具2の接続端子5とを連結具3で連結している。連結具3は、積層している出力端子4と接続端子5に挿通される止ネジ8と、この止ネジ8にねじ込まれるナット9と、出力端子4と接続端子5の表面を被覆して絶縁する絶縁カバー10とを備える。止ネジ8は、頭部を絶縁してネジ部を金属ネジ13としている。積層している出力端子4と接続端子5に止ネジ8を挿通して、先端部にナット9をねじ込み、止ネジ8とナット9で出力端子4と接続端子5を挟着して連結し、止ネジ8で連結された出力端子4と接続端子5の表面を絶縁カバー10で被覆して絶縁している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてハイブリッドカー等に使用される車両用の電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の電源装置は、多数の電池を直列に接続して出力電圧を高くしている。車両を走行させるモーターに大電力を供給するためである。車両を走行させるモーターは、重い車両を走行させるので、大きな電力を必要とする。このため、車両用の電源装置は、出力電圧を、たとえば200〜300Vと極めて高くしている。出力電圧の高い電源装置は、安全性を向上するために、高電圧の出力を絶縁する必要がある。
【0003】
このことを実現するために、従来の電源装置は、多数の電池を収納しているケースの内部に、出力リードを接続する出力端子を設けている。この出力端子に接続された出力リードは、ケースから引き出される部分を絶縁している。この構造の電源装置は、ケースを閉じて、高電圧の出力端子が外部に表出しないようにできる(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−6643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この構造は、電池を収納するケースの内部に、出力端子を配置するスペースを設ける必要がある。このため、ケースの外形が大きくなる欠点がある。また、車両用の電源装置は、非常時に出力を遮断するコンタクタ等を接続している。コンタクタ等がケースに内蔵されると、ケースの外形はさらに大きくなる。コンタクタ等は、外部接続具としてケースの外部に配置することができる。この構造の電源装置は、電池を収納するケースを、コンタクタ等を収納するために大きくする必要がない。このため、ケースを小さくできる。しかしながら、外部接続具をケースの外部に配置しても、これに出力リードを接続するための出力端子をケースに設ける必要がある。出力端子をケースの外部に配置し、これに外部接続具に接続する接続端子をケースの外部で接続して、ケースを最も小さくできる。
【0005】
この構造は、出力端子と外部接続具の接続端子を、ケースの外部で止ネジで連結する。止ネジは、先端にナットをねじ込み、ナットと止ネジで出力端子と接続端子を挟着して連結する。この構造の電源装置は、ケースの外部に配置される高電圧の出力端子と接続端子を絶縁カバーで被覆して、安全に絶縁できる。
【0006】
以上のように、外部接続具を電池ケースの外部に配置して、表面を絶縁カバーで被覆する電源装置はケースを小さくできる。しかしながら、この構造の電源装置は、修理やメンテナンスのときに絶縁カバーを外すと、高電圧の出力端子や接続端子が外部に表出されて、危険な状態となる。さらに、出力端子と接続端子を連結している止ネジにも高電圧が印加されているので、これを安全に外すことができない。止ネジが出力端子と接続端子に接触しているからである。この弊害は、出力端子をケースの内部に配置している電源装置も同じである。ケース内に出力端子を配置している従来の電源装置は、出力リードを出力端子に固定するための止ネジに高電圧が印加されている。このため、止ネジを安全に外すことができない。
【0007】
本願出願人は、この欠点を解消するために、図1に示す連結構造を開発した。(特願2004−163775号)この図に示す連結構造は、複数の電池を内蔵するケースの外部に設けた出力端子34に、止ネジ38を介して接続端子35を接続している。出力端子34と接続端子35は積層されて、積層部に連結孔36を設けている。出力端子34と接続端子35の連結孔36には、セラミックス製の絶縁リング37を挿入している。この絶縁リング37には、止ネジ38を挿通している。止ネジ38の先端にはナット39をねじ込んでいる。さらに、出力端子34と接続端子35の表面を絶縁カバー30で被覆している。この連結構造は、出力端子34と接続端子35から絶縁リング37で止ネジ38を絶縁する。
【0008】
以上の連結構造は、セラミックス製のスリーブを介して出力端子と接続端子を挟着するので、スリーブに強い強度が要求されて、スリーブの製造コストが高くなる欠点がある。また、セラミックス製のスリーブは衝撃強度が充分でなく、衝撃で破損しやすい欠点がある。このため、止ネジとナットの締め付けトルクが制限される欠点がある。
【0009】
本発明は、さらにこの欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の第1の重要な目的は、出力端子と接続端子を連結している止ネジを出力端子から絶縁して、安全に止ネジを外すことができる車両用の電源装置を提供することにある。
【0010】
また、本発明の他の大切な目的は、部品コストを低減しながら止ネジの締め付けトルクを強くして、出力端子と接続端子とを確実に低抵抗な状態で連結でき、しかも連結部の衝撃強度を著しく向上できる車両用の電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の車両用の電源装置は、前述の目的を達成するために以下の構成を備える。
車両用の電源装置は、複数の電池20を内蔵すると共に、電池20に電気接続されている出力端子4を外部に設けているケース1と、このケース1の出力端子4に接続端子5を介して接続される外部接続具2と、この外部接続具2の接続端子5をケース1の出力端子4に連結する連結具3とを備える。連結具3は、積層している出力端子4と接続端子5に挿通される止ネジ8と、この止ネジ8にねじ込まれるナット9と、出力端子4と接続端子5の表面を被覆して絶縁する絶縁カバー10とを備える。止ネジ8は、頭部を絶縁してネジ部を金属ネジ13としている。積層している出力端子4と接続端子5に止ネジ8を挿通して、先端部にナット9をねじ込み、止ネジ8とナット9で出力端子4と接続端子5を挟着して連結し、止ネジ8で連結された出力端子4と接続端子5の表面を絶縁カバー10で被覆して絶縁している。
【0012】
本発明の車両用の電源装置は、頭部を絶縁するプラスチックに金属ネジ13の一端部をインサートして止ネジ8とすることができる。
【0013】
本発明の車両用の電源装置は、止ネジ8の頭部を絶縁している絶縁部14に小孔14Aを開口して、この小孔14Aを介して金属ネジ13の一部を頭部に表出させることができる。この電源装置、この小孔14Aに電圧の検出針を挿入して、出力端子4の電圧を検出できる。小孔14Aの内径は、3mm以下とすることができる。
【0014】
本発明の車両用の電源装置は、外部接続具2をコンタクタ2Aとして、接続端子5を介してコンタクタ2Aを出力端子4に接続することができる。
【0015】
本発明の車両用の電源装置は、外部接続具2を安全プラグ2Bとして、接続端子5を介して安全プラグ2Bを出力端子4に接続することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の車両用の電源装置は、出力端子から絶縁して、止ネジを安全に、しかも簡単に外すことができる。それは、本発明の電源装置が、ケースの外部に出力端子を設けると共に、この出力端子に頭部を絶縁する止ネジで接続端子を連結し、さらに、止ネジで連結する出力端子と接続端子とを絶縁カバーで被覆して絶縁しているからである。この構造は、出力端子と接続端子を連結している止ネジの頭部に高電圧が印加されることがなく、止ネジの頭部を出力端子から絶縁して、安全に外すことができる。
【0017】
さらに本発明の電源装置は、部品コストを低減しながら止ネジの締め付けトルクを強くして、出力端子と接続端子とを確実に低抵抗な状態で連結でき、また、連結部の衝撃強度を著しく向上できる特徴がある。それは、本発明の電源装置が、頭部を絶縁している金属ネジの止ネジにナットをねじ込んで、セラミックス等の絶縁材を使用することなく、出力端子と接続端子とを挟着して連結できるからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための車両用の電源装置を例示するものであって、本発明は電源装置を以下のものに特定しない。
【0019】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0020】
図2に示す車両用の電源装置は、複数の電池を内蔵しているケース1の外部に出力端子を設けている。出力端子は、連結具3を介して外部接続具2の接続端子を接続している。これ等の図に示す電源装置は、ケース1にふたつの外部接続具2を接続している。ただ、本発明の電源装置は、外部接続具をふたつに特定しない。ケースには、ひとつのあるいは3つ以上の外部接続具を接続することができる。さらに、図の電源装置は、各々の外部接続具2を、2組の出力端子と接続端子を介してケース1に接続しているが、外部接続具は、1組の出力端子と接続端子を介して、あるいは3組以上の出力端子と接続端子を介してケースに接続することができる。
【0021】
ケース1は、図3に示すように、電池を内蔵するインナーケース1Bを、図2のアウターケース1Aに収納している。アウターケース1Aは、電池を冷却する冷却空気を強制送風するダクト18を開口している。このダクト18に送風される冷却空気は、インナーケース1Bを透過して内蔵する電池を冷却する。アウターケース1Aは、インナーケース1Bを定位置に固定している。アウターケース1Aとインナーケース1Bは、プラスチック等の絶縁材を成形して製作される。ただ、アウターケースは、一部を電池から絶縁して金属製とすることもできる。
【0022】
ケース1は、電池に接続している出力端子4を外部に設けている。出力端子4の電圧を高くするために、ケース1に内蔵される複数の電池は、互いに直列に接続されている。出力端子4は、スイッチング素子を介して、車両を走行させるモーターに接続されて、モーターに電力を供給する。モーターに十分な電力を供給するために、出力端子4の電圧は、100V以上の高電圧、たとえば200〜400Vとしている。ケース1に内蔵される複数の電池は、直列に接続して電池モジュールとし、さらに複数の電池モジュールを直列に接続して出力端子4の電圧を高くしている。電池モジュールは、たとえば5個のニッケル水素電池を直列に接続している。この電池モジュールを50個直列に接続する電源装置は、全体で250個のニッケル水素電池を直列に接続して、出力電圧を300Vとする。ただし、電池モジュールは、必ずしも5個の電池を直列に接続するものではなく、たとえば、4個以下、あるいは6個以上の二次電池を直列に接続することもできる。また、二次電池は、ニッケル水素電池に特定せず、リチウムイオン二次電池やニッケルカドミウム電池等の充電できる他の二次電池も使用できる。さらに、電源装置は、必ずしも全体で50個の電池モジュールを直列に接続する必要はなく、これよりも少なく、あるいは多くの電池モジュールを直列に接続することができる。
【0023】
ケース1は、金属プレートからなる出力端子4を外部に設けている。出力端子4は、ケース1にネジ(図示せず)で固定され、あるいは電池や電池モジュールの電極やタブにネジ(図示せず)で固定される。ただし、本発明は、出力端子をケースに固定する構造を特定しない。したがって、出力端子は、ケースに嵌着して固定され、あるいはケースを成形するプラスチックにインサートして固定され、あるいは接着して固定することもできる。図のケース1は、出力端子4をケース1の外部に突出させるように固定している。
【0024】
図2と図3の電源装置の回路図を図4に示す。これ等の図に示す電源装置は、内蔵する電池20を2ブロックに分割して、各々のブロックにプラスマイナスの出力端子4を設けている。各々のブロックは、中間の出力端子4に接続される外部接続具2である安全プラグ2Bで直列に接続される。また、各々のブロックの出力側の出力端子4は、外部接続具2であるコンタクタ2Aを介して車両に出力される。この図の電源装置は、出力端子4に接続する外部接続具2を、安全プラグ2Bとコンタクタ2Aとする。ただ、本発明の電源装置は、外部接続具をコンタクタと安全プラグには特定しない。外部接続具は、コンタクタや安全プラグ以外のものも使用できるからである。
【0025】
外部接続具2は、ケース1の出力端子4に接続される接続端子5を備えている。外部接続具2は、プラスチック等の絶縁材で製作しているケーシングから接続端子5を突出させている。接続端子5と出力端子4は全体を金属プレートとし、あるいは互いに積層して連結される部分を金属プレートとしている。
【0026】
出力端子4と接続端子5の連結構造を図5ないし図8に示している。出力端子4と接続端子5は、これ等の図に示すように、互いに連結部を積層して、積層部に止ネジ8を挿通する連結孔6を設けている。出力端子4と接続端子5は、連結孔6の中心を一致させて積層される。連結孔6は、図9に示すように、止ネジ8の金属ネジ13を半径方向に出し入れできる切欠開口6Aを設けるU字状とすることもできる。この連結孔6の出力端子4と接続端子5は、止ネジ8の先端にナット9をねじ込んだ状態で脱着できる特徴がある。このため、ナット9を止ネジ8から分離することなく、すなわち止ネジ8とナット9とを完全に緩めることなく、出力端子4や接続端子5を脱着できる。ただし、本発明の電源装置は、出力端子と接続端子の連結孔に、必ずしも切欠開口を設ける必要はない。
【0027】
連結具3は、出力端子4と接続端子5に挿通される止ネジ8と、この止ネジ8にねじ込まれるナット9と、連結された出力端子4と接続端子5の表面を絶縁する絶縁カバー10とを備える。図5と図7の連結具3は、出力端子4と接続端子5の連結孔6にスリーブ7を挿通し、このスリーブ7に止ネジ8を挿通している。スリーブ7は、中心を一致させて積層している出力端子4と接続端子5の連結孔6に挿入されて、内部に止ネジ8を挿通している。図6と図8の連結具3は、スリーブを使用することなく、出力端子4と接続端子5の連結孔6に直接に止ネジ8を挿通している。この連結具3は構造を簡単にできる。
【0028】
止ネジ8は、頭部を絶縁してネジ部を金属ネジ13としている。金属ネジ13は、ネジ部13Bと頭部13Aとを金属で一体構造に製造している。この金属ネジ13は、金属ロッドを鍛造して、頭部13Aとネジ部13Bを一体構造に製造される。また、金属ネジ13は、頭部13Aをネジ部13Bよりも太くしている。この金属ネジ13の止ネジは、金属製の頭部13Aで接続端子5を出力端子4に押圧する。さらに金属ネジ13は、頭部を6角柱等の多角柱状とし、あるいは楕円柱状とし、あるいはまた外周面を凹凸のある円柱状としている。この金属ネジ13は、頭部13Aの表面を被覆する絶縁部14にスリップしないように結合できる。さらに、図に示す止ネジ8は、金属ネジ13の頭部13Aの上下縁に沿って鍔状の凸条13aを設けている。この金属ネジ13は、頭部13Aを被覆する絶縁部14に抜けないように結合できる。また、止ネジ8にナット9をねじ込む状態では、鍔状の凸条13aで接続端子5をしっかりと押圧できる。
【0029】
頭部を絶縁部14で被覆する止ネジ8は、絶縁部14を介して金属ネジ13を回転させる。止ネジ8は、頭部の外形、いいかえると絶縁部14の外形は、6角柱等の多角柱状とし、あるいは楕円柱状としている。この止ネジ8は、ナット回しやボックス等に頭部を嵌入して、スリップしないように回転できる。ただ、止ネジは、頭部を被覆する絶縁部の上面の中心に、6角形等の多角形状あるいは楕円形の凹部を設け、この凹部に多角柱や楕円柱のロッドを挿入して回転できる。
【0030】
さらに、図7と図8に示す止ネジ8は、頭部を絶縁している絶縁部14に小孔14Aを開口している。この止ネジ8は、小孔14Aを介して金属ネジ13の一部を頭部に表出させている。この構造の止ネジ8は、この小孔14Aに電圧の検出針を挿入して、出力端子4の電圧を検出することができる。小孔14Aの内径は、たとえば、3mm以下とすることができる。
【0031】
図の止ネジ8は、絶縁部14であるプラスチックに金属ネジ13の一端部をインサートして製作される。この止ネジ8は、図10の金型15を使用して、下記の工程で製造される。
(1) 頭部13Aとネジ部13Bとを金属で一体構造としている金属ネジ13を、金型15の定位置に仮止めする。金型15は、金属ネジ13のネジ部13Bを隙間なく挟着し、さらに、金属ネジ13の頭部13Aの中心をロッド17で押圧して、金属ネジ13を金型15の定位置に仮止めする。頭部13Aを押圧するロッド17は、プラスチックで成形される絶縁部14に小孔14Aを開口することができる。金属ネジ13は、ロッド17で頭部13Aを押圧することなく、一対の金型でネジ部を挟着して、定位置に仮り止めすることもできる。この金型で成形される絶縁部は、頭部に小孔が開口されない。
(2) 型締めして、金属ネジ13を仮止めする金型15の成形室16に溶融状態のプラスチックを注入する。注入されるプラスチックは、金属ネジ13の頭部13Aの全外周面と上面とに結合される。すなわち、金属ネジ13の頭部13Aが、絶縁材のプラスチックで被覆された状態となる。
(3) プラスチックを冷却して硬化させた後、金型15を開いて、金属ネジ13を頭部の絶縁部14にインサートしている止ネジ8を脱型する。
以上の工程で、金属ネジ13の頭部13Aを絶縁部14のプラスチックにインサートしてなる止ネジ8が製造される。
【0032】
この止ネジ8は、出力端子4と接続端子5に挿通され、先端にナット9をねじ込んで、出力端子4と接続端子5を連結する。止ネジ8とナット9で連結された出力端子4と接続端子5は、絶縁カバー10で表面を被覆して絶縁する。
【0033】
さらに、図7と図9に示す止ネジ8は、頭部に設けた絶縁部14の下縁に沿って、鍔状のフランジ部14Bをプラスチックで一体成形している。この止ネジ8は、止ネジ8に挿通されるスプリングワッシャ11や平ワッシャ12が、絶縁部14の周囲において上面に表出するのを防止する。フランジ部14Bの外形は、好ましくは、平ワッシャ12の外形よりも大きくしている。この止ネジ8は、ナット回しやボックス等を頭部の周囲に装着する状態で、これらの器具がスプリングワッシャ11や平ワッシャ12等に接触するのを確実に防止できる。
【0034】
図5と図7の連結構造は、出力端子4と接続端子5にスリーブ7を挿通し、このスリーブ7に止ネジ8を挿通している。スリーブ7は金属で製作される。図に示すスリーブ7は、接続端子5の上面を押圧する第1リング7Aと、出力端子4の下面を押圧する第2リング7Bとを備える。第1リング7Aは、端子表面を押圧する鍔部7aと、連結孔6に挿通されるリング部7bとを一体的に成形している。第2リング7Bは、止ネジ8を挿通する中心孔7cを有する円盤状に成形している。
【0035】
図5と図7の連結具3は、出力端子4と接続端子5の表面を、スリーブ7で挟着して連結している。この構造は、止ネジ8とナット9が、スリーブ7を介して出力端子4と接続端子5を押圧して連結する。この連結具3は、スリーブ7でもって、出力端子4と接続端子5を広い面積で押圧して連結できる。
【0036】
図の止ネジ8は、スプリングワッシャ11と平ワッシャ12を介して、スリーブ7を押圧し、あるいは接続端子5を押圧する。スプリングワッシャ11は、止ネジ8の頭部に弾性的に押圧されて、止ネジ8の緩みを防止する。平ワッシャ12は、スプリングワッシャ11よりも外径が大きく、スリーブ7や接続端子5の表面を広い面積で押圧する。この構造によると、止ネジ8の押圧力がスプリングワッシャ11と平ワッシャ12を介して広い面積に分散されて、スリーブ7や接続端子5を押圧する。したがって、スリーブ7や接続端子5の変形を防止しながら、強い締め付けトルクで締め込んで、出力端子4と接続端子5を確実に連結できる。
【0037】
絶縁カバー10は、硬質プラスチックを成形して製作される。図の絶縁カバー10は、第1カバー10Aと第2カバー10Bとからなるプラスチックの成形品である。第1カバー10Aは、積層している出力端子4と接続端子5の裏面と周囲を被覆して絶縁し、第2カバー10Bは出力端子4と接続端子5の上面と周囲を被覆して絶縁する形状に成形している。
【0038】
図の絶縁カバー10は、第1カバー10Aを成形するときにナット9をインサートして固定している。また、図5と図7の絶縁カバー10は、第2カバー10Bを成形するときに第1リング7Aをインサートして固定している。この絶縁カバー10は、止ネジ8をナット9にねじ込んで、第1カバー10Aと第2カバー10Bを出力端子4と接続端子5の表面に固定できる。ナット9と第1リング7Aを介して第1カバー10Aと第2カバー10Bが連結されるからである。図の絶縁カバー10は、ケース1に挟着して固定しているので、必ずしも止ネジ8とナット9を介して定位置に固定する必要はない。ただ、絶縁カバーは、ケースに固定すると共に、止ネジとナットを介して定位置に固定して、全体をしっかりと定位置に固定できる。
【0039】
ナット9をインサートしている第1カバー10Aは、ナット9の中心孔にねじ込まれる止ネジ8を突出させる孔10bを設けている。さらに図5と図7の第1カバー10Aは、第2リング7Bを嵌入する嵌合凹部10aを設けている。嵌合凹部10aは、第2リング7Bを定位置に嵌入できる形状に成形している。図6と図8の第1カバー10Aは、第2リングを使用しないので、これを嵌入する嵌入凹部を設けていない。ナット9の上面を第2カバー10Bと同一面としている。
【0040】
図5と図7の第2カバー10Bは、インサートしている第1リング7Aの表面を外部に表出して、この表出部に止ネジ8のネジ頭を案内できる凹部10cを設けている。さらに、第1カバー10Aと第2カバー10Bは、対向面に、積層している出力端子4と接続端子5を嵌入できる凹部10dを設けている。
【0041】
図5ないし図8の連結具3は、以下の工程で、出力端子4と接続端子5を連結して絶縁する。
(1) 図5と図7の第1カバー10Aは、嵌合凹部10aに第2リング7Bを嵌入し、図6と図8の第1カバーは、第2リングを嵌入することなく、第1カバー10Aの対向面に設けている凹部10dに出力端子4を嵌合する。
(2) 出力端子4に接続端子5を積層する。出力端子4と接続端子5は、連結孔6の中心を一致させて積層される。
(3) 第2カバー10Bで接続端子5の表面を被覆し、第2カバー10Bに止ネジ8を挿通し、止ネジ8の先端をナット9にねじ込む。止ネジ8は、平ワッシャ12とスプリングワッシャ11を入れて、出力端子4と接続端子5に挿通して先端をナット9にねじ込む。
【0042】
この状態で、止ネジ8とナット9は、出力端子4と接続端子5を両面から挟着して連結する。第1カバー10Aと第2カバー10Bは、出力端子4と接続端子5の表面を被覆し、止ネジ8は頭部を絶縁部14で絶縁する。この構造の連結具3は、止ネジ8を緩めて出力端子4と接続端子5の連結を解除する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】従来の車両用の電源装置の出力端子と接続端子の連結構造を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施例にかかる車両用の電源装置の斜視図である。
【図3】電池を内蔵するインナーケースの一例を示す斜視図である。
【図4】本発明の一実施例にかかる車両用の電源装置のブロック図である。
【図5】出力端子と接続端子の連結構造の一例を示す断面図である。
【図6】出力端子と接続端子の連結構造の他の一例を示す断面図である。
【図7】出力端子と接続端子の連結構造の他の一例を示す断面図である。
【図8】出力端子と接続端子の連結構造の他の一例を示す断面図である。
【図9】出力端子と接続端子の連結構造の他の一例を示す分解斜視図である。
【図10】止ネジの絶縁部をインサート成形する工程を示す断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1…ケース 1A…アウターケース 1B…インナーケース
2…外部接続具 2A…コンタクタ 2B…安全プラグ
3…連結具
4…出力端子
5…接続端子
6…連結孔 6A…切欠開口
7…スリーブ 7A…第1リング 7B…第2リング
7a…鍔部 7b…リング部
7c…中心孔
8…止ネジ
9…ナット
10…絶縁カバー 10A…第1カバー 10B…第2カバー
10a…嵌合凹部 10b…孔
10c…凹部 10d…凹部
11…スプリングワッシャ
12…平ワッシャ
13…金属ネジ 13A…頭部 13B…ネジ部
13a…凸条
14…絶縁部 14A…小孔 14B…フランジ部
15…金型
16…成形室
17…ロッド
18…ダクト
20…電池
30…絶縁カバー
34…出力端子
35…接続端子
36…連結孔
37…絶縁リング
38…止ネジ
39…ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池(20)を内蔵すると共に、電池(20)に電気接続されている出力端子(4)を外部に設けているケース(1)と、このケース(1)の出力端子(4)に接続端子(5)を介して接続される外部接続具(2)と、この外部接続具(2)の接続端子(5)をケース(1)の出力端子(4)に連結する連結具(3)とを備える車両用の電源装置であって、
連結具(3)は、積層している出力端子(4)と接続端子(5)に挿通される止ネジ(8)と、この止ネジ(8)にねじ込まれるナット(9)と、出力端子(4)と接続端子(5)の表面を被覆して絶縁する絶縁カバー(10)とを備え、止ネジ(8)は、頭部を絶縁してネジ部を金属ネジ(13)としており、
この止ネジ(8)が積層している出力端子(4)と接続端子(5)に挿通されて、先端部にナット(9)をねじ込み、止ネジ(8)とナット(9)で出力端子(4)と接続端子(5)を挟着して連結し、止ネジ(8)で連結された出力端子(4)と接続端子(5)の表面を絶縁カバー(10)で被覆して絶縁してなる車両用の電源装置。
【請求項2】
止ネジ(8)が、頭部を絶縁するプラスチックに金属ネジ(13)の一端部をインサートしている請求項1に記載される車両用の電源装置。
【請求項3】
止ネジ(8)の頭部を絶縁している絶縁部(14)に小孔(14A)を開口しており、この小孔(14A)を介して金属ネジ(13)の一部を頭部に表出させており、この小孔(14A)に電圧の検出針を挿入して、出力端子(4)の電圧を検出できるようにしてなる請求項1に記載される車両用の電源装置。
【請求項4】
小孔(14A)の内径が3mm以下である請求項3に記載される車両用の電源装置。
【請求項5】
外部接続具(2)がコンタクタ(2A)で、接続端子(5)を介してコンタクタ(2A)を出力端子(4)に接続している請求項1に記載される車両用の電源装置。
【請求項6】
外部接続具(2)が安全プラグ(2B)で、接続端子(5)を介して安全プラグ(2B)を出力端子(4)に接続している請求項1に記載される車両用の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−35520(P2007−35520A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−219718(P2005−219718)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】