説明

車両用オートエアコン装置

【課題】電子部品特性バラツキに起因する、DEVIDEポートに入力される電圧値のA/D変換値の誤差を防止又は低減する。また、電子部品特性バラツキに起因するブロアモータの両端電圧(FAN電圧)の出力精度を向上させる。
【解決手段】ブロアモータと、特性バラツキが前記ブロアモータの両端電圧であるFAN電圧精度に影響する電子部品と、前記電子部品の特性を表す実測値が予め格納された記憶手段と、前記記憶手段に格納された実測値を用いて所定の演算を行う演算手段と、を備えることを特徴とする。また、前記演算手段による演算結果に基づいて前記FAN電圧を制御する制御手段をさらに備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用オートエアコン装置に係り、特に電子部品特性バラツキに起因するブロアモータの両端電圧(FAN電圧)の出力精度を向上させることが可能な車両用オートエアコン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用オートエアコン装置200は、図5に示すように、CPU212、CPU212に接続された、モータ制御IC214、5V定電圧回路216、CPU電源回路218、12V電源監視回路220、風量制御回路222、電源逆接続保護用ダイオード228、12V電源230、ブロアモータ232、パワーMOSFET234等を備えている。
【0003】
車載用ブロアモータ制御は、FAN電圧制御と電源電圧補正制御の機能を有し、ブロアモータ232の両端電圧(FAN電圧)Vfanを変化させることで風量を可変させている。この機能に該当する回路が風量制御回路222である。FAN電圧制御は、マニュアル制御、オート制御で要求される目標FAN電圧に向け、パワーMOSFET234のゲート電圧を制御する。電源電圧補正制御は、各電気負荷による電源電圧変動に対し、ブロアモータ232の両端電圧(FAN電圧)Vfanが変動しないよう、フィードバックをかけてVDを変化させる。
【0004】
これらの方法について、以下に詳細に説明する。
【0005】
CPU212は、DEVIDEポート(図5参照)から、電源電圧から電源逆接続保護用ダイオード228を介した後の電圧12V1を抵抗R11(30kΩ)と抵抗R12(10kΩ)で1/4分圧した電圧を読み込み、A/D変換したA/D値A/D(DEV)により12V1電圧を監視する。このとき、5V基準電圧Vrefを5[V]とし、12V電源監視回路220のCPUポート入力電圧をV(DEV)とすると、A/D(DEV)は、次の式により算出される。
【0006】
A/D(DEV)=(V(DEV)/Vref×1024[bit])+0.5=(V(DEV)/5[V]×1024[bit])+0.5・・・(式1)
A/D(DEV)値はCPU212内の演算で4倍され、この電圧12V1電圧”(1/4分圧電圧値を4倍)と逆接続保護用ダイオード228の順方向電圧Vfの標準値0.7[V]を加算し加重平均をして算出した電圧を+B電圧V(+B)"とし、12V1電源監視回路のCPUポート入力電圧をV(DEV)とすると、V(+B)"は次の式により算出される。
【0007】
V(+B)"=12V1"+Vf=12V1"+0.7・・・(式2)
但し、12V1"=V(DEV)×4である。
【0008】
また、車体ハーネスのインピーダンスとブロアモータ232の電流により決まる電圧降下をΔV、FAN変化スピード処理後の目標FAN電圧をVfanとすると、VDは次の式で表される。なお、ΔV、Ffan、VDは図6に示す関係にある。
【0009】
VD=V(+B)"-ΔV-Vfan ・・・(式3)
CPU212は、ブロアモータ232の両端電圧(FAN電圧)Vfanが目標値に合うよう、PWM出力をする。このPWMを可変させることで、目標FAN電圧となるよう上記演算に基づいてパワーMOSFET234のゲート電圧レベルを変化し、VDを制御する。
【0010】
なお、本発明に関連すると思われるものとして、オートエアコンシステムに関する特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−67658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、5V定電圧回路216で作成される5V電圧5V1は、電圧精度許容差を持っている(例:許容差±0.25V)5V電圧は、電源電圧を監視しているCPU212のA/Dポート(DEVIDEポート)の基準電圧(リファレンス電圧)であるため、5V電圧値がばらつくと、DEVIDEポートに入力される電圧値のA/D変換値に誤差が生ずる、という問題がある。
【0013】
また、CPU212が監視している12V1電圧を分圧する抵抗R11とR12の抵抗許容差は±1[%]であり、抵抗ごとの抵抗値バラツキがあるため、実機12V1電圧値とCPU212が検知した12V1"電圧値(1/4分圧電圧を4倍した電圧)には誤差が生じ、FAN電圧精度を低下させる、という問題がある。
【0014】
さらに、電源逆接続用ダイオード228の順電圧Vfは温度変化や固有のバラツキを持っているが、Vfを標準値0.7[V]と固定して算出しているため、実機+B電圧V(+B)値と式(2)で算出したV(+B)"には誤差が生じ、FAN電圧精度を低下させる、という問題がある。
【0015】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、電子部品特性バラツキに起因する、DEVIDEポートに入力される電圧値のA/D変換値の誤差を防止又は低減することを第1の課題とする。また、電子部品特性バラツキに起因するブロアモータの両端電圧(FAN電圧)の出力精度を向上させることを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、ブロアモータと、特性バラツキが前記ブロアモータの両端電圧であるFAN電圧精度に影響する電子部品と、前記電子部品の特性を表す実測値が予め格納された記憶手段と、前記記憶手段に格納された実測値を用いて所定の演算を行う演算手段と、を備えることを特徴とする。
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、従来のように各装置間で共通の値ではなく、各装置ごとに測定され、それぞれの記憶手段に格納された実測値(特性値)を用いて所定の演算(例えば実施形態に記載のDEVIDEポートに入力される電圧値のA/D変換値を求めるための演算)を行うことが可能となるため、CPUのDEVIDEポートに入力される電圧値のA/D変換値の誤差を防止又は低減することが可能となる。すなわち、従来係数として扱っていた値を、製品(装置)ごとに実測値を用い変数として扱うことで、電子部品固有の特性バラツキによる誤差を製品ごとにアプリケーションで吸収することが可能となり、最終出力値の精度を向上させることが可能となる。
【0018】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記演算手段による演算結果に基づいて前記FAN電圧を制御する制御手段をさらに備えることを特徴とする。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、従来のように各装置間で共通の値ではなく、各装置ごとに測定され、それぞれの記憶手段に格納された実測値(特性値)を用いて所定の演算(例えば実施形態に記載のVDを求めるための演算)を行い、当該演算結果に基づいてブロアモータのFAN電圧を制御することが可能となるため、電子部品特性バラツキに起因するブロアモータの両端電圧(FAN電圧)への出力精度を向上させることが可能となる。すなわち、従来係数として扱っていた値を、製品(装置)ごとに実測値を用い変数として扱うことで、電子部品固有の特性バラツキによる誤差を製品ごとにアプリケーションで吸収することが可能となり、最終出力値の精度を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、電子部品特性バラツキに起因する、DEVIDEポートに入力される電圧値のA/D変換値の誤差を防止又は低減することが可能となる。また、電子部品特性バラツキに起因するブロアモータの両端電圧(FAN電圧)の出力精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態であるFAN電圧制御装置を含む車両用オートエアコン100の回路図である。
【図2】特性バラツキがブロアモータ32の両端電圧(FAN電圧)の精度に影響する電子部品の特性値を記憶回路に書き込むステップを説明するためのフローチャートである。
【図3】車両用オートエアコン100の動作の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】ΔV、Ffan、VDの関係を説明するための図である。
【図5】従来の車両用オートエアコン200の回路図である。
【図6】従来の車両用オートエアコン200におけるΔV、Ffan、VDの関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態であるFAN電圧制御装置を含む車両用オートエアコンについて図面を参照しながら説明する。
【0023】
本実施形態の車両用オートエアコン100は、図1に示すように、CPU12、CPU12に接続された、モータ制御IC14、5V定電圧回路16、CPU電源回路18、12V電源監視回路20、風量制御回路22、記憶回路24、ダウンロード回路26、電源逆接続保護用ダイオード28、12V電源30、ブロアモータ32、パワーMOSFET34等を備えている。
【0024】
記憶回路24はEEPROM等の記憶装置であり、当該記憶回路24には、特性バラツキがブロアモータ32の両端電圧(FAN電圧)の精度に影響する電子部品の特性値(本実施形態では、12V電源30の電圧値12V1*、5V電源の電圧値5V1*、電源逆接続保護用ダイオード28の順方向電圧値Vf*、及び、12V1電源監視回路20のCPUポート入力電圧値V(DEF)*)が予め測定され、格納されている。当該特性値は、例えば、図2に示すステップS10〜S24を経て、記憶回路24に格納される。
【0025】
すなわち、まず、生産ラインの組み立て工程上で、当該ライン上の車両用オートエアコン100ごとに、特性バラツキがブロアモータ32の両端電圧(FAN電圧)の精度に影響する電子部品を含む電子部品の実装を行う(ステップS10)。次に、当該実装した電子部品を確認し、パターン導通検査を行う(ステップS12)。次に、当該実装した電子部品の特性値(本実施形態では、12V電源30の電圧値12V1*、5V電源の電圧値5V1*、電源逆接続保護用ダイオード28の順方向電圧値Vf*、及び、12V1電源監視回路20のCPUポート入力電圧値V(DEF)*)を測定し(ステップS14)、測定結果がOKかNOかを判定する(ステップS16)。そして、その判定結果がNOであれば(ステップS16:NO)、さらに、定数ミスか否かを判定し(ステップS18)、定数ミスでなければ(ステップS18:NO)上記ステップS12に戻って、ステップS12〜S16の処理を繰り返す。一方、定数ミスであれば(ステップS18:YES)所定の修正を行い(ステップS20)、上記ステップS12に戻って、ステップS12〜S16の処理を繰り返す。
【0026】
一方、ステップS16の判定結果がYESであれば(ステップS16:YES)、ステップS14で測定した測定値(実測値)をダウンロード回路26もしくはCPU12の所定ポートを介して記憶回路24に格納する(ステップS22)。そして、最後にケースと基板とを組み付ける(ステップS24)。
【0027】
以上により、記憶回路24に特性バラツキがブロアモータ32の両端電圧(FAN電圧)の精度に影響する電子部品の特性値(本実施形態では、12V電源30の電圧値12V1*、5V電源の電圧値5V1*、電源逆接続保護用ダイオード28の順方向電圧値Vf*、及び、12V1電源監視回路20のCPUポート入力電圧値V(DEF)*)が格納される。
【0028】
次に、上記構成の車両用オートエアコン100の動作について図3を参照しながら説明する。以下の処理は、主に、CPU12が、RAM等の記憶手段(図示せず)に読み込まれた所定プログラムを実行することにより実現される。
【0029】
まず、CPU12は、記憶回路24から、予め格納されている実測値(12V1*,5V1*,Vf*,V(DEF)*)を読み込み(ステップS30)、次の式を用いてA/D(DEV)、αを演算する。
【0030】
A/D(DEV)=(V(DEV)*/5V1*×1024[bit])+0.5・・・(式4)
このようにA/D(DEV)は、各装置100間で共通の値ではなく、各装置100ごとに測定され、それぞれの記憶回路24に格納された実測値(特性値)を用いて演算される値であるため、従来問題となっていたDEVIDEポートに入力される電圧値のA/D変換値の誤差を防止又は低減することが可能となる。
【0031】
α= 12V1* / V(DEV)*・・・(式5)
次に、CPU12は、A/Dポート(DEVIDEポート)から所定タイミングごとにV(DEV)を読み込み(ステップS32)、上記式2、式3、式5とから導かれる次の式を用いて、VDを演算する(ステップS34)。
【0032】
VD=V(+B)-ΔV-Vfan=(V(DEV)×α+Vf*)-ΔV-Vfan・・・(式6)
次に、CPU12は、ブロアモータ32の両端電圧(FAN電圧)Vfanが目標FAN電圧Vfanとなるようにモータ制御IC14に対し、上記ステップS34で演算した目標のVDとなるようにPWM出力をする(ステップS36)。
【0033】
CPU12が出力したPWM出力は積分され、モータ制御IC14に入力される。この入力電圧によりモータ制御IC14は、ブロアモータ32の両端電圧(FAN電圧)Vfanが目標FAN電圧VfanとなるようにパワーMOSFET34を制御する(ステップS38)。
【0034】
以上説明したように、本実施形態の車両用オートエアコン装置100によれば、従来のように各装置間で共通の値ではなく、各装置100ごとに測定され、それぞれの記憶回路24に格納された実測値(12V1*,5V1*,Vf*,V(DEF)*等の特性値)を用いてVDを求めるための演算(式6参照)を行い、当該演算結果に基づいてブロアモータ32のFAN電圧Vfanを制御することが可能となるため、電子部品特性バラツキに起因するブロアモータ32の両端電圧(FAN電圧)の出力精度を向上させることが可能となる。すなわち、従来係数として扱っていた値を、製品(装置100)ごとに実測値を用い変数として扱うことで、電子部品固有の特性バラツキによる誤差を製品ごとにアプリケーションで吸収することが可能となり、最終出力値の精度を向上させることが可能となる。
【0035】
また、本実施形態の車両用オートエアコン装置100によれば、従来のように各装置間で共通の値ではなく、各装置100ごとに測定され、それぞれの記憶回路24に格納された実測値(12V1*,5V1*,Vf*,V(DEF)*等の特性値)を用いてDEVIDEポートに入力される電圧値のA/D変換値を求めるための演算を行うことが可能となるため、CPU12のDEVIDEポートに入力される電圧値のA/D変換値の誤差を防止又は低減することが可能となる。
【0036】
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0037】
100…車両用オートエアコン、12…CPU、14…モータ制御IC、16…5V定電圧回路、18…CPU電源回路、20…12V電源監視回路、22…風量制御回路、24…記憶回路、26…ダウンロード回路、28…電源逆接続保護用ダイオード、30…12V電源30、32…ブロアモータ、34…パワーMOSFET

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロアモータと、
特性バラツキが前記ブロアモータの両端電圧であるFAN電圧精度に影響する電子部品と、
前記電子部品の特性を表す実測値が予め格納された記憶手段と、
前記記憶手段に格納された実測値を用いて所定の演算を行う演算手段と、
を備えることを特徴とする車両用オートエアコン装置。
【請求項2】
前記演算手段による演算結果に基づいて前記FAN電圧を制御する制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用オートエアコン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−247561(P2010−247561A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96177(P2009−96177)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】