説明

車両用サイドミラー

【課題】見映えを損なわず、低コストで実現できるとともに、たとえば夜間等のように車両前輪付近に光が射し込まない状態にあるときでも、車両前輪付近における障害物の存在を運転者に知らしめることのできる車両用サイドミラーを提供する。
【解決手段】車両前輪付近の視界を運転者に確保させる光学部材30が備えられた車両用サイドミラー20Aである。この車両用サイドミラー20Aには、車両前輪付近の前記視界を照明する照明装置40が備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用サイドミラーに係り、車両前輪付近における障害物の存在を運転者に知らしめることのできる車両用サイドミラーに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用サイドミラーは、助手席側の前輪付近が運転者の死角となることが免れない。このため、車両がこの死角の部分において障害物と接触してしまうという事故を起こし易くなる。
【0003】
従来、この対策として、たとえば下記特許文献1に開示されるように、フロントミラーの下側に補助ミラーを設け、この補助ミラーを通して車両前輪付近の視界を確保したものが知られている。また、たとえば下記特許文献2に開示されるように、車両サイドミラーのハウジング内にカメラモジュールを配置し、このカメラモジュールを通して車両前輪付近を映像させるものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭55-42691公報
【特許文献2】特開2009-93882公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に示す構成は、補助ミラーをフロントミラーの下側に突出させて設けるようにしているため、体裁が悪く、意匠性の面でも好ましくないものとなっていた。また、特許文献2に示す構成は、カメラモジュールからの映像を車両内に配置させたモニター装置によって確認しなければならないことから、構成が複雑化しコストが高くなるという不都合を有していた。
【0006】
そして、このような構成は、たとえば夜間等のように車両前輪付近に光が射し込まない状態にあるとき、障害物の存在の判別が困難となるのにも拘わらず、この対策が施されていないものとなっていた。
【0007】
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、見映えを損なわず、低コストで実現できるとともに、たとえば夜間等のように車両前輪付近に光が射し込まない状態にあるときでも、車両前輪付近における障害物の存在を運転者に知らしめることのできる車両用サイドミラーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明は、車両用サイドミラーに、車両前輪付近の視界を運転者に確保させる光学部材を備えるとともに、前記車両前輪付近の前記視界を照明する照明装置を備えるようにしたものである。
【0009】
本発明は、以下の構成によって把握される。
(1)本発明の車両用サイドミラーは、車両前輪付近の視界を運転者に確保させる光学部材が備えられた車両用サイドミラーであって、前記車両前輪付近の前記視界を照明する照明装置を備えたことを特徴とする。
(2)本発明の車両用サイドミラーは、(1)の構成において、前記光学部材と前記照明装置はそれぞれ一体として構成されていることを特徴する。
(3)本発明の車両用サイドミラーは、(1)の構成において、前記照明装置は、車両の始動時に所定の時間の間に点灯させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
このように構成した車両用サイドミラーによれは、見映えを損なわず、低コストで実現できるとともに、たとえば夜間等のように車両前輪付近に光が射し込まない状態にあるときでも、車両前輪付近における障害物の存在を運転者に知らしめることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の車両サイドミラーの実施態様1を示す構成図で、(a)は車両サイドミラーを車両の前方斜めから観た斜視図、(b)は(a)のb−b線における断面図、(c)は(a)のc−c線における断面図である。
【図2】本発明の車両用サイドミラーが適用される車両の側面図である。
【図3】本発明の車両用サイドミラーが適用される車両の上面図である。
【図4】図2に対応する図で、照明装置の光照射範囲を示す側面図である。
【図5】図3に対応する図で、照明装置の光照射範囲を示す上面図である。
【図6】本発明の車両用サイドミラーを運転者側から観た斜視図
【図7】本発明の車両用サイドミラーに取り付けられる光学部材と照明装置とを裏面側から観た斜視図である。
【図8】照明装置の光源が接続される電気回路を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
(実施態様1)
図2は、本発明の車両用サイドミラーが適用される車両の側面図である。図2に示すように、運転者1が乗車する車両10があり、この車両10のドア11には車両用サイドミラー(以下、サイドミラーと称する)20が取り付けられている。このサイドミラー20は、上方から観た図3に示すように運転者席12側およびその隣の助手席(図示省略)側の各ドア11に設けられている。
【0013】
これらサイドミラー20は、車両10の後方に配置されるミラー(図6において符号21で示す)を車両10の前方に配置されるハウジング22で固定させることによって構成されている。運転者1は運転者席12からミラー21を観ることによって車両10の後方を目視できるようになっている。なお、ハウジング22には運転者1による車両10の後方の視界を調整できるようにミラー21の傾動調整機構(図示せず)等が内蔵されている。また、ハウジング22はドア11に固定されるミラーベース13に植設された支軸(図1(b)、(c)において符号13Aで示す)の廻りに回動できるように該ミラーベース13に取り付けられている。これにより、駐車時等において、サイドミラー20を車両10側に近接させることによって格納状態とすることができるようになっている。
【0014】
そして、これらサイドミラー20のうち、助手席側のドア11に取り付けられるサイドミラー20(以下、サイドミラー20Aと称する)には、ハウジング22の運転者1側の側面から車両10の前方方向に若干延在する領域に光学部材30が取り付けられている。図1(a)は、サイドミラー20Aを車両10の前方斜め方向から観た斜視図で、ハウジング22のほぼ全域の外観が示されている。光学部材30は、運転者1からの視線に基づく光路αが該光学部材30を通過した後に車両10の前方下部に屈折されて光路βとして出射されるように構成されている。この場合、光学部材30によって屈折された光路βは、図2および図3に示すように、比較的広い角度にわたって屈折されるようになっており、運転者1がサイドミラー20Aの光学部材30を目視した場合に、車両前輪付近の視界を広い範囲(図中斜線で示す範囲)にわたって充分に確保できるようになっている。なお、この光学部材30については後にさらに詳述する。
【0015】
そして、図4に示すように、サイドミラー20Aには前記光学部材30のたとえば下方に照明装置40が取り付けられている。この照明装置40は、その光源(図1(c)、図7にて符号41で示す)が車両前輪付近を照射するように構成されている。すなわち、照明装置40は、図5(図2に対応させて描いている)、および図6(図3に対応させて描いている)に示すように、車両前輪付近に比較的広い範囲(図中斜線で示す範囲)で光源41からの光が照射されるようになっている。この場合、図5および図6から明らかとなるように、照明装置40による光の照射範囲は、運転者1がサイドミラー20Aの光学部材30を通して目視できる範囲にほぼ一致づけられるように設定されている。このため、運転者1がサイドミラー20Aの光学部材30を通して目視できる範囲内を、たとえば夜間等のように車両前輪付近に光が射し込まない状態にあるときでも、照明装置40による照明によって明瞭に認識でき、車両前輪付近における障害物の存在を容易に確認できるようになっている。なお、この照明装置40については後にさらに詳述する。
図6は、サイドミラー20Aを運転者1側から観た斜視図である。図6に示すように、サイドミラー20Aは、ミラー21とともに、ハウジング22の側面が運転者1にとってよく見える位置にあり、ハウジング22の側面には光学部材30および照明装置40のそれぞれの一部が目視できるようになっている。上述したように運転者1が光学部材30を目視することによって、この光学部材30を通して車両前輪付近を認識できるようになっている。また、照明装置40は、運転者1が光学部材30を通して認識できる車両前輪付近を照明できるようになっている。
【0016】
次に、サイドミラー20Aの光学部材30および照明装置40の構成について、以下説明する。
【0017】
図1(b)は、図1(a)のb−b線における断面図である。図1(b)において、光学部材30の形成領域には、ハウジング22の外枠の一部を構成するようにして透明部材23が形成されている。この透明部材23は、運転者1側から目視できるハウジング22の側面から車両の前方に指向される前方面にかけて延在されて形成されている。これにより、透明部材23は、たとえば湾曲面で形成され、運転者1側に配置される側面部23Sと車両の前方に配置される前方面部23Fを有して形成されている。
【0018】
透明部材23の裏面の近傍は空間部24が形成され、透明部材23の前方面部23Fの裏面にはたとえばフレネルレンズ、メニスカスレンズ、プリズムレンズ等からなる平面状のレンズ25がたとえば透明部材23に当接するようにして配置されている。なお、図1(b)では、レンズ25は透明部材23と別体として設けたものとなっているが、透明部材23と一体に形成されるようにしてもよい。
【0019】
レンズ25は、運転者1が透明部材23の側面部23Sを目視した場合に、該側面部23Sおよび前記空間部24を通してレンズ25を目視できるようになっている。これにより、運転者1の視線に基づく光路αは該レンズ25によって車両前輪近傍部に屈折された光路βとして出射されるようになっている。
【0020】
図1(c)は、図1(a)のc−c線における断面図である。図1(c)において、照明装置40の形成領域には、ハウジング22の外枠の一部を構成するようにして透明部材23’が形成されている。この透明部材23’は、たとえば、光学部材30の透明部材23と一体となって形成され、運転者1側から目視できるハウジング22の側面から車両の前方に指向される前方面にかけて延在されて形成されている。透明部材23’の裏面の近傍は空間部24’が形成され、この空間部24’にはたとえばランプからなる光源41が、その光照射方向を車両前輪近傍部に向けられるようにして配置されている。また、光源41の周囲にはたとえば放物回転体等の形状を有するリフレクタ42が備えられ、光源41からの光はリフレクタ42に反射されて車両前輪近傍部を一定の範囲で照射できるようになっている。
【0021】
図7は、透明部材23、23’を裏面側から観た斜視図である。上述したように透明部材23と透明部材23’はたとえば一体として形成され、それらはほぼ同一の湾曲形状をなして形成されたものとなっている。
【0022】
透明部材23と透明部材23’の間にはこれら透明部材23および透明部材23’に交差する方向に突出する隔壁部28が設けられ、この隔壁部28によって、光学部材30の空間部24と照明装置40の空間部24’とを画するようになっている。
【0023】
透明部材23の前方面部23Fの裏面にはレンズ25がたとえば当該透明部材23に当接されて形成され、透明部材23の側面部23Sからの運転者1の視線に基づく光路αは該側面部23Sおよび空間部24を通してレンズ25に入射できるようになっている。レンズ25に入射した光路αは該レンズ25によって屈折され車両前輪近傍部に出射されることは上述した通りである。
【0024】
透明部材23’の裏面の空間部24’には光源41が配置され、光源41は、たとえば、そのソケット43が隔壁部28と一体に形成された光源取付部28Aに取り付けられることによって、光源41の光照射方向が車両前輪近傍部に向けられるようになっている。また、光源41からの光はリフレクタ42に反射されて車両前輪近傍部を一定の範囲で照射するようになっていることは上述した通りである。
【0025】
なお、透明部材23、23’の裏面は、図7に示すように、光学部材30の空間部24、照明装置40の空間部24’が直接に目視できるように構成したものであるが、これに限定されることはなく、前記空間部24、24’を画するような背面板が設けられていてもよいことはいうまでもない。このようにした場合、照明装置40の光源41は該背面板に固定するようにしてもよい。
【0026】
図8は、光源41が接続される電気回路を示している。この電気回路は、車両10を始動させる際に発生する信号Sを取り入れる光源駆動回路51を備え、この光源駆動回路51は、信号Sを取り入れた時間から所定の時間の間に光源41を点灯させるようになっている。信号Sを取り入れた時間からの所定の時間は、たとえば、タイマーによって、あるいは車両10の速度が所定の値となる時間によって定められるようになっている。なお、図8において符号52は、光源駆動回路51を介して光源41に電源を供給する電源となっている。
【0027】
このように構成された車両用サイドミラー20Aは、車両前輪付近の視界を運転者1に確保させる光学部材30を備えた構成としていることから、見映えを損なわず、低コストによって、車両前輪付近における障害物の存在を運転者に知らしめることができるようになる。
【0028】
また、車両用サイドミラー20Aは、車両前輪付近の視界を照明する照明装置40を備えた構成としていることから、見映えを損なわず、低コストによって、たとえば夜間等のように車両前輪付近に光が射し込まない状態にあるときでも、車両前輪付近における障害物の存在を運転者に知らしめることができるようになる。
【0029】
また、上述のように光学部材30と照明装置40を一体に構成することにより、光学部材30を通して認識できる視野と照明装置40による照明領域を信頼性よく一致づけて構成することができる。このため、光学部材30と照明装置40をそれぞれ別体として構成した場合と比較すると、これら光学部材30と照明装置40をサイドミラー20Aに取り付ける場合に、運転者1が光学部材30を通して認識できる車両前輪付近の視野に対して照明装置40の照明領域がずれて取り付けられてしまう不都合を解消できる効果を奏する。
【0030】
上述した実施態様では、サイドミラー20Aへの光学部材30および照明装置40の取り付けは、光学部材30を上側に、照明装置40を下側に配置させたものである。しかし、これに限定されることはなく、光学部材30を下側に、照明装置40を上側に配置させるようにしてもよいことはもちろんである。また、光学部材30と照明装置40とを水平方向に並設させるようにして配置するようにしてもよいことはもちろんである。
【0031】
また、上述した実施態様では、光学部材30と照明装置40とを一体化して形成したものである。しかし、これに限定されることはなく、それぞれ別体として車両用ミラーに取り付けるようにしてもよい。この場合においても、本発明の目的が達成できるからである。
【0032】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0033】
1……運転者、10……車両、11……ドア、13……ミラーベース、13A……支軸、20、20A……サイドミラー、21……ミラー、22……ハウジング、23、23’……透明部材、23A……側面部(透明部材の)、23F……前方面部(透明部材の)、24、24’……空間部、25……レンズ、28……隔壁部、28A……光源取付部、30……光学部材、40……照明装置、41……光源、42……リフレクタ、43……ソケット、51……光源駆動回路、52……電源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前輪付近の視界を運転者に確保させる光学部材が備えられた車両用サイドミラーであって、
前記車両前輪付近の前記視界を照明する照明装置を備えたことを特徴とする車両用サイドミラー。
【請求項2】
前記光学部材と前記照明装置はそれぞれ一体として構成されていることを特徴する請求項1に記載の車両用サイドミラー。
【請求項3】
前記照明装置は、車両の始動時に所定の時間の間に点灯させることを特徴とする請求項1に記載の車両用サイドミラー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−14258(P2013−14258A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149355(P2011−149355)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】