説明

車両用サイドスポイラ

【課題】軽量化,低コスト化を図りつつ、全長に渡って剛性感を均一にできる車両用サイドスポイラを提供する。
【解決手段】サイドスポイラ10の底壁部10cには、車幅方向内側に延びる突出部10eが車両前後方向に所定間隔をあけて形成され、突出部10eは、ロッカアウタパネル12に取り付けられる下辺取付け部10fと、該下辺取付け部10fから底壁部10c側にいくほど前後幅が広がるように形成された末広がり部10gとを有し、該末広がり部10gには、該末広がり部10gに沿う形状の開口20が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等のロッカパネルに配設される車両用サイドスポイラに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車においては、フロア部を低く見せてスポーティ感を高めることにより外観の向上を図るとともに、タイヤ等の跳ね石による疵付きや錆を防止するためにロッカパネルに樹脂製のサイドスポイラを配設する場合がある。
【0003】
このようなサイドスポイラを取り付ける場合、サイドスポイラの上辺部及び下辺部にそれぞれ車両前後方向に所定間隔をあけて取付け部を設け、各取付け部をクリップ等によりロッカアウタパネルに取り付けるのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3627891号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記サイドスポイラの外側方からの外力に対する剛性は、取付け部分は高く、各取付け部の中間部分は該取付け部に比べて低いことから、サイドスポイラ全体に剛性感の差が生じることとなる。このため、例えばユーザーが洗車時にサイドスポイラを押した場合、取付け部分はほとんど撓まないに対して中間部分は撓みやすいため、サイドスポイラ全体の剛性が低いと感じることとなり、品質に対する信頼性が損なわれるおそれがある。
【0006】
このような剛性感の差をなくすには、サイドスポイラの剛性を全長に渡ってできるだけ均一にすることが望ましい。しかしながら、サイドスポイラの軽量化,低コスト化の強い要望から余肉を取り除く構造を採用する場合があり、このようにすると取付け部分と中間部分との剛性差がますます大きくなることから、この点での対策が要請されている。
【0007】
本発明は、前記従来の実情に鑑みてなされたもので、軽量化,低コスト化を図りつつ、全長に渡って剛性感を均一にできる車両用サイドスポイラを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、車両前後方向に延びるロッカパネルのロッカアウタパネルに配設され、該ロッカアウタパネルの上部から下方に延びる縦壁部と、該縦壁部の下縁から車幅方向内側に屈曲して延びる底壁部とを有する車両用サイドスポイラであって、前記縦壁部には、前記ロッカアウタパネルに取り付けられる上辺取付け部が車両前後方向に所定間隔をあけて形成され、前記底壁部には、車幅方向内側に延びる突出部が車両前後方向に所定間隔をあけて形成され、前記突出部は、前記ロッカアウタパネルに取り付けられる下辺取付け部と、該下辺取付け部から前記底壁部側にいくほど前後幅が広がるように形成された末広がり部とを有し、該末広がり部には、該末広がり部に沿う形状の開口が形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るサイドスポイラによれば、底壁部に車内側に延びる突出部を車両前後方向に所定間隔をあけて形成し、該突出部を、ロッカアウタパネルに取り付けられる下辺取付け部と、該下辺取付け部から底壁部側にいくほど前後幅が広がる末広がり部とを有するものとし、該末広がり部にこれに沿う形状の開口を形成した。
【0010】
このように末広がり部にこれに沿う形状の開口を形成したので、外力に対する突出部の剛性を小さくすることができ、該突出部と突出部間部分との剛性差を小さくすることができる。これにより、例えばサイドスポイラの突出部間部分の余肉を取り除いて軽量化,低コスト化を図るようにした場合にも、サイドスポイラ全体の剛性感を均一に保つことができ、品質に対する信頼性を高めることができる。
【0011】
また前記突出部に加わる外力は、開口が形成された末広がり部から前後に分散して伝達されることとなり、外力による突出部の変形や割れ等の損傷を防止できる。
【0012】
さらにまた、サイドスポイラ内に進入した小石等を前記開口から落下させることができ、内部に溜まるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例1によるサイドスポイラが配設された自動車の斜視図である。
【図2】前記サイドスポイラの車内側から見た斜視図である。
【図3】前記サイドスポイラの平面図である。
【図4】前記サイドスポイラの断面図(図3のIV-IV線断面図)である。
【図5】前記サイドスポイラの断面図(図3のV-V線断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0015】
図1ないし図5は、本発明の実施例1による自動車のサイドスポイラを説明するための図である。なお、本実施例の説明の中で、前後,左右という場合は、特記なき限り、シートに着座した状態で車両前進方向に見た場合の前後,左右を意味する。
【0016】
図において、1は本実施例のサイドスポイラ10が配設された自動車のフロア部を示している。このフロア部1は、前輪2と後輪3との間に配設された車両前後方向に延びる左,右のロッカパネル4と、該左,右のロッカパネル4間に敷設されたフロアパネル8とを備えている。なお、5はフロントドアであり,6はリヤドアである。
【0017】
前記左,右のロッカパネル4は、ロッカアウタパネル12と、ロッカインナパネル13との間にロッカリインホース14を配置し、これらの上フランジ部4a同士及び下フランジ部4b同士を重ね合わせて溶接により結合した大略角筒状の閉断面構造を有する。
【0018】
前記ロッカアウタパネル12は、上フランジ部4aから車外側に屈曲して延びる上壁12aと、該上壁12aに続いて下方に円弧状をなすよう延び、前記下フランジ部4bに一体に結合された外壁12bとを有し、前記上壁12aにフロントドア5,リヤドア6の下縁が若干の隙間を設けて対向している。
【0019】
前記左,右のロッカアウタパネル12の外壁12bの外面部分には、これの略全長に渡って合成樹脂等を吹き付けることにより形成されたアンダーコート15が被覆されている。このアンダーコート15により、跳ね石や錆による疵付きを防止するとともに、防音,防振を図っている。
【0020】
前記左,右のロッカアウタパネル12の車外側に前述のサイドスポイラ10が配設されている。この左,右のサイドスポイラ10は、樹脂製のもので、ロッカアウタパネル12の前後方向全長に渡る長さを有する。
【0021】
前記左,右のサイドスポイラ10は、左,右対称をなしており、前記ロッカアウタパネル12の外壁12bの上縁部に当接する上フランジ部10aと、該上フランジ部10aに続いて車幅方向外側下方に傾斜して延びる縦壁部10bと、該縦壁部10bの下縁に続いて車幅方向内側に屈曲して延びる底壁部10cとを有する断面L字形状のものである。
【0022】
前記縦壁部10bの車内側面には、大略台形状をなす9つの上辺取付け部10dが前後方向に所定間隔をあけて一体に形成されている。一方、前記ロッカアウタパネル12の外壁12bの各上辺取付け部10dに対応する部位には、サイドスポイラ10の熱膨張を吸収する前後方向長孔形状の取付け孔12cが形成されている。
【0023】
前記縦壁部10bは、各上辺取付け部10dに装着されたクリップ16を前記取付け孔12cに嵌入することにより前記ロッカアウタパネル12に取り付けられている。
【0024】
前記底壁部10cには、該底壁部10cに続いて車幅方向内側に延びる4つの突出部10eが前後方向に所定間隔をあけて一体に形成されている。この各突出部10eは、前記上辺取付け部10dと前後方向に偏位する位置に配置されている。
【0025】
前記各突出部10eは、前記ロッカアウタパネル12に取り付けられる下辺取付け部10fと、該下辺取付け部10fに続いて前記底壁部10b側にいくほど前後幅が広がるように形成された末広がり部10gとを有する。
【0026】
前記各下辺取付け部10fは、取付け時の作業性を高める観点から車外側斜め下方に向くように傾斜させて形成されており、該各下辺取付け部10fには、前後方向長孔形状のねじ孔10hが形成されている。一方、前記ロッカアウタパネル12の外壁12bの各下辺取付け部10fに対応する部位には、樹脂ナット17が嵌装されている。
【0027】
そして前記各突出部10eは、下辺取付け部10fに装着されたねじ部材18を前記樹脂ナット17にねじ込むことにより前記ロッカアウタパネル12に取り付けられている。
【0028】
また前記下辺取付け部10fには、前記ロッカアウタパネル12の下フランジ部4bに近接するよう延びる下フランジ部10iが屈曲形成されている。
【0029】
前記末広がり部10gは、下辺取付け部10fから前後に円弧状をなすよう拡開しており、平面視で概ね三角形状をなしている。
【0030】
前記末広がり部10gには、該末広がり部10gに沿う形状の開口20が形成されている。この開口20は、平面視で略台形状をなしており、該開口20の外縁20aは縦壁部10bの下縁近傍に位置し、内縁20bは下辺取付け部10fの近傍に位置しており、前,後縁20c,20cは末広がり部10gの外斜辺10g′と略平行をなしている。
【0031】
前記底壁部10cの各突出部10e間部分には、前記末広がり部10gの外斜辺10g′に連続するよう底壁部10cを切り欠くことにより肉抜き部10jが形成されている。この肉抜き部10jは、ロッカアウタパネル12に近接する一般的な底壁部Aより大幅に短くなっている(図3,図4参照)。これによりサイドスポイラ10全体の軽量化,低コスト化を図っている。
【0032】
前記肉抜き部10jによりロッカアウタパネル12のアンダーコート15は下方に露出している。また外側方から見ると、肉抜き部10jは縦壁部10bにより隠れて見えない位置に形成されている。
【0033】
前記肉抜き部10jの内縁には補強フランジ部10kが下方に屈曲形成されている。これにより肉抜き部10jを形成したことによる剛性の低下を補っている。
【0034】
前記末広がり部10gの開口20の車幅寸法t1は、前記肉抜き部10jとロッカアウタパネル12の外壁12bとの隙間t2より大きい値に設定されている(図4,図5参照)。
【0035】
前記肉抜き部10jの内縁は、前記クリップ16より車内側に位置している。詳細には、肉抜き部10との内縁を通る垂直線Bがクリップ16の防水パッキン16aより車内側に位置するように設定されている。これにより、サイドスポイラ10とロッカアウタパネル12との隙間t2から進入した跳ね石は、クリップ16に直撃することなく底壁部10cに収容され、ここから開口20を介して外部に排出されることとなり、防水パッキン16a等が損傷するのを防止できる。
【0036】
本実施例によれば、サイドスポイラ10の底壁部10cに車内側に延びる突出部10eを所定間隔あけて形成し、各突出部10eを、ロッカアウタパネル12に取り付けられる下辺取付け部10fと、該下辺取付け部10fから底壁部10c側にいくほど前後幅が広がる末広がり部10gとを有するものとし、該末広がり部10gにこれに沿う台形状の開口20を形成した。
【0037】
このように末広がり部10gに台形状の開口20を形成したので、外側方からの外力に対する突出部10eの剛性を小さくすることができ、サイドスポイラ10の突出部10eと突出部間部分との剛性差を小さくすることができる。これにより、サイドスポイラ12の底壁部10cに肉抜き部10jを形成することにより軽量化,低コスト化を図った場合にも、サイドスポイラ12全体の剛性感を均一に保つことができ、品質に対する信頼性を高めることができる。
【0038】
これにより、ユーザーが洗車時にサイドスポイラ10を押した場合、ロッカパネル4に取り付けられた突出部10eと突出部間部分とは略同じ剛性感を得ることができる。
【0039】
また前記突出部10eに加わる外力は、末広がり部10gの開口後縁20aを形成する底壁部10cから前後に分散して伝達されることとなり、外力による突出部10eの変形や割れ等の損傷を防止できる。
【0040】
さらにまた、サイドスポイラ10内に進入した小石等を開口20から落下させることができ、小石等が内部に溜まるのを防止できる。この場合開口20の車幅寸法t1を肉抜き部10jとロッカアウタパネル12との隙間t2より大きくした。従ってこの隙間t2から進入した小石等は前記車幅寸法t1より小径であるため、前記開口20から確実に落下する。
【符号の説明】
【0041】
4 ロッカパネル
10 サイドスポイラ
10b 縦壁部
10c 底壁部
10d 上辺取付け部
10e 突出部
10f 下辺取付け部
10g 末広がり部
12 ロッカアウタパネル
20 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に延びるロッカパネルのロッカアウタパネルに配設され、該ロッカアウタパネルの上部から下方に延びる縦壁部と、該縦壁部の下縁から車幅方向内側に屈曲して延びる底壁部とを有する車両用サイドスポイラであって、
前記縦壁部には、前記ロッカアウタパネルに取り付けられる上辺取付け部が車両前後方向に所定間隔をあけて形成され、
前記底壁部には、車幅方向内側に延びる突出部が車両前後方向に所定間隔をあけて形成され、
前記突出部は、前記ロッカアウタパネルに取り付けられる下辺取付け部と、該下辺取付け部から前記底壁部側にいくほど前後幅が広がるように形成された末広がり部とを有し、
該末広がり部には、該末広がり部に沿う形状の開口が形成されている
ことを特徴とする車両用サイドスポイラ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−112205(P2013−112205A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260823(P2011−260823)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】