説明

車両用キャビネット

【課題】低コストで作製可能であり、化粧板とキャビネット又は車両側の構造物との合い沿いが良好な車両用キャビネットを提供する。
【解決手段】車両用キャビネット1は、主として、凹部4を有するキャビネット本体2と、キャビネット本体2の凹部4を覆う化粧板10とで構成される。ここで、化粧板10の屈曲部10Aの水平方向における幅(W1)は、凹部4の水平方向における幅(W2)よりも狭くなっており、化粧板10の屈曲部10Aとキャビネット本体2の凹部4との間にはクリアランス14が形成されている。また化粧板10の屈曲部10Aは、凹部4と上下方向における幅(高さH)が同じである。これにより、キャビネット本体2への取り付け時に化粧板10を伸縮させて、化粧板10とキャビネット本体2又は車両側構造物との合い沿いを改善することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用キャビネットに係り、特に、バスや自動車等の車両内に配置され、キャビネット本体に形成された凹部を化粧板で覆ったキャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、飲料水や荷物を保管する目的で、バスや自動車等の車両内に配置されるキャビネットが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、バスガイド用の保護装置が取り付けられたキャビネットが開示されている。
【0004】
この種のキャビネットは、通常、外観に優れたレザーなどで覆われている。また、キャビネットの正面に座る乗客の足元スペースを確保するための凹部が設けられ、キャビネット表面のレザーが乗客の靴と接触して磨耗しないように、凸形状の化粧板でキャビネットの凹部を覆う場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−56082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の車両用キャビネットでは、化粧板自体の寸法精度や化粧板の取り付け時における誤差によって、キャビネット本体と化粧板との間に隙間が生じてしまい、見栄えが悪化したり、この隙間から物が進入するなどの不具合があった。また、例えば、観光バスの窓側には空調用のダクトが設けられており、従来の車両用キャビネットでは、この空調用ダクトのような車両側の構造物と化粧板との間に隙間が生じる場合もあった。
【0007】
このため、個々の車両に合わせて化粧板を再製作するか、あるいは、化粧板とキャビネット又は車両側の構造物との間の隙間を塞ぎ板によって塞ぐなどの対策が必要であった。
【0008】
ところが、化粧板を個々の車両に合わせて再製作したのでは多大なコストが必要となるし、塞ぎ板を使用すると見栄えが悪化してしまう。
【0009】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、低コストで作製可能であり、化粧板とキャビネットや車両側構造物との合い沿いが良好な車両用キャビネットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る車両用キャビネットは、車両内に配置され、凹部を有するキャビネット本体と、前記キャビネット本体の前記凹部に対応する凸形状の屈曲部を有し、水平方向に延在するように前記キャビネット本体に取り付けられ、前記屈曲部により前記キャビネット本体の前記凹部を覆う化粧板とを備え、前記化粧板の前記屈曲部は、前記キャビネット本体の前記凹部と上下方向の幅が同じであり、前記キャビネット本体の前記凹部よりも水平方向の幅が狭いことを特徴とする。
【0011】
この車両用キャビネットでは、化粧板は屈曲部を有しており、化粧板長さ方向(水平方向)に伸縮可能な面外構造になっている。しかも、化粧板の凸形状(屈曲部)はキャビネット本体の凹部よりも水平方向の幅が狭く、化粧板の凸形状とキャビネット本体の凹部との間にはクリアランスが形成されている。したがって、キャビネット本体への取り付け時に化粧板を伸縮させることで、化粧板とキャビネット又は車両側の構造物との間に隙間が生じることを防止できる。
【0012】
また化粧板の凸形状(屈曲部)はキャビネット本体の凹部と上下方向の幅が同じであるため、化粧板の凸形状とキャビネット本体の凹部との間に形成されるクリアランスをキャビネット本体と化粧板とで隠せるので、このクリアランスにより見栄えが悪くなることはない。
【0013】
上記車両用キャビネットにおいて、前記化粧板は、前記屈曲部の根元から連続的に延びるように、前記キャビネット本体の前記凹部の周囲の壁面に沿って配置される平面部を有していてもよい。これにより、キャビネット本体の凹部だけでなく、凹部の周囲も化粧板で覆って保護することができる。
【0014】
上記車両用キャビネットにおいて、前記化粧板は前記屈曲部のみからなり、前記屈曲部の前記凸形状の側面が前記キャビネット本体の前記凹部に固定されていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、化粧板は屈曲部を有しており、化粧板長さ方向(水平方向)に伸縮可能な面外構造になっている。しかも、化粧板の凸形状(屈曲部)はキャビネット本体の凹部よりも水平方向の幅が狭く、化粧板の凸形状とキャビネット本体の凹部との間にはクリアランスが形成されている。したがって、キャビネット本体への取り付け時に化粧板を伸縮させることで、化粧板とキャビネットや車両側構造物との間に隙間が生じることを防止できる。
【0016】
また化粧板の凸形状(屈曲部)はキャビネット本体の凹部と上下方向の幅が同じであるため、化粧板の凸形状とキャビネット本体の凹部との間に形成されるクリアランスをキャビネット本体と化粧板とで隠せるので、このクリアランスにより見栄えが悪くなることはない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】車両用キャビネットの構成例を示す斜視図である。
【図2】化粧板のキャビネット本体への取り付け状態を示す図であり、(a)は化粧板及びキャビネット本体を示す断面図であり、(b)は化粧板及びキャビネット本体を示す平面図である。
【図3】化粧板をキャビネット本体に取り付ける際に、化粧板を伸縮させた様子を示す断面図である。
【図4】図2とは異なる形状の化粧板を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る車両用キャビネットの構成例を示す斜視図である。また図2は、図1に示す車両用キャビネットの化粧板のキャビネット本体への取り付け状態を示す図である。
【0020】
図1に示すように、車両用キャビネット1はバス車両内に配置される収納キャビネットであり、主として、凹部4を有するキャビネット本体2と、キャビネット本体2の凹部4を覆う化粧板10とにより構成されている。なお、図1における矢印方向はバス車両の前方を示している。
【0021】
車両用キャビネット1は、バス車両の窓側に設けられる空調用のダクト6に隣接して配置されており、車両用キャビネット1の化粧板10はダクト6と密着するように配置されている。
【0022】
車両用キャビネット1のキャビネット本体2は、通常、外観に優れたレザーなどで覆われており、車両用キャビネット1の正面に座る人の足元スペースを確保するための凹部4が設けられている。
【0023】
化粧板10は、キャビネット本体2に締結部材12で固定されており、キャビネット本体2の凹部4を覆うように水平方向に延在している。締結部材12は、化粧板10をキャビネット本体2に固定可能なものであれば特に限定されず、例えば、タッピンねじを用いることができる。
【0024】
化粧板10は、キャビネット本体2の表面のレザーが車両用キャビネット1の正面に座る人の靴と接触して磨耗しないように、キャビネット本体2の凹部4を保護する板部材であり、例えば、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ABS等の樹脂や、ステンレス等の金属で形成することができる。また化粧板10の板厚は、化粧板10の材質に応じて適宜設定されている。
【0025】
化粧板10は、図2(a)に示すように、キャビネット本体2の凹部4に対応する凸形状の屈曲部10Aを有している。また化粧板10は、屈曲部10Aの根元から連続的に延びるように、キャビネット本体2の凹部4の周囲の壁面に沿って配置される平面部10Bを有していてもよい。これにより、キャビネット本体2の凹部4だけでなく、凹部4の周囲も化粧板10で覆って保護することができる。
【0026】
化粧板10の屈曲部10Aの水平方向における幅(図2(a)に示す幅W1)は、キャビネット本体2の凹部4の水平方向における幅(図2(a)に示す幅W2)よりも狭くなっており、化粧板10の屈曲部10Aとキャビネット本体2の凹部4との間にはクリアランス14が形成されている。また化粧板10の屈曲部10Aは、キャビネット本体2の凹部4と上下方向における幅(図2(b)に示す高さH)が同じである。
【0027】
このような構成の化粧板10は、屈曲部10Aを有することから、化粧板10の長さ方向(水平方向)に伸縮可能な面外構造になっている。しかも、化粧板10の屈曲部10Aとキャビネット本体2の凹部4との間にはクリアランス14が形成されている。したがって、キャビネット本体2への取り付け時に化粧板10を伸縮させることで、化粧板10とキャビネット本体2又は車両側構造物(図1に示すダクト6)との合い沿いを改善することができる。
【0028】
図3(a)及び(b)は、化粧板10をキャビネット本体2に取り付ける際に、化粧板10を伸縮させた様子を示す断面図である。化粧板10とキャビネット本体2あるいは車両側構造物(ダクト6)との合い沿いを確実に行うためには、図3(a)に示すように、化粧板10の屈曲部10Aに変形力Fを作用させて屈曲部10Aの幅を広げるか、図3(b)に示すように、化粧板10の屈曲部10Aに変形力Fを作用させて屈曲部10Aの幅を狭めて、化粧板10を適宜伸縮させればよい。
【0029】
本実施形態の車両用キャビネット1によれば、化粧板10は屈曲部10Aを有しており、化粧板10の長さ方向(水平方向)に伸縮可能な面外構造になっている。しかも、化粧板10の屈曲部10Aとキャビネット本体2の凹部4との間にはクリアランス14が形成されている。したがって、キャビネット本体2への取り付け時に化粧板10を伸縮させることで、化粧板10とキャビネット本体2又は車両側構造物(ダクト6)との合い沿いを改善することができる。
【0030】
また化粧板10の屈曲部10Aはキャビネット本体2の凹部4と上下方向の幅(高さH)が同じであるため、化粧板10の屈曲部10Aとキャビネット本体2の凹部4との間に形成されるクリアランス14をキャビネット本体2と化粧板10とで隠せるので、このクリアランス14により見栄えが悪くなることはない。
以上、本発明の一例について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはいうまでもない。
【0031】
例えば、上述の実施形態では、車両用キャビネット1がバスに設けられた例を示したが、車両用キャビネット1は自動車を含むその他の車両にも用いることができる。
【0032】
また上述の実施形態では、化粧板10が屈曲部10Aの根元から連続的に延びる平面部10Bを有する例について説明したが、化粧板10はこの例に限定されず様々な形状であってもよい。
【0033】
図4は、図2とは異なる形状の化粧板を示す断面図である。図4(a)に示すように、化粧板20は、主として、キャビネット本体2の凹部4に対応する凸形状の屈曲部20Aのみで構成されており、屈曲部20Aの凸形状の側面が、キャビネット本体2の凹部4に締結部材12で固定されている。
【0034】
化粧板20の屈曲部20Aは、図2(a)及び(b)に示した化粧板10の屈曲部10Aと同様に、水平方向における幅は、キャビネット本体2の凹部4の水平方向における幅よりも狭くなっており、化粧板20の屈曲部20Aとキャビネット本体2の凹部4との間にはクリアランス14が形成されている。また化粧板20の屈曲部20Aは、キャビネット本体2の凹部4と上下方向における幅が同じである。
【0035】
このような構成の化粧板20によれば、キャビネット本体2への取り付け時に化粧板20を伸縮させることで、化粧板20とキャビネット本体2又は車両側構造物(図1に示すダクト6)との合い沿いを改善することができる。また化粧板20の屈曲部20Aはキャビネット本体2の凹部4と上下方向の幅が同じであるため、化粧板20の屈曲部20Aとキャビネット本体2の凹部4との間に形成されるクリアランス14をキャビネット本体2と化粧板20とで隠せるので、このクリアランス14により見栄えが悪くなることはない。
【0036】
また図4(b)に示すように、化粧板20の屈曲部20Aの根元にフランジ20Bを設けてもよい。これにより、化粧板20の屈曲部20Aとキャビネット本体2の凹部4との間に形成されるクリアランス14をフランジ20Bでより確実に隠すことができる。
【符号の説明】
【0037】
1 車両用キャビネット
2 キャビネット本体
4 凹部
6 ダクト
10 化粧板
10A 屈曲部
10B 平面部
12 締結部材
14 クリアランス
20 化粧板
20A 屈曲部
20B フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内に配置され、凹部を有するキャビネット本体と、
前記キャビネット本体の前記凹部に対応する凸形状の屈曲部を有し、水平方向に延在するように前記キャビネット本体に取り付けられ、前記屈曲部により前記キャビネット本体の前記凹部を覆う化粧板とを備え、
前記化粧板の前記屈曲部は、前記キャビネット本体の前記凹部と上下方向の幅が同じであり、前記キャビネット本体の前記凹部よりも水平方向の幅が狭いことを特徴とする車両用キャビネット。
【請求項2】
前記化粧板は、前記屈曲部の根元から連続的に延びるように、前記キャビネット本体の前記凹部の周囲の壁面に沿って配置される平面部を有することを特徴とする請求項1に記載の車両用キャビネット。
【請求項3】
前記化粧板は前記屈曲部のみからなり、前記屈曲部の前記凸形状の側面が前記キャビネット本体の前記凹部に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用キャビネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−126503(P2011−126503A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289877(P2009−289877)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】