説明

車両用エアガイド

【課題】 車両用エアガイドの凹となる入り角部において交わるように配置されるシール部同士の近接した端部間に形成される隙間を埋めてシール性能を向上できる車両用エアガイドの提供。
【解決手段】 車両用エアガイド2,3の凹となる入り角部20aにおいて交わるように配置される二辺から一方側へ傾斜した状態で突出する薄肉の第1シール部21(第2シール部22)と第2シール部22(第3シール部23)をそれぞれ形成し、両シール部21,22(両シール部22,23)の近接した端部に、他方側へ屈折して突出した一対の屈折部24,24を形成し、両シール部21,22(両シール部22,23)を周辺部材に一方側へ傾斜させた状態で当接させてシールすると同時に、屈折部24,24同士を互いに当接させることにより、両シール部21,22(両シール部22,23)の近接した端部間を埋めるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用エアガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、導風機能とエンジンルームの熱風吹き返し防止機能を目的として、ラジエータコアサポートのラジエータコアサポートサイドから車両前方側へ張り出すようにエアガイドを設けられる車両用エアガイドの技術が公知になっている(特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特開2003−104235号公報
【特許文献2】特開2005−104212号公報
【特許文献3】特開2003−306047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の車両用エアガイドでは、エアガイドと周辺部材との間に両部材の部品単体精度及び組み付け精度の誤差を考慮したクリアランスを確保する必要があり、各部に隙間が生じてしまうという問題点があった。
【0004】
そこで、車両用エアガイドの周辺部材との当接部位に一方側へ傾斜した状態で突出する薄肉のシール部を形成して、シール性能を向上させることが考えられるが、この場合、車両用エアガイドの凹となる入り角部において交わるように配置されるシール部同士の近接した端部間に隙間が生じてしまうという問題点があった。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、車両用エアガイドの凹となる入り角部において交わるように配置されるシール部同士の近接した端部間に形成される隙間を埋めてシール性能を向上できる車両用エアガイドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1記載の発明では、ラジエータコアサポートのラジエータコアサポートサイドから車両前方側へ張り出すように設けられる車両用エアガイドにおいて、前記車両用エアガイドの凹となる入り角部において交わるように配置される二辺から一方側へ傾斜した状態で突出する薄肉のシール部をそれぞれ形成し、前記両シール部の近接した端部に、他方側へ屈折して突出した一対の屈折部を形成し、前記両シール部を周辺部材に一方側へ傾斜させた状態で当接させてシールすると同時に、前記屈折部同士を互いに当接させることにより、両シール部の近接した端部間を埋めるように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の請求項1記載の発明にあっては、ラジエータコアサポートのラジエータコアサポートサイドから車両前方側へ張り出すように設けられる車両用エアガイドにおいて、前記車両用エアガイドの凹となる入り角部において交わるように配置される二辺から一方側へ傾斜した状態で突出する薄肉のシール部をそれぞれ形成し、前記両シール部の近接した端部に、他方側へ屈折して突出した一対の屈折部を形成し、前記両シール部を周辺部材に一方側へ傾斜させた状態で当接させてシールすると同時に、前記屈折部同士を互いに当接させることにより、両シール部の近接した端部間を埋めるように構成したため、周辺部材とのシール性能を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0009】
以下、実施例1を説明する。
なお、車両前後方向及び車幅方向を前後方向及び左右方向と称して説明する。
【0010】
図1は本発明の実施例1の車両用エアガイドが採用されたラジエータコアサポートと車両用エアガイドの分解斜視図、図2は同斜視図、図3は車両用エアガイドの前方斜視図、図4は車両用エアガイドの後方斜視図である。
【0011】
図5は図3の矢印A付近における拡大図、図6は同側面図、図7は図6の矢視Bにおける拡大図、図8は図5のS8−S8線における断面図である。
【0012】
図9はラジエータコアサポート、車両用エアガイド、バンパアーマチュア、バンパフェイシアの配置を説明する図(一部省略)、図10、11は本実施例1の屈折部の作用を説明する図である。
【0013】
先ず、全体構成を説明する。
図1、2に示すように、本実施例1の発明では、金属製のラジエータコアサポート1と、樹脂製の車両用エアガイド2,3が備えられている。
【0014】
ラジエータコアサポート1は、左右方向に延在するラジエータコアサポートアッパ4と、このラジエータコアサポートアッパ4と並行するラジエータコアサポートロア5と、ラジエータコアサポートアッパ4とラジエータコアサポートロア5の両端部同士を結合するラジエータコアサポートサイド6,7と、ラジエータコアサポートアッパ4とラジエータコアサポートロア5の中央部同士を結合するフードロックステイ8で構成されている。
なお、ラジエータコアサポート1は全体を樹脂製としても良いし、部位に応じて樹脂製部分と金属製部分で構成しても良い。
【0015】
また、ラジエータコアサポートアッパ4は、後方へ開口した略コ字状断面のラジエータコアサポートアッパセンタ4aと、このラジエータコアサポートアッパセンタ4aの両端部から斜め後方へ延設され、下方へ開口した略コ字状断面のラジエータコアサポートアッパサイド4b,4cで構成されている。
また、ラジエータコアサポートサイド6,7には、サイドメンバ取付部6a,7aが設けられると共に、各サイドメンバ取付部6a,7aの後面には図外のサイドメンバが締結される一方、前面には図外のバンパステイを介して後述するバンパアーマチュア10(図9参照)が締結される。
【0016】
さらに、サイドメンバ取付部6a,7aの側方には図外のヘッドランプが固定されるヘッドランプステイ6b,7bが形成される他、各ヘッドランプステイ6b,7bはそれぞれ対応するラジエータコアサポートアッパサイド4b,4cに結合部材6c,7cを介して結合されている。
【0017】
そして、ラジエータコアサポートサイド6,7には固定穴6d,7dがそれぞれ上下に離間して形成されている。
その他、本実施例1のラジエータコアサポート1は、ラジエータコアサポートサイド6,7の中途部がフードロックステイ8と結合された補強部材9で結合されているが、この限りではない。
【0018】
以下、車両用エアガイド2,3は、左右対称形状であるため、ここでは車両用エアガイド2について詳述する。
図3、4に示すように、車両用エアガイド2は、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)等を素材とする比較的柔軟性を持たせた樹脂を用いて上下方向に伸びた板状に一体的に形成される他、その本体2aの後端部内側には固定穴2bを備える固定部2cが上下に離間して設けられている。
【0019】
また、車両用エアガイド2の前方側外周縁部には、外側へ傾斜した状態で突出する薄肉のシール部20が形成される他、その中途部には凹となる入り角部20aの1つである貫通部2dが形成されている。
貫通部2dのシール部20は、外側に傾斜した第1シール部21〜第3シール部23で構成されている。
【0020】
そして、第1シール部21と第2シール部22の近接した端部と、第2シール部22と第3シール部23の近接した端部にそれぞれ後述する一対の屈折部24,24が形成されている。
【0021】
図5〜8に示すように、一対の屈折部24,24は、第2シール部22(第1シール部21)と第3シール部23(第2シール部22)に対して約45°の角度を有して互いに近接した状態で対向配置される他、それぞれ対応する第2シール部22(第1シール部21)と第3シール部23(第2シール部22)の近接した端部から内側へ屈折して突出した形状に形成されている。
なお、各屈折部24,24の厚み、屈折角度、高さ等の寸法は適宜設定できる。
【0022】
その他、図3、4に示すように、貫通部2d以外の車両用エアガイド2の凹となる入り角部20aのシール部20にも貫通部2dと同様の構造が採用される一方、車両用エアガイド2の凸となる出角部20bには、シール部20の各部にスリット25が形成されている。
【0023】
次に、作用を説明する。
図1、2に示すように、このように構成された車両用エアガイド2,3は、各固定部2cの固定穴2bからラジエータコアサポートサイド6,7のそれぞれ対応する固定穴6d,7dにクリップ等の締結手段11が挿入されて固定されることにより、ラジエータコアサポート1に固定される。
【0024】
また、ラジエータコアサポート1の後方には、開口部Oに望んだ状態で図外の車両用熱交換器のコア部が配置される他、図9に示すように、車両用エアガイド2,3の前端側周縁部に沿ってバンパフェイシア12が配置されると共に、それぞれの貫通部2dを貫通した状態で略矩形断面のバンパーマチュア10が配置される。
【0025】
この際、図9に示すように、バンパアーマチュア10の上面10a、後面10b、下面10cがそれぞれ対応する第1シール部21〜第3シール部23を外側へ傾斜させた状態でそれぞれ当接する。
【0026】
また、図10、11に示すように、第1シール部21〜第3シール部23が外側へ変形しながら傾斜するのに伴って、第2シール部22(第1シール部21)と第3シール部23(第2シール部22)の近接した端部に形成された一対の屈折部24,24同士も変形しながら傾斜して互いに当接することにより、両シール部22,23(両シール部21,22)の近接した端部間の隙間を埋めることができ、バンパアーマチュア10の角部10d(図9参照)付近における隙間を完全に無くしてシール性能を向上できる。
【0027】
また、貫通部2d以外の車両用エアガイド2の凹となる入り角部20aにおいても貫通部2dと同様の作用効果を得ることができ、バンパフェイシア12とのシール性性能を向上できる。
なお、出角部20b付近においては、シール部20がスリット25を埋めるように変形するため、隙間が生じる虞がない。
【0028】
このように構成された車両用エアガイド2,3は、前方からの車両走行風を車両用熱交換器のコア部の前面へ導く導風機能を果たすと同時に、エンジン側の熱気が側方から車両用熱交換器のコア部の前面へ吹き返すのを防止する機能を果たし、エアガイドとして機能する。
【0029】
次に、効果を説明する。
以上、説明したように、本実施例1の車両用エアガイドにあっては、ラジエータコアサポート1のラジエータコアサポートサイド6,7から車両前方側へ張り出すように設けられる車両用エアガイド2,3において、車両用エアガイド2,3の凹となる入り角部20aにおいて交わるように配置される二辺から一方側へ傾斜した状態で突出する薄肉の第1シール部21(第2シール部22)と第2シール部22(第3シール部23)をそれぞれ形成し、両シール部21,22(両シール部22,23)の近接した端部に、他方側へ屈折して突出した一対の屈折部24,24を形成し、両シール部21,22(両シール部22,23)を周辺部材に一方側へ傾斜させた状態で当接させてシールすると同時に、屈折部24,24同士を互いに当接させることにより、両シール部21,22(両シール部22,23)の近接した端部間を埋めるように構成したため、周辺部材(バンパアーマチュア10)とのシール性能を向上できる。
【0030】
また、周辺部材がバンパアーマチュア10である場合には、バンパアーマチュア10の角部10dと車両用エアガイド2との隙間を完全に無くしてシール性能を向上でき、好適となる。
【0031】
以上、本実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
例えば、屈折部24,24の詳細な部位の形状や寸法等は適宜設定できる。
また、入り角部20aと出角部20bの形成位置や形成数等は、適宜設定できる。
【0032】
さらに、シール部20を内側へ傾斜した状態で設けることが考えられるが、この場合、車両用エアガイド2,3間を狭くする結果となるため、導風性能からシール部20を外側へ傾斜させる方が好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例1の車両用エアガイドが採用されたラジエータコアサポートと車両用エアガイドの分解斜視図である。
【図2】本発明の実施例1の車両用エアガイドが採用されたラジエータコアサポートと車両用エアガイドの斜視図である。
【図3】車両用エアガイドの前方斜視図である。
【図4】車両用エアガイドの後方斜視図である。
【図5】図3の矢印A付近における拡大図である。
【図6】図3の矢印A付近における側面図である。
【図7】図6の矢視Bにおける拡大図である。
【図8】図5のS8−S8線における断面図である。
【図9】ラジエータコアサポート、車両用エアガイド、バンパアーマチュア、バンパフェイシアの配置を説明する図(一部省略)である。
【図10】本実施例1の屈折部の作用を説明する図である。
【図11】本実施例1の屈折部の作用を説明する図である。
【符号の説明】
【0034】
O 空間
1 ラジエータコアサポート
2、3 車両用エアガイド
2a 本体
2b 固定穴
2c 固定部
2d 貫通部
4 ラジエータコアサポートアッパ
4a ラジエータコアサポートアッパセンタ
4b、4c ラジエータコアサポートアッパサイド
5 ラジエータコアサポートロア
6、7 ラジエータコアサポートサイド
6a、7a サイドメンバ取付部
6b、7b ヘッドランプステイ
6c、7c 結合部
6d、7d 固定穴
8 フードロックステイ
9 補強部材
10 バンパアーマチュア
10a 上面
10b 後面
10c 下面
10d 角部
11 締結手段
12 バンパフェイシア
20 シール部
20a 入り角部
20b 出角部
21 第1シール部
22 第2シール部
23 第3シール部
24 屈折部
25 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジエータコアサポートのラジエータコアサポートサイドから車両前方側へ張り出すように設けられる車両用エアガイドにおいて、
前記車両用エアガイドの凹となる入り角部において交わるように配置される二辺から一方側へ傾斜した状態で突出する薄肉のシール部をそれぞれ形成し、
前記両シール部の近接した端部に、他方側へ屈折して突出した一対の屈折部を形成し、
前記両シール部を周辺部材に一方側へ傾斜させた状態で当接させてシールすると同時に、前記屈折部同士を互いに当接させることにより、両シール部の近接した端部間を埋めるように構成したことを特徴とする車両用エアガイド。
【請求項2】
請求項1記載の車両用エアガイドにおいて、
前記周辺部材をバンパアーマチュアとしたことを特徴とする車両用エアガイド。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−18833(P2008−18833A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−192041(P2006−192041)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】