説明

車両用カウルルーバの衝撃力吸収構造

【課題】コストの上昇を招くことなく、衝撃力の吸収機能を確保できる車両用カウルルーバの衝撃力吸収構造を提供する。
【解決手段】カウル本体6に車両上方から所定値を越える荷重が入力したときに、変形可能な脆弱部7bを遮蔽壁7に設け、該脆弱部7bは、前記荷重入力方向Fと略直交する方向に延びるよう形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車幅方向に延びるカウル本体と、該カウル本体内を車幅方向に遮蔽する遮蔽壁とを一体的に形成した車両用カウルルーバの衝撃力吸収構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エンジン室と車室とを画成するよう配設された上向きハット形状のカウルパネルには、樹脂製のカウルルーバが配置されている。このカウルルーバは、前記カウルパネルの上端開口を覆う水平部と、該水平部の前縁から下方に延びる縦壁部とを有するカウル本体と、該カウル本体内を車幅方向に遮蔽する遮蔽板とを有する。該遮蔽板は、カウルパネル内に進入した雨水等を外部に排出するとともに、エンジン室からヒータへの熱風流入量を規制するために、カウルパネルの底壁との間に隙間を設けて配置される場合がある。
【0003】
一方、前記カウル本体に遮蔽板を設けた場合、該遮蔽板によりカウル本体の剛性が高くなっていることから、上方から被衝突物が落下したときの衝撃力吸収機能が低く、被衝突物への影響が懸念される。
【0004】
このような上方からの衝撃力を吸収するために、前記遮蔽板をカウル本体と別部品とし、前記衝撃力が加わったときに遮蔽板をカウル本体から脱落させるようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特開2007−137363号公報
【特許文献2】特開2008−56106号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記従来の衝撃力吸収構造では、遮蔽板をカウル本体とは別部品で構成することから、それだけ部品点数及び組み付け工数が増え、コストが上昇するという問題がある。
【0006】
本発明は、前記従来の状況に鑑みてなされたもので、コストの上昇を招くことなく、衝撃力の吸収機能を確保できる車両用カウルルーバの衝撃力吸収構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、車幅方向に延びるカウル本体と、該カウル本体内を車幅方向に遮蔽する遮蔽壁とを一体的に設けた車両用カウルルーバの衝撃力吸収構造であって、前記カウル本体に車両上方から所定値を越える荷重が入力したときに、変形可能な脆弱部を前記遮蔽壁に設け、該脆弱部は、前記荷重入力方向と略直交する方向に延びるよう形成されていることを特徴としている。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の車両用カウルルーバの衝撃力吸収構造において、前記カウル本体は、少なくとも車両前後方向に延びる水平部と、該水平部の前縁部から下方に延びる縦壁部とを有し、前記遮蔽壁と水平部と縦壁部との境界部には、開口が形成されており、さらに前記遮蔽壁には、前記脆弱部に交差するよう延びる第2の脆弱部が形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明に係るカウルルーバの衝撃吸収構造によれば、カウル本体に一体的に形成された遮蔽壁に、上方から荷重が入力したときに、変形を誘発する脆弱部を該荷重入力方向と略直交する方向に延びるよう形成したので、荷重が入力されると、遮蔽板の脆弱部が変形して衝撃力を吸収することとなり、ひいては被衝突物への影響を抑制できる。
【0010】
またカウル本体に一体的に形成された遮蔽壁に脆弱部を形成する構造であるので、カウルルーバを製造する際に脆弱部も同時に形成でき、従来の遮蔽板を別部品により構成する場合に比べて部品点数及び組み付け工数を低減でき、コストの上昇を抑制できる。
【0011】
請求項2の発明では、遮蔽壁の水平部と縦壁部との境界部に開口を形成したので、前記荷重入力が加わると、該開口を起点として水平部と縦壁部とが拡開するように変形し、遮蔽板の脆弱部に応力が集中し易くなり、衝撃力の吸収効率を高めることができる。
【0012】
また前記遮蔽壁に、脆弱部と交差するよう延びる第2の脆弱部を形成したので、遮蔽壁が変形し易くなり、衝撃力吸収機能をより高めることができる。さらに前記脆弱部と第2の脆弱部とを、例えば碁盤目状をなすように形成した場合には、各脆弱部で囲まれた部分を切り離すことにより、遮蔽壁の面積を変化させることができ、ひいてはエンジン室からヒータへの熱風流入量を調整することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0014】
図1ないし図6は、本発明の一実施形態による車両用カウルルーバの衝撃力吸収構造を説明するための図であり、図1はカウルルーバの斜視図、図2はカウルルーバの側面図、図3はカウルルーバの断面図(図1のIII-III線断面図)、図4はカウルルーバの遮蔽壁の斜視図、図5はカウルルーバの断面図(図1のV-V線断面図)、図6はカウルルーバの断面図(図1のVI-VI線断面図)である。
【0015】
図において、1は自動車のエンジン室Aと車室Bとを画成するカウルパネルを示している。該カウルパネル1は、上方に開口する大略断面ハット形状をなし、かつ車幅方向に延びており、左,右の車体サイド部材(不図示)に結合されている。
【0016】
前記カウルパネル1の後上縁部1aにはフロントガラス3の下縁部3aが取り付けられており、該カウルパネル1内には、前記フロントガラス3に付着した雨水等を払拭するワイパ装置2が配設されている。
【0017】
また前記カウルパネル1の前側には、エンジン室Aの上端開口を開閉するフード4が配設されている。該フード4は、前記カウルパネル1の左,右側端部に配設されたヒンジ(不図示)により開閉可能に支持されている。
【0018】
前記カウルパネル1には、樹脂製のカウルルーバ5が配設されている。該カウルルーバ5は、車幅方向に延びるカウル本体6と、該カウル本体6の左,右両端部に配置され、カウル本体6内を車幅方向に遮蔽する遮蔽壁7,7とを一体に形成した構造を有する。
【0019】
前記カウル本体6は、前記カウルパネル1を上方から覆うように前後方向に延びる水平部6aと、該水平部6aの前縁部から下方に延びる縦壁部6bとを有する。該水平部6aの後縁部6a′は、前記フロントガラス3の下縁部3aを覆うように配置されている。
【0020】
前記縦壁部6bの下縁部6cには、該下縁部6cから前方斜め上向きに延びる前壁部6dが形成され、該前壁部6dの上縁には、前方に突出するシールフランジ部6eが屈曲形成されている。該シールフランジ部6eには、全閉時に前記フード4に圧接することにより、該フート4とカウルルーバ5との間をシールするシール部材9が装着されている。
【0021】
前記縦壁部6bと前壁部6dとで、フード4とカウルルーバ5との間に進入した雨水を車幅方向外部に排出する排水溝6fが形成されている。
【0022】
前記フード4は、これの後縁4aが前記水平部6aの前縁に近接し、かつ水平部6aと略連続面をなすよう配設され、該フード4とカウルルーバ5とは意匠が同一となっている。
【0023】
前記縦壁部6bの下縁部6cには、複数の取付け片部6gが車幅方向に所定間隔をあけて突出形成されている。この各取付け片部6gは、クリップ部材10により前記カウルパネル1の前フランジ部1bに取り付けられている。
【0024】
前記水平部6aには、走行風を車室B内に導入する外気導入開口6hが形成され、該外気導入開口6hには、走行風をカウルパネル1内に導くルーバ部材11が装着されている(図6参照)。
【0025】
また前記カウルパネル1の後壁1cの前記外気導入開口6hに臨む部分には、吸気孔1dが形成され、前記ルーバ部材11には、外気導入開口6hと吸気孔1dとの間を仕切る仕切り壁11aが形成されている。該仕切り壁11aにより、外気導入開口6hから進入した雨水が吸気孔1dに入り込むのを防止している。
【0026】
前記水平部6aの左,右側縁部には、段落ち部6iが形成され、該段落ち部6iには、前述のヒンジを覆うヒンジカバー15,15を取り付けるための複数の取付け孔6jが形成されている。該左,右のヒンジカバー15は、カウル本体6と連続面をなすよう配置され、前記遮蔽壁7を上方から覆っている。
【0027】
前記遮蔽壁7は、水平部6aの段落ち部6iと縦壁部6bとの間を閉塞するよう形成されている。
【0028】
該遮蔽壁7の下面7aと前記カウルパネル1の底壁1eとの間には、所定の隙間tが設けられている。この隙間tを介して、エンジン室Aからの熱風aがカウルパネル1内に流入するようになっている。該カウルパネル1内に流入した熱風aは、前記吸気孔1dからヒータ(不図示)に導入され、外気導入開口6から導入した走行風とともに所定温度に調整されて車室Bに供給される。
【0029】
ここで、前記隙間tは、車両の温暖地仕様と寒冷地仕様とで設定が異なり、本実施形態では、温暖地仕様に設定されている。なお、寒冷地仕様の場合は、熱風流入量を増やす必要があることから、前記隙間tを大きく設定するようにしている。
【0030】
そして前記遮蔽壁7には、カウル本体6に車両上方から所定値を越える荷重Fが入力したときに、該遮蔽壁7の変形を誘発する多数の脆弱部7bが上下方向に所定間隔をあけて形成されている。ここで、前記遮蔽壁7は、左右対称であることから、車両前方から見た、右側の遮蔽壁7についてのみ説明する。
【0031】
前記各脆弱部7bは、遮蔽壁7の板厚の1/2程度の切欠き溝を形成することにより構成され、前記遮蔽壁7の前半部のみに形成されている。
【0032】
前記各脆弱部7bは、前記荷重入力方向Fと略直交する方向に延びるよう少し後上がりに傾斜させて配置されている。
【0033】
また前記遮蔽壁7には、前記各脆弱部7bに交差するよう延びる第2の脆弱部7cが形成されている。これにより、遮蔽壁7の前半部全面には、前記脆弱部7bと第2の各脆弱部7cとで碁盤目状の切欠きが形成されている。
【0034】
また前記遮蔽壁7の水平部6aと縦壁部6bとの境界部であるコーナー部には、車幅方向に貫通する開口7dが形成されている。この開口7dは、前記遮蔽壁7のコーナー部の各脆弱部7a,7bで囲まれた部分を切り離すことにより形成されている。
【0035】
本実施形態によれば、水平部6aと、該水平部6aの前縁部から下方に延びる縦壁部6bとを有するカウル本体6の左,右側端部に遮蔽壁7を一体に形成し、該遮蔽壁7に、上方からの荷重入力Fにより変形可能な多数の脆弱部7bを該荷重入力方向Fと略直交する方向に延びるよう形成したので、例えば被衝突物が落下して荷重入力Fが加わると、遮蔽板7の各脆弱部7bが折れたり,割れたりして変形して前記荷重を吸収することとなり、ひいては被衝突物への衝撃力を緩和できる。
【0036】
本実施形態では、カウル本体6に一体に形成された遮蔽壁7に脆弱部7bを形成したので、カウルルーバ5を樹脂により製造する際に脆弱部7bも同時に形成でき、従来の遮蔽板を別部品により構成する場合に比べて部品点数及び組み付け工数を低減でき、コストの上昇を抑制できる。
【0037】
本実施形態では、前記遮蔽壁7の水平部6aと縦壁部6bとのコーナー部に開口7dを形成したので、前記荷重入力Fが加わると、該開口7dを起点として水平部6aと縦壁部6bとが拡開する方向b,bに変形し易くなる(図2参照)。これにより遮蔽板7の各脆弱部7bに応力が集中し易くなり、それだけ衝撃力の吸収効率を高めることができる。
【0038】
また本実施形態では、前記遮蔽壁7に、各脆弱部7bと交差するよう延びる多数の第2の脆弱部7cを形成したので、衝撃力によって遮蔽壁7が変形し易くなり、衝撃力吸収機能をより高めることができる。
【0039】
さらに前記脆弱部7bと第2の脆弱部7cとを碁盤目状をなすように形成したので、図4に示すように、遮蔽壁7の下端部の各脆弱部7b,7cで囲まれた部分7′,7′を切り離すことにより、遮蔽壁7とカウルパネル1との隙間tを大きくすることができる。これにより、エンジン室Aからヒータへの熱風流入量を増やすことができ、寒冷地仕様に対応できる。即ち、従来では、温暖地仕様と寒冷地仕様の2種類のカウルルーバを準備する必要があったが、本実施形態では、1つの遮蔽壁で共通化することができ、コストを低減できる。
【0040】
前記実施形態では、切欠き溝により碁盤目状の脆弱部7b,7cを形成した場合を説明したが、本発明の脆弱部は、各種の変形例が考えられる。例えば、切欠き溝をハニカム状に形成したり、多数の孔を所定ピッチでミシン目状に形成したり、あるいはスリットにより脆弱部を形成したりすることを可能である。また遮蔽壁をアコーディオン形状にすることにより脆弱部を形成してもよく、この場合にも前記実施形態と略同様の効果が得られる。
【0041】
また前記実施形態では、カウル本体6の左,右側端部に遮蔽壁7を配置した場合を説明したが、本発明の遮蔽壁は、カウル本体の車幅方向中途部に設けた場合にも適用でき、この場合にも脆弱部を設けることにより、前記実施形態と同様の効果が得られる。
【0042】
前記実施形態では、遮蔽壁をカウル本体に一体に形成した場合を例に説明したが、本発明は、これに限られるものではなく、遮蔽壁を、例えば溶着,接着等によりカウル本体に接合して一体的に形成した場合も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態による車両用カウルルーバの衝撃力吸収構造を説明するためのカウルルーバの斜視図である。
【図2】前記カウルルーバの側面図である。
【図3】前記カウルルーバの断面図(図1のIII-III線断面図)である。
【図4】前記カウルルーバの遮蔽壁の斜視図である。
【図5】前記カウルルーバの断面図(図1のV-V線断面図)である。
【図6】前記カウルルーバの断面図(図1のVI-VI線断面図)である。
【符号の説明】
【0044】
5 カウルルーバ
6 カウル本体
6a 水平部
6b 縦壁部
7 遮蔽壁
7b 脆弱部
7c 第2の脆弱部
7d 開口
F 荷重入力方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に延びるカウル本体と、該カウル本体内を車幅方向に遮蔽する遮蔽壁とを一体的に設けた車両用カウルルーバの衝撃力吸収構造であって、
前記カウル本体に車両上方から所定値を越える荷重が入力したときに変形可能な脆弱部を前記遮蔽壁に設け、
該脆弱部は、前記荷重入力方向と略直交する方向に延びるよう形成されていることを特徴とする車両用カウルルーバの衝撃力吸収構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用カウルルーバの衝撃力吸収構造において、
前記カウル本体は、少なくとも車両前後方向に延びる水平部と、該水平部の前縁部から下方に延びる縦壁部とを有し、
前記遮蔽壁と水平部と縦壁部との境界部には、開口が形成されており、
さらに前記遮蔽壁には、前記脆弱部に交差するよう延びる第2の脆弱部が形成されていることを特徴とする車両用カウルルーバの衝撃力吸収構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−6313(P2010−6313A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−170568(P2008−170568)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】