説明

車両用シートの設置構造

【課題】シートを、段差のある設置場所に見栄え良く設置する
【解決手段】シート体が複数の脚部によって車両のフロアに支持された車両用シートの設置構造において、フロントクロスメンバ20は、端部21の上面21aと、端部21の上面21aよりも高さの高い中央部22の上面22aを有し、四つの脚部のうち一つの脚部は端部21の上面21aの上に固定され、他の脚部は中央部22の上面22aの上に固定され、端部21に固定された脚部にフットカバー40が取り付けられ、フットカバー40は、中央部22の上面22aと略同等の高さに配置される平坦な上面41aを有する平板部41と、平板部41の下面から下方に延出して端部21の上面21aの上に載置される箱形リブ48と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用シートの設置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両においてシートを設置する場合に、シートを設置する部分の車体骨格部材が必ずしも平坦となっていない。例えば、フロアパネルの中央部分のフロントシートの下部に燃料タンクを搭載した所謂センタータンクレイアウトの車両では、車体骨格部材においてフロントシートを支持する部分の内、フロントシートの車外側前部を支持する部分が、該フロントシートの他部を支持する部分よりも低位となっており、高低差を有する部分にフロントシートを設置することとなる。
【0003】
このような場合、例えば、特許文献1では、前記低位の部分にフロアパネルを嵩上げすることで、フロントシートを支持する全ての部分の高さを同一高さにして、そこにフロントシートを設置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−321367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述したようにフロアパネルを嵩上げするとなると、フロントシートを支持する支持脚を共用化できる利点があるものの、高低差の大きい設置場所にフロントシートを設置しようとするとフロアパネルの嵩上げ高さが高くなり、その結果、フロアパネルの構造が煩雑になり、フロアパネルの嵩上げ部分が車室内に突出し見栄えが悪化する。また、フロントシートに加わる荷重に耐えうるように嵩上げ部分を補強したり、フロアパネルの板厚が厚くなったり、フロアパネルの重量が増大するなどの課題がある。
【0006】
そこで、この発明は、シートを、高低差のある設置場所に見栄え良く設置することができる車両用シートの設置構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る車両用シートの設置構造では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、シート体(例えば、後述する実施例におけるシートクッション101、シートバック102)が複数の脚部(例えば、後述する実施例における脚部3)によって車両のフロアに支持された車両用シートの設置構造において、前記フロアは、第1のフロア面(例えば、後述する実施例におけるフロントクロスメンバ20の端部21の上面21a)と、前記第1のフロア面よりも高さの高い第2のフロア面(例えば、後述する実施例におけるフロントクロスメンバ20の中央部22の上面22a)を有し、前記複数の脚部のうちの少なくとも一つの脚部(例えば、後述する実施例における脚部3A)は前記第1のフロア面の上に固定され、他の脚部は前記第2のフロア面の上に固定され、前記第1のフロア面の上に固定される前記脚部にフットカバー(例えば、後述する実施例におけるフットカバー40)が取り付けられ、前記フットカバーは、前記第2のフロア面と略同等の高さに配置される略平坦な上面(例えば、後述する実施例における上面41a)を有する平板部(例えば、後述する実施例における平板部41)と、該平板部の下面から下方に延出して前記第1のフロア面の上に載置されるリブ部(例えば、後述する実施例における箱形リブ48)と、を備えることを特徴とする車両用シートの設置構造である。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記フロアは、前記第1のフロア面から前記第2のフロア面に向けて上方に傾斜して前記第1のフロア面と前記第2のフロア面とを接続する傾斜フロア面(例えば、後述する実施例における傾斜面23)を有し、前記リブ部は、前記傾斜フロア面に当接する傾斜部(例えば、後述する実施例における傾斜底部51)を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の発明において、前記リブ部は、前記脚部における前記第1のフロア面に対する固定部(例えば、後述する実施例におけるベース7)に係合する係合部(例えば、後述する実施例における鉛直壁面49a)を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、シートの脚部は全て車両のフロアに固定される。高さの違うフロア面にシートを設置した場合にも、フットカバーの平坦部を、高さの高い第2のフロア面とを略同等の高さに配置することができるので、平坦部と第2のフロア面とをほぼ面一にすることができ見栄えがよい。また、フットカバーのリブ部が第1のフロア面の上に載置されるので、フットカバーの平坦部に荷重が加わっても、その荷重をリブ部を介して車両のフロアに逃がすことができる。
請求項2に係る発明によれば、フットカバーの位置決めが容易となる。
請求項3に係る発明によれば、フットカバーの位置ずれを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明に係る車両用シートの設置構造に使用したシートの斜視図である。
【図2】フットカバーが装着された状態を示すドライバーズシートの斜視図である。
【図3】前記ドライバーズシートの脚部の拡大斜視図である。
【図4】実施例の車両用シートの設置構造の車両前方側から見た断面図である。
【図5】実施例の車両用シートの設置構造の側面図である。
【図6】実施例におけるフットカバーの正面図である。
【図7】実施例におけるフットカバーを後方斜め下から見た斜視図である。
【図8】実施例におけるフットカバーを前方斜め下から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明に係る車両用シートの設置構造の実施例を図1から図8の図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後方向および左右方向は、車両の前後方向および左右方向(車幅方向)と一致するものとする。
図1は、右ハンドル仕様の車両に搭載されるドライバーズシート1とパッセンジャシート2の斜視図であり、これらシート1,2は所謂センタータンクレイアウトを採用した車両に搭載されており、これらシート1,2の下部のフロア下に燃料タンク(図示略)が搭載される。
シート1,2は、シートクッション(シート体)101、シートバック(シート体)102、ヘッドレスト103等からなり、ドライバーズシート1は脚部3によって、パッセンジャシート2は脚部4によって、それぞれ車体骨格部材に取り付けられている。
【0013】
この車両では、タンクレイアウトの関係から、ドライバーズシート1の四つの脚部3のうちドライバーズシート1の前部車外側を支持する脚部3Aが固定されるフロア面だけが、他の三つの脚部3が固定されるフロア面よりも低位に位置する構造となっている。そのため、脚部3Aは他の三つの脚部3よりも長さが長い。パッセンジャシート2についても同様であり、パッセンジャシート2の四つの脚部4のうちパッセンジャシート2の前部車外側を支持する脚部4Aが固定されるフロア面だけが、他の三つの脚部4が固定されるフロア面よりも低位に位置する構造となっていて、脚部4Aだけが他の三つの脚部4よりも長さが長い。
【0014】
ドライバーズシート1の設置構造とパッセンジャシート2の設置構造は左右対称であることを除けば基本的には同じであるので、以下の説明ではドライバーズシート1の設置構造について説明し、パッセンジャシート2の設置構造については説明を省略する。
【0015】
初めに、図1、図3を参照して、ドライバーズシート1の脚部3Aについて説明する。脚部3Aと他の三つの脚部3の構成は、長さを除けば基本的に同じである。
脚部3Aは、起立部6の上部が、ドライバーズシート1のスライドレール(図示略)を支持する支持ブラケット5の前端下部に固定されており、起立部6の下部にベース(固定部)7が設けられている。起立部6の下半部分およびこれに連なるベース7には、その左右両側にU字状の屈曲部8,8が形成され、両屈曲部8,8が平坦部9で連結された形状をなし、ベース部7の平坦部9の中央に取付孔9aが設けられている。
【0016】
また、脚部3Aとドライバーズシート1の後部車外側の脚部3は、左右一対の連結プレート10によって連結されている。なお、図1、図3においては、車内側に取り付けられた連結プレート10だけが見えており、車外側に取り付けられた連結プレート10は隠れている。連結プレート10の前部上側には、フットカバー係合孔10aが設けられている。なお、ドライバーズシート1の前部車内側の脚部3と後部車内側の脚部3も別の連結プレート10によって連結されている。
【0017】
次に、ドライバーズシート1の設置構造について説明する。図4は、ドライバーズシート1の脚部3Aが固定されている部分を車両の前方側から見た断面図である。ドライバーズシート1の脚部3Aは、車幅方向に架け渡されたフロントクロスメンバ20の車外側端部に固定されている。フロントクロスメンバ20は車体骨格部材の一部をなし、左右端部21の上面21aが中央部22の上面22aよりも一段低く形成されており、端部21の上面21aと中央部22の上面22aとが傾斜面23によって接続されている。
【0018】
フロントクロスメンバ20の上には、フロアボード24が配設されている。フロアボード24は、基本的にはフロントクロスメンバ20の上面に沿って配置されており、フロントクロスメンバ20の傾斜面23に沿って配置される傾斜部25、および、傾斜部25の上縁近傍に設けられた段差部26を備えている。また、フロアボード24の端部27はフロントクロスメンバ20の端部21の上方において立ち上がり、さらに外側へ水平に屈曲している。また、このフロアボード24の端部27の上側にはサイドシルガーニッシュ28が設置されており、サイドシルガーニッシュ28は車内側へ屈曲して形成されたフランジ部29を備えている。サイドシルガーニッシュ28のフランジ部29の上面とフロアボード24の段差部26の上面はほぼ同一高さに設定されている。なお、図示を省略するが、サイドシルガーニッシュ28およびフロアボード24の端部27の下側には、車両前後方向に延びるサイドシルが設置されている。
【0019】
ドライバーズシート1の脚部3Aは、そのベース7をフロントクロスメンバ20の端部21に載置し、平板部9の取付孔9aに挿通したボルト(図示略)を介してフロントクロスメンバ20の端部21に固定されている。なお、フロアボード24においてベース7が配置される部分には切り欠きが設けられていて、ベース7を直接フロントクロスメンバ20に載置することができるようになっている。
また、ドライバーズシート1の前部車内側を支持する脚部3は、クロスメンバ20の中央部22の上面22aに固定されている(図2参照)。
【0020】
この実施例において、フロントクロスメンバ20の端部21の上面21aは車両のフロアの第1のフロア面を構成し、フロントクロスメンバ20の中央部22の上面22aは車両のフロアの第2のフロア面を構成し、フロントクロスメンバ20の傾斜面23は車両のフロアの傾斜フロア面を構成している。
【0021】
ドライバーズシート1の脚部3Aには、樹脂製のフットカバー40が取り付けられている。
図6から図8の図面を参照してフットカバー40について説明する。図6はフットカバー40を車両前方側から見た正面図であり、図7はフットカバー40を後方斜め下から見た斜視図であり、図8はフットカバー40を前方斜め下から見た斜視図である。
【0022】
フットカバー40は、上面41aが平坦に形成された平板部41と、平板部41の車外側後方の隅部から上方延びる脛当て部42とを備えている。
脛当て部42は、脚部3Aの前方および左右側方を覆うように、前板部43と左右の側板部44,45が断面コ字状をなすように繋がって形成されている。図7に示すように、側板部44,45の内面上部には係止突起46が設けられている。
平板部41の後端側を除く三方の縁部には、下方に屈曲する縁取り部47が形成されている。
【0023】
また、平板部41の下面には、脛当て部42との連結部よりも前方側に、下方を開口させた箱形リブ(リブ部)48が形成されている。箱形リブ48は左右方向に細長く、所定の高さを有しており、縁取り部47よりも下方に延出している。図6に示すように、箱形リブ48は、左右方向略中央に鉛直壁面(係合部)49aを有する段差部49が形成され、段差部49よりも車外側は一段高い水平底部50となっており、段差部49よりも車内側は段差部49の下縁から斜め上方に上がっていく傾斜底部(傾斜部)51となっている。この傾斜底部51の傾斜形状は、フロントクロスメンバ20の傾斜面23の傾斜形状とほぼ同じとなっている。さらに、平板部41の裏面には、箱形リブ48と縁取り部47とを前後方向に連結する多数の板状縦リブ52や、板状縦リブ52同士あるいは箱形リブ48と縁取り部47とを左右方向に連結する板状横リブ53が多数設けられている。
【0024】
このフットカバー40は、脛当て部42を脚部3Aの起立部6に被せ、脛当て部42の左右の係止突起46を連結プレート10のフットカバー係合孔10aに係合することで脚部3Aに固定される。
そして、フットカバー40が脚部3Aに固定された状態では、図4に示すように、脚部3Aにおけるベース7の左右の屈曲部8,8の上にフットカバー40の水平底部50が載置され、ベース7の左側の屈曲部8の外縁がフットカバー40の段差部49における鉛直壁面49aに当接し、鉛直壁面49aの下端がフロアボード24を介してフロントクロスメンバ20の端部21の上面21aに載置され、フットカバー40の傾斜底部51がフロアボード24の傾斜部25を介してフロントクロスメンバ20の傾斜面23に載置され、フットカバー40の左右の縁取り部47がフロアボード24の段差部26とサイドシルガーニッシュ28のフランジ部29の上に当接する。また、フットカバー40の平板部41の上面41aはフロントクロスメンバ20の中央部22の上面22aとほぼ同一高さに配置される。
【0025】
また、図5に示すように、フロントクロスメンバ20の端部21の高さまで落とし込まれたフロアボード24は、フロントクロスメンバ20の前方において、フロントクロスメンバ20の中央部22の上に配置されているフロアボード24と同じ高さまで立ち上がった後、前方へ略水平に延びており、このフロアボード24の立ち上がり水平部30の上にフットカバー40における平板部41の前縁の縁取り部47が当接する。
【0026】
このように構成されたドライバーズシート1の脚部3Aの設置構造によれば、脚部3Aを直接、車体骨格部材であるフロントクロスメンバ20に固定することができるので、従来行っていたようにフロアパネルを嵩上げする必要がない。
そして、高さの違うフロア面にドライバーズシート1を設置した場合にも、フットカバー40の平坦部41を、高さの高いフロア面であるフロントクロスメンバ20の中央部22と略同等の高さに配置することができるので、平坦部41を、中央部22と同一高さに配置されているフロアボード24とほぼ面一にすることができ見栄えがよい。また、フットカバー40の箱形リブ48の鉛直壁面49aの下端および傾斜底部51がフロアボード24を介してフロントクロスメンバ20の端部21の上面および傾斜面23の上に載置されるので、フットカバー40の平坦部41に上から荷重が加わったときにも、その荷重を箱形リブ48を介してフロントクロスメンバ20に逃がすことができる。
【0027】
また、フットカバー40の傾斜底部51がフロアボード24の傾斜部25を介してフロントクロスメンバ20の傾斜面23に載置されることにより、フットカバー40の平板部41の左右方向の位置決めが容易となる。
さらに、ベース7の左側の屈曲部8の外縁がフットカバー40の段差部49における鉛直壁面49aに当接しているので、フットカバー40の左右方向の位置ずれを防止することができる。例えば、フットカバー40の平坦部41に上から荷重が加わったときには、フットカバー40の傾斜底部51がフロアボード24の傾斜部25に当接していることから、フットカバー40には車外側へ移動する方向の力が作用することとなるが、その場合にもフットカバー40の鉛直壁面49aがベース7に係止しているので、フットカバー40の移動を阻止することができる。
【0028】
〔他の実施例〕
なお、この発明は前述した実施例に限られるものではない。
例えば、前述した実施例では、シートの脚部の長さが異なる要因としてセンタータンクレイアウトを例示したが、脚部の長さが異なる要因はこれに限定されるものではない。
また、前述した実施例では、四つの脚部のうちの一つの脚部だけが他の三つの脚部よりも長さが長い例で説明したが、長さが長い脚部が二つある場合にも、この二つの長い脚部に対してこの発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 ドライバーズシート
3,3A 脚部
7 ベース(固定部)
21a 端部の上面(第1のフロア面)
22a 中央部の上面(第2のフロア面)
23 傾斜面(傾斜フロア面)
40 フットカバー
41 平板部
41a 上面
48 箱形リブ(リブ部)
49a 鉛直壁面(係合部)
51 傾斜底部(傾斜部)
101 シートクッション(シート体)
102 シートバック(シート体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート体が複数の脚部によって車両のフロアに支持された車両用シートの設置構造において、
前記フロアは、第1のフロア面と、前記第1のフロア面よりも高さの高い第2のフロア面を有し、
前記複数の脚部のうちの少なくとも一つの脚部は前記第1のフロア面の上に固定され、他の脚部は前記第2のフロア面の上に固定され、
前記第1のフロア面の上に固定される前記脚部にフットカバーが取り付けられ、
前記フットカバーは、前記第2のフロア面と略同等の高さに配置される略平坦な上面を有する平板部と、該平板部の下面から下方に延出して前記第1のフロア面の上に載置されるリブ部と、を備えることを特徴とする車両用シートの設置構造。
【請求項2】
前記フロアは、前記第1のフロア面から前記第2のフロア面に向けて上方に傾斜して前記第1のフロア面と前記第2のフロア面とを接続する傾斜フロア面を有し、
前記リブ部は、前記傾斜フロア面に当接する傾斜部を備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用シートの設置構造。
【請求項3】
前記リブ部は、前記脚部における前記第1のフロア面に対する固定部に係合する係合部を備えることを特徴とする請求項2に記載の車両用シートの設置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−240426(P2012−240426A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108750(P2011−108750)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】