説明

車両用ガラスアンテナ

【課題】本発明は、衛星からの準マイクロ波帯の円偏波の電波を受信する車両用の円偏波アンテナを取付けた車両で所望のアンテナ性能が得られるようにアンテナチューニングを行う際に、作業効率よくアンテナチューニングを行うことのできる車両用の円偏波アンテナを提供することを目的としている。
【解決手段】
正極側エレメントと負極側エレメントとが同一平面上に配設されている車両用円偏波アンテナであり、前記正極側エレメントは、少なくとも正極側給電点と、前記正極側給電点が載置される正極側面状体と、前記正極側面状体に接続される正極側メイン線条とを備え、前記負極側エレメントは、少なくとも負極側給電点と、前記負極側給電点が載置される負極側面状体と、前記負極側面状体に接続される負極側メイン線条とを備え、前記正極側メイン線条の先端部と前記負極側メイン線条の先端部とがオーバーラップし、相互に容量結合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の窓ガラスに配設される1〜3GHzの準マイクロ波帯の電波を送受信するのに好適な円偏波アンテナであり、例えば、北米でサービスされているXMサテライトラジオ、シリウスサテライトラジオなどのSDARS(Satellite Digital Audio Radio Service)といった衛星ラジオ放送の受信や、GPS(Global Positioning System)衛星からの電波の受信に用いることのできる車両用の円偏波アンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
北米でサービスされているXMサテライトラジオやシリウスサテライトラジオなどのSDARS(Satellite Digital Audio Radio Service)や、GPS(Global Positioning System)において衛星からの電波は円偏波で到来するため、その電波を効率よく受信するために、円偏波アンテナを用いている。
【0003】
従来、衛星からの電波を車両で受信するためには、車両のルーフにパッチアンテナを取付けていた。車両のルーフにパッチアンテナを取付けると、前記パッチアンテナは良好なアンテナ性能を達成することができるが、パッチアンテナがルーフ上に取付けられると前記パッチアンテナが目立ってしまうため車両の美観を損ねてしまうと考えられていた。
【0004】
そのため、車両に配設しても目立たないアンテナとして、例えば、特開2006−311497号公報に記載されているような導電性塗料によってアンテナがプリントされた透明フィルムを窓ガラスに貼り付けて用いるアンテナ(特許文献1)が提案されたり、特開2002−52957号公報に記載されているようなパッチアンテナをダッシュボード内の受信機の付近に配設させる方法(特許文献2)などが提案されたりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−311497号公報
【特許文献2】特開2002−52957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、車両の窓ガラスにアンテナを配設する場合、準マイクロ波帯の電波を受信する場合に限らず、前記アンテナを取付ける車両の形状や、前記アンテナを取付ける位置によって、車両から電磁的な影響を受ける。そのため、前記アンテナを単体のガラス板に配設して所望のアンテナ性能が得られていたとしても、車両の窓ガラスにアンテナを取付けたときに所望のアンテナ性能が得られないことがある。そのため、前記アンテナで所望の性能を得るために、車両に導電性テープなどを用いてアンテナを実際に形成して受信性能を測定しつつ前記アンテナの構成要素の大きさや長さ、構成要素間の間隔などを変化させて、前記車両に前記アンテナを取り付けたときに所望の受信性能が得られるように、アンテナチューニングを行う必要がある。
【0007】
特許文献1に記載のアンテナは、ループ状素子に無給電素子を近接させることで円偏波に好適なアンテナを実現している。このアンテナを車両に取付けてアンテナチューニングを行う際には、ループ状素子の大きさや、無給電素子の長さ、ループ状素子と無給電素子の間隔などを調整することができるが、ループ状素子の大きさを変化させるには、チューニングのたびにループ状素子を取付け直さなければならずアンテナチューニング作業を効率よく行うことができなかった。
【0008】
また、特許文献2に記載のパッチアンテナの取付け方法は、パッチアンテナをダッシュボード内に配設するため、前記パッチアンテナの周囲の金属部品からの電磁的な影響を受けてしまい、ルーフに取り付けたときほどには良好な受信性能が得られないという問題があった。
【0009】
本発明は、これらの問題点の解決を図る。すなわち、衛星からの準マイクロ波帯の円偏波の電波を受信する車両用の円偏波アンテナについて、前記円偏波アンテナを取付けた車両で所望のアンテナ性能が得られるようにアンテナチューニングを行う際に、作業効率よくアンテナチューニングを行うことのできる車両用の円偏波アンテナを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のアンテナは、正極側エレメントと負極側エレメントとが同一平面上に配設されている車両用円偏波アンテナである。前記正極側エレメントは、少なくとも正極側給電点と、前記正極側給電点が載置される正極側面状体と、前記正極側面状体に接続される正極側メイン線条とを備え、前記負極側エレメントは、少なくとも負極側給電点と、前記負極側給電点が載置される負極側面状体と、前記負極側面状体に接続される負極側メイン線条とを備えている。そして、前記正極側メイン線条の先端部と前記負極側メイン線条の先端部とが隙間をおいてオーバーラップして配設されており、相互に容量結合している。
【0011】
また、本発明のアンテナには前記正極側エレメントと前記負極側エレメントとのいずれかに少なくとも一本の円偏波の軸比調整用の補助線条を備えることができる。
【0012】
前記正極側エレメントに、少なくとも2本の補助線条を接続することにして、前記備えられている補助線条のうちの2本の補助線条は前記正極側面状体又は前記正極側メイン線条に接続し、前記負極側エレメントから離れる方向に延ばすようにするとなおよい。
【0013】
さらに、本発明のアンテナは車両用ガラスに配設することができる。または、透明フィルムに印刷することもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の準マイクロ波を送受信するための車両用の円偏波アンテナは、導電性テープによって前記アンテナを形成し、前記アンテナの感度を測定しながら、前記アンテナの各構成要素の長さや大きさや位置関係を変化させて、所望のアンテナ感度を得られる構成を見出すアンテナチューニングを行いやすい構成となっているため、前記アンテナを車両の窓ガラスに取付けたときに、短時間に多くのアンテナのパターンを測定することができ、速やかに所望のアンテナ感度が得られように調整できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1に係わる車両用ガラスアンテナを車内面側から見たときの正面図。
【図2】実施例2に係わる車両用ガラスアンテナを車内面側から見たときの正面図。
【図3】実施例3に係わる車両用ガラスアンテナを車内面側から見たときの正面図。
【図4】実施例4に係わる車両用ガラスアンテナを車内面側から見たときの正面図。
【図5】実施例5に係わる車両用ガラスアンテナを車内面側から見たときの正面図。
【図6】実施例6に係わる車両用ガラスアンテナを車内面側から見たときの正面図。
【図7】実施例7に係わる車両用ガラスアンテナを車内面側から見たときの正面図。
【図8】実施例8に係わる車両用ガラスアンテナを車内面側から見たときの正面図。
【図9】実施例9に係わる車両用ガラスアンテナを車内面側から見たときの正面図。
【図10】実施例10に係わる車両用ガラスアンテナを車内面側から見たときの正面図。
【図11】実施例11に係わる車両用ガラスアンテナを車内面側から見たときの正面図。
【図12】実施例12に係わる車両用ガラスアンテナを車内面側から見たときの正面図。
【図13】実施例13に係わる車両用ガラスアンテナを車内面側から見たときの正面図。
【図14】実施例1の車両用ガラスアンテナのGPS帯域でのシミュレーションで求めた軸比。
【図15】実施例1の車両用ガラスアンテナのGPS帯域でのシミュレーションで求めた交差偏波識別度。
【図16】実施例1の車両用ガラスアンテナをフロントガラスに配設したときの車内側から見た図。
【図17】車両に被測定アンテナを取付けたときの仰角ごとのアンテナ感度の測定結果(実線:図16のようにフロントガラスに配設した実施例1の車両用ガラスアンテナ、破線:ダッシュボードに搭載されたパッチアンテナ)
【発明を実施するための形態】
【0016】
<本発明の全体構成>
本発明のアンテナは、車内面側から見ると、例えば図1のような構成をしており、正極側エレメント10と負極側エレメント20とから構成されている。そして、正極側エレメントには、正極側面状体12と、正極側面状体12上に配設される正極側給電点11と、正極側面状体12から延伸される正極側メイン線条13とが少なくとも備えられている。また、負極側エレメントには、負極側面状体22と、負極側面状体22上に配設される負極側給電点21と、負極側面状体22から延伸される負極側メイン線条23とが少なくとも備えられている。
【0017】
そして、正極側面状体12と負極側面状体22とは、相互に向き合っている端縁同士が距離fだけ離隔して配設されており、正極側メイン線条13と負極側メイン線条23とが、その先端部がある間隔を隔ててオーバーラップして配設いることにより、円偏波を受信している。さらに、図1において正極側エレメント10が正極側第1補助線条14と正極側第2補助線条15とを備えているように、本発明のアンテナの軸比を調整するための複数の補助線条を正極側エレメント又は負極側エレメント、若しくは正極側エレメント及び負極側エレメントの両方に備えることができる。
【0018】
<本発明のアンテナのアンテナチューニングの容易さについて>
本発明のアンテナは、正極側エレメント10における正極側メイン線条13の長さ、負極側エレメント20における負極側メイン線条23の長さ、負極側面状体22の周縁の長さを調整することによって、所望の周波数に本発明のアンテナの入力インピーダンスを、本発明のアンテナと接続される同軸線の特性インピーダンスに整合させることができる。
【0019】
また、正極側メイン線条13の先端部と負極側メイン線条23の先端部とのオーバーラップしている箇所のオーバーラップ長b及びオーバーラップしている箇所の正極側メイン線条13の先端部と負極側メイン線条23の先端部との間隔gを調整することによって、本発明のアンテナに誘起される電流の位相を調整することができ、本発明のアンテナの軸比を調整することができる。オーバーラップ長bは、α・λ/4(α:本発明のアンテナを貼り付けるガラス板の波長短縮率、λ:送受信したい電波の波長)以上では、大きな効果が得られないため、α・λ/4以下で調整するようにするとよい。また、間隔gの値は、10mmよりも広くなると、正極側メイン線条13と負極側メイン線条23との容量結合が弱くなってしまうため、10mm以下で調整するようにするとよい。
【0020】
また、前記オーバーラップしている箇所の負極側面状体の端縁からの距離cは、本発明のアンテナで電波を受信することによって誘起される電流の電流分布に影響するため、前記距離cを調整することによって、本発明のアンテナ内での電流分布が調整され、最適な軸比を得ることができる。
【0021】
本発明のアンテナを車両の窓ガラスに取付けた場合には、送信源からの直接波に加えて、前記窓ガラスの周囲の金属ボディーによる反射波が本発明のアンテナに到来してくる。前記反射波は、通常その到来方向と位相が前記直接波とは異なっている。そのため、本発明のアンテナに誘起される電流は、前記直接波によって前記アンテナに誘起される電流と前記反射波によって前記アンテナに誘起される電流とが重なり合うことによって、場合によっては強め合って大きなアンテナ感度が得られるが、場合によっては弱め合って小さなアンテナ感度しか得られないことになる。
【0022】
そのため、本発明のアンテナにおいては、本発明のアンテナを車両の窓ガラスに取付けた状態で、アンテナチューニングで、正極側メイン線条13の長さや、負極側メイン線条23の長さや、前記オーバーラップしている箇所のオーバーラップ長bや、間隔gや、距離cをさまざまに調整することによって、前記反射波によって前記アンテナに誘起される電流と前記直接波によって前記アンテナに誘起される電流とが重なり合っても、前記アンテナで電流が弱め合わないようにすることができ、アンテナ感度の低下を防ぐことができる。
【0023】
本発明のアンテナは、アンテナチューニングを行う際には、導電性テープを用い、前記導電性テープで前記アンテナの一部もしくは全部を形成し、正極側メイン線条13及び負極側メイン線条13の長さや配置を変化させるたびに、アンテナ感度の測定を行い、前記各線条の最適な配置を見出していく。本発明のアンテナにおいて、正極側エレメント10と負極側エレメント20に備えられている線条は、全て一端が開放端となっている線条であるため、例えば、予め長めに前記アンテナを構成する線条を前記車両の窓ガラスに貼り付けて、その線条の長さを変化させて最適な長さに調整するといったアンテナチューニングを簡易に行うことができる。そのため、アンテナチューニングの際には、短時間に多くのアンテナの構成を試すことが可能となり、すばやく受信性能が良好なアンテナの構成を得ることが可能となる。
【0024】
また、本発明のアンテナにおいては、図1の正極側エレメント10に備えられている正極側第1補助線条14及び正極側第2補助線条15のように、複数の軸比調整用の補助線条を備えることができる。これらの補助線条は、本発明のアンテナが電波を受信したときに誘起される電流の位相を変化させることで、本発明のアンテナの軸比を変化させる役割をするものであり、前記補助線条の本数、取付け位置、長さを変化させることによって、さまざまな方向から入射してくる反射波によって誘起される電流の位相を適切に調整することによって、本発明のアンテナ感度の低下の抑制に寄与するものである。
【0025】
このような補助線条を本発明のアンテナが備えることによって、正極側メイン線条13と負極側メイン線条23とのみを用いてアンテナチューニングを行うよりも、変化させ得るパラメータをより多く備えることができるようになるため、より良好なアンテナ感度を得やすくなる。
【0026】
<正極側面状体及び負極側面状体の形状について>
正極側面状体12の大きさは、前記各給電点に配設される図示されていない給電端子の給電部の大きさよりも大きければ問題はない。また、正極側面状体12の形状は、正極側面状体12の大きさが前記給電端子の給電部の大きさ程度であれば図1のように方形状であろうが、三角形、ひし形などの多角形状であろうが、円形だろうが、良好なアンテナ性能を得る上で大きな問題とはならない。
【0027】
正極側面状体12の大きさは、前記給電端子の大きさよりも大きくなっても構わない。しかしながら、正極側面状体12を大きくすると、正極側面状体12内での電流分布も考慮して、正極側面状体12の横幅や縦幅を変化させたり、周縁部の形状を変化させたりするようなアンテナチューニングを行う必要がある。
【0028】
負極側面状体22は、アースとしても機能するため、ある程度の大きさが必要である。そのため、負極側面状体22における電流分布も、本発明のアンテナのアンテナ感度に大いに影響する。通常は、アンテナチューニングの行いやすさのために正極側メイン線条13、負極側メイン線条23及び前記補助線条の取り付け位置や長さなどを変化させることによってアンテナチューニングを行うが、負極側面状体22の大きさを変化させたり、図10のように、負極側面状体22の形状を変化させることによって、アンテナチューニングを行うことができる。負極側面状体22に誘起される電流は、その周縁部で強くなるため、例えば図1のような長方形の形状を図10のような多角形状に変化させると、アンテナ感度に大きな影響を与えることができる。本発明のアンテナでは、負極側面状体22の形状は、多角形状以外に、例えば円形状などにしてもよいし、負極側面状体の中央付近をくり抜いても構わないが、アンテナチューニングの行いやすさを考慮すると、それらの形状とするのはそれほど好ましいこととは言えない。
【0029】
<正極側給電点及び負極側給電点の配置について>
本発明のアンテナは、受信機まで前記アンテナで受信した信号を伝送するための給電線として同軸線を用いている。前記同軸線の先端には、図示されていない給電端子を接続しており、その給電端子を前記アンテナの正極側給電点11及び負極側給電点21にはんだ付けしている。前記給電端子の正極側には前記同軸線の芯線を接続しており、前記給電端子の負極側には、前記同軸線の外皮導体を接続している。
【0030】
前記給電端子としては、例えば図1で一つの正極側給電点11と一つの負極側給電点12とが直列に並んでいるように、正極側給電部と負極側給電部とを一つずつ備え、それらの給電部が直列に並んでいる構成のもの(a)か、図13のように、正極側給電点11の両サイドに2個の負極側給電点12が配設されているような構成のもの(b)とがある。
【0031】
前記アンテナで使用する給電端子が、(a)の構成のものである場合には、一般的に正極側給電部と負極側給電部とは離れているため、図1のように負極側給電点11が、負極側面状体の内側に配設されることとなる場合が多い。
【0032】
また、前記アンテナで使用する給電端子が、(b)の構成のものである場合には、前記給電端子の正極側給電部が、2つの負極側給電部によって両サイドから挟み込まれる構成となるため、正極側給電点と負極側給電点とを離して配設することができず、例えば図13のように、負極側給電点21が、負極側面状体22の正極側面状体12と向き合っている辺縁の近傍に配設されることになる。
【0033】
<正極側メイン線条及び負極側メイン線条について>
正極側メイン線条13と負極側メイン線条23とは、図1のようにそれぞれの先端部でオーバーラップするように配設されている。例えば図1においては、正極側メイン線条13の先端部が負極側メイン線条23の先端部よりも正極側面状体から遠い位置に配設されているが、かならずしもこのようである必要はなく、図2のように負極側メイン線条23の先端部を、正極側メイン線条13よりも、正極側面状体から遠い位置に配設してもよい。
【0034】
正極側メイン線条13の正極側面状体12に対する接続位置は、図1のように正極側面状体12の大きさが小さい場合には、正極側面状体12のどこに接続してもアンテナ感度に大きな変化はない。しかし、負極側メイン線条23の負極側面状体22に対する接続位置は、その位置によって、アンテナ感度に大きな影響を与える。そのため、負極側メイン線条23の負極側面状体22に対する接続位置は、アンテナチューニングの結果によって、例えば図1のように負極側面状体22の正極側面状体からはもっとも遠いコーナーになることもあれば、図9のように正極側メイン線条13の先端部と負極側メイン線条23の先端部とがオーバーラップしている箇所と向き合っている負極側面状体の一辺のどこかになることもあり、図12のように、負極側面状体22の正極側面状体12と向き合う辺のコーナー部となることもある。
【0035】
例えば図1のように正極側メイン線条13も負極側メイン線条23も、通常は、それぞれ正極側面状体12及び負極側面状体22から離れる方向に延伸し、途中を直角に折り曲げて、それぞれ正極側メイン線条折曲部13a及び負極側メイン線条折曲部23aを構成することが多い。これは、このようにした方がアンテナチューニングを行う際に、前記各線条を構成するための導電性テープを貼り易いからである。そのため、アンテナ感度を上げるためには、特に図1のように前記各メイン線条を直角に折り曲げなければならないということはなく、例えば図10のようにゆるやかに折り曲げてもよいし、アンテナチューニングの手間を考慮しなければ、前記各メイン線条を例えば円弧状のような各メイン線条を緩やかに曲げるようなものであっても構わない。
【0036】
<右円偏波の電波を受信する場合、左円偏波の電波を受信する場合>
本発明のアンテナで、車外側から到来する右円偏波の電波を受信する場合には、図1の矢印kで示すように、本発明のアンテナを車内面側から見たときに、正極側給電点11から正極側メイン線条13を通り、正極側メイン線条13と負極側メイン線条23とのオーバーラップ部を通り、負極側メイン線条23と負極側面状体に至る経路が、時計周りとなるように、正極側メイン線条13と負極側メイン線条23とを配設してやるとよい。
【0037】
また、車外側から到来する左円偏波の電波を受信する場合には、図11の矢印kで示すように、本発明のアンテナを車内面側から見たときに、正極側給電点11から正極側メイン線条13を通り、正極側メイン線条13と負極側メイン線条23とのオーバーラップ部を通り、負極側メイン線条23と負極側面状体に至る経路が、反時計周りとなるように、正極側メイン線条13と負極側メイン線条23とを配設してやるとよい。また、図12のように正極側メイン線条13と負極側メイン線条23とを配設しても、車外側から到来する右円偏波の電波を受信することができる。
【0038】
<補助線条について>
補助線条は、正極側エレメント10又は負極側エレメント20に備えるか、若しくは正極側エレメント10と負極側エレメント20との両方に備えることができるエレメントであり、本発明のアンテナに誘起される電流の位相を変化させることにより、本発明のアンテナの軸比の調整を行うことができる。
【0039】
前記補助線条は、例えば1本だけであっても本発明のアンテナの軸比調整用の線条として機能させることができ、図5のように正極側面状体12に接続することもできるし、図6のように正極側メイン線条に接続することもできる。また、前記補助線条は2本備えることもでき、特に図1のように正極側第1補助線条14及び正極側第2補助線条15のように正極側エレメント10上に前記補助線条を2本接続し、かつ前記補助線条が負極側面状体22から遠ざかる方向に延伸されるように配設してやることで、本発明のアンテナの軸比が、この2本の補助線条のそれぞれの長さや相互の位置関係によって大きく影響されるため、よりアンテナチューニングを容易に行うことができるようになる。
【0040】
また、前記補助線条は、図4のように正極側エレメント10に3本接続するようにしてもよい。さらに、図3、図4のように補助線条を折り曲げることもできる。また、図3や図8のように負極側エレメント20に前記補助線条を接続することもできる。
【0041】
<本発明のアンテナの形成方法について>
本発明のアンテナは、アンテナチューニング時には、導電性テープで形成する。しかしながら、最終的なアンテナ感度の確認では、本発明のアンテナを、リアガラスのデフォッガを形成するのと同じ一般的な導電性セラミックペーストを用い、デフォッガと同じ方法で印刷し、加熱炉によって焼付けるか、透明フィルム上に一般的な導電性塗料でプリントしたものを、窓ガラスに貼り付ける。
【実施例】
【0042】
以下に本発明の各実施例について説明する。
【0043】
<実施例1>
図1は、本発明の実施例1に係わるアンテナを車両用ガラスに配設したときの車内面側から見たときの正面図である。実施例1のアンテナは、正極側エレメント10と負極側エレメント20とから構成されている。
【0044】
正極側エレメント10は、正極側面状体12と、正極側面状体12上に配設される正極側給電点11と、正極側面状体12から延伸される正極側メイン線条13と、正極側面状体12から延伸される正極側第1補助線条14と、正極側メイン線条13の途中部から延伸される正極側第2補助線条15とから構成されている。
【0045】
負極側エレメント20は、負極側面状体22と、負極側面状体22上に配設される負極側給電点21と、負極側面状体22から延伸される負極側メイン線条23とから構成されている。
【0046】
正極側面状体12の形状は、正方形状とし、負極側面状体22の形状は、長方形状としている。そして、正極側面状体12と負極側面状体22との相互に向かい合う一辺が平行になるように、間隔fだけ離して前記ガラス面上に配設している。
【0047】
正極側面状体12の大きさは、図示していない給電端子の芯線側の給電部が完全に載置できる程度の大きさがあればよい。また、負極側面状体22は、負極側面状体22に、前記給電端子の外皮導体側の給電部を載置することになるため、地板としても機能している。そのため、負極側面状体22は、アンテナ性能を安定させるために、ある程度の大きさを必要とする。前記給電端子の外皮導体側の給電部が載置されることになる負極側給電点21の位置は、正極側給電点11から正極側面状体12の負極側面状体22と相互に向き合っている辺に直交する仮想線a上にくるようになっている。そのため、負極側給電点21の、負極側面状体22の正極側面状体11と向き合っている辺からの距離mは、実施例1のアンテナで用いる給電端子の前記芯線側の給電部と前記外皮導体側の給電部との間隔と、正極側面状体12と負極側面状体22との相互に向かい合う辺同士の間隔fによって定まっている。
【0048】
実施例1のアンテナで用いている前記給電端子は、芯線側給電部と外皮導体側給電部をそれぞれ一つずつ備えている。そして、各給電部の形状は、同一であり、導電性の方形面状体となっている。
【0049】
負極側メイン線条23は、負極側面状体22のコーナーに接続されており、正極側給電点11と負極側給電点21とを通る仮想線aに対して直交するように延ばし、その途中で直角に折り曲げられ、負極側メイン線条折曲部23aを形成されている。
【0050】
また、正極側メイン線条13は、正極側面状体12に接続され、負極側メイン線条と同じ方向に延伸され、その途中で負極側メイン線条折曲部23aが配設されている方向に折り曲げられ、正極側メイン線条折曲部13aを形成されている。
【0051】
正極側メイン線条折曲部13aの先端部は、負極側メイン線条折曲部23aよりも、負極側面状体22から遠い位置に配設されており、負極側メイン線条折曲部23aの先端部と間隔gを隔ててオーバーラップし、正極側メイン線条折曲部13aの先端部と負極側メイン線条折曲部23aとでオーバーラップ部を形成している。
【0052】
実施例1のアンテナは、矢印kで記したように、本実施例のアンテナを車内面側から見たときに、正極側給電点11から正極側メイン線条13を通り、正極側メイン線条折曲部13aと負極側メイン線条折曲部23aとのオーバーラップ部を通り、負極側メイン線条23を通り、負極側面状体22に至る経路が時計回りとなるため、車外側から到来する右円偏波の電波を好適に受信できるアンテナとなっている。
【0053】
また、正極側第1補助線条14は、正極側面状体12に接続され、負極側エレメント20から離れる方向に真っ直ぐ延伸されており、正極側第2補助線条15は、正極側メイン線条13を折り曲げた点に接続され、正極側第1補助線条14と同じ方向に真っ直ぐに延伸されている。
【0054】
本実施例のアンテナをガラス板に配設した状態で、GPS帯域である周波数1.57GHz付近の周波数での受信に好適となる条件をさぐるために以下の条件でシミュレーションを行った。
【0055】
計算手法:有限要素法。
【0056】
ガラス板のサイズ:縦130mm × 横130mm 厚さ4mm。
【0057】
ガラスの比誘電率:6。
【0058】
前記ガラス板の周囲の媒体は空気。
【0059】
本実施例のアンテナを前記ガラス板に貼り付けたときに前記貼り付けた面を見たときに本実施例のアンテナが図1のように見えるようにした。
【0060】
本実施例のアンテナの配設位置は、前記ガラス板の正極側給電点11が前記ガラス板表面の中心になるようにした。
【0061】
本シミュレーションの結果、本実施例のアンテナの最適な寸法は次の通りとなった。
【0062】
正極側面状体12=10mm × 10mm。
【0063】
正極側メイン線条13=50mm。
【0064】
正極側メイン線条折曲部13a=20mm。
【0065】
正極側第1補助線条14=20mm。
【0066】
正極側第2補助線条15=40mm。
【0067】
正極側第1補助線条14と正極側第2補助線条15との間隔l=30mm。
【0068】
負極側面状体22の横寸法d=30mm。
【0069】
負極側面状体22の縦寸法e=20mm。
【0070】
負極側メイン線条23=50mm。
【0071】
負極側メイン線条折曲部23a=30mm。
【0072】
正極側面状体12と負極側面状体との相互に向かい合った辺同士の間隔f=5mm。
【0073】
正極側メイン線条折曲部13aと負極側メイン線条折曲部23aとのオーバーラップ部の長さb=5mm。
【0074】
正極側メイン線条折曲部13aと負極側メイン線条折曲部23aとの間隔g=5mm。
【0075】
負極側メイン線条折曲部23aと負極側面状体22の負極側メイン線条折曲部側の辺との間隔c=20mm。
【0076】
正極側給電点11は、正極側面状体の中心に配設した。
【0077】
負極側給電点21の、負極側面状体22の正極側面状体12に向き合っている辺からの距離m=10mm。
【0078】
各線条の幅=0.7mm。
【0079】
図14は、図15は、本実施例のアンテナの各構成要素の寸法を上記に合わせてシミュレーションを行った結果である。図14は、本実施例のアンテナを貼り付けた前記ガラス面から反対側のガラス面に垂直な方向へ送受信される円偏波の軸比を1.57GHz周辺の周波数に対して求めた結果である。また、図15は、本実施例のアンテナを貼り付けた前記ガラス面から反対側のガラス面に垂直な方向へ送受信される左円偏波に対する右円偏波の交差偏波識別度を1.57GHz周辺の周波数に対して求めた結果である。
【0080】
図14、図15から、本実施例のアンテナの軸比及び左円偏波に対する右円偏波の交差識別度は1.56GHzにおいて最良の値となっており、図14から、円偏波の軸比は1.56GHzにおいて2.7dBと最小の値となり、図15から左円偏波に対する右円偏波の交差偏波識別度は、16.3dBと最大の値となった。これらの値は、通常円偏波の受信に使用されるパッチアンテナの性能に比べて遜色のない性能を示す値である。
【0081】
このようにシミュレーションを行って本実施例のアンテナの各構成要素の寸法を定めた上で、本実施例のアンテナを車両のフロントガラスの車内面側に貼り付けて、測定を行った。
【0082】
図16は、本実施例のアンテナをフロントガラス30の上辺付近に配設して車両に取付けたときの車内面側から見たときの本実施例のアンテナの様子を示したものであり、本実施例のアンテナをフロントガラス30の中心線hに対して右側で、正極側エレメント10が負極側エレメント20よりも、中心線hから遠い位置となるように配設した。そしてフランジ周辺端40と本実施例のアンテナとの間隔jを30mm、中心線hから本実施例のアンテナまでの間隔iを100mmとした。図16で、フロントガラスに貼り付けた本実施例のアンテナの各構成要素の寸法は、上記のシミュレーション結果で得られた寸法と同じ寸法とした。
【0083】
本実施例のアンテナは、車内面側に導電性セラミックペーストによって、各線条の幅を0.7mmとなるように印刷し、乾燥後、加熱炉によって焼付けて形成する。その後、正極側給電点11と負極側給電点21のそれぞれに、図示しない給電端子の芯線側給電部と外皮導体側給電部をはんだ付けした。そして、フロントガラス30を車両に取付け、図示しないチューナーから延ばした同軸ケーブルの先端の芯線側を芯線側給電部に接続し、前記同軸ケーブルの先端の外皮導体側給電部を外皮導体側給電部に接続した。
【0084】
図17は、図16に示すように本実施例のアンテナを車両のフロントガラス30に配設したときの電波の到来する方向の仰角ごとに1.57GHzの電波に対するアンテナ感度の全周方向の平均値(以下、アンテナ感度と記述することとする)を示した図である。実線は、本実施例のアンテナのアンテナ感度の測定結果であり、破線は、本実施例のアンテナの比較例であり、車両のダッシュボート内のカーナビゲーションの筐体上に配置されたGPS用のパッチアンテナのアンテナ感度の測定結果である。この比較例で示したパッチアンテナの配置は、現在一般的なカーナビゲーションでよく採用されているものである。
【0085】
図17から、仰角0度から仰角60度の範囲において、本実施例のアンテナのアンテナ感度と比較例のアンテナ感度はほぼ同様であり、仰角60度以上では、本実施例のアンテナのアンテナ感度が、比較例のアンテナ感度よりも大きくなり、本実施例のアンテナで上記のシミュレーション結果から各構成要素の寸法を変更しなくても、良好な性能を得ることができた。
【0086】
ここでは、本実施例のアンテナの各構成要素の寸法は、シミュレーション結果で得られたものをそのまま用いたが、シミュレーション結果で得られた本実施例のアンテナを、銅箔などで構成される導電性テープを用いて構成し、アンテナチューニングを行うことで、さらにアンテナ感度を向上させることが可能である。
【0087】
<実施例2>
図2は、本発明の実施例2に係わるアンテナを車両用ガラスに配設したときの車内面側から見たときの正面図である。実施例2のアンテナは、負極側メイン線条折曲部23aが、正極側メイン線条折曲部13aよりも負極側面状体22から遠い位置に形成されている点が、実施例1のアンテナと異なっており、その他の点では同一の構成となっている。
【0088】
本実施例のアンテナを実施例1と同様の条件でシミュレーションを行い、GPSで用いられる1.57GHz周辺の電波を好適に受信できるように各構成要素の寸法を決定した。その上で、本実施例のアンテナを図16で示した実施例1のアンテナをフロントガラス30に形成したときと同一のフロントガラス上の位置に、銅箔で構成される導電性テープで形成し、正極側給電点11と負極側給電点21のそれぞれに図示していない給電端子の芯線側給電部と外皮導体側給電部とを半田付けした。そして、前記フロントガラスを車両に取付け、図示していないチューナーから延ばした同軸ケーブルの先端の芯線側を芯線側給電部に接続し、前記同軸ケーブルの先端の外皮導体側給電部を外皮導体側給電部に接続した。
【0089】
そして、本実施例のアンテナのアンテナ感度の測定を行いながら、本実施例のアンテナの各構成要素の寸法、構成要素間の位置関係を変化させるアンテナチューニングを行ったところ、実施例1のアンテナと同様に、GPSの帯域において車外側から到来する右円偏波の電波に対して良好なアンテナ感度を得ることができた。
【0090】
<実施例3>
図3は、本発明の実施例3に係わるアンテナを車両用ガラスに配設したときの車内面側から見たときの正面図である。実施例3のアンテナは、正極側第1補助線条14が途中部で直角に折り曲げられており、負極側メイン線条23の折り曲げられた位置に、負極側第1補助線条24の先端が接続されており、正極側メイン線条折曲部13aを負極側メイン線条折曲部23aとともに挟むように、負極側第1補助線条24が途中部で折り曲げられている点が、実施例1のアンテナとは異なっており、その他の点では同一の構成となっている。
【0091】
本実施例のアンテナを実施例1と同様の条件でシミュレーションを行い、GPSで用いられる1.57GHz周辺の電波を好適に受信できるように各構成要素の寸法を決定した。その上で、本実施例のアンテナを図16で示した実施例1のアンテナをフロントガラスに形成したときと同一のフロントガラス上の位置に、銅箔で構成される導電性テープで形成し、正極側給電点11と負極側給電点21のそれぞれに図示していない給電端子の芯線側給電部と外皮導体側給電部とを半田付けした。そして、前記フロントガラスを車両に取付け、図示していないチューナーから延ばした同軸ケーブルの先端の芯線側を芯線側給電部に接続し、前記同軸ケーブルの先端の外皮導体側給電部を外皮導体側給電部に接続した。
【0092】
そして、本実施例のアンテナのアンテナ感度の測定を行いながら、本実施例のアンテナの各構成要素の寸法、構成要素間の位置関係を変化させるアンテナチューニングを行ったところ、実施例1のアンテナと同様に、GPSの帯域において車外側から到来する右円偏波の電波に対して良好なアンテナ感度を得ることができた。
【0093】
<実施例4>
図4は、本発明の実施例4に係わるアンテナを車両用ガラスに配設したときの車内面側から見たときの正面図である。実施例4のアンテナは、正極側第3補助線条16を追加した点が、実施例1のアンテナとは異なっており、その他の点では同一の構成となっている。
【0094】
本実施例のアンテナを実施例1と同様の条件でシミュレーションを行い、GPSで用いられる1.57GHz周辺の電波を好適に受信できるように各構成要素の寸法を決定した。その上で、本実施例のアンテナを図16で示した実施例1のアンテナをフロントガラスに形成したときと同一のフロントガラス上の位置に、銅箔で構成される導電性テープで形成し、正極側給電点11と負極側給電点21のそれぞれに図示していない給電端子の芯線側給電部と外皮導体側給電部とを半田付けした。そして、前記フロントガラスを車両に取付け、図示していないチューナーから延ばした同軸ケーブルの先端の芯線側を芯線側給電部に接続し、前記同軸ケーブルの先端の外皮導体側給電部を外皮導体側給電部に接続した。
【0095】
そして、本実施例のアンテナのアンテナ感度の測定を行いながら、本実施例のアンテナの各構成要素の寸法、構成要素間の位置関係を変化させるアンテナチューニングを行ったところ、実施例1のアンテナと同様に、GPSの帯域において車外側から到来する右円偏波の電波に対して良好なアンテナ感度を得ることができた。
【0096】
<実施例5>
図5は、本発明の実施例5に係わるアンテナを車両用ガラスに配設したときの車内面側から見たときの正面図である。実施例5のアンテナは、正極側第2補助線条15が存在していない点が、実施例1のアンテナとは異なっており、その他の点では同一の構成となっている。
【0097】
本実施例のアンテナを実施例1と同様の条件でシミュレーションを行い、GPSで用いられる1.57GHz周辺の電波を好適に受信できるように各構成要素の寸法を決定した。その上で、本実施例のアンテナを図16で示した実施例1のアンテナをフロントガラスに形成したときと同一のフロントガラス上の位置に、銅箔で構成される導電性テープで形成し、正極側給電点11と負極側給電点21のそれぞれに図示していない給電端子の芯線側給電部と外皮導体側給電部とを半田付けした。そして、前記フロントガラスを車両に取付け、図示していないチューナーから延ばした同軸ケーブルの先端の芯線側を芯線側給電部に接続し、前記同軸ケーブルの先端の外皮導体側給電部を外皮導体側給電部に接続した。
【0098】
そして、本実施例のアンテナのアンテナ感度の測定を行いながら、本実施例のアンテナの各構成要素の寸法、構成要素間の位置関係を変化させるアンテナチューニングを行ったところ、実施例1のアンテナと同様に、GPSの帯域において車外側から到来する右円偏波の電波に対して良好なアンテナ感度を得ることができた。
【0099】
<実施例6>
図6は、本発明の実施例6に係わるアンテナを車両用ガラスに配設したときの車内面側から見たときの正面図である。実施例6のアンテナは、正極側第1補助線条14が、正極側面状体にではなく、正極側メイン線条に接続されている点が、実施例5のアンテナとは異なっており、その他の点では同一の構成となっている。
【0100】
本実施例のアンテナを実施例1と同様の条件でシミュレーションを行い、GPSで用いられる1.57GHz周辺の電波を好適に受信できるように各構成要素の寸法を決定した。その上で、本実施例のアンテナを図16で示した実施例1のアンテナをフロントガラスに形成したときと同一のフロントガラス上の位置に、銅箔で構成される導電性テープで形成し、正極側給電点11と負極側給電点21のそれぞれに図示していない給電端子の芯線側給電部と外皮導体側給電部とを半田付けした。そして、前記フロントガラスを車両に取付け、図示していないチューナーから延ばした同軸ケーブルの先端の芯線側を芯線側給電部に接続し、前記同軸ケーブルの先端の外皮導体側給電部を外皮導体側給電部に接続した。
【0101】
そして、本実施例のアンテナのアンテナ感度の測定を行いながら、本実施例のアンテナの各構成要素の寸法、構成要素間の位置関係を変化させるアンテナチューニングを行ったところ、実施例1のアンテナと同様に、GPSの帯域において車外側から到来する右円偏波の電波に対して良好なアンテナ感度を得ることができた。
【0102】
<実施例7>
図7は、本発明の実施例7に係わるアンテナを車両用ガラスに配設したときの車内面側から見たときの正面図である。実施例7のアンテナは、補助線条が一切ない点で、実施例5と異なっており、その他の点では同一の構成となっている。
【0103】
本実施例のアンテナを実施例1と同様の条件でシミュレーションを行い、GPSで用いられる1.57GHz周辺の電波を好適に受信できるように各構成要素の寸法を決定した。その上で、本実施例のアンテナを図16で示した実施例1のアンテナをフロントガラスに形成したときと同一のフロントガラス上の位置に、銅箔で構成される導電性テープで形成し、正極側給電点11と負極側給電点21のそれぞれに図示していない給電端子の芯線側給電部と外皮導体側給電部とを半田付けした。そして、前記フロントガラスを車両に取付け、図示していないチューナーから延ばした同軸ケーブルの先端の芯線側を芯線側給電部に接続し、前記同軸ケーブルの先端の外皮導体側給電部を外皮導体側給電部に接続した。
【0104】
そして、本実施例のアンテナのアンテナ感度の測定を行いながら、本実施例のアンテナの各構成要素の寸法、構成要素間の位置関係を変化させるアンテナチューニングを行ったところ、実施例1のアンテナと同様に、GPSの帯域において車外側から到来する右円偏波の電波に対して良好なアンテナ感度を得ることができた。
【0105】
<実施例8>
図8は、本発明の実施例8に係わるアンテナを車両用ガラスに配設したときの車内面側から見たときの正面図である。実施例8のアンテナは、負極側面状体22の負極側メイン線条23が接続されているコーナー部に負極側第1補助線条24が接続され、正極側面状体12から遠ざかる方へ延伸されており、負極側メイン線条23の折り曲げられている点に負極側第2補助線条25が接続され、正極側面状体12から遠ざかる方へ延伸されている点で、実施例1のアンテナとは異なっており、その他の点では同一の構成となっている。
【0106】
本実施例のアンテナを実施例1と同様の条件でシミュレーションを行い、GPSで用いられる1.57GHz周辺の電波を好適に受信できるように各構成要素の寸法を決定した。その上で、本実施例のアンテナを図16で示した実施例1のアンテナをフロントガラスに形成したときと同一のフロントガラス上の位置に、銅箔で構成される導電性テープで形成し、正極側給電点11と負極側給電点21のそれぞれに図示していない給電端子の芯線側給電部と外皮導体側給電部とを半田付けした。そして、前記フロントガラスを車両に取付け、図示していないチューナーから延ばした同軸ケーブルの先端の芯線側を芯線側給電部に接続し、前記同軸ケーブルの先端の外皮導体側給電部を外皮導体側給電部に接続した。
【0107】
そして、本実施例のアンテナのアンテナ感度の測定を行いながら、本実施例のアンテナの各構成要素の寸法、構成要素間の位置関係を変化させるアンテナチューニングを行ったところ、実施例1のアンテナと同様に、GPSの帯域において車外側から到来する右円偏波の電波に対して良好なアンテナ感度を得ることができた。
【0108】
<実施例9>
図9は、本発明の実施例9に係わるアンテナを車両用ガラスに配設したときの車内面側から見たときの正面図である。実施例9のアンテナは、負極側メイン線条23の負極側面状体との接続位置を,負極側面状体22の辺のうちの、負極側メイン線条折曲部23aと正極側メイン線条折曲部13aとのオーバーラップ部がある側の辺の任意の位置に設けた点で、実施例1のアンテナとは異なっており、その他の点では同一の構成となっている。
【0109】
本実施例のアンテナを実施例1と同様の条件でシミュレーションを行い、GPSで用いられる1.57GHz周辺の電波を好適に受信できるように各構成要素の寸法を決定した。その上で、本実施例のアンテナを図16で示した実施例1のアンテナをフロントガラスに形成したときと同一のフロントガラス上の位置に、銅箔で構成される導電性テープで形成し、正極側給電点11と負極側給電点21のそれぞれに図示していない給電端子の芯線側給電部と外皮導体側給電部とを半田付けした。そして、前記フロントガラスを車両に取付け、図示していないチューナーから延ばした同軸ケーブルの先端の芯線側を芯線側給電部に接続し、前記同軸ケーブルの先端の外皮導体側給電部を外皮導体側給電部に接続した。
【0110】
そして、本実施例のアンテナのアンテナ感度の測定を行いながら、本実施例のアンテナの各構成要素の寸法、構成要素間の位置関係を変化させるアンテナチューニングを行ったところ、実施例1のアンテナと同様に、GPSの帯域において車外側から到来する右円偏波の電波に対して良好なアンテナ感度を得ることができた。
【0111】
<実施例10>
図10は、本発明の実施例10に係わるアンテナを車両用ガラスに配設したときの車内面側から見たときの正面図である。実施例10のアンテナは、負極側面状体22が多角形状としており、正極側メイン線条13、負極側メイン線条23ともに、それぞれの線条が接続している正極側面状体12及び負極側面状体22から、仮想線aに対して斜めに延ばされている点で、実施例1のアンテナとは異なっており、その他の点では、同一の構成となっている。
【0112】
本実施例のアンテナを実施例1と同様の条件でシミュレーションを行い、GPSで用いられる1.57GHz周辺の電波を好適に受信できるように各構成要素の寸法を決定した。その上で、本実施例のアンテナを図16で示した実施例1のアンテナをフロントガラスに形成したときと同一のフロントガラス上の位置に、銅箔で構成される導電性テープで形成し、正極側給電点11と負極側給電点21のそれぞれに図示していない給電端子の芯線側給電部と外皮導体側給電部とを半田付けした。そして、前記フロントガラスを車両に取付け、図示していないチューナーから延ばした同軸ケーブルの先端の芯線側を芯線側給電部に接続し、前記同軸ケーブルの先端の外皮導体側給電部を外皮導体側給電部に接続した。
【0113】
そして、本実施例のアンテナのアンテナ感度の測定を行いながら、本実施例のアンテナの各構成要素の寸法、構成要素間の位置関係を変化させるアンテナチューニングを行ったところ、実施例1のアンテナと同様に、GPSの帯域において車外側から到来する右円偏波の電波に対して良好なアンテナ感度を得ることができた。
【0114】
<実施例11>
図11は、本発明の実施例11に係わるアンテナを車両用ガラスに配設したときの車内面側から見たときの正面図である。実施例11のアンテナは、実施例1のアンテナを仮想線aに対して、各構成要素の位置関係が線対称となるように前記ガラスに配設されたアンテナである。本実施例のアンテナでは、正極側給電点11から正極側メイン線条13を通り、正極側メイン線条折曲部13aと負極側メイン線条折曲部23aとのオーバーラップ部を経て、負極側メイン線条23を通り、負極側面状体22に至る経路が、矢印k’で示すように、実施例とは異なり反時計回りとなるため、車外側から到来する左円偏波の電波に対して良好な性能を発揮するアンテナとなる。
【0115】
本実施例のアンテナを実施例1と同様の条件でシミュレーションを行い、GPSで用いられる1.57GHz周辺の電波を好適に受信できるように各構成要素の寸法を決定した。その上で、本実施例のアンテナを図16で示した実施例1のアンテナをフロントガラスに形成したときと同一のフロントガラス上の位置に、銅箔で構成される導電性テープで形成し、正極側給電点11と負極側給電点21のそれぞれに図示していない給電端子の芯線側給電部と外皮導体側給電部とを半田付けした。そして、前記フロントガラスを車両に取付け、図示していないチューナーから延ばした同軸ケーブルの先端の芯線側を芯線側給電部に接続し、前記同軸ケーブルの先端の外皮導体側給電部を外皮導体側給電部に接続した。
【0116】
そして、本実施例のアンテナのアンテナ感度の測定を行いながら、本実施例のアンテナの各構成要素の寸法、構成要素間の位置関係を変化させるアンテナチューニングを行ったところ、GPSの帯域において車外側から到来する左円偏波の電波に対して良好なアンテナ感度を得ることができた。
【0117】
<実施例12>
図12は、本発明の実施例12に係わるアンテナを車両用ガラスに配設したときの車内面側から見たときの正面図である。実施例12のアンテナは、正極側メイン線条13及び負極側メイン線条23ともに、それぞれの線条が接続している正極側面状体12及び負極側面状体22から、仮想線aに対して平行になるように延ばしている点で実施例11のアンテナと異なるが、その他の点では同一の構成となっている。本実施例のアンテナでは、実施例12のアンテナと同様に正極側給電点11から正極側メイン線条13を通り、正極側メイン線条折曲部13aと負極側メイン線条折曲部23aとのオーバーラップ部を経て、負極側メイン線条23を通り、負極側面状体22に至る経路が、矢印k’に示すように実施例とは異なり反時計回りとなるため、車外側から到来する左円偏波の電波に対して良好な性能を発揮するアンテナとなる。
【0118】
本実施例のアンテナを実施例1と同様の条件でシミュレーションを行い、GPSで用いられる1.57GHz周辺の電波を好適に受信できるように各構成要素の寸法を決定した。その上で、本実施例のアンテナを図16で示した実施例1のアンテナをフロントガラスに形成したときと同一のフロントガラス上の位置に、銅箔で構成される導電性テープで形成し、正極側給電点11と負極側給電点21のそれぞれに図示していない給電端子の芯線側給電部と外皮導体側給電部とを半田付けした。そして、前記フロントガラスを車両に取付け、図示していないチューナーから延ばした同軸ケーブルの先端の芯線側を芯線側給電部に接続し、前記同軸ケーブルの先端の外皮導体側給電部を外皮導体側給電部に接続した。
【0119】
そして、本実施例のアンテナのアンテナ感度の測定を行いながら、本実施例のアンテナの各構成要素の寸法、構成要素間の位置関係を変化させるアンテナチューニングを行ったところ、GPSの帯域において車外側から到来する左円偏波の電波に対して良好なアンテナ感度を得ることができた。
【0120】
<実施例13>
図13は、本発明の実施例13に係わるアンテナを車両用ガラスに配設したときの車内面側から見たときの正面図である。実施例13のアンテナは、負極側給電点21が、仮想線aを挟むように2箇所存在しており、図示しない給電端子が一つの芯線側給電部と二つの外皮導体側給電部とから構成されており、前記芯線側給電部が、前記二つの外皮導体側給電部で挟み込まれている構造となっている点が、実施例1のアンテナとは異なっており、その他の点は、実施例1と同一の構成となっている。
【0121】
本実施例のアンテナを実施例1と同様の条件でシミュレーションを行い、GPSで用いられる1.57GHz周辺の電波を好適に受信できるように各構成要素の寸法を決定した。その上で、本実施例のアンテナを図16で示した実施例1のアンテナをフロントガラスに形成したときと同一のフロントガラス上の位置に、銅箔で構成される導電性テープで形成し、正極側給電点11と負極側給電点21のそれぞれに図示していない給電端子の芯線側給電部と外皮導体側給電部とを半田付けした。そして、前記フロントガラスを車両に取付け、図示していないチューナーから延ばした同軸ケーブルの先端の芯線側を芯線側給電部に接続し、前記同軸ケーブルの先端の外皮導体側給電部を外皮導体側給電部に接続した。
【0122】
そして、本実施例のアンテナの各構成要素の寸法、構成要素間の位置関係を変化させながら、アンテナ感度を測定し、アンテナチューニングを行ったところ、実施例1のアンテナと同様に、GPSの帯域において車外側から到来する左円偏波の電波に対して良好なアンテナ感度を得ることができた。
【0123】
以上、述べた実施例のアンテナは、全てGPS帯域で好適なアンテナ感度が得られるようにアンテナチューニングを行ったアンテナであるが、GPS帯域に限らず、1GHz〜3GHzの準マイクロ波帯、例えば、2.3GHz帯を用いるXMサテライトラジオ、シリウスサテライトラジオなどのSDARS用アンテナとしても用いられるように本発明のアンテナの各構成要素の寸法と、構成要素間の位置関係を調整できることは言うまでもない。
【0124】
以上好適な実施の形態について述べたが、本発明はこれに限定されるものではなく種々の応用が考えられるものである。
【符号の説明】
【0125】
10 正極側エレメント
11 正極側給電点
12 正極側面状体
13 正極側メイン線条
13a 正極側メイン線条折曲部
14 正極側第1補助線条
15 正極側第2補助線条
16 正極側第3補助線条
20 負極側エレメント
21 負極側給電点
22 負極側面状体
23 負極側メイン線条
23a 負極側メイン線条折曲部
24 負極側第1補助線条
25 負極側第2補助線条
30 フロントガラス
40 フランジ周辺端
a 正極側給電点を通り、負極側面状体の正極側面状体と対向する辺に直交する仮想線
b 正極側メイン線条と負極側メイン線条とのオーバーラップ長
c 正極側メイン線条と負極側メイン線条とのオーバーラップ部から負極側面状体までの間隔
d 負極側面状体横寸法
e 負極側面状体縦寸法
f 正極側面状体辺縁と負極側面状体辺縁との間隔
g 正極側メイン線条と負極側メイン線条とのオーバーラップ部での間隔
h フロントガラスの中心線
i フロントガラスの中心線と実施例1のアンテナとの間隔
j フランジ周辺端と実施例1のアンテナとの間隔
k 車内面側から見て時計回りの矢印
k’ 車内面側から見て反時計回りの矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極側エレメント(10)と負極側エレメント(20)とが同一平面上に配設されている車両用円偏波アンテナにおいて、
前記正極側エレメント(10)は、少なくとも正極側給電点(11)と、前記正極側給電点(11)が載置される正極側面状体(12)と、前記正極側面状体に接続される正極側メイン線条(13)とを備え、
前記負極側エレメント(20)は、少なくとも負極側給電点(21)と、前記負極側給電点(21)が載置される負極側面状体(22)と、前記負極側面状体(22)に接続される負極側メイン線条(23)とを備え、
前記正極側メイン線条(13)の先端部と前記負極側メイン線条(23)の先端部とが隙間をおいてオーバーラップし、相互に容量結合していることを特徴とする車両用円偏波アンテナ。
【請求項2】
前記正極側エレメント(10)と前記負極側エレメント(20)とのいずれかに少なくとも一本の円偏波の軸比調整用の補助線条(14、15、24、25)を備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用円偏波アンテナ。
【請求項3】
前記正極側エレメント(10)が、少なくとも2本の補助線条を備えており、前記備えられている補助線条のうちの2本の補助線条(14、15)は前記正極側面状体又は前記正極側メイン線条に接続されており、前記負極側エレメントから離れる方向に延びていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用円偏波アンテナ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一つに記載の車両用円偏波アンテナが配設された車両用ガラス。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一つに記載の車両用円偏波アンテナが印刷された透明フィルム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−26828(P2013−26828A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159810(P2011−159810)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】