説明

車両用サスタワー構造

【課題】サスタワーの上面壁部とフードとの間に例えば歩行者との衝突時におけるフードの変形を許容するためのスペースを大きく確保しつつ、車両用サスペンション装置の可動部とサスタワーの上面壁部との干渉を回避できる車両用サスタワー構造を提供する。
【解決手段】車両用サスタワー構造10では、サスタワー14の上面壁部18における取付部20に対する車両外側の位置には、ボールジョイント26との干渉を回避するための干渉回避穴28が設けられている。また、サスタワー14の取付部20は、補強パッチ34によって補強されている。従って、取付部20を含む上面壁部18の変形を補強パッチ34によって抑制しつつ、サスタワー14の上面壁部18とフード64との間のスペース66の確保と、車両用フロントサスペンション装置12のボールジョイント26とサスタワー14の上面壁部18との干渉の回避との両方の性能を両立させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用サスタワー構造に係り、特に、上面壁部に車両用サスペンション装置のアッパサポートが取り付けられたサスタワーを備える車両用サスタワー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両用サスタワー構造としては、次のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。例えば、特許文献1に記載の例では、車両用サスペンション装置のアッパアームを車体に固定するためのブラケットの上端がサスタワーハウジングのサイドウォールに取付けられている。
【0003】
このため、サスタワーハウジングのアッパウォールの取付高さを低く設定することができ、これにより、サスタワーハウジングとフードとの間に例えば歩行者との衝突時におけるフードの変形を許容するためのスペースを大きく確保できるとしている。
【特許文献1】特開2007−126005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、サスタワーハウジングのアッパウォールの取付高さを低く設定すると、例えば、車両用サスペンション装置への突き上げ入力時に、車両用サスペンション装置の一部を構成する可動部(例えば、アッパアームとナックルとを連結するボールジョイント)が上方へ移動されてアッパウォールと干渉する虞がある。
【0005】
従って、サスタワーハウジングのアッパウォールとフードとの間に例えば歩行者との衝突時におけるフードの変形を許容するためのスペースを大きく確保しつつ、車両用サスペンション装置の可動部とアッパウォールとの干渉を回避できるようにするためには改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、サスタワーの上面壁部とフードとの間に例えば歩行者との衝突時におけるフードの変形を許容するためのスペースを大きく確保しつつ、車両用サスペンション装置の可動部とサスタワーの上面壁部との干渉を回避できる車両用サスタワー構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の車両用サスタワー構造は、車両用サスペンション装置の上端部を構成するアッパサポートが取り付けられた上面壁部を有すると共に、前記上面壁部における前記アッパサポートとの取付部と異なる位置に、前記車両用サスペンション装置の一部を構成し前記上面壁部と上下方向に相対的に接離される可動部との干渉を回避するための干渉回避穴が設けられたサスタワーと、前記取付部を補強するための補強部材と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の車両用サスタワー構造では、サスタワーの上面壁部に車両用サスペンション装置の上端部を構成するアッパサポートが取り付けられており、この上面壁部におけるアッパサポートとの取付部と異なる位置には、車両用サスペンション装置の一部を構成し上面壁部と上下方向に相対的に接離される可動部との干渉を回避するための干渉回避穴が設けられている。
【0009】
従って、例えば、車両用サスペンション装置への突き上げ入力に伴い、車両用サスペンション装置の可動部が上方へ移動されて上面壁部と相対的に接近された場合でも、干渉回避穴によって上面壁部と可動部との干渉を回避できる。
【0010】
また、サスタワーには、上述のように、上面壁部に車両用サスペンション装置の可動部との干渉を回避するための干渉回避穴が設けられているので、サスタワーの上面壁部の位置を低く設定することが可能である。従って、サスタワーの上面壁部の位置を低く設定することで、サスタワーの上面壁部とフードとの間に例えば歩行者との衝突時におけるフードの変形を許容するためのスペースを大きく確保できる。
【0011】
このように、請求項1に記載の車両用サスタワー構造によれば、サスタワーの上面壁部とフードとの間に例えば歩行者との衝突時におけるフードの変形を許容するためのスペースを確保しつつ、車両用サスペンション装置の可動部とサスタワーの上面壁部との干渉を回避できる。
【0012】
しかも、請求項1に記載の車両用サスタワー構造では、サスタワーの取付部が補強部材によって補強されている。
【0013】
従って、例えば、車両用サスペンション装置に突き上げ力が入力されて、この突き上げ力がアッパサポートを介して取付部に伝達された場合でも、取付部を含む上面壁部の変形を補強部材によって抑制することができる。
【0014】
請求項2に記載の車両用サスタワー構造は、請求項1に記載の車両用サスタワー構造において、前記サスタワーは、前記上面壁部の前側に形成された前面壁部と、前記上面壁部の後側に形成された後面壁部と、を有し、前記補強部材は、前記前面壁部、前記取付部、及び前記後面壁部を覆うように設けられると共に、前記アッパサポート及び前記取付部と締結手段によって共締めされ、且つ、前記前面壁部及び前記後面壁部と結合手段によってそれぞれ結合されていることを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の車両用サスタワー構造において、補強部材は、サスタワーの前面壁部、取付部、及び後面壁部を覆うように設けられると共に、アッパサポート及び取付部と締結手段によって共締めされ、且つ、前面壁部及び後面壁部と結合手段によってそれぞれ結合されている。
【0016】
従って、例えば、車両用サスペンション装置に突き上げ力が入力された場合には、この突き上げ力を、アッパサポート及び取付部と補強部材との共締め部分から、前面壁部と補強部材との結合部分及び後面壁部と補強部材との結合部分を介して車体に伝達することができる。
【0017】
このように、請求項2に記載の車両用サスタワー構造によれば、車両用サスペンション装置に突き上げ力が入力された場合でも、この突き上げ力を効率良く車体に伝達することができるので、取付部を含む上面壁部の変形をより一層抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上詳述したように、本発明によれば、サスタワーの上面壁部とフードとの間に例えば歩行者との衝突時におけるフードの変形を許容するためのスペースを確保しつつ、車両用サスペンション装置の可動部とサスタワーの上面壁部との干渉を回避でき、しかも、取付部を含む上面壁部の変形を補強部材によって抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の車両用サスタワー構造の一実施形態について説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用サスタワー構造10を斜め前方上方から見た斜視図、図2は、本発明の一実施形態に係る車両用サスタワー構造10を斜め後方上方から見た斜視図、図3は、図1の3−3線断面図、図4は、図2の4−4線断面図である。
【0021】
なお、これらの図において示される矢印UP、矢印FR、矢印OUTは、本発明の一実施形態に係る車両用サスタワー構造10が適用された車両の車両上下方向上側、車両前後方向前側、車両幅方向外側(車両右側)をそれぞれ示している。
【0022】
本発明の一実施形態に係る車両用サスタワー構造10は、例えば、ダブルウィッシュボーン式の車両用フロントサスペンション装置12を支持するためのものであり、車両の前方外側部に配置されている。
【0023】
なお、図1乃至図4では、右側の車両用サスタワー構造10が示されており、図示しない左側の車両用サスタワー構造は、右側の車両用サスタワー構造10と線対称に構成されている。
【0024】
図1,図2に示されるように、車両用サスタワー構造10は、サスタワー14(サスタワーハウジング)を備えている。サスタワー14は、図3,図4に示されるように、車両用フロントサスペンション装置12の上端部を構成するアッパサポート16が取り付けられた上面壁部18を有している。
【0025】
この上面壁部18におけるアッパサポート16との取付部20に対する車両外側の位置には、図4に示されるように、車両用フロントサスペンション装置12のアッパアーム22とナックル24とを連結する可動部としてのボールジョイント26との干渉を回避するための干渉回避穴28が設けられている。
【0026】
なお、ボールジョイント26は、車両用フロントサスペンション装置12への突き上げ入力や車体のロールに伴い、上面壁部18と上下方向に相対的に接離される構成とされている。
【0027】
また、サスタワー14は、図1,図2に示されるように、上面壁部18の前側に形成された前面壁部30と、上面壁部18の後側に形成された後面壁部32とを有している。そして、このサスタワー14の前面壁部30、取付部20、及び後面壁部32には、これらを上側から覆うように補強部材としての補強パッチ34が設けられている。
【0028】
補強パッチ34は、車両前後方向に延びる短冊状で且つサスタワー14よりも板厚の厚い板材(例えば、サスタワー14の板厚の約二倍の板厚を有する板材)により構成されている。この補強パッチ34の長手方向中央部34Aは、図3に示されるように、アッパサポート16に一体に設けられたスタッドボルト36及び補強パッチ34の表側からスタッドボルト36と螺合されたナット38によって、アッパサポート16及び取付部20と共締めされている。
【0029】
また、補強パッチ34の前方側の端部34Bは、前面壁部30の内側に一体に設けられたウェルドナット40及び補強パッチ34の表側からウェルドナット40と螺合されたボルト42によって、前面壁部30と結合されている。さらに、補強パッチ34の後方側の端部34Cは、後面壁部32の内側に一体に設けられたウェルドナット44及び補強パッチ34の表側からウェルドナット44と螺合されたボルト46によって、後面壁部32と結合されている。
【0030】
なお、本実施形態において、上述のスタッドボルト36及びナット38によって本発明における締結手段が構成されており、上述のウェルドナット40,44及びボルト42,46によって本発明における結合手段が構成されている。
【0031】
また、図1,図2に示されるように、本発明の一実施形態に係る車両用サスタワー構造10において、サスタワー14の前側には、フェンダエプロンフロント48が設けられており、サスタワー14の後側には、フェンダエプロンリア50が設けられている。
【0032】
フェンダエプロンフロント48の後側の端部は、サスタワー14の前側の端部と結合されており、フェンダエプロンリア50の前側の端部は、サスタワー14の後側の端部と結合されている。
【0033】
さらに、サスタワー14の車両内側の壁部52の下側の端部と、フェンダエプロンフロント48及びフェンダエプロンリア50の車両内側の各端部は、エンジンルームの車両幅方向外側下部に配置されると共に車両前後方向に延在するフロントサイドメンバ54に結合されている。
【0034】
また、サスタワー14の上面壁部18、フェンダエプロンフロント48及びフェンダエプロンリア50の車両外側の各端部は、フロントサイドメンバ54に対する車両幅方向外側上部に配置されると共に車両前後方向に延在するエプロンアッパメンバ56に結合されている。
【0035】
そして、上記構成からなる車両用サスタワー構造10によれば、以下の特有な効果を奏する。
【0036】
ここで、本発明の一実施形態に係る車両用サスタワー構造10が奏する効果をより明確にするために、先ず、比較例に係る車両用サスタワー構造について説明する。
【0037】
図9乃至図12には、第一比較例に係る車両用サスタワー構造110が示されており、図13乃至図16には、第二比較例に係る車両用サスタワー構造210が示されている。
【0038】
なお、第一比較例に係る車両用サスタワー構造110、及び第二比較例に係る車両用サスタワー構造210において、上述の本発明の一実施形態に係る車両用サスタワー構造10と同一名称の部材には、便宜上、同一符合を用いることとする。
【0039】
第一比較例に係る車両用サスタワー構造110は、図9に示されるように、上面壁部18におけるアッパサポート16との取付部20に対する車両外側の位置に、車両用フロントサスペンション装置12のボールジョイント26(図4参照)との干渉を回避するための干渉回避部128を有する構成とされている。この干渉回避部128は、上方へ膨出する山状に形成されている。
【0040】
従って、車両用フロントサスペンション装置12への突き上げ入力に伴いボールジョイント26(図4参照)が上方へ移動されて上面壁部18と相対的に接近された場合でも、干渉回避部128によって上面壁部18とボールジョイント26との干渉を回避できる。
【0041】
ここで、図10には、この第一比較例に係る車両用サスタワー構造110について、突き上げ入力の無い変形前の状態(図10(A))と、突き上げ入力に伴う変形後の状態(図10(B))の比較が示されている。また、図11には、この第一比較例に係る車両用サスタワー構造110について、突き上げ入力の無い変形前の状態が実線で示されており、突き上げ入力に伴う変形後の状態が二点鎖線で示されている。また、図12には、この第一比較例に係る車両用サスタワー構造110について、突き上げ入力時における応力分布が示されている。
【0042】
これらの図から判るように、この第一比較例に係る車両用サスタワー構造110では、車両用フロントサスペンション装置12に突き上げ力が入力されて、この突き上げ力(特に、ショックアブソーバ58(図4参照)からの突き上げ力)が上面壁部18の取付部20に入力された場合でも、上面壁部18に応力が局所的に集中することが抑制され、上面壁部18が全体で変形される。このため、突き上げ入力時における上面壁部18の局所変形を小さく抑えることができる。
【0043】
しかしながら、この第一比較例に係る車両用サスタワー構造110では、サスタワー14の上面壁部18にボールジョイント26(図4参照)との干渉を回避するための干渉回避部128が上面壁部18から上側に膨出するように設けられている。このため、サスタワー14の上面壁部18とフード64(図4参照)との間に例えば歩行者との衝突時におけるフード64の変形を許容するためのスペース66(図4参照)を大きく確保することが困難である。
【0044】
一方、第二比較例に係る車両用サスタワー構造210は、図13に示されるように、上面壁部18におけるアッパサポート16との取付部20に対する車両外側の位置にボールジョイント26(図4参照)との干渉を回避するための干渉回避穴28を有する構成とされている。
【0045】
従って、車両用フロントサスペンション装置12への突き上げ入力に伴いボールジョイント26(図4参照)が上方へ移動されて上面壁部18と相対的に接近された場合でも、干渉回避穴28によって上面壁部18とボールジョイント26との干渉を回避できる。
【0046】
また、サスタワー14に干渉回避穴28が設けられることで、サスタワー14の上面壁部18の位置を低く設定することが可能である。従って、サスタワー14の上面壁部18の位置を低く設定することで、サスタワー14の上面壁部18とフード64(図4参照)との間に例えば歩行者との衝突時におけるフード64の変形を許容するためのスペース66(図4参照)を大きく確保できる。
【0047】
ここで、図14には、この第二比較例に係る車両用サスタワー構造210について、突き上げ入力の無い変形前の状態(図14(A))と、突き上げ入力に伴う変形後の状態(図14(B))の比較が示されている。また、図15には、この第二比較例に係る車両用サスタワー構造210について、突き上げ入力の無い変形前の状態が実線で示されており、突き上げ入力に伴う変形後の状態が二点鎖線で示されている。また、図16には、この第二比較例に係る車両用サスタワー構造210について、突き上げ入力時における応力分布が示されている。
【0048】
しかしながら、これらの図から判るように、この第二比較例に係る車両用サスタワー構造210では、車両用フロントサスペンション装置12に突き上げ力が入力されて、この突き上げ力(特に、ショックアブソーバ58(図4参照)からの突き上げ力)が上面壁部18の取付部20に入力された場合には、上面壁部18における干渉回避穴28の周辺(特に、上面壁部18における干渉回避穴28と取付部20との間の部分)や、アッパサポート16と取付部20とのスタッドボルト36及びナット38による締結部分に応力が局所的に集中する。このため、突き上げ入力時における上面壁部18の局所変形が大きくなる。
【0049】
このように、第一比較例に係る車両用サスタワー構造110では、サスタワー14の上面壁部18とフード64との間に例えば歩行者との衝突時におけるフード64の変形を許容するためのスペース66を大きく確保することが困難であるという課題があり、第二比較例に係る車両用サスタワー構造210では、車両用フロントサスペンション装置12からの突き上げ力が上面壁部18の取付部20に入力された場合に上面壁部18の局所変形が大きくなるという課題がある。
【0050】
これに対し、本発明の一実施形態に係る車両用サスタワー構造10では、図4に示されるように、サスタワー14の上面壁部18における取付部20に対する車両外側の位置には、ボールジョイント26との干渉を回避するための干渉回避穴28が設けられている。
【0051】
従って、例えば、車両用フロントサスペンション装置12への突き上げ入力に伴い、ボールジョイント26が上方へ移動されて上面壁部18と相対的に接近された場合でも、干渉回避穴28によって上面壁部18とボールジョイント26との干渉を回避できる。
【0052】
また、サスタワー14には、上述のように、上面壁部18にボールジョイント26との干渉を回避するための干渉回避穴28が設けられているので、サスタワー14の上面壁部18の位置を低く設定することが可能である。従って、サスタワー14の上面壁部18の位置を低く設定することで、サスタワー14の上面壁部18とフード64との間に例えば歩行者との衝突時におけるフード64の変形を許容するためのスペース66(すなわち、エネルギ吸収スペース)を大きく確保できる。
【0053】
特に、本発明の一実施形態に係る車両用サスタワー構造10によれば、市場のトレンドに伴いタイヤが大型化されると共に見栄えや視認性の向上のためにフード64が下方位置に設定された場合でも、サスタワー14の上面壁部18とフード64との間のスペース66を大きく確保できる。
【0054】
このように、本発明の一実施形態に係る車両用サスタワー構造10によれば、サスタワー14の上面壁部18とフード64との間に例えば歩行者との衝突時におけるフード64の変形を許容するためのスペース66を確保しつつ、車両用フロントサスペンション装置12のボールジョイント26とサスタワー14の上面壁部18との干渉を回避できる。
【0055】
しかも、本発明の一実施形態に係る車両用サスタワー構造10では、サスタワー14の取付部20が補強パッチ34によって補強されている。
【0056】
従って、例えば、車両用フロントサスペンション装置12に突き上げ力が入力されて、この突き上げ力がアッパサポート16を介して取付部20に伝達された場合でも、取付部20を含む上面壁部18の変形を補強パッチ34によって抑制することができる。
【0057】
また、本発明の一実施形態に係る車両用サスタワー構造10において、補強パッチ34は、図1,図2に示されるように、サスタワー14の前面壁部30、取付部20、及び後面壁部32を覆うように設けられると共に、アッパサポート16及び取付部20とスタッドボルト36及びナット38によって共締めされ、且つ、前面壁部30及び後面壁部32とウェルドナット40,44及びボルト42,46によってそれぞれ結合されている。
【0058】
従って、例えば、車両用フロントサスペンション装置12に突き上げ力が入力された場合には、この突き上げ力を、図5(A),(B)の矢印Fで示される如く、アッパサポート16及び取付部20と補強パッチ34との共締め部分から、前面壁部30と補強パッチ34との結合部分及び後面壁部32と補強パッチ34との結合部分を介して車体(例えば、フロントサイドメンバ54、エプロンアッパメンバ56等)に伝達することができる。
【0059】
このように、本発明の一実施形態に係る車両用サスタワー構造10によれば、車両用フロントサスペンション装置12に突き上げ力が入力された場合でも、この突き上げ力を効率良く車体に伝達することができるので、取付部20を含む上面壁部18の変形をより一層抑制することができる。
【0060】
また、本発明の一実施形態に係る車両用サスタワー構造10によれば、補強パッチ34、取付部20、及びアッパサポート16がスタッドボルト36及びナット38による共締めの構造とされている。従って、補強パッチ34の追加に伴う新たな締結作業の増加を防止できる。
【0061】
ここで、図6には、この本発明の一実施形態に係る車両用サスタワー構造10について、突き上げ入力の無い変形前の状態(図6(A))と、突き上げ入力に伴う変形後の状態(図6(B))の比較が示されている。また、図7には、この本発明の一実施形態に係る車両用サスタワー構造10について、突き上げ入力の無い変形前の状態が実線で示されており、突き上げ入力に伴う変形後の状態が二点鎖線で示されている。また、図8には、この本発明の一実施形態に係る車両用サスタワー構造10について、突き上げ入力時における応力分布が示されている。
【0062】
これらの図から判るように、この本発明の一実施形態に係る車両用サスタワー構造10では、車両用フロントサスペンション装置12に突き上げ力が入力されて、この突き上げ力(特に、ショックアブソーバ58(図4参照)からの突き上げ力)が上面壁部18の取付部20に入力された場合でも、取付部20は補強パッチ34により補強されているので、上面壁部18が全体で変形される。このため、突き上げ入力時における上面壁部18の局所変形を小さく抑えることができる。特に、上面壁部18における干渉回避穴28の周辺の局所変形を抑制できる。
【0063】
つまり、本発明の一実施形態に係る車両用サスタワー構造10によれば、上面壁部18に干渉回避穴28が設けられていても、上面壁部18の取付部20が補強パッチ34により補強されているので、上述の第一比較例に係る車両用サスタワー構造110と同等かそれ以上の耐久強度を確保できる。
【0064】
以上詳述したように、本発明の一実施形態に係る車両用サスタワー構造10によれば、サスタワー14の上面壁部18とフード64との間に例えば歩行者との衝突時におけるフード64の変形を許容するためのスペース66を確保しつつ、車両用フロントサスペンション装置12のボールジョイント26とサスタワー14の上面壁部18との干渉を回避でき、しかも、取付部20を含む上面壁部18の変形を補強パッチ34によって抑制することができる。
【0065】
すなわち、換言すれば、取付部20を含む上面壁部18の変形を補強パッチ34によって抑制しつつ、サスタワー14の上面壁部18とフード64との間のスペース66の確保と、車両用フロントサスペンション装置12のボールジョイント26とサスタワー14の上面壁部18との干渉の回避との両方の性能を両立させることができる。
【0066】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【0067】
例えば、上記実施形態では、補強パッチ34と前面壁部30及び後面壁部32とがウェルドナット40,44及びボルト42,46によってそれぞれ結合されていたが、補強パッチ34と前面壁部30及び後面壁部32とがアーク溶接やリベット等によってそれぞれ結合されていても良い。
【0068】
また、上記実施形態において、車両用フロントサスペンション装置12は、ダブルウィッシュボーン式とされていたが、例えば、マルチリンク式などのその他の形式とされていても良い。
【0069】
また、上記実施形態において、サスタワー14の上面壁部18に設けられた干渉回避穴28は、車両用フロントサスペンション装置12のアッパアーム22とナックル24とを連結するボールジョイント26との干渉を回避するように構成されていたが、車両用サスペンション装置12のうち上面壁部18と上下方向に相対的に接離される他の可動部(例えば、アッパアーム22の一部など)との干渉を回避するように構成されていても良い。
【0070】
また、上記実施形態において、補強パッチ34は、サスタワー14の前面壁部30、取付部20、及び後面壁部32に、これらを上側(すなわちサスタワー14の表側)から覆うように設けられていたが、これらを下側(すなわちサスタワー14の裏側)から覆うように設けられていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用サスタワー構造を斜め前方上方から見た斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る車両用サスタワー構造を斜め後方上方から見た斜視図である。
【図3】図1の3−3線断面図である。
【図4】図2の4−4線断面図である。
【図5】(A),(B)は本発明の一実施形態に係る車両用サスタワー構造における突き上げ力の伝達経路を説明する図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る車両用サスタワー構造について、(A)は突き上げ入力の無い変形前の状態を示す図、(B)は突き上げ入力に伴う変形後の状態を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る車両用サスタワー構造の変形前の状態と変形後の状態を示す断面説明図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る車両用サスタワー構造の突き上げ入力時における応力分布を示す図である。
【図9】第一比較例に係る車両用サスタワー構造を斜め前方上方から見た斜視図である。
【図10】第一比較例に係る車両用サスタワー構造について、(A)は突き上げ入力の無い変形前の状態を示す図、(B)は突き上げ入力に伴う変形後の状態を示す図である。
【図11】第一比較例に係る車両用サスタワー構造の変形前の状態と変形後の状態を示す断面説明図である。
【図12】第一比較例に係る車両用サスタワー構造の突き上げ入力時における応力分布を示す図である。
【図13】第二比較例に係る車両用サスタワー構造を斜め前方上方から見た斜視図である。
【図14】第二比較例に係る車両用サスタワー構造について、(A)は突き上げ入力の無い変形前の状態を示す図、(B)は突き上げ入力に伴う変形後の状態を示す図である。
【図15】第二比較例に係る車両用サスタワー構造の変形前の状態と変形後の状態を示す断面説明図である。
【図16】第二比較例に係る車両用サスタワー構造の突き上げ入力時における応力分布を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
10 車両用サスタワー構造
12 車両用フロントサスペンション装置
14 サスタワー
16 アッパサポート
18 上面壁部
20 取付部
26 ボールジョイント(可動部)
28 干渉回避穴
30 前面壁部
32 後面壁部
34 補強パッチ(補強部材)
36 スタッドボルト(締結手段の一部)
38 ナット(締結手段の一部)
40,44 ウェルドナット(結合手段の一部)
42,46 ボルト(結合手段の一部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用サスペンション装置の上端部を構成するアッパサポートが取り付けられた上面壁部を有すると共に、前記上面壁部における前記アッパサポートとの取付部と異なる位置に、前記車両用サスペンション装置の一部を構成し前記上面壁部と上下方向に相対的に接離される可動部との干渉を回避するための干渉回避穴が設けられたサスタワーと、
前記取付部を補強するための補強部材と、
を備えたことを特徴とする車両用サスタワー構造。
【請求項2】
前記サスタワーは、
前記上面壁部の前側に形成された前面壁部と、
前記上面壁部の後側に形成された後面壁部と、
を有し、
前記補強部材は、前記前面壁部、前記取付部、及び前記後面壁部を覆うように設けられると共に、前記アッパサポート及び前記取付部と締結手段によって共締めされ、且つ、前記前面壁部及び前記後面壁部と結合手段によってそれぞれ結合されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用サスタワー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図8】
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【図12】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−35059(P2009−35059A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−199392(P2007−199392)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】