説明

車両用シェル型シートのシートクッションシェルユニット及び車両用シェル型シート

【課題】車両用シェル型シートにおいて、汎用性を具えたシートクッションシェルを提供する。
【解決手段】シートクッションシェルと、シートクッションシェルの下部に、上下動、及び任意な角度に傾動自在に設けられたサポートパネルと、シートクッションシェルとサポートパネルの間に設けられた弾性体とからシートクッションシェルユニットを構成する。サポートパネルの前部と後部をシートフレームに固定し、シートクッションシェルユニットをシートフレームに取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シェル型シートのシートクッションシェルユニット及び車両用シェル型シートに関する。
【背景技術】
【0002】
シートフレームにシートシェルを組み合わせた、いわゆるシェル型の車両用シートが、例えば特許文献1に示すように考えられている。この車両用シェル型シートは、車体に取り付けたシートフレームに、人体の背面、例えば背中や臀部に沿った形状のシートシェルを組み付け、シートシェルの上に乗員が着座するように構成されている。
【0003】
この車両用シェル型シートは、シートフレームとシートシェルとの間に弾性部材を設け、適度な弾性をもって座り心地が向上するように形成されている。例えばシートクッションフレームに弾性部材を設け、シートクッションシェルを弾性部材の上に載せ、これによりシートクッションシェルを上下動自在に支持させ、座り心地を向上させていた。
【0004】
また近年シートクッションの高さを調整可能にすべく、シートに高さ調整機構を設けることが行なわれている。高さ調整機構は、例えば平行リンク機構と駆動部などからなり、駆動部を操作してシートクッションシェルを適宜上下動させるようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2008−526425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら従来は、弾性部材を支持する支持板が、左右のフレーム間に掛け渡されていたため、高さ調整機構を設けると、高さ調整機構のリンクと干渉し、支持板の前後方向長さを十分に確保できなかった。そのため、狭い面積で乗員の体重を支えることとなり、弾性部材の厚みを厚くしてクッション性を確保する必要が生じていた。すると、シートクッションの下部に大きな収納容量を必要とし、シートが大型化してしまうという問題があった。
【0007】
また、弾性部材がシートクッションシェルの一部分に片寄って配置されることから、例えばシート前方に弾性部材を設け、太腿部分を弾性部材で支持することなどができなかった。更に、支持板を前方あるいは後方に延ばした場合には、支持板が片持ち状態となり、剛性を向上させるため支持板の厚みを厚くすると、シートの軽量化が図れないという問題があった。
【0008】
更にシェル型シートは、シートクッションシェルの下部に弾性体を設ける必要があることなどから、シェル型シートに対応していない従来のシートフレームを用いてシートを構成することができなかった。そのため、シェル型シートは、シェル型シート用のシートフレームを用いてシートを構成する必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、上記課題を解決するため、車両用シェル型シートのシートクッションシェルユニット、及び車両用シェル型シートを次のように構成した。
【0010】
車両用シェル型シートは、車体に取り付けられるシートフレームと、シートフレームに組み付けられるシートシェルとから構成されている。シートシェルは、シートクッションシェルとシートバックシェルとから構成されている。
【0011】
シートクッションシェルユニットは、シートクッションシェルとサポートパネルとサポートパッドなどから構成されている。シートクッションシェルの下部には、サポートパネルが設けられている。シートクッションシェルとサポートパネルとは、連結機構により互いに上下動、及び任意の角度傾動自在に連結されている。シートクッションシェルとサポートパネルとの間には、弾性体からなるサポートパッドが配置してあり、サポートパネルに対してシートクッションシェルがサポートパッドにより弾性をもって支持されている。
【0012】
サポートパネルの前後をシートフレームに固定して、シートクッションシェルユニットをシートフレームに取り付けることとした。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる車両用シェル型シートのシートクッションシェルユニット、及び車両用シェル型シートは、次の効果を有している。
【0014】
シートクッションシェルユニットは、サポートパネルをシートフレームに固定することで、シートフレームに取り付けられる。したがって、シートクッションシェルユニットを、シェル型シートに対応していない従来のシートフレームに取り付け、車両用シェル型シートを構成することができる。
【0015】
シートクッションシェルが、サポートパッドにより弾性をもって支持され、良好な座り心地が得られる。サポートパネルの前後をシートフレームに取り付ける構成であるので、サポートパネルを前後方向に広く設定でき、シートクッションシェルの全体をサポートパッドで弾性的に支持できる。サポートパネルの面積を広くできることからサポートパッドを薄くでき、車両用シェル型シートを薄型化させることができる。シートの左右側方にサポートパネルを取り付ける空間を必要とせず、シートクッションシェルを上下動させる高さ調節機構との干渉を防止でき、構成や取り付けが簡易となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明にかかる車両用シートのシートクッションシェルユニットの一実施形態を示す側面図である。
【図2】図1に示すシートクッションシェルユニットを示す分解図である。
【図3】図1に示すシートクッションシェルユニットを示す分解斜視図である。
【図4】車両用シートを示す分解斜視図である。
【図5】車両用シートを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明にかかる車両用シェル型シートのシートクッションシェルユニット及び車両用シェル型シートの一実施形態について、図を用いて説明する。
【0018】
図5に、シェル型のシート10を示す。シート10は、車両用シートであり、例えば運転席や助手席など、乗員ごとに着座する個別のシートである。
【0019】
シート10は、シートフレーム12と、前後位置調節機構14と、シートクッションシェル26とシートバックシェル28とからなるシートシェル16と、高さ位置調節機構18と、外被材20などから構成されている。また後述するように、シートクッションシェル26等により、シートクッションシェルユニット50が構成されている。以下、シート10について、シート10を取り付ける車両(図示せず。)の前進方向を前方とし、それを基準に前後左右を定め、重力の方向を下方とし、その逆を上方として説明する。
【0020】
シートフレーム12は、図4に示すようにシートクッションフレーム22と、シートバックフレーム24から構成されている。シートクッションフレーム22は、左右に一対設けられたサイドクッションフレーム23と、左右のサイドクッションフレーム23を連結するサブマリンパイプ32、リアリンクパイプ34等から構成されている。
【0021】
サブマリンパイプ32は、サイドクッションフレーム23の前方に設けられ、サイドクッションフレーム23の左右を連結している。リアリンクパイプ34は、サイドクッションフレーム23の後方に設けられ、サイドクッションフレーム23の左右を連結している。サイドクッションフレーム23は、後述する高さ位置調節機構18を介してそれぞれスライドバー31に取り付けられている。
【0022】
シートクッションフレーム22の後端には、シートバックフレーム24が回動自在に連結されている。シートクッションフレーム22とシートバックフレーム24との間には、角度調節機構52が設けられており、角度調節機構52のレバー(図示せず。)操作によりシートバックフレーム24は適度な摩擦力で回動、すなわち前後方向に沿って傾動するとともに所望の角度で固定される。尚、シートバックフレーム24の角度調節を電動で行ってもよい。
【0023】
シートバックフレーム24は、左右に位置するサイドフレーム54と、上部に位置するアッパーフレーム56などから構成されている。サイドフレーム54は、左右に一対設けられておりシートクッションフレーム22に連結されている。アッパーフレーム56は、サイドフレーム54の上部に設けられ、左右のサイドフレーム54を上部で固定している。
【0024】
アッパーフレーム56には、ヘッドレストバー(図示せず。)が取り付けられ、ヘッドレストバーを介してヘッドレスト100が取り付けられている。
【0025】
前後位置調節機構14は、シートフレーム12の下部に設けられている。前後位置調節機構14は、2本のガイドレール30と、係合機構17と、取付脚35などから構成されている。2本のガイドレール30は、車両の前後方向に沿って平行に、かつ所定の間隔をもって配置され、取付脚35に差し入れたネジ等により、車両のフロア(図示せず。)上に固定されている。
【0026】
ガイドレール30には、スライドバー31が移動可能に保持されている。スライドバー31には、切欠き(図示せず。)が所定の間隔で形成してあり、係合機構17の爪部(図示せず。)を切欠きに係合させることにより、スライドバー31が所定の位置に固定される。シート10の下部前方には、係合機構17の爪部を操作する操作用バー36が設けられている。尚前後位置調節機構14は、電動機を用いた電動駆動式であってもよい。
【0027】
高さ位置調節機構18が、スライドバー31とシートクッションフレーム22の間に設けられている。高さ位置調節機構18は、平行リンク19と駆動機構21などから構成されている。平行リンク19は、左右それぞれのサイドクッションフレーム23の前後端に設けられ、左右のスライドバー31とを連結している。平行リンク19は、シートクッションフレーム22を、スライドバー31と平行な状態を保持して上下動させる。駆動機構21は、例えばダイヤル式のリンク作動機構で、いずれかの平行リンク19を任意の角度に設定し、シートクッションフレーム22をスライドバー31に対して上下動させる。
【0028】
シートフレーム12には、シートシェル16が取り付けられている。シートシェル16は、図4に示すようにシートクッションシェル26と、シートバックシェル28などから構成されている。
【0029】
シートクッションシェル26は、硬質合成樹脂材料などからなり、人体の、主に臀部から大腿部に沿った形状に形成されている。シートクッションシェル26の下面には、取付片43が4箇所に設けられている。シートバックシェル28は、シートクッションシェル26と同様に硬質合成樹脂材料などからなり、人体の背中に沿った形状に形成されている。シートバックシェル28は、シートバックフレーム24の取付金具58にねじ止めされている。
【0030】
シートバックシェル28には、蝶番33の一方が取り付けてあり、シートクッションシェル26に取り付けられた蝶番33の他方と連結され、蝶番33を中心として前後方向に沿って傾動可能となっている。尚、シートクッションシェル26やシートバックシェル28の材質は合成樹脂材でなく、アルミニウム等の軽合金材、FRP材、木材等でもよく、特に限定しない。
【0031】
外被材20は、図5に示すようにシート10の最外層に設けられている。外被材20とシートシェル16との間に弾性材等を適宜介在させてもよい。シートクッションシェル26は、弾性体からなるサポートパッド42などとともにシートクッションシェルユニット50として、シートクッションフレーム22に取り付けられている。
【0032】
次に、シートクッションシェルユニット50について説明する。
【0033】
シートクッションシェルユニット50を、図1に示す。シートクッションシェルユニット50は、シートクッションシェル26と、サポートパネル38と、連結機構40と、サポートパッド42などから構成されている。
【0034】
サポートパネル38は、図2及び図3に示すように板状部材で、四隅に取付片41が設けられている。取付片41は、シートクッションシェル26の取付片43に対応して設けられ、取付片41と取付片43の間に連結片45を設けて連結機構40を構成している。各連結機構40は、各々独立して屈曲自在で、シートクッションシェル26とサポートパネル38とは各連結機構40により、上下動、及び任意な角度に傾動自在に連結されている。
【0035】
サポートパッド42は、軟質発泡合成樹脂材などからなるスポンジ状の部材で、シートクッションシェル26とサポートパネル38との間に図1に示すように配置されている。シートクッションシェル26には、サポートパッド42により、適度な弾性と反発力が付与されている。
【0036】
尚サポートパッド42は、軟質発泡合成樹脂材などでなく、金属バネ、空気バネ、油圧クッションなどでよく、特に材質、機構等は限定しない。
【0037】
サポートパネル38は、前端部44がシートフレーム12のサブマリンパイプ32にねじ等により固定してあり、後端部46がリアリンクパイプ34にねじ等、あるいは湾曲部を掛けることにより取り付けられている。これによりシートクッションシェルユニット50が、シートフレーム12、つまりシートクッションフレーム22に取り付けられている。
【0038】
次に、シート10の作用効果について説明する。シート10のシートクッションシェルユニット50は、サポートパネル38がシートクッションフレーム22に固定されている。シート10に乗員が着座し、例えば車両が上下動すると、シートクッションシェル26がサポートパネル38に対して上下動する。するとシートクッションシェル26とサポートパネル38の間に設けられたサポートパッド42が弾性変形し、シートクッションシェル26が乗員とともに上下動し、適度に衝撃が緩和された座り心地が得られる。
【0039】
また、シートクッションシェルユニット50は、前端部44と後端部46をシートフレーム12に固定することにより、シートクッションシェル26がシートフレーム12に取り付けられるので、従来のシェル型に対応していないシートフレームにも取り付けることが可能である。
【0040】
サポートパネル38がシートクッションシェル26の前後方向に長く延びているので、サポートパッド42をシートクッションシェル26の下部に、特に乗員の大腿部を含めて広く配置させることができ、乗員からの荷重を効果的に分散させることができる。また、サポートパッド42の面積を広くできるので、サポートパッド42を薄くでき、シート10全体の構成を薄型にできる。サポートパネル38が片持ち構造とならないため、十分な剛性を薄い部材で構成でき、シート10の軽量化が実現できる。
【0041】
尚本発明にかかる車両用シェル型シートは、複数人が着座するシートであってもよい。またシート10は、いわゆる自動車用のシートに限るものではない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、シートシェルを有する車両用シェル型シートに利用可能である。
【符号の説明】
【0043】
10…シート
12…シートフレーム
16…シートシェル
19…平行リンク
22…シートクッションフレーム
24…シートバックフレーム
26…シートクッションシェル
28…シートバックシェル
32…サブマリンパイプ
34…リアリンクパイプ
38…サポートパネル
40…連結機構
41…取付片
42…サポートパッド
43…取付片
45…連結片
50…シートクッションシェルユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートフレームと、シートクッションシェルと、シートバックシェルとを備えた車両用シェル型シートであって、
前記シートクッションシェルと、
前記シートクッションシェルの下方に、連結機構を介して前記シートクッションシェルと上下動及び任意の角度に傾動自在に連結されたサポートパネルと、
前記サポートパネルと前記シートクッションシェルとの間に設けられた弾性体と、からなり、
前記シートフレームに、前記サポートパネルを介して取り付けることを特徴とした車両用シェル型シートのシートクッションシェルユニット。
【請求項2】
前記シートフレームに、前記サポートパネルの前部と後部を取り付けることを特徴とした請求項1に記載の車両用シェル型シートのシートクッションシェルユニット。
【請求項3】
シートフレームと、請求項1または2に記載の車両用シェル型シートのシートクッションシェルユニットと、シートバックシェルと、前記車両用シェル型シートのシートクッションシェルユニットの高さ調節を行なう高さ調節機構とを備え、
前記高さ調節機構は、前記シートフレームの左右両側に設けられたリンク機構と、該リンク機構を駆動させる駆動機構からなることを特徴とした車両用シェル型シート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−40995(P2012−40995A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185308(P2010−185308)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】