説明

車両用アウトサイドミラー装置

【課題】使用位置に位置するミラーアセンブリを確実にロックする。
【解決手段】この発明は、第1回転規制機構および第2回転規制機構を備える。この結果、この発明は、使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4の格納位置Bへの回転および前方傾倒位置Cへの回転を規制することができる。これにより、ミラーアセンブリ4を電動格納ユニット3の電動により使用位置Aから格納位置Bに回転させ、その後、ミラーアセンブリ4を手動により格納位置Bから使用位置Aに戻した場合でも、すなわち、クラッチ機構15が外れている場合であっても、使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4をロックすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ミラーアセンブリが電動格納ユニットおよびベースを介して車体に回転(傾倒、回動)可能に取り付けられる車両用アウトサイドミラー装置に関するものである。すなわち、この発明は、たとえば、電動格納型のドアミラーなどの車両用アウトサイドミラー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用アウトサイドミラー装置は、従来からある(たとえば、特許文献1)。従来の車両用アウトサイドミラー装置は、格納機構によりミラーを起立位置と格納位置との間で回転させ、また、起立位置に位置するミラーが前可倒位置側へ所定値以上の外力を受けた場合には、ミラーを緩衝のために前可倒位置に回転させるものである。
【0003】
ところが、従来の車両用アウトサイドミラー装置は、ミラーを格納機構により起立位置から格納位置に回転させて、その後、ミラーを手動により格納位置から起立位置に回転させた(戻した)場合、この場合クラッチ機構が外れているので、ミラーがフリーの状態にあり、車両の振動によりミラーが振れる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−287594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、ミラーアセンブリを電動格納ユニットの電動により使用位置から格納位置に回転させ、その後、ミラーアセンブリを手動により格納位置から使用位置に回転させた(戻した)場合でも、ミラーアセンブリをロックして、車両の振動によりミラーアセンブリが振れる場合が無い車両用アウトサイドミラー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明(請求項1にかかる発明)は、回転力伝達機構に設けられていて、モータおよび回転力伝達機構の電動回転力では外れず、かつ、電動回転力以上の力で外れてミラーアセンブリをシャフトに対して回転可能とするクラッチ機構と、そのクラッチ機構が外れている場合において、使用位置に位置するミラーアセンブリをロックする保持機構と、を備える、ことを特徴とする。
【0007】
この発明(請求項2にかかる発明)は、保持機構が、使用位置に位置するミラーアセンブリの格納位置への回転を規制し、かつ、電動回転力で外れて使用位置に位置するミラーアセンブリの格納位置への回転を許容する第1回転規制機構と、使用位置に位置するミラーアセンブリの前方傾倒位置への回転を規制する第2回転規制機構と、電動回転力以外の力(手動による力、あるいは、何かがミラーアセンブリに当たって生じる力)で外れて使用位置に位置するミラーアセンブリの前方傾倒位置への回転を許容する緩衝機構と、を備える、ことを特徴とする。
【0008】
この発明(請求項3にかかる発明)は、使用位置に位置するミラーアセンブリを格納位置に電動回転力以外の力(手動による力、あるいは、何かがミラーアセンブリに当たって生じる力)で回転させる際に発生する、クラッチ機構のトルクの発生時と、第1回転規制機構のトルクの発生時とが、時間差を有する、ことを特徴とする。
【0009】
この発明(請求項4にかかる発明)は、使用位置に位置するミラーアセンブリを前方傾倒位置に電動回転力以外の力(手動による力、あるいは、何かがミラーアセンブリに当たって生じる力)で回転させる際に発生する、緩衝機構のトルク発生時と、クラッチ機構のトルクの発生時と、第1回転規制機構のトルクの発生時とが、時間差を有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明(請求項1にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、保持機構により、クラッチ機構が外れている場合であっても、使用位置に位置するミラーアセンブリをロックすることができるので、車両の振動によりミラーアセンブリが振れるのを確実に防止することができる。
【0011】
この発明(請求項2にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、保持機構の第1回転規制機構および第2回転規制機構により、使用位置に位置するミラーアセンブリの格納位置への回転および前方傾倒位置への回転を規制することができる。これにより、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、ミラーアセンブリを電動格納ユニットの電動により使用位置から格納位置に回転させ、その後、ミラーアセンブリを手動により格納位置から使用位置に回転させた(戻した)場合でも、すなわち、クラッチ機構が外れている場合であっても、使用位置に位置するミラーアセンブリをロックすることができるので、車両の振動によりミラーアセンブリが振れるのを確実に防止することができる。
【0012】
しかも、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、クラッチ機構により、使用位置に位置するミラーアセンブリを格納位置に電動回転力以外の力で回転させることができる。その上、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、クラッチ機構と保持機構の緩衝機構とにより、使用位置に位置するミラーアセンブリを前方傾倒位置に電動回転力以外の力で回転させることができる。この結果、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、緩衝作用の機能を有する。
【0013】
この発明(請求項3にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、前記の課題を解決するための手段により、使用位置に位置するミラーアセンブリを格納位置に電動回転力以外の力で回転させる際に発生する、クラッチ機構のトルクのピークと第1回転規制機構のトルクのピークとをずらすことができる。この結果、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、緩衝作用する際に、トルクを分散させることができるので、ミラー装置自体、あるいは、ミラーアセンブリに当たったものへの緩衝作用をさらに確実に機能させることができる。
【0014】
この発明(請求項4にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、前記の課題を解決するための手段により、使用位置に位置するミラーアセンブリを前方傾倒位置に電動回転力以外の力で回転させる際に発生する、干渉機構のトルクのピークとクラッチ機構のトルクのピークと第1回転規制機構のトルクのピークとをずらすことができる。この結果、この発明(請求項4にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、緩衝作用する際に、トルクを分散させることができるので、ミラー装置自体、あるいは、ミラーアセンブリに当たったものへの緩衝作用をさらに確実に機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、この発明にかかる車両用アウトサイドミラー装置の実施例1を示す使用状態の平面図である。
【図2】図2は、同じく、電動格納ユニットを示す分解斜視図である。
【図3】図3は、同じく、シャフト、クラッチホルダ、ワッシャの組付状態を示す斜視図である。
【図4】図4は、同じく、ケーシングを除いた電動格納ユニットの組付状態を示す斜視図である。
【図5】図5は、同じく、第1回転機構の作動状態を示す説明図である。
【図6】図6は、同じく、ケーシングの一部を破断した電動格納ユニットの組付状態を示す斜視図である。
【図7】図7は、同じく、ケーシングを斜め下から見た状態を示す斜視図である。
【図8】図8は、同じく、ケーシングの底面を示す図2におけるVIII矢視図である。
【図9】図9は、同じく、ストッパ部材の平面を示す図2におけるIX矢視図である。
【図10】図10は、同じく、ストッパ部材の底面を示す図2におけるX矢視図である。
【図11】図11は、同じく、シャフトホルダの平面を示す図2におけるXI矢視図である。
【図12】図12は、同じく、第2回転規制機構の作動状態を示す平面説明図である。
【図13】図13は、同じく、電動回転範囲規制機構の作動状態を示す平面説明図である。
【図14】図14は、同じく、クラッチ機構と第1回転規制機構と第2回転規制機構と緩衝機構との組付状態を示す説明図である。
【図15】図15は、同じく、使用位置に位置するミラーアセンブリを電動で格納位置に位置させる際のクラッチ機構と第1回転規制機構と第2回転規制機構と緩衝機構との組付状態を示す説明図である。
【図16】図16は、同じく、図15の状態(格納位置)に位置するミラーアセンブリを手動で使用位置に位置させる際のクラッチ機構と第1回転規制機構と第2回転規制機構と緩衝機構との組付状態を示す説明図である。
【図17】図17は、同じく、図16の状態(格納位置に位置するミラーアセンブリを手動で使用位置に位置させた状態)に位置するミラーアセンブリを手動で前方傾倒位置に位置させる際のクラッチ機構と第1回転規制機構と第2回転規制機構と緩衝機構との組付状態を示す説明図である。
【図18】図18は、同じく、図17の状態(格納位置に位置するミラーアセンブリを手動で使用位置に位置させてから手動で前方傾倒位置に位置させた状態)に位置するミラーアセンブリを電動で格納位置に位置させる際のクラッチ機構と第1回転規制機構と第2回転規制機構と緩衝機構との組付状態を示す説明図である。
【図19】図19は、同じく、使用位置に位置するミラーアセンブリを手動で格納位置に位置させる際のクラッチ機構と第1回転規制機構と第2回転規制機構と緩衝機構との組付状態を示す説明図である。
【図20】図20は、同じく、使用位置に位置するミラーアセンブリを手動で前方傾倒位置に位置させる際のクラッチ機構と第1回転規制機構と第2回転規制機構と緩衝機構との組付状態を示す説明図である。
【図21】図21は、同じく、使用位置に位置するミラーアセンブリを手動で格納位置に位置させる際に発生する、クラッチ機構のトルクの発生時と、第1回転規制機構のトルクの発生時との時間差を示す説明図である。
【図22】図22は、同じく、使用位置に位置するミラーアセンブリを手動で前方傾倒位置に位置させる際に発生する、緩衝機構のトルクの発生時と、クラッチ機構のトルクの発生時と、第1回転規制機構のトルクの発生時との時間差を示す説明図である。
【図23】図23は、この発明にかかる車両用アウトサイドミラー装置の実施例2を示す第1回規制転機構の作動状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明にかかる車両用アウトサイドミラー装置の実施例のうちの2例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0017】
「構成の説明」
図1〜図22は、この発明にかかる車両用アウトサイドミラー装置の実施例1を示す。以下、この実施例1における車両用アウトサイドミラー装置の構成について説明する。図1において、符号1は、この実施例1における車両用アウトサイドミラー装置であって、この例では、電動格納式ドアミラー装置(電動格納型のドアミラー)である。前記電動格納式ドアミラー装置1は、自動車の左右のドア(図示せず)にそれぞれ装備される。なお、この実施例1の電動格納式ドアミラー装置1は、自動車の左側のドアに装備されるものである。以下、自動車の左側のドアに装備されるこの実施例1の電動格納式ドアミラー装置1について説明する。なお、自動車の右側のドアに装備される電動格納式ドアミラー装置の構成は、この実施例1の電動格納式ドアミラー装置1の構成とほぼ左右が逆となるので、説明を省略する。
【0018】
前記電動格納式ドアミラー装置1は、図1に示すように、ミラーアセンブリ4が電動格納ユニット3およびベース(ミラーベース)2を介して車体(自動車のドア)Dに回転可能に取り付けられるものである。前記ベース2は、前記ドアDに固定されるものである。
【0019】
前記ミラーアセンブリ4は、ミラーハウジング5と、取付ブラケット(図示せず)と、パワーユニット(図示せず)と、図示しないミラー(ミラーユニット)と、から構成されている。前記ミラーハウジング5内には、前記取付ブラケットが取り付けられている。前記取付ブラケットには、前記パワーユニットが取り付けられている。前記パワーユニットには、前記ミラーが上下左右に傾動可能に取り付けられている。
【0020】
前記電動格納ユニット3は、シャフトホルダ(シャフトベース)9と、シャフト10と、ケーシングとしてのギアケース11およびカバー12と、モータ13と、回転力伝達機構としての減速機構14およびクラッチ機構15と、軸受部材16と、ストッパ部材6と、ワッシャ46と、ボール47と、電動回転範囲規制機構と、第1回転規制機構と、第2回転規制機構と、緩衝機構と、を備えるものである。
【0021】
前記シャフトホルダ9は、前記ベース2に固定される。なお、前記シャフトホルダ9を前記ベース2に一体に設けても良い。前記シャフトホルダ9の一方の面(上面)の中央には、別体の前記シャフト10が一体に嵌合固定されている。なお、前記シャフトホルダ9の一方の面(上面)の中央に前記シャフト10を一体に設けても良い。前記シャフト10は、中空形状をなしていて、ハーネス(図示せず)が挿通するように構成されている。前記シャフト10には、前記ギアケース11および前記カバー12が前記シャフト10の回転中心O−O回りに回転可能に取り付けられている。前記ギアケース11には、前記ミラーアセンブリ4の前記取付ブラケットが取り付けられている。前記ギアケース11および前記カバー12内には、前記モータ13と、前記回転力伝達機構の前記減速機構14および前記クラッチ機構15と、前記軸受部材16と、前記ストッパ部材6と、前記ワッシャ46と、前記ボール47と、前記電動回転範囲規制機構と、前記第1回転規制機構と、前記第2回転規制機構と、前記緩衝機構と、がそれぞれ収納されている。
【0022】
前記ギアケース11は、図2、図6、図7、図8に示すように、一方(下方)が閉塞し、かつ、他方(上方)が開口した断面凹形状をなす。すなわち、前記ギアケース11には、前記シャフトホルダ9側が閉塞され、かつ、前記カバー12側が開口された断面凹形状をなす収納部18が設けられている。前記ギアケース11の閉塞部には、挿入孔19が設けられている。前記挿入孔19には、前記シャフト10が挿入されている。この結果、前記ギアケース11は、前記シャフト10に前記シャフト10の回転中心O−O回りに回転可能に取り付けられることとなる。
【0023】
図2、図4、図6、図13に示すように、前記シャフトホルダ9の上面には、前記シャフト10の回転中心O−Oを中心とする円弧形状のストッパ凸部21が一体に設けられている。前記ストッパ凸部21の両端面には、ストッパ面22がそれぞれ設けられている。一方、図6、図7、図8、図13に示すように、前記ギアケース11の下面には、前記シャフト10の回転中心O−Oを中心とする円弧形状のガイド溝24が設けられている。前記ガイド溝24の両端面には、ストッパ面25がそれぞれ設けられている。
【0024】
前記ギアケース11の前記ガイド溝24には、前記シャフトホルダ9の前記ストッパ凸部21が係合されている。前記ストッパ凸部21と前記ガイド溝24とは、前記ギアケース11が前記シャフトホルダ9に対して前記シャフト10の回転中心O−O回りに回転する際、すなわち、図1に示すように、前記ミラーアセンブリ4が前記ベース2に対して使用位置Aと格納位置Bとの間を後方(上から見て反時計方向)または前方(上から見て時計方向)に回転する際のガイドとなるガイド部材を構成する。図1において、符号Cは、前記ミラーアセンブリ4の前方傾倒位置を示し、符号Eは、車両の後方を示し、符号Fは、車両の前方を示す。
【0025】
また、前記ストッパ凸部21の前記ストッパ面22と前記ガイド溝24の前記ストッパ面25とは、前記ミラーアセンブリ4の前記電動回転の範囲α(図1に示す前記使用位置Aと前記格納位置Bとの間の範囲)を規制する前記電動回転範囲規制機構を構成する。すなわち、図13(A)に示すように、前記ミラーアセンブリ4が前記使用位置Aに位置すると、前記ストッパ凸部21の一方の前記ストッパ面22と前記ガイド溝24の一方の前記ストッパ面25とが当接する。また、図13(C)に示すように、前記ミラーアセンブリ4が前記格納位置Bに位置すると、前記ストッパ凸部21の他方の前記ストッパ面22と前記ガイド溝24の他方の前記ストッパ面25とが当接する。
【0026】
前記カバー12は、図2に示すように、一方(上方)が閉塞し、かつ、他方(下方)が開口した断面逆凹形状をなす。すなわち、前記カバー12には、一方の前記ギアケース11側が開口され、かつ、他方側が開口された断面逆凹形状をなす収納部18が設けられている。前記カバー12には、中空形状の前記シャフト10と連通するハーネス挿通筒部26が一体に設けられている。
【0027】
また、前記カバー12には、ソケット部7が設けられている。前記ソケット部7には、図示しない電源(バッテリー)側と電気的に接続されているコネクタ8が電気的に断続可能に接続しかつ機械的に着脱可能に取り付けられる。前記ソケット部7には、基板27が取り付けられている。前記基板27は、前記モータ13と電気的に接続されている。前記基板27には、前記モータ13の駆動停止を制御するスイッチ回路が実装されている。この結果、前記モータ13は、前記基板27および前記ソケット部7を介して前記コネクタ8と電気的に接続される。
【0028】
前記カバー12は、前記ギアケース11の前記収納部18の開口縁の外側に嵌合固定されている。前記ギアケース11および前記カバー12内の収納部18中には、前記モータ13および前記減速機構14および前記クラッチ機構15および前記軸受部材16および前記ストッパ部材6および前記ワッシャ46および前記ボール47および前記電動回転範囲規制機構および前記第1回転規制機構および前記第2回転規制機構および前記緩衝機構および前記基板27がスクリューなどにより固定収納されている。
【0029】
また、前記カバー12には、挿入孔(図示せず)が前記ハーネス挿通筒部26と連通するように設けられている。前記挿入孔には、前記シャフト10が挿入されている。この結果、前記カバー12は、前記ギアケース11と共に前記シャフト10に前記シャフト10の回転中心O−O回りに回転可能に取り付けられることとなる。
【0030】
前記回転力伝達機構の前記減速機構14および前記クラッチ機構15は、図2、図6に示すように、前記ギアケース11および前記カバー12の前記収納部18中に収納され、かつ、前記モータ13の出力軸(図示せず)と前記シャフト10との間に設けられ、前記モータ13の回転力を前記シャフト10に伝達するものである。前記モータ13および前記回転力伝達機構の前記減速機構14および前記クラッチ機構15は、前記ミラーアセンブリ4を前記シャフト10に対して前記シャフト10の回転中心O−O回りに電動回転させるものである。
【0031】
前記減速機構14は、第1段目のギアとしての第1ウォームギア29と、前記第1ウォームギア29に噛み合う第2段目のギアとしてのヘリカルギア30と、第3段目のギアとしての第2ウォームギア31と、前記第2ウォームギア31が噛み合う最終段目のギアとしてのクラッチギア32と、から構成されている。
【0032】
前記第1ウォームギア29は、前記ギアケース11および前記軸受部材16に回転可能に軸受されている。前記第1ウォームギア29は、ジョイント17を介して前記モータ13の出力軸に連結されている。前記ヘリカルギア30は、前記軸受部材16に回転可能に軸受されている。前記第2ウォームギア31は、前記ギアケース11および前記軸受部材16に回転可能に軸受されている。前記ヘリカルギア30と前記第2ウォームギア31とは、一体に回転可能に連結されている。
【0033】
前記クラッチ機構15は、前記クラッチギア32と、クラッチ33と、クラッチホルダ35と、スプリング36と、プッシュナット37と、を備える。前記クラッチ機構15は、前記シャフト10に、前記クラッチギア32、前記クラッチ33、前記クラッチホルダ35、前記スプリング36、を順次嵌め合せ、前記プッシュナット37を前記シャフト10に止めて、前記スプリング36を圧縮状態にすることによって構成されている。前記クラッチギア32と前記クラッチ33とは、前記シャフト10の回転中心O−O回りに固定されている。前記クラッチ33と前記クラッチホルダ35とは、断続可能に連結されている。前記減速機構14の前記第2ウォームギア31と前記クラッチ機構15の前記クラッチギア32とが噛合うことにより、前記モータ13の回転力が前記シャフト10に伝達されることとなる。
【0034】
前記クラッチギア32および前記クラッチ33と前記クラッチホルダ35とが前記クラッチ機構15を構成する。前記クラッチギア32および前記クラッチ33は、前記シャフト10に前記シャフト10の回転中心O−O回りに回転可能にかつ軸方向に移動可能に取り付けられている。前記クラッチホルダ35は、前記シャフト10に回転不可能にかつ軸方向に移動可能に嵌合状態で取り付けられている。図2、図4、図14〜図20に示すように、前記クラッチ33と前記クラッチホルダ35との相互に対向する面、すなわち、前記クラッチ33の一方の面(上面)側と前記クラッチホルダ35の一方の面(下面)側とには、複数個この例では3個の山形形状のクラッチ凸部40と谷形形状のクラッチ凹部41とが等間隔に設けられている。前記クラッチ凸部40と前記クラッチ凹部41とが嵌合状態にあるときには、前記クラッチギア32および前記クラッチ33と前記クラッチホルダ35とが続状態(外れていない状態、つながっている状態)にあり、前記クラッチ凸部40と前記クラッチ凹部41とが嵌合解除状態にあるときには、前記クラッチギア32および前記クラッチ33と前記クラッチホルダ35とは、断状態(外れている状態、切れている状態)にある。前記クラッチ機構15は、前記モータ13および前記回転力伝達機構(前記減速機構14および前記クラッチ機構15)の電動回転力では外れず、かつ、前記電動回転力以上の力で外れて前記ミラーアセンブリ4を前記シャフト10に対して回転可能とする。
【0035】
前記クラッチ部材のうち前記クラッチギア32および前記クラッチ33の他方の面(下面)側は、前記ギアケース11の底部の一面(上面)に対向する。一方、前記クラッチ部材のうち前記クラッチホルダ35の他方の面(上面)側は、前記スプリング36に直接当接する。前記ギアケース11の底部の一面(上面)と前記クラッチギア32の他方の面(下面)とには、前記ボール47が逃げるための凹部39、43がそれぞれ設けられている。前記凹部39、43は、前記シャフト10の回転中心O−O回りに所定の幅、すなわち、トルクのピークをずらすための時間差を設定する幅を有する。
【0036】
前記ワッシャ46は、金属部材たとえば鉄板から構成されている。前記ワッシャ46は、前記シャフト10に回転不可能にかつ軸方向に移動不可能に嵌合状態で取り付けられている。前記ワッシャ46は、前記クラッチギア32および前記クラッチ33の他方の面(下面)と、前記ギアケース11の底部の一面(上面)との間に介在されている。
【0037】
図5(A)、(B)、(C)に示すように、前記ワッシャ46には、3個の孔48が等間隔に設けられている。前記孔48には、前記ボール47が緩く嵌合されている。すなわち、前記ボール47は、前記ワッシャ46に対して上下方向(前記シャフト10の回転中心O−O方向)に移動自在である。なお、図5(A)、(C)は、前記ボール47が自重で落ち込んでいる状態を示し、図5(B)は、前記ボール47が傾斜面で押し上げられている状態を示す。
【0038】
前記ミラーアセンブリ4が前記使用位置Aに位置するときには、前記ボール47は、自重により、前記ギアケース11の前記凹部39中に落ち込んでいて、かつ、前記凹部39の一方の傾斜面に当接している。前記ギアケース11の前記凹部39の一方の傾斜面および前記ボール47は、前記使用位置Aに位置する前記ミラーアセンブリ4の前記格納位置Bへの回転を規制し、かつ、前記電動回転力で外れて(前記ボール47が前記凹部39の一方の傾斜面を乗り上げて)前記使用位置Aに位置する前記ミラーアセンブリ4の前記格納位置Bへの回転を許容する第1回転規制機構を構成するものである。
【0039】
前記ストッパ部材6は、前記シャフトホルダ9と前記ギアケース11との間に設けられている。前記ストッパ部材6は、低摩擦かつ耐摩耗性の部材であって安価な樹脂部材、たとえば、POM(ポリアセタール、アセタール樹脂)、PPS(ポリフェニレンスルフィド)から構成されている。前記ストッパ部材6は、前記シャフト10が挿入する挿入孔20を有し、かつ、一端部(下端部)に鍔部23を有する中空状の円筒形状をなす。前記ストッパ部材6は、前記シャフト10に前記シャフト10の回転中心O−O回りに回転可能に取り付けられている。図2、図10に示すように、前記ストッパ部材6の前記鍔部23の一面(下面)には、前記シャフト10の回転中心O−Oを中心とする2個の円弧凸部28が等間隔に一体に設けられている。前記円弧凸部28および前記円弧凸部28の一端面の当接面34は、前記第2回転規制機構を構成する。また、前記ストッパ部材6の前記鍔部23の他面(上面)には、前記緩衝機構の噛合い部としての台形形状の噛合い凸部38が、前記シャフト10の回転中心O−Oを中心とする円周上に、1個以上この例では2個等間隔に一体に設けられている。
【0040】
前記シャフトホルダ9および前記シャフト10は、高剛性の部材、たとえば、ダイカストや樹脂から構成されている。図2、図11に示すように、前記シャフト10の上面には、前記シャフト10の回転中心O−Oを中心とする2個の円弧凸部42が前記ストッパ部材6の前記円弧凸部28に対応して等間隔に一体に設けられている。前記円弧凸部42の一端面には、当接面44が、前記ストッパ部材6の前記当接面34に対応して設けられている。前記円弧凸部42および前記当接面44は、前記ストッパ部材6の前記円弧凸部28および前記当接面34と同様に、前記第2回転規制機構を構成する。
【0041】
前記第2回転規制機構は、前記ストッパ部材6の前記円弧凸部28の前記当接面34が前記シャフト10の前記円弧凸部42の当接面44に当接することにより、前記使用位置Aに位置する前記ミラーアセンブリ4の前記前方傾倒位置Cへの回転を規制する機構である。
【0042】
前記ギアケース11は、高剛性の部材、たとえば、ナイロンあるいはガラス繊維やカーボン繊維含有の樹脂から構成されている。前記ギアケース11の底部の他面(下面)には、前記緩衝機構の噛合い部としての台形形状の噛合い凹部45が、前記シャフト10の回転中心O−Oを中心とする円周上に、1個以上この例では2個等間隔に前記ストッパ部材6の前記噛合い凸部38と対応して一体に設けられている。
【0043】
前記緩衝機構は、前記電動回転力以外の力(手動による力、あるいは、何かが前記ミラーアセンブリ4に当たって生じる力)であって、所定値以上の力が前記使用位置Aに位置する前記ミラーアセンブリ4に、前記使用位置Aから前記前方傾倒位置Cへの方向に作用すると、前記ストッパ部材6の前記噛合い凸部38と前記ギアケース11の前記噛合い凹部45との噛合い状態が外れて、その結果、前記使用位置Aに位置する前記ミラーアセンブリ4の前記前方傾倒位置Cへの回転を許容する機構である。
【0044】
「作用の説明」
この実施例1における電動格納式ドアミラー装置1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。なお、前記の通り、この実施例1における電動格納式ドアミラー装置1は、自動車の左側のドアに装備されるものである。自動車の右側のドアに装備される電動格納式ドアミラー装置の作用は、この実施例1の電動格納式ドアミラー装置1の作用とほぼ左右が逆となるので、説明を省略する。なお、図14〜図20中においては、シャフトホルダ9、クラッチ機構15、スプリング36の図示を省略する。
【0045】
図1に示すように、使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4を車両の後方Eの格納位置Bに電動回転させて格納させる場合について図15を参照して説明する。ミラーアセンブリ4が使用位置Aに位置する状態(セット状態、使用状態)のときには、クラッチ機構15が図14、図15(A)に示す状態にあり、電動回転範囲規制機構が図13(B)に示す状態にあり、第1回転規制機構が図14、図15(A)に示す状態にあり、第2回転規制機構が図12(A)、図15(A)に示す状態にあり、緩衝機構が図14、図15(A)に示す状態にある。
【0046】
すなわち、電動回転範囲規制機構は、図13(B)に示すように、シャフトホルダ9のストッパ凸部21の両方のストッパ面22がギアケース11のガイド溝24の両方のストッパ面25と非接触状態にある。このために、ミラーアセンブリ4が使用位置Aに位置していて、格納位置Bへの回転(および前方傾倒位置Cへの回転)が許容されている。
【0047】
これに対して、クラッチ機構15は、図14、図15(A)に示すように、クラッチ33のクラッチ凸部40とクラッチホルダ35のクラッチ凹部41とが嵌合状態にあるので、クラッチギア32およびクラッチ33とクラッチホルダ35とが続状態にある。このために、クラッチギア32およびクラッチ33は、クラッチホルダ35と共に、シャフト10に対して回転不可能の状態にある。
【0048】
また、緩衝機構は、図14、図15(A)に示すように、ストッパ部材6の噛合い凸部38とギアケース11の噛合い凹部45とが噛合っている状態にある。この結果、ストッパ部材6とギアケース11とは、一体状態にある。
【0049】
さらに、第2回転規制機構は、図12(A)、図15(A)に示すように、ストッパ部材6の円弧凸部28の当接面34がシャフト10の円弧凸部42の当接面44に当接している状態にある。
【0050】
この結果、使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4の格納位置Bへの回転および前方傾倒位置Cへの回転がそれぞれ規制されている。
【0051】
図15(A)のセット状態(使用状態)において、自動車の室内のスイッチ(図示せず)を操作して、コネクタ8、ソケット部7、基板27を介してモータ13に給電してモータ13を駆動させる。すると、モータ13の回転力は、出力軸、減速機構14を介してシャフト10に固定されたクラッチギア32伝達される。このとき、クラッチギア32およびクラッチ33は、クラッチホルダ35と共に、シャフト10に対して回転不可能の状態にあるので、減速機構14の第2ウォームギア31がクラッチギア32を固定ギアとしてシャフト10の回転中心O−O回りに回転しようとする。その回転力が電動格納ユニット3のギアケース11に伝達される。この結果、電動格納ユニット3を内蔵したミラーアセンブリ4は、図1に示すように、シャフト10の回転中心O−O回りに使用位置Aから格納位置Bへと上から見て反時計方向に回転しようとする。
【0052】
図15(A)に示すように、電動回転力でギアケース11が矢印方向(反時計方向)に回転すると、ギアケース11の凹部39の一方の傾斜面に当接しているボール47がギアケース11の凹部39の傾斜面に押されて上に上がろうとする。このとき、図15(B)、(C)に示すように、ボール47の上に位置するクラッチギア32には、凹部43が設けられているので、ボール47は、負荷無く上に上がることができる。この結果、電動格納作動時においては、負荷が増えることが無く、電動格納の作動を行うことができる。
【0053】
ギアケース11と噛合い凸部38および噛合い凹部45を介して一体状態にあるストッパ部材6も矢印方向に回転して、図12(A)、(B)に示すように、ストッパ部材6の円弧凸部28の当接面34がシャフト10の円弧凸部42の当接面44から離れる。一方図13に示すように、ギアケース11のガイド溝24の他方のストッパ面25が、図13(B)の状態から図13(C)に示すように、シャフトホルダ9のストッパ凸部21の他方のストッパ面22に当接する。この結果、図15(D)に示すように、ギアケース11がシャフトホルダ9に対して当接して、ギアケース11の回転が停止する。
【0054】
これと同時に、モータ13に供給される電流(作動電流)の値が上昇して所定値に達して、基板27のスイッチ回路が作動してモータ13への電流供給が遮断される。この結果、ミラーアセンブリ4が図1に示す使用位置Aから格納位置Bに停止して位置する。
【0055】
格納位置Bに位置するミラーアセンブリ4を使用位置Aに電動で復帰させる(戻す)場合は、前記の作動の逆作動となるので、説明を省略する。
【0056】
図1に示すように、格納位置Bに位置するミラーアセンブリ4を手動で使用位置Aに回転させて格納させる場合について図16を参照して説明する。
【0057】
クラッチホルダ35およびワッシャ46およびボール47は、シャフト10に対して回転方向には固定されているので、シャフト10の回転中心O−O回りに回転しない。一方、クラッチギア32およびクラッチ33は、手動で作動させる時は、ギアケース11と共にシャフト10の回転中心O−O回りに回転する。
【0058】
格納位置Bに位置するミラーアセンブリ4を手動で使用位置Aに回転させると、図16(A)に示すように、ギアケース11に矢印方向(時計方向)の手動による回転力がかかる。この回転力により、図16(B)に示すように、固定側のクラッチホルダ35のクラッチ凹部41と回転側のクラッチ33のクラッチ凸部40との嵌合状態が外れる。
【0059】
図16(C)に示すように、回転側のクラッチギア32が矢印方向(時計方向)に回転すると、固定側のボール47がクラッチギア32の凹部43の一方の傾斜面に当接してクラッチギア32およびクラッチ33およびクラッチホルダ35をスプリング36のスプリング力に抗して上に持ち上げる。
【0060】
ミラーアセンブリ4が使用位置Aに位置すると、図12(B)に示す状態にあるストッパ部材6の円弧凸部28の当接面34がシャフト10の円弧凸部42の当接面44に当接して図12(C)に示す状態にあるので、ギアケース11の矢印方向(時計方向)の回転が規制されている。この結果、第2回転規制機構の作用により、使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4が前方傾倒位置C側に回転することが規制される。
【0061】
一方、図16(D)に示すように、固定側のボール47が回転側のギアケース11の凹部39に位置すると、スプリング36のスプリング力(スプリング荷重)に押されてその凹部39に落ちて、その凹部39の一方の傾斜面に当接するので、ギアケース11の矢印と反対方向(反時計方向)の回転が規制されている。上方向へは、クラッチギア32で押えられる。この結果、第1回転規制機構の作用により、使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4が格納位置B側に回転することが規制される。
【0062】
このように、第1回転規制機構の作用および第2回転規制機構の作用により、クラッチ機構15のクラッチホルダ35のクラッチ凹部41とクラッチ33のクラッチ凸部40との嵌合状態が外れている場合であっても、使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4を前後方向(シャフト10の回転中心O−O回りの時計方向および反時計方向の両方向)の回転に対してロックすることができるので、車両の振動によりミラーアセンブリ4が振れるのを確実に防止することができる。
【0063】
図16(D)に示すように、固定側のボール47が回転側のギアケース11の凹部39に位置すると、その凹部39に落ちるので、ボール47により今まで持ち上げられていたクラッチギア32およびクラッチ33およびクラッチホルダ35がスプリング36のスプリング力で下に落ちる。クラッチ33とクラッチホルダ35とは外れたままの状態である。
【0064】
図16の状態(格納位置Bに位置するミラーアセンブリ4を手動で使用位置Aに位置させた状態)に位置するミラーアセンブリ4を手動で前方傾倒位置Cに位置させる場合について図17を参照して説明する。
【0065】
図17(A)に示すように、ギアケース11およびクラッチギア32およびクラッチ33が矢印方向(時計方向)に回転しようとする。ところが、ストッパ部材6の円弧凸部28の当接面34がシャフト10の円弧凸部42の当接面44に当接しているので、ストッパ部材6の矢印方向(時計方向)の回転が規制されている。
【0066】
図17(B)に示すように、ギアケース11の噛合い凹部45とストッパ部材6の噛合い凸部38との噛合い状態が外れて、ギアケース11がクラッチギア32およびクラッチ33と共に矢印方向(時計方向)に回転する。このとき、固定側のボール47は、回転側のギアケース11の凹部39に位置する。
【0067】
図17(C)、(D)に示すように、ギアケース11が矢印方向(時計方向)に回転すると、固定側のボール47がギアケース11の凹部39の他方の傾斜面に当接してかつその傾斜面を乗り上げて、クラッチギア32およびクラッチ33およびクラッチホルダ35をスプリング36のスプリング力に抗して上に持ち上げる。
【0068】
前方傾倒位置Cに位置するミラーアセンブリ4を使用位置Aに手動で復帰させる(戻す)場合は、前記の作動の逆作動となるので、説明を省略する。
【0069】
図17の状態(格納位置Bに位置するミラーアセンブリ4を手動で使用位置Aに位置させてから手動で前方傾倒位置Cに位置させた状態)に位置するミラーアセンブリ4を電動で格納位置Bに位置させる場合について図18を参照して説明する。
【0070】
図18(A)に示すように、電動回転力により、ギアケース11が矢印方向(反時計方向)に回転する。クラッチギア32およびクラッチ33は、クラッチホルダ35との摩擦負荷によって回転せずに停止状態にある。
【0071】
図18(B)に示すように、固定側のボール47が回転側のギアケース11の凹部39に位置すると、その凹部39に落ちるので、ボール47により今まで持ち上げられていたクラッチギア32およびクラッチ33およびクラッチホルダ35がスプリング36のスプリング力で下に落ちる。クラッチ33とクラッチホルダ35とは外れたままの状態である。
【0072】
図18(C)に示すように、ミラーアセンブリ4が使用位置Aに位置すると、ボール47がギアケース11の凹部39の一方の傾斜面に当接するので、ギアケース11の矢印方向(反時計方向)の回転の負荷となる。また、噛合い状態が外れているギアケース11の噛合い凹部45とストッパ部材6の噛合い凸部38とが再び噛合う。
【0073】
図18(D)に示すように、停止状態にあるクラッチギア32およびクラッチ33が矢印方向(時計方向)に空転する。すると、今まで外れた状態にあるクラッチホルダ35のクラッチ凹部41とクラッチ33のクラッチ凸部40とが再び嵌合する。この状態で、図15(A)のセット状態(使用状態)の初期状態に戻り、そのまま電動で格納位置Bまで行き止まり、その後、電動復帰(電動による使用位置Aの復帰)を行うことが可能となる。
【0074】
使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4を手動で格納位置Bに位置させる場合について図19、図21を参照して説明する。図21において、縦軸Tは、トルクを示し、矢印の方向がトルクの大きさを示す。横軸θは、ミラーアセンブリ4の使用位置Aから格納位置Bまでの回転角度(回転位置、または、回転時間)を示す。
【0075】
図19(A)に示すように、ギアケース11およびクラッチギア32およびクラッチ33が矢印方向(反時計方向)に回転しようとする。
【0076】
図19(B)に示すように、固定側のクラッチホルダ35のクラッチ凹部41と回転側のクラッチ33のクラッチ凸部40との嵌合状態が外れる。このとき、図21中の符号「49」に示すように、クラッチトルクのピークが発生する。
【0077】
それと同時に、固定側のボール47は、ギアケース11の凹部39の一方の傾斜面に押されて上に行く。ボール47の上方には、クラッチギア32の凹部43が位置するので、ボール47がギアケース11の凹部39の一方の傾斜面を乗り上がる際には、負荷が発生しない。
【0078】
図19(C)、(D)に示すように、回転側のクラッチギア32が矢印方向(反時計方向)に回転すると、固定側のボール47がクラッチギア32の凹部43の天部を遊び分転動してクラッチギア32の凹部43の他方の傾斜面に当接してクラッチギア32およびクラッチ33およびクラッチホルダ35をスプリング36のスプリング力に抗して上に持ち上げる。このとき、図21中の符号「50」に示すように、第1回転規制機構トルクのピークが発生する。
【0079】
ここで、クラッチギア32の凹部43は、シャフト10の回転中心O−O回り方向に所定の幅を有するので、図21に示すように、クラッチトルクのピーク49と、第1回転規制機構トルクのピーク50との間には、時間差がある。
【0080】
使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4を手動で前方傾倒位置Cに位置させる場合について図20、図22を参照して説明する。図22において、縦軸Tは、トルクを示し、矢印の方向がトルクの大きさを示す。横軸θは、ミラーアセンブリ4の使用位置Aから前方傾倒位置Cまでの回転角度(回転位置、または、回転時間)を示す。
【0081】
図20(A)に示すように、ギアケース11およびクラッチギア32およびクラッチ33が矢印方向(時計方向)に回転しようとする。ところが、ストッパ部材6の円弧凸部28の当接面34がシャフト10の円弧凸部42の当接面44に当接しているので、ストッパ部材6の矢印方向(時計方向)の回転が規制されている。
【0082】
図20(B)に示すように、ギアケース11の噛合い凹部45とストッパ部材6の噛合い凸部38との噛合い状態が外れて、ギアケース11がクラッチギア32およびクラッチ33と共に矢印方向(時計方向)に回転する。このとき、図22中の符号「51」に示すように、緩衝機構トルクのピークが発生する。
【0083】
図20(C)に示すように、減速機構14のギア(ヘリカルギア30、クラッチギア32)のバックラッシやウォームギア(第1ウォームギア29、第2ウォームギア31)のスラスト隙間が詰まると、固定側のクラッチホルダ35のクラッチ凹部41と回転側のクラッチ33のクラッチ凸部40との嵌合状態が外れる。このとき、図22中の符号「52」に示すように、クラッチトルクのピークが発生する。
【0084】
図20(D)、(E)に示すように、固定側のボール47は、回転側のギアケース11の凹部39の底部を遊び分転動してギアケース11の凹部39の他方の傾斜面を乗り上げてクラッチギア32およびクラッチ33およびクラッチホルダ35をスプリング36のスプリング力に抗して上に持ち上げる。このとき、図22中の符号「53」に示すように、第1回転規制機構トルクのピークが発生する。
【0085】
ここで、ギアケース11の凹部39は、シャフト10の回転中心O−O回り方向に所定の幅を有するので、図22に示すように、緩衝機構トルクのピーク51と、クラッチトルクのピーク52と、第1回転規制機構トルクのピーク53との間には、時間差がある。
【0086】
「効果の説明」
この実施例1における電動格納式ドアミラー装置1は、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0087】
この実施例1における電動格納式ドアミラー装置1は、第1回転規制機構(ギアケース11の凹部39、ボール47)および第2回転規制機構(ストッパ部材6の円弧凸部28の当接面34、シャフト10の円弧凸部42の当接面44)により、使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4の格納位置Bへの回転および前方傾倒位置Cへの回転を規制することができる。これにより、この実施例1における電動格納式ドアミラー装置1は、ミラーアセンブリ4を電動格納ユニット3の電動により使用位置Aから格納位置Bに回転させ、その後、ミラーアセンブリ4を手動により格納位置Bから使用位置Aに回転させた(戻した)場合でも、すなわち、クラッチ機構15(固定側のクラッチホルダ35のクラッチ凹部41と回転側のクラッチ33のクラッチ凸部40との嵌合状態)が外れている場合であっても、使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4をロックすることができるので、車両の振動によりミラーアセンブリ4が振れるのを確実に防止することができる。
【0088】
しかも、この実施例1における電動格納式ドアミラー装置1は、クラッチ機構15により、使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4を格納位置Bに電動回転力以外の力(手動による力、あるいは、何かがミラーアセンブリ4に当たって生じる力)で回転させることができる。その上、この実施例1における電動格納式ドアミラー装置1は、クラッチ機構15と緩衝機構(ギアケース11の噛合い凹部45、ストッパ部材6の噛合い凸部38)とにより、使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4を前方傾倒位置Cに電動回転力以外の力(手動による力、あるいは、何かがミラーアセンブリ4に当たって生じる力)で回転させることができる。この結果、この実施例1における電動格納式ドアミラー装置1は、緩衝作用の機能を有する。すなわち、何かが使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4に当たった場合でも、使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4を格納位置Bあるいは前方傾倒位置Cに回転させることができるので、ミラー装置1自体およびミラーアセンブリ4に当たったものを当たった際の衝撃から確実に保護することができる。
【0089】
この実施例1における電動格納式ドアミラー装置1は、使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4を格納位置Bに電動回転力以外の力(手動による力、あるいは、何かがミラーアセンブリ4に当たって生じる力)で回転させる際に発生する、クラッチ機構15のクラッチトルクのピーク49と第1回転規制機構トルクのピーク50とを、図21に示すように、ずらすことができる。この結果、この実施例1における電動格納式ドアミラー装置1は、緩衝作用する際に、トルクを分散させることができるので、ミラー装置1自体、あるいは、ミラーアセンブリ4に当たったものへの緩衝作用をさらに確実に機能させることができる。
【0090】
この実施例1における電動格納式ドアミラー装置1は、使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4を前方傾倒位置Cに電動回転力以外の力(手動による力、あるいは、何かがミラーアセンブリ4に当たって生じる力)で回転させる際に発生する、干渉機構トルクのピーク51とクラッチ機構15のクラッチトルクのピーク52と第1回転規制機構トルクのピーク53とを、図22に示すように、ずらすことができる。この結果、この実施例1における電動格納式ドアミラー装置1は、緩衝作用する際に、トルクを分散させることができるので、ミラー装置1自体、あるいは、ミラーアセンブリ4に当たったものへの緩衝作用をさらに確実に機能させることができる。
【0091】
この実施例1における電動格納式ドアミラー装置1は、第1回転規制機構を金属部材たとえば鉄板のワッシャ46と金属部材たとえば鋼球のボール47とから構成するので、構造が簡単で製造コストが安価でありかつ耐久性に優れている。
【実施例2】
【0092】
図23は、この発明にかかる車両用アウトサイドミラー装置の実施例2を示す第1回転規制機構の作動状態の説明図である。図中、図1〜図22と同符号は、同一のものを示す。
【0093】
前記の実施例1の第1回転規制機構は、別個のワッシャ46とボール47とから構成されているものである。この実施例2の第1回転規制機構は、ワッシャ54とジャバラ55とが合成樹脂もしくはばね材により一体に構成されているものである。図23(A)、(C)に示す状態は、ボール47がワッシャ46に対して下がっている状態と同じ状態である。図23(B)、(D)に示す状態は、ボール47がワッシャ46に対して上がっている状態と同じ状態である。
【0094】
この実施例2にかかる車両用アウトサイドミラー装置は、前記の実施例1にかかる車両用アウトサイドミラー装置と、同様の作用効果を達成することができる。特に、この実施例2にかかる車両用アウトサイドミラー装置は、第1回転規制機構が、ワッシャ54とジャバラ55とを合成樹脂もしくはばね材により一体に構成してなるものであるから、部品点数や組付工数を低減することができ、製造コストを安価にすることができる。
【0095】
「実施例1、2以外の例の説明」
なお、前記の実施例1、2においては、電動格納式のドアミラー装置について説明するものである。ところが、この発明においては、電動格納式のドアミラー装置以外の車両用アウトサイドミラー装置にも適用できる。たとえば、電動格納式の車両用フェンダミラー装置などの電動格納式の車両用アウトサイドミラー装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 電動格納式ドアミラー装置(車両用アウトサイドミラー装置)
2 ベース(ミラーベース)
3 電動格納ユニット
4 ミラーアセンブリ
5 ミラーハウジング
6 ストッパ部材
7 ソケット部
8 コネクタ
9 シャフトホルダ
10 シャフト
11 ギアケース(ケーシング)
12 カバー(ケーシング)
13 モータ
14 減速機構(回転力伝達機構)
15 クラッチ機構(回転力伝達機構)
16 軸受部材
17 ジョイント
18 収納部
19 挿入孔
20 挿入孔
21 ストッパ凸部(電動回転範囲規制機構)
22 ストッパ面(電動回転範囲規制機構)
23 鍔部
24 ガイド溝(電動回転範囲規制機構)
25 ストッパ面(電動回転範囲規制機構)
26 ハーネス挿通筒部
27 基板
28 円弧凸部(第2回転規制機構)
29 第1ウォームギア
30 ヘリカルギア
31 第2ウォームギア
32 クラッチギア
33 クラッチ
34 当接面(第2回転規制機構)
35 クラッチホルダ
36 スプリング
37 プッシュナット
38 噛合い凸部(緩衝機構)
39 凹部(第1回転規制機構)
40 クラッチ凸部(クラッチ機構)
41 クラッチ凹部(クラッチ機構)
42 円弧凸部(第2回転規制機構)
43 凹部
44 当接面(第2回転規制機構)
45 噛合い凹部(緩衝機構)
46 ワッシャ(第1回転規制機構)
47 ボール(第1回転規制機構)
48 孔
49 クラッチトルクのピーク
50 第1回転規制機構トルクのピーク
51 緩衝機構トルクのピーク
52 クラッチトルクのピーク
53 第1回転規制機構トルクのピーク
54 ワッシャ
55 ジャバラ
A 使用位置
B 格納位置
C 前方傾倒位置
D ドア(車体)
E 車両の後方
F 車両の前方
O−O シャフトの回転中心
α ミラーアセンブリの電動回転の範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラーアセンブリが電動格納ユニットおよびベースを介して車体に回転可能に取り付けられる車両用アウトサイドミラー装置において、
前記電動格納ユニットは、
前記ベースに固定されるシャフトホルダと、
前記シャフトホルダに設けられているシャフトと、
前記シャフトに回転可能に取り付けられていて、前記ミラーアセンブリが取り付けられるケーシングと、
前記ケーシング内に収納されていて、前記ミラーアセンブリを前記シャフトに対して電動回転させるモータおよび回転力伝達機構と、
前記ミラーアセンブリの前記電動回転の範囲を規制する電動回転範囲規制機構と、
前記回転力伝達機構に設けられていて、前記モータおよび前記回転力伝達機構の電動回転力では外れず、かつ、前記電動回転力以上の力で外れて前記ミラーアセンブリを前記シャフトに対して回転可能とするクラッチ機構と、
前記クラッチ機構が外れている場合において、使用位置に位置するミラーアセンブリをロックする保持機構と、
を備える、
ことを特徴とする車両用アウトサイドミラー装置。
【請求項2】
前記保持機構は、
使用位置に位置する前記ミラーアセンブリの格納位置への回転を規制し、かつ、前記電動回転力で外れて使用位置に位置する前記ミラーアセンブリの格納位置への回転を許容する第1回転規制機構と、
使用位置に位置する前記ミラーアセンブリの前方傾倒位置への回転を規制する第2回転規制機構と、
前記電動回転力以外の力で外れて使用位置に位置する前記ミラーアセンブリの前方傾倒位置への回転を許容する緩衝機構と、
を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用アウトサイドミラー装置。
【請求項3】
使用位置に位置する前記ミラーアセンブリを格納位置に前記電動回転力以外の力で回転させる際に発生する、前記クラッチ機構のトルクの発生時と、前記第1回転規制機構のトルクの発生時とは、時間差を有する、
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用アウトサイドミラー装置。
【請求項4】
使用位置に位置する前記ミラーアセンブリを前方傾倒位置に前記電動回転力以外の力で回転させる際に発生する、前記緩衝機構のトルク発生時と、前記クラッチ機構のトルクの発生時と、前記第1回転規制機構のトルクの発生時とは、時間差を有する、
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用アウトサイドミラー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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