説明

車両用ウインドパネル

【課題】線条層の見栄え及び導電性の悪化を防止する。
【解決手段】透光性を有し窓部13を構成する板状パネル部7と、板状パネル部7の車内側の外周縁部に一体に形成された隠蔽層9とからなる板状パネル本体11の車内側の面に、導電性材料の粉末を主成分としかつバインダーを含むペーストを直接塗布することにより、導電性の線条層17aを板状パネル部7及び隠蔽層9の境界19と交差するように形成するとともに、一対の突起部23を、これら突起部23の互いに対向する内側面23aが境界19で線条層17aを両側から挟むように突設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に形成された窓用開口部に該開口部を閉塞するように取り付けられる車両用ウインドパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、樹脂製の板状パネル本体の車内側の面に、導電性材料を主成分とするペーストをノズルから塗布することにより、導電性の線条層を形成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−508630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1では、上記板状パネル本体が、透光性を有する板状パネル部と、該板状パネル部の車内側の外周縁部に一体に形成された隠蔽層とからなる場合に、上記板状パネル部と隠蔽層との境界に線状の段差が形成されるため、この段差に塗布されたペーストが上記境界に沿って滲んで広がり、線条層の見栄え及び導電性が悪化するおそれがある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、線条層の見栄え及び導電性の悪化を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、板状パネル部と隠蔽層との境界で線条層を両側から挟む一対の立壁を設けたことを特徴とする。
【0007】
具体的には、本発明は、車両に形成された窓用開口部に該開口部を閉塞するように取り付けられる車両用ウインドパネルを対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0008】
すなわち、請求項1に記載の発明は、透光性を有し窓部を構成する板状パネル部と、該板状パネル部の車内側の外周縁部に一体に形成された隠蔽層とからなる樹脂製の板状パネル本体を備え、上記板状パネル本体の車内側の面には、導電性材料の粉末を主成分としかつバインダーを含むペーストが直接塗布されることにより、導電性の線条層が上記板状パネル部及び隠蔽層の境界と交差するように形成されているとともに、一対の立壁が上記境界で上記線条層を両側から挟むように形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用ウインドパネルにおいて、上記板状パネル本体の車内側の面には、一対の突起部が上記境界で上記線条層を挟むように突設され、これら突起部の互いに対向する内側面が、上記立壁を構成していることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の車両用ウインドパネルにおいて、上記板状パネル本体の車内側の面には、凹溝部が上記境界で上記線条層を収容するように形成され、該凹溝部の互いに対向する側面が、上記立壁を構成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、一対の立壁が、板状パネル部及び隠蔽層の境界でペーストの広がりを両側から抑制するので、線条層の見栄え及び導電性の悪化が防止される。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、板状パネル本体の成形型の成形面に罫書き、ポンチ、その他の切削工具等で凹部を設けることにより突起部を形成できるので、板状パネル本体の製造が容易である。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、板状パネル本体の車内側の面より車内側に立壁が露出しないので、見栄えが良い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態1に係る車両用ウインドパネルが取り付けられた車両の後部を示す斜視図である。
【図2】図1の車両用ウインドパネルを車室内側から見た図である。
【図3】図2のA部を拡大して示す斜視図である。
【図4】図3のB部の拡大図である。
【図5】図4のC−C線における断面図である。
【図6】(a)は、板状パネル部を成形する工程を示す図4のD−D線における断面図であり、(b)は、隠蔽層を成形する工程を示す図6(a)相当図である。
【図7】実施形態2の図4相当図である。
【図8】実施形態2の図5相当図である。
【図9】(a)は、板状パネル部を成形する工程を示す図7のC−C線における断面図であり、(b)は、隠蔽層を成形する工程を示す図9(a)相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0016】
(実施形態1)
図1は、車両1の後部を示す。同図に示すように、車両1の後部には、略矩形状の窓用開口部3が形成され、該開口部3には、該開口部3を閉塞するように略矩形板状の本発明の実施形態1に係る車両用ウインドパネル5が取り付けられている。
【0017】
上記車両用ウインドパネル5は、図2及び図3にも示すように、樹脂製の板状パネル本体11を備え、該板状パネル本体11は、透光性樹脂材からなる略平坦な板状パネル部7と、該板状パネル部7の車内側の外周縁部に一体に形成された不透光性樹脂材からなる隠蔽層9とからなる。そして、上記隠蔽層9で囲まれる板状パネル部7の内側部分が窓部13を構成している。上記隠蔽層9の内周縁部には、該隠蔽層9の厚みが窓部13に向かって徐々に薄くなるように傾斜する傾斜面9aが全周に亘って形成されている。上記板状パネル部7及び隠蔽層9の境界19には、境界19の見切り線が明確になるように隠蔽層9による線状の段差が形成されている。
【0018】
また、車幅方向両側の隠蔽層9の車内側の面には、図2に示すように、バスバーの役割を果たす導電層15が上下方向に帯状に延びるように積層して形成されている。これら導電層15は、上記隠蔽層9の車内側の面に、銀等の導電性材料の粉末を主成分としかつバインダーとして熱硬化性樹脂を含むペーストが塗布されることにより形成される。そして、上記隠蔽層9及び板状パネル部7の車内側の面、すなわち板状パネル本体11の車内側の面には、図4及び図5にも示すように、導電層15よりも細い複数本の導電性の線条層17aが、略平行に車幅方向に延びて車幅方向両側の導電層15に連結し、かつ上記境界19と交差するように積層して形成されている。これら線条層17aは、防曇用熱線の役割を果たすものである。
【0019】
また、上記板状パネル本体11の上記線条層17aよりも上側の車内側の面には、該線条層17aと同じ幅を有する1本の導電性の線条層17bが、中程で上下方向に離間するように蛇行形成されている。この線条層17bの車内側から見て左側の端部は、上記板状パネル部7及び左側の隠蔽層9の境界19と交差している一方、該線条層17bの右側の端部は窓部13の中程に位置している。この線条層17bは、車両に搭載されたラジオ、テレビ等のアンテナの役割を果たすものである。上記線条層17a,17bは、図3に示すように、板状パネル本体11の車内側の面に、上記導電層15と共通のペーストがノズル21から直接塗布されることにより形成される。
【0020】
また、上記窓部13の車内側の面の外周縁部及び上記隠蔽層9の傾斜面9aの内周縁部(上記板状パネル本体11の車内側の面)には、板面を上記境界19に沿う方向に向けた側面視三角形状の複数対の板状突起部23が、それぞれ、上記境界19で上記線条層17a,17bを両側から挟むように突設されている。これら突起部23の互いに対向する内側面23aが、上記境界19で上記線条層17a,17bを両側から挟む立壁を構成している。これら突起部23は、上記隠蔽層9と共通の不透光性樹脂材からなる。
【0021】
次に、上述のように構成された車両用ウインドパネル5の製造方法について説明する。まず、板状パネル本体11は、次のようにして成形される。
【0022】
成形に際し、図6(a)及び図6(b)に示すように、成形型101と、透光性樹脂R1と、不透光性樹脂R2とを用意する。上記成形型101は、板状パネル部7の車外側の面及び側面を成形する固定型103と、板状パネル部7の車内側の面を成形する第1可動型105と、上記隠蔽層9の車内側の面を成形する第2可動型107とを備えている。上記第2可動型107の成形面には、上記突起部23に対応する凹部107aが、罫書き、ポンチ、その他の切削工具等により形成されている。また、上記透光性樹脂R1は、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリアリレート等の熱可塑性樹脂等からなり、上記不透光性樹脂R2は、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、PC/ABSアロイ(ポリカーボネート/アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)等からなる。
【0023】
まず、図6(a)に示すように、固定型103と第1可動型105とを型締めして第1キャビティ109を形成し、該第1キャビティ109内に上記透光性樹脂R1を射出充填することにより上記板状パネル部7を成形する。次に、第1可動型105を後退させ、その後、図6(b)に示すように、第2可動型107を進出させて固定型103と第2可動型107とを型締めし、第2可動型107と板状パネル部7との間に第2キャビティ111を形成し、該第2キャビティ111内に不透光性樹脂R2を射出充填する。そして、第2可動型107側で不透光性樹脂R2が完全に固まり、板状パネル部7の第2可動型107側に隠蔽層9が一体に形成されるとともに、複数対の突起部23が板状パネル部7と隠蔽層9とに跨るように形成された板状パネル本体11が成形される。その後、第2可動型107を後退させて板状パネル本体11を脱型する。なお、図6(b)において、図4のC−C線対応箇所における第2可動型107と不透光性樹脂R2との境界を破線で示す。
【0024】
そして、上述のように成形された板状パネル本体11の車内側の面に、銀等の導電性材料の粉末を主成分としかつバインダーとして熱硬化性樹脂を含むペーストをノズル21等から直接塗布することにより上記導電層15及び線条層17a,17bを形成する。このとき、突起部23の内側面23aが、板状パネル部7及び隠蔽層9の境界19で段差によるペーストの広がりを両側から抑制するので、線条層17a,17bの見栄え及び導電性の悪化が防止される。
【0025】
したがって、本実施形態1によれば、第2可動型107の成形面に罫書き、ポンチ、その他の切削工具等で凹部107aを設けることにより突起部23を形成できるので、板状パネル本体11の製造が容易である。
【0026】
(実施形態2)
図7及び図8は、本発明の実施形態2に係る車両用ウインドパネル5を示す。本実施形態2では、上記板状パネル本体11の車内側の面に、実施形態1の突起部23に代えて、上記境界19で上記線条層17a,17bを収容する複数の凹溝部29が形成されている。そして、各凹溝部29の互いに対向する側面29aが、上記境界19で上記線条層17a,17bを両側から挟んで上記立壁を構成している。
【0027】
各凹溝部29は、上記板状パネル部7の窓部13の車内側の面の外周縁部に形成されたパネル部側凹溝部25と、該パネル部側凹溝部25に連続するように上記隠蔽層9の傾斜面9aの内周縁部に形成された隠蔽層側凹溝部27とからなる。上記パネル部側凹溝部25の底面25aは、隠蔽層9側に向かって徐々に車外側に傾斜する第1傾斜底面25bと、該第1傾斜底面25bの外側端縁から隠蔽層9側に向かって徐々に車内側に傾斜する第2傾斜底面25cとで断面略への字状に形成されている。上記隠蔽層側凹溝部27の底面27aは、上記パネル部側凹溝部25の第2傾斜底面25cと面一をなし、その傾斜は上記傾斜面9aよりも大きくなっている。
【0028】
また、本実施形態2に係る車両用ウインドパネル5の板状パネル本体11は、図9(a)及び図9(b)に示すように、実施形態1の第1可動型105及び第2可動型107に代えて、その成形面に上記パネル部側凹溝部25に対応する凸部105aが形成された第1可動型105と、その成形面に上記パネル部側凹溝部25及び隠蔽層側凹溝部27(凹溝部29)に対応する凸部107bが形成された第2可動型107を使用することにより、上記実施形態1と同様の方法で成形できる。そして、上記実施形態1と同様に、ペーストの塗布により上記導電層15及び線条層17a,17bを形成できる。この際、凹溝部29の側面29aが、板状パネル部7及び隠蔽層9の境界19で段差によるペーストの広がりを両側から抑制するので、線条層17a,17bの見栄え及び導電性の悪化が防止される。なお、図9(a)において、図7のD−D線対応箇所における第1可動型105と透光性樹脂R1との境界を破線で示し、図9(b)において、図7のD−D線対応箇所における第2可動型107と板状パネル部7と不透光性樹脂R2との境界を破線で示す。
【0029】
そのほかの構成は実施形態1と同じであるので、同一の構成箇所には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0030】
したがって、本実施形態2によれば、板状パネル本体11の車内側の面より車内側に立壁が露出しないので、見栄えが良い。
【0031】
また、上記実施形態1,2において、導電層15及び線条層17a,17bを、金粉末、炭素粉末等、銀以外の導電性材料の粉末を主成分とするペーストで形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、車両に形成された窓用開口部に該開口部を閉塞するように取り付けられる車両用ウインドパネルとして有用である。
【符号の説明】
【0033】
1 車両
3 開口部
5 車両用ウインドパネル
7 板状パネル部
9 隠蔽層
11 板状パネル本体
13 窓部
17a,17b 線条層
19 境界
23 突起部
23a 内側面(立壁)
29 凹溝部
29a 側面(立壁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)に形成された窓用開口部(3)に該開口部(3)を閉塞するように取り付けられる車両用ウインドパネルであって、
透光性を有し窓部(13)を構成する板状パネル部(7)と、該板状パネル部(7)の車内側の外周縁部に一体に形成された隠蔽層(9)とからなる樹脂製の板状パネル本体(11)を備え、
上記板状パネル本体(11)の車内側の面には、導電性材料の粉末を主成分としかつバインダーを含むペーストが直接塗布されることにより、導電性の線条層(17a,17b)が上記板状パネル部(7)及び隠蔽層(9)の境界(19)と交差するように形成されているとともに、一対の立壁(23a,29a)が上記境界(19)で上記線条層(17a,17b)を両側から挟むように形成されていることを特徴とする車両用ウインドパネル。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用ウインドパネルにおいて、
上記板状パネル本体(11)の車内側の面には、一対の突起部(23)が上記境界(19)で上記線条層(17a,17b)を挟むように突設され、これら突起部(23)の互いに対向する内側面(23a)が、上記立壁を構成していることを特徴とする車両用ウインドパネル。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用ウインドパネルにおいて、
上記板状パネル本体(11)の車内側の面には、凹溝部(29)が上記境界(19)で上記線条層(17a,17b)を収容するように形成され、該凹溝部(29)の互いに対向する側面(29a)が、上記立壁を構成していることを特徴とする車両用ウインドパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−43465(P2013−43465A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180459(P2011−180459)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【Fターム(参考)】