説明

車両用グリル

【課題】グリルアウターの表面に歪みが発生せず、しかも、グリルアウターが車体に精度良く取り付けできると共にグリルインナーとグリルアウターとの間に不要な隙間が発生することなく固定できる車両用グリルを提供する。
【解決手段】グリルインナー2と、グリルインナー2の表面側に配置されるグリルアウター10、グリルインナー2とグリルアウターを固定する係止手段20と、係止手段20の近傍に配置され、グリルインナー2と車体40を固定する締結手段30とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に設置される車両用グリルに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用グリルとして、意匠性の向上、剛性の向上等のため、グリルインナーとグリルアウターの2部品を組み付けたものが従来より提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
この種の第1従来例が図8に示されている。図8において、車両用グリルであるフロントグリル(ラジエータグリル)50は、グリルインナー51とこのグリルインナー51の表面側に配置されたグリルアウター52とを備えている。グリルインナー51とグリルアウター52は、ビス53によって締結固定されている。グリルアウター52と車体60は、ビス54で締結固定されている。
【0004】
第2従来例が図9に示されている。図9において、車両用グリルであるフロントグリル(ラジエータグリル)70は、グリルインナー51とこのグリルインナー51の表面側に配置されたグリルアウター52とを備えている。グリルインナー51とグリルアウター52は、ビス53や係止爪55によって固定されている。グリルインナー51と車体60は、ビス締結部56によってビス(図示せず)で締結固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−100228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記第1従来例では、グリルアウター52が車体60にビス54で締結されているため、ビス54の締結トルクがグリルアウター52に作用する。この締結トルクに起因する応力によってグリルアウター52の表面(意匠面)に歪みが発生する可能性がある。グリルアウター52の表面は、意匠的に重要な箇所であり、その箇所の歪みは品質低下となる。又、グリルアウター52は、通常ではメッキや塗装の表面処理がなされているため、わずかの歪みでも目視で認識でき品質低下に直結する。
【0007】
第2従来例では、グリルインナー51が車体60にビス(図示せず)で締結されているため、グリルアウター52の表面(意匠面)に歪みが発生することはない。しかし、グリルアウター52とグリルインナー51の固定部と、グリルインナー51と車体60とのビス締結部56が離れている。そのため、グリルアウター52に車体60への引き込み力が伝わり難く、グリルインナー51のみが車体60側に引き込まれ、グリルアウター52は車体60側に引き込まれ難い。従って、グリルアウター52と車体60との合わせ精度が悪くなると共にグリルインナー51とグリルアウター52との間に隙間が発生し易いという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、グリルアウターとグリルインナーを備えたものであって、グリルアウターの表面に歪みが発生せず、しかも、グリルアウターが車体に精度良く取り付けできると共にグリルインナーとグリルアウターとの間に不要な隙間が発生することなく固定できる車両用グリルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、グリルインナーと、前記グリルインナーの表面側に配置されるグリルアウターと、前記グリルインナーと前記グリルアウターを固定する係止手段と、前記係止手段の近傍に配置され、前記グリルインナーと車体を固定する締結手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
前記係止手段は、前記グリルインナーと前記グリルアウターのいずれか一方に設けられた係止爪と、前記グリルインナーと前記グリルアウターの他方に設けられた爪係止受け部とを有することが好ましい。
【0011】
前記係止手段と前記締結手段は、前記グリルインナーの同一の取付用基板上に設けられたことが好ましい。
【0012】
前記係止手段と前記締結手段は、前記グリルインナーの表裏方向の同一位置に設けられたことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、グリルインナーが車体に締結されているため、グリルアウターに締結トルクに起因する応力が発生せず、又、グリルインナーとグリルアウターの固定が係止手段であるため、グリル間の固定手段に起因する歪みもグリルアウターに発生しない。グリルアウターとグリルインナーの固定箇所とグリルインナーと車体との固定箇所が近いため、グリルアウターにはグリルインナーからの車体引き込み力が伝わり易い。以上より、グリルアウターの表面に歪みが発生せず、しかも、グリルアウターが車体に精度良く取り付けできると共にグリルインナーとグリルアウターとの間に不要な隙間が発生することなく固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態を示し、表面側から見たフロントグリルの斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態を示し、裏面側からみたフロントグリルの斜視図である。
【図3】本発明の一施形態を示し、係止手段と締結手段の一部破断斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態を示し、係止手段と締結手段の断面図である。
【図5】本発明の一実施形態を示し、図4のA−A線断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態を示し、係止手段と締結手段の断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態を示し、図6のB−B線断面図である。
【図8】第1従来例のフロントグリルの断面図である。
【図9】第2従来例のフロントグリルの裏面から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1〜図5は本発明の一実施形態を示す。図1及び図2に示すように、車両用グリルであるフロントグリル(ラジエータグリル)1は、グリルインナー2とこのグリルインナー2の表面側に配置されたグリルアウター10,11とを備えている。グリルインナー2は、例えば合成樹脂製である。グリルインナー2は、外枠体3と、センター部4と、これらの間に配置された複数の桟部5とを有する。外枠体3とセンター部4の間には、桟部5で仕切られて略菱形状の多数の空気流通路が形成されている。グリルアウター10,11は、例えば合成樹脂製であり、表面にメッキや塗装の表面処理がなされている。グリルアウター10は、グリルインナー2の外枠体3の表面を覆うように配置されている。又、グリルアウター11は、センター部4の表面に配置されている。
【0017】
グリルインナー2とグリルアウター10は、複数の係止手段20によって固定されている。グリルインナー2と車体40は、複数の締結手段30によって固定されている。以下、係止手段20と締結手段30の構成を説明する。
【0018】
図3〜図5に示すように、各係止手段20は、グリルインナー2の取付用基板6に設けられた一対の係止爪21と、グリルアウター10の補強プレート部12に設けられた爪係止受け部22とから構成されている。一対の係止爪21は、互いに間隔を置いて対向配置され、グリルアウター10側に突出している。
【0019】
各締結手段30は、グリルインナー2の係止爪21が設けられた同一の取付用基板6で、且つ、係止爪21の近傍位置に突設されたビス螺入孔形成部31と、車体40に設けられたビス挿通孔32と、ビス挿通孔32よりビス螺入孔形成部31に螺入されたビス33とから構成されている。つまり、係止手段20と締結手段30は、グリルインナー2の同じ取付用基板6上で、且つ、互いに近傍位置に配置されている。
【0020】
ビス螺入孔形成部31の周囲には、位置決め突起部34が放射状に設けられている。この位置決め突起部34によってグリルインナー2は、車体40に対して所定の位置に取り付けされる。
【0021】
上記構成において、グリルインナー2が車体40に締結手段30で固定されているため、ビス締めの締結トルクに起因する応力がグリルアウター10に直接発生しない。グリルインナー2とグリルアウター10が係止手段20で固定されるため、グリル間の固定手段(係止手段20)に起因する歪みもグリルアウター10に発生しない。又、グリルインナー2が車体40に締結手段30で固定されるため、グリルアウター10はグリルインナー2を介して車体40への引き込み力を受ける。ここで、グリルアウター10とグリルインナー2を固定する係止手段20とグリルインナー2と車体40を固定する締結手段30の位置が近いため、グリルアウター10にはグリルインナー2からの車体引き込み力が伝わり易い。以上より、グリルアウター10の表面に歪みが発生せず、しかも、グリルアウター10が車体40に精度良く取り付けられると共にグリルインナー2とグリルアウター10との間に不要な隙間が発生することなく固定できる。
【0022】
係止手段20は、グリルインナー2に設けられた係止爪21と、グリルアウター10に設けられた爪係止受け部22とから構成されている。従って、グリルインナー2とグリルアウター10をそれぞれ樹脂成形で作製する場合には、係止爪21と爪係止受け部22もそれぞれ同時に一体で作製可能であるため、製造が容易である。又、係止手段20は、グリルアウター10に設けられた係止爪21と、グリルインナー2に設けられた爪係止受け部22とから構成しても良い。
【0023】
係止手段20と締結手段30は、グリルインナー2の同一の取付用基板6上に設けられている。従って、異なる取付用基板に設ける場合に較べて、車体40への引き込み力による弾性変位が小さく抑えられるため、グリルアウター10が車体40側に引き込まれ易く、グリルアウター10と車体40との合わせ精度をより高くできると共にグリルインナー2とグリルアウター10との間に不要な隙間が発生することなく固定できる。
【0024】
図6及び図7は、本発明の他の実施形態を示す。図6及び図7に示すように、この他の実施形態では、前記実施形態と比較するに、係止手段20と締結手段30がグリルインナー2の表裏方向の同一位置に設けられている。係止手段20と締結手段30の各構造は、前記第1実施形態のものと同一であるため、重複説明を回避する。図面の同一構成箇所には、前記第1実施形態と同一符号を付して明確化を図る。
【0025】
この他の実施形態でも、前記実施形態と同様に、グリルアウター10の表面に歪みが発生せず、しかも、グリルアウター10が車体40に精度良く取り付けられると共にグリルインナー2とグリルアウター10との間に不要な隙間が発生することなく固定できる。
【0026】
本明細書では、係止手段20は、グリルインナー2とグリルアウター10間を係止することによって固定するものであり、グリルアウター10の表面側に固定による応力がほとんど発生しない。締結手段30は、グリルインナー2とグリルアウター10間を締め付け力によって固定するものである。
【符号の説明】
【0027】
1 フロントグリル(車両用グリル)
2 グリルインナー
6 取付用基板
10 グリルアウター
20 係止手段
21 係止爪
22 爪係止受け部
30 締結手段
40 車体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリルインナーと、
前記グリルインナーの表面側に配置されるグリルアウターと、
前記グリルインナーと前記グリルアウターを固定する係止手段と、
前記係止手段の近傍に配置され、前記グリルインナーと車体を固定する締結手段とを備えたことを特徴とする車両用グリル。
【請求項2】
請求項1記載の車両用グリルであって、
前記係止手段は、前記グリルインナーと前記グリルアウターのいずれか一方に設けられた係止爪と、前記グリルインナーと前記グリルアウターの他方に設けられた爪係止受け部とを有することを特徴とする車両用グリル。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の車両用グリルであって、
前記係止手段と前記締結手段は、前記グリルインナーの同一の取付用基板上に設けられたことを特徴とする車両用グリル。
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載の車両用グリルであって、
前記係止手段と前記締結手段は、前記グリルインナーの表裏方向の同一位置に設けられたことを特徴とする車両用グリル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−218523(P2012−218523A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84679(P2011−84679)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(504136889)株式会社ファルテック (57)