車両用シートバックフレーム構造
【課題】繊維強化複合材料を用いた車両用シートバックフレーム構造を提供する。
【解決手段】主たる構造が繊維強化複合材料からなるシートバックフレームと、金属製のリトラクタ支持ブラケットとを備え、リトラクタが該リトラクタ支持ブラケットを介して該シートバックフレームに取り付けられた車両用シートバックフレーム構造であって、該リトラクタ支持ブラケットが該シートバックフレームに少なくとも嵌合を含む接合方法で取り付けられていることを特徴とする車両用シートバックフレーム構造。
【解決手段】主たる構造が繊維強化複合材料からなるシートバックフレームと、金属製のリトラクタ支持ブラケットとを備え、リトラクタが該リトラクタ支持ブラケットを介して該シートバックフレームに取り付けられた車両用シートバックフレーム構造であって、該リトラクタ支持ブラケットが該シートバックフレームに少なくとも嵌合を含む接合方法で取り付けられていることを特徴とする車両用シートバックフレーム構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維強化複合材料を用いた車両用シートバックのフレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用リアシートバックフレームの構造としては、金属製のパイプ材を外周部に配し、このパイプ材によって囲まれた領域内に鋼鈑などの金属製板材を配置したものが一般的であるが、車両重量の軽減に関する要望から、シートバックフレームについても軽量化が求められており、シートバックフレームを樹脂で製作することが考えられている。例えば、特許文献1には、ブロー成形による中空シートバックフレームの一体成形技術が開示されている。また、より一層の軽量化を実現するため、強度・剛性に優れた繊維強化複合材料を用いたシートバックフレームが考案されている。特許文献2には熱可塑性マトリクスと補強ファイバーを備えた複合材料によるシートバックフレームの一体成形技術が開示されている。特許文献3には繊維強化複合材料製シートに過大な入力があった際に、非露出部分で破壊させるための脆弱部が設けられたシートバックフレーム構造が開示されている。
【0003】
ところで、近年においては自動車の衝突安全性を向上すべく種々の対策が実施されており、これまで2点式が主流だったリアシート中央座席のシートベルトが、乗員安全性向上のため3点式へと移行しつつあり、リアシートバックフレームにシートベルトのリトラクタを固定したシートバックフレームが提案されている。また、フロントシートにおいても、車体のCピラーをなくして乗降性を向上させた車両において、リトラクタをシートバックフレームに固定したものが提案されている。これらのケースにおいては、ECE-R14に定められたシートベルトのアンカレッジ荷重に対して、シートバックフレームが十分な強度を保持することが求められるとともに、リトラクタをシートバックフレームに確実に固定する方法が求められる。特許文献4には樹脂製フレーム体と2つの金属製フレームを併用したシートバックフレームにおいて、リトラクタ支持ブラケットを介して金属フレームと樹脂フレーム体に接合する方法が開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1〜3においては、リトラクタを固定する必要がないシートを対象にしているため、リトラクタの固定方法については何の言及もされていない。また、特許文献4では荷重の大部分を金属フレームが負担する構造となっており、リトラクタに入力される荷重も大部分が金属フレームによって負担されている。したがって、金属の使用部位が多くなることから、軽量化に限界があることは明白である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平03−061020号公報
【特許文献2】特開2003−182417号公報
【特許文献3】特開2005−334364号公報
【特許文献4】特開2006−247066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
リトラクタをシートバックフレームに固定するにあたっては、リトラクタをボルト等でシートバックフレームの固定ポイントへ締結するのが一般的であり、シートベルトはリトラクタからシート上方へ巻きだされた後、リトラクタ本体もしくはその一部、シートバックフレーム本体もしくはその一部、巻き出し用ガイドなど何らかのシートベルト支持用部材を介して車両前方方向へ引き出される。この際、シートベルトに加わる張力は、前述の固定ポイントに上方向への引張力として作用するとともに、シートベルト支持用部材に対する車両前方への引張荷重、および、シートベルト支持用部材を下方向へと押し下げる荷重として作用する。図1にシートベルト、リトラクタ、シートベルト支持用部材にかかる荷重を模式的に示す。
【0007】
繊維強化複合材料をシートバックフレームに適用するにあたっては、リトラクタはナットやボルトの機能を持つ何らかの金属製インサートなどを介してシートバックフレームに固定することになるが、ナットサートやスタッドボルトなどの一般的に使用される機械的な締結手段を繊維複合材料に単にインサートした場合、インサート部分に過大な応力が作用し、最悪の場合には締結部分が破壊に至ることが考えられる。
【0008】
本発明は、繊維強化複合材料をシートバックフレームに適用して大幅な軽量化を図るにあたって、リトラクタの固定ポイントに作用する集中的な大荷重を繊維強化複合材料部材に分散して負荷することができる車両用のシートバックフレーム構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討の結果、本発明に到達した。すなわち本発明は、主たる構造が繊維強化複合材料からなるシートバックフレームと、金属製のリトラクタ支持ブラケットとを備え、リトラクタが該リトラクタ支持ブラケットを介して該シートバックフレームに取り付けられた車両用シートバックフレーム構造であって、該リトラクタ支持ブラケットが該シートバックフレームに少なくとも嵌合を含む接合方法で取り付けられていることを特徴とする車両用シートバックフレーム構造である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に記載のシートバックフレーム構造によれば、シートベルトに作用する張力を繊維強化複合材料部材に局所的に集中させることなく効率的に伝達することが可能となるため、シートバックフレーム構造の大幅な軽量化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】シートベルト、リトラクタ、シートベルト支持用部材にかかる荷重を示した模式図である。
【図2】本発明のシートバックフレーム構造の第1実施形態を示す斜視図である。
【図3】本発明のシートバックフレーム構造の第1実施形態の部品構成を示す図である。
【図4】本発明のシートバックフレーム構造の第1実施形態を示す三面図である。
【図5】本発明のシートバックフレーム構造の第1実施形態を示す拡大図である。
【図6】本発明のシートバックフレーム構造の第2実施形態を示す斜視図である。
【図7】本発明のシートバックフレーム構造の第2実施形態の部品構成を示す図である。
【図8】本発明のシートバックフレーム構造の第2実施形態を示す三面図である。
【図9】本発明のシートバックフレーム構造の第2実施形態を示す拡大図である。
【図10】本発明のシートバックフレーム構造の第3実施形態を示す斜視図である。
【図11】本発明のシートバックフレーム構造の第3実施形態の部品構成を示す図である。
【図12】本発明のシートバックフレーム構造の第3実施形態を示す三面図である。
【図13】本発明のシートバックフレーム構造の第3実施形態を示す拡大図である。
【図14】シートバックフレーム構造のフレーム体の断面形状例。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のシートバックフレーム構造をワゴン型車両やハッチバック型車両のリアシートバックに適用した場合について、図面も参照の上説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0013】
[繊維強化複合材料]
本発明のシートフレームバック構造における繊維強化複合材料とは、強化繊維とマトリックス樹脂とを含むものである。繊維強化複合材料中の強化繊維の形態は、短繊維でも、長繊維でも、連続繊維でも良く、これらのうち2種類以上を組み合わせて用いても良い。短繊維とは繊維長が0.1〜10mm未満、長繊維とは繊維長が10mm〜100mm、連続繊維とは繊維長が100mm以上のものである。短繊維や長繊維の場合は、チョップドストランド等を用いて抄紙されたペーパーであってもよい。連続繊維の場合は、織編物、ストランドの一方方向配列シート状物及び多軸織物等のシート状、または不織布状でマトリックス樹脂中に含有されていることも好ましい。なお、多軸織物とは、一般に、一方向に引き揃えた繊維強化材の束をシート状にして角度を変えて積層したもの(多軸織物基材)を、ナイロン糸、ポリエステル糸、ガラス繊維糸等のステッチ糸で、この積層体を厚さ方向に貫通して、積層体の表面と裏面の間を表面方向に沿って往復しステッチした織物をいう。該繊維強化複合材料成形体を構成する繊維強化材料は、強化繊維がランダムに分散したものあるいは特定の繊維配向をしたものでもよく、強化繊維が面配向したものあるいは一軸配向したもの、あるいはそれらの組み合わせ、あるいはそれらの積層体であることが好ましい。
【0014】
本発明のシートバックフレーム構造における繊維強化複合材料は、繊維強化複合材料の部分と樹脂のみの部分との積層体やサンドイッチ構造にすることもできる。サンドイッチ構造の場合は、コア部材が複合材料であって表皮部材が樹脂であっても良く、逆にコア部材が樹脂のみの部分であって、表皮部材が複合材料であっても良い。
【0015】
[マトリックス樹脂]
本発明のシートバックフレーム構造に用いられるマトリックス樹脂は、熱可塑性樹脂もしくは熱硬化性樹脂であり、好ましくは熱可塑性樹脂またはそれらの組成物である。具体的には、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリ乳酸、ポリアミド樹脂、ASA樹脂、ABS樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、およびこれらの樹脂から選ばれる2種類以上の混合物(樹脂組成物)等からなる群から選択された少なくとも1種が挙げられるが特に制限はない。上記の樹脂組成物としては、ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂の組成物、ポリカーボネートとABS樹脂との組成物、ポリフェニレンエーテル樹脂とポリアミド樹脂の組成物、ポリアミド樹脂とABS樹脂の組成物、およびポリエステル樹脂とナイロン樹脂の組成物等からなる群から選択された少なくとも1種が好ましい。
【0016】
[強化繊維]
本発明のシートバックフレーム構造に用いられる強化繊維としては、ガラス繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、炭素繊維、パラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維、ボロン繊維、アゾール繊維、アルミナ繊維等からなる群から選択された少なくとも1種が好ましいものとして挙げられ、特に好ましくは比強度と比弾性に優れる炭素繊維である。
【0017】
[シートバックフレーム構造]
本発明のシートバックフレーム構造は、主たる構造が繊維強化複合材料からなるシートバックフレーム1と金属製のリトラクタ支持ブラケット6を備え、リトラクタ2が金属製のリトラクタ支持ブラケット6を介してシートバックフレーム1に取り付けられたシートバックフレーム構造であって、リトラクタ支持ブラケット6がシートバックフレーム1に少なくとも嵌合を含む接合方法で取り付けられたものである。シートバックフレーム構造の好ましい第1の実施形態としては、パネル体とその外周部に配置されたフレーム体を有するもの、好ましい第2の実施形態としてはモノコック形状体からなるもの、好ましい第3の実施形態としてはパネル体とその外周部に配置されたフレーム体に加えリトラクタの周囲に一体的に配置されたフレーム体を有するものが挙げられる。第3の実施形態におけるリトラクタの周囲に一体的に配置されたフレーム体は、リトラクタを確実に保持する機能を担うものであり、またリトラクタ支持ブラケットをシートバックフレームに嵌合を含む方法で接合する場合の嵌合部としての機能も有する。
【0018】
本発明のシートバックフレーム構造の好ましい実施形態例について図面も参照の上詳細説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
シートバックフレーム1は、第1または第3の実施形態(図2〜5および図10〜13)に示すようにパネル体1Bとその外周部に配置されたフレーム体1Aを有してもよく、第2の実施形態(図6〜9)に示すようにモノコック形状体1Cであっても良く、それ以外の形状であっても良い。また、一体成形されていても良く、複数の部材が組み合わされて構成されていても良い。
【0019】
シートバックフレーム1は、シートバックフレーム1を回転自在に取り付けるためのヒンジ機構7を有していても良く、また、シートバックフレーム1をほぼ直立した状態に保つための保持機構8を有しても良い。ヒンジ機構7と保持機構8は一般的には金属で製造されるが、樹脂や繊維強化複合材料で製造することも可能である。
【0020】
シートバックフレーム1の主たる構造とは荷重の大部分を受け持つ構造のことであり、例として、第1または第3の実施形態(図5または図13参照)においてはフレーム体1A、第2の実施形態(図9参照)においてはスキン体1D(図9参照)が挙げられる。主たる構造以外の部分については、作用する荷重の度合いに応じて、繊維強化複合材料であっても良く、樹脂であっても良く、金属であっても良い。
【0021】
[フレーム体]
本発明のシートバックフレーム構造におけるシートバックフレーム1が、例えば第1または第3の実施形態のようにパネル体1Bとその外周部に配置されたフレーム体1Aを有している場合、フレーム体1Aは、繊維強化複合材料で構成されていることが好ましく、その形状はシートバックフレーム構造に応じたものになり、例えば略方形、台形、逆台形などが挙げられる。角部の形状は曲率を有していても、直線を基調としたものでも良い。フレーム体1Aの形状としては開断面形状もしくは閉断面形状が挙げられる。ここで開断面形状とは断面が開いた形状のものであり、閉断面形状とは断面が閉じた形状のものである。開断面形状としては、ハット形状、U字形状、V字形状などが挙げられ、パネル体1Bとの接合部を有した構造とすることが好ましい。開断面形状としては、丸パイプ形状、角パイプ形状などが挙げられ、一体成形されていてもよく、複数の開断面形状を接合して閉断面形状としていても良い。フレーム体1Aの断面形状がハット形状の例(図14)をとり、厚みなどの定義を説明する。フレーム体1Aの厚み(記号12)は特に限定はないが、強度と軽量化のバランスから、1〜6mm程度が望ましい。5mm以下とすることが好ましく、より好ましくは4mm以下である。開断面の高さ(記号13)は特に限定はないが、好ましくは10mm以上、100mm以下、より好ましくは40mm以上、60mm以下である。開断面の幅(記号14)は10mm以上、100mm以下、より好ましくは20mm以上、40mm以下である。接合部の幅(記号15)は接合が可能であれば良いが、具体的には5mm以上、50mm以下、より好ましくは10mm以上、30mm以下である。これらはフレーム体において一様であっても、フレームの部位によって適宜選択しても良い。このような形状とすることにより、フレーム体の変形性を高めることができるため、効率的なエネルギー吸収が可能となる。
【0022】
断面形状について、例えば型を用いたプレス成形を行う観点から本発明の目的を損なわない範囲で抜き勾配を任意に加えることもできる。フレーム体1Aの内部には、ハニカム材、発泡樹脂、紙などを充填することも可能である。
【0023】
[パネル体]
本発明のシートバックフレーム構造におけるシートバックフレーム1が、例えば第1または第3の実施形態のようにパネル体1Bとその外周部に配置されたフレーム体1Aを有している場合、パネル体1Bは軽量でエネルギー吸収に優れていれば良く、金属、樹脂などから選択できる。金属の場合は高張力鋼鈑やアルミなどが好ましい。樹脂の場合は、成形性、生産性、加工性に優れる点から熱可塑性樹脂であることが好ましい。さらにパネル体1Bは繊維強化複合材料であってもよく、強化繊維として有機長繊維、マトリックスとして熱可塑性樹脂を含む繊維強化複合材料とすることが好ましい。
【0024】
パネル体1Bは略平板形状であり、一枚板であっても積層体であっても良い。積層体の場合は、同種部材の積層であっても、異種部材の積層体やサンドイッチ構造であっても良い。また、必要に応じてリブを設けることも出来る。パネル体1Bの厚みはとくに限定はないが、強度と軽量化のバランスから、1〜5mm程度が望ましい。
【0025】
[モノコック形状体]
本発明のシートバックフレーム構造におけるシートバックフレーム1が例えば第2の実施形態のようにモノコック形状体1Cである場合、モノコック形状体1Cはコア体1Eの周囲にスキン体1Dを配置した構造体であることが好ましい。(図6〜9に具体例を示す。)スキン体1Dはコア体1Eを完全に被覆していることが好ましいが、一部が露出していても良い。スキン体1Dは繊維強化複合材料で構成するのが好ましく、コア体1Eはハニカム材、発泡樹脂、紙など低比重の材料で構成するのが好ましい。スキン体1Dとコア体1Eは型内で一体成形されていてもよく、複数に分割されたスキン体1Dとコア体1Eが組み合わされて構成されていても良い。モノコック形状体1Cの厚みはとくに限定はないが、強度と軽量化のバランスから、10〜100mm程度が望ましい。スキン体1Eの厚みもとくに限定はないが、強度と軽量化のバランスから、1〜6mm程度が望ましい。スキン体1Eの厚みは、5mm以下とすることが好ましく、より好ましくは4mm以下である。
【0026】
[リトラクタ支持ブラケット]
リトラクタ支持ブラケット6は、リトラクタ2を固定するためのリトラクタ締結部4をもつ金属製の部材であり、鉄やアルミが好ましく用いられる。リトラクタ2の締結方法として、ボルト・ナット接合が好ましく用いられる。製造方法としては、切削加工、プレス加工方法、鋳造方法などが好ましく用いられ、複数の金属部材が溶接、リベット、ボルト・ナット、接着などの方法によって接合されていても良い。厚みは特に限定は無いが、5mm以下の金属板で製造されるのが好ましく、厚み1〜3mmが特に好ましい。必要な強度を確保した上で、軽量化のための肉抜き加工や減肉加工が施されていても良い。
【0027】
リトラクタ締結部4は少なくとも1つ以上があればよく、リトラクタ2のガタつきを抑えるための補助的な締結部4Bがあっても良い。この場合、補助的な締結部4Bに作用する荷重は主たる締結部4に比べて小さくなるため、補助的な締結部4Bはリトラクタ支持ブラケット6上に一体化されても良いし、リトラクタ支持ブラケット6以外の部位、例えばシートバックフレーム1上に設けられても良い。本発明で重要なのは、主たるリトラクタ締結部4がリトラクタ支持ブラケット6上に設けられているということである。
【0028】
リトラクタ支持ブラケット6は図2〜図5に示すようにシートベルト5を通す中空構造(A)9を有しても良く、この場合はシートベルト5による張力を効率的に受け止めることができるため、リトラクタ支持ブラケット6の板厚を減らすことが可能となり、一層の軽量化が実現できる。この場合、中空構造の幅と高さはシートベルトのタングの寸法よりも大きくするのが好ましく、高さ10〜30mm程度、幅60〜90mm程度とするのが好ましい。
【0029】
リトラクタ支持ブラケット6は図2〜図5に示すように締結部補強のための中空構造(B)10を有していても良く、この場合も前述のシートベルト5による張力を効率的に受け止めることができるため、リトラクタ支持ブラケット6の板厚を減らすことが可能となり、一層の軽量化が実現できる。この場合、中空構造の高さと幅は任意で選択可能であるが、幅10〜70mm程度、高さ1〜20mm程度とするのが好ましい。
【0030】
[リトラクタ支持ブラケットのシートバックフレームへの取り付け方法]
リトラクタ支持ブラケット6には、シートベルト5の張力に起因する大荷重が作用することから、少なくとも嵌合を含む方法によってシートバックフレーム1に接合されるのが好ましい。この場合、図5に示すように開断面形状を有するフレーム体1Aの内面にリトラクタ支持ブラケットの一部11を嵌合させても良く、図9や図13に示すように凹部を有するモノコック形状体1Cやフレーム体1Aにリトラクタ支持ブラケットの一部11を嵌合させても良い。リトラクタ支持ブラケット6をシートバックフレーム1に確実に固定するためには、リトラクタ支持ブラケットがシートバックフレームを構成する部材の一部に挟み込まれて固定されていることが好ましく、さらにはシートバックフレーム1が接合された複数の部材で構成されており、リトラクタ支持ブラケット6が該部材のうち少なくとも2つに挟み込まれていることも好ましい。この場合、シートバックフレーム1がパネル体1Bとその外周部に配置されたフレーム体1Aを有し、リトラクタ支持ブラケット6がパネル体1Bとフレーム体1Aとに挟み込まれた構造とすることもできる。このような構造とすることにより、車両衝突時にシートベルト5に作用する車両進行方向への荷重を高強度なフレーム体1Aに効率的に伝達することが可能となる。
【0031】
リトラクタ支持ブラケット6をシートバックフレーム1に接合するにあたっては、嵌合に加え、接着、溶着、機械的締結などを併用することが望ましい。また、あらかじめ製造したリトラクタ支持ブラケット6をインサート部品として型内に挿入し、インサート成形によって型内で接合することも可能である。この際、リトラクタ支持ブラケット6に接合強度を高めるための表面処理を施すことも可能である。
【0032】
[シートベルト支持用部材]
シートベルト5はリトラクタ2からシート上方へ巻きだされた後、シートベルト支持用部材3を介して車両前方方向へ引き出されるが、その際に、シートベルト支持用部材3は独立した構造物であっても良く、リトラクタ2を構成する部品の一部がその機能を有しても良く、リトラクタ支持ブラケット6の一部がその機能を有しても良い。また、シートバックフレーム1の一部や、それに付属する部品の一部がその機能を有しても良い。
【0033】
[本発明が適用可能な部位]
本発明のシートバックフレーム構造は、ワゴン型車両やハッチバック型車両のリアシートに好適に適用することが可能だが、それ以外の車両、例えばセダン型車両に適用しても良い。また、フロントシートに適用することも可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 シートバックフレーム
1A フレーム体
1B パネル体
1C モノコック形状体
1D スキン体
1E コア体
2 リトラクタ
3 シートベルト支持用部材
4 リトラクタ締結部
4B リトラクタ締結部(補助)
5 シートベルト
6 リトラクタ支持ブラケット
7 ヒンジ機構取り付け部
8 保持機構取り付け部
9 中空構造(A)
10 中空構造(B)
11 嵌合部
12 フレーム体の厚み
13 開断面の高さ
14 開断面の幅
15 開断面の接合部の幅
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維強化複合材料を用いた車両用シートバックのフレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用リアシートバックフレームの構造としては、金属製のパイプ材を外周部に配し、このパイプ材によって囲まれた領域内に鋼鈑などの金属製板材を配置したものが一般的であるが、車両重量の軽減に関する要望から、シートバックフレームについても軽量化が求められており、シートバックフレームを樹脂で製作することが考えられている。例えば、特許文献1には、ブロー成形による中空シートバックフレームの一体成形技術が開示されている。また、より一層の軽量化を実現するため、強度・剛性に優れた繊維強化複合材料を用いたシートバックフレームが考案されている。特許文献2には熱可塑性マトリクスと補強ファイバーを備えた複合材料によるシートバックフレームの一体成形技術が開示されている。特許文献3には繊維強化複合材料製シートに過大な入力があった際に、非露出部分で破壊させるための脆弱部が設けられたシートバックフレーム構造が開示されている。
【0003】
ところで、近年においては自動車の衝突安全性を向上すべく種々の対策が実施されており、これまで2点式が主流だったリアシート中央座席のシートベルトが、乗員安全性向上のため3点式へと移行しつつあり、リアシートバックフレームにシートベルトのリトラクタを固定したシートバックフレームが提案されている。また、フロントシートにおいても、車体のCピラーをなくして乗降性を向上させた車両において、リトラクタをシートバックフレームに固定したものが提案されている。これらのケースにおいては、ECE-R14に定められたシートベルトのアンカレッジ荷重に対して、シートバックフレームが十分な強度を保持することが求められるとともに、リトラクタをシートバックフレームに確実に固定する方法が求められる。特許文献4には樹脂製フレーム体と2つの金属製フレームを併用したシートバックフレームにおいて、リトラクタ支持ブラケットを介して金属フレームと樹脂フレーム体に接合する方法が開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1〜3においては、リトラクタを固定する必要がないシートを対象にしているため、リトラクタの固定方法については何の言及もされていない。また、特許文献4では荷重の大部分を金属フレームが負担する構造となっており、リトラクタに入力される荷重も大部分が金属フレームによって負担されている。したがって、金属の使用部位が多くなることから、軽量化に限界があることは明白である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平03−061020号公報
【特許文献2】特開2003−182417号公報
【特許文献3】特開2005−334364号公報
【特許文献4】特開2006−247066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
リトラクタをシートバックフレームに固定するにあたっては、リトラクタをボルト等でシートバックフレームの固定ポイントへ締結するのが一般的であり、シートベルトはリトラクタからシート上方へ巻きだされた後、リトラクタ本体もしくはその一部、シートバックフレーム本体もしくはその一部、巻き出し用ガイドなど何らかのシートベルト支持用部材を介して車両前方方向へ引き出される。この際、シートベルトに加わる張力は、前述の固定ポイントに上方向への引張力として作用するとともに、シートベルト支持用部材に対する車両前方への引張荷重、および、シートベルト支持用部材を下方向へと押し下げる荷重として作用する。図1にシートベルト、リトラクタ、シートベルト支持用部材にかかる荷重を模式的に示す。
【0007】
繊維強化複合材料をシートバックフレームに適用するにあたっては、リトラクタはナットやボルトの機能を持つ何らかの金属製インサートなどを介してシートバックフレームに固定することになるが、ナットサートやスタッドボルトなどの一般的に使用される機械的な締結手段を繊維複合材料に単にインサートした場合、インサート部分に過大な応力が作用し、最悪の場合には締結部分が破壊に至ることが考えられる。
【0008】
本発明は、繊維強化複合材料をシートバックフレームに適用して大幅な軽量化を図るにあたって、リトラクタの固定ポイントに作用する集中的な大荷重を繊維強化複合材料部材に分散して負荷することができる車両用のシートバックフレーム構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討の結果、本発明に到達した。すなわち本発明は、主たる構造が繊維強化複合材料からなるシートバックフレームと、金属製のリトラクタ支持ブラケットとを備え、リトラクタが該リトラクタ支持ブラケットを介して該シートバックフレームに取り付けられた車両用シートバックフレーム構造であって、該リトラクタ支持ブラケットが該シートバックフレームに少なくとも嵌合を含む接合方法で取り付けられていることを特徴とする車両用シートバックフレーム構造である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に記載のシートバックフレーム構造によれば、シートベルトに作用する張力を繊維強化複合材料部材に局所的に集中させることなく効率的に伝達することが可能となるため、シートバックフレーム構造の大幅な軽量化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】シートベルト、リトラクタ、シートベルト支持用部材にかかる荷重を示した模式図である。
【図2】本発明のシートバックフレーム構造の第1実施形態を示す斜視図である。
【図3】本発明のシートバックフレーム構造の第1実施形態の部品構成を示す図である。
【図4】本発明のシートバックフレーム構造の第1実施形態を示す三面図である。
【図5】本発明のシートバックフレーム構造の第1実施形態を示す拡大図である。
【図6】本発明のシートバックフレーム構造の第2実施形態を示す斜視図である。
【図7】本発明のシートバックフレーム構造の第2実施形態の部品構成を示す図である。
【図8】本発明のシートバックフレーム構造の第2実施形態を示す三面図である。
【図9】本発明のシートバックフレーム構造の第2実施形態を示す拡大図である。
【図10】本発明のシートバックフレーム構造の第3実施形態を示す斜視図である。
【図11】本発明のシートバックフレーム構造の第3実施形態の部品構成を示す図である。
【図12】本発明のシートバックフレーム構造の第3実施形態を示す三面図である。
【図13】本発明のシートバックフレーム構造の第3実施形態を示す拡大図である。
【図14】シートバックフレーム構造のフレーム体の断面形状例。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のシートバックフレーム構造をワゴン型車両やハッチバック型車両のリアシートバックに適用した場合について、図面も参照の上説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0013】
[繊維強化複合材料]
本発明のシートフレームバック構造における繊維強化複合材料とは、強化繊維とマトリックス樹脂とを含むものである。繊維強化複合材料中の強化繊維の形態は、短繊維でも、長繊維でも、連続繊維でも良く、これらのうち2種類以上を組み合わせて用いても良い。短繊維とは繊維長が0.1〜10mm未満、長繊維とは繊維長が10mm〜100mm、連続繊維とは繊維長が100mm以上のものである。短繊維や長繊維の場合は、チョップドストランド等を用いて抄紙されたペーパーであってもよい。連続繊維の場合は、織編物、ストランドの一方方向配列シート状物及び多軸織物等のシート状、または不織布状でマトリックス樹脂中に含有されていることも好ましい。なお、多軸織物とは、一般に、一方向に引き揃えた繊維強化材の束をシート状にして角度を変えて積層したもの(多軸織物基材)を、ナイロン糸、ポリエステル糸、ガラス繊維糸等のステッチ糸で、この積層体を厚さ方向に貫通して、積層体の表面と裏面の間を表面方向に沿って往復しステッチした織物をいう。該繊維強化複合材料成形体を構成する繊維強化材料は、強化繊維がランダムに分散したものあるいは特定の繊維配向をしたものでもよく、強化繊維が面配向したものあるいは一軸配向したもの、あるいはそれらの組み合わせ、あるいはそれらの積層体であることが好ましい。
【0014】
本発明のシートバックフレーム構造における繊維強化複合材料は、繊維強化複合材料の部分と樹脂のみの部分との積層体やサンドイッチ構造にすることもできる。サンドイッチ構造の場合は、コア部材が複合材料であって表皮部材が樹脂であっても良く、逆にコア部材が樹脂のみの部分であって、表皮部材が複合材料であっても良い。
【0015】
[マトリックス樹脂]
本発明のシートバックフレーム構造に用いられるマトリックス樹脂は、熱可塑性樹脂もしくは熱硬化性樹脂であり、好ましくは熱可塑性樹脂またはそれらの組成物である。具体的には、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリ乳酸、ポリアミド樹脂、ASA樹脂、ABS樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、およびこれらの樹脂から選ばれる2種類以上の混合物(樹脂組成物)等からなる群から選択された少なくとも1種が挙げられるが特に制限はない。上記の樹脂組成物としては、ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂の組成物、ポリカーボネートとABS樹脂との組成物、ポリフェニレンエーテル樹脂とポリアミド樹脂の組成物、ポリアミド樹脂とABS樹脂の組成物、およびポリエステル樹脂とナイロン樹脂の組成物等からなる群から選択された少なくとも1種が好ましい。
【0016】
[強化繊維]
本発明のシートバックフレーム構造に用いられる強化繊維としては、ガラス繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、炭素繊維、パラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維、ボロン繊維、アゾール繊維、アルミナ繊維等からなる群から選択された少なくとも1種が好ましいものとして挙げられ、特に好ましくは比強度と比弾性に優れる炭素繊維である。
【0017】
[シートバックフレーム構造]
本発明のシートバックフレーム構造は、主たる構造が繊維強化複合材料からなるシートバックフレーム1と金属製のリトラクタ支持ブラケット6を備え、リトラクタ2が金属製のリトラクタ支持ブラケット6を介してシートバックフレーム1に取り付けられたシートバックフレーム構造であって、リトラクタ支持ブラケット6がシートバックフレーム1に少なくとも嵌合を含む接合方法で取り付けられたものである。シートバックフレーム構造の好ましい第1の実施形態としては、パネル体とその外周部に配置されたフレーム体を有するもの、好ましい第2の実施形態としてはモノコック形状体からなるもの、好ましい第3の実施形態としてはパネル体とその外周部に配置されたフレーム体に加えリトラクタの周囲に一体的に配置されたフレーム体を有するものが挙げられる。第3の実施形態におけるリトラクタの周囲に一体的に配置されたフレーム体は、リトラクタを確実に保持する機能を担うものであり、またリトラクタ支持ブラケットをシートバックフレームに嵌合を含む方法で接合する場合の嵌合部としての機能も有する。
【0018】
本発明のシートバックフレーム構造の好ましい実施形態例について図面も参照の上詳細説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
シートバックフレーム1は、第1または第3の実施形態(図2〜5および図10〜13)に示すようにパネル体1Bとその外周部に配置されたフレーム体1Aを有してもよく、第2の実施形態(図6〜9)に示すようにモノコック形状体1Cであっても良く、それ以外の形状であっても良い。また、一体成形されていても良く、複数の部材が組み合わされて構成されていても良い。
【0019】
シートバックフレーム1は、シートバックフレーム1を回転自在に取り付けるためのヒンジ機構7を有していても良く、また、シートバックフレーム1をほぼ直立した状態に保つための保持機構8を有しても良い。ヒンジ機構7と保持機構8は一般的には金属で製造されるが、樹脂や繊維強化複合材料で製造することも可能である。
【0020】
シートバックフレーム1の主たる構造とは荷重の大部分を受け持つ構造のことであり、例として、第1または第3の実施形態(図5または図13参照)においてはフレーム体1A、第2の実施形態(図9参照)においてはスキン体1D(図9参照)が挙げられる。主たる構造以外の部分については、作用する荷重の度合いに応じて、繊維強化複合材料であっても良く、樹脂であっても良く、金属であっても良い。
【0021】
[フレーム体]
本発明のシートバックフレーム構造におけるシートバックフレーム1が、例えば第1または第3の実施形態のようにパネル体1Bとその外周部に配置されたフレーム体1Aを有している場合、フレーム体1Aは、繊維強化複合材料で構成されていることが好ましく、その形状はシートバックフレーム構造に応じたものになり、例えば略方形、台形、逆台形などが挙げられる。角部の形状は曲率を有していても、直線を基調としたものでも良い。フレーム体1Aの形状としては開断面形状もしくは閉断面形状が挙げられる。ここで開断面形状とは断面が開いた形状のものであり、閉断面形状とは断面が閉じた形状のものである。開断面形状としては、ハット形状、U字形状、V字形状などが挙げられ、パネル体1Bとの接合部を有した構造とすることが好ましい。開断面形状としては、丸パイプ形状、角パイプ形状などが挙げられ、一体成形されていてもよく、複数の開断面形状を接合して閉断面形状としていても良い。フレーム体1Aの断面形状がハット形状の例(図14)をとり、厚みなどの定義を説明する。フレーム体1Aの厚み(記号12)は特に限定はないが、強度と軽量化のバランスから、1〜6mm程度が望ましい。5mm以下とすることが好ましく、より好ましくは4mm以下である。開断面の高さ(記号13)は特に限定はないが、好ましくは10mm以上、100mm以下、より好ましくは40mm以上、60mm以下である。開断面の幅(記号14)は10mm以上、100mm以下、より好ましくは20mm以上、40mm以下である。接合部の幅(記号15)は接合が可能であれば良いが、具体的には5mm以上、50mm以下、より好ましくは10mm以上、30mm以下である。これらはフレーム体において一様であっても、フレームの部位によって適宜選択しても良い。このような形状とすることにより、フレーム体の変形性を高めることができるため、効率的なエネルギー吸収が可能となる。
【0022】
断面形状について、例えば型を用いたプレス成形を行う観点から本発明の目的を損なわない範囲で抜き勾配を任意に加えることもできる。フレーム体1Aの内部には、ハニカム材、発泡樹脂、紙などを充填することも可能である。
【0023】
[パネル体]
本発明のシートバックフレーム構造におけるシートバックフレーム1が、例えば第1または第3の実施形態のようにパネル体1Bとその外周部に配置されたフレーム体1Aを有している場合、パネル体1Bは軽量でエネルギー吸収に優れていれば良く、金属、樹脂などから選択できる。金属の場合は高張力鋼鈑やアルミなどが好ましい。樹脂の場合は、成形性、生産性、加工性に優れる点から熱可塑性樹脂であることが好ましい。さらにパネル体1Bは繊維強化複合材料であってもよく、強化繊維として有機長繊維、マトリックスとして熱可塑性樹脂を含む繊維強化複合材料とすることが好ましい。
【0024】
パネル体1Bは略平板形状であり、一枚板であっても積層体であっても良い。積層体の場合は、同種部材の積層であっても、異種部材の積層体やサンドイッチ構造であっても良い。また、必要に応じてリブを設けることも出来る。パネル体1Bの厚みはとくに限定はないが、強度と軽量化のバランスから、1〜5mm程度が望ましい。
【0025】
[モノコック形状体]
本発明のシートバックフレーム構造におけるシートバックフレーム1が例えば第2の実施形態のようにモノコック形状体1Cである場合、モノコック形状体1Cはコア体1Eの周囲にスキン体1Dを配置した構造体であることが好ましい。(図6〜9に具体例を示す。)スキン体1Dはコア体1Eを完全に被覆していることが好ましいが、一部が露出していても良い。スキン体1Dは繊維強化複合材料で構成するのが好ましく、コア体1Eはハニカム材、発泡樹脂、紙など低比重の材料で構成するのが好ましい。スキン体1Dとコア体1Eは型内で一体成形されていてもよく、複数に分割されたスキン体1Dとコア体1Eが組み合わされて構成されていても良い。モノコック形状体1Cの厚みはとくに限定はないが、強度と軽量化のバランスから、10〜100mm程度が望ましい。スキン体1Eの厚みもとくに限定はないが、強度と軽量化のバランスから、1〜6mm程度が望ましい。スキン体1Eの厚みは、5mm以下とすることが好ましく、より好ましくは4mm以下である。
【0026】
[リトラクタ支持ブラケット]
リトラクタ支持ブラケット6は、リトラクタ2を固定するためのリトラクタ締結部4をもつ金属製の部材であり、鉄やアルミが好ましく用いられる。リトラクタ2の締結方法として、ボルト・ナット接合が好ましく用いられる。製造方法としては、切削加工、プレス加工方法、鋳造方法などが好ましく用いられ、複数の金属部材が溶接、リベット、ボルト・ナット、接着などの方法によって接合されていても良い。厚みは特に限定は無いが、5mm以下の金属板で製造されるのが好ましく、厚み1〜3mmが特に好ましい。必要な強度を確保した上で、軽量化のための肉抜き加工や減肉加工が施されていても良い。
【0027】
リトラクタ締結部4は少なくとも1つ以上があればよく、リトラクタ2のガタつきを抑えるための補助的な締結部4Bがあっても良い。この場合、補助的な締結部4Bに作用する荷重は主たる締結部4に比べて小さくなるため、補助的な締結部4Bはリトラクタ支持ブラケット6上に一体化されても良いし、リトラクタ支持ブラケット6以外の部位、例えばシートバックフレーム1上に設けられても良い。本発明で重要なのは、主たるリトラクタ締結部4がリトラクタ支持ブラケット6上に設けられているということである。
【0028】
リトラクタ支持ブラケット6は図2〜図5に示すようにシートベルト5を通す中空構造(A)9を有しても良く、この場合はシートベルト5による張力を効率的に受け止めることができるため、リトラクタ支持ブラケット6の板厚を減らすことが可能となり、一層の軽量化が実現できる。この場合、中空構造の幅と高さはシートベルトのタングの寸法よりも大きくするのが好ましく、高さ10〜30mm程度、幅60〜90mm程度とするのが好ましい。
【0029】
リトラクタ支持ブラケット6は図2〜図5に示すように締結部補強のための中空構造(B)10を有していても良く、この場合も前述のシートベルト5による張力を効率的に受け止めることができるため、リトラクタ支持ブラケット6の板厚を減らすことが可能となり、一層の軽量化が実現できる。この場合、中空構造の高さと幅は任意で選択可能であるが、幅10〜70mm程度、高さ1〜20mm程度とするのが好ましい。
【0030】
[リトラクタ支持ブラケットのシートバックフレームへの取り付け方法]
リトラクタ支持ブラケット6には、シートベルト5の張力に起因する大荷重が作用することから、少なくとも嵌合を含む方法によってシートバックフレーム1に接合されるのが好ましい。この場合、図5に示すように開断面形状を有するフレーム体1Aの内面にリトラクタ支持ブラケットの一部11を嵌合させても良く、図9や図13に示すように凹部を有するモノコック形状体1Cやフレーム体1Aにリトラクタ支持ブラケットの一部11を嵌合させても良い。リトラクタ支持ブラケット6をシートバックフレーム1に確実に固定するためには、リトラクタ支持ブラケットがシートバックフレームを構成する部材の一部に挟み込まれて固定されていることが好ましく、さらにはシートバックフレーム1が接合された複数の部材で構成されており、リトラクタ支持ブラケット6が該部材のうち少なくとも2つに挟み込まれていることも好ましい。この場合、シートバックフレーム1がパネル体1Bとその外周部に配置されたフレーム体1Aを有し、リトラクタ支持ブラケット6がパネル体1Bとフレーム体1Aとに挟み込まれた構造とすることもできる。このような構造とすることにより、車両衝突時にシートベルト5に作用する車両進行方向への荷重を高強度なフレーム体1Aに効率的に伝達することが可能となる。
【0031】
リトラクタ支持ブラケット6をシートバックフレーム1に接合するにあたっては、嵌合に加え、接着、溶着、機械的締結などを併用することが望ましい。また、あらかじめ製造したリトラクタ支持ブラケット6をインサート部品として型内に挿入し、インサート成形によって型内で接合することも可能である。この際、リトラクタ支持ブラケット6に接合強度を高めるための表面処理を施すことも可能である。
【0032】
[シートベルト支持用部材]
シートベルト5はリトラクタ2からシート上方へ巻きだされた後、シートベルト支持用部材3を介して車両前方方向へ引き出されるが、その際に、シートベルト支持用部材3は独立した構造物であっても良く、リトラクタ2を構成する部品の一部がその機能を有しても良く、リトラクタ支持ブラケット6の一部がその機能を有しても良い。また、シートバックフレーム1の一部や、それに付属する部品の一部がその機能を有しても良い。
【0033】
[本発明が適用可能な部位]
本発明のシートバックフレーム構造は、ワゴン型車両やハッチバック型車両のリアシートに好適に適用することが可能だが、それ以外の車両、例えばセダン型車両に適用しても良い。また、フロントシートに適用することも可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 シートバックフレーム
1A フレーム体
1B パネル体
1C モノコック形状体
1D スキン体
1E コア体
2 リトラクタ
3 シートベルト支持用部材
4 リトラクタ締結部
4B リトラクタ締結部(補助)
5 シートベルト
6 リトラクタ支持ブラケット
7 ヒンジ機構取り付け部
8 保持機構取り付け部
9 中空構造(A)
10 中空構造(B)
11 嵌合部
12 フレーム体の厚み
13 開断面の高さ
14 開断面の幅
15 開断面の接合部の幅
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主たる構造が繊維強化複合材料からなるシートバックフレームと、金属製のリトラクタ支持ブラケットとを備え、リトラクタが該リトラクタ支持ブラケットを介して該シートバックフレームに取り付けられた車両用シートバックフレーム構造であって、該リトラクタ支持ブラケットが該シートバックフレームに少なくとも嵌合を含む接合方法で取り付けられていることを特徴とする車両用シートバックフレーム構造。
【請求項2】
該リトラクタ支持ブラケットが該シートバックフレームを構成する部材の一部に挟み込まれて固定されている請求項1記載の車両用シートバックフレーム構造。
【請求項3】
該シートバックフレームが接合された複数の部材で構成されており、該リトラクタ支持ブラケットが該部材のうち少なくとも2つに挟み込まれて固定されている請求項2記載の車両用シートバックフレーム構造。
【請求項4】
該シートバックフレームがパネル体とその外周部に配置されたフレーム体を有し、該リトラクタ支持ブラケットが該パネル体と該フレーム体とに挟み込まれて固定されている請求項3記載の車両用シートバックフレーム構造。
【請求項5】
該リトラクタ支持ブラケットがシートベルトを通す中空構造(A)を有している請求項1〜4のいずれかに記載の車両用シートバックフレーム構造。
【請求項6】
該リトラクタ支持ブラケットがリトラクタ締結部補強のための中空構造(B)を有している請求項1〜5のいずれかに記載の車両用シートバックフレーム構造。
【請求項7】
該繊維強化複合材料の強化繊維が炭素繊維である請求項1〜6のいずれかに記載の車両用シートバックフレーム構造。
【請求項8】
該繊維強化複合材料のマトリックス樹脂が熱可塑性樹脂である請求項1〜7のいずれかに記載の車両用シートバックフレーム構造。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の車両用シートバックフレーム構造該シートバックフレーム構造の、ワゴン型車両またはハッチバック型車両のリアシートへの使用。
【請求項1】
主たる構造が繊維強化複合材料からなるシートバックフレームと、金属製のリトラクタ支持ブラケットとを備え、リトラクタが該リトラクタ支持ブラケットを介して該シートバックフレームに取り付けられた車両用シートバックフレーム構造であって、該リトラクタ支持ブラケットが該シートバックフレームに少なくとも嵌合を含む接合方法で取り付けられていることを特徴とする車両用シートバックフレーム構造。
【請求項2】
該リトラクタ支持ブラケットが該シートバックフレームを構成する部材の一部に挟み込まれて固定されている請求項1記載の車両用シートバックフレーム構造。
【請求項3】
該シートバックフレームが接合された複数の部材で構成されており、該リトラクタ支持ブラケットが該部材のうち少なくとも2つに挟み込まれて固定されている請求項2記載の車両用シートバックフレーム構造。
【請求項4】
該シートバックフレームがパネル体とその外周部に配置されたフレーム体を有し、該リトラクタ支持ブラケットが該パネル体と該フレーム体とに挟み込まれて固定されている請求項3記載の車両用シートバックフレーム構造。
【請求項5】
該リトラクタ支持ブラケットがシートベルトを通す中空構造(A)を有している請求項1〜4のいずれかに記載の車両用シートバックフレーム構造。
【請求項6】
該リトラクタ支持ブラケットがリトラクタ締結部補強のための中空構造(B)を有している請求項1〜5のいずれかに記載の車両用シートバックフレーム構造。
【請求項7】
該繊維強化複合材料の強化繊維が炭素繊維である請求項1〜6のいずれかに記載の車両用シートバックフレーム構造。
【請求項8】
該繊維強化複合材料のマトリックス樹脂が熱可塑性樹脂である請求項1〜7のいずれかに記載の車両用シートバックフレーム構造。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の車両用シートバックフレーム構造該シートバックフレーム構造の、ワゴン型車両またはハッチバック型車両のリアシートへの使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−162225(P2012−162225A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25995(P2011−25995)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】
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