説明

車両用ウエストモールディングおよびその製造方法

【課題】 取付け時のばらつきや、取付け時の外力などによって、緩衝リップが捲くれたり、巻き込まれることがなく、緩衝および隙間の隠蔽などの緩衝リップの機能を十分発揮でき、優れた外観を有する車両用ウエストモールディングおよび製造方法を提供する。
【解決手段】 モールディング本体11の外壁部11cの下端部から、ドアパネル2に弾接するように突出する緩衝リップ16として、組付時にドアパネル2に弾接するように、外壁部の下端部から突出するシールリップ部16aの先端部から係止リップ部16bが伸び、その先端に形成された係止部16cが、外壁部11cの下端部に形成された折返し部11eに係止された状態で、折返し部11eとシールリップ部16aおよび係止リップ部16bとの間に中空部8が形成される車両用ウエストモールディング1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアパネルの上端に取付けられるウエストモールディング、特にドアパネルと対向する部分に装飾リップを有するウエストモールディング、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のドアパネルの上端には、ドアガラスに対する摺接部材としてウエストモールディングが取付け配置されている。上記ウエストモールディングは、ドアパネル上端のフランジ部にクリップ等の取付手段により、あるいはそれらの取付手段を用いることなく取り付けられる装飾部品であり、断面略U字形に形成されたモールディング本体と、モールディング本体の車内側よりドアガラスに向けて斜め上向きに突出する弾性材からなるタッチリップを有する。また、モールディング本体の車外側の側端部先端(ドアパネルと対向する部分)には、緩衝リップが形成され、取付け状態においてドアパネルに弾接し、雨水や埃が侵入するのを防止するとともに取付け時のばらつきを吸収し、ドアパネルとウエストモールディングの隙間を隠すために設けられている。
【0003】
図4(a)は特許文献1(特開2004−82760)に示されたものと類似な従来のウエストモールディングの断面図である。ウエストモールディング1は、ドアパネル2の上部フランジ3を上から覆うように取り付けられるモールディング本体11からタッチリップ12a、12bがドアガラス4に当接するように伸びている。ドアパネル2は、外パネル2aと内パネル2bが上部で重ねられ、さらに外パネル2aが反対側に折り曲げられて重ねられ、全体が接合されてフランジ3を形成しており、折り曲げられた外パネル2aの先端が係止部7となっている。
【0004】
モールディング本体11は、フランジ3を上から覆う上壁部11aの車内側から内壁部11bが、また車外側から外壁部11cがそれぞれ下向きに伸び、横断面略倒立U字状の形状となっており、上壁部11a、内壁部11bおよび外壁部11cの全域にわたる横断面形状の金属板のロール成形品からなる芯材21と、その内壁部11bの車内側の全域および車外側の開口部5側に一体的に形成された硬質樹脂部22から構成されている。タッチリップ12a、12bは軟質樹脂、ゴム等の弾性材料から構成され、硬質樹脂部22からドアガラス4に当接するように伸びている。
【0005】
モールディング本体11の内壁部11bの先端部は芯材21および硬質樹脂部22の複合体として開口部5側に折れ曲がって突出して係止部11dとなり、フランジ3の係止部7と係合するように構成されている。モールディング本体11の内壁部11bの内部空間6側から、硬質樹脂からなる突起部13a、13bがフランジ3に当接するように伸びている。またモールディング本体11の上壁部11aと内壁部11bの境界部から車内側に装飾リップ14が伸びている。モールディング本体11の外壁部11cの内部空間6側から、係止リップ15がフランジ3に当接するように伸びている。外壁部11cの下端部から鉤状に折り返された折返し部11eから、片状の緩衝リップ16が外パネル2aの段部2c側に伸びている。上記の装飾リップ14、係止リップ15および緩衝リップ16は軟質樹脂、ゴム等の弾性材料からなる。
【0006】
上記のウエストモールディング1は、モールディング本体11の開口部5から内部空間6にドアパネル2のフランジ3を挿入するように下向きに押し込むと、フランジ3を上から覆うように組み付けられる。組付状態においては、モールディング本体11から突出する係止部11dは、フランジ3の係止部7に機械的に係合してモールディング1が脱離す
るのを防止する。また突起部13a、13bが内壁部11b側からフランジ3に当接し、車内側からの力を支持する。タッチリップ12a、12bは、摺動するドアガラス4に当接してシールする。緩衝リップ16は押圧により変形して外パネル2aの段部2cに当接し緩衝作用を行う。
【0007】
図4(b)は特許文献2(特開2004−322957)に示されたウエストモールディングの一部を示す断面図である。このウエストモールディング1では、緩衝リップ16はモールディング本体11の外壁部11cの下端部から、横断面形状S字状に伸びて緩衝性を高め、ウエストモールディング1とドアパネル2の隙間のばらつきが大きい場合でもこれを隠す機能を高めている。
【0008】
しかしながら上記図4(a)、(b)のウエストモールディング1では、緩衝リップ16は、いずれも自由端を有する片状に構成されているため、ウエストモールディング1の取付け時におけるばらつきや、取付け時の外力などによって、先端部が捲くれたり、あるいは巻き込んでしまい、緩衝および隙間の隠蔽などの機能を十分発揮できず、優れた外観が得られないなどの問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−82760
【特許文献2】特開2004−322957
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本願発明はこのような従来の問題点を鑑みてなされたものであり、モールディングの取付け時のばらつきや、取付け時の外力などによって、緩衝リップが捲くれたり、巻き込まれることがなく、緩衝および隙間の隠蔽などの緩衝リップの機能を十分発揮でき、優れた外観を有する車両用ウエストモールディング、およびその効率のよい製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は次の車両用ウエストモールディングおよびその製造方法である。
(1) ドアパネルの上部フランジに組み付けられるウエストモールディングであって、
前記上部フランジを上から覆う上壁部の車内側から内壁部が、また車外側から外壁部がそれぞれ下向きに伸びるモールディング本体と、
前記モールディング本体の外壁部の下端部から、前記ドアパネルの外パネルに弾接するように突出する緩衝リップとを含み、
前記緩衝リップは、
組付時に前記ドアパネルに弾接するように、前記外壁部の下端部から突出するシールリップ部と、
前記シールリップ部の先端部から、前記外壁部の下端部に形成された折返し部に係止されるように伸びる係止リップ部とを有し、
前記係止リップ部が前記折返し部に係止された状態では、折返し部とシールリップ部および係止リップ部との間に中空部が形成される
ことを特徴とする車両用ウエストモールディング。
(2)緩衝リップのシールリップ部は、前記外壁部の下端部から突出した状態から弾性変形し、その先端部が前記外壁部の下端部に形成された折返し部に係止されている上記(1)記載の車両用ウエストモールディング。
(3)緩衝リップの係止リップ部は、折返し部の内側に係止される係止部を有する上記
(1)または(2)記載の車両用ウエストモールディング。
(4) ドアパネルの上部フランジに組み付けられるウエストモールディングを製造する方法であって、
上壁部から内壁部および外壁部がそれぞれ伸びるモールディング本体に、外壁部の下端部から突出するシールリップ部、およびその先端部に係止リップ部を有する緩衝リップを形成する押出成形工程と、
押出成形工程から得られる押出成形材の緩衝リップのシールリップ部を弾性変形させ、係止リップ部をモールディング本体の外壁部の下端部に形成された折返し部に係止させる整形工程とを含む
ことを特徴とする車両用ウエストモールディングの製造方法。
(5) 押出成形工程は、金属板をロール成形した芯材を押出成形機に供給し、溶融樹脂を押し出して樹脂部および緩衝リップを形成するようにされた上記(4)記載の方法。
(6) 整形工程は、押出成形材を整形機を通して引き出す際、整形機に設けたガイド材により、緩衝リップのシールリップ部を弾性変形させ、係止リップ部を外壁部の下端部に形成された折返し部に係止させるようにされた上記(4)または(5)記載の方法。
【0012】
本発明の車両用ウエストモールディングは、車両のドアパネルの上端に取付けられるウエストモールディングであり、ドアパネル上端のフランジ部にクリップ等の取付手段により、あるいはそれらの取付手段を用いることなく取り付けられる装飾部品である。本発明の車両用ウエストモールディングは、ドアパネルのフランジ部を上から覆うように形成されたモールディング本体、およびドアパネルと対向する部分に設けられた緩衝リップを有するが、この他にモールディング本体の車内側よりドアガラスに向けて突出する弾性材からなるタッチリップ、ならびにモールディング本体をドアパネルに固定する固定手段などを有していても良い。
【0013】
本発明の車両用ウエストモールディングが取り付けられる車両のドアパネルは、外パネルと内パネルが上部で重ねられて上部フランジが形成されたものである。そしてウエストモールディングは、上記の上部フランジの上端を上から覆うように組み付けられるモールディング本体および緩衝リップを有する。モールディング本体は、上部フランジを上から覆う上壁部の車内側から内壁部が、また車外側から外壁部がそれぞれ下向きに伸びる構成となっている。モールディング本体は樹脂、金属等の硬質材料からなる長尺材により形成されるのが好ましく、この長尺材にリップ、緩衝部等の軟質樹脂部が一体化していても良い。
【0014】
緩衝リップは、組付状態でドアパネルの外パネルに弾接するように、モールディング本体の外壁部の下端部から突出する構成となっている。この緩衝リップは、ウエストモールディング組付時にドアパネルの外パネルに弾接するように、外壁部の下端部から突出するシールリップ部と、このシールリップ部の先端部から、モールディング本体の外壁部の下端部に形成された折返し部に係止されるように伸びる係止リップ部とを有し、係止リップ部が外壁部の折返し部に係止された状態では、折返し部とシールリップ部および係止リップ部との間に中空部が形成されるように構成されている。
【0015】
緩衝リップはポリ塩化ビニル、熱可塑性エラストマー、ゴム等の弾性および形状保持性を有する軟質樹脂により形成されるのが好ましい。これにより係止リップ部が折返し部に係止された状態において、シールリップ部および係止リップ部が、弾性および形状保持性により、折返し部との間に中空部が形成される。緩衝リップのシールリップ部は、モールディング本体の外壁部の下端部から突出した状態から弾性変形し、その先端部が前記外壁部の下端部に形成された折返し部に係止されるように構成すると、中空部を小さくしても緩衝および隠蔽機能のよい緩衝リップが得られるので好ましい。また緩衝リップの係止リップ部は、外壁部の折返し部の内側に係止される係止部を有するように構成すると、簡単
な構造で容易に折返し部に係止させることができ、これにより大きい係止力が得られ、中空部を安定に維持して緩衝リップの機能を高くできるので好ましい。
【0016】
本発明のウエストモールディングの製造方法では、押出成形工程において、上壁部から内壁部および外壁部がそれぞれ伸びるモールディング本体に、外壁部の下端部から突出するシールリップ部、およびその先端部に係止リップ部を有する緩衝リップを押出成形により形成し、押出成形工程から得られる押出成形材の緩衝リップを、整形工程においてシールリップ部を弾性変形させるとともに、係止リップ部をモールディング本体の外壁部の下端部に形成された折返し部に係止させることにより、ウエストモールディングを製造する。
【0017】
押出成形工程では、金属板をロール成形した芯材を押出成形機に供給し、溶融樹脂を押し出して樹脂部および緩衝リップを形成するのが好ましい。この場合、ロール成形機と押出成形機を連結し、金属板をロール成形機に供給し芯材を形成し、この芯材を押出成形機に供給して緩衝リップを形成することができる。また整形工程では、押出成形材を整形機を通して引き出す際、整形機に設けたガイド材により、緩衝リップのシールリップ部を弾性変形させ、係止リップ部を外壁部の下端部に形成された折返し部に係止させるのが好ましい。この場合、押出成形機と整形機を連結し、押出成形機から得られる押出成形材を整形機に通し、シールリップ部の弾性変形と、係止リップ部の係止を行うことができる。
【0018】
こうして製造された車両用ウエストモールディングは、車両のドアパネルの外パネルと内パネルが上部で重ねられて形成される上部フランジに組み付けられるが、そのとき上部フランジをモールディング本体の上壁部が上から覆い、内壁部が車内側、外壁部が車外側にそれぞれ下向きに伸びるように組み付ける。組付状態では、緩衝リップはモールディング本体の外壁部の下端部から伸びて、ドアパネルの外パネルに弾接する。このとき緩衝リップのシールリップ部は、外壁部の下端部から突出してドアパネルの外パネルに弾接し、その先端部から係止リップ部が伸びて、外壁部の下端部に形成された折返し部に係止され、この状態で折返し部とシールリップ部および係止リップ部との間に中空部が形成される。
【0019】
車両用ウエストモールディングの組付状態では、緩衝リップのシールリップ部がドアパネルの外パネルに弾接し、その先端部から伸びる係止リップ部が折返し部に係止された状態で、折返し部とシールリップ部および係止リップ部との間に中空部が形成されているので、緩衝リップはモールディング本体の外壁部の下端部から伸びるシールリップ部が、ドアパネルの外パネルに弾接する。このとき緩衝リップの弾性変形により中空部が変形し、モールディング本体の外壁部の下端部とドアパネルの外パネル間の隙間のばらつきを吸収する。そして緩衝リップの基端部のシールリップ部は外壁部の下端部に固定され、その先端部から伸びる係止リップ部が折返し部に固定されるため、組み付け時の外力などによって緩衝リップが捲くれたり、巻き込まれることがなく、優れた外観を保つ。
【発明の効果】
【0020】
本発明の車両用ウエストモールディングは、車両のドアパネルの上部フランジを上から覆うモールディング本体の外壁部の下端部から、ドアパネルの外パネルに弾接するように突出する緩衝リップが、ドアパネルに弾接するように、外壁部の下端部から突出するシールリップ部と、シールリップ部の先端部から、外壁部の下端部に形成された折返し部に係止されるように伸びる係止リップ部とを有し、係止リップ部が前記折返し部に係止された状態では、折返し部とシールリップ部および係止リップ部との間に中空部が形成されるので、モールディングの取付け時のばらつきや、取付け時の外力などによって、緩衝リップが捲くれたり、巻き込まれることがなく、緩衝および隙間の隠蔽などの緩衝リップの機能を十分発揮でき、優れた外観が得られる。
【0021】
本発明の車両用ウエストモールディングの製造方法は、押出成形工程でモールディング本体に、外壁部の下端部から突出するシールリップ部、およびその先端部に係止リップ部を有する緩衝リップを形成し、整形工程で押出成形材の緩衝リップのシールリップ部を弾性変形させ、係止リップ部をモールディング本体の外壁部の下端部に形成された折返し部に係止させるようにしたので、上記の車両用ウエストモールディングを効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1(a)は実施形態のウエストモールディングの断面図、(b)は整形前の断面図である。
【図2】図2は実施形態のウエストモールディングの製造方法を示すフロー図である。
【図3】図3(a)は図2のA−A矢視図、(b)はB−B矢視図、(c)はC−C矢視図、(d)はD−D矢視図である。
【図4】図4(a)は従来のウエストモールディングの断面図、(b)は他の従来のウエストモールディングの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面により説明する。図1(a)は実施形態のウエストモールディングの組み付け前の断面図を示し、(b)はその整形前の断面図を示しており、各図中、図4と同一または相当部分には同一符号を付している。
【0024】
図1のウエストモールディングの基本的な構成は図4のものとほぼ同様の構成となっている。すなわちウエストモールディング1は、ドアパネル2の上部フランジ3を上から覆うように取り付けられるモールディング本体11からタッチリップ12a、12bがドアガラス4に当接するように伸びている。ドアパネル2は、外パネル2aと内パネル2bが上部で重ねられ、さらに外パネル2aが反対側に折り曲げられて重ねられ、全体が接合されてフランジ3を形成しており、折り曲げられた外パネル2aの先端が係止部7となっている。
【0025】
モールディング本体11は、フランジ3を上から覆う上壁部11aの車内側から内壁部11bが、また車外側から外壁部11cがそれぞれ下向きに伸び、横断面略倒立U字状の形状となっており、上壁部11a、内壁部11bおよび外壁部11cの全域にわたる横断面形状の金属板のロール成形品からなる芯材21と、芯材21の外周部の全域および内壁部11bの車外側の開口部5側に一体的に形成された硬質樹脂部22から構成されている。タッチリップ12a、12bは軟質樹脂、ゴム等の弾性材料から構成され、硬質樹脂部22からドアガラス4に当接するように伸びている。
【0026】
モールディング本体11の内壁部11bの先端部は芯材21および硬質樹脂部22の複合体として開口部5側に折れ曲がって突出して係止部11dとなり、フランジ3の係止部7と係合するように構成されている。モールディング本体11の内壁部11bの内部空間6側から、硬質樹脂からなる突起部13a、13bがフランジ3に当接するように伸びている。またモールディング本体11の上壁部11aと内壁部11bの境界部から車内側に装飾リップ14が伸びている。モールディング本体11の外壁部11cの内部空間6側から、係止リップ15がフランジ3に当接するように伸びている。外壁部11cの下端部から鉤状に折り返された折返し部11eが形成されており、外壁部11cの下端部から突出
する緩衝リップ16が外パネル2aの段部2cに弾接するように伸びている。上記の装飾リップ14、係止リップ15および緩衝リップ16は軟質樹脂、ゴム等の弾性材料からなる。
【0027】
緩衝リップ16は、ウエストモールディング1組付時にドアパネル2の外パネル2aに弾接するように、外壁部11cの下端部から突出するシールリップ部16aと、このシールリップ部16aの先端部から、モールディング本体11の外壁部11cの下端部に形成された折返し部11eに係止されるように湾曲状に伸びる係止リップ部16bとを有する。係止リップ部16bの先端部には、外壁部11cの折返し部11eに係止される係止部16cが折れ曲がり状に形成されている。係止リップ部16bはシールリップ部16aより肉厚に形成されており、係止部16cは折返し部11eにはめ込まれて係止される構造と成っている。係止部16cは折返し部11eに係止された状態では、折返し部11eとシールリップ部16aおよび係止リップ部16bとの間に中空部8が形成されるように構成されている。
【0028】
緩衝リップ16は、整形前の状態が図1(b)に示すように、シールリップ部16aおよび係止リップ部16bがモールディング本体11の外壁部11cの下端部から突出する状態で成形され、この状態から弾性変形させ、図1(a)に示すように、係止リップ部16bの係止部16cを折返し部11eに係止させて形成されている。係止部16cが係止された状態において、シールリップ部16aおよび係止リップ部16bがその弾性および形状保持性により、折返し部11eとの間に中空部8が形成され、ドアパネル2の外パネル2aの段部2c押圧し緩衝作用を行うように構成されている。
【0029】
図2は実施形態のウエストモールディングの製造方法を示すフロー図であり、31はアンコイラー、32はロール成形機、33は押出成形機、34は冷却水槽、35は整形機、36は引取機、37は切断機、38は送出機である。図2の製造方法では、アンコイラー31から金属板23を送り出し、ロール成形工程として、ロール成形機32でロール成形を行い、上壁部11aから内壁部11bおよび外壁部11cがそれぞれ伸びる断面形状の芯材21を形成する。
【0030】
このように成形された芯材21を押出成形工程として押出成形機33に供給し、溶融樹脂を押し出して押出成形を行い、上壁部11a、内壁部11bおよび外壁部11cに硬質樹脂部22、タッチリップ12a、12b、突起部13a、13b、装飾リップ14、係止リップ15および緩衝リップ16を有する押出成形材25を形成する。このとき緩衝リップ16は、図1(b)に示すように、シールリップ部16aおよび係止リップ部16bがモールディング本体11の外壁部11cの下端部から突出する整形前の状態で成形する。押出成形材25は冷却水槽34を通過することにより冷却され、整形前の状態で硬化する。
【0031】
こうして得られる押出成形材25を整形工程として整形機35に通し、緩衝リップ16の整形としてシールリップ部16aの弾性変形と、係止リップ部16bの係止を行う。押出成形材25は整形前の状態では図3(a)に示すように、図1(b)の状態であるが、整形機35を通過する間に、B−B位置では図3(b)に示すように、横方向に伸びるガイド材41によりシールリップ部16aを上方向に弾性変形させる。C−C位置では図3(c)に示すように、折返し部11e側の斜め上方向に伸びるガイド材42によりシールリップ部16aを斜め上方向に弾性変形させる。D−D位置では図3(d)に示すように、上方向に伸びた先端が折返し部11e側の横方向に伸びるガイド材43aにより係止リップ部16bを下方向に弾性変形させ、係止部16cを折返し部11eにはめ込んで係止させる。このとき横方向に伸びるガイド材43bおよび斜め上方向に伸びるガイド材43cによりシールリップ部16aを保持して、弾性変形状態を維持する。
【0032】
こうして得られる押出成形材25は、図3(d)に示す断面形状に整形されるため、図1(a)の整形後と同じ断面形状が得られる。この押出成形材25は引取機36により引き取られ、切断機37で一定長さに切断されて、ウエストモールディング1が製造され、送出機38から取出される。
【0033】
こうして製造された車両用ウエストモールディング1は、図4のものと同様に、車両のドアパネル2の外パネル2aと内パネル2bが上部で重ねられて形成される上部フランジ3に組み付けられるが、そのとき上部フランジ3をモールディング本体11の上壁部11aが上から覆い、内壁部11bが車内側、外壁部11cが車外側にそれぞれ下向きに伸びるように組み付ける。組付状態では、緩衝リップ16はモールディング本体11の外壁部11cの下端部から伸びて、シールリップ部16aがドアパネル2の外パネル2aに弾接する。このとき緩衝リップ16のシールリップ部16aは、外壁部11cの下端部から突出してドアパネル2の外パネル2aに弾接し、その先端部から伸びる係止リップ部16bの係止部16cが、外壁部11cの下端部に形成された折返し部11eにはめ込まれて係止され、この状態で折返し部11eとシールリップ部16aおよび係止リップ部16bとの間に中空部8が形成される。
【0034】
車両用ウエストモールディング1の組付状態では、上記のように、緩衝リップ16のシールリップ部16aがドアパネル2の外パネル2aに弾接し、その先端部から伸びる係止リップ部16bが折返し部11eに係止された状態で、折返し部11eとシールリップ部16aおよび係止リップ部16bとの間に中空部8が形成されているので、緩衝リップ16はモールディング本体1の外壁部11cの下端部から伸びるシールリップ部16aが、ドアパネル2の外パネル2aに弾接する。このとき緩衝リップ16の弾性変形により中空部8が変形し、モールディング本体11の外壁部11cの下端部と、ドアパネル2の外パネル2a間の隙間のばらつきを吸収する。そして緩衝リップ16の基端部のシールリップ部16aは外壁部11cの下端部に固定され、その先端部から伸びる係止リップ部16bが折返し部11eに固定されるため、組み付け時の外力などによって緩衝リップ16が捲くれたり、巻き込まれることがなく、優れた外観と機能が維持される。
【産業上の利用可能性】
【0035】
車両のドアパネルの上端に、ドアガラスに対する摺接部材として取付けられるウエストモールディング、特にモールディング本体のドアパネルと対向する部分に装飾リップが形成されたウエストモールディング、およびその製造方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1: ウエストモールディング、2: ドアパネル、2a: 外パネル、2b: 内パネル、2c: 段部、3: 上部フランジ、4: ドアガラス、5: 開口部、6: 内部空間、7: 係止部、8: 中空部、11: モールディング本体、11a: 上壁部、11b: 内壁部、11c: 外壁部、11d: 係止部、11e: 折返し部、12a,12b: タッチリップ、13a,13b: 突起部、14: 装飾リップ、15: 係止リップ、16: 緩衝リップ、16a: シールリップ部、16b: 係止リップ部、16c: 係止部、21: 芯材、22: 硬質樹脂部、23: 金属板、25: 押出成形材、31: アンコイラー、32: ロール成形機、33: 押出成形機、34:
冷却水槽、35: 整形機、36: 引取機、37: 切断機、38: 送出機、41,42,43a,43b,43c: ガイド材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアパネルの上部フランジに組み付けられるウエストモールディングであって、
前記上部フランジを上から覆う上壁部の車内側から内壁部が、また車外側から外壁部がそれぞれ下向きに伸びるモールディング本体と、
前記モールディング本体の外壁部の下端部から、前記ドアパネルの外パネルに弾接するように突出する緩衝リップとを含み、
前記緩衝リップは、
組付時に前記ドアパネルに弾接するように、前記外壁部の下端部から突出するシールリップ部と、
前記シールリップ部の先端部から、前記外壁部の下端部に形成された折返し部に係止されるように伸びる係止リップ部とを有し、
前記係止リップ部が前記折返し部に係止された状態では、折返し部とシールリップ部および係止リップ部との間に中空部が形成される
ことを特徴とする車両用ウエストモールディング。
【請求項2】
緩衝リップのシールリップ部は、前記外壁部の下端部から突出した状態から弾性変形し、その先端部が前記外壁部の下端部に形成された折返し部に係止されている請求項1記載の車両用ウエストモールディング。
【請求項3】
緩衝リップの係止リップ部は、折返し部の内側に係止される係止部を有する請求項1または2記載の車両用ウエストモールディング。
【請求項4】
ドアパネルの上部フランジに組み付けられるウエストモールディングを製造する方法であって、
上壁部から内壁部および外壁部がそれぞれ伸びるモールディング本体に、外壁部の下端部から突出するシールリップ部、およびその先端部に係止リップ部を有する緩衝リップを形成する押出成形工程と、
押出成形工程から得られる押出成形材の緩衝リップのシールリップ部を弾性変形させ、係止リップ部をモールディング本体の外壁部の下端部に形成された折返し部に係止させる整形工程とを含む
ことを特徴とする車両用ウエストモールディングの製造方法。
【請求項5】
押出成形工程は、金属板をロール成形した芯材を押出成形機に供給し、溶融樹脂を押し出して樹脂部および緩衝リップを形成するようにされた請求項4記載の方法。
【請求項6】
整形工程は、押出成形材を整形機を通して引き出す際、整形機に設けたガイド材により、緩衝リップのシールリップ部を弾性変形させ、係止リップ部を外壁部の下端部に形成された折返し部に係止させるようにされた請求項4または5記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−158246(P2012−158246A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19150(P2011−19150)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(504136889)株式会社ファルテック (57)
【Fターム(参考)】