説明

車両用シートの取付構造

【課題】居住空間の拡大を図り、かつシート取付ブラケットを取り付けるフロアトンネル部の剛性の向上を図るとともに、荷重を効果的に分散して応力集中の緩和を図る車両用シートの取付構造を提供する。
【解決手段】車両用シートの後部シート取付ブラケット9Cを、フロアトンネル部3の上面3aから側方外側に張り出したシート支持面10と、フロアトンネル部の側面部3bに取り付けられる側部11とで構成し、側部11に、シート支持面の張り出し部下方側に空洞部12を形成し、切り欠き部11aの両側に設けられた一対の脚部11bを下方に向けて、両側に末広がりに形成し、切り欠き部11aの両側脚部11bと、シート支持面10をフロアトンネル部3の側面部3bと上面部3aに取り付け、車体フロア2のフロアパネル5とフロアトンネル部3の重合部に、フロアトンネル部3内側を補強するフロアトンネル補強部材を、空洞部12を通して接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型車両の居住空間の拡大を図り、かつ車両用シートの後端部車室内側を固定するためのシート取付ブラケットを取り付けるフロアトンネル部の剛性の向上を図るとともに、荷重を効果的に分散して応力集中の緩和を図ることができる車両用シートの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両用シートは、シートベルトと協働して搭乗者を拘束し、通常運転時の搭乗者の姿勢を確保するとともに、車体の前後、側方から加わる衝撃荷重に対して搭乗者を支えることが求められる。
小型車両においては、限られた車幅で車室内の居住空間を確保することが要求されている。また、車室内では、車両用シートが、車体の前後方向に設けられた、車幅方向左右一対のレール上に配置されており、これら一対のレールの車幅方向の距離を長くすることによって、シートの取付安定性を高めることが要求されている。さらに、シートには特に車両前方側斜め上方に向かう力が大きく加えられるので、このような力に対してシート取付部及びその周辺の取付剛性を高めることが要求されている。
【0003】
これらの要求に応ずるために、車幅方向中央側のレールの取付部を、車両フロアの車幅方向中央部に、車体前後方向に配設されたフロアトンネルに設けることが行われている。この構造では、車幅を広げず、かつ車室内の居住空間を犠牲にせずに、一対のレール同士の距離を長くすることができる。そのため、車幅を広げず、車室内の居住空間を確保でき、かつシートの取付安定性を高めることができる。また、レールの取付部が、剛性の高いフロアトンネルに設けられているので、シートの取付部及びその周辺の剛性を高めることができる。
【0004】
このような構造の一例として、特許文献1では、フロアトンネルが断面ハット形状に形成され、車幅方向中央側のレールを取り付ける2つのレール取付ブラケットが、断面L字形状または断面ハット形状に形成されており、車両前後方向に間隔を空けて配置され、かつフロアトンネルの上部または側部に取り付けられている。
【0005】
さらなる一例として、特許文献2では、フロアトンネルが断面ハット形状に形成され、このフロアトンネルに対応して断面ハット形状に形成された補強部材がフロアトンネルの上方から重ねて配置されている。この補強部材にシート取付ブラケットが取付けられており、このシート取付ブラケットの上部が補強部材の上部に沿って配置され、シート取付ブラケットの側部が補強部材の側部に沿って配置されている。シート取付ブラケットの側部は、フロアトンネルの側部と一緒に閉じ空間を形成するように車幅方向外側に突出し、かつ車幅方向中央側のレールを取り付けるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−341567号公報
【特許文献2】特開平7−165125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の構造では、断面L字形状または断面ハット形状の2つのレール取付ブラケットが、車両前後方向に間隔を空けてフロアトンネルに取り付けられているに過ぎない。そのため、シートに加わる車両前方側斜め上方に向かう力に対して、レールの取付強度が十分でなく、シートの取付部およびその周辺の剛性を高めることができない。
特に、評価荷重と呼ばれるシート上部にかかる左右の斜め下方向の荷重は、中央側のシート取付ブラケットには、上下方向の荷重として加わる。この荷重により、フロアトンネルの変形とともに近傍のフロアの変形が起こる。この変形は大きな荷重では座屈変形によるシートの姿勢変化となる。また、小さな荷重では運転時の車体振動の原因となり、搭乗者への振動や室内騒音となり好ましくない。
【0008】
一方、特許文献2の構造では、フロアトンネルの断面ハット形状、あるいは板厚の増加や補強部材の追加などでフロアトンネルの剛性を向上して変形を低減するものであるため、重量の増加、部品点数の増加を招きコスト増となる問題がある。また、フロアトンネルの側部に荷重を分散すると、フロアトンネルの上部の変形はある程度低減できる一方、フロアトンネルの下部を上下方向に押し/引きするので、荷重吸収のためにはフロアトンネルの下部の剛性を確保することが望ましくなる。フロアトンネルの下部の剛性確保は車体全体の剛性に寄与するので、局所的な変形をおこさないことが望ましい。
また、特許文献2の構造では、シート取付ブラケットを補強部材に取り付けた状態で、この組立体を電着塗装する場合、シート取付ブラケットの側部とフロアトンネルの側部とにより形成された閉じ空間に、電着塗装液が残留する。この残留した液体を電着塗装工程中に取り除くことは難しく、電着塗装工程の後工程にて、閉じ空間内に残留した液体が補強部材の塗装面に垂れる「液ダレ」が発生する恐れがある。この場合、補強部材の塗装面の塗装品質が低下することとなる。
【0009】
特許文献2の構造では、シート取付ブラケットの側部が車幅方向外側に突出しており、このようなシート取付ブラケットの側部と補強部材の側部とによって閉じ空間が形成されているので、シート取付ブラケットと補強部材とを予め組み立てた状態で、上下への重ね合わせができず、輸送コストの増加や、生産精度が損なわれる恐れがある。
【0010】
本発明は、小型車両の居住空間の拡大を図り、かつ車両用シートの後端部車室内側を固定するためのシート取付ブラケットを取り付けるフロアトンネル部の剛性の向上を図るとともに、荷重を効果的に分散して応力集中の緩和を図ることができる車両用シートの取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するため、車体フロアの車幅方向中央部に車体の前後方向に形成されたフロアトンネル部の両側に配設される車両用シートを、該車両用シートに設けられた左右のシートレール組立体をそれぞれ前後のシート取付ブラケットを介して車体フロアに取り付けるようにした車両用シートの取付構造であって、前記シート取付ブラケットのうち車両用シートの後部室内側を支持する後部シート取付ブラケットを、前記フロアトンネル部の角部に、該フロアトンネル部の上面から側方外側に張り出したシート支持面と、該シート支持面の張り出し部下方に前記フロアトンネル部の側面側に折り曲げられ、前記フロアトンネル部の側面部に取り付けられる側部とで構成し、前記後部シート取付ブラケットの側部に、車幅方向の端面を、車体の前後方向に見て下部側が細くなるように切り欠いて前記シート支持面の張り出し部下方側に空洞部を形成し、該切り欠き部の両側に設けられた一対の脚部を下方に向けて、両側に末広がりに形成し、該切り欠き部の両側脚部と、前記シート支持面を前記フロアトンネル部の側面部と上面部に取り付けるとともに、前記車体フロアのフロアパネルとフロアトンネル部の重合部に、前記フロアトンネル部内側を補強するフロアトンネル補強部材を、前記空洞部を通して接合したことにある。
また、本発明は、前記フロアトンネル部を挟んで両側に設けられる前記フロアパネルの車幅方向内側の縁部と前記フロアトンネル部の側面部の重合部に、前記シート取付ブラケットの脚部に設けられたフランジ部の一部および、前記脚部の間の前記フロアトンネル部内面側に位置する前記フロアトンネル補強部材の側面部を接合したことにある。
さらに、本発明は、前記フロアトンネル部の側面部の下端部に、前記フロアパネルの車幅方向内側の下面部に回り込む延長部を設け、該延長部に車体前後方向の凹部を形成するとともに、該延長部の先端フランジ部を前記フロアパネルの下面部に接合して車体前後方向に閉じ断面を形成し、かつ前記凹部内に、該凹部内を車幅方向に仕切る隔壁を、前記シート取付ブラケットの脚部下方に設けたことにある。
またさらに、本発明は、前記隔壁の車幅方向外側に、水平面のフランジ部を設け、該外側フランジ部を前記フロアトンネル部の延長部の先端フランジ部に重ね、前記フロアパネルとともに互いに接合し、前記隔壁の車幅方向内側に前記フロアトンネル部の側面部に沿ってフランジ部を設け、該内側フランジ部を前記フロアトンネル部および前記フロアトンネル補強部材の重合部に接合したことにある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
後部シート取付ブラケットの側部に、車幅方向の端面を、車体の前後方向に見て下部側が細くなるように切り欠いて前記シート支持面の張り出し部下方側に空洞部を形成し、該切り欠き部の両側に設けられた一対の脚部を下方に向けて、両側に末広がりに形成し、該切り欠き部の両側脚部と、前記シート支持面を前記フロアトンネル部の側面部と上面部に取り付けるとともに、前記車体フロアのフロアパネルとフロアトンネル部の重合部に、前記フロアトンネル部内側を補強するフロアトンネル補強部材を、前記空洞部を通して接合したので、シート取付ブラケット、フロアパネルおよびフロアトンネル部の3枚で接合できるとともに、フロアパネル、フロアトンネルおよびフロアトンネル補強部材をシート支持面の張り出し部下方側の空洞部を通して3枚で接合できることから、フロアトンネル部の剛性の向上を図ることができる。また、切り欠き部の両側に設けられた一対の脚部を下方に向けて、両側に末広がりに形成したので、シート荷重がフロアトンネル部側面を下方向に広がりながら伝わるので、剛性の高いフロアトンネル部基部へ荷重が分散して伝わり、応力集中の緩和を図ることができる。
フロアトンネル部を挟んで両側に設けられる前記フロアパネルの車幅方向内側の縁部と前記フロアトンネル部の側面部の重合部に、前記シート取付ブラケットの脚部に設けられたフランジ部の一部および、前記脚部の間の前記フロアトンネル部内面側に位置する前記フロアトンネル補強部材の側面部を接合したので、フロアパネルの縁部、フロアトンネル部の側面部およびシート取付ブラケットの脚部の一部を3枚で接合できるとともに、フロアパネルの縁部、フロアトンネル部の側面部およびフロアトンネル補強部材の側面部をシート取付ブラケットの脚部の間を通して3枚で接合できることから、フロアトンネル部下部側の剛性の向上を図ることができる。
フロアトンネル部の側面部の下端部に、前記フロアパネルの車幅方向内側の下面部に回り込む延長部を設け、該延長部に車体前後方向の凹部を形成するとともに、該延長部の先端フランジ部を前記フロアパネルの下面部に接合して車体前後方向に閉じ断面を形成し、かつ前記凹部内に、該凹部内を車幅方向に仕切る隔壁を、前記シート取付ブラケットの脚部下方に設けたので、シート取付ブラケットの脚部の下方側に位置するフロアトンネル部下部側の剛性の向上を図ることができることから、閉じ断面形状の変形を防ぎ、局所的な変形を抑えることができる。
隔壁の車幅方向外側に、水平面のフランジ部を設け、該外側フランジ部を前記フロアトンネル部の延長部の先端フランジ部に重ね、前記フロアパネルとともに互いに接合し、前記隔壁の車幅方向内側に前記フロアトンネル部の側面部に沿ってフランジ部を設け、該内側フランジ部を前記フロアトンネル部および前記フロアトンネル補強部材の重合部に接合したので、隔壁の外側フランジ部、フロアトンネル部の延長部の先端フランジ部およびフロアパネルを3枚で接合し、隔壁の車幅方向内側のフランジ部、フロアトンネル部および前記フロアトンネル補強部材の重合部を3枚で接合することができることから、フロアトンネル部下部側の剛性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態による車両用シートの取付構造を示す車体の斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態による車両用シートの取付構造におけるフロアトンネル部に取り付けられたシート取付ブラケットを示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態による車両用シートの取付構造におけるシート取付ブラケットを示す斜視図である。
【図4】フロアトンネル部に取り付けられた後部内側シート取付ブラケットを示す図3の矢視X方向の斜視図である。
【図5】図3のY−Y線断面図である。
【図6】図5の左側面図である。
【図7】フロアトンネル部の側部下面側に車体前後方向に設けられた閉じ断面内に配設された隔壁を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1ないし図3において、1は自動車の車体で、この車体1の床面を構成する車体フロア2には、車体1の幅方向中央部に、車体1の前後方向に沿って上方に向けて突出して形成され、かつ前方側が後方側に対してわずかに高くなるように傾斜して形成された車幅方向の断面形状が略ハット形に、鋼板をプレス成形等により成形されたフロアトンネル部3が設けられている。このフロアトンネル部3の両側には、車体1の両側サイドシル部4にかけて配設されるフロアパネル5が設けられている。各フロアパネル5は、薄い鋼板をプレス成形等により車幅方向にビードを入れて形成されており、かつ車幅方向内側の上方に折り曲げた縁部、すなわち車幅方向室内側フランジ部5aをフロアトンネル部3の側面部3bにスポット溶接wにより接合され、車幅方向外側の上方に折り曲げた縁部、すなわち外側フランジ部5bを車体1の両側サイドシル部4の室内側側面部4aにスポット溶接wにより接合されている。このフロアパネル5の前後方向の略中間部には、前記左右のサイドシル部4を連結する一対の略ハット形断面のフロントクロスメンバ6が前記フロアトンネル部3と直交するように車幅方向に設けられている。前記左右のフロントクロスメンバ6は、鋼板をプレス成形等により成形され、左右のフランジ部6aを介して前記フロアパネル5にスポット溶接wにより接合されており、前記フロアトンネル部3の側面部3bに、室内側端面フランジ部6bをスポット溶接wにより接合して組付けられている。また、前記左右のフロントクロスメンバ6は、前記サイドシル部4の室内側側面部4aに、外側端面フランジ部6cをスポット溶接wにより接合して組付けられている。
【0015】
一方、左右の車両用シート7は、それぞれシートクッション7aの下面側に、左右一対のシートレール組立体8が組付けられており、この左右一対のシートレール組立体8は車体フロア2側に取り付けられる下部側シートレール8aに対して上部側がスライド可能に構成されている。これら左右の下部側シートレール8aは、車体フロア2側の4箇所に取り付けられたシート取付ブラケット9A〜9Dに固定されている。これらシート取付ブラケット9A〜9Dは、厚い鋼板をプレス成形等により成形したもので、それぞれ適用箇所に合わせて形状を変更して成形されている。シート取付ブラケット9A〜9Dのうち、室内側のシート取付ブラケット9A,9Cは、車両用シート7の室内側に配設されたシートレール組立体8のシートレール8aを車体の前後方向に沿って配設するもので、フロアトンネル部3の上面3aに一定間隔を置いて前後に取り付けられている。このシート取付ブラケット9A,9Cは、左右の車両用シート7を同時に固定するためにブラケットの両側に取付部が設けられている。この場合、両側の取付部を分割して形成することで、左右の車両用シート7を個別に組み付けることもできる。
一方、シート取付ブラケット9B,9Dは、車両用シート7の外側のシートレール8aを車体の前後方向に沿って配設するもので、前部外側シート取付ブラケット9Bは、前記フロントクロスメンバ6の車幅方向外側上面に取り付けられ、後部外側シート取付ブラケット9Dは、フロアパネル5上に、シート取付ブラケット9Bの後方に、一定間隔を置いて取り付けられている。
【0016】
前記前部内側シート取付ブラケット9Aは、図3に示すように、前記フロントクロスメンバ6が取り付けられた位置の前記フロアトンネル部3に、シート支持面20が前記フロアトンネル部3の上面部3aを車幅方向に跨るようにして組付けられ、両側のフロントクロスメンバ6に、シート支持面20の両端部取付部21を組付けている。このシート支持面20は、前後に延設されたフランジ部20aを介して前記フロアトンネル部3の上面にスポット溶接wされており、両端部取付部21に、シートレール組立体8のシートレール8aの前部を固定する取付孔22が設けられている。前記取付部21は、取付部21の前後に下方向に延設されたフランジ部21aと、取付部21の外側に延設されたフランジ部21bを介してフロントクロスメンバ6の前後面6bと上面6cにスポット溶接wにより接合されている。
【0017】
また、前部外側シート取付ブラケット9Bは、プレート状のシート支持面30をフロントクロスメンバ6の前記左右のサイドシル部4側に、それぞれフロントクロスメンバ6の前後に跨るようにして接合して配設されている。前記シート支持面30は、中央部にわずかに立ち上げた取付部31が設けられ、この取付部31にシートレール組立体8のシートレール8aの前部を固定する取付孔32が設けられている。シート支持面30は、取付部31の前後に延設されたフランジ部31aを介してフロントクロスメンバ6の前後面6bにスポット溶接wされ、取付部31の左右に延設されたフランジ部31bを介してフロントクロスメンバ6の上面6cにスポット溶接wされて接合されている。
【0018】
一方、前部内側シート取付ブラケット9Aから一定距離車体後方側の前記フロアトンネル3に、後部内側シート取付ブラケット9Cが配設され、前部外側シート取付ブラケット9Bから一定距離車体後方側の前記左右のサイドシル部4側に、後部外側シート取付ブラケット9Dがそれぞれ配設されている。前記前部内側シート取付ブラケット9Aと後部内側シート取付ブラケット9Cに、前記室内側のシートレール組立体8の下部側シートレール8aの前後を固定し、前記前部外側シート取付ブラケット9Bと後部外側シート取付ブラケット9Dに、前記室外側のシートレール組立体8の下部側シートレール8aの前後を固定している。
【0019】
前記後部外側シート取付ブラケット9Dは、プレート状のシート支持面40の一端下部側にフロアパネル5に立設する脚部41を有し、シート支持面40の他端にサイドシル部4側に延びる延長部42を有し、延長部42に設けられたフランジ部42aを介して前記サイドシル部4の内壁面4aおよび上面4bにそれぞれ接合して固定されている。前記脚部41は、前後壁面41aおよび室内側壁面41bで構成されており、前後壁面41aおよび室内側壁面41bの下端部設けられた下端フランジ部41cを介してフロアパネル5にスポット溶接wされている。この前記脚部41のフロアパネル5に対する接合位置は、フロアパネル5の下面側にサイドメンバが設けられた位置に対応するように接合されている。
【0020】
図4ないし図6は、左右の車両用シート7の室内側、すなわち車幅方向内側に配設されたシートレール組立体8における下部側シートレール8aの後部側のシート取付ブラケット9Cの取付構造を示したものである。
【0021】
前記シート取付ブラケット9Cは、略ハット形断面のフロアトンネル部3に、車幅方向に上部から跨るようにして組付けられている。このシート取付ブラケット9Cは、フロアトンネル部3の上面部3aから車幅方向の側方外側に張り出したプレート状のシート支持面10と、該シート支持面10の張り出し部10a下方に前記フロアトンネル部3の側面部3b側に折り曲げられ、前記フロアトンネル部3の側面部3bに取り付けられる側面部11とを有している。前記シート支持面10の張り出し部10aには、シートレール組立体8の下部側シートレール8aを固定する取付孔10bが設けられており、図示しないボルト等を介してシートレール組立体8の下部側シートレール8aが組付けられる。
【0022】
前記シート取付ブラケット9Cの側面部11には、車幅方向の端面を略台形状に切り欠いて、車体の前後方向に見て下部側が細くなるようにテーパに形成し、前記シート支持面10の張り出し部10a下方側に空洞部12を形成し、該切り欠き部11aの両側に設けられた一対の脚部11bを側面視で、下方に向けて、徐々に離れるように両側に末広がりに形成している。前記切り欠き部11aの両側脚部11bには、それぞれ外側縁部にフランジ部11cが設けられ、このフランジ部11cと、前記シート支持面10の両外側縁部に設けられたフランジ部10bを介して前記フロアトンネル部3の側面部3bと上面部3aにスポット溶接wにより接合して取り付けられている。前記両側脚部11bは、車体の前後方向に見て下部側が前記フロアトンネル部3の側面部3bに徐々に近づくようにテーパに形成しており、後部席の足元を広く形成している。
【0023】
前記シート取付ブラケット9Cに対応する、前記フロアトンネル部3の内側には、フロアトンネル部3の上面部3aから側面部3b側にかけてフロアトンネル部3内側を補強する略ハット形断面のフロアトンネル補強部材13が設けられている。このフロアトンネル補強部材13は、金属の帯状体を略コ字状にプレス成形、あるいは鍛造により成形して、フロアトンネル部3の上面部3aに対応する上面部13aと、フロアトンネル部3の側面部3bに対応する側面部13bとで略ハット形断面に形成したものである。フロアトンネル補強部材13の上面部13aから側面部13bに沿った長手方向にはビード部13cが形成されて、補強されている。
【0024】
このフロアトンネル補強部材13は、前記空洞部12を通して前記車体フロア2のフロアパネル5の車幅方向室内側フランジ部5aとフロアトンネル部3の側面部3bとの重合部にスポット溶接wにより3枚で接合されている。前記シート取付ブラケット9Cの両側脚部11bのフランジ部11cは、下部側を、前記フロアパネル5の車幅方向室内側フランジ部5aとフロアトンネル部3の側面部3bとの重合部にスポット溶接wにより3枚で接合され、シート取付ブラケット9Cの両側脚部11bのフランジ部11cの上部側は、フロアトンネル部3の側面部3bとフロアトンネル補強部材13の重合部にスポット溶接wにより3枚で接合されて補強されている。
【0025】
前記フロアトンネル部3の側面部3bの下端部には、前記フロアパネル5の車幅方向内側の下面部に回り込む延長部3cを設け、該延長部3cに車体前後方向の凹部14が形成されている。該延長部3cの先端フランジ部3dを前記フロアパネル5の下面部5cに接合して車体前後方向に閉じ断面15が形成されている。前記シート取付ブラケット9Cの脚部11b下方に位置する前記凹部14内には、図7に示すように該凹部14内を車体の前後方向に仕切る隔壁(バルクヘッド)16A,16Bが設けられている。この隔壁16A,16Bは、前記凹部14の幅方向に沿って凹部14の形状に沿って湾曲させた帯状体16aと、この帯状体16aの互いに隣接する縁部に沿って凹部14内に垂直方向に立設された壁部16bと、前記帯状体16aの一端にフロアパネル5裏面に沿うように延設されたフランジ部16cとで構成されている。前記隔壁16A,16Bは、両側脚部11bに対応する下方向の凹部14に配置され、フランジ部16cを前記フロアトンネル部3の前記先端フランジ部3dに重ねてフロアパネル5とともにスポット溶接wにより3枚で接合されて閉じ断面15を形成している。前記隔壁16A,16Bの前記帯状体16aにおけるフロアトンネル部3の側面部3bに重なる壁面16dは、フロアトンネル部3の側面部3bと、フロアトンネル補強部材13と重ね合わせて3枚でスポット溶接wにより接合されて補強されている。
【0026】
上記実施の形態による車両用シートの取付構造によれば、シートレール組立体8の下部側シートレール8aを固定するシート支持面10の張り出し部10aの下部側に、空洞部12を形成し、この空洞部12を通して車体フロア2のフロアパネル5の車幅方向室内側フランジ部5aとフロアトンネル部3の側面部3bとの重合部にフロアトンネル補強部材13を接合したので、3枚のパネルを溶接することができ、車両用シート7の後部車幅方向内側のシート取付ブラケット9Cの取付部の剛性を確保することができる。
【0027】
また、シート取付ブラケット9Cの両側脚部11bのフランジ部11cは、下部側を、前記フロアパネル5の車幅方向室内側フランジ部5aとフロアトンネル部3の側面部3bとの重合部にスポット溶接wにより3枚で接合され、シート取付ブラケット9Cの両側脚部11bのフランジ部11cの上部側は、フロアトンネル部3の側面部3bとフロアトンネル補強部材13の重合部にスポット溶接wにより3枚で接合されて補強されている。
したがって、車体側面から、あるいは車体の前後方向から衝突荷重が加わって、車両用シートに車両前側斜め上方に向かう力が加えられた場合、このような力に対するシートの取付部及びその周辺の剛性を高めることができる。
【0028】
また、シート取付ブラケット9Cの切り欠き部11aの両側に設けられた一対の脚部11bを下方に向けて、徐々に離れるように両側に末広がりに形成している。前記切り欠き部11aの両側脚部11bには、それぞれ外側縁部にフランジ部11cが設けられ、このフランジ部11cと、前記シート支持面10の両外側縁部に設けられたフランジ部10bを介して前記フロアトンネル部3の側面部3bと上面部3aにスポット溶接wにより接合して取り付けられているので、シート取付ブラケット9Cの取付強度の向上を図ることができる。シート取付ブラケット9Cの側面部11には、車幅方向の端面を略台形状に切り欠いて、車体の前後方向に見て下部側が細くなるようにテーパに形成し、前記シート支持面10の張り出し部10a下方側に空洞部12を形成しているので、後席足元空間の拡大を図ることができるとともに後部車幅方向内側のシート取付ブラケット9Cの取付部の剛性を確保することができる。
【0029】
前記フロアトンネル部3の側面部3bの下端部には、前記フロアパネル5の車幅方向内側の下面部に回り込む延長部3cを設け、該延長部3cに車体前後方向の凹部14が形成され、該延長部3cの先端フランジ部3dを前記フロアパネル5の下面部5cに接合して車体前後方向に閉じ断面15が形成されているので、シート取付ブラケット9Cの脚部11bの下方側に位置するフロアトンネル部3下部側の剛性の向上を図ることができる。
【0030】
また、前記凹部14内には、該凹部14内を車体の前後方向に仕切る隔壁(バルクヘッド)16A,16Bが設けられているので、閉じ断面形状の変形を防ぎ、局所的な変形を抑えることができる。前記隔壁16A,16Bは、フランジ部16cを前記フロアトンネル部3の前記先端フランジ部3dに重ねてフロアパネル5とともにスポット溶接wにより3枚で接合されて閉じ断面15を形成し、前記隔壁16A,16Bの前記帯状部16aにおけるフロアトンネル部3の側面部3bに重なる壁面16dは、フロアトンネル部3の側面部3bと、フロアトンネル補強部材13と重ね合わせて3枚でスポット溶接wにより接合されて補強されていることから、シート取付ブラケット9Cの取付部の剛性をより向上することができる。よって、シート上部にかかる左右の斜め下方向の荷重などの車両用シート7に加わるシート荷重がシートレール組立体8の下部側シートレール8aからシート取付ブラケット9Cに伝達されると、シート取付ブラケット9Cからフロアトンネル部3に伝わり、フロアトンネル補強部材13で補強されたフロアトンネル部3の側面部3bから隔壁16A,16Bにより補強されたフロアパネル5の下面部5cの閉じ断面15に伝達されて車体フロア2全体に分散されて吸収される。
【0031】
上記のように、シート取付ブラケット9Cの取付部の剛性を向上させたことにより、車体の側面から加わる衝突荷重、あるいは車体の前後方向から加わる衝突荷重を、効果的に分散して応力集中の緩和を図ることができる。また、フロアトンネル部3上面の補強部材を省略して部品点数の削減を図り、重量の軽減を図ることができる。さらに、シート取付ブラケット9Cのシート支持面10の張り出し部10aの下部側に、空洞部12を形成しているので、空洞部12を通してスポット溶接を行うことができることから、各接合部を3枚のパネルで接合して、剛性の向上を図ることができる。またさらに、することができる。シート取付ブラケット9Cの下部側を車体の前後方向に見て細く形成して、後席の足元空間の拡大を図ることができる。
【0032】
なお、本発明は、上記実施の形態のみに限定されるものではなく、例えば、上記の実施の形態では、左右の車両用シート7の取付部をシート取付ブラケット9Cの両側に設けたが、シート取付ブラケット9Cの取付部を、左右に分割してそれぞれ左右別個のシート取付ブラケットとして構成することもできる。また、フロアパネル5の車幅方向内側の下面部に閉じ断面15を形成する凹部14内には、車体の前後方向に仕切る2個の隔壁16A,16Bを用いたが2個以上の隔壁16A,16Bを用いてもよく、または、前後に長い1個の隔壁を用いることもできる。その他、本発明の技術思想に基づいて変形、変更して用いることもできる。
【符号の説明】
【0033】
1 車体
2 車体フロア
3 フロアトンネル部
3a 上面部
3b 側面部
4 サイドシル部
4a 室内側側面部
5 フロアパネル
6 フロントクロスメンバ
7 車両用シート
8 シートレール組立体
8a シートレール
9A 前部内側シート取付ブラケット
9B 前部外側シート取付ブラケット
9C 後部内側シート取付ブラケット
9D 後部外側シート取付ブラケット
10 シート支持面
11 側面部
11b 脚部
12 空洞部
13 フロアトンネル補強部材
14 凹部
15 閉じ断面
16A,16B 隔壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フロアの車幅方向中央部に車体の前後方向に形成されたフロアトンネル部の両側に配設される車両用シートを、該車両用シートに設けられた左右のシートレール組立体をそれぞれ前後のシート取付ブラケットを介して車体フロアに取り付けるようにした車両用シートの取付構造であって、
前記シート取付ブラケットのうち車両用シートの後部、室内側を支持する後部シート取付ブラケットを、
前記フロアトンネル部の角部に、該フロアトンネル部の上面から側方外側に張り出したシート支持面と、該シート支持面の張り出し部下方に前記フロアトンネル部の側面側に折り曲げられ、前記フロアトンネル部の側面部に取り付けられる側部とで構成し、
前記後部シート取付ブラケットの側部に、車幅方向の端面を、車体の前後方向に見て下部側が細くなるように切り欠いて前記シート支持面の張り出し部下方側に空洞部を形成し、
該切り欠き部の両側に設けられた一対の脚部を下方に向けて、両側に末広がりに形成し、該切り欠き部の両側脚部と、前記シート支持面を、前記フロアトンネル部の側面部と上面部に取り付けるとともに、
前記車体フロアのフロアパネルとフロアトンネル部の重合部に、前記フロアトンネル部内側を補強するフロアトンネル補強部材を、前記空洞部を通して接合したことを特徴とする自動車用シートの取付構造。
【請求項2】
前記フロアトンネル部を挟んで両側に設けられる前記フロアパネルの車幅方向内側の縁部と前記フロアトンネル部の側面部の重合部に、前記シート取付ブラケットの脚部に設けられたフランジ部の一部および、前記脚部の間の前記フロアトンネル部内面側に位置する前記フロアトンネル補強部材の側面部を接合したことを特徴とする請求項1に記載の自動車用シートの取付構造。
【請求項3】
前記フロアトンネル部の側面部の下端部に、前記フロアパネルの車幅方向内側の下面部に回り込む延長部を設け、該延長部に車体前後方向の凹部を形成するとともに、該延長部の先端フランジ部を前記フロアパネルの下面部に接合して車体前後方向に閉じ断面を形成し、かつ前記凹部内に、該凹部内を車幅方向に仕切る隔壁を、前記シート取付ブラケットの脚部下方に設けたことを特徴とする請求項2に記載の自動車用シートの取付構造。
【請求項4】
前記隔壁の車幅方向外側に、水平面のフランジ部を設け、該外側フランジ部を前記フロアトンネル部の延長部の先端フランジ部に重ね、前記フロアパネルとともに互いに接合し、前記隔壁の車幅方向内側に前記フロアトンネル部の側面部に沿ってフランジ部を設け、該内側フランジ部を前記フロアトンネル部および前記フロアトンネル補強部材の重合部に接合したことを特徴とする請求項3に記載の自動車用シートの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−103528(P2013−103528A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246694(P2011−246694)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】