説明

車両用シートの取付構造

【課題】取付部回りの剛性向上、塗装面の塗装品質低下防止、かつ車両の生産効率を高めた車両用シート取付構造を提供する。
【解決手段】フロアトンネル上部3b及び上側側部3cに沿って重なる補強部材5と、補強部材5上部5aの車幅方向両端部に配置されたシート取付ブラケット6とを備え、ブラケット6の前後方向中央部分の上部が補強部材5上部5aから車幅方向外側に突出して形成され、中央部分側部が中央部分上部から下方に向かうに従って車幅方向外側に広がって形成され、中央部分側部下端に開口部10cが設けられ、ブラケット6の前後方向両端部分上部10aが補強部材5上部5aに沿って形成され、両端部分側部が補強部材5側部5b及びフロアトンネル3下側側部3dに沿うとともに、両端部分上部から下方に向かうに従って車幅方向外側に広がって形成され、ブラケット6の両端部分がフロアトンネル3の下側側部3dと、補強部材5とに接合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両フロアに設けられるフロアトンネルの補強部材にシート取付ブラケットを配置した車両用シートの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
小型車両においては、車幅を狭くする一方で車室内の居住空間を確保することが要求されている。また、車室内ではシートが車幅方向左右一対のレール上に配置されており、これら一対のレールの車幅方向の距離を長くすることによって、シートの取付安定性を高めることが要求されている。さらに、シートには特に車両前方側斜め上方に向かう力が大きく加えられるので、このような力に対してシート取付部及びその周辺の取付剛性を高めることが要求されている。
【0003】
これらの要求に応ずるために、車幅方向中央側のレールの取付部を、車両フロアの車幅方向に位置するフロアトンネルに設けることが行なわれている。この構造では、車幅を広げず、かつ車室内の居住空間を犠牲にせずに、一対のレール同士の距離を長くすることができる。そのため、車幅を狭くする一方で車室内の居住空間を確保でき、かつシートの取付安定性を高めることができる。また、レールの取付部が、剛性の高いフロアトンネルに設けられているので、シートの取付部及びその周辺の剛性を高めることができる。
【0004】
このような構造の一例として、特許文献1では、フロアトンネルが断面ハット形状に形成され、車幅方向中央側のレールを取付ける2つのレール取付ブラケットが、断面L字形状又は断面ハット形状に形成されており、車両前後方向に間隔を空けて配置され、かつフロアトンネルの上部又は側部に取付けられている。
さらなる一例として、特許文献2では、フロアトンネルが断面ハット形状に形成され、このフロアトンネルに対応して断面ハット形状に形成された補強部材がフロアトンネルの上方から重ねて配置されている。この補強部材にシート取付ブラケットが取付けられており、このシート取付ブラケットの上部が補強部材の上部に沿って配置され、シート取付ブラケットの側部が補強部材の側部に沿って配置されている。シート取付ブラケットの側部は、フロアトンネルの側部と一緒に閉空間を形成するように車幅方向外側に突出し、かつ車幅方向中央側のレールを取付けるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−341567号公報
【特許文献2】特開平7−165125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の構造では、断面L字形状又は断面ハット形状の2つのレール取付ブラケットが、車両前後方向に間隔を空けてフロアトンネルに取付けられているに過ぎない。そのため、シートに加わる車両前方側斜め上方に向かう力に対して、レールの取付強度が十分でなく、シートの取付部及びその周辺の剛性を高めることができない。
【0007】
そこで、特許文献2の構造を採用することが考えられる。しかしながら、特許文献2の構造にて、シート取付ブラケットを補強部材に取付けた状態でこの組立体を電着塗装する場合、シート取付ブラケットの側部とフロアトンネルの側部とにより形成された閉空間に、電着塗装液が残留する。この残留した液体を電着塗装工程中に取り除くことは難しく、電着塗装工程の後工程にて、閉空間内に残留した液体が補強部材の塗装面に垂れる「液ダレ」が発生するおそれがある。この場合、補強部材の塗装面の塗装品質が低下することとなる。
【0008】
特許文献2の構造では、シート取付ブラケットの側部が車幅方向外側に突出しており、このようなシート取付ブラケットの側部と補強部材の側部とによって閉空間が形成されているので、シート取付ブラケットと補強部材とを予め組み立てた状態で、このような仕掛かり中の組立体同士を重ねて輸送することができない。そのため、車両の生産中に、このような組立体の輸送効率が悪くなっており、車両の生産効率が低下する要因となっている。
【0009】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、車幅を狭くする一方で車室内の居住空間を確保し、かつシートの取付安定性を高めながら、シートの取付部及びその周辺の剛性を高め、塗装面の塗装品質低下を防止し、かつ車両の生産効率を高めることのできる車両用シートの取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
課題を解決するために、車両用シートの取付構造は、車両フロアのフロアトンネルの上部及び上側側部に沿って断面コ字形状に形成され、かつ前記フロアトンネルに上方から重ねて配置される補強部材と、前記補強部材の上部の車幅方向両端部に配置されるシート取付ブラケットとを備えている車両用シートの取付構造であって、前記シート取付ブラケットの前後方向中央部分の上部が前記補強部材の上部から車幅方向外側に突出して形成され、前記前後方向中央部分の側部が前記前後方向中央部分の上部から下方に向かうに従って前記前後方向中央部分の上部に対して車幅方向外側に広がって形成され、前記前後方向中央部分の側部下端には開口部が設けられ、前記シート取付ブラケットの前後方向両端部分の上部が前記補強部材の上部に沿って形成され、前記前後方向両端部分の側部が、前記補強部材の側部及び前記フロアトンネルの下側側部に沿うとともに、前記前後方向両端部分の上部から下方に向かうに従って前記前後方向両端部分の上部に対して車幅方向外側に広がって形成され、前記シート取付ブラケットの前後方向端部分が、前記補強部材と、前記フロアトンネルの下側側部とに接合されている。
【0011】
本発明の車両用シートの取付構造では、前記シート取付ブラケットの前後方向中央部分の上部に取付孔が設けられ、前記取付孔が、前記シート取付ブラケットの前後方向端部分の側部と前記フロアトンネルの下側側部とを接合した一対の接合部の間に配置されている。
【0012】
本発明の車両用シートの取付構造では、前記シート取付ブラケットの開口部の端面が、前記フロアトンネルの下側側部の表面に対して直交して配置されている。
【0013】
本発明の車両用シートの取付構造では、前記フロアトンネルの内部に内部補強部材が設けられ、前記内部補強部材には、前記シート取付ブラケットの前後方向端部分の側部と、フロアトンネルの下側側部とに重なるように形成された取付部が設けられ、前記シート取付ブラケットの前後方向端部分の側部と、前記フロアトンネルの下側側部と、内部補強部材の取付部とが重ね接合されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、以下の効果を得ることができる。
本発明の車両用シートの取付構造は、車両フロアのフロアトンネルの上部及び上側側部に沿って断面コ字形状に形成され、かつ前記フロアトンネルに上方から重ねて配置される補強部材と、前記補強部材の上部の車幅方向両端部に配置されるシート取付ブラケットとを備えている車両用シートの取付構造であって、前記シート取付ブラケットの前後方向中央部分の上部が前記補強部材の上部から車幅方向外側に突出して形成され、前記前後方向中央部分の側部が前記前後方向中央部分の上部から下方に向かうに従って前記前後方向中央部分の上部に対して車幅方向外側に広がって形成され、前記前後方向中央部分の側部下端には開口部が設けられ、前記シート取付ブラケットの前後方向両端部分の上部が前記補強部材の上部に沿って形成され、前記前後方向両端部分の側部が、前記補強部材の側部及び前記フロアトンネルの下側側部に沿うとともに、前記前後方向両端部分の上部から下方に向かうに従って前記前後方向両端部分の上部に対して車幅方向外側に広がって形成され、前記シート取付ブラケットの前後方向端部分が、前記補強部材と、前記フロアトンネルの下側側部とに接合されている。
そのため、前記シート取付ブラケットの前後方向端部分の側部が、前記前後方向端部分の上部から下方に向かうに従って前記前後方向端部分の上部に対して車幅方向外側に広がって形成されて、前記フロアトンネルの下側側部に接合されているので、前記シート取付ブラケットと前記フロアトンネルとの間における車両上下方向の接合強度が高まることとなる。従って、シートに対して車両前側斜め上方に向かう力が加えられた場合に、このような力に対するシートの取付強度を高め、かつ前記シート取付ブラケット周辺の剛性を高めることができる。
また、前記補強部材と前記シート取付ブラケットとを組み立てた状態で、当該組立体を電着塗装した場合に、電着塗装液は、組立体内に残留せずに前記開口部から流れることとなる。そのため、電着塗装工程の後工程にて、組立体内に残留した電着塗装液によって前記補強部材の塗装面に液ダレが発生することを防止でき、塗装面の塗装品質低下を防止できる。
さらに、前記シート取付ブラケットの前後方向中央部分の上部が前記補強部材の上部から車幅方向外側に突出して形成され、前記前後方向中央部分の側部が、前記前後方向中央部分の上部から下方に向かうに従って前記前後方向中央部分の上部に対して車幅方向外側に広がって形成され、前記シート取付ブラケットの前後方向両端部分の側部が前記補強部材の側部及び前記フロアトンネルの下側側部に沿って前記前後方向両端部分の上部から下方に向かうに従って前記前後方向両端部分の上部に対して車幅方向に広がって形成されているので、前記補強部材と前記シート取付ブラケットとを組み立てた状態で、当該組立体同士を重ねて輸送することができる。そのため、車両の生産中に、このような組立体の輸送効率を高めて、車両の生産効率を高めることができる。
よって、シートの取付構造を前記フロアトンネルに設けることによって車幅を狭くする一方で車室内の居住空間を確保し、かつシートの取付安定性を高めながら、シート取付部及びその周辺の剛性を高め、塗装面の塗装品質低下を防止し、かつ車両の生産効率を高めることができる。
【0015】
本発明の車両用シートの取付構造では、前記シート取付ブラケットの前後方向中央部分の上部に取付孔が設けられ、前記取付孔が、前記シート取付ブラケットの前後方向端部分の側部と前記フロアトンネルの下側側部とを接合した一対の接合部の間に配置されているので、前記取付孔によって前記シート取付ブラケットに取付けられたシートに対して車両前側斜め上方に向かう力が加えられた場合に、前記シート取付ブラケットに伝えられた力が、車両上下方向の接合強度が高められた前記シート取付ブラケットと前記フロアトンネルとの接合部によって、確実に前記フロアトンネルに分散されることとなる。よって、シート取付部及びその周辺の剛性を高めることができる。
【0016】
本発明の車両用シートの取付構造では、前記シート取付ブラケットの開口部の端面が、前記フロアトンネルの下側側部の表面に対して直交して配置されているので、前記シート取付ブラケットに加わる荷重を確実に分散させることができる。また、前記シート取付ブラケットの成形深さを浅くできるので、前記シート取付ブラケットの成形性を高めることができる。その結果、前記シート取付ブラケット及び車両の生産効率を高め、ひいては前記シート取付ブラケット及び車両の生産コストを低減できる。よって、シート取付部及びその周辺の剛性を高め、かつ車両の生産効率を高めることができる。
【0017】
本発明の車両用シートの取付構造では、前記フロアトンネルの内部に内部補強部材が設けられ、前記内部補強部材には、前記シート取付ブラケットの前後方向端部分の側部と、フロアトンネルの下側側部とに重なるように形成された取付部が設けられ、前記シート取付ブラケットの前後方向端部分の側部と、前記フロアトンネルの下側側部と、内部補強部材の取付部とが重ね接合されているので、前記シート取付ブラケットが、前記フロアトンネル及び前記内部補強部材に強固に取付けられることとなる。よって、シート取付部及びその周辺の剛性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用シートの取付構造を有する車体を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の実施形態にて、レール付きのシートをフロア側に設けられたシート取付ブラケットから分解した状態で、車両用シートの取付構造を示す概略分解斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る車両用シートの取付構造を有するフロア周りの構造を示す概略斜視図である。
【図4】図3のフロア周りの構造をA−A線に沿って切断した状態で見た断面正面図である。
【図5】図3のフロア周りの構造をA−A線に沿って切断した状態で見た断面斜視図である。
【図6】本発明の実施形態に係るシート取付ブラケット周辺を示す概略斜視図である。
【図7】本発明の実施形態に係るシート取付ブラケット周辺を示す概略上面図である。
【図8】本発明の実施形態にて、フロアトンネルの補強部材とシート取付ブラケットとの組立体同士を重ねた状態の断面示す概略断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態に係る車両用シートの取付構造について説明する。
図1及び図2に示すように、車体1に、車室内の床部分を構成するフロア組立体2が配置されている。フロア組立体2には、その車幅方向中央部分に車両前後方向に延びるフロアトンネル3が設けられており、フロアトンネル3の車幅方向両側にはフロアパネル4が設けられている。フロアトンネル3には補強部材5が上方から重ねて配置されている。補強部材の上面の車幅方向両端部にはシート取付ブラケット(以下、「ブラケット」という)6が配置されている。補強部材5の前方には、車幅方向に延びるフロアクロスメンバ7が配置されている。ここで、図4及び図5を参照すると、フロアトンネル3の内部には、内部補強部材8が配置されている。再び図1に示すように、車体1の車室内には、車両進行方向右側のシート9が配置されている。なお、本実施形態は、シート9以外のシートを省略して説明する。
【0020】
図3〜図5を参照して、フロア組立体2について説明する。
フロアトンネル3の断面は略ハット形状に形成されている。フロアトンネル3のフランジ形状の下部3aは、フロアパネル4の車幅方向中央側の端部に取付けられている。
【0021】
図3〜図5を参照して、補強部材5について説明する。
図3に示すように、補強部材5の前端はフロアクロスメンバ7に隣接して配置されている。図4及び図5に示すように、補強部材5の断面は略コ字形状に形成されている。補強部材5の上部5aはフロアトンネル3の上部3bに沿って形成されている。図3に示すように、補強部材5の側部5bはフロアトンネル3の上側側部3cに沿って形成されているが、図4及び図5に示すように、補強部材5の側部5bはブラケット6を取付ける部分では、取付ブラケット6に対応して突出して形成されている。このような補強部材5が、フロアトンネル3に上方から重ねて配置されて、フロアトンネル3に取付けられている。
【0022】
図4〜図7を参照して、ブラケット6について説明する。
図4〜図7に示すように、ブラケット6の前後方向中央部分(以下、「中央部分」という)10の上部10aは、補強部材5の上部5aに沿って形成され、かつ補強部材5の上部5aから車幅方向外側に突出して形成されている。中央部分10の側部10bの断面は略コ字形状に形成されており、当該側部10bは、中央部分10の上部10aの車幅方向外側端から下方に向かうに従って、中央部分10の上部10aに対して車幅方向外側に広がって形成されている。中央部分10の側部10b下端には開口部10cが形成されている。特に図4に示すように、この開口部10cの端面はフロアトンネル3の下側側部3dの表面に対して略直交して配置されている。
【0023】
図5〜図7に示すように、ブラケット6の前後方向両端部分(以下、「両端部分」という)11の上部11aは、補強部材5の上部5aに沿って形成されている。両端部分11の側部11bは、それぞれ補強部材5の側部5bと、フロアトンネル3の下側側部3dとに沿って形成されており、それぞれ両端部分11の上部11aから下方に向かうに従って、両端部分11の上部11aに対して車幅方向外側に広がって形成されている。このようなブラケット6の両端部分11の上部11aが、それぞれ補強部材5の上部5aに重ねて配置され、それぞれ接合部12aによって補強部材5の上部5aに接合されている。前側の端部分11の側部11bが、フロアトンネル3の下側側部3dと、後述する内部補強部材8の取付部8aとに重ねて配置されて、上下方向に間隔を空けて配置される2つの接合部12b,12cによって、フロアトンネル3の下側側部3dと内部補強部材8の取付部8aとに重ね接合されている。後側の端部分11の側部11bが、フロアトンネル3の下側側部3dに重ねて配置されて、上下方向に間隔を空けて配置される2つの接合部12d,12eによって、フロアトンネル3の下側側部3dに重ね接合されている。
【0024】
図7に示すように、ブラケット6の中央部分10には、シート9(図1参照)の取付に用いられる2つの取付孔13が前後方向に間隔を空けて配置されている。2つの取付孔13それぞれの前後方向の位置は、前側の端部分11の側部11b及びフロアトンネル3の下側側部3dの接合部12b,12cと、後側の端部分11の側部11b及びフロアトンネル3の下側側部3dの接合部12d,12eとの間となっている。2つの取付孔13それぞれの車幅方向の位置は、上面視で、上方側の接合部12b,12dと下方側の接合部12c,12eとの間となっている。
【0025】
図4及び図5を参照して、内部補強部材8について説明する。
図4及び図5に示すように、内部補強部材8の断面は略コ字形状に形成されている。内部補強部材8は、フロアトンネル3の内部の面に沿うとともに車幅方向に延びて、フロアトンネル3と一緒に閉空間を形成している。特に図5を参照すると、内部補強部材8の外周縁にはフランジ形状の取付部8aが設けられており、この取付部8aの一部が、フロアトンネル3の下側側部3dとブラケット6における前側の端部分11の側部11bとに対応して形成されている。
【0026】
再び図2を参照して、シート9について説明する。
図2に示すように、シート9は、前後方向に延びる車幅方向左右一対のレール14,15に取付けられており、前後方向にスライド可能に構成されている。一対のレール14,15における車幅方向中央側のレール14は、ブラケット6とフロアクロスメンバ7との間に懸架されている。このレール14の前端部14aは、フロアクロスメンバ7上に位置しており、フロアクロスメンバ7に取付けられている。レール14の後端部14bは、ブラケット6上に位置しており、レール取付孔13を用いてブラケット6に取付けられている。また、シート9の座部9aにおける前後方向の奥行は、レール14の長さに対応している。
【0027】
ここで、図8を参照して、補強部材5とブラケット6との組立体同士を重ねて使用する態様について説明する。
図8にて、補強部材5とブラケット6との組立体(以下、「組立体」という)は、上下方向に重ねられた状態で示されている。このような状態にて、下方側の組立体が、上方側の組立体における左右一対のブラケット6の間に挿入されている。また、上方側の組立体における補強部材5の側部5bの下端が、下方側の組立体におけるブラケット6の中央部分10の上部10aに当接している。そのため、組立体同士を重ねた状態での安定性は、下方側の組立体を上方側の組立体における左右一対のブラケットの間に挿入する高さに起因している。また、組立体同士を重ね合わせた高さは、補強部材5の側部5bの高さに起因している。そこで、補強部材5の側部5bの下端は、特に、ブラケット6の中央部分10の側部10bにおける高さ方向中央位置より上方に配置されていると好ましい。このような構成によって、組立体同士を重ね合わせた状態の安定性を高め、かつ組立体同士を重ね合わせた高さを低くすることができる。
【0028】
以上のように本発明の実施形態によれば、ブラケット6の端部分11の側部11bが、端部分11の上部11aから下方に向かうに従って、端部分11の上部11aに対して車幅方向外側に広がって形成されて、フロアトンネル3の下側側部3dに接合されているので、フロアトンネル3とブラケット6との間における車両上下方向の接合強度が高まることとなる。従って、シート9に対して車両前側斜め上方に向かう力が加えられた場合に、このような力に対するシート9の取付部及びその周辺の剛性を高めることができる。
また、補強部材5とブラケット6とを組み立てた状態で、当該組立体を電着塗装した場合に、電着塗装液は、組立体内に残留せずに開口部10cから流れることとなる。そのため、電着塗装工程の後工程にて、組立体内に残留した電着塗装液によって補強部材5の塗装面に液ダレが発生することを防止でき、塗装面の塗装品質低下を防止できる。
さらに、ブラケット6の中央部分10の上部10aが補強部材5の上部5aから車幅方向外側に突出して形成され、中央部分10の側部10bが、中央部分10の上部10aから下方に向かうに従って、中央部分10の上部10aに対して車幅方向外側に広がって形成され、ブラケット6の両端部分11の側部11bが補強部材5の側部5b及びフロアトンネル3の下側側部3dに沿って、かつ両端部分11の上部11aから下方に向かうに従って両端部分11の上部11aに対して車幅方向に広がって形成されているので、補強部材5とブラケット6とを組み立てた状態で、当該組立体同士を重ねて輸送することができる。そのため、車両の生産中に、このような組立体の輸送効率を高めて、車両の生産効率を高めることができる。
よって、シート9の取付構造をフロアトンネル3側に設けることによって車幅を狭くする一方で車室内の居住空間を確保し、かつシート9の取付安定性を高めながら、シート取付部及びその周辺の剛性を高め、塗装面の塗装品質低下を防止し、かつ車両の生産効率を高めることができる。
【0029】
本発明の実施形態によれば、ブラケット6の取付孔13は、前側の端部分11の側部11b及びフロアトンネル3の下側側部3dの接合部12b,12cと、後側の端部分11の側部11b及びフロアトンネル3の下側側部3dの接合部12d,12eの間に配置されているので、取付孔13によってブラケット6に取付けられたシート9に対して車両前側斜め上方に向かう力が加えられた場合に、ブラケット6に伝えられた力が、車両上下方向の接合強度が高められた接合部12b〜12dによって、確実にフロアトンネル3に分散されることとなる。よって、シート取付部及びその周辺の剛性を高めることができる。
【0030】
本発明の車両用シートの取付構造では、ブラケット6の開口部10cの端面はフロアトンネル3の下側側部3dの表面に対して略直交して配置されているので、ブラケット6に加わる荷重を確実に分散させることができる。また、ブラケット6の成形深さを浅くできるので、ブラケット6の成形性を高めることができる。その結果、ブラケット6及び車両の生産効率を高め、ひいてはブラケット6及び車両の生産コストを低減できる。よって、シート取付部及びその周辺の剛性を高め、かつ車両の生産効率を高めることができる。
【0031】
本発明の車両用シートの取付構造では、フロアトンネル3の下側側部3dと、内部補強部材8の取付部8aと、ブラケット6の端部11の側部11bとが重ね接合されているので、ブラケット6が、フロアトンネル3及び内部補強部材8に強固に取付けられることとなる。よって、シート取付部及びその周辺の剛性を高めることができる。
【0032】
ここまで本発明の実施形態について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 車体
3 フロアトンネル
3b 上部
3c 上側側部
3d 下側側部
5 補強部材
5a 上部
5b 側部
6 ブラケット
8 内部補強部材
8a 取付部
9 シート
10 前後方向中央部分(中央部分)
10a 上部
10b 側部
10c 開口部
11 前後方向端部分(端部分)
11a 上部
11b 側部
12a,12b,12c,12d,12e 接合部
13 取付孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両フロアのフロアトンネルの上部及び上側側部に沿って断面コ字形状に形成され、かつ前記フロアトンネルに上方から重ねて配置される補強部材と、
前記補強部材の上部の車幅方向両端部に配置されるシート取付ブラケットと
を備えている車両用シートの取付構造であって、
前記シート取付ブラケットの前後方向中央部分の上部が前記補強部材の上部から車幅方向外側に突出して形成され、
前記前後方向中央部分の側部が前記前後方向中央部分の上部から下方に向かうに従って前記前後方向中央部分の上部に対して車幅方向外側に広がって形成され、
前記前後方向中央部分の側部下端に開口部が設けられ、
前記シート取付ブラケットの前後方向両端部分の上部が前記補強部材の上部に沿って形成され、
前記前後方向両端部分の側部が、前記補強部材の側部及び前記フロアトンネルの下側側部に沿うとともに、前記前後方向両端部分の上部から下方に向かうに従って前記前後方向両端部分の上部に対して車幅方向外側に広がって形成され、
前記シート取付ブラケットの前後方向端部分が、前記補強部材と、前記フロアトンネルの下側側部とに接合されていることを特徴とする、車両用シートの取付構造。
【請求項2】
前記シート取付ブラケットの前後方向中央部分の上部に取付孔が設けられ、
前記取付孔が、前記シート取付ブラケットの前後方向端部分の側部と前記フロアトンネルの下側側部とを接合した一対の接合部の間に配置されていることを特徴とする、請求項1の車両用シートの取付構造。
【請求項3】
前記シート取付ブラケットの開口部の端面が、前記フロアトンネルの下側側部の表面に対して直交して配置されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の車両用シートの取付構造。
【請求項4】
前記フロアトンネルの内部に内部補強部材が設けられ、
前記内部補強部材には、前記シート取付ブラケットの前後方向端部分の側部と、フロアトンネルの下側側部とに重なるように形成された取付部が設けられ、
前記シート取付ブラケットの前後方向端部分の側部と、前記フロアトンネルの下側側部と、内部補強部材の取付部とが重ね接合されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用シートの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−111363(P2012−111363A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262225(P2010−262225)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】