説明

車両用エンジンオイル交換システム及び装置

【目的】 車両のエンジンオイル交換を安全に行う。
【構成】 上下2層式の整備室1からなり、上室で所定位置への入車が完了すると入車キー49を押して下室の入車ランプ56を点灯させ、下室では入車ランプが56点灯したのを確認して、ドレンプラグから回収装置40にオイルを回収し、回収し終わると、回収終了キー58を押し、上室では回収終了ランプ60が点灯すると共に、上室のオイル供給装置4の供給手段を作動可能とするのでエンジンのオイル供給口からのオイル供給を行う、という一連の動作により車両のエンジンオイルを交換する車両用エンジンオイル交換システム及び装置。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、給油所や整備工場などに備えられ、上下2室にてエンジンオイルの交換を行う車両用エンジンオイル交換システム及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に整備工場や給油所などのピットでは、地上の整備室の他に車両を下部からも点検整備できるように地下にも整備室を設け、地上と地下を連通する開口に車両を跨がせ、点検整備を行う形式のものがあった。そして、このようなピットにてエンジンオイル交換を行う場合には、まず、地下室側でオイルパンのドレンプラグから廃オイルを回収し、その後、地上室側でエンジンのオイル供給口からオイルジョッキやオイル供給装置を使用してオイルを供給するという作業を1人もしくは2人で行っていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この様な手順でオイル交換作業を行う場合、1人の場合では、まず地上側に車両を止め、地下側へ降りていきオイルを回収し、再び地上側に戻りオイルを供給するという具合に作業が面倒なものとなるばかりか、時間もかかってしまうという問題があり、2人の場合には地上と地下の行き来がなくなり、作業も効率のよいものとなるが、地下側ではいつオイルの回収を開始すればよいのか、また、地上側ではいつオイルの供給を開始すればよいのかなどが解らないため、声を掛け合って確認しあいながら作業を進めていくしかなく、他の作業者が他の車両の点検整備を同時に行っている場合などには、その作業の音でお互いの声がしっかり聞き取れないこともあり、安全性に欠ける作業となってしまっていた。
【0004】本発明は前記の様な問題点を解消できる車両用エンジンオイル交換システム及び装置を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は前記目的を達成するため、上下2室を有し、該2室を連通する開口に車両を跨がせ上室と下室の双方で車両の点検整備を行うタイプのピットに設けられるオイル交換システムであって、車両がピットの規定位置に入車したことを下室に知らせる入車完了報知手段と、車両のオイルパンのドレンプラグからオイルを回収するオイル回収手段と、オイルの回収が終了したことを上室に知らせる回収終了報知手段と、ポンプにより給送されるオイルをノズルから車両のエンジン内に供給するオイル供給装置と、前記回収終了報知手段の作動に連動して、前記オイル供給装置でのオイル供給を可能とする制御手段とを備えた車両用エンジンオイル交換システムを提供することを要旨とするものである。また、上下2室を有し、該2室を連通する開口に車両を跨がせ上室と下室の双方で車両の点検整備を行うタイプのピットに設けられるオイル交換装置であって、車両がピットの規定位置に入車したことを下室に知らせる入車完了報知手段と、下室でオイルの回収が終了したことを上室に知らせる回収終了報知手段と、ポンプにより給送されるオイルをノズルから車両のエンジン内に供給するオイル供給装置と、前記回収終了報知手段の作動に連動して、前記オイル供給装置でのオイル供給を可能とする制御手段とを備えた車両用エンジンオイル交換装置を提供することを要旨とするものである。
【0006】
【作用】本発明によれば、まず上室側の作業員が上室と下室を連通する開口に車両を跨がせ、車両が定位置についたことを入車完了報知手段にて下室側の作業車に知らせる。下室側の作業者はこれを確認した後、オイルパンのドレンプラグの下にオイル回収手段を配置し、ドレンプラグを外し、オイル回収手段内にオイルを回収する。やがて回収が終了すると、下室側の作業者は回収終了報知手段にてオイルの回収が終了したことを地上側の作業者に知らせる。地上側ではこの間オイル供給装置にてオイルを供給しようとして供給量をプリセットしたり、どの種類のオイルを供給するのかを設定する準備をして待機しているのであるが、間違って回収が終了する前にオイルを供給しようとしても、回収終了報知手段が作動したのを制御手段が検出するまではオイル供給装置のポンプを駆動したり、管路の電磁弁を開放したりすることはなく、ドレンプラグを閉めないまま、上室側からエンジン内にオイルを供給するといった危険性が確実に回避される。
【0007】
【実施例】以下、図に基づき本発明の一実施例を詳細に説明する。
【0008】図1は本発明の一実施例を示す全体構成図で、1は整備室であり、地上と地下の2層構造となっていて、少なくとも2台の車両2、3が同時に整備できるようになっている。
【0009】地上側にはオイル供給装置本体4が設置されており、本体4上部からは給油管路5、6、7が手前側に3本、図示していないが後方に2本8、9が延出されており、各給油管路5、6、7、8、9の一方には可撓性のホース10、11、12、13、14及び手元弁付ノズル15、16、17、18、19が設けられている。また各給油配管5、6、7、8、9の他方には本体内部で電磁弁20、21、22、23、24、流量計25、26、27、28、29がそれぞれ介装されており、さらに地下を通り、一旦整備室1内を出て別室に設けられたポンプ30、31、32、33、34を介してグレード別(ここではガソリン車用のSJ級、SH級、SG級、及びディーゼル車用のCF級、CD級の5種類)のオイルが収容されているタンク35、36、37、38、39に連接されている。このようにして顧客の要望するグレードのオイルを混油なしに供給できるようになっている。そして地下側にはオイルを抜き取り回収するための回収装置40、41が設けられている。
【0010】本体4両側面上部には、図2に示すような操作部42、43がそれぞれ設けられており、操作部42、43には操作内容を表示するための案内表示器44、作業内容をプリント出力するためのプリンター45、給油量などを入力するためのテンキー部46、設定内容を修正したり決定したりするための設定キー部47、アルファベットを入力するための文字キー部48が配設されている。さらにその右横には上から、作業場所に車両が入車したことを地下の作業員に知らせるための入車完了報知手段たる入車キー49、作業内容をプリント出力するためのプリントキー50、供給量を予め数値入力しておきその量を供給するというプリセット行程を、選択するためのプリセットキー51、オイル量を確認しながら手動にてオイルを供給するための手動キー52、装置稼働前に様々な設定を行うモードにするための管理キー53、オイルの供給をスタートさせるためのスタートキー54、ストップさせるためのストップキー55が配設されている。
【0011】地下側には前記入車キー49が押下されることにより点灯する入車完了報知手段たる入車ランプ56、57、オイルの回収が終了したことを地上に知らせるための回収終了報知手段たる回収終了キー58、59が、地上側には回収終了キー58、59が押下されることにより点灯する回収終了報知手段たる回収終了ランプ60、61が、それぞれのピット毎に設けられている。
【0012】地上側天井下には各ピットで現在行われているオイル供給の内容、例えばオイルのグレードや供給量を表示するための確認用表示器62が吊り下げられており、車両のオーナーがそれをガラス63越しにピット横の待合室から確認できるようになっている。
【0013】図3は本装置のブロック図で、64はマイクロコンピュータなどからなる制御手段たるコントロールボードで、操作部42、43上の各キー及び回収終了キー58、59の入力信号を受け、電磁弁20〜24、流量計25〜29、ポンプ30〜34、操作部42、43の案内表示器44、プリンター45、入車ランプ56、57、回収終了ランプ60、61、確認用表示器62に制御信号を出力するものである。また、コントロールボード64では車両のメーカー、車両記号、エンジン型式、フィルター交換の有無に対応するオイル供給量がテーブルとして記憶されている。このテーブルは操作部42、43の入力により、追加登録が可能となっているので、未入力の車両が入車した場合や、新車が発売された場合などにも対応できるようになっている。
【0014】以下、実施例の動作について図に基づき説明する。
【0015】地上側の作業者は車両2をピットの所定位置に停止し、エンジンを止め、車両から降りて、ボンネットをあけ、エンジンのオイル供給口の蓋を取り外した後、操作部42の入車キー49を押す。すると入車ランプ56が点灯し、地下側に待機している作業者がそれを確認し、車両2のオイルパンのドレンプラグを外し、回収装置40に廃油を回収する。
【0016】この間、地上側の作業者は案内表示器44に図4に示すように作業担当係員名設定の画面が表示されているので、予め設定されている自分の番号(ここでは1とする。)をテンキー部46にて「1」を入力する。すると係員名の名前「○○○」が表示されるので、作業者自身の名前であることを確認し、設定キー部47内にある登録キーを押す。
【0017】次に画面が図5に示す受付の画面に切り替わるので、事前に車両2のオーナーに確認しておいた事項等を画面の指示に従いテンキー部46にて入力し、設定キー部47内の登録キーを押す。
【0018】そして画面が図6に示す供給方法の画面に切り替わる。ここでテンキー部46にて希望する数字を入力するのであるが、「1」を入力すると車両のオイル規定量を検索する供給量検索モードとなり、「2」を入力するとテンキー部46にて希望する供給量を数値入力してオイルを供給するプリセット供給モードとなり、「3」を入力すると車両のオーナーがオイルを持ち込んできたときにオイルジョッキなどで作業者自身が手でオイルを供給するモードとなり、「4」を入力すると本装置4を駆動してノズルによりオイルを必要量だけ供給する手動モードとなる。ここでは供給量検索モードにてオイルを供給する場合の説明をする。
【0019】作業者が「1」を入力すると図7に示すメーカー選択の画面に切り替わるので、選択する車両のメーカー(ここでは3とする。)の数値である「3」をテンキー部46にて入力する。
【0020】すると、画面が図8の車両検索の画面に切り替わる。ここで先程選択したメーカー名「○○△△」が自動的に表示され、車両記号の入力を促してくるので、文字キー部48により車両記号「ABCDEF」を入力すれば、コントロールボード64では抱いているテーブルに基づきオイルの供給量を決定するのであるが、ここでもしコントロールボード64のテーブルに「ABCDEF」という車両記号を持つ車両のオイルの規定量が複数存在した場合には、さらに検索条件を増やしオイルの供給量を絞り込むためにエンジン型式の入力を促してくるので、この場合にはエンジン型式「VWXYZ」を入力し、設定キー部47内の登録キーを押す。
【0021】次に画面が一旦図9に示す供給量選択の画面になり、これまでに入力した車両記号、エンジン型式、フィルタ交換の有無が表示され、コントロールボード64のテーブルにて絞り込まれた供給量が表示されるので、その番号をテンキー部46にて入力するのであるが、万一絞り込めず何種類かある場合には図9に示すように表示され、作業者に選択を促す。
【0022】作業者はこのように表示された場合、供給量が規定量よりも多くならないように最も少ない供給量を選択しておき、作業終了後、エンジンに付属しているオイルゲージで油量を確認し、少なければ手動操作にてオイルを継ぎ足すようにする。
【0023】ここでは供給量が1種類しか表示されなかったとして「1」を入力したものとすると、画面は図10R>0に示す油種選択の画面に切り替わるので、予め車両のオーナーに聞いておいたオイルのグレードに基づき、ノズル番号(ここでは3とする。)「3」をテンキー部46にて入力する。
【0024】ところで、油種のうちSG、SH、SJはガソリン車用であり、CD、CFはディーゼル車用のオイルである。そして、先程車両記号等によりこの車両がガソリン車であるかディーゼル車であるかはコントロールボード64のテーブルにより判断されているので、ここでもし「4」又は「5」を入力するとコントロールボード64では適正な油種が選択されるまでこの画面を切り替えることはしない。
【0025】適正な油種が選択されたなら、画面は図11R>1に示すオイル供給の画面になるので、この状態のまま地下側での抜き取り作業の終了を待つ。この時万一地上側の作業者が続けてノズル17にて車両にオイルを供給しようとしても、地下側で回収終了キー58が押され、コントロールボード64にその信号が入力されるまでは、操作部42のスタートキー54の入力を受け付けないようになっているので、操作手順を誤って、オイル回収終了前にオイル供給を行うことはない。
【0026】やがて、地下側では回収作業が終了すると、作業者はドレンプラグを閉め、回収終了キー58を押す。すると、その信号を受けたコントロールボード64では、回収終了ランプ60を点灯させるとともに、操作部42のスタートキー54を受け付けるようにするので、回収終了ランプ60の点灯を確認した地上側の作業者は、操作部42のスタートキー54を押す。コントロールボード64ではその入力信号を受け、SJ級用のポンプ32を駆動させ、同じくSJ級用の電磁弁22を開放する。
【0027】そして、作業者は指定のノズル17(SJ用)を取り、エンジンのオイル供給口にノズル17を挿入し、手元弁を開き、供給を開始する。すると、SJ級のオイルが、タンク37から、給油管路7、ホース12を経由してノズル17からエンジン内に供給され、これに伴いSJ級用の流量計27からコントロールボード64に流量パルス信号が送られ、その信号を変換して供給量として案内表示器44及び確認用表示器62に表示させていく。
【0028】やがて、供給量が設定された供給量「4.2」リットルになると、ポンプ32が停止すると共に電磁弁22が閉じられるので、作業者はノズル17を戻し、オイルゲージで規定量のオイルが供給されたかを確認し、不足していれば手動により適量を注入した後、エンジンのオイル供給口の蓋を閉め、エンジンの給油口まわりなどに付着したオイルを拭き取り、ボンネットを閉じる。
【0029】さらに、案内表示器44に表示されていたオイル供給の画面には、図12に示すプリンタ出力を促す案内が表示されるので、作業者は、その案内に従い、操作部42のプリントキー51を押す。
【0030】すると、図13に示す内容のものがプリンタ45からプリント出力され、案内表示器44の画面は初期の作業担当係員名設定の画面に切り替わり待機状態となる。プリント出力される項目のうち、次回オイル交換の走行距離は、案内表示器44に受付の画面が表示されたときに入力された走行距離に予め設定されていた所定距離を加算する処理をしたものであり、コントロールボード64で自動的に演算処理されたものである。また、「次回はフィルタ交換をお奨めします」というメッセージは、やはり受付の画面が表示されたときに入力されたフィルタ交換の作業の有無によりコントロールボード64で判断されて印字されるメッセージであって、今回交換した場合には、一般的にフィルタ交換はオイル交換2回に1回の割合でいいとされているため、メッセージは印字されないものである。また、トルコンオイル交換、パワステオイル交換、LLC交換、空気圧の各項目が印字されているのは、やはり受付の画面が表示されたときに追加作業有りと入力されたものであってその他は印字されない。そして、各項目については追加作業を行った作業者が手書きで交換量またはチェックマークを記入するようになっている。このようにしてすべての作業が終了すると車両2のオーナーに車両を引き渡し、全て記入されたプリント紙を渡しオーナーの確認をとり料金を徴収して終了となる。
【0031】なお、本実施例では1台の車両2のオイル交換を実施している説明にとどまっているが、2台の車両2、3のオイル交換を並行して行うことも可能であることはいうまでもない。
【発明の効果】以上のように本発明は、上室の作業員が車両をオイル交換作業を行う所定位置に停止させた後、入車キーにより、下室に報知するので、下室の作業員は、確実に車両が停止した状態で作業が行え、また、下室でのオイル回収中には車両の上室からオイルを供給することができないようになっているので、車両の上部及び下部の両側からのオイル交換作業を効率良く、また、安全に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である装置の全体構成図である。
【図2】同装置の操作部の詳細図である。
【図3】同装置のブロック図である。
【図4】乃至
【図12】同装置の案内表示器の表示内容を示す説明図である。
【図13】同装置のプリント出力例を示す説明図である。
【符号の説明】
2、3 車両
4 装置本体
15、16、17、(18)、(19) ノズル
30、31、32、33、34 ポンプ
40、41 オイル回収装置
49 入車キー
56、57 入車ランプ
58、59 回収終了キー
60、61 回収終了ランプ
64 コントロールボード

【特許請求の範囲】
【請求項1】 上下2室を有し、該2室を連通する開口に車両を跨がせ上室と下室の双方で車両の点検整備を行うタイプのピットに設けられるオイル交換システムであって、車両がピットの規定位置に入車したことを下室に知らせる入車完了報知手段と、車両のオイルパンのドレンプラグからオイルを回収するオイル回収手段と、オイルの回収が終了したことを上室に知らせる回収終了報知手段と、ポンプにより給送されるオイルをノズルから車両のエンジン内に供給するオイル供給装置と、前記回収終了報知手段の作動に連動して、前記オイル供給装置でのオイル供給を可能とする制御手段とを備えたことを特徴とする車両用エンジンオイル交換システム。
【請求項2】 上下2室を有し、該2室を連通する開口に車両を跨がせ上室と下室の双方で車両の点検整備を行うタイプのピットに設けられるオイル交換装置であって、車両がピットの規定位置に入車したことを下室に知らせる入車完了報知手段と、下室でオイルの回収が終了したことを上室に知らせる回収終了報知手段と、ポンプにより給送されるオイルをノズルから車両のエンジン内に供給するオイル供給装置と、前記回収終了報知手段の作動に連動して、前記オイル供給装置でのオイル供給を可能とする制御手段とを備えたことを特徴とする車両用エンジンオイル交換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開平11−35099
【公開日】平成11年(1999)2月9日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−207252
【出願日】平成9年(1997)7月15日
【出願人】(000103138)エムケー精工株式会社 (174)