説明

車両用アウトサイドミラー装置

【課題】車両用アウトサイドミラー装置において、格納機構に負荷をかけないことと、ミラーを振れないように保持することとの両立できる機構を提供する。
【解決手段】シャフト10と、ギアケース11と、モータ13および減速機構14およびクラッチ機構15と、電動回転範囲規制機構と、保持機構と、を備える。この結果、電動格納ユニット3に負荷をかけないことと、ミラーアセンブリ4を振れないように保持することと、を両立することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ミラーアセンブリが電動格納ユニットおよびベースを介して車体に回転(傾倒、回動)可能に取り付けられる車両用アウトサイドミラー装置に関するものである。すなわち、この発明は、たとえば、電動格納型のドアミラーなどの車両用アウトサイドミラー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用アウトサイドミラー装置は、従来からある(たとえば、特許文献1)。以下、従来の車両用アウトサイドミラー装置について説明する。従来の車両用アウトサイドミラー装置は、格納機構がケースをスタンドに対し回転させることでミラーを起立位置と格納位置との間で回転させるものである。
【0003】
かかる車両用アウトサイドミラー装置においては、ミラーを起立位置と格納位置との間で回転させるときには格納機構に負荷をかけず、ミラーを起立位置に位置させるときにはミラーを振れないように保持することが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−287594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前記の従来の車両用アウトサイドミラー装置においては、ミラーを起立位置と格納位置との間で回転させるときには格納機構に負荷をかけず、ミラーを起立位置に位置させるときにはミラーを振れないように保持する手段が設けられていない。このために、前記の従来の車両用アウトサイドミラー装置においては、ミラーを振れないように保持するように構成すると、格納機構に負荷がかかり、一方、格納機構に負荷がかからないように構成すると、ミラーを振れないように保持することができない。
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、従来の車両用アウトサイドミラー装置では、格納機構に負荷をかけないことと、ミラーを振れないように保持することと、の両立が難しいという点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明(請求項1にかかる発明)は、電動格納ユニットが、ベースに固定されるシャフトと、シャフトに回転可能に取り付けられていて、ミラーアセンブリが取り付けられるケーシングと、ケーシング内に収納されていて、ミラーアセンブリをシャフトに対して少なくとも使用位置と格納位置との間において電動回転させるモータおよび回転力伝達機構と、ミラーアセンブリの使用位置と格納位置との間の電動回転の範囲を規制する電動回転範囲規制機構と、回転力伝達機構に設けられていて、モータおよび回転力伝達機構の電動回転力では外れず、かつ、電動回転力以上の力で外れてミラーアセンブリをシャフトに対して回転可能とするクラッチ機構と、シャフトとケーシングとの間に設けられていて、ミラーアセンブリが使用位置と格納位置との間を回転する範囲においては、シャフトとケーシングとに対して非接触状態にあり、ミラーアセンブリが使用位置に位置するときには、シャフトとケーシングとに対して接触状態にあってミラーアセンブリを使用位置に保持する保持機構と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この発明(請求項2にかかる発明)は、ミラーアセンブリを緩衝のために使用位置から格納位置側にあるいは格納位置と反対側に回転させる際に、電動回転力以上でかつクラッチ機構のクラッチ力以下の力で保持機構とケーシングとの接触状態を解除させる緩衝機構を、備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明(請求項1にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、ミラーアセンブリが使用位置と格納位置との間を回転する範囲においては、保持機構がシャフトとケーシングとに対して非接触状態にあるので、ミラーアセンブリが使用位置と格納位置との間において負荷がなくスムーズに回転することができ、電動格納ユニットに対して負荷がかからない。一方、ミラーアセンブリが使用位置に位置するときには、保持機構がシャフトとケーシングとに対して接触状態にあるので、ミラーアセンブリは使用位置に振れることなく確実に保持される。このように、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、電動格納ユニットに負荷をかけないことと、ミラーアセンブリを振れないように保持することと、の両立が可能である。
【0010】
この発明(請求項2にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、クラッチ機構により、ミラーアセンブリにクラッチ機構のクラッチ力よりも大きい力が作用すると、ミラーアセンブリが緩衝のために使用位置から格納位置側にあるいは格納位置と反対側(前方傾倒位置側)に回転する。このために、ミラーアセンブリを衝撃から保護することができる。しかも、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用アウトサイドミラー装置は、ミラーアセンブリが緩衝回転する際には、緩衝機構の作用により、電動回転力以上でかつクラッチ機構のクラッチ力以下の力で保持機構とケーシングとの接触状態が解除されるので、ミラーアセンブリを前方傾倒位置から使用位置にあるいは格納位置から使用位置に、電動格納ユニットに負荷をかけずに、電動回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、この発明にかかる車両用アウトサイドミラー装置の実施形態(自動車の右側のドアに装備される電動格納式ドアミラー装置)を示す使用状態の平面図である。
【図2】図2は、電動格納ユニットを示す分解斜視図である。
【図3】図3は、ケーシングを一部破断した電動格納ユニットを示す斜視図である。
【図4】図4は、保持機構とシャフトおよびケーシングとの非接触状態を示す一部平面説明図である。
【図5】図5は、保持機構とシャフトおよびケーシングとの接触状態を示す一部平面説明図である。
【図6】図6は、保持機構とシャフトおよびケーシングとの非接触状態を示す一部縦断面図(図4におけるVI−VI線断面図)である。
【図7】図7は、保持機構とシャフトおよびケーシングとの接触状態を示す一部縦断面図(図5におけるVII−VII線断面図)である。
【図8】図8は、保持機構とシャフトとが接触状態にあり、一方、保持機構とケーシングとが非接触状態にある要部を示す一部縦断面図(一部垂直断面図)である。
【図9】図9は、ストッパ部材とシャフトホルダとに設けた電動回転範囲規制機構の作動状態を示す説明図である。
【図10】図10は、ストッパ部材の底面を示す図2におけるX矢視図である。
【図11】図11は、シャフトホルダの平面を示す図2におけるXI矢視図である。
【図12】図12は、ストッパ部材とシャフトホルダとに設けた電動回転範囲規制機構の作動状態を示す平面説明図である。
【図13】図13は、ケーシングを斜め下から見た状態を示す斜視図である。
【図14】図14は、ケーシングの底面を示す図2におけるXIV矢視図である。
【図15】図15は、ストッパ部材の平面を示す図2におけるXV矢視図である。
【図16】図16は、ストッパ部材とシャフトホルダとに設けた電動回転範囲規制機構の作動状態およびストッパ部材とケーシングとの間に設けた緩衝機構の作動状態を示す正面説明図である。
【図17】図17は、使用位置に位置するミラーアセンブリに後方から前方へ向けて力が入りミラーアセンブリが前方傾倒位置に位置する状態であって、ストッパ部材とシャフトホルダとに設けた電動回転範囲規制機構の作動状態およびストッパ部材とケーシングとの間に設けた緩衝機構の作動状態およびクラッチ機構の作動状態を示す説明図である。
【図18】図18は、カバーを取り除いた状態の電動格納ユニットを示す平面図である。
【図19】図19は、前方傾倒の緩衝時において緩衝機構のストッパ部材の噛合い部とケーシングの噛合い部との噛合いが外れた状態を示す正面説明図である。
【図20】図20は、前方傾倒の緩衝時においてクラッチ機構が外れた状態を示す正面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明にかかる車両用アウトサイドミラー装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
「構成の説明」
以下、この実施形態における車両用アウトサイドミラー装置の構成について説明する。図1において、符号1は、この実施形態における車両用アウトサイドミラー装置であって、この例では、電動格納式ドアミラー装置(電動格納型のドアミラー)である。前記電動格納式ドアミラー装置1は、自動車の左右のドア(図示せず)にそれぞれ装備される。なお、この実施形態の電動格納式ドアミラー装置1は、自動車の右側のドアに装備されるものであって、自動車の左側のドアに装備される電動格納式ドアミラー装置は、この実施形態の電動格納式ドアミラー装置1とほぼ左右が逆となる。
【0014】
前記電動格納式ドアミラー装置1は、図1に示すように、ミラーアセンブリ4が電動格納ユニット3およびベース(ミラーベース)2を介して車体(自動車のドア)Dに回転可能に取り付けられるものである。前記ベース2は、前記ドアDに固定されるものである。
【0015】
前記ミラーアセンブリ4は、ミラーハウジング5と、取付ブラケット(図示せず)と、パワーユニット(図示せず)と、図示しないミラー(ミラーユニット)と、から構成されている。前記ミラーハウジング5内には、前記取付ブラケットが取り付けられている。前記取付ブラケットには、前記パワーユニットが取り付けられている。前記パワーユニットには、前記ミラーが上下左右に傾動可能に取り付けられている。
【0016】
前記電動格納ユニット3は、シャフトホルダ9と、シャフト10と、ケーシングとしてのギアケース11およびカバー12と、モータ13と、回転力伝達機構としての減速機構14およびクラッチ機構15と、軸受部材16と、ストッパ部材6と、電動回転範囲規制機構と、緩衝機構と、保持機構と、を備えるものである。
【0017】
前記シャフトホルダ9は、前記ベース2に固定される。なお、前記シャフトホルダ9を前記ベース2に一体に設けても良い。前記シャフトホルダ9の一方の面(上面)の中央には、前記シャフト10が一体に設けられている。なお、前記シャフトホルダ9と前記シャフト10とを別体に設けて、前記シャフトホルダ9の一方の面(上面)の中央に前記シャフト10を一体に嵌合固定しても良い。前記シャフトホルダ9は、前記シャフト10の一部を構成する。前記シャフト10は、中空形状をなしていて、ハーネス(図示せず)が挿通するように構成されている。
【0018】
前記シャフト10には、前記ギアケース11および前記カバー12が前記シャフト10の回転中心O−O回りに回転可能に取り付けられている。前記ギアケース11には、前記ミラーアセンブリ4の前記取付ブラケットが取り付けられている。前記ギアケース11および前記カバー12内には、前記モータ13と、前記回転力伝達機構の前記減速機構14および前記クラッチ機構15と、前記軸受部材16と、前記ストッパ部材6と、前記電動回転範囲規制機構と、前記緩衝機構と、前記保持機構と、がそれぞれ収納されている。
【0019】
前記ギアケース11は、図2、図3、図13、図14に示すように、一方(下方)が閉塞し、かつ、他方(上方)が開口した断面凹形状をなす。すなわち、前記ギアケース11には、前記シャフトホルダ9側が閉塞され、かつ、前記カバー12側が開口された断面凹形状をなす収納部18が設けられている。前記ギアケース11の閉塞部には、挿入孔19が設けられている。前記挿入孔19には、前記シャフト10が挿入されている。この結果、前記ギアケース11は、前記シャフト10に前記シャフト10の回転中心O−O回りに回転可能に取り付けられることとなる。
【0020】
図2、図3、図9に示すように、前記シャフトホルダ9の上面には、前記シャフト10の回転中心O−Oを中心とする円弧形状の円弧凸部21が一体に設けられている。前記円弧凸部21の両端面には、当接面22がそれぞれ設けられている。一方、図13、図14に示すように、前記ギアケース11の下面には、前記シャフト10の回転中心O−Oを中心とする円弧形状の円弧溝24が設けられている。前記円弧溝24の両端面には、当接面25がそれぞれ設けられている。
【0021】
前記ギアケース11の前記円弧溝24には、前記シャフトホルダ9の前記円弧凸部21が係合されている。前記円弧凸部21と前記円弧溝24とは、前記ギアケース11が前記シャフトホルダ9に対して前記シャフト10の回転中心O−O回りに回転する際、すなわち、図1に示すように、前記ミラーアセンブリ4が前記ベース2に対して使用位置Aと格納位置Bとの間および使用位置Aと前方傾倒位置Cとの間を後方(上から見て時計方向)または前方(上から見て反時計方向)に回転する際のガイドとなるガイド部材を構成する。図1において、符号Eは、車両の後方を示し、符号Fは、車両の前方を示す。
【0022】
前記円弧凸部21の前記当接面22と前記円弧溝24の前記当接面25とは、前記ミラーアセンブリ4が上から見て時計方向または上から見て反時計方向に回転して前記ドアDに当たる前に、前記円弧凸部21の前記当接面22と前記円弧溝24の前記当接面25とが当接して、前記ミラーアセンブリ4の回転が規制されて前記ミラーアセンブリ4が前記ドアDに当たるのを回避するためのストッパとなるストッパ機構を構成する。
【0023】
前記カバー12は、図2、図3に示すように、一方(上方)が閉塞し、かつ、他方(下方)が開口した断面逆凹形状をなす。すなわち、前記カバー12には、一方の前記ギアケース11側が開口され、かつ、他方側が開口された断面逆凹形状をなす収納部18が設けられている。前記カバー12には、中空形状の前記シャフト10と連通するハーネス挿通筒部26が一体に設けられている。
【0024】
また、前記カバー12には、ソケット部7が設けられている。前記ソケット部7には、図示しない電源(バッテリー)側と電気的に接続されているコネクタ8が電気的に断続可能に接続しかつ機械的に着脱可能に取り付けられる。前記ソケット部7には、基板27が取り付けられている。前記基板27は、前記モータ13と電気的に接続されている。前記基板27には、前記モータ13の駆動停止を制御するスイッチ回路が実装されている。この結果、前記モータ13は、前記基板27および前記ソケット部7を介して前記コネクタ8と電気的に接続される。
【0025】
前記カバー12は、前記ギアケース11の前記収納部18の開口縁の外側に嵌合固定されている。前記ギアケース11および前記カバー12内の収納部18中には、前記モータ13および前記減速機構14および前記クラッチ機構15および前記軸受部材16および前記ストッパ部材6および前記電動回転範囲規制機構および前記緩衝機構および前記保持機構および前記基板27がスクリューなどにより固定収納されている。
【0026】
また、前記カバー12には、挿入孔39が前記ハーネス挿通筒部26と連通するように設けられている。前記挿入孔39には、前記シャフト10が挿入されている。この結果、前記カバー12は、前記ギアケース11と共に前記シャフト10に前記シャフト10の回転中心O−O回りに回転可能に取り付けられることとなる。
【0027】
前記回転力伝達機構の前記減速機構14および前記クラッチ機構15は、図2、図3に示すように、前記ギアケース11および前記カバー12の前記収納部18中に収納され、かつ、前記モータ13の出力軸(図示せず)と前記シャフト10との間に設けられ、前記モータ13の回転力を前記シャフト10に伝達するものである。前記モータ13および前記回転力伝達機構の前記減速機構14および前記クラッチ機構15は、前記ミラーアセンブリ4を前記シャフト10に対して前記シャフト10の回転中心O−O回りに電動回転させるものである。
【0028】
前記減速機構14は、第1段目のギアとしての第1ウォームギア29と、前記第1ウォームギア29に噛み合う第2段目のギアとしてのヘリカルギア30と、第3段目のギアとしての第2ウォームギア31と、前記第2ウォームギア31が噛み合う最終段目のギアとしてのクラッチギア32と、から構成されている。
【0029】
前記第1ウォームギア29は、前記ギアケース11および前記軸受部材16に回転可能に軸受されている。前記第1ウォームギア29は、ジョイント17を介して前記モータ13の出力軸に連結されている。前記ヘリカルギア30は、前記軸受部材16に回転可能に軸受されている。前記第2ウォームギア31は、前記ギアケース11および前記軸受部材16に回転可能に軸受されている。前記ヘリカルギア30と前記第2ウォームギア31とは、一体に回転可能に連結されている。
【0030】
前記クラッチ機構15は、前記クラッチギア32と、クラッチ47と、クラッチホルダ35と、スプリング36と、プッシュナット37と、を備える。前記クラッチギア32と前記クラッチ47とは、それぞれ別個のもので、一体に組み合わせてなるものであって、相互に前記シャフト10の回転中心O−O回りに固定されている。なお、前記クラッチギア32と前記クラッチ47とは、一体に構成したものであっても良い。前記クラッチ機構15は、前記シャフト10に、前記クラッチギア32、前記クラッチ47、前記クラッチホルダ35、前記スプリング36、を順次嵌め合せ、前記プッシュナット37を前記シャフト10に止めて、前記スプリング36を圧縮状態にすることによって構成されている。前記クラッチ47と前記クラッチホルダ35とは、断続可能に連結されている。前記減速機構14の前記第2ウォームギア31と前記減速機構14および前記クラッチ機構15の前記クラッチギア32とが噛合うことにより、前記モータ13の回転力が前記シャフト10に伝達されることとなる。
【0031】
前記クラッチ47と前記クラッチホルダ35とが前記クラッチ機構15を構成する。前記クラッチ47は、前記シャフト10に前記シャフト10の回転中心O−O回りに回転可能にかつ軸方向に移動可能に取り付けられている。前記クラッチホルダ35は、前記シャフト10に回転不可能にかつ軸方向に移動可能に嵌合状態で取り付けられている。図2、図17、図19、図20に示すように、前記クラッチ47と前記クラッチホルダ35との相互に対向する面、すなわち、前記クラッチ47の一方の面(上面)側と前記クラッチホルダ35の一方の面(下面)側とには、複数個この例では3個の山形形状のクラッチ凸部40と谷形形状のクラッチ凹部41とが等間隔に設けられている。なお、図17、図19、図20において、前記クラッチ47は、前記クラッチギア32の内部に組み込まれているので、図示されていない。このために、図17、図19、図20において、前記クラッチ47は、前記クラッチギア32と一体構造のものとみなすことができる。すなわち、前記クラッチ47は、前記クラッチギア32と同義語となる。
【0032】
前記クラッチ凸部40と前記クラッチ凹部41とが嵌合状態にあるときには、前記クラッチ47と前記クラッチホルダ35とが続状態(外れていない状態、つながっている状態)にあり、前記クラッチ凸部40と前記クラッチ凹部41とが嵌合解除状態にあるときには、前記クラッチ47と前記クラッチホルダ35とは、断状態(外れている状態、切れている状態)にある。前記クラッチ機構15は、前記モータ13および前記回転力伝達機構(前記減速機構14および前記クラッチ機構15)の電動回転力では外れず、かつ、前記電動回転力以上の力で外れて前記ミラーアセンブリ4を前記シャフト10に対して回転可能とする。
【0033】
前記クラッチ部材のうち前記クラッチギア32他方の面(下面)側は、前記ギアケース11の底部の一面(上面)に直接もしくはワッシャ46を介して当接する。一方、前記クラッチ部材のうち前記クラッチホルダ35の他方の面(上面)側は、前記スプリング36に直接当接する。
【0034】
前記ストッパ部材6は、前記シャフトホルダ9と前記ギアケース11との間に設けられている。前記ストッパ部材6は、低摩擦かつ耐摩耗性の部材であって安価な樹脂部材、たとえば、POM(ポリアセタール、アセタール樹脂)、PPS(ポリフェニレンスルフィド)から構成されている。前記ストッパ部材6は、中空状の円筒形状をなす。すなわち、前記ストッパ部材6は、前記シャフト10が挿入する挿入孔を有する筒部20からなる。前記筒部20の一端部(下端部)には、鍔部23が一体に設けられている。前記ストッパ部材6は、前記シャフト10に前記シャフト10の回転中心O−O回りに回転可能に取り付けられている。
【0035】
図10、図12、図16に示すように、前記ストッパ部材6の前記鍔部23の一面(下面)には、前記シャフト10の回転中心O−Oを中心とする2個のストッパ凸部28が等間隔に一体に設けられている。前記ストッパ凸部28の両端面には、前記電動回転範囲規制機構のストッパ面33、34が設けられている。図15、図16に示すように、前記ストッパ部材6の前記鍔部23の他面(上面)には、前記緩衝機構の噛合い部としての台形形状の噛合い凸部38が、前記シャフト10の回転中心O−Oを中心とする円周上に、複数個この例では2個等間隔に一体に設けられている。
【0036】
図4〜図8、図15に示すように、前記ストッパ部材6の前記筒部20の他端部(上端部)の内面と外面とには、保持機構としての内側突起48と外側突起50とがそれぞれ等間隔に一体に設けられている。前記内側突起48と前記外側突起50とは、複数個この例では3個ずつ設けられている。前記内側突起48と前記外側突起50とは、前記シャフト10の回転中心O−O方向に伸びるリブ形状をなす。前記内側突起48の内面には、時計方向に上り勾配となるテーパ側面49が形成されている。一方、前記外側突起50の一端面(上端面)には、内側から外側にかけて下り勾配となるテーパ上面51が形成されている。前記ストッパ部材6の前記筒部20の他端部(上端部)であって、前記内側突起48および前記外側突起50の両側には、スリット52が前記シャフト10の回転中心O−O方向にそれぞれ設けられている。前記スリット52により、前記ストッパ部材6の前記筒部20の他端部(上端部)であって、前記内側突起48および前記外側突起50が位置する部分が、図5、図7中の実線矢印方向に、外側(前記シャフト10の回転中心O−Oから径方向)に変形し易くなる。
【0037】
前記シャフトホルダ9および前記シャフト10は、高剛性の部材、たとえば、ダイカストや樹脂から構成されている。図11、図12、図16に示すように、前記シャフトホルダ9の上面には、前記シャフト10の回転中心O−Oを中心とする2個のストッパ凸部42が前記ストッパ部材6の前記ストッパ凸部28に対応して等間隔に一体に設けられている。前記ストッパ凸部42の両端面には、前記電動回転範囲規制機構のストッパ面43、44が、前記ストッパ部材6の前記ストッパ面33、34に対応して設けられている。
【0038】
図4〜図8に示すように、前記シャフト10の外面には、保持機構としての突起53が、前記ストッパ部材6の前記内側突起48と対応して、等間隔に一体に設けられている。前記突起53は、複数個この例では3個設けられている。前記突起53は、前記シャフト10の回転中心O−O方向に伸びるリブ形状をなす。前記突起53の外面には、時計方向に下り勾配となるテーパ側面54が、前記ストッパ部材6の前記内側突起48の前記テーパ側面49と対応して、形成されている。
【0039】
前記ギアケース11は、高剛性の部材、たとえば、ナイロンあるいはガラス繊維やカーボン繊維含有の樹脂から構成されている。図13、図14、図16に示すように、前記ギアケース11の底部の他面(下面)には、前記緩衝機構の噛合い部としての台形形状の噛合い凹部45が、前記シャフト10の回転中心O−Oを中心とする円周上に、複数個この例では2個等間隔に前記ストッパ部材6の前記噛合い凸部38と対応して一体に設けられている。
【0040】
図6〜図8に示すように、前記ギアケース11の内面には、保持機構としてのテーパ下面55が、前記ストッパ部材6の前記外側突起50の前記テーパ上面51と対応して、内側から外側にかけて下り勾配となるテーパ下面55が形成されている。前記テーパ下面55は、前記ストッパ部材6の前記外側突起50の前記テーパ上面51と対応して、複数個この例では3個設けても良いし、あるいは、前記ストッパ部材6の前記外側突起50の前記テーパ上面51と対応して、前記シャフト10の回転中心O−Oを中心とする円周上に設けても良い。
【0041】
前記電動回転範囲規制機構は、ミラーアセンブリの前記電動回転の範囲を規制する機構である。前記電動回転範囲規制機構は、前記ストッパ部材6と前記シャフトホルダ9とに設けられている前記ストッパ面33、34、43、44から構成されている。前記電動回転範囲規制機構は、前記ストッパ部材6のストッパ面33または34と前記シャフトホルダ9のストッパ面43または44とが当接することにより、前記ストッパ部材6が前記シャフトホルダ9に固定されて前記ミラーアセンブリ4の前記使用位置Aが規制される機構である。
【0042】
前記電動回転範囲は、図1に示すように、使用位置Aと格納位置Bとの間の範囲である。この結果、前記ストッパ部材6の一方のストッパ面33と前記シャフトホルダ9の一方のストッパ面43とが当接すると、前記ミラーアセンブリ4は、使用位置Aに位置する。
【0043】
前記緩衝機構は、前記クラッチ機構15と共に、前記ミラーアセンブリ4を緩衝のために電動作動範囲外へ回転させる機構、すなわち、前方へ逃がすための機構である。前記緩衝機構は、前記ストッパ部材6と前記ギアケース11とに設けられている噛合い部凸部38と噛合い凹部45とから構成されている。前記緩衝機構は、前記電動回転力では前記ストッパ部材6の噛合い凸部38と前記ギアケース11の噛合い凹部45との噛合いが外れず前記ストッパ部材6と前記ギアケース11とが一緒に前記電動回転範囲(使用位置Aと格納位置Bとの間の範囲)において前記シャフト10および前記シャフトホルダ9に対して前記シャフト10の回転中心O−O回りに回転する。
【0044】
前記緩衝機構は、前記電動回転力以上の力が車両の前方F方向にかかった時には、前記ストッパ部材6の噛合い凸部38と前記ギアケース11の噛合い凹部45との噛合いが外れさらに前記クラッチ機構15が外れて(前記クラッチ47のクラッチ凸部40と前記クラッチホルダ35のクラッチ凹部41との嵌合状態が解除されて)前記ギアケース11が前記シャフト10および前記シャフトホルダ9に対して前記シャフト10の回転中心O−O回りに上から見て反時計方向に回転する。前記ストッパ部材6の噛合い凸部38と前記ギアケース11の噛合い凹部45との噛合いが外れると、図8、図19に示すように、前記ギアケース11は前記シャフト10に対して一方向(上方向)に移動する。
【0045】
前記保持機構は、前記ミラーアセンブリ4を前記使用位置Aに振れないように確実に保持する機構である。前記保持機構は、前記シャフト10と前記ギアケース11との間に設けられている前記ストッパ部材6から構成されている。すなわち、前記保持機構は、前記ストッパ部材6の前記内側突起48の前記テーパ側面49および前記外側突起50の前記テーパ上面51と、前記シャフト10の前記突起53の前記テーパ側面54と、前記ギアケース11の前記テーパ下面55と、から構成されている。
【0046】
前記保持機構は、前記ミラーアセンブリ4が前記使用位置Aと前記格納位置Bとの間を回転する範囲において、前記シャフト10と前記ギアケースとに対して非接触状態にある。すなわち、図4、図6、図8に示すように、前記ストッパ部材6の前記内側突起48の前記テーパ側面49と前記シャフト10の前記突起53の前記テーパ側面54とが、非接触状態にある。また、前記ストッパ部材6の前記外側突起50の前記テーパ上面51と前記ギアケース11の前記テーパ下面55とが、非接触状態にある。
【0047】
前記保持機構は、前記ミラーアセンブリ4が前記使用位置Aに位置するとき、前記シャフト10と前記ギアケース11とに対して接触状態にあって前記ミラーアセンブリ4を前記使用位置Aに保持する。すなわち、図5、図7に示すように、前記ストッパ部材6の前記内側突起48の前記テーパ側面49と前記シャフト10の前記突起53の前記テーパ側面54とが、接触状態にある。このために、前記ストッパ部材6の前記筒部20のうち、前記内側突起48が位置する部分が、図5、図7中の実線矢印方向に、外側(前記シャフト10の回転中心O−Oから径方向)に変形する。これにより、図7に示すように、前記ストッパ部材6の前記外側突起50の前記テーパ上面51と前記ギアケース11の前記テーパ下面55とが、接触状態にある。
【0048】
「作用の説明」
この実施形態における電動格納式ドアミラー装置1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0049】
まず、図1に示すように、使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4を格納位置Bに電動回転させて格納させる場合について説明する。ミラーアセンブリ4が使用位置Aに位置する状態(セット状態、使用状態)のときにおいては、クラッチ機構15は、図17(A)に示す状態にある。電動回転範囲規制機構は、図9(A)、図12(A)、図16(A)、図17(A)に示す状態にある。緩衝機構は、図16(A)、図17(A)に示す状態にある。保持機構は、図5、図7に示す状態にある。
【0050】
すなわち、クラッチ機構15は、図17(A)に示すように、クラッチ47のクラッチ凸部40とクラッチホルダ35のクラッチ凹部41とが嵌合状態にあるので、クラッチギア32とクラッチホルダ35とが続状態にある。このために、クラッチギア32およびクラッチ47は、クラッチホルダ35と共に、シャフト10に対して回転不可能の状態にある。
【0051】
電動回転範囲規制機構は、図9(A)、図12(A)、図16(A)、図17(A)に示すように、ストッパ部材6の一方のストッパ面33とシャフトホルダ9の一方のストッパ面43とが当接している状態にある。この結果、ストッパ部材6は、シャフトホルダ9に対して固定されている状態にある。
【0052】
緩衝機構は、図16(A)、図17(A)に示すように、ストッパ部材6の噛合い凸部38とギアケース11の噛合い凹部45とが噛合っている状態にある。この結果、ストッパ部材6とギアケース11とは、一体状態にある。
【0053】
保持機構は、図5、図7に示すように、ストッパ部材6の内側突起48のテーパ側面49とシャフト10の突起53のテーパ側面54とが、接触状態にある。また、ストッパ部材6の外側突起50のテーパ上面51とギアケース11のテーパ下面55とが、接触状態にある。この結果、ミラーアセンブリ4は、使用位置Aに振れることなく確実に位置する。
【0054】
このセット状態(使用状態)において、自動車の室内のスイッチ(図示せず)を操作して、コネクタ8、ソケット部7、基板27を介してモータ13に給電してモータ13を駆動させる。すると、モータ13の回転力は、出力軸、減速機構14を介してシャフト10に固定されたクラッチギア32に伝達される。このとき、クラッチギア32は、クラッチ47およびクラッチホルダ35と共に、シャフト10に対して回転不可能の状態にあるので、減速機構14の第2ウォームギア31がクラッチギア32を固定ギアとしてシャフト10の回転中心O−O回りに回転する。この回転により電動格納ユニット3を内蔵したミラーアセンブリ4は、図1に示すように、シャフト10の回転中心O−O回りに使用位置Aから格納位置Bへと上から見て時計方向に回転する。
【0055】
このミラーアセンブリ4が使用位置Aから格納位置Bへと上から見て時計方向に回転すると、電動格納ユニット3のギアケース11がシャフト10に対して同様に上から見て時計方向(図16中の実線矢印方向)に回転する。これに伴って、ギアケース11の噛合い凹部45に噛合い凸部38が噛合っているストッパ部材6がシャフトホルダ9に対して同様に上から見て時計方向(図4中の実線矢印方向と逆方向、図9、図12、図16中の実線矢印方向)に回転する。すなわち、ストッパ部材6の凸部28の一面(下面)がシャフトホルダ9の上面上を回転(滑り、スライド、摺動)する。この結果、図9(B)、図12(B)、図16(B)に示すように、ストッパ部材6の一方のストッパ面33がシャフトホルダ9の一方のストッパ面43から離れる。
【0056】
ミラーアセンブリ4が格納位置Bに位置すると、ギアケース11の円弧溝24の当接面25がシャフトホルダ9の円弧凸部21の当接面22に当たって、ギアケース11の回転も同様に停止する。
【0057】
これと同時に、モータ13に供給される電流(作動電流)の値が上昇して所定値に達して、基板27のスイッチ回路が作動してモータ13への電流供給が遮断される。この結果、ミラーアセンブリ4が図1に示す所定の位置の格納位置Bに停止して位置する。
【0058】
このミラーアセンブリ4が使用位置Aから格納位置Bへと上から見て時計方向に回転しているときには、保持機構がシャフト10とギアケース11とに対して非接触状態にある。すなわち、図4、図6、図8に示すように、ストッパ部材6の内側突起48のテーパ側面49とシャフト10の突起53のテーパ側面54とが、非接触状態にある。また、ストッパ部材6の外側突起50のテーパ上面51とギアケース11のテーパ下面55とが、非接触状態にある。この結果、ミラーアセンブリ4は、電動格納ユニット3に負荷をかけることなく、使用位置Aから格納位置Bへと上から見て時計方向にスムーズに回転する。
【0059】
つぎに、図1に示すように、格納位置Bに位置するミラーアセンブリ4を使用位置Aに電動回転させて復帰させる場合について説明する。ミラーアセンブリ4が格納位置Bに位置する状態(格納状態)のときには、クラッチ機構15は、図17(A)に示す状態にある。電動回転範囲規制機構は、図9(C)、図12(C)、図16(C)に示す状態にある。緩衝機構は、図16(C)に示す状態にある。保持機構は、図4、図6に示す状態にある。
【0060】
すなわち、クラッチ機構15は、セット状態と同様に、つながっている状態にあるので、クラッチギア32は、クラッチ47およびクラッチホルダ35と共に、シャフト10に対して回転不可能の状態にある。ギアケース11の円弧溝24の当接面25とシャフトホルダ9の円弧凸部21の当接面22とが相互に当接し、ストッパ部材6の噛合い凸部38とギアケース11の噛合い凹部45とが噛合っているので、ストッパ部材6は、シャフトホルダ9に対して固定されている状態にある。緩衝機構は、ストッパ部材6の噛合い凸部38とギアケース11の噛合い凹部45とが噛合っている状態にあるので、ストッパ部材6とギアケース11とは、一体状態にある。保持機構は、シャフト10とギアケース11とに対して非接触状態にある。
【0061】
この格納状態において、自動車の室内のスイッチ(図示せず)を操作してモータ13を駆動させる。すると、モータ13の回転力が減速機構14を介して回転不可能の状態にあるクラッチギア32に伝達される。これにより、電動格納ユニット3を内蔵したミラーアセンブリ4は、図1に示すように、シャフト10の回転中心O−O回りに格納位置Bから使用位置Aへと上から見て反時計方向に回転する。
【0062】
このミラーアセンブリ4が格納位置Bから使用位置Aへと上から見て反時計方向に回転すると、電動格納ユニット3のギアケース11がシャフト10に対して同様に上から見て反時計方向(図16中の実線矢印方向と逆方向)に回転する。これに伴って、ギアケース11の噛合い凹部45に噛合い凸部38が噛合っているストッパ部材6がシャフトホルダ9に対して同様に上から見て反時計方向(図4中の実線矢印方向、図9、図12、図16中の実線矢印方向と逆方向)に回転する。すなわち、ストッパ部材6の凸部28の下面がシャフトホルダ9の上面上を回転(滑り、スライド、摺動)する。この結果、図9(B)、図12(B)、図16(B)に示すように、ギアケース11の円弧溝24の当接面25がシャフトホルダ9の円弧凸部21の当接面22から離れる。
【0063】
ミラーアセンブリ4が使用位置Aに位置すると、図9(A)、図12(A)、図16(A)に示すように、ストッパ部材6の一方のストッパ面33がシャフトホルダ9の一方のストッパ面43に当接する。この結果、ストッパ部材6がシャフトホルダ9に対して固定されて、ストッパ部材6の回転が停止する。また、ストッパ部材6の噛合い凸部38に噛合い凹部45が噛合っているギアケース11の回転も同様に停止する。
【0064】
これと同時に、モータ13に供給される電流(作動電流)の値が上昇して所定値に達して、基板27のスイッチ回路が作動してモータ13への電流供給が遮断される。この結果、ミラーアセンブリ4が図1に示す所定の位置の使用位置Aに停止して位置する。
【0065】
このミラーアセンブリ4が使用位置Aに位置するときには、保持機構がシャフト10とギアケース11とに対して接触状態にある。すなわち、図5、図7に示すように、ストッパ部材6の内側突起48のテーパ側面49がシャフト10の突起53のテーパ側面54に接触する。すると、ストッパ部材6の筒部20のうち、内側突起48が位置する部分が、図5、図7中の実線矢印方向に、外側(シャフト10の回転中心O−Oから径方向)に変形する。これにより、図7に示すように、ストッパ部材6の外側突起50のテーパ上面51がギアケース11のテーパ下面55に接触する。このように、ストッパ部材6の内側突起48のテーパ側面49とシャフト10の突起53のテーパ側面54とが、接触状態にある。また、ストッパ部材6の外側突起50のテーパ上面51とギアケース11のテーパ下面55とが、接触状態にある。この結果、ミラーアセンブリ4は、振れることなく確実に使用位置Aに位置する。
【0066】
さらに、図1に示すように、使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4を緩衝のために前方傾倒位置Cに傾倒させる場合について説明する。ミラーアセンブリ4が使用位置Aに位置する状態(セット状態、使用状態)のときには、クラッチ機構15が図17(A)に示す状態にある。電動回転範囲規制機構は、図9(A)、図12(A)、図16(A)、図17(A)に示す状態にある。緩衝機構は、図16(A)、図17(A)に示す状態にある。保持機構は、図5、図7に示す状態にある。
【0067】
すなわち、クラッチ機構15は、つながっている状態にあるので、クラッチギア32は、クラッチ47およびクラッチホルダ35と共に、シャフト10に対して回転不可能の状態にある。電動回転範囲規制機構は、ストッパ部材6の一方のストッパ面33とシャフトホルダ9の一方のストッパ面43とが当接している状態にあるので、ストッパ部材6は、シャフトホルダ9に対して固定されている状態にある。緩衝機構は、ストッパ部材6の噛合い凸部38とギアケース11の噛合い凹部45とが噛合っている状態にあるので、ストッパ部材6とギアケース11とは、一体状態にある。保持機構は、シャフト10とギアケース11とに対して接触状態にあるので、ミラーアセンブリ4は、振れることなく確実に使用位置Aに位置する。
【0068】
このセット状態(使用状態)において、使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4に上から見て反時計方向の力であって、モータ13および減速機構14による電動回転力よりも大きい力(手動による力、何かがミラーアセンブリ4に当たったときの力)がかかる。すると、ミラーアセンブリ4に取り付けられているギアケース11が上から見て反時計方向(図17、図19、図20中の実線矢印方向)に回転しようとする。このとき、図17、図19、図20に示すように、ストッパ部材6の一方のストッパ面33がシャフトホルダ9の一方のストッパ面43に当接しているので、ストッパ部材6がシャフトホルダ9に対して固定されていて上から見て反時計方向に回転することができない。
【0069】
このために、図17(B)、図19に示すように、ギアケース11の噛合い凹部45がストッパ部材6の噛合い凸部38を乗り上げて、ストッパ部材6の噛合い凸部38とギアケース11の噛合い凹部45との噛合いが最初に外れる。このとき、ギアケース11(カバー12、モータ13、減速機構14、軸受部材16、クラッチギア32、クラッチホルダ35を含む)は、図8中の実線矢印方向に、スプリング36のスプリング力に抗して移動(上昇)する。
【0070】
このとき、図8に示すように、ストッパ部材6の内側突起48のテーパ側面49とシャフト10の突起53のテーパ側面54とは、接触状態にあるので、ストッパ部材6は、シャフト10に対して固定状態にある。一方、ストッパ部材6の外側突起50のテーパ上面51とギアケース11のテーパ下面55とは、非接触状態にあるので、ギアケース11は、ストッパ部材6およびシャフト10に対して回転可能の状態にある。
【0071】
それから、ギアケース11がさらに上から見て反時計方向に回転しようとする。すると、図18に示すように、クラッチギア32と第2ウォームギア31との間のバックラッシュが詰まり、その第2ウォームギア31のスラスト方向の隙間が詰まり、シャフト10とクラッチホルダ35との間の嵌合隙間が詰まる。
【0072】
クラッチホルダ35は、シャフト10に回転不可能に嵌合されているので、図17(C)、図20に示すように、ギアケース11側のクラッチ47のクラッチ凸部40がシャフト10の固定側のクラッチホルダ35のクラッチ凹部41を乗り上げて、クラッチ47のクラッチ凸部40とクラッチホルダ35のクラッチ凹部41との嵌合状態が外れる。このとき、クラッチホルダ35は、スプリング36のスプリング力に抗して移動(上昇)する。
【0073】
この結果、ギアケース11(カバー12、モータ13、減速機構14、軸受部材16、クラッチギア32を含む)は、上から見て反時計方向に回転する。これにより、図1に示すように、ミラーアセンブリ4は、使用位置Aから前方傾倒位置Cへと上から見て反時計方向に回転して、シャフトホルダ9の円弧凸部21の一方の当接面22がギアケース11の円弧溝24の一方の当接面25に当接した時点で、前方傾倒位置Cに位置する。
【0074】
ミラーアセンブリ4が使用位置Aから前方傾倒位置Cへと上から見て反時計方向に回転するときには、ストッパ部材6の外側突起50のテーパ上面51とギアケース11のテーパ下面55とが非接触状態にあるので、電動格納ユニット3には負荷をかけずに、ミラーアセンブリ4を前方傾倒位置Cに回転させることができる。
【0075】
この前方傾倒状態において、自動車の室内のスイッチ(図示せず)を操作してモータ13を駆動させる。すると、モータ13の回転力は、出力軸、減速機構14を介してシャフト10に固定されたクラッチギア32伝達される。すると、ミラーアセンブリ4に取り付けられているギアケース11(カバー12、モータ13、減速機構14、軸受部材16、クラッチギア32を含む)が上から見て時計方向(図17、図19、図20中の実線矢印方向と逆方向)に回転するので、図1に示すように、ミラーアセンブリ4が前方傾倒位置Cから使用位置Aへと上から見て時計方向に回転する。
【0076】
すると、クラッチギア32のクラッチ凸部40とクラッチホルダ35のクラッチ凹部41とが最初に相互に嵌合してクラッチ機構15がつながった状態となる。それから、ストッパ部材6の噛合い凸部38とギアケース11の噛合い凹部45とが相互に噛合ってストッパ部材6とギアケース11とが一体状態となる。この結果、図1に示すように、ミラーアセンブリ4は、使用位置Aに位置する。
【0077】
ミラーアセンブリ4が前方傾倒位置Cから使用位置Aへと上から見て反時計方向に回転するときには、ストッパ部材6の外側突起50のテーパ上面51とギアケース11のテーパ下面55とが非接触状態にあるので、ミラーアセンブリ4を使用位置Aに電動回転させることができる。
【0078】
なお、図1に示すように、前方傾倒位置Cに位置するミラーアセンブリ4を手動により上から見て時計方向に回転させることにより、ミラーアセンブリ4を前方傾倒位置Cから使用位置Aへと上から見て時計方向に回転させることもできる。
【0079】
さらに、図1に示すように、使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4を緩衝のために格納位置Bに傾倒させる場合について説明する。使用位置Aに位置するミラーアセンブリ4に上から見て時計方向の力であって、電動回転力よりも大きい力(手動による力、何かがミラーアセンブリ4に当たったときの力)がかかる。すると、ミラーアセンブリ4に取り付けられているギアケース11が上から見て時計方向に回転しようとする。このとき、ストッパ部材6の一方のストッパ面33がシャフトホルダ9の一方のストッパ面43に当接していて、ストッパ部材6の他方のストッパ面34がシャフトホルダ9の他方のストッパ面44に当接していないので、ストッパ部材6がシャフトホルダ9に対して上から見て時計方向には固定されておらずこの方向(上から見て時計方向)に回転することができる。
【0080】
このために、ストッパ部材6の噛合い凸部38とギアケース11の噛合い凹部45とが噛合った状態でストッパ部材6とギアケース11は、シャフトホルダ9に対して上から見て時計方向に回転しようとする。このとき、クラッチホルダ35は、シャフト10に回転不可能に嵌合されているので、ギアケース11側のクラッチ47のクラッチ凸部40がシャフト10の固定側のクラッチホルダ35のクラッチ凹部41を乗り上げて、クラッチ47のクラッチ凸部40とクラッチホルダ35のクラッチ凹部41との嵌合状態が外れる。このとき、クラッチホルダ35は、スプリング36のスプリング力に抗して移動(上昇)する。
【0081】
この結果、ギアケース11(カバー12、モータ13、減速機構14、軸受部材16、クラッチギア32を含む)は、上から見て時計方向に回転する。これにより、図1に示すように、ミラーアセンブリ4は、使用位置Aから格納位置Bへと上から見て時計方向に回転して、シャフトホルダ9の円弧凸部21の他方の当接面22がギアケース11の円弧溝24の他方の当接面25に当接する。この結果、ストッパ部材6がシャフトホルダ9に対して固定されて、ストッパ部材6の回転が停止する。また、ストッパ部材6の噛合い凸部38に噛合い凹部45が噛合っているギアケース11の回転も同様に停止する。この結果、ミラーアセンブリ4が図1に示す所定の位置の格納位置Bに停止して位置する。
【0082】
このミラーアセンブリ4が使用位置Aから格納位置Bに回転しているときには、保持機構がシャフト10とギアケース11とに対して非接触状態にある。このために、ミラーアセンブリ4を、電動格納ユニット3に負荷をかけることなく、使用位置Aから格納位置Bにスムーズに回転させることができる。
【0083】
そして、図1に示すように、格納位置Bに位置するミラーアセンブリ4を電動回転力あるいは手動力により上から見て反時計方向に回転させる。すると、ミラーアセンブリ4に取り付けられているギアケース11(カバー12、モータ13、減速機構14、軸受部材16、クラッチギア32を含む)が上から見て反時計方向に回転するので、図1に示すように、ミラーアセンブリ4が格納位置Bから使用位置Aへと上から見て反時計方向に回転する。
【0084】
すると、クラッチギア32のクラッチ凸部40とクラッチホルダ35のクラッチ凹部41とが相互に嵌合してクラッチ機構15がつながった状態となる。この結果、図1に示すように、ミラーアセンブリ4は、使用位置Aに位置する。
【0085】
「効果の説明」
この実施形態における電動格納式ドアミラー装置1は、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0086】
この実施形態における電動格納式ドアミラー装置1は、ミラーアセンブリ4が使用位置Aと格納位置Bとの間を回転する範囲においては、保持機構がシャフト10とギアケース11とに対して非接触状態にある。すなわち、図4、図6、図8に示すように、ストッパ部材6の内側突起48のテーパ側面49とシャフト10の突起53のテーパ側面54とが、非接触状態にある。また、ストッパ部材6の外側突起50のテーパ上面51とギアケース11のテーパ下面55とが、非接触状態にある。この結果、ミラーアセンブリ4が使用位置Aと格納位置Bとの間において負荷がなくスムーズに回転することができ、電動格納ユニット3に対して負荷がかからない。
【0087】
しかも、この実施形態における電動格納式ドアミラー装置1は、ミラーアセンブリ4が使用位置Aと格納位置Bとの間を回転する範囲においては、保持機構がシャフト10とギアケース11とに対して非接触状態にある。すなわち、ストッパ部材6とシャフト10との間においては、隙間が設定されているので、温度変化や湿度変化によるストッパ部材6およびシャフト10などの部品の大きさの変化に十分に追従することができる。
【0088】
この実施形態における電動格納式ドアミラー装置1は、ミラーアセンブリ4が使用位置Aに位置するときには、保持機構がシャフト10とギアケース11とに対して接触状態にある。すなわち、図5、図7に示すように、ストッパ部材6の内側突起48のテーパ側面49とシャフト10の突起53のテーパ側面54とが、接触状態にある。また、ストッパ部材6の外側突起50のテーパ上面51とギアケース11のテーパ下面55とが、接触状態にある。この結果、ミラーアセンブリ4は、使用位置Aに振れることなく確実に保持される。
【0089】
このように、この実施形態における電動格納式ドアミラー装置1は、電動格納ユニット3に負荷をかけないことと、ミラーアセンブリ4を振れないように保持することと、の両立が可能である。
【0090】
この実施形態における電動格納式ドアミラー装置1は、クラッチ機構15により、ミラーアセンブリ4にクラッチ機構15のクラッチ力よりも大きい力が作用すると、ミラーアセンブリ4が緩衝のために使用位置Aから格納位置B側に、あるいは、格納位置Bと反対側の前方傾倒位置C側に、回転する。このために、ミラーアセンブリ4を衝撃か保護することができる。しかも、この実施形態における電動格納式ドアミラー装置1は、ミラーアセンブリ4が緩衝回転する際には、緩衝機構の作用により、電動回転力以上でかつクラッチ機構15のクラッチ力以下の力で保持機構とギアケース11との接触状態が解除、すなわち、図8に示すように、ストッパ部材6の外側突起50のテーパ上面51とギアケース11のテーパ下面55とが非接触状態とされるので、ミラーアセンブリ4を前方傾倒位置Cから使用位置Aにあるいは格納位置Bから使用位置Aに、電動格納ユニット3に負荷をかけずに、電動回転させることができる。
【0091】
「実施形態以外の例の説明」
なお、前記の実施形態においては、電動格納式のドアミラー装置について説明するものである。ところが、この発明においては、電動格納式のドアミラー装置以外の車両用アウトサイドミラー装置にも適用できる。たとえば、電動格納式の車両用フェンダミラー装置などの電動格納式の車両用アウトサイドミラー装置に適用することができる。
【0092】
また、前記の実施形態においては、クラッチギア32にクラッチ凸部40を、クラッチホルダ35にクラッチ凹部41を、設けるものである。ところが、この発明においては、クラッチにクラッチ凹部を、クラッチホルダにクラッチ凸部を、設けても良いし、クラッチにクラッチ凸部およびクラッチ凹部を、クラッチホルダにクラッチ凹部およびクラッチ凸部を、設けても良い。
【0093】
さらに、前記の実施形態においては、ストッパ部材6に噛合い凸部38を設け、ギアケース11に噛合い凹部45を設けるものである。ところが、この発明においては、ストッパ部材に噛合い凹部を設け、ギアケースに噛合い凸部を設けても良いし、ストッパ部材に噛合い凸部および噛合い凹部を設け、ギアケースに噛合い凹部および噛合い凸部を設けても良い。
【0094】
さらにまた、前記の実施形態においては、ストッパ部材6の下面に2個のストッパ凸部28を設け、シャフトホルダ9の上面に2個のストッパ凸部42を設けたものであって、これにより、強度が向上して好ましい。ところが、この発明においては、ストッパ凸部28およびストッパ凸部42の個数は特に限定しない。
【0095】
さらにまた、前記の実施形態においては、ストッパ部材6の内側突起48のテーパ側面49および外側突起50のテーパ上面51と、シャフト10の突起53のテーパ側面54と、ギアケース11のテーパ下面55とを、3個ずつ設けてなるものである。ところが、この発明においては、ストッパ部材6の内側突起48のテーパ側面49および外側突起50のテーパ上面51と、シャフト10の突起53のテーパ側面54と、ギアケース11のテーパ下面55とを、1個、2個、4個以上ずつ設けても良い。
【符号の説明】
【0096】
1 電動格納式ドアミラー装置(車両用アウトサイドミラー装置)
2 ベース(ミラーベース)
3 電動格納ユニット
4 ミラーアセンブリ
5 ミラーハウジング
6 ストッパ部材
7 ソケット部
8 コネクタ
9 シャフトホルダ(シャフト)
10 シャフト
11 ギアケース(ケーシング)
12 カバー(ケーシング)
13 モータ
14 減速機構(回転力伝達機構)
15 クラッチ機構(回転力伝達機構)
16 軸受部材
17 ジョイント
18 収納部
19 挿入孔
20 筒部
21 円弧凸部
22 当接面
23 鍔部
24 円弧溝
25 当接面
26 ハーネス挿通筒部
27 基板
28 ストッパ凸部
29 第1ウォームギア
30 ヘリカルギア
31 第2ウォームギア
32 クラッチギア
33 ストッパ面
34 ストッパ面
35 クラッチホルダ
36 スプリング
37 プッシュナット
38 噛合い凸部
39 挿入孔
40 クラッチ凸部
41 クラッチ凹部
42 ストッパ凸部
43 ストッパ面
44 ストッパ面
45 噛合い凹部
46 ワッシャ
47 クラッチ
48 内側突起
49 テーパ側面
50 外側突起
51 テーパ上面
52 スリット
53 突起
54 テーパ側面
55 テーパ下面
A 使用位置
B 格納位置
C 前方傾倒位置
D ドア(車体)
E 車両の後方
F 車両の前方
O−O シャフトの回転中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラーアセンブリが電動格納ユニットおよびベースを介して車体に回転可能に取り付けられる車両用アウトサイドミラー装置において、
前記電動格納ユニットは、
前記ベースに固定されるシャフトと、
前記シャフトに回転可能に取り付けられていて、前記ミラーアセンブリが取り付けられるケーシングと、
前記ケーシング内に収納されていて、前記ミラーアセンブリを前記シャフトに対して少なくとも使用位置と格納位置との間において電動回転させるモータおよび回転力伝達機構と、
前記ミラーアセンブリの前記使用位置と前記格納位置との間の電動回転の範囲を規制する電動回転範囲規制機構と、
前記回転力伝達機構に設けられていて、前記モータおよび前記回転力伝達機構の電動回転力では外れず、かつ、前記電動回転力以上の力で外れて前記ミラーアセンブリを前記シャフトに対して回転可能とするクラッチ機構と、
前記シャフトと前記ケーシングとの間に設けられていて、前記ミラーアセンブリが前記使用位置と前記格納位置との間を回転する範囲においては、前記シャフトと前記ケーシングとに対して非接触状態にあり、前記ミラーアセンブリが前記使用位置に位置するときには、前記シャフトと前記ケーシングとに対して接触状態にあって前記ミラーアセンブリを前記使用位置に保持する保持機構と、
を備える、
ことを特徴とする車両用アウトサイドミラー装置。
【請求項2】
前記ミラーアセンブリを緩衝のために前記使用位置から前記格納位置側にあるいは前記格納位置と反対側に回転させる際に、前記電動回転力以上でかつ前記クラッチ機構のクラッチ力以下の力で前記保持機構と前記ケーシングとの接触状態を解除させる緩衝機構を、備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用アウトサイドミラー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−75618(P2013−75618A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217036(P2011−217036)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】