説明

車両用アウトサイドミラー装置

【課題】プッシュナットをシャフトに確固に装着すること。
【解決手段】この発明は、プッシュナット37と、シャフト10と、開き防止部42と、を備える。シャフト10には係合部25が設けられている。プッシュナット37には、弾性係合部38が設けられている。弾性係合部38がシャフト10の径方向の外側から内側に弾性復帰してシャフト10の係合部25に弾性係合する。開き防止部42が、弾性係合部38がシャフト10の径方向の内側から外側に開くのを防ぐ。この結果、この発明は、プッシュナット37をシャフト10に確固に装着することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ミラーアセンブリが車体(たとえば、ドアやフェンダやピラーなど)に対して回転(傾倒、回動)可能であるたとえばドアミラーなどの車両用アウトサイドミラー装置に関するものである。すなわち、この発明は、手動格納型および電動格納型の車両用アウトサイドミラー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用アウトサイドミラー装置は、従来からある(たとえば、特許文献1)。以下、従来の車両用アウトサイドミラー装置について説明する。従来の車両用アウトサイドミラー装置は、ドアミラーの支持孔にシャフトを通し、シャフトにコイルばねを圧縮した状態で外挿し、シャフトにスプリングストッパを係止させて、コイルばねのばね力によりドアミラーをシャフトに所定の位置の間を回転可能に装備するものである。
【0003】
従来の車両用アウトサイドミラー装置においては、スプリングストッパがシャフトに確固に装着されていることが重要である。すなわち、スプリングストッパがシャフトに確固に装着されていないと、あるいは、スプリングストッパがシャフトから外れる(抜ける)と、コイルばねの所定のばね力が得られず、ドアミラーの安定した回転が得られず、また、ドアミラーを所定の位置に安定して位置させることが難しくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−38898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、従来の車両用アウトサイドミラー装置においては、スプリングストッパがシャフトに確固に装着されていることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明(請求項1にかかる発明)は、ミラーアセンブリが電動格納ユニットおよびベースを介して車体に回転可能に取り付けられる車両用アウトサイドミラー装置において、電動格納ユニットが、シャフトと、ケーシングと、を備え、ケーシングには、挿入孔が設けられていて、挿入孔には、シャフトが挿入されている、ことを特徴とする。
【0007】
この発明(請求項2にかかる発明)は、ケーシングが、ギアケースおよびカバーから構成されていて、ギアケースには、挿入孔が設けられていて、挿入孔には、シャフトが挿入されていて、カバーには、挿入孔が設けられていて、挿入孔には、シャフトの一端部が挿入されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明の車両用アウトサイドミラー装置は、ケーシングの挿入孔にはシャフトが挿入されているので、ケーシングがシャフトに対して傾斜することなく、シャフトの回転中心回りに回転可能となる。この結果、この発明の車両用アウトサイドミラー装置は、品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、この発明にかかる車両用アウトサイドミラー装置の実施形態1を示す使用状態の平面図である。
【図2】図2は、同じく、電動格納ユニットを示す分解斜視図である。
【図3】図3は、同じく、ケーシングのギアケースおよびカバーを一部破断した電動格納ユニットを示す斜視図である。
【図4】図4は、同じく、電動格納ユニットの一部を示す縦断面図(垂直断面図)である。
【図5】図5は、同じく、止め具を斜め上から見た状態を示す斜視図である。
【図6】図6は、同じく、カバーを斜め下から見た状態を示す斜視図である。
【図7】図7は、同じく、止め具をシャフトに装着する前の状態を示す一部拡大縦断面図(一部拡大垂直断面図)である。
【図8】図8は、同じく、止め具をシャフトに装着している途中の状態を示す一部拡大縦断面図(一部拡大垂直断面図)である。
【図9】図9は、同じく、止め具をシャフトに装着した状態を示す一部拡大縦断面図(一部拡大垂直断面図)である。
【図10】図10は、同じく、止め具をシャフトに装着しかつギアケースにカバーを嵌合固定した状態を示す一部拡大縦断面図(一部拡大垂直断面図)である。
【図11】図11は、この発明にかかる車両用アウトサイドミラー装置の実施形態2を示す要部の一部拡大縦断面図(一部拡大垂直断面図)である。
【図12】図12は、この発明にかかる車両用アウトサイドミラー装置の実施形態3を示す要部の縦断面図(垂直断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明にかかる車両用アウトサイドミラー装置の実施形態のうちの3例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
(実施形態1)
「構成の説明」
図1〜図10は、この発明にかかる車両用アウトサイドミラー装置の実施形態1を示す。以下、この実施形態1における車両用アウトサイドミラー装置の構成について説明する。図1において、符号1は、この実施形態1における車両用アウトサイドミラー装置であって、この例では、電動格納式ドアミラー装置(電動格納型のドアミラー)である。前記電動格納式ドアミラー装置1は、自動車の左右のドア(図示せず)にそれぞれ装備される。なお、この実施形態1の電動格納式ドアミラー装置1は、自動車の右側のドアに装備されるものであって、自動車の左側のドアに装備される電動格納式ドアミラー装置は、この実施形態1の電動格納式ドアミラー装置1とほぼ左右が逆となる。
【0012】
前記電動格納式ドアミラー装置1は、図1に示すように、ミラーアセンブリ4が電動格納ユニット3およびベース(ミラーベース)2を介して車体(自動車のドア)Dに回転可能に取り付けられるものである。前記ベース2は、前記ドアDに固定されるものである。
【0013】
前記ミラーアセンブリ4は、ミラーハウジング5と、取付ブラケット(図示せず)と、パワーユニット(図示せず)と、図示しないミラー(ミラーユニット)と、から構成されている。前記ミラーハウジング5内には、前記取付ブラケットが取り付けられている。前記取付ブラケットには、前記パワーユニットが取り付けられている。前記パワーユニットには、前記ミラーが上下左右に傾動可能に取り付けられている。
【0014】
前記電動格納ユニット3は、シャフトホルダ9と、シャフト10と、ケーシングとしてのギアケース11およびカバー12と、モータ13と、回転力伝達機構としての減速機構14およびクラッチ機構15と、軸受部材16と、介在部材6と、電動回転範囲規制機構と、緩衝機構と、を備えるものである。
【0015】
前記シャフトホルダ9は、前記ベース2に固定される。前記シャフトホルダ9の一方の面(上面)の中央には、前記シャフト10が一体に設けられている。前記シャフト10は、中空形状をなしていて、ハーネス(図示せず)が挿通するように構成されている。前記シャフト10には、前記ギアケース11および前記カバー12が前記シャフト10の回転中心O−O回りに回転可能に取り付けられている。前記ギアケース11には、前記ミラーアセンブリ4の前記取付ブラケットが取り付けられている。前記ギアケース11および前記カバー12内には、前記モータ13と、前記回転力伝達機構の前記減速機構14および前記クラッチ機構15と、前記軸受部材16と、前記介在部材6と、前記電動回転範囲規制機構と、前記緩衝機構と、がそれぞれ収納されている。
【0016】
前記ギアケース11は、図2、図3、図4に示すように、一方(下方)が閉塞し、かつ、他方(上方)が開口した断面凹形状をなす。すなわち、前記ギアケース11には、前記シャフトホルダ9側が閉塞され、かつ、前記カバー12側が開口された断面凹形状をなす収納部18が設けられている。前記ギアケース11の閉塞部には、挿入孔19が設けられている。前記挿入孔19には、前記シャフト10が挿入されている。すなわち、前記ギアケース11は、前記挿入孔19を介して前記シャフト10に外嵌(外側から嵌合)する。この結果、前記ギアケース11は、前記シャフト10に前記シャフト10の回転中心O−O回りに回転可能に取り付けられることとなる。
【0017】
図2〜図4に示すように、前記シャフトホルダ9の上面には、前記シャフト10の回転中心O−Oを中心とする円弧形状のストッパ凸部21が一体に設けられている。前記ストッパ凸部21の両端面には、ストッパ面22がそれぞれ設けられている。一方、図4に示すように、前記ギアケース11の下面には、前記シャフト10の回転中心O−Oを中心とする円弧形状のガイド溝24が設けられている。前記ガイド溝24の両端面には、ストッパ面(図示せず)がそれぞれ設けられている。
【0018】
前記ギアケース11の前記ガイド溝24には、前記シャフトホルダ9の前記ストッパ凸部21が係合されている。前記ストッパ凸部21と前記ガイド溝24とは、前記ギアケース11が前記シャフトホルダ9に対して前記シャフト10の回転中心O−O回りに回転する際、すなわち、図1に示すように、前記ミラーアセンブリ4が前記ベース2に対して使用位置Aと格納位置Bとの間および使用位置Aと前方傾倒位置Cとの間を後方(時計方向)または前方(反時計方向)に回転する際のガイドとなるガイド部材を構成する。図1において、符号Eは、車両の後方を示し、符号Fは、車両の前方を示す。
【0019】
また、前記ストッパ凸部21の前記ストッパ面22と前記ガイド溝24の前記ストッパ面とは、前記ミラーアセンブリ4が時計方向または反時計方向に回転して前記ドアDに当たる前に、前記ストッパ凸部21の前記ストッパ面22と前記ガイド溝24の前記ストッパ面とが当接して、前記ミラーアセンブリ4の回転が規制されて前記ミラーアセンブリ4が前記ドアDに当たるのを回避するためのストッパとなるストッパ部材を構成する。
【0020】
前記カバー12は、図2〜図4、図6、図10に示すように、一方(上方)が閉塞し、かつ、他方(下方)が開口した断面逆凹形状をなす。すなわち、前記カバー12には、一方の前記ギアケース11側が開口され、かつ、他方側が開口された断面逆凹形状をなす収納部18が設けられている。前記カバー12には、中空形状の前記シャフト10と連通するハーネス挿通筒部26が一体に設けられている。
【0021】
また、前記カバー12には、ソケット部7が設けられている。前記ソケット部7には、図示しない電源(バッテリー)側と電気的に接続されているコネクタ8が電気的に断続可能に接続しかつ機械的に着脱可能に取り付けられる。前記ソケット部7には、基板27が取り付けられている。前記基板27は、前記モータ13と電気的に接続されている。前記基板27には、前記モータ13の駆動停止を制御するスイッチ回路が実装されている。この結果、前記モータ13は、前記基板27および前記ソケット部7を介して前記コネクタ8と電気的に接続される。
【0022】
前記カバー12は、前記ギアケース11の前記収納部18の開口縁の外側に嵌合固定されている。前記ギアケース11および前記カバー12内の収納部18中には、前記モータ13および前記減速機構14および前記クラッチ機構15および前記軸受部材16および前記介在部材6および前記電動回転範囲規制機構および前記緩衝機構および前記基板27がスクリューなどにより固定収納されている。
【0023】
また、前記カバー12には、挿入孔39が前記ハーネス挿通筒部26と連通するように設けられている。前記挿入孔39には、前記シャフト10の一端部(上端部)が挿入されている。すなわち、前記カバー12は、前記挿入孔39を介して前記シャフト10に外嵌(外側から嵌合)する。この結果、前記カバー12は、前記ギアケース11と共に前記シャフト10に前記シャフト10の回転中心O−O回りに回転可能に取り付けられることとなる。
【0024】
さらに、前記カバー12の前記挿入孔39の内周面と前記シャフト10の外周面とは、図3、図4に示すように、前記シャフト10の径方向において相互に当接する。しかも、前記カバー12の前記挿入孔39の内周面と前記シャフト10の外周面とは、前記シャフト10の軸方向において所定の寸法を有している。この結果、前記カバー12および前記ギアケース11(ケーシング)は、前記シャフト10に対して傾くことなく、前記シャフト10の回転中心O−O回りに回転可能となる。
【0025】
前記回転力伝達機構の前記減速機構14および前記クラッチ機構15は、図2〜図4に示すように、前記ギアケース11および前記カバー12の前記収納部18中に収納され、かつ、前記モータ13の出力軸(図示せず)と前記シャフト10との間に設けられ、前記モータ13の回転力を前記シャフト10に伝達するものである。前記モータ13および前記回転力伝達機構の前記減速機構14および前記クラッチ機構15は、前記ミラーアセンブリ4を前記シャフト10に対して前記シャフト10の回転中心O−O回りに電動回転させるものである。
【0026】
前記減速機構14は、第1段目のギアとしての第1ウォームギア29と、前記第1ウォームギア29に噛み合う第2段目のギアとしてのヘリカルギア30と、第3段目のギアとしての第2ウォームギア31と、前記第2ウォームギア31が噛み合う最終段目のギアとしてのクラッチギア32と、から構成されている。
【0027】
前記第1ウォームギア29は、前記ギアケース11および前記軸受部材16に回転可能に軸受されている。前記第1ウォームギア29は、ジョイント17を介して前記モータ13の出力軸に連結されている。前記ヘリカルギア30は、前記軸受部材16に回転可能に軸受されている。前記第2ウォームギア31は、前記ギアケース11および前記軸受部材16に回転可能に軸受されている。前記ヘリカルギア30と前記第2ウォームギア31とは、一体に回転可能に連結されている。
【0028】
前記クラッチ機構15は、前記クラッチギア32と、クラッチホルダ35と、スプリング36と、止め具としてのプッシュナット37と、を備える。前記クラッチ機構15は、前記シャフト10に、前記クラッチギア32、前記クラッチホルダ35、前記スプリング36、を順次嵌め合せ、前記プッシュナット37を前記シャフト10に止めて、前記スプリング36を圧縮状態にすることによって構成されている。前記クラッチギア32と前記クラッチホルダ35とは、断続可能に連結されている。前記減速機構14の前記第2ウォームギア31と前記クラッチ機構15の前記クラッチギア32とが噛合うことにより、前記モータ13の回転力が前記シャフト10に伝達されることとなる。
【0029】
前記クラッチギア32と前記クラッチホルダ35とが前記クラッチ機構15を構成する。前記クラッチギア32は、前記シャフト10に前記シャフト10の回転中心O−O回りに回転可能にかつ軸方向に移動可能に取り付けられている。前記クラッチホルダ35は、前記シャフト10に回転不可能にかつ軸方向に移動可能に嵌合状態で取り付けられている。前記クラッチギア32と前記クラッチホルダ35との相互に対向する面、すなわち、前記クラッチギア32の一方の面(上面)側と前記クラッチホルダ35の一方の面(下面)側とには、複数個この例では3個の山形形状のクラッチ凸部と谷形形状のクラッチ凹部とが等間隔に設けられている。前記クラッチ凸部と前記クラッチ凹部とが嵌合状態にあるときには、前記クラッチギア32と前記クラッチホルダ35とが続状態(外れていない状態、つながっている状態)にあり、前記クラッチ凸部と前記クラッチ凹部とが嵌合解除状態にあるときには、前記クラッチギア32と前記クラッチホルダ35とは、断状態(外れている状態、切れている状態)にある。前記クラッチ機構15は、前記モータ13および前記回転力伝達機構(前記減速機構14および前記クラッチ機構15)の電動回転力では外れず、かつ、前記電動回転力以上の力で外れて前記ミラーアセンブリ4を前記シャフト10に対して回転可能とする。
【0030】
前記クラッチ機構15のうち前記クラッチギア32の他方の面(下面)側は、前記ギアケース11の底部の一面(上面)に直接もしくはワッシャ(図示せず)を介して当接する。一方、前記クラッチ機構15のうち前記クラッチホルダ35の他方の面(上面)側は、前記スプリング36に直接当接する。
【0031】
前記介在部材6は、前記シャフトホルダ9と前記ギアケース11との間に設けられている。前記介在部材6は、低摩擦かつ耐摩耗性の部材であって安価な樹脂部材、たとえば、POM(ポリアセタール、アセタール樹脂)、PPS(ポリフェニレンスルフィド)から構成されている。前記介在部材6は、前記シャフト10が挿入する挿入孔を有し、かつ、一端部(下端部)に鍔部を有する中空状の円筒形状をなす。前記介在部材6は、前記シャフト10に前記シャフト10の回転中心O−O回りに回転可能に取り付けられている。前記介在部材6の前記鍔部の一面(下面)には、前記シャフト10の回転中心O−Oを中心とする円弧の凸部が一体に設けられている。前記円弧の凸部の両端面には、前記電動回転範囲規制機構の当接面が設けられている。また、前記介在部材6の前記鍔部の他面(上面)には、前記緩衝機構の噛合い部としての台形形状の噛合い凸部が、前記シャフト10の回転中心O−Oを中心とする円周上に、複数個この例では2個等間隔に一体に設けられている。
【0032】
前記シャフトホルダ9および前記シャフト10は、高剛性の部材、たとえば、ダイカストや樹脂から構成されている。前記シャフトホルダ9の上面には、前記シャフト10の回転中心O−Oを中心とする円弧凸部が前記介在部材6の前記円弧凸部に対応して一体に設けられている。前記円弧の凸部の両端面には、前記電動回転範囲規制機構の当接面が、前記介在部材6の前記当接面に対応して設けられている。
【0033】
前記ギアケース11は、高剛性の部材、たとえば、ナイロンやガラス繊維含有の樹脂から構成されている。前記ギアケース11の底部の他面(下面)には、前記緩衝機構の噛合い部としての台形形状の噛合い凹部が、前記シャフト10の回転中心O−Oを中心とする円周上に、複数個この例では2個等間隔に前記介在部材6の前記噛合い凸部と対応して一体に設けられている。
【0034】
前記電動回転範囲規制機構は、前記ミラーアセンブリ4の前記電動回転の範囲を規制する機構である。すなわち、前記電動回転範囲規制機構は、前記介在部材6と前記シャフトホルダ9とに設けられている前記当接面から構成されていて、前記介在部材6の当接面と前記シャフトホルダ9の当接面とが当接することにより、前記介在部材6が前記シャフトホルダ9に固定されて前記ミラーアセンブリ4の前記電動回転範囲が規制される機構である。前記電動回転範囲は、図1に示すように、使用位置Aと格納位置Bとの間の範囲である。この結果、前記介在部材6の一方の当接面と前記シャフトホルダ9の一方の当接面とが当接すると、前記ミラーアセンブリ4は、使用位置Aに位置する。また、前記介在部材6の他方の当接面と前記シャフトホルダ9の他方の当接面とが当接すると、前記ミラーアセンブリ4は、格納位置Bに位置する。
【0035】
前記緩衝機構は、前記ミラーアセンブリ4を緩衝のために回転させる機構である。すなわち、前記緩衝機構は、前記介在部材6と前記ギアケース11とに設けられている噛合い部凸部と噛合い凹部とから構成されていて、前記電動回転力では前記介在部材6の噛合い凸部と前記ギアケース11の噛合い凹部との噛合いが外れず前記介在部材6と前記ギアケース11とが一緒に前記電動回転範囲(使用位置Aと格納位置Bとの間の範囲)において前記シャフト10および前記シャフトホルダ9に対して前記シャフト10の回転中心O−O回りに回転し、かつ、前記電動回転力以上の力では前記介在部材6の噛合い凸部と前記ギアケース11の噛合い凹部との噛合いが外れさらに前記クラッチ機構15が外れて(前記クラッチギア32のクラッチ凸部と前記クラッチホルダ35のクラッチ凹部との嵌合状態が解除されて)前記ギアケース11が前記シャフト10および前記シャフトホルダ9に対して前記シャフト10の回転中心O−O回りに回転する機構である。
【0036】
前記シャフト10の外周面は、外径が上端から下端にかけて徐々に大きくなるようにテーパー形状をなす。この結果、前記シャフト10は、樹脂製の場合においては成形金型の抜けが容易になるように構成されている。前記シャフト10には、複数本、この例では、3本の溝20が上端からほぼ中間までの間において、等間隔に設けられている。前記溝20は、前記シャフト10の上端部を残して貫通形状をなし、一方、前記シャフト10の上端部において連結形状(もしくは橋渡し形状)をなす。前記シャフト10の上端部における前記3本の溝20の連結部23と貫通部との境の段部には、3個の係合部25がそれぞれ設けられている。また、前記シャフト10の上端部における前記3本の溝20の連結部23の一端(上端)には、傾斜面28が設けられている。
【0037】
止め具としての前記プッシュナット37は、低摩擦かつ耐摩耗性の部材であって安価な樹脂部材、たとえば、POM(ポリアセタール、アセタール樹脂)、PPS(ポリフェニレンスルフィド)から構成されている。図2〜図5、図7〜図10に示すように、前記プッシュナット37には、挿入部33と、スプリング当接部34と、3個の弾性係合部38と、が一体に設けられている。
【0038】
前記挿入部33は、前記シャフト10の回転中心O−Oを中心とする円筒形状をなし、また、前記スプリング当接部34は、同じく、前記シャフト10の回転中心O−Oを中心とする円環形状をなす。前記挿入部33および前記スプリング当接部34は、前記シャフト10が挿入する挿入孔40を有する。
【0039】
前記スプリング当接部34は、前記挿入部33の一端(下端)に鍔形状に一体に設けられている。前記スプリング当接部34の一面(下面)には、前記スプリング36の一端(上端)が弾性当接する。
【0040】
前記挿入部33には、2本1組で3組の切溝41が、前記挿入部33の他端(上端)から前記スプリング当接部34までの間において、前記シャフト10の軸方向に設けられている。前記挿入部33のうち前記2本の切溝41の間の内周面には、前記弾性係合部38が設けられている。前記弾性係合部38は、前記シャフト10の径方向(図5中の実線矢印方向)の弾性を有していて前記シャフト10の径方向の外側から内側に弾性復帰して前記シャフト10の前記係合部25に弾性係合するものである。
【0041】
前記カバー12は、前記ギアケース11と同様に、高剛性の部材、たとえば、ナイロンやガラス繊維含有の樹脂から構成されている。前記カバー12には、開き防止部42が一体に設けられている。前記開き防止部42は、前記シャフト10の回転中心O−Oを中心とした円筒形状をなし、かつ、前記ハーネス挿通筒部26および前記挿入孔39と連通するように設けられている。前記開き防止部42は、前記プッシュナット37の前記弾性係合部38が前記シャフト10の径方向の内側から外側に開くのを防ぐものである。
【0042】
前記プッシュナット37と前記開き防止部42とには、前記シャフト10の径方向において相互に当接する当接面43、44が前記シャフト10の軸方向にそれぞれ設けられている。すなわち、前記プッシュナット37の前記当接面43は、前記挿入部33の外周面に設けられている。一方、前記開き防止部42の前記当接面44は、前記開き防止部42の内周面に設けられている。
【0043】
前記開き防止部42の一端部(下端部)には、ストッパ45が一体に設けられている。前記ストッパ45は、前記プッシュナット37の前記スプリング当接部34の他面(上面)に当接して、前記プッシュナット37が前記シャフト10の軸方向、すなわち、前記スプリング36のスプリング力が作用する方向であって前記プッシュナット37が前記シャフト10から抜ける方向(図10の実線矢印方向)に移動するのを制止させるものである。
【0044】
「プッシュナットのシャフトへの組付の説明」
まず、前記シャフト10に、前記クラッチギア32、前記クラッチホルダ35、前記スプリング36、を順次嵌め合せる。つぎに、冶具(図示せず)を使用して、前記プッシュナット37を前記シャフト10に、前記スプリング36のスプリング力に抗して、図7、図8中の実線矢印方向に上から下に押し込む。
【0045】
すると、前記プッシュナット37の前記弾性係合部38が前記シャフト10の前記傾斜面28に沿って、図8中の実線矢印方向に前記シャフト10の径方向の内側から外側に弾性変形して開く。
【0046】
さらに、前記プッシュナット37を前記シャフト10に押し込んで、前記プッシュナット37の前記弾性係合部38が前記シャフト10の前記係合部25に達した時点で、前記プッシュナット37の前記弾性係合部38が図9中の実線矢印方向に前記シャフト10の径方向の外側から内側に弾性復帰して前記シャフト10の前記係合部25に弾性係合する。これにより、前記プッシュナット37の前記シャフト10への組付が完了する。
【0047】
そして、前記ギアケース11に前記カバー12を嵌合固定する。このとき、図3、図4、図10に示すように、前記カバー12の前記開き防止部42が前記プッシュナット37の前記挿入部33に外側から嵌合する。この結果、前記カバー12の前記開き防止部42の内周面の前記当接面44と前記プッシュナット37の前記挿入部33の外周面の前記当接面43とが前記シャフト10の径方向において相互に当接する。
【0048】
「作用の説明」
この実施形態1における電動格納式ドアミラー装置1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0049】
まず、図1に示すように、使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4を格納位置Bに電動回転させて格納させる場合について説明する。ミラーアセンブリ4が使用位置Aに位置する状態(セット状態、使用状態)のときには、クラッチ機構15は、クラッチギア32のクラッチ凸部とクラッチホルダ35のクラッチ凹部とが嵌合状態にあるので、クラッチギア32とクラッチホルダ35とが続状態にある。このために、クラッチギア32は、クラッチホルダ35と共に、シャフト10に対して回転不可能の状態にある。
【0050】
このセット状態(使用状態)において、自動車の室内のスイッチ(図示せず)を操作して、コネクタ8、ソケット部7、基板27を介してモータ13に給電してモータ13を駆動させる。すると、モータ13の回転力は、出力軸、減速機構14を介してシャフト10に固定されたクラッチギア32に伝達される。このとき、クラッチギア32は、クラッチホルダ35と共に、シャフト10に対して回転不可能の状態にあるので、減速機構14の第2ウォームギア31がクラッチギア32を固定ギアとしてシャフト10の回転中心O−O回りに回転する。この回転により電動格納ユニット3を内蔵したミラーアセンブリ4は、図1に示すように、シャフト10の回転中心O−O回りに使用位置Aから格納位置Bへと時計方向に回転する。
【0051】
ミラーアセンブリ4が格納位置Bに位置すると、モータ13に供給される電流(作動電流)の値が上昇して所定値に達して、基板27のスイッチ回路が作動してモータ13への電流供給が遮断される。この結果、ミラーアセンブリ4が図1に示す所定の位置の格納位置Bに停止して位置する。
【0052】
つぎに、図1に示すように、格納位置Bに位置するミラーアセンブリ4を使用位置Aに電動回転させて復帰させる場合について説明する。ミラーアセンブリ4が格納位置Bに位置する状態(格納状態)のときには、クラッチ機構15がセット状態と同様に、つながっている状態にあるので、クラッチギア32は、クラッチホルダ35と共に、シャフト10に対して回転不可能の状態にある。
【0053】
この格納状態において、自動車の室内のスイッチ(図示せず)を操作してモータ13を駆動させる。すると、モータ13の回転力が減速機構14を介して回転不可能の状態にあるクラッチギア32に伝達される。これにより、電動格納ユニット3を内蔵したミラーアセンブリ4は、図1に示すように、シャフト10の回転中心O−O回りに格納位置Bから使用位置Aへと反時計方向に回転する。
【0054】
ミラーアセンブリ4が使用位置Aに位置するとモータ13に供給される電流(作動電流)の値が上昇して所定値に達して、基板27のスイッチ回路が作動してモータ13への電流供給が遮断される。この結果、ミラーアセンブリ4が図1に示す所定の位置の使用位置Aに停止して位置する。
【0055】
さらに、図1に示すように、使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4を緩衝のために前方傾倒位置Cに傾倒させる場合について説明する。ミラーアセンブリ4が使用位置Aに位置する状態(セット状態、使用状態)のときには、クラッチ機構15がつながっている状態にあるので、クラッチギア32は、クラッチホルダ35と共に、シャフト10に対して回転不可能の状態にある。
【0056】
このセット状態(使用状態)において、使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4に反時計方向の力であって、モータ13および減速機構14による電動回転力よりも大きい力(手動による力、何かがミラーアセンブリ4に当たったときの力)がかかる。すると、ミラーアセンブリ4に取り付けられているギアケース11が反時計方向に回転しようとする。このとき、介在部材6がシャフトホルダ9に対して固定されていて反時計方向に回転することができない。
【0057】
このために、介在部材6の噛合い凸部とギアケース11の噛合い凹部との噛合いが最初に外れる。このとき、ギアケース11(カバー12、モータ13、減速機構14、軸受部材16、クラッチギア32、クラッチホルダ35を含む)は、スプリング36のスプリング力に抗して移動(上昇)する。
【0058】
それから、ギアケース11がさらに反時計方向に回転しようとする。すると、クラッチギア32と第2ウォームギア31との間のバックラッシュが詰まり、その第2ウォームギア31のスラスト方向の隙間が詰まり、シャフト10とクラッチホルダ35との間の嵌合隙間が詰まる。
【0059】
クラッチホルダ35は、シャフト10に回転不可能に嵌合されているので、ギアケース11側のクラッチギア32のクラッチ凸部がシャフト10の固定側のクラッチホルダ35のクラッチ凹部を乗り上げて、クラッチギア32のクラッチ凸部とクラッチホルダ35のクラッチ凹部との嵌合状態が外れる。このとき、クラッチホルダ35は、スプリング36のスプリング力に抗して移動(上昇)する。
【0060】
この結果、ギアケース11(カバー12、モータ13、減速機構14、軸受部材16、クラッチギア32を含む)は、反時計方向に回転する。これにより、図1に示すように、ミラーアセンブリ4は、使用位置Aから前方傾倒位置Cへと反時計方向に回転して、シャフトホルダ9のストッパ凸部21の一方のストッパ面22がギアケース11のガイド溝24の一方のストッパ面に当接した時点で、前方傾倒位置Cに位置する。
【0061】
そして、図1に示すように、前方傾倒位置Cに位置するミラーアセンブリ4を電動回転力よりも大きい力で時計方向に回転させる。すると、ミラーアセンブリ4に取り付けられているギアケース11(カバー12、モータ13、減速機構14、軸受部材16、クラッチギア32を含む)が時計方向に回転するので、図1に示すように、ミラーアセンブリ4が前方傾倒位置Cから使用位置Aへと時計方向に回転する。
【0062】
すると、クラッチギア32のクラッチ凸部とクラッチホルダ35のクラッチ凹部とが最初に相互に嵌合してクラッチ機構15がつながった状態となる。それから、介在部材6の噛合い凸部とギアケース11の噛合い凹部とが相互に噛合って介在部材6とギアケース11とが一体状態となる。この結果、図1に示すように、ミラーアセンブリ4は、使用位置Aに位置する。
【0063】
さらに、図1に示すように、使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4を緩衝のために格納位置Bに傾倒させる場合について説明する。ミラーアセンブリ4が使用位置Aに位置する状態(セット状態、使用状態)のときには、クラッチ機構15がつながっている状態にあるので、クラッチギア32は、クラッチホルダ35と共に、シャフト10に対して回転不可能の状態にある。
【0064】
このセット状態(使用状態)において、使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4に時計方向の力であって、電動回転力よりも大きい力(手動による力、何かがミラーアセンブリ4に当たったときの力)がかかる。すると、ミラーアセンブリ4に取り付けられているギアケース11が時計方向に回転しようとする。このとき、介在部材6がシャフトホルダ9に対して固定されていて時計方向に回転することができない。
【0065】
このために、介在部材6の噛合い凸部とギアケース11の噛合い凹部との噛合いが最初に外れる。このとき、ギアケース11(カバー12、モータ13、減速機構14、軸受部材16、クラッチギア32、クラッチホルダ35を含む)は、スプリング36のスプリング力に抗して移動(上昇)する。
【0066】
それから、ギアケース11がさらに時計方向に回転しようとする。すると、クラッチギア32と第2ウォームギア31との間のバックラッシュが詰まり、その第2ウォームギア31のスラスト方向の隙間が詰まり、シャフト10とクラッチホルダ35との間の嵌合隙間が詰まる。
【0067】
クラッチホルダ35は、シャフト10に回転不可能に嵌合されているので、ギアケース11側のクラッチギア32のクラッチ凸部がシャフト10の固定側のクラッチホルダ35のクラッチ凹部を乗り上げて、クラッチギア32のクラッチ凸部とクラッチホルダ35のクラッチ凹部との嵌合状態が外れる。このとき、クラッチホルダ35は、スプリング36のスプリング力に抗して移動(上昇)する。
【0068】
この結果、ギアケース11(カバー12、モータ13、減速機構14、軸受部材16、クラッチギア32を含む)は、時計方向に回転する。これにより、図1に示すように、ミラーアセンブリ4は、使用位置Aから格納位置Bへと時計方向に回転して、シャフトホルダ9のストッパ凸部21の他方のストッパ面22がギアケース11のガイド溝24の他方のストッパ面に当接した時点で、格納位置Bに位置する。
【0069】
そして、図1に示すように、格納位置Bに位置するミラーアセンブリ4を電動回転力よりも大きい力で反時計方向に回転させる。すると、ミラーアセンブリ4に取り付けられているギアケース11(カバー12、モータ13、減速機構14、軸受部材16、クラッチギア32を含む)が反時計方向に回転するので、図1に示すように、ミラーアセンブリ4が格納位置Bから使用位置Aへと反時計方向に回転する。
【0070】
すると、クラッチギア32のクラッチ凸部とクラッチホルダ35のクラッチ凹部とが最初に相互に嵌合してクラッチ機構15がつながった状態となる。それから、介在部材6の噛合い凸部とギアケース11の噛合い凹部とが相互に噛合って介在部材6とギアケース11とが一体状態となる。この結果、図1に示すように、ミラーアセンブリ4は、使用位置Aに位置する。
【0071】
「効果の説明」
この実施形態1における電動格納式ドアミラー装置1は、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0072】
この実施形態1における電動格納式ドアミラー装置1は、ケーシングがギアケース11およびカバー12から構成されていて、ギアケース11には挿入孔19が設けられていて、その挿入孔19には、シャフト10が挿入されていて、一方、カバー12には、挿入孔39が設けられていて、その挿入孔39には、シャフト10の一端部(上端部)が挿入されている。このために、この実施形態1における電動格納式ドアミラー装置1は、ギアケース11およびカバー12(ケーシング)がシャフト10に対して傾斜することなく、シャフト10の回転中心O−O回りに回転可能となる。この結果、この実施形態1における電動格納式ドアミラー装置1は、品質を向上させることができる。
【0073】
この実施形態1における電動格納式ドアミラー装置1は、開き防止部42により、プッシュナット37の弾性係合部38がシャフト10の係合部25から図10の実線矢印方向にシャフト10の径方向の内側から外側に開こうとするのを確実に防ぐことができる。すなわち、プッシュナット37のスプリング当接部34には、スプリング36のスプリング力が、プッシュナット37を図10中の実線矢印方向にシャフト10の軸方向に上から下に移動させようとする力、および、プッシュナット37の弾性係合部38をシャフト10の係合部25から図10の実線矢印方向にシャフト10の径方向の内側から外側に開こうとする力、として常時作用している。このように、この実施形態1における電動格納式ドアミラー装置1は、常時作用するスプリング36のスプリング力によって、プッシュナット37の弾性係合部38がシャフト10の係合部25から図10中の実線矢印方向にシャフト10の径方向の内側から外側に開こうとするのを開き防止部42で確実に防ぐことができる。この結果、この実施形態1における電動格納式ドアミラー装置1は、開き防止部42により、プッシュナット37をシャフト10に確固に装着することができるので、スプリング36の所定のスプリング力が確実に得られ、ミラーアセンブリ4の安定した回転が確実に得られ、また、ミラーアセンブリ4を所定の位置すなわち使用位置Aまたは格納位置Bに安定して位置させることが確実にできる。すなわち、ミラーアセンブリ4の安定した回転を維持することができ、また、ミラーアセンブリ4の安定した停止位置を確保することができる。
【0074】
しかも、この実施形態1における電動格納式ドアミラー装置1は、開き防止部42により、プッシュナット37の弾性係合部38がシャフト10の係合部25からシャフト10の径方向の内側から外側に開こうとするのを確実に防ぐことができるので、プッシュナット37およびシャフト10を合成樹脂部材から構成しても、プッシュナット37の弾性係合部38がシャフト10の係合部25からシャフト10の径方向の内側から外側に開こうとするのを確実に防ぐことができる。この結果、この実施形態1における電動格納式ドアミラー装置1は、プッシュナット37およびシャフト10を合成樹脂部材から構成することができるので、金属部材と比較して製造処理工程が簡単であるから製造コストを安価にすることができ、かつ、軽量化を図ることができる。
【0075】
また、この実施形態1における電動格納式ドアミラー装置1は、開き防止部42がミラーアセンブリ4側のカバー12に一体に設けられているので、部品点数を軽減することができ、その分、製造コストを安価にすることができる。特に、この実施形態1における電動格納式ドアミラー装置1は、開き防止部42が、シャフト10の回転中心O−Oを中心とした円筒形状をなし、かつ、ハーネス挿通筒部26および挿入孔39と連通するように設けられているので、カバー12の成形金型の構造が簡単となり、カバー12の製造コストを安価にすることができる。
【0076】
さらに、この実施形態1における電動格納式ドアミラー装置1は、シャフト10の軸方向にそれぞれ設けられているプッシュナット37の挿入部33の外周面の当接面43と開き防止部42の内周面の当接面44とがシャフト10の径方向において相互に当接するので、プッシュナット37がシャフト10に対して傾くのを防ぐことができる。この結果、この実施形態1における電動格納式ドアミラー装置1は、プッシュナット37がシャフト10に対して傾いて、プッシュナット37の弾性係合部38がシャフト10の係合部25からシャフト10の径方向の内側から外側に外れるのをさらに確実に防ぐことができるので、プッシュナット37をシャフト10にさらに確固に装着することができる。
【0077】
さらにまた、この実施形態1における電動格納式ドアミラー装置1は、開き防止部42のストッパ45が、プッシュナット37がシャフト10の軸方向(すなわち、スプリング36のスプリング力が作用する方向であってプッシュナット37が図10中の実線矢印方向にシャフト10の軸方向に上から下に移動してプッシュナット37がシャフト10から抜ける方向)に移動するのを制止することができる。この結果、この実施形態1における電動格納式ドアミラー装置1は、プッシュナット37がシャフト10の軸方向に移動して、プッシュナット37の弾性係合部38がシャフト10の係合部25からシャフト10の径方向の内側から外側に外れるのをさらに確実に防ぐことができるので、プッシュナット37をシャフト10にさらに確固に装着することができる。
【0078】
さらにまた、この実施形態1における電動格納式ドアミラー装置1は、カバー12の挿入孔39の内周面とシャフト10の外周面とがシャフト10の径方向において相互に当接し、しかも、カバー12の挿入孔39の内周面とシャフト10の外周面とがシャフト10の軸方向において所定の寸法を有している。この結果、この実施形態1における電動格納式ドアミラー装置1は、カバー12およびギアケース11(ケーシング)がシャフト10に対して傾くことなく、シャフト10の回転中心O−O回りに回転可能となる。これにより、この実施形態1における電動格納式ドアミラー装置1は、品質を向上させることができる。
【0079】
さらにまた、この実施形態1における電動格納式ドアミラー装置1は、シャフト10の径方向において相互に当接しているプッシュナット37の挿入部33の外周面の当接面43と開き防止部42の内周面の当接面44とがシャフト10の軸方向において所定の寸法を有していて、また、シャフト10の径方向において相互に当接しているカバー12の挿入孔39の内周面とシャフト10の外周面とがシャフト10の軸方向において所定の寸法を有している。このために、この実施形態1における電動格納式ドアミラー装置1は、ミラーアセンブリ4が緩衝のために回転して、ギアケース11およびカバー12(モータ13、減速機構14、軸受部材16、クラッチギア32、クラッチホルダ35を含む)がスプリング36のスプリング力に抗して移動(上昇)しても、プッシュナット37の挿入部33の外周面の当接面43と開き防止部42の内周面の当接面44とがシャフト10の径方向において相互に当接していて、また、カバー12の挿入孔39の内周面とシャフト10の外周面とがシャフト10の径方向において相互に当接している。すなわち、図10に示すように、カバー12が点線で示すように上昇しても、プッシュナット37の挿入部33の外周面の当接面43と開き防止部42の内周面の当接面44とがシャフト10の軸方向の寸法G分シャフト10の径方向において相互に当接していて、また、カバー12の挿入孔39の内周面とシャフト10の外周面とがシャフト10の軸方向の寸法H分シャフト10の径方向において相互に当接している。この結果、この実施形態1における電動格納式ドアミラー装置1は、ミラーアセンブリ4が緩衝のために回転して、ギアケース11およびカバー12(モータ13、減速機構14、軸受部材16、クラッチギア32、クラッチホルダ35を含む)がスプリング36のスプリング力に抗して移動(上昇)しても、開き防止部42により、プッシュナット37の弾性係合部38がシャフト10の係合部25からシャフト10の径方向の内側から外側に開こうとするのを確実に防ぐことができ、また、挿入孔39により、カバー12およびギアケース11(ケーシング)がシャフト10に対して傾くことなく、ミラーアセンブリ4がシャフト10の回転中心O−O回りに回転することができる。
【0080】
(実施形態2)
図11は、この発明にかかる車両用アウトサイドミラー装置の実施形態2を示す。図中、図1〜図10と同符号は、同一のものを示す。
【0081】
この実施形態2における車両用アウトサイドミラー装置は、開き防止部46がカバー12と別体の部材、たとえば、リング部材からなるものである。
【0082】
この実施形態2における車両用アウトサイドミラー装置は、カバー12と別体の開き防止部46により、プッシュナット37の弾性係合部38がシャフト10の係合部25から図11の実線矢印方向にシャフト10の径方向の内側から外側に開こうとするのを確実に防ぐことができる。
【0083】
(実施形態3)
図12は、この発明にかかる車両用アウトサイドミラー装置の実施形態3を示す。図中、図1〜図11と同符号は、同一のものを示す。
【0084】
この実施形態3における車両用アウトサイドミラー装置は、止め具として金属製のプッシュナット47からなるものである。前記プッシュナット47には、シャフト10が挿入する挿入孔48を有していてスプリング36が当接するスプリング当接部49と、前記シャフト10の径方向の弾性を有していて前記シャフト10の径方向の外側から内側に弾性復帰して前記シャフト10の4個の係合部25に弾性係合する4個の弾性係合部50と、が設けられているものである。
【0085】
また、この実施形態3における車両用アウトサイドミラー装置は、手動格納型の車両用アウトサイドミラー装置である。このために、この実施形態3における車両用アウトサイドミラー装置は、前記の実施形態1における車両用アウトサイドミラー装置(前記の実施形態1における電動格納式ドアミラー装置1)の電動格納ユニット3の代わりに、シャフト10と、スプリング36と、止め具としての前記プッシュナット47と、ミラーアセンブリ4と、を備えるものである。
【0086】
前記ミラーアセンブリ4側のミラーハウジング5には、前記ミラーハウジング5と別体のフレームやブラケットから構成されている取付部51が前記ミラーハウジング5に一体に固定されている。前記取付部51は、一端(上端)が開口し、かつ、他端(下端)が閉塞した中空状の断面凹形状をなす。前記取付部51の下端閉塞部の中央には、前記シャフト10が挿入する円形の透孔52が設けられている。
【0087】
さらに、この実施形態3における車両用アウトサイドミラー装置は、前記プッシュナット47の前記弾性係合部50が前記シャフト10の径方向の内側から外側に開くのを防ぐ開き防止部53を備えるものである。前記開き防止部53は、前記ミラーアセンブリ4側のミラーハウジング5あるいはフレームやブラケットに一体に設けられている。
【0088】
この実施形態3における車両用アウトサイドミラー装置は、止め具として金属製のプッシュナット47を使用し、また、手動格納型の車両用アウトサイドミラー装置であっても、前記の実施形態1における電動格納式ドアミラー装置1とほぼ同様の効果を達成することができる。
【0089】
「実施形態1、2、3以外の例の説明」
なお、前記の実施形態1、2、3においては、電動格納式のドアミラー装置あるいは手動格納式のドアミラー装置について説明するものである。ところが、この発明においては、電動格納式のドアミラー装置あるいは手動格納式のドアミラー装置以外の車両用アウトサイドミラー装置にも適用できる。たとえば、電動格納式の車両用フェンダミラー装置あるいは手動格納式のフェンダミラー装置などの車両用アウトサイドミラー装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 電動格納式ドアミラー装置(車両用アウトサイドミラー装置)
2 ベース(ミラーベース)
3 電動格納ユニット
4 ミラーアセンブリ
5 ミラーハウジング
6 介在部材
7 ソケット部
8 コネクタ
9 シャフトホルダ
10 シャフト
11 ギアケース(ケーシング)
12 カバー(ケーシング)
13 モータ
14 減速機構(回転力伝達機構)
15 クラッチ機構(回転力伝達機構)
16 軸受部材
17 ジョイント
18 収納部
19 挿入孔
20 溝
21 ストッパ凸部
22 ストッパ面
23 連結部
24 ガイド溝
25 係合部
26 ハーネス挿通筒部
27 基板
28 傾斜面
29 第1ウォームギア
30 ヘリカルギア
31 第2ウォームギア
32 クラッチギア
33 挿入部
34 スプリング当接部
35 クラッチホルダ
36 スプリング
37 プッシュナット(止め具)
38 弾性係合部
39 挿入孔
40 挿入孔
41 切溝
42 開き防止部
43 当接面
44 当接面
45 ストッパ
46 開き防止部
47 プッシュナット(止め具)
48 挿入孔
49 スプリング当接部
50 弾性係合部
51 取付部
52 透孔
53 開き防止部
A 使用位置
B 格納位置
C 前方傾倒位置
D ドア(車体)
E 車両の後方
F 車両の前方
G 寸法
H 寸法
O−O シャフトの回転中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラーアセンブリが電動格納ユニットおよびベースを介して車体に回転可能に取り付けられる車両用アウトサイドミラー装置において、
前記電動格納ユニットは、シャフトと、ケーシングと、を備え、
前記ケーシングには、挿入孔が設けられていて、
前記挿入孔には、前記シャフトが挿入されている、
ことを特徴とする車両用アウトサイドミラー装置。
【請求項2】
前記ケーシングは、ギアケースおよびカバーから構成されていて、
前記ギアケースには、前記挿入孔が設けられていて、
前記挿入孔には、前記シャフトが挿入されていて、
前記カバーには、前記挿入孔が設けられていて、
前記挿入孔には、前記シャフトの一端部が挿入されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用アウトサイドミラー装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2013−63781(P2013−63781A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−5310(P2013−5310)
【出願日】平成25年1月16日(2013.1.16)
【分割の表示】特願2010−94243(P2010−94243)の分割
【原出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】