説明

車両用エアガイド

【課題】 エンジン側の熱気が車両側方からラジエータコアサポートアッパにおけるアッパセンタ部7コ字状断面の内部を介して熱交換器の前方へ吹き返すのを防止できる車両用エアガイド10の提供。
【解決手段】 熱交換器19のキャリアとしてのラジエータコアサポート1におけるラジエータコアサポートサイド6に車両前方へ向けて装着される車両用エアガイド10であって、ラジエータコアサポートアッパ2のアッパセンタ部7を、車両下方に開口したコ字状断面に形成し、車両用エアガイド10に、車両上方へ突出した板状の第1舌片部13を設けると共に、該第1舌片部13を、アッパセンタ部7の端部7bにおけるコ字状断面の内部を仕切るように配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器のキャリアとしてのラジエータサポートのラジエータサポートサイドに車両前方へ向けて装着される車両用エアガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱交換器のキャリアとしてのラジエータコアサポートのラジエータコアサポートサイドに車両前方へ向けて装着される車両用エアガイドの技術が公知になっている(特許文献1、2参照)。
このような車両用エアガイドは、熱交換器の前方に車両走行風をスムーズに導くための導風板としての役目と、エンジン側の熱気が車両側方から熱交換器の前方へ吹き返すのを防止する防風板としての役目を果たしている。
【特許文献1】特開2003−306047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、図10、11に示すように、近年のラジエータコアサポートアッパ02のアッパサイド部07は、車両下方に開口したコ字状断面を成して車幅方向に延設されているため、エンジン側の熱気X(図中破線矢印で示す)が車両側方から上記コ字状断面の内部を介して熱交換器の前方へ勢い良く吹き返してしまい、熱交換器019の冷却性能を低下させる虞があった。
また、上記熱気の一部は、コ字状断面の内部を車幅方向内側に流通しながら熱交換器019の全幅に亘ってその前面に吹き返し、結果、車両用エアガイド010で整流化させた走行風またはモータファンによる強制風を乱流化させて熱交換器の冷却性能を低下させる虞があった。
【0004】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、エンジン側の熱気が車両側方からアッパセンタ部のコ字状断面の内部を介して熱交換器の前方へ吹き返すのを防止できる車両用エアガイドを提供することである。
また、上記目的を達成しつつ、ラジエータコアサポートの車両前方からの装着を可能にした車両用エアガイドの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1記載の発明では、熱交換器のキャリアとしてのラジエータコアサポートにおけるラジエータコアサポートサイドに車両前方へ向けて装着される車両用エアガイドであって、前記ラジエータコアサポートアッパのアッパセンタ部を、車両下方に開口したコ字状断面に形成し、前記車両用エアガイドに、車両上方へ突出した板状の舌片部を設けると共に、該舌片部を、アッパセンタ部の端部におけるコ字状断面の内部を仕切るように配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明にあっては、ラジエータコアサポートアッパのアッパセンタ部を、車両下方に開口したコ字状断面に形成し、前記車両用エアガイドに、車両上方へ突出した板状の舌片部を設けると共に、該舌片部を、アッパセンタ部の端部におけるコ字状断面の内部を仕切るように配置したため、エンジン側の熱気が車両側方からラジエータコアサポートアッパにおけるアッパセンタ部のコ字状断面の内部を介して熱交換器の前方へ吹き返すのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
以下、実施例1を説明する。
図1は本発明の実施例1の車両用エアガイドが採用されたラジエータコアサポートを示す全体分解斜視図、図2は同全体斜視図、図3は図2のS3−S3線における断面図、図4は本実施例1の車両用エアガイドを示す斜視図、図5〜9は車両用エアガイドの装着を説明する図である。
【0009】
先ず、全体構成を説明する。
図1〜3に示すように、本実施例1の車両用エアガイドが採用されたラジエータコアサポート1は、車幅方向に延びるラジエータコアサポートアッパ2と、このラジエータコアサポートアッパ2と並行するラジエータコアサポートロア3と、これらラジエータコアサポートアッパ2とラジエータコアサポートロア3の中央部同士を結合するフードロックステイ4と、ラジエータコアサポートアッパ2とラジエータコアサポートロア3の両端部同士を結合するラジエータコアサポートサイド5,6を備え、全体が金属製である。
【0010】
ラジエータコアサポートアッパ2は、車両下方に開口したコ字状断面を成して車幅方向に延設されたアッパセンタ部7と、このアッパセンタ部7の端部7a,7bに結合され、且つ、車両下方に開口したコ字状断面を成して車両斜め後方へ延設されたアッパサイド部8,9で構成されている。
アッパセンタ部7のコ字状断面における前方側壁部7cは、後方側壁部7dに比べて幾分低く形成されている。
アッパサイド部8,9は、各々の基端部がアッパセンタ部7の対応する端部7a,7bに重ねられた状態でボルトB1,B2により固定されている。
【0011】
そして、ラジエータコアサポートサイド6には、図4に示す車両用エアガイド10が車両前方に向けて装着されている。
車両用エアガイド10は、全体が樹脂製でラジエータコアサポートサイド6の側方を塞ぐように立体的な形状を成して縦長に形成される他、その外周縁は車幅方向外側に屈折したフランジ部10aによって全体の必要剛性が確保されている。
車両用エアガイド10の上部には、上方へ突出した板状の舌片部11が設けられると共に、この舌片部11は、下方に切欠された開口部12を挟んだ第1舌片部13と第2舌片部14で構成されている。
さらに、舌片部11には水平方向に延びる薄肉の第1屈折溝15と、開口部12から下方に延びる薄肉の第2屈折溝16が形成されている。
車両用エアガイド10の中央部は、図示を省略するバンパアーマチュアの貫通を許容する開口部が形成され、その下部は車幅方向内側に屈折して図示を省略するオイルクーラとの接触を回避するためのクランク部10bが形成されている。
【0012】
また、車両用エアガイド10の第2舌片部14の車幅方向内側には、車両用エアガイド10と一体的に形成されたクリップ18が突設されている。
また、車両用エアガイド10の車幅方向内側には、クリップ18と同様のクリップ(図示せず)が複数の箇所に設けられ、これらのクリップがラジエータコアサポートサイド6の対応する固定孔(図示せず)に貫通されて固定されることにより、車両用エアガイド10がラジエータコアサポートサイド6に固定されている。
そして、図3に示すように、車両用エアガイド10の第1舌片部13はアッパセンタ部7の端部7bにおけるコ字状断面の内部を仕切るように配置され、これにより、アッパセンタ部7の端部7bが略塞がれた状態になっている。
【0013】
次に、作用を説明する。
このように構成された車両用エアガイド10をラジエータコアサポート1に対して装着するには、先ず、図5に示すように、車両用エアガイド10における舌片部11を第1屈折溝15で車幅方向内側に直角に折り曲げて傾倒させた状態とし、車両前方から図中矢印方向に所定の位置まで移動させる。
この際、舌片部11を傾倒させた状態にすることで、アッパサイド部9の前方側壁部7cとの接触を回避できる。
【0014】
次に、図6、7に示すように、舌片部11を図中矢印方向に起立させた状態として元の状態に戻すことにより、アッパセンタ部7の端部におけるコ字状断面の内部を仕切るように配置し、結果、第1舌片部13でアッパセンタ部7の端部を略塞いだ状態とする。
この際、開口部12によってアッパサイド部9の前方側壁部7cとの接触を回避できる。
なお、図3に示すように、本実施例1の第1舌片部13は、アッパセンタ部7のコ字状断面の内壁(前方側壁部7c、後方側壁部7d、上方側壁部7e)との間に所定の隙間が形成されているが、車両用エアガイド10の組付け性や、アッパセンタ部7及び車両用エアガイド10の製品精度、組付け精度を考慮しなければ、第1舌片部13が上記内壁に完全に密着するようにしても良い。
この際、ボルトB1との接触は開口部12と同様の開口部を形成することによって回避できる。
【0015】
次に、図8に示すように、第2舌片部14を第2屈折溝16で図中矢印方向に直角に折り曲げてクリップ18をアッパセンタ部7の固定孔7gに挿入して固定する。
【0016】
最後に、クリップ18以外の車両用エアガイド10のクリップ(図示せず)をラジエータコアサポートサイド6の固定孔(図示せず)に挿入して固定することにより、車両用エアガイド10の装着を終了する。
【0017】
また、ラジエータコアサポート1には、ヘッドランプ、バンパステイ、バンパアーマチュア、モータファン等の周辺部材が搭載される他、図3に示すように、ラジエータコアサポートアッパ2のアッパサイド部9から幾分後方へオフセットした位置に、図外のブラケットやラジエータコアサポートロア3のマウント部3a,3b(図1参照)を介してラジエータ19aやコンデンサ19bで構成される熱交換器19が搭載され、これらの熱交換器19を含む周辺部材を車両に搭載する際のキャリアとして機能する。
また、車両に搭載された熱交換器19は、ラジエータコアサポート1の中央部に形成された開口部O1,O2(図1参照)を介して各々の前面から車両走行風または図示を省略するモータファンによる強制風を取り入れて冷却媒体の熱交換を行う。
【0018】
この際、車両用エアガイド10は、車両走行風またはモータファンによる強制風を整流化させてスムーズに熱交換器19の前方へ導く導風板として機能する。
また、エンジン側の熱気が車両側方から熱交換器19の前方へ吹き返すのを防止する防風板として機能する。
ここで、熱交換器19の冷却性能を考慮した場合、車両用エアガイド10の各部の組付け誤差等によって生じる僅かな隙間は無視することができる。
【0019】
しかしながら、エンジン側の熱気が、アッパサイド部9における車両下方に開口したコ字状断面の内部を介して車両側方から熱交換器19の前方へ勢い良く吹き返した場合、熱交換器19の冷却性能を著しく低下させる虞があった。
【0020】
また、熱気の一部は、上記コ字状断面の内部を車幅方向内側に流通しながら熱交換器19の全幅に亘ってその前方に吹き返し、結果、車両用エアガイド10で整流化させた走行風またはモータファンによる強制風を乱流化させて熱交換器19の冷却性能を低下させてしまう。
【0021】
しかしながら、前述したように、本実施例1の車両用エアガイド10にあっては、車両用エアガイド10の第1舌片部13を、アッパセンタ部7の端部7bにおけるコ字状断面の内部を仕切るように配置したため、図3、7に示すように、車両側方から進入しようとする熱気Y(図中破線矢印で示す)を第1舌片部13で防止することができる。
なお、第1舌片部13と上方側側壁との隙間W1を介して進入する熱気に関しては、車両用エアガイド10の組付け寸法誤差によって生じる隙間と同様に無視できる。
【0022】
次に、効果を説明する。
以上、説明したように、本実施例1の車両用エアガイド10にあっては、熱交換器のキャリアとしてのラジエータコアサポート1におけるラジエータコアサポートサイド6に車両前方へ向けて装着される車両用エアガイド10であって、ラジエータコアサポートアッパ2のアッパセンタ部7を、車両下方に開口したコ字状断面に形成し、車両用エアガイド10に、車両上方へ突出した板状の第1舌片部13を設けると共に、該第1舌片部13を、アッパセンタ部7の端部7bにおけるコ字状断面の内部を仕切るように配置したため、エンジン側の熱気Yが車両側方からラジエータコアサポートアッパ2におけるアッパセンタ部7のコ字状断面の内部を介して熱交換器19の前方へ吹き返すのを防止できる。
【0023】
また、第1舌片部13を車幅方向に傾倒可能な構成とし、車両用エアガイド10を車両前方からラジエータコアサポートサイド6に装着する際に、第1舌片部13を傾倒させてアッパセンタ部7との接触を回避した後、該第1舌片部13を起立させることによりアッパセンタ部7の端部におけるコ字状断面の内部を仕切るように配置したため、車両用エアガイド10をラジエータコアサポート1の車両前方から装着できる。
【0024】
以上、本実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
例えば、車両用エアガイド10の形状、材質については適宜設定できる他、ラジエータコアサポート1との固定はクリップ18等の締結手段を使用せずに、嵌挿固定または樹脂による凹凸結合を採用しても良い。
【0025】
また、本実施例1では車両用エアガイド10をラジエータコアサポートサイド6に設けて、エンジン側の熱気が車両側方から吹き返すのを防止する場合について説明したが、車両用エアガイド10をラジエータコアサポートサイド5に設ける場合や、ラジエータコアサポートサイド5,6の両方に設ける場合も当然考えられ、エンジン側の熱気の要因となる熱源の位置や熱気の流れによって適宜設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例1の車両用エアガイドが採用されたラジエータコアサポートを示す全体分解斜視図である。
【図2】本発明の実施例1の車両用エアガイドが採用されたラジエータコアサポートを示す全体斜視図である。
【図3】図2のS3−S3線における断面図であり、アッパサイド部の内部を説明する図である。
【図4】本実施例1の車両用エアガイドを示す斜視図である。
【図5】車両用エアガイドの装着を説明する図である。
【図6】車両用エアガイドの装着を説明する図である。
【図7】図3のS7−S7線における断面図であり、車両用エアガイドの装着を説明する図(アッパサイド部、ラジエータコアサポートサイドは二点鎖線で図示)である。
【図8】車両用エアガイドの装着を説明する図である。
【図9】車両用エアガイドの装着を説明する図である。
【図10】従来の車両用エアガイドを説明する図である。
【図11】従来の車両用エアガイドを説明する図である。
【符号の説明】
【0027】
B1、B2 ボルト
O1、O2 開口部
1 ラジエータコアサポート
2 ラジエータコアサポートアッパ
3 ラジエータコアサポートロア
3a、3b マウント部
4 フードロックステイ
5、6 ラジエータコアサポートサイド
7 アッパセンタ部
7a、7b 端部
7c 前方側壁部
7d 後方側壁部
7e 上方側壁部
7g 固定孔
8、9 アッパサイド部
10 車両用エアガイド
10a フランジ部
10b クランク部
11 舌片部
12 開口部
13 第1舌片部
14 第2舌片部
15 第1屈折溝
16 第2屈折溝
18 クリップ
19 熱交換器
19a ラジエータ
19b コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器のキャリアとしてのラジエータコアサポートにおけるラジエータコアサポートサイドに車両前方へ向けて装着される車両用エアガイドであって、
前記ラジエータコアサポートアッパのアッパセンタ部を、車両下方に開口したコ字状断面に形成し、
前記車両用エアガイドに、車両上方へ突出した板状の舌片部を設けると共に、該舌片部を、アッパセンタ部の端部におけるコ字状断面の内部を仕切るように配置したことを特徴とする車両用エアガイド。
【請求項2】
請求項1記載の車両用エアガイドにおいて、
前記舌片部を車幅方向に傾倒可能な構成とし、
前記車両用エアガイドを車両前方からラジエータコアサポートサイドに装着する際に、舌片部を傾倒させてアッパセンタ部との接触を回避した後、該舌片部を起立させることによりアッパセンタ部の端部におけるコ字状断面の内部を仕切るように配置したことを特徴とする車両用エアガイド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2006−199250(P2006−199250A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−16082(P2005−16082)
【出願日】平成17年1月24日(2005.1.24)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】