説明

車両用サイドミラー

【課題】見映えを損なわず、低コストで実現できるとともに、極めて簡単な構成によって、運転者が、車両前輪付近における広視野角の像を鮮明に得ることのできる車両用サイドミラーを提供する。
【解決手段】車両前輪付近の視界を運転者に確保させる光学部材30が取り付けられ、光学部材30は、透明部材32と反射鏡50とから構成され、透明部材32は、運転者がミラーを通して車両の後方を目視できる状態にあって、運転者が目視できるミラーハウジングの側面部に配置される第1側面部32Aと、この第1側面部32Aから車両前方を指向するミラーハウジングの前面部に至る第2側面部32Bを有して構成されている。反射鏡50は、透明部材32の第1側面部32Aと第2側面部32Bに対向するように湾曲して形成されているとともに、上辺50Cが下辺50Dよりも車両の前方側に位置づけられるように傾斜して配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用サイドミラーに係り、車両前輪付近における障害物の存在を運転者に知らしめることのできる車両用サイドミラーに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用サイドミラーは、助手席側の前輪付近が運転者の死角となることが免れない。このため、車両がこの死角の部分において障害物と接触してしまうという事故を起こし易くなる。
【0003】
従来、この対策として、たとえば下記特許文献1に開示されるように、フロントミラーの下側に補助ミラーを設け、この補助ミラーを通して車両前輪付近の視界を確保したものが知られている。また、たとえば下記特許文献2に開示されるように、車両サイドミラーのハウジング内にカメラモジュールを配置し、このカメラモジュールを通して車両前輪付近を映像させるものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭55-42691号公報
【特許文献2】特開2009-93882公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に示す構成は、補助ミラーをフロントミラーの下側に突出させて設けるようにしているため、体裁が悪く、意匠性の面でも好ましくないものとなっていた。また、特許文献2に示す構成は、カメラモジュールからの映像を車両内に配置させたモニター装置によって確認しなければならないことから、構成が複雑化しコストが高くなるという不都合を有していた。
【0006】
さらに、上述した構成の場合、車両前輪付近の像を広視野角で得ようとした場合、大きなスペースを必要とし、また、小さなスペースで済むようにしようとした場合には、構成が複雑になるという不都合を有していた。
【0007】
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、見映えを損なわず、低コストで実現できるとともに、スペースをとることのない極めて簡単な構成によって、運転者が、車両前輪付近における広視野角の像を鮮明に得ることのできる車両用サイドミラーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するため、本発明は、車両用サイドミラーに反射鏡を組み込むようにし、この反射鏡の形状、および配置を工夫することにより、比較的小さなスペースで済むにも拘わらず、運転者が、比較的広い視野角で車両前輪付近の像を得るようにしたものである。
【0009】
本発明は、以下の構成によって把握される。
(1)本発明の車両用サイドミラーは、ミラーと前記ミラーを保持するミラーハウジングとを少なくとも備える車両用サイドミラーであって、車両前輪付近の視界を運転者に確保させる光学部材が取り付けられ、前記光学部材は、透明部材と反射鏡とから構成され、前記透明部材は、運転者が前記ミラーを通して車両の後方を目視できる状態にあって、前記運転者が目視できる前記ミラーハウジングの側面部に配置される第1側面部と、この第1側面部から車両前方を指向する前記ミラーハウジングの前面部に延在される第2側面部を有して構成され、前記反射鏡は、前記透明部材の第1側面部と第2側面部に対向するように湾曲して形成されているとともに、上辺が下辺よりも車両の前方側に位置づけられるように傾斜して配置され、前記運転者の車両前輪付近の視野の確保は、前記透明部材の前記第1側面部、前記反射鏡、および前記透明部材の前記第2側面部を通してなされることを特徴とする。
(2)本発明の車両用サイドミラーは、(1)の構成において、前記反射鏡は、上辺から下辺にかけて湾曲して形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
このように構成された車両用サイドミラーによれば、見映えを損なわず、低コストで実現できるとともに、極めて簡単な構成によって、運転者が、車両前輪付近における広視野角の像を鮮明に得ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)は本発明の車両用サイドミラーの実施態様1の要部を示す斜視図、(b)は(a)のb−b線における断面図である。
【図2】本発明の車両用サイドミラーが適用される車両の側面図である。
【図3】本発明の車両用サイドミラーが適用される車両の上面図である。
【図4】車両用サイドミラーを車両の前方斜め方向から観た斜視図である。
【図5】車両用サイドミラーを運転者側から観た斜視図である。
【図6】図4のVI−VI線における断面図である。
【図7】本発明の車両用サイドミラーの実施態様2の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
(実施形態1)
図2は、本発明の車両用サイドミラーが適用される車両の側面図である。図2に示すように、運転者1が乗車する車両10があり、この車両10のドア11には車両用サイドミラー(以下、サイドミラーと称する)20が取り付けられている。このサイドミラー20は、車両10を上方から観た図3に示すように運転者席12側およびその隣の助手席(図示省略)側の各ドア11に設けられている。
【0013】
これらサイドミラー20は、車両10の後方に配置されるミラー(図5、図6において符号21で示す)を車両10の前方に配置されるミラーハウジング22で固定させることによって構成されている。運転者1は運転者席12からミラー21を観ることによって車両10の後方を目視できるようになっている。なお、ミラーハウジング22には運転者1による車両10の後方の視界を調整できるようにミラー21の傾動調整機構(図6において符号25で示す)等が内蔵されている。また、ミラーハウジング22はドア11に固定されるミラーベース13に植設された支軸(図6において符号14で示す)の廻りに回動できるように該ミラーベース13に取り付けられている。これにより、駐車時等において、サイドミラー20を車両10側に近接させるように回動させることによって格納状態とすることができるようになっている。そして、これらサイドミラー20のうち、助手席側のドア11に取り付けられるサイドミラー20(以下、サイドミラー20Aと称する)には、ミラーハウジング22の運転者1側の側面部から車両10の前方方向にかけて水平に延在するように光学部材30が取り付けられている。
【0014】
図4は、サイドミラー20Aを車両10の前方斜め方向から観た斜視図で、ミラーハウジング22のほぼ全域の外観が示されている。光学部材30は、図4に示すように、ミラーハウジング22の表面において水平方向に連続した帯状の形態で形成されている。すなわち、運転者1側に指向するミラーハウジング22の第1側面部22Aから、車両前方を指向するミラーハウジング22の前面部である第2側面部22Bの一部に至って形成されている。図5は、サイドミラー20Aを運転者1側から観た斜視図である。図5に示すように、サイドミラー20Aは、ミラー21とともに、ミラーハウジング22の第1側面部22Aが運転者1にとってよく見える位置にあり、この第1側面部22Aには光学部材30の一部が目視できるようになっている。光学部材30は、運転者1からの視線に基づく光路αが該光学部材30を通過した後に車両10の前方下部に屈折されて光路βとして出射されるように構成されている。この場合、光学部材30によって屈折された光路βは、図2および図3に示すように、比較的広い角度にわたって屈折されるようになっており、運転者1がサイドミラー20Aの第1側面部22Aに形成されている光学部材30を目視した場合に、車両前輪付近の視界を広い範囲(図2、図3において斜線で示す範囲)にわたって充分に確保できるようになっている。
【0015】
図6は、図4のVI−VI線における断面を示す図である。図6において、ミラー21とこのミラー21を保持するミラーハウジング22の間には、上述したように、ミラー21の傾きを調整できる傾動調整機構25、サイドミラー20Aをミラーベース13の廻りに回動できるようにするための支軸14等が配置されている。光学部材30は、ミラー21とは反対側のミラーハウジング22の部分に連続した帯状の形態で形成され、運転者1が前記ミラー21を通して車両10の後方を目視できる状態にあって、運転者1が目視できるミラーハウジング22の第1側面部22Aから、車両前方を指向するミラーハウジング22の前面部である第2側面部22Bの一部に至って形成されている。
【0016】
そして、このように光学部材30が形成されている領域には、透明部材32がミラーハウジング22の外枠の一部を構成するようにしてミラーハウジング22に取り付けられている。これにより、透明部材32は、運転者1が前記ミラー21を通して車両の後方を目視できる状態にあって、運転者1が目視できる第1側面部32A、車両前方を指向する第2側面部32Bを有し、これらは互いに連続して形成されているとともに、ミラーハウジング22の外枠の曲面に合わせた湾曲面となっている。この場合、上述のように、透明部材32において、第1側面部32Aは運転者1側に配置され第2側面部32Bは車両前方に指向されることから、第1側面部32Aと第2側面部32Bの境界部(図中符号Pで示す)は比較的大きな曲率を有する曲面を有するようになっている。
【0017】
また、透明部材32のミラー21側の背部には空間部40を有し、この空間部40には反射鏡50が配置されている。この反射鏡50は、車両の前方側の面に光反射処理されたたとえば矩形状の金属板から構成されている。図1(a)は、反射鏡50を透明部材32とともに示した図で、上方斜め方向から観た斜視図である。図1(a)に示すように、反射鏡50は、透明部材32の第1側面部32Aと第2側面部32Bのそれぞれに対向するように、水平方向にたとえばほぼ同一の曲率を有する湾曲形状によって形成されている。この場合、反射鏡50の湾曲は、透明部材32の第1側面部32A側の一端50Aから透明部材32Bの第2側面部32B側の他端50Bに及んで曲率の比較的小さな滑らかな曲面を有するようになっている。このように曲率の小さな湾曲された反射鏡50によって、この反射鏡50を通して認識できる車両前輪付近の像に大きな歪みが発生するのを抑制させ、鮮明な像を得ることができるようになる。また、反射鏡50は、図1(a)のb−b線における断面図である図1(b)に示すように、その上辺50Cが下辺50Dよりも車両の前方側(透明部材32側)に位置づけられるように傾斜して配置されている。すなわち、反射鏡50の光反射面は車両前輪付近に指向するようにして配置され、運転者1は反射鏡50を通して車両前輪付近の像を得ることができるようになっている。
【0018】
このように構成された光学部材30は、運転者1が透明部材32の第1側面部32A、反射鏡50、透明部材32の第2側面部32Bを通して車両前輪付近の視野を確保できるようになっている。この場合、反射鏡50は水平方向に湾曲された形状をなしていることから、運転者1は車両の幅方向に沿った広い視野角で車両前輪付近を目視することができるようになる。
【0019】
そして、光学部材30は、サイドミラー20Aのミラーハウジング22の外枠の一部を構成するように、すなわち、ミラーハウジング22内に埋設された状態で構成することから、見映えを損なうようなことはなくなる。
【0020】
また、光学部材30は、サイドミラー20A内の僅かなスペース(空間部40)に反射鏡50を配置させることによって構成できることから、低コストで実現できるとともに、スペースをとることのない極めて簡単な構成とすることができるようになる。
(実施態様2)
上述した実施態様では、反射鏡50を水平方向に(反射鏡50の一端50Aから他端50Bにかけて)湾曲させた形状としたものである。しかし、これに限定されることはなく、図1(b)に対応づけて描いた図7に示すように、上述した水平方向の湾曲に加え、上辺50Cから下辺50Dにかけて車両前方側(透明部材32側)へ凸となるように湾曲させるようにしてもよい。このようにした場合、運転者1は車両の上下方向に沿った広い視野角で車両前輪付近を目視することができる効果を奏するようになる。
【0021】
なお、上述した実施態様では、反射鏡50は、その一面に光反射処理がなされた金属板によって構成したものである。しかし、これに限定されることはなく、合成樹脂等の他の材料から構成したものであってもよいことはもちろんである。
【0022】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0023】
1……運転者、10……車両、11……ドア、12……運転者席、13……ミラーベース、14……支軸、20、20A……サイドミラー、21……ミラー、22……ミラーハウジング、22A……第1側面部(ミラーハウジングの)、22B……第2側面部(ミラーハウジングの)、25……傾動調整機構、32……透明部材、32A……第1側面部(透明部材の)、32B……第2側面部(透明部材の)、40……空間部、50……反射鏡、50A……一端(反射鏡の)、50B……他端(反射鏡の)、50C……上辺(反射鏡の)、50D……下辺(反射鏡の)。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラーと前記ミラーを保持するミラーハウジングとを少なくとも備える車両用サイドミラーであって、
車両前輪付近の視界を運転者に確保させる光学部材が取り付けられ、前記光学部材は、透明部材と反射鏡とから構成され、
前記透明部材は、運転者が前記ミラーを通して車両の後方を目視できる状態にあって、前記運転者が目視できる前記ミラーハウジングの側面部に配置される第1側面部と、この第1側面部から車両前方を指向する前記ミラーハウジングの前面部に延在される第2側面部を有して構成され、
前記反射鏡は、前記透明部材の第1側面部と第2側面部に対向するように湾曲して形成されているとともに、上辺が下辺よりも車両の前方側に位置づけられるように傾斜して配置され、
前記運転者の車両前輪付近の視野の確保は、前記透明部材の前記第1側面部、前記反射鏡、および前記透明部材の前記第2側面部を通してなされることを特徴とする車両用サイドミラー。
【請求項2】
前記反射鏡は、上辺から下辺にかけて湾曲して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用サイドミラー。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate