説明

車両用インストルメントパネル

【課題】 インストルメントパネルのグローブボックスの開位置に回動したとき、グローブボックスの上端部が乗員の膝にぶつかることなく、グローブボックスの上端開口部を大きく開くことができるようにする。
【解決手段】 グローブボックス3の下端部に左右方向へ延びる枢軸32を設ける。インパネ本体2に前後方向へ延びる長孔27を設ける。この長孔27に枢軸32を回動可能に、かつ前後方向へ移動可能に挿入する。グローブボックス3には、枢軸32の軸線を中心する歯車部34を設ける。インパネ本体2には、前後方向に延びるラック5を設ける。このラック5に歯車部34を噛み合わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用インストルメントパネル、特にグローブボックスを有する車両用インストルメントパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用インストルメントパネルは、下端部に切欠き部(開口部)を有するインパネ本体と、このインパネ本体の切欠き部内に配置されたグローブボックスとを有している。グローブボックスの下端部は、インパネ本体に閉位置と開位置との間を回動可能に設けられている。グローブボックスは、閉位置に回動したときには切欠き部を閉じ、開位置に位置したときには、上端部が切欠き部から車内側に突出し、グローブボックスの上端開口部が車内に露出する。この上端開口部からグローブボックスに小物類を出し入れすることができる。
【0003】
【特許文献1】特開平6−278542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
グローブボックスに対する小物の出し入れを容易に行うことができるようにするためには、グローブボックスの閉位置から開位置までの回動角度を大きくすればよい。回動角度を大きくすれば、グローブボックスの上端開口部を車内側へ大きく突出させることができるからである。ところが、グローブボックスの回動角度を大きくすると、グローブボックスを開位置に回動させたときに、グローブボックスの上端部が乗員の膝に突き当たったり、グローブボックス内に収容された小物がグローブボックスの上端開口部から落ちてしまうことがある。このため、従来の車両用インストルメントパネルにおいては、グローブボックスの回動角度を大きくすることができなかった。その結果、グローブボックスの上端開口部を車内側に大きく突出させることができず、グローブボックスに小物類を容易に出し入れすることができないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記の問題を解決するために、開口部が形成されたインパネ本体と、このインパネ本体の開口部に出没可能に配置され、上記インパネ本体に下端部が左右方向に延びる回動軸線を中心として回動可能に支持されたグローブボックスとを備え、上記グローブボックスが、上記開口部を閉じた閉位置と、上端部が上記開口部から前方へ突出した開位置との間を回動可能である車両用インストルメントパネルにおいて、上記グローブボックスが上記インパネ本体に前後方向へ移動可能に設けられていることを特徴としている。
この場合、上記グローブボックスの下端部には、軸線を上記回動軸線と一致させた枢軸が設けられ、この枢軸が上記インパネ本体に回動可能に、かつ前後方向へ移動可能に支持されることにより、上記グローブボックスが上記インパネ本体に回動可能に、かつ前後方向へ移動可能に支持されていることが望ましい。
上記グローブボックスには、軸線を上記回動軸線と一致させた歯車が回動不能に設けられ、上記インパネ本体には、前後方向に延びるラックが固定され、上記グローブボックスがその回動に伴って前後方向へ移動するよう、上記歯車が上記ラックに噛み合わされていることが望ましい。
【発明の効果】
【0006】
上記特徴構成を有するこの発明によれば、グローブボックスの閉位置から開位置までの回動角度が一定であるとしたとき、グローブボックスを前方(車内側)へ移動させることにより、その移動距離の分だけグローブボックスの上端開口部を車内側に大きく突出させることができる。したがって、グローブボックスに小物類を容易に出し入れすることができる。しかも、グローブボックスの閉位置から開位置までの回動角度は、従来のものと同様の大きさであるから、グローブボックスの上端部が乗員の膝に突き当たったり、グローブボックス内の小物類が上端開口部から落下するようなことを未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1〜図3は、この発明の一実施の形態を示す。この実施の形態の車両用インストルメントパネル1は、インパネ本体2、グローブボックス3及びトレイ4を備えている。
【0008】
インパネ本体2は、上部2Aと下部2Bとを有している。上部2Aは、硬質樹脂からなる芯材21、この芯材21の前面(車内側を向く面)に設けられたクッション性を有するフォーム層22及びこのフォーム層22の前面に設けられた表皮23によって構成されている。下部2Bは、上部2Aの芯材21を下方に延ばして所定の形状に形成することによって構成されている。下部2Bには、貫通孔(開口部)24が形成されている。貫通孔24に代えて下方に開放された切欠き部が形成されることもある。貫通孔24の後方(車両の前方)には、車内の乗員が貫通孔24からエンジンルームの隔壁(図示せず)が見えないようにするための背板部25が形成されている。また、インパネ本体2の下部2Bの下端部には、図3に示すように、前後方向に延びる収容空間26が二つ形成されている。二つの収容空間26は、貫通孔24の下方の左右両側にそれぞれ配置されている。収容空間26は、車内側に開放されている。
【0009】
グローブボックス3は、硬質の樹脂からなるものであり、上方へ向かうにしたがって前後方向の幅が広がるように断面略三角形の箱状に形成されている。グローブボックス3の上端部には、開口部31が形成されている。グローブボックス3は、貫通孔24に図1に示す閉位置と図2に示す開位置との間を出没可能に挿入されている。グローブボックス3の閉位置及び開位置は、グローブボックス3とインパネ本体2との間に設けられた第1、第2ストッパ機構(いずれも図示せず)によって規制されている。グローブボックス3は、閉位置に位置しているときには、インパネ本体2の貫通孔24を閉じている。しかも、グローブボックス3の上端部が貫通孔24からインパネ本体2の後方(車両の前方)に入り込んでおり、開口部31がインパネ本体2によって遮蔽されている。グローブボックス3は、開位置に位置しているときには、上端部がインパネ本体2から車内側に突出し、上端開口部31が車内に開放されている。なお、グローブボックス3は、それとインパネ本体2との間に設けられたロック機構(図示せず)によって閉位置にロックされる一方、ロック機構を解除することによって閉位置から開位置側へ回動可能になる。
【0010】
グローブボックス3の下端部の左右両側部には、支持腕部32がそれぞれ設けられている。各支持腕部32には、左右方向へ向かって水平に延びる枢軸33が設けられている。枢軸33は、下部2Bに設けられた長孔27に回動可能に挿入されている。これにより、グローブボックス3の下端部が、インパネ本体2に枢軸32の軸線(回動軸線)Lを中心として回動可能に支持されている。しかも、長孔27は、前後方向へ向かってほぼ水平に延びており、枢軸33が前後方向へ移動可能に挿入されている。これにより、グローブボックス3がインパネ本体2に対して前後方向へ移動可能になっている。このように、枢軸33が長孔27に回動可能に、かつ前後方向へ移動可能に挿入されることにより、グローブボックス3がインパネ本体2に対して上下方向へ回動可能に、かつ前後方向へ移動可能になっているのである。
【0011】
支持腕部32の下端部は、収容空間26内に入り込んでいる。しかも、収容空間26前端開口部から車内側へ出没可能になっている。支持腕部32の下端部には、枢軸33の軸線Lを中心とする歯車部(歯車)34が形成されている。歯車部34は、支持腕部32と別体に形成し、支持腕部32に回動不能に設けてもよい。一方、収容空間26内には、ラック5が固定されている。このラック5は、前後方向に向かって水平に延びており、歯車部34と噛み合っている。したがって、グローブボックス3は、軸線Lを中心として回動すると、それと同時に前後方向へ移動する。すなわち、グローブボックス3は、図1及び図2の時計方向へ回動すると、それと同時に前方へ移動する。逆に、反時計方向へ回動すると、それと同時に後方へ移動する。このようにして、グローブボックス3が閉位置と開位置との間を回動するようになっている。なお、この実施の形態においては、グローブボックス3の閉位置及び開位置が第1、第2ストッパ機構によって定められているが、枢軸33が長孔27の後端部(車両の前後方向における前端部)に突き当たったときのグローブボックス3の位置を閉位置とし、枢軸33が長孔27の前端部に突き当たったときのグローブボックス3の位置を閉位置としてもよい。
【0012】
インパネ本体2の下端部の上記収容空間26,26間に位置する部位には、トレイ4が車内側へ出没可能に設けられている。トレイ4は、書類等の薄い小物類を収容するためのものであり、上下の高さの低く、上部が開放された箱状に形成されている。このトレイ4の後端部の左右両側部には、左右方向へ水平に突出する軸部41,41が設けられている。この軸部41は、インパネ本体2に形成された長孔28に回動可能に挿入されている。しかも、長孔28は、前後方向へ向かって水平に延びており、軸部41が長孔28に前後方向へ移動可能に挿入されている。これにより、トレイ4が図1に示す閉位置と図2に示す開位置との間を移動可能になっている。
【0013】
上記構成のインストルメントパネル1においては、グローブボックス3がインパネ本体2に対して回動可能であるのみにならず、前後方向へ移動可能であるから、グローブボックス3の回動範囲を一定とした場合、グローブボックス3が前後方向へ移動する分だけグローブボックス3の上端部を車内側に大きく突出させることができる。したがって、開口部31からグローブボックス3に小物類を容易に出し入れすることができる。しかも、グローブボックス3の閉位置と開位置との間の角度を大きくする必要がないので、グローブボックス3を開位置に回動させたときに、グローブボックス3の上端部が乗員の膝にぶつかったり、グローブボックス3内の小物類が開口部31から脱落することを未然に防止することができる。
【0014】
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、グローブボックス3に枢軸33を設け、インパネ本体2に長孔27を設けているが、グローブボックス3に長孔を設け、インパネ本体2に枢軸を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の一実施の形態を、グローブボックスを閉位置に位置させた状態で示す側断面図である。
【図2】同実施の形態を、グローブボックスを開位置に位置させた状態で示す側断面図である。
【図3】図1のX−X線に沿う拡大断面図である。
【符号の説明】
【0016】
L 軸線(回動軸線)
1 インストルメントパネル
2 インパネ本体
3 グローブボックス
5 ラック
24 貫通孔(開口部)
33 枢軸
34 歯車部(歯車)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部が形成されたインパネ本体と、このインパネ本体の開口部に出没可能に配置され、上記インパネ本体に下端部が左右方向に延びる回動軸線を中心として回動可能に支持されたグローブボックスとを備え、上記グローブボックスが、上記開口部を閉じた閉位置と、上端部が上記開口部から前方へ突出した開位置との間を回動可能である車両用インストルメントパネルにおいて、
上記グローブボックスが上記インパネ本体に前後方向へ移動可能に設けられていることを特徴とする車両用インストルメントパネル。
【請求項2】
上記グローブボックスの下端部には、軸線を上記回動軸線と一致させた枢軸が設けられ、この枢軸が上記インパネ本体に回動可能に、かつ前後方向へ移動可能に支持されることにより、上記グローブボックスが上記インパネ本体に回動可能に、かつ前後方向へ移動可能に支持されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用インストルメントパネル。
【請求項3】
上記グローブボックスには、軸線を上記回動軸線と一致させた歯車が回動不能に設けられ、上記インパネ本体には、前後方向に延びるラックが固定され、上記グローブボックスがその回動に伴って前後方向へ移動するよう、上記歯車が上記ラックに噛み合わされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用インストルメントパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−290459(P2007−290459A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−118670(P2006−118670)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【出願人】(000100366)しげる工業株式会社 (95)
【Fターム(参考)】