説明

車両用エアダクト

【課題】部品点数の増加や製造コストの上昇を招くことなく、ゴム状弾性体製のサイドダクトメンバが、十分な取付強度のもとに、走行風の風圧等によって弾性変形することを回避すること。
【解決手段】サイドダクトメンバ66の上端部をバルクヘッドアッパフレーム32に取り付けられているアッパダクトメンバ62に固定連結し、下端部を足払いプレート35を介してバルクヘッドロアフレーム34に固定連結し、上下両端間をバルクヘッドサイドスティ36に固定接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用エアダクトに関し、特に、自動車のフロントグリルよりラジエータへ走行風を導くエアダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、車体前部に配置されたフロントグリルやフロントバンパフェイスに形成された空気取入開口より走行風をラジエータに効率よく導くよう、フロントグリルやフロントバンパフェイスとラジエータとの間に導風路を構成するエアダクト等による導風構造が設けられているものがある(たとえば、特許文献1)。
【0003】
このようなエアダクトには、ラジエータの車幅方向両側に接続されて導風路の車幅方向両側を画定する板状のサイドダクトメンバを含み、防振性、シール性の観点から、サイドダクトメンバが合成ゴム等のゴム状弾性体により構成されたものがある(たとえば、特許文献2)。
【0004】
しかし、サイドダクトメンバの全体がゴム板により構成されていると、走行風の風圧によってサイドダクトメンバが弾性変形し、十分な形状保持が行われないために所要の取付強度を確保することが難しい。このため、従来のものは、硬質樹脂や金属による骨格部材をゴム板に嵌め込んだり、インサート成形することにより、機械的な補強を行い、サイドダクトメンバが十分な形状保持性能を有するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−306047号公報
【特許文献2】特開2007−15487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のゴム状弾性体製のサイドダクトメンバは、ゴム板に硬質樹脂製や金属製の骨格部材を嵌め込んだり、インサート成形する必要があるため、部品点数の増加や製造コストの上昇を招く。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、部品点数の増加や製造コストの上昇を招くことなく、ゴム状弾性体製のサイドダクトメンバが、十分な取付強度のもとに、走行風の風圧等によって弾性変形することを回避することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による車両用エアダクト取付構造は、車体前部の骨格をなすフロントバルクヘッド(30)より車体前方に配置されたラジエータ(46)に、当該ラジエータ(46)より車体前方に配置されたフロントグリル(12)の空気取入開口(24)より走行風を導く導風路(68)を構成する車両用エアダクトであって、前記導風路(68)の上部を画定する硬質材料製のアッパダクトメンバ(62)と、前記アッパダクトメンバ(62)の車幅方向両側に配置されて前記導風路(68)の車幅方向両側を画定するゴム状弾性体製の左右のサイドダクトメンバ(66)とを含み、前記アッパダクトメンバ(66)は前記フロントバルクヘッド(30)のアッパフレーム(32)に固定され、前記サイドダクトメンバ(66)は、車体後方部を前記フロントバルクヘッド(30)のサイドスティ(36)に固定され、上端部を前記アッパダクトメンバ(62)に固定され、下端部を前記フロントバルクヘッド(30)のロアフレーム(34)に取り付けられて車体前方に延出した延出プレート(35)に固定されている。
【0009】
この構成によれば、サイドダクトメンバ(66)は、上端部をフロントバルクヘッド(30)のアッパフレーム(32)に取り付けられているアッパダクトメンバ(62)に固定連結され、下端部を足払いプレート(35)を介してバルクヘッド(30)のロアフレーム(34)に固定連結され、上下両端間をバルクヘッド(30)のサイドスティ(36)に固定接合されるので、十分な取付強度が得られ、サイドダクトメンバ66が走行風の風圧や走行振動等によって大きく弾性変形することが回避される。
【0010】
本発明による車両用エアダクト取付構造は、好ましくは、更に、サイドダクトメンバ(66)は下端部に一体形成された廻り止めリブ(66E)を有し、前記廻り止めリブ(66E)が前記延出プレート(35)に形成された係合孔に嵌合している。
【0011】
この構成によれば、サイドダクトメンバ(66)の下部が延出プレート(35)に廻り止め結合され、更に、サイドダクトメンバ(66)が走行風の風圧や走行振動等によって大きく弾性変形し難くなる。
【0012】
本発明による車両用エアダクト取付構造は、好ましくは、更に、前記サイドダクトメンバは、前記ラジエータ(46)の側縁部が嵌合する凹部(66F)を有する。
【0013】
この構成によれば、ラジエータ(46)の側縁部が凹部(66F)に嵌り込むことにより、ラジエータ(46)とサイドダクトメンバ(66)との間の空気漏れやクーラコンデンサ後方より車体前側への熱風の廻り込みが防止される。凹部(66F)は、ビードとしても作用し、サイドダクトメンバ(66)の剛性を高める効果も生じる。
【0014】
本発明による車両用エアダクト取付構造は、好ましくは、更に、前記サイドダクトメンバ(66)は、前記ラジエータ(46)の側縁部との間の間隙を塞ぐシール片部(66H)を一体形成されている。
【0015】
この構成によれば、シール片部(66H)によってサイドダクトメンバ(66)とラジエータ(46)との間の気密シールが行われ、クーラコンデンサ(50)とサイドダクトメンバ(66)との間の空気漏れやクーラコンデンサ後方より車体前側への熱風の廻り込みが、より一層確実に防止される。シール片部(66H)は、リブとして、サイドダクトメンバ(66)の剛性を高める効果も生じる。
【0016】
本発明による車両用エアダクト取付構造は、好ましくは、更に、前記サイドダクトメンバ(66)は、当該サイドダクトメンバ(66)より車幅方向外方に配置されている機関吸気系の吸気取入口(5)に走行風を導く導風ガイド斜面部(66S)を有する。
【0017】
この構成によれば、導風ガイド斜面部(66S)による導風作用によって吸気効率の向上が図られ、導風ガイド斜面部(66S)も前方延出部(66)の剛性を高める効果を生じる。
【0018】
本発明による車両用エアダクト取付構造は、好ましくは、更に、前記サイドダクトメンバ(66)は、前記ラジエータ(46)と前記フロントグリル(12)との間を車体幅方向に延在するフロントバンパビーム(44)より前記フロントグリル(12)側に延出した部分(66K)を含んでいて前記フロントバンパビーム(44)が貫通する開口(66L)と、外周縁部と前記開口(66L)とを接続するバンパビーム挿入用フレームスリット(66M)とを有する。
【0019】
この構成によれば、サイドダクトメンバ(66)の取り付けは、バンパビーム挿入用フレームスリット(66M)にフロントバンパビーム(44)を通してフロントバンパビーム(44)を開口(66L)に位置させることができるので、フロントバンパビーム(44)を取り外すことなくサイドダクトメンバ(66)の取り付け、交換を行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明による車両用エアダクトによれば、サイドダクトメンバは、上端部をバルクヘッドのロアッパフレームに取り付けられているアッパダクトメンバに固定連結され、下端部を足払いプレートを介してバルクヘッドのロアフレームに固定連結され、上下両端間をバルクヘッドのサイドスティに固定接合されるので、十分な取付強度が得られ、サイドダクトメンバ66が走行風の風圧や走行振動等によって大きく弾性変形することが回避される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による車両用エアダクトを自動車に適用した一つの実施形態を示す正面図。
【図2】本実施形態による車両用エアダクトを含む車体前部の側断面図。
【図3】本実施形態による車両用エアダクトを含む車体前部を、ラジエータ及びクーラコンデンサを取り外した状態で示す車体前方よりの斜視図。
【図4】本実施形態による車両用エアダクトのアッパダクトメンバの取付部を拡大して示す斜視図。
【図5】本実施形態による車両用エアダクトのアッパダクトメンバの取付部を拡大して示す側断面図。
【図6】本実施形態による車両用エアダクトを車体後方より見た斜視図。
【図7】本実施形態による車両用エアダクトを車体前方より見た斜視図。
【図8】本実施形態による車両用エアダクトのサイドダクトを車体後方より見上げた斜視図。
【図9】本実施形態による車両用エアダクトのサイドダクトの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明による車両用エアダクトを自動車に適用した一つの実施形態を、図1〜図9を参照して説明する。なお、以下の説明において、材料についての記載がない部品は鋼板製のものである。
【0023】
自動車は、図1に示されているように、正面下部にフロントバンパフェンス10を有する。フロントバンパフェンス10の上部にはフロントグリル12が、フロントグリル12の左右両側にはヘッドランプ14が各々設けられている。フロントバンパフェンス10及びフロントグリル12の車体後方側に、左右のサイドフェンダ18等と協働してエンジンルーム16(図2参照)が画定される。エンジンルーム16の上方部には開閉可能なフロントフード20が配置されている。
【0024】
フロントバンパフェンス10とフロントグリル12の各々に、これらを車体前後方向に貫通した空気取入開口22、24が形成されている。
【0025】
図2、図3に示されているように、車体前部には、車体前部の骨格をなす構造体として、車体上部を車体幅方向に水平に延在するバルクヘッドアッパフレーム32と、車体下部を車体幅方向に水平に延在するバルクヘッドロアフレーム34と、バルクヘッドアッパフレーム32とバルクヘッドロアフレーム34の左右両端を各々接続する垂直配置の左右のバルクヘッドサイドスティ36とにより構成された枠状のフロントバルクヘッド組立体30が設けられている。フロントバルクヘッド組立体30は、左右両側に接合されたバルクヘッドアッパサイドフレーム38によって図示されていない左右のホイールハウスアッパダクトメンバに接続されている。
【0026】
バルクヘッドアッパフレーム32の前部には解除レバー33を含むフードロック解除機構31が取り付けられている。バルクヘッドロアフレーム34の左右部分には、基端部をバルクヘッドロアフレーム34に固定されてバルクヘッドロアフレーム34より車体前方に略水平に延出した足払いプレート(延出プレート)35が取り付けられている。
【0027】
車体前部には、車体下部を車体前後方向に延在する左右のフロントサイドフレーム40が設けられている。フロントサイドフレーム40の前端部には、各々、フロントバンパエクステンションメンバ42が車体前方へ突出するように接合されている。フロントバンパエクステンションメンバ42は、前突荷重に対してフロントサイドフレーム40より低強度のものであり、前部衝突におけるクラシュ部材をなす。
【0028】
左右のフロントバンパエクステンションメンバ42の前端部には車体幅方向に略水平に延在するフロントバンパビーム44の左右両端近傍が接合されている。フロントバンパビーム44に前述のフロントバンパフェンス10が取り付けられている。なお、フロントグリル12は、後述するグリルスティ70やフロントバンパフェンス10、ヘッドランプ14の取付部等に接続され、これらを介して車体より支持されている。
【0029】
フロントバルクヘッド組立体30の車体前方にはエンジン冷却系のラジエータ46とクーラコンデンサ50とが配置されている。ラジエータ46とクーラコンデンサ50は、上部を左右一対のマウントブラケット48によってバルクヘッドアッパフレーム32に固定され、下部をバルクヘッドロアフレーム34に固定され、フロントバルクヘッド組立体30に取り付けられている。
【0030】
ラジエータ46とクーラコンデンサ50とは、大型の四角形状の熱交換器であり、ともにフロントバルクヘッド組立体30より車体前方、且つフロントバンパビーム44より車体後方にあって、互いに車体前後方向に所定空隙を設けて平行に存在する。なお、クーラコンデンサ50はラジエータ46より車体前方にある。ラジエータ46の車体後方側には、電動冷却ファン52とファンシュラウド54が設けられている。
【0031】
フロントバルクヘッド組立体30の車体前側には、フロントバンパフェンス10及びフロントグリル12の空気取入開口22、24よりラジエータ46とクーラコンデンサ50へ走行風を導く導風路68を構成するエアダクト組立体60が設けられている。
【0032】
エアダクト組立体60は、図3、図7、図8に示されているように、車体幅方向に水平に延在してエアダクトの上部を構成するアッパダクトメンバ62と、アッパダクトメンバ62の車幅方向両側に配置された左右のサイドダクトメンバ66により門形に構成されている。
【0033】
アッパダクトメンバ62は硬質樹脂による成形品である。アッパダクトメンバ62は下側に導風路68を画定する導風壁部62Aと、導風壁部62Aの前端部より上方且つ車体後方に折り返して上部に意匠面を形成する意匠面部62Bとを一体成形されている。これにより、意匠面部62Bを別部材で構成する必要がなくなり、部品点数、組付工数が削減される。また、意匠面部62Bは、ラジエータ46の上方における冷却風の車体前方への廻り込みを阻止し、冷却風廻り込みによるラジエータ46、クーラコンデンサ50の冷却効率の低下を防止する。
【0034】
導風壁部62Aは、図5に示されているように、車体前方の側からクーララジエータ50の上方を越えた車体後方位置まで延在しており、その延在端部に、フロントグリル12の空気取入開口24からラジエータ46側への飛石の侵入を阻止する格子部63が一体成形されている。
【0035】
図3〜図5に示されているように、バルクヘッドアッパフレーム32の車幅方向の中央部にはグリルスティ70が取り付けられている。グリルスティ70は、硬質樹脂による成形品あるいは軽金属鋳造品であり、車幅方向に間隔をおいて車体前後方向に延在する溝形断面形状の2本のビーム部72と、ビーム部72の前方側において2本のビーム部72間に延在して上面がアッパダクトメンバ62の意匠面部62Bの意匠面に連なる意匠面をなす意匠面部74とを含み、2本のビーム部72の基端部72Aを各々ボルト77あるいは図示されていないクリップによってバルクヘッドアッパフレーム32の上部に固定されている。
【0036】
基端部72Aは、図5に示されているように、鉤形(逆L字形)の側面形状を有してバルクヘッドアッパフレーム32の上面部と前面部とに接合している。これにより、アッパダクトメンバ62は、前倒れ(前端が下方に落ちる傾斜)に対する取付強度が増す。
【0037】
2本のビーム部72は、各々、断面形状が溝形断面形状で、しかも内側にリブ72Bを有することにより強い曲げ強度を備えており、強い曲げ強度をもって基端部72Aよりラジエータ46の上方を越えて車体前方に延出している。この2本のビーム部72の前端部の左右両側にダクト支持座部76が突出形成されている。この2個のダクト支持座部76は、締結具であるボルト78あるいは図示されていないクリップによってアッパダクトメンバ62の車幅方向中央部の2箇所を下側から固定支持している。なお、図7において、符号61は、ボルト78を挿通されるボルト通し孔である。
【0038】
グリルスティ70は、先端部にグリル支持突起部80を一体に有する。グリル支持突起部80は、図5に示されているように、フロントグリル12の裏面12Aに当接し、この当接によって沈み阻止方向にフロントグリル12の車幅方向中央部を支持している。これにより、締結具等の別部品を必要とすることなく、きわめて簡単な構造によってグリルスティ70はフロントグリル12を支持する。
【0039】
更に、グリル支持突起部80の根元部には切欠き部82が形成されている。この切欠き82により、フロントグリル12、グリル支持突起部80に所定値以上の下向き荷重が作用した際には、グリル支持突起部80がグリルスティ先端より頭を下げるように変形するので、歩行者保護が行われる。
【0040】
アッパダクトメンバ62の前部には、車幅方向の複数箇所に車体前方に突出した突出部84が一体形成されている。アッパダクトメンバ62は、突出部84の下底面がフロントグリル12の裏面側の上面12B(図5参照)に当接することにより、車幅方向の複数箇所において、フロントグリル12によって沈み阻止方向に支持されている。つまり、フロントバンパフェンス10等を介して車体より支持されているフロントグリル12は、アッパダクトメンバ62との係合によって沈み阻止方向にアッパダクトメンバ62を車幅方向の複数箇所において支持している。これにより、締結具等の別部品を必要とすることなく、きわめて簡単な構造によってアッパダクトメンバ62をフロントグリル12によって支持することができる。
【0041】
左右のサイドダクトメンバ66は合成ゴム等のゴム状弾性体による成形品である。サイドダクトメンバ66は、導風路68の車幅方向両側を画定するものであり、車体後方部の上下方向外縁に沿って一体形成された側部フランジ片部66Aを複数個のクリップ86によってフロントバルクヘッド組立体30のバルクヘッドサイドスティ36の前面に気密シール状態で固定される。なお、フランジ片部66Aにはクリップ86の取付孔66Bが貫通形成されている。
【0042】
サイドダクトメンバ66は、上端部に一体形成された略水平な折曲片部66Cをクリップ64によってアッパダクトメンバ62の左右端部に固定されている。サイドダクトメンバ66は、下端部の車体前後方向外縁に沿って一体形成された略水平な下部フランジ片部66Dを複数個のクリップ88によってバルクヘッドロアフレーム34よりの延出プレートである足払いプレート35に固定されている。
【0043】
このように、サイドダクトメンバ66は、上端部をバルクヘッドアッパフレーム32に取り付けられているアッパダクトメンバ62に固定連結され、下端部を足払いプレート35を介してバルクヘッドロアフレーム34に固定連結され、上下両端間をバルクヘッドサイドスティ36に固定接合され、これらより支持されている。これにより、十分な取付強度のもとに、サイドダクトメンバ66が走行風の風圧や走行振動等によって大きく弾性変形することが回避される。
【0044】
下部フランジ片部66Dの下底部にはコの字形の突出形状をした廻り止めリブ66E(図8、図9参照)が一体形成されている。廻り止めリブ66Eは、足払いプレート35に貫通形成されたコの字形の係合孔(図示省略)に嵌合している。これにより、サイドダクトメンバ66の下部が足払いプレート35に廻り止め結合され、更に、サイドダクトメンバ66が走行風の風圧や走行振動等によって大きく弾性変形し難くなる。
【0045】
サイドダクトメンバ66の導風路68の側には、ラジエータ46のコア部の側縁部が嵌合する縦長の凹部66Fと、クーラコンデンサ50のコア部の側縁部が嵌合する縦長の凹部66Gとが形成されている。ラジエータ46のコア部の側縁部が凹部66Fに嵌り込むことにより、ラジエータ46とサイドダクトメンバ66との間の空気漏れやラジエータ後方より車体前側への熱風の廻り込みが防止される。クーラコンデンサ50のコア部の側縁部が凹部66Gに嵌り込むことにより、クーラコンデンサ50とサイドダクトメンバ66との間の空気漏れやクーラコンデンサ後方より車体前側への熱風の廻り込みが防止される。
【0046】
凹部66F、66Gは、ビードとしても作用し、サイドダクトメンバ66の剛性を高める効果も生じる。
【0047】
サイドダクトメンバ66の導風路68の側には、凹部66Fの車体前方側の縁部と凹部66Gの車体前方側の縁部の各々に沿ってシール片部66H、66Jが一体形成されている。シール片部66Hはラジエータ46のコア部の側縁部前面に弾性変形状態で押し付けられ、シール片部66Jはクーラコンデンサ50のコア部の側縁部前面に弾性変形状態で押し付けられ、各々、サイドダクトメンバ66とラジエータ46のコア部との間と、サイドダクトメンバ66とクーラコンデンサ50との間の気密シールを行う。これにより、クーラコンデンサ50とサイドダクトメンバ66との間の空気漏れやクーラコンデンサ後方より車体前側への熱風の廻り込みが、より一層確実に防止される。シール片部66H、66Jは、リブとして、サイドダクトメンバ66の剛性を高める効果も生じる。
【0048】
サイドダクトメンバ66は、クーラコンデンサ50とフロントグリルとの間を車体幅方向に延在しているフロントバンパビーム44より車体前方のフロントバンパフェンス10やフロントグリル12の近くまで延出した前方延出部66を有する。前方延出部66にはフロントバンパビーム44が貫通する開口部66Lが形成されている。また、前方延出部66には、前方延出部66の外周縁部(下縁部)と開口部66Lとを接続するバンパビーム挿入用フレームスリット66Mが形成されている。
【0049】
この構造によりサイドダクトメンバ66とフロントバンパビーム44との干渉が避けられる。サイドダクトメンバ66はゴム状弾性体製であるので、サイドダクトメンバ66とフロントバンパビーム44とが、開口部66Lの周縁部とが接触しても、摩耗、振動、騒音の問題を生じることがない。
【0050】
また、サイドダクトメンバ66の取り付けは、バンパビーム挿入用フレームスリット66Mにフロントバンパビーム44を通してフロントバンパビーム44を開口部66Lに位置させることができる。これにより、フロントバンパビーム44を取り外すことなくサイドダクトメンバ66の取り付け、交換を行うことができる。
【0051】
前方延出部66の外縁部や開口部66L、バンパビーム挿入用フレームスリット66Mの周縁部にはリブ66N、66Pが一体形成されている。また、前方延出部66にはビード66Qが形成されている。これらは、前方延出部66の剛性を高めることに機能する。
【0052】
前方延出部66にはフロントバンパビーム44の前面にクリップ等によって固定される固定アーム66Rが一体形成されている。これにより、サイドダクトメンバ66の取付強度が更に向上する。
【0053】
前方延出部66には、サイドダクトメンバ66より車幅方向外方に配置されている機関(エンジン)吸気系の吸気取入口5(図3参照)に走行風を導く導風ガイド斜面部66Sが形成されている。これにより、吸気効率の向上が図られる。導風ガイド斜面部66Sも前方延出部66の剛性を高める効果を生じる。
【符号の説明】
【0054】
10 フロントバンパフェンス
12 フロントグリル
16 エンジンルーム
22、24 空気取入開口
30 フロントバルクヘッド組立体
31 フードロック解除ツール
32 バルクヘッドアッパフレーム
33 解除レバー
34 バルクヘッドロアフレーム
35 足払いプレート(延出プレート)
36 バルクヘッドサイドスティ
46 ラジエータ
50 クーラコンデンサ
60 エアダクト組立体
62 アッパダクトメンバ
66 サイドダクトメンバ
66E 廻り止めリブ
66F、66G 凹部
66H、66J シール片部
66L 開口部
66M バンパビーム挿入用フレームスリット
66S 導風ガイド斜面部
68 導風路
70 グリルスティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部の骨格をなすフロントバルクヘッドより車体前方に配置されたラジエータに、当該ラジエータより車体前方に配置されたフロントグリルの空気取入開口より走行風を導く導風路を構成する車両用エアダクトであって、
前記導風路の上部を画定する硬質材料製のアッパダクトメンバと、前記アッパダクトメンバの車幅方向両側に配置されて前記導風路の車幅方向両側を画定するゴム状弾性体製の左右のサイドダクトメンバとを含み、
前記アッパダクトメンバは前記フロントバルクヘッドのアッパフレームに固定され、
前記サイドダクトメンバは、車体後方部を前記フロントバルクヘッドのサイドスティに固定され、上端部を前記アッパダクトメンバに固定され、下端部を前記フロントバルクヘッドのロアフレームに取り付けられて車体前方に延出した延出プレートに固定されている車両用エアダクト
【請求項2】
前記サイドダクトメンバは下端部に一体形成された廻り止めリブを有し、前記廻り止めリブが前記延出プレートに形成された係合孔に嵌合している請求項1に記載の車両用エアダクト。
【請求項3】
前記サイドダクトメンバは、前記ラジエータの側縁部が嵌合する凹部を有する請求項1または2には記載の車両用ダクト。
【請求項4】
前記サイドダクトメンバは、前記ラジエータの側縁部との間の間隙を塞ぐシール片部を一体形成されている請求項1から3の何れか一項に記載の車両用ダクト。
【請求項5】
前記サイドダクトメンバは、当該サイドダクトメンバより車幅方向外方に配置されている機関吸気系の吸気取入口に走行風を導く導風ガイド斜面部を有する請求項1から4の何れか一項に記載の車両用ダクト。
【請求項6】
前記サイドダクトメンバは、前記ラジエータと前記フロントグリルとの間を車体幅方向に延在するフロントバンパビームより前記フロントグリル側に延出した部分を含んでいて前記フロントバンパビームが貫通する開口と、外周縁部と前記開口とを接続するバンパビーム挿入用フレームスリットとを有する請求項1から5の何れか一項に記載の車両用ダクト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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