説明

車両用シートカバー

【課題】車両用シートにおける表面を被覆するように配設される車両用シートカバーにおいて、軸流ファンにより送られた空気を車両用シートの内部から外部に透過し易くしながら車両用シートとしての外観意匠性を高める。
【解決手段】単位面積あたりの繊維密度の低い部分として空気を吹出させたい所望吹出し部分となる第1X字状形成部分40Aおよび第2X字状形成部分40Bを形成しつつ、単位面積あたりの繊維密度の高い部分として所望吹出し部分以外の部分となる第3X字状形成部分40Cおよびサイドサポートカバー部分40Dを一体的に同時に形成する。これによって、軸流ファンにより送られた空気を車両用シートの内部から外部に透過し易くすることができ、所望吹出し部分以外の部分となる第3X字状形成部分40Cおよびサイドサポートカバー部分40Dについて繊維密度を高く形成することができ、全体としての外観意匠性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートを構成するパッド等の各部材を被覆するように配設される車両用シートカバーに関し、詳しくは、車両用シートの内部に送風機を設置し車両用シートの内部から着座者の体が存する外部に向けて空気を吹き出す車両用シートにおける表面を被覆するように配設される車両用シートカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両に設置される車両用シートは、乗員が着座するシートクッション、着座した際の背凭れとなるシートバック、着座した際の頭凭れとなるヘッドレスト等を備える。これらシートクッション、シートバック、ヘッドレスト等の各構成部材は、クッション性を有するパッドを備える。このため、車両用シートには、意匠性や感触の観点から、パッド等の表面を被覆するように車両用シートカバーが配設されている。
一方、近年においては、着座者の快適性を鑑みて、車両用シートの内部に送風機を設置し、車両用シートの内部から着座者の体が存する外部に向けて空気を吹き出すように構成される車両用シートが知られている(例えば、特許文献1参照)。このように構成された車両用シートによれば、暑い気候や寒い気候に対して、着座者の体に冷風や温風を吹き付けることができて、着座者にとって快適なものとなる。
【0003】
ところで、この種の車両用シートに配設される車両用シートカバーにあっては、内蔵される送風機により送られた空気を、車両用シートの内部から外部に透過し易くするように形成されている。すなわち、皮革を材料にして形成される車両用シートカバーにあっては、この車両用シートカバーの所望個所に細かく通風孔を設け、送風機にて送られる空気を車両用シートの内部から外部に透過し易くしていた。また、通気性の良い素材を用いて形成される車両用シートカバーにあっては、この車両用シートカバーを形成する素材により送風機にて送られる空気を車両用シートの内部から外部に透過し易くしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−8334
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記したような送風機にて送られる空気を車両用シートの内部から外部に透過し易くする車両用シートカバーにあっては、次のような問題がある。
すなわち、所望個所に細かく通風孔を設けた車両用シートカバーの場合には、この細かく設けられた通風孔によって見栄えが悪くなり、外観意匠性を損ねてしまうという問題が残されていた。
また、通気性の良い素材を用いて形成した車両用シートカバーの場合には、通気性には優れるものの、素材として貧弱な見栄えとなってしまうために、空気を透過させる必要の無い個所においては、見栄えの貧弱さから外観意匠性を損ねてしまうという問題が残されていた。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、本発明が解決しようとする課題は、車両用シートの内部に送風機を設置し車両用シートの内部から着座者の体が存する外部に向けて空気を吹き出す車両用シートにおける表面を被覆するように配設される車両用シートカバーの、車両用シートの内部から外部への空気の透過を良好としながら、車両用シートとしての外観意匠性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するにあたって本発明に係る車両用シートカバーは、次の手段を採用する。
すなわち、本発明の第1の発明に係る車両用シートカバーは、車両用シートの内部に送風機を設置し車両用シートの内部から着座者の体が存する外部に向けて空気を吹き出す車両用シートにおける表面を被覆するように配設される車両用シートカバーであって、単位面積あたりの繊維密度に高低差を設けることにより、単位面積あたりの繊維密度の高い部分に比して低い部分から、前記送風機にて送られる空気を車両用シートの内部から外部に吹き出し易くしたことを特徴とする。
【0008】
この車両用シートカバーによれば、単位面積あたりの繊維密度に高低差を設けることにより、単位面積あたりの繊維密度の高い部分に比して低い部分から、送風機にて送られる空気を車両用シートの内部から外部に吹き出し易くしたので、送風機により送られた空気を、所望個所に細かく通風孔を設けることもなく、また通気性の良い素材を選択することもなく、単位面積あたりの繊維密度の低い部分から通気抵抗が小さくした状態で吹き出させることができる。
また、この車両用シートカバーによれば、送風機にて送られる空気を吹き出し易くするにあたり、単位面積あたりの繊維密度の低い部分として空気を吹出させたい所望吹出し部分を形成しつつ、単位面積あたりの繊維密度の高い部分として所望吹出し部分以外の部分を一体的に同時に形成することができる。
これによって、車両用シートカバーを一体的に形成することができつつ、送風機により送られた空気を車両用シートの内部から外部に透過し易くすることができ、所望吹出し部分以外の部分について繊維密度を高く形成することができ、全体としての外観意匠性を高めることができる。
もって、この車両用シートカバーによれば、送風機により送られた空気を車両用シートの内部から外部に透過し易くしながら、車両用シートとしての外観意匠性を高めることができる。
【0009】
第2の発明に係る車両用シートカバーは、前記第1の発明に係る車両用シートカバーにおいて、単位面積あたりの繊維密度が低い部分から単位面積あたりの繊維密度が高い部分に移るにあたって、該繊維密度の高低変化を少なくとも3段階以上で区分けしていることを特徴とする。
この車両用シートカバーによれば、単位面積あたりの繊維密度が低い部分から単位面積あたりの繊維密度が高い部分に移るにあたって、繊維密度の高低変化を少なくとも3段階以上で区分けしているので、送風機により送られた空気を車両用シートの内部から外部に透過させる場合に、この空気の透過する部分と透過しない部分との境界を少なくとも3段階とした段階的なものとすることができ、空気の透過する部分としない部分との境界を連続的に滑らかに変化にさせることができる。これによって、空気の吹出す部分と吹出さない部分と境界をはっきりさせず、空気の吹出しを柔らかく変化させ着座者に快適な使用感を与えることができる。また、このように繊維密度の高低変化を複数の段階で区分けしたものとすると、グラデーションとしての美観を奏することができ、車両用シートの外観意匠性をより高めることができる。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明に係る車両用シートカバーによれば、送風機により送られた空気を車両用シートの内部から外部に透過し易くしながら、車両用シートとしての外観意匠性を高めることができる。
第2の発明に係る車両用シートカバーによれば、空気の吹出す部分と吹出さない部分と境界をはっきりさせず、空気の吹出しを柔らかく変化させ着座者に快適な使用感を与えることができる。また、このように繊維密度の高低変化を複数の段階で区分けしたものとすると、グラデーションとしての美観を奏することができ、車両用シートの外観意匠性をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】車両としての自動車に設置される車両用シートの縦断面を示す図である。
【図2】図1に示す車両用シートにおいて車両用シートカバーをを外したものを示す正面展開図である。
【図3】シートクッションカバー(車両用シートカバー)の正面図である。
【図4】シートバックカバー(車両用シートカバー)の正面図である。
【図5】単位面積あたりの繊維密度に高低差を設けるにあたっての繊維の詰まり方の一の例を示す車両用シートカバーの一部についての拡大図である。
【図6】単位面積あたりの繊維密度に高低差を設けるにあたっての繊維の詰まり方の他の例を示す車両用シートカバーの一部についての拡大図である。
【図7】グラデーションを形成する車両用シートカバーの例を示す車両用シートカバーの一部についての拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、車両としての自動車に設置される車両用シート10の縦断面を示す図である。図2は、図1に示す車両用シート10において車両用シートカバー(シートクッションカバー、シートバックカバー)をを外したものを示す正面展開図である。
図1に示すように、車両用シート10は、乗員が着座するシートクッション20と、着座者の背凭れとなるシートバック30とを備える。なお、図1および図2に示す車両用シート10にあっては、一般に、頭凭れとなるヘッドレストを備えて構成されるが、以下における説明を分かりやすくするために図示省略している。
シートクッション20は、図1に示すように、骨組みを成すフレーム21と、このフレーム21に連結支持される支持スプリング22と、この支持スプリング22にて支持されフレーム21に装着されるクッション材としてのパッド23とを備える。また、このシートクッション20の内部には送風機としての軸流ファン24が設置されている。この軸流ファン24は、シートクッション20の内部から着座者の体が存する外部に向けて空気を吹き出すための空気を送るものである。このため、図2にも示すように、パッド23の着座者側の面には、軸流ファン24から送り出される空気を着座者の体が存する外部に吹き出すための吹出し口23aが複数設けられている。また、パッド23の内部には、軸流ファン24から送り出される空気を、この吹出し口23aまで導くための導風路としてのダクト23bが形成されている。このようにして、シートクッション20は、このシートクッション20の内部から着座者の体が存する外部に向けて空気を吹き出すことができる。
また、シートバック30も、上記したシートクッション20と同様、骨組みを成すフレーム31と、このフレーム31に連結支持される支持スプリング32と、この支持スプリング32にて支持されるクッション材としてのパッド33とを備える。また、このシートバック30の内部には送風機としての軸流ファン34が設置されている。この軸流ファン34も、シートバック30の内部から着座者の体が存する外部に向けて空気を吹き出すための空気を送るものである。このため、図2にも示すように、パッド33の着座者側の面には、軸流ファン34から送り出される空気を着座者の体が存する外部に吹き出すための吹出し口33aが複数設けられ、パッド33の内部には、軸流ファン34から送り出される空気を、この吹出し口33aまで導くための導風路としてのダクト33bが形成されている。このようにして、シートバック30は、このシートバック30の内部から着座者の体が存する外部に向けて空気を吹き出すことができる。
なお、図2に示すように、シートクッション20にあっては、着座者の腰に接するシートクッション本体20aと、このシートクッション本体20aの側方に位置して着座者の着座姿勢をサポートするサイドサポート20bとを備える。また、シートバック30にあっては、着座者の背中に接するシートバック本体30aと、このシートバック本体30aの側方に位置して着座者の着座姿勢をサポートするサイドサポート30bとを備える。つまり、図示するように、上記したシートクッション20の吹出し口23aは、着座者の腰が接するシートクッション本体20aに設けられており、上記したシートバック30の吹出し口33aは、着座者の背中が接するシートバック本体30aに設けられている。
【0013】
図3は、シートクッション20における表面を被覆するように配設される車両用シートカバーとしてのシートクッションカバー40の正面図である。図4は、シートバック30における表面を被覆するように配設される車両用シートカバーとしてのシートバックカバー50の正面図である。
上記したように構成されるシートクッション20およびシートバック30のそれぞれには、表面を被覆するように車両用シートカバーが配設される。つまり、シートクッション20に対しては、図3に示すように、表面を被覆するように車両用シートカバーとしてのクッションカバー40が配設される。また、シートバック30に対しては、図4に示すように、表面を被覆するように車両用シートカバーとしてのシートバックカバー50が配設される。
図3および図4に示すように、シートクッションカバー40およびシートバックカバー50は、両者とも略X字状の外観意匠に呈するような共通のデザインが施されている。このようにシートクッションカバー40およびシートバックカバー50は、共通のデザインが施されることにより、シートクッション20とシートバック30とのデザインが統一化されるような優れた外観意匠を呈したものとなっている。
これらシートクッションカバー40およびシートバックカバー50に施される略X字状の共通デザインは、単位面積あたりの繊維密度に高低差を設けることにより形成されている。これらの略X字状の共通デザインは、単位面積あたりの繊維密度が低い部分から単位面積あたりの繊維密度が高い部分に移るにあたって、繊維密度の高低変化を3段階で区分けさせた繊維密度の変化によって形成されている。具体的には、次のとおりである。
【0014】
すなわち、シートクッションカバー40は、シートクッション本体20a(図2参照)に略X字状のデザインを呈するように、単位面積あたりの繊維密度を3段階の高さで区分けして形成されている。つまり、図3に示すように、シートクッションカバー40は、中央から外側に向かって、第1X字状形成部分40A(図示網目密度低)、第2X字状形成部分40B(図示網目密度中)、第3X字状形成部分40C(図示網目密度高)に設定され、このように区分けした部分40A,40B,40Cに対して、それぞれの単位面積あたりの繊維密度を順次高く設定することによって、略X字状の外観意匠を呈するようになっている。なお、サイドサポート20bに対応するサイドサポートカバー部分40D(図示白抜き)については、第3X字状形成部分40Cを形成する単位面積あたりの繊維密度に比しても高い繊維密度に設定されている。
第1X字状形成部分40Aは、軸流ファン24(図1参照)にて送られる空気を外部に吹き出させるにあたって、最も好ましい通気抵抗を有する繊維密度に設定されて形成されている。この第1X字状形成部分40Aは、第2X字状形成部分40Bおよび第3X字状形成部分40Cに比して、単位面積あたり最も低い繊維密度に設定されて形成されている。これにより、第1X字状形成部分40Aは、軸流ファン24にて送られる空気を、第2X字状形成部分40Bおよび第3X字状形成部分40Cに比して外部に最も好ましく吹き出させることができる。
第2X字状形成部分40Bは、上記した第1X字状形成部分40Aに比して高い繊維密度に設定されて形成されている。つまり、この第2X字状形成部分40Bは、単位面積あたりの繊維密度を、第1X字状形成部分40Aに比して高く且つ第3X字状形成部分40Cに比して低い繊維密度に設定されて形成されている。これにより、第2X字状形成部分40Bは、軸流ファン24にて送られる空気を外部に吹き出させるにあたって、第1X字状形成部分40Aに比して吹き出し難く、第3X字状形成部分40Cに比して吹き出し易いようになっている。
第3X字状形成部分40Cは、軸流ファン24にて送られる空気を外部に吹き出させるにあたって、通気させない程度の通気抵抗を有する繊維密度に設定されて形成されている。つまり、第3X字状形成部分40Cは、第1X字状形成部分40Aおよび第2X字状形成部分40Bに比して、単位面積あたり最も高い繊維密度に設定されて形成されている。これにより、第3X字状形成部分40Cは、軸流ファン24にて送られる空気を、外部に吹き出させないようになっている。
なお、通気可能な通気抵抗にて形成された第1X字状形成部分40Aおよび第2X字状形成部分40Bは、上記した吹出し口23a(図2参照)を覆うような位置に配置されており、この吹出し口23aから吹出す空気を外部に吹き出すことができる。
【0015】
また、シートバックカバー50にあっても、上記したシートクッションカバー40と同様に、シートバック本体30a(図2参照)に略X字状のデザインを呈するように、単位面積あたりの繊維密度を3段階の高さで変化させて形成されている。つまり、図4に示すように、シートバックカバー50は、中央から外側に向かって、第1X字状形成部分50A(図示網目密度低)、第2X字状形成部分50B(図示網目密度中)、第3X字状形成部分50C(図示網目密度高)に設定され、これらの部分50A,50B,50Cの単位面積あたりの繊維密度を順次高くしていくことによって略X字状の外観意匠を呈するようになっている。なお、サイドサポート30bに対応するサイドサポートカバー部分50D(図示白抜き)については、第3X字状形成部分50Cを形成する単位面積あたりの繊維密度に比しても高い繊維密度に設定されている。
第1X字状形成部分50Aは、軸流ファン34にて送られる空気を外部に吹き出させるにあたって、最も好ましい通気抵抗を有する繊維密度に設定されて形成されている。この第1X字状形成部分50Aは、第2X字状形成部分50Bおよび第3X字状形成部分50Cに比して、単位面積あたり最も低い繊維密度に設定されて形成されている。これにより、第1X字状形成部分50Aは、軸流ファン34(図1参照)にて送られる空気を、第2X字状形成部分50Bおよび第3X字状形成部分50Cに比して外部に最も好ましく吹き出させることができる。
第2X字状形成部分50Bは、上記した第1X字状形成部分50Aに比して高い繊維密度に設定されて形成されている。つまり、この第2X字状形成部分50Bは、単位面積あたりの繊維密度を、第1X字状形成部分50Aに比して高く且つ第3X字状形成部分50Cに比して低い繊維密度に設定されて形成されている。これにより、第2X字状形成部分50Bは、軸流ファン34にて送られる空気を外部に吹き出させるにあたって、第1X字状形成部分50Aに比して吹き出し難く、第3X字状形成部分50Cに比して吹き出し易いようになっている。
第3X字状形成部分50Cは、軸流ファン34にて送られる空気を外部に吹き出させるにあたって、通気させない程度の通気抵抗を有する繊維密度に設定されて形成されている。つまり、第3X字状形成部分50Cは、第1X字状形成部分50Aおよび第2X字状形成部分50Bに比して、単位面積あたり最も高い繊維密度に設定されて形成されている。これにより、第3X字状形成部分50Cは、軸流ファン34にて送られる空気を、外部に吹き出させないようになっている。
なお、通気可能な通気抵抗にて形成された第1X字状形成部分50Aおよび第2X字状形成部分50Bは、上記した吹出し口33a(図2参照)を覆うような位置に配置されており、この吹出し口33aから吹出す空気を外部に吹き出すことができる。
【0016】
上記のように区分けされた第1X字状形成部分40A,50A(図示網目密度低)、第2X字状形成部分40B,50B(図示網目密度中)、第3X字状形成部分40C,50C(図示網目密度高)、サイドサポートカバー部分40D,50D(図示白抜き)は、次のようにして、単位面積あたりの繊維密度に高低差を設けるようにしている。
図5は、単位面積あたりの繊維密度に高低差を設けるにあたっての繊維の詰まり方の一の例を示すシートクッションカバー40もしくはシートバックカバー50の一部についての拡大図である。図6は、単位面積あたりの繊維密度に高低差を設けるにあたっての繊維の詰まり方の他の例を示すシートクッションカバー40もしくはシートバックカバー50の一部についての拡大図である。なお、図5および図6にて拡大して示すカバーの一部は、単位面積あたりの繊維密度に高低差を設けた例について示すものであり、例えば、図3および図4にて示し説明した第1X字状形成部分40Aと第2X字状形成部分40Bとの境界に関して拡大して示すものである。
【0017】
すなわち、図5に示す単位面積あたりの繊維密度に高低差を設けるにあたっての繊維の詰まり方の例としては、単位面積あたりの糸の本数を同数に設定し、糸の太さを変更することによって単位面積あたりの繊維密度に高低差を設けた例である。つまり、図5に示す繊維の詰まり方の例では、繊維としての糸が格子状に織られてカバーの一部を形成するにあたって、単位面積あたりの糸の本数が同数になるように等間隔(縦横間隔D1)で糸を織り込んでいる。ここで、図5に示す繊維の詰まり方の例では、図示上側および図示左側における糸の太さ(B1)を、図示下側および図示右側における糸の太さ(B2)に比して太く設定している。このため、図示上左側に位置する範囲S1と図示下右側に位置する範囲S2とを比較すると、糸の本数が同数であるものの、糸の太さに違いがあるために、範囲S1は範囲S2に比して、単位面積あたりの繊維密度が高くなっている。
つまり、通気抵抗の高い単位面積あたりの繊維密度の高くなる範囲S1に比して、通気抵抗の低くなる範囲S2から、上記した軸流ファン24,34にて送られる空気は透過し易いものとなる。
【0018】
また、図6に示す単位面積あたりの繊維密度に高低差を設けるにあたっての繊維の詰まり方の例としては、糸の太さを同じ太さに設定し、単位面積あたりの糸の本数を変更することによって単位面積あたりの繊維密度に高低差を設けた例である。つまり、図6に示す繊維の詰まり方の例では、繊維としての糸が格子状に織られてカバーの一部を形成するにあたって、糸の太さを同じ太さとした状態で、図示上側および図示左側における糸の本数を、図示下側および図示右側における糸の本数に比して多くなるように設定している。言い換えれば、図示上側および図示左側における糸の間隔(D2)を、図示下側および図示右側における糸の間隔(D3)に比して短く設定している。このため、図示上左側に位置する範囲S3と図示下右側に位置する範囲S4とを比較すると、糸の太さが同じであるものの、糸の本数に違いがあるために、範囲S3は範囲S4に比して、単位面積あたりの繊維密度が高くなっている。
つまり、通気抵抗の高い単位面積あたりの繊維密度の高くなる範囲S3に比して、通気抵抗の低くなる範囲S4から、上記した軸流ファン24,34にて送られる空気は透過し易いものとなる。
【0019】
以上説明したように、この車両用シートとしてのシートクッションカバー40およびシートバックカバー50によれば、次のような作用効果を奏することができる。
すなわち、このシートクッションカバー40およびシートバックカバー50によれば、単位面積あたりの繊維密度に高低差を設けることにより、単位面積あたりの繊維密度の高い部分に比して低い部分から、軸流ファン24,34にて送られる空気を車両用シート10の内部から外部に吹き出し易くしたので、軸流ファン24,34により送られた空気を、所望個所に細かく通風孔を設けることもなく、また通気性の良い素材を選択することもなく、単位面積あたりの繊維密度の低い部分となる第1X字状形成部分40A,50Aから通気抵抗が小さくした状態で吹き出させることができる。
また、このシートクッションカバー40およびシートバックカバー50によれば、軸流ファン24,34にて送られる空気を吹き出し易くするにあたり、単位面積あたりの繊維密度の低い部分として空気を吹出させたい所望吹出し部分となる第1X字状形成部分40A,50Aおよび第2X字状形成部分40B,50Bを形成しつつ、単位面積あたりの繊維密度の高い部分として所望吹出し部分以外の部分となる第3X字状形成部分40C,50Cおよびサイドサポートカバー部分40D,50Dを一体的に同時に形成することができる。
これによって、シートクッションカバー40とシートバックカバー50とのそれぞれを一体的に形成することができつつ、軸流ファン24,34により送られた空気を車両用シート10の内部から外部に透過し易くすることができ、所望吹出し部分以外の部分となる第3X字状形成部分40C,50Cおよびサイドサポートカバー部分40D,50Dについて繊維密度を高く形成することができ、全体としての外観意匠性を高めることができる。
もって、この車両用シートカバーによれば、軸流ファン24,34により送られた空気を車両用シート10の内部から外部に透過し易くしながら、車両用シート10としての外観意匠性を高めることができる。
【0020】
また、このシートクッションカバー40およびシートバックカバー50によれば、単位面積あたりの繊維密度が低い部分から単位面積あたりの繊維密度が高い部分に移るにあたって、繊維密度の高低変化を3段階で区分けさせた繊維密度の変化によって形成されているので、軸流ファン24,34により送られた空気を車両用シート10の内部から外部に透過させる場合に、この空気の透過する部分と透過しない部分との境界を、第1X字状形成部分40A,50A、第2X字状形成部分40B,50B、第3X字状形成部分40C,50Cと3段階の段階的なものとすることができ、空気の透過する部分としない部分との境界を連続的に滑らかに変化にさせることができる。これによって、空気の吹出す部分と吹出さない部分と境界をはっきりさせず、空気の吹出しを柔らかく変化させ着座者に快適な使用感を与えることができる。
【0021】
なお、本発明に係る車両用シートカバーにあっては、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜に変更することができる。
例えば、上記した実施の形態におけるシートクッションカバー40およびシートバックカバー50にあっては、次のような美観を奏することができる外観意匠を形成することができる。図7は、グラデーションを形成する車両用シートカバー60の例を示す車両用シートカバー60の一部についての拡大図である。
図7に示す車両用シートカバー60は、繊維としての糸が格子状に織られてカバーの一部を形成するにあたって、単位面積あたりの糸の本数が同数になるように、糸を等間隔(縦横間隔D4)に配置し、3種類の糸の太さを選択して用いることによって、単位面積あたりの繊維密度の高低変化を複数の段階で区分けしている。
このように繊維密度の高低変化を複数の段階(図7に示す例では4段階)で区分けしたものとすると、グラデーションとしての美観を奏することができ、車両用シート10の外観意匠性をより高めることができる。なお、この繊維密度の高低変化の区分けは、上記した4段階に限定されることなく、空気の透過量に対して急激な変化とならない少なくとも3段階以上であれば、適宜の段階数を選択することができる。
【0022】
また、上記した実施の形態におけるシートクッションカバー40およびシートバックカバー50にあっては、両者に施されるデザインを略X字状の共通デザインを選択して形成されるものであった。しかしながら、本発明に係る車両用シートカバーは、これに限定されることなく、略X字状以外のデザインが選択されるものであってもよく、共通デザインとする必要もなく個別に異なるデザインが選択されるものであってもよい。つまり、本発明に係る車両用シートカバーは、上記したグラデーションを利用して縞模様を形成するようにして単位面積あたりの繊維密度に高低差を設け、単位面積あたりの繊維密度の高い部分に比して低い部分から送風機にて送られる空気を車両用シートの内部から外部に吹き出し易くするように構成するものであってもよい。なお、車両用シートカバーのうち最も好ましい通気抵抗を有する繊維密度に設定されて形成される部分については、上記した吹出し口の配置位置を鑑みて設定されることが望ましい。
【0023】
また、上記した実施の形態におけるシートクッションカバー40およびシートバックカバー50にあっては、図5および図6に示しつつ説明したように、単位面積あたりの繊維密度に高低差を設けるにあたっては、複数の糸を格子状に織り込むことによってなされるものであった。しかしながら、本発明に係る車両用シートカバーは、これに限定されることなく、織り込み形状としてはハニカム状のような格子状以外の適宜の形状が選択されるものであってもよい。また、本発明に係る車両用シートカバーにあっては、複数の糸の織り込みに平織りや綾織り等の何れの織り方が選択されてもよく、経糸と緯糸とを組み合せて織る織物のほか1本の糸により編み込まれる編物で形成されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0024】
10 車両用シート
20 シートクッション
20a シートクッション本体
20b サイドサポート
21 フレーム
22 支持スプリング
23 パッド
23a 吹出し口
23b ダクト
24 軸流ファン
30 シートバック
30a シートバック本体
30b サイドサポート
31 フレーム
32 支持スプリング
33 パッド
33a 吹出し口
33b ダクト
34 軸流ファン
40 シートクッションカバー
40A 第1X字状形成部分
40B 第2X字状形成部分
40C 第3X字状形成部分
40D サイドサポートカバー部分
50 シートバックカバー
50A 第1X字状形成部分
50B 第2X字状形成部分
50C 第3X字状形成部分
50D サイドサポートカバー部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートの内部に送風機を設置し車両用シートの内部から着座者の体が存する外部に向けて空気を吹き出す車両用シートにおける表面を被覆するように配設される車両用シートカバーであって、
単位面積あたりの繊維密度に高低差を設けることにより、単位面積あたりの繊維密度の高い部分に比して低い部分から、前記送風機にて送られる空気を車両用シートの内部から外部に吹き出し易くしたことを特徴とする車両用シートカバー。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートカバーにおいて、
単位面積あたりの繊維密度が低い部分から単位面積あたりの繊維密度が高い部分に移るにあたって、該繊維密度の高低変化を少なくとも3段階以上で区分けしていることを特徴とする車両用シートカバー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−240089(P2010−240089A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90835(P2009−90835)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】