説明

車両用シート及び車両用シート装置

【課題】呼吸センサからの出力信号を安定させることが課題である。
【解決手段】車両用シート12は、シートバック18のクッション層を構成する軟質ウレタンフォーム22と、フィルム状の圧力センサとされ、シートバック18におけるシート幅方向中央部であって着座乗員の胸郭60に対応する高さに配置されると共に、軟質ウレタンフォーム22のシート前側に設けられた呼吸センサ26と、軟質ウレタンフォーム22よりも硬質とされ、呼吸センサ26の全体をシート前側から覆う硬質ウレタンフォーム28と、硬質ウレタンフォーム28よりも軟質とされ、硬質ウレタンフォーム28の全体をシート前側から覆うスラブウレタンフォーム30と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シート及び車両用シート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルム状(シート状)の圧力センサをシートバックの上部に備えた車両用シートが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−165588号公報
【特許文献2】特開2010−104570号公報
【特許文献3】特開2011−131857号公報
【特許文献4】特開平9−276070号公報
【特許文献5】特開2004−148985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記車両用シートでは、例えば、乗員の着座姿勢によっては、この乗員から圧力センサにシート幅方向一方側に偏って荷重が入力される可能性がある。この場合には、圧力センサの全体に荷重が入力された場合に比して、圧力センサからの出力信号の値が低くなる虞がある。従って、上記車両用シートでは、乗員の着座姿勢によって圧力センサからの出力信号が変化し、圧力センサからの出力信号が安定しない虞がある。
【0005】
特に、この圧力センサを呼吸センサとして用い、この呼吸センサからの出力信号に基づいて着座乗員の呼吸の間隔を精度良く検出する場合には、呼吸センサの出力信号を安定させることが望まれる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、呼吸センサからの出力信号を安定させることができる車両用シートを提供することにある。
【0007】
また、本発明の他の目的は、着座乗員の呼吸の間隔を精度良く検出することができる車両用シート装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、請求項1及び請求項5に記載の車両用シートは、シートバックのクッション層を構成する軟質ウレタンフォームと、フィルム状の圧力センサとされ、前記シートバックにおけるシート幅方向中央部であって着座乗員の胸郭に対応する高さに配置されると共に、前記軟質ウレタンフォームのシート前側に設けられた呼吸センサと、前記軟質ウレタンフォームよりも硬質とされ、前記呼吸センサの全体をシート前側から覆う硬質ウレタンフォームと、を備えている。
【0009】
この車両用シートによれば、呼吸センサは、シートバックにおけるシート幅方向中央部であって着座乗員の胸郭に対応する高さに配置されており、シートバックのクッション層を構成する軟質ウレタンフォームのシート前側に設けられている。そして、この呼吸センサの全体は、軟質ウレタンフォームよりも硬質とされた硬質ウレタンフォームによってシート前側から覆われている。
【0010】
従って、例えば、着座乗員からシートバックにシート幅方向一方側に偏って荷重が入力された場合でも、この乗員からの荷重を硬質ウレタンフォームを介して呼吸センサの全体に入力させることができる。これにより、乗員の着座姿勢による影響を抑制することができるので、呼吸センサからの出力信号を安定させることができる。
【0011】
なお、軟質ウレタンフォームにおける『軟質』は、硬質ウレタンフォームに比べて軟らかいとの相対的な意味であり、絶対的且つ具体的な軟らかさを意味するものではない。
【0012】
加えて、請求項1に記載の車両用シートは、前記硬質ウレタンフォームよりも軟質とされ、前記硬質ウレタンフォームの全体をシート前側から覆うスラブウレタンフォームをさらに備えている。これにより、シートバックの感触を良好にすることができ、ひいては、車両用シートの着座感(座り心地)を向上させることができる。
【0013】
なお、この場合の硬質ウレタンフォームの全体とは、略全体も含まれる趣旨である。また、例えば、スラブウレタンフォームの一部に孔が形成されている場合であっても、このスラブウレタンフォームは、硬質ウレタンフォームの全体を覆うものである。
【0014】
請求項2に記載の車両用シートは、請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記スラブウレタンフォームにシート前側から重ね合わされると共に、前記シートバックをシート前側から見た場合に少なくとも一部が前記呼吸センサと重なり合う面状ヒータをさらに備えている。
【0015】
この車両用シートによれば、面状ヒータを備えているが、この面状ヒータは、スラブウレタンフォームにシート前側から重ね合わされている。従って、例えば電熱線により面状ヒータにおける呼吸センサ側の面に凹凸が形成されていても、この凹凸をスラブウレタンフォームにより吸収させることができる。
【0016】
また、仮に、面状ヒータの凹凸をスラブウレタンフォームにより吸収できない場合でも、スラブウレタンフォームのシート後側には、このスラブウレタンフォームよりも硬質とされた硬質ウレタンフォームが配置されているので、面状ヒータの凹凸による影響を抑制して着座乗員からの荷重を呼吸センサの全体に入力させることができる。以上より、シートバックへの呼吸センサの搭載と面状ヒータの搭載とを両立させることができると共に、呼吸センサからの出力信号の安定状態を確保することができる。
【0017】
さらに、スラブウレタンフォームが面状ヒータと呼吸センサとの間に介在物として配置されるので、呼吸センサへの熱の影響を抑制することができる。
【0018】
請求項3に記載の車両用シートは、請求項2に記載の車両用シートにおいて、前記面状ヒータにおけるシート幅方向両側の端部が、前記呼吸センサにおけるシート幅方向両側の端部よりもシート幅方向外側に位置された構成とされている。
【0019】
この車両用シートによれば、面状ヒータにおけるシート幅方向両側の端部は、呼吸センサにおけるシート幅方向両側の端部よりもシート幅方向外側に位置されている。これにより、面状ヒータによる加熱領域の拡大を図ることができる。
【0020】
請求項4に記載の車両用シートは、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の車両用シートにおいて、前記硬質ウレタンフォームが、表面側から裏面側まで連通する多数の孔を有する三次元ネット状に形成された構成とされている。
【0021】
この車両用シートによれば、硬質ウレタンフォームは、表面側から裏面側まで連通する多数の孔を有する三次元ネット状に形成されている。これにより、例えば、この多数の孔を送風部からの送風通路に利用することができるので、空調機能との搭載両立性を図ることができる。
【0022】
加えて、請求項5に記載の車両用シートにおいても、前記硬質ウレタンフォームが、表面側から裏面側まで連通する多数の孔を有する三次元ネット状に形成されている。従って、例えば、この多数の孔を送風部からの送風通路に利用することができるので、空調機能との搭載両立性を図ることができる。
【0023】
請求項6に記載の車両用シートは、請求項4又は請求項5に記載の車両用シートにおいて、前記多数の孔を通じてシート前側に送風する送風部をさらに備えている。
【0024】
この車両用シートによれば、送風部が備えられているので、硬質ウレタンフォームにおける多数の孔を通じて送風部からシート前側に送風することができる。これにより、シートバックに支持された乗員の上体を冷却することができるので、車両用シートの快適性を向上させることができる。
【0025】
請求項7に記載の車両用シートは、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の車両用シートにおいて、前記軟質ウレタンフォームが、前記呼吸センサのシート後側に設けられると共に前記軟質ウレタンフォームにおける他の部位よりも軟質とされた軟質パッドを有する構成とされている。
【0026】
この車両用シートによれば、軟質ウレタンフォームは、呼吸センサのシート後側に設けられた軟質パッドを有している。この軟質パッドは、軟質ウレタンフォームにおける他の部位(軟質パッド以外の部位)よりも軟質とされている。従って、この軟質パッドにより呼吸センサのシート前後方向(シートバックの厚み方向)の撓み量を確保することができるので、呼吸センサからの出力信号をより一層安定させることができる。
【0027】
請求項8に記載の車両用シートは、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の車両用シートにおいて、前記呼吸センサが、前記シートバックをシート高さ方向に上側領域、中央上側領域、中央下側領域、及び、下側領域に均等に区分けした場合に、前記中央下側領域内に配置された構成とされている。
【0028】
この車両用シートによれば、呼吸センサは、シートバックにおける上側領域、中央上側領域、中央下側領域、及び、下側領域のうちの中央下側領域内に配置されている。これにより、呼吸センサが着座乗員の胸郭に対応する高さ、特に、着座乗員の横隔膜における背中側の端部により近い位置に配置されるので、着座乗員の呼吸の間隔をより一層精度良く検出することが可能になる。
【0029】
なお、請求項9に記載の車両用シートのように、上述の中央下側領域は、車両用シートに正規の姿勢で着座する日本成人女性の5パーセンタイルダミーから米国成人男性の95パーセンタイルダミーにおける第一腰椎から第二腰椎に至る部位に対応する高さとされていると好適である。
【0030】
また、前記課題を解決するために、請求項10に記載の車両用シート装置は、請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の車両用シートと、前記呼吸センサから出力された出力信号に基づいて着座乗員の呼吸の間隔を算出する回路ユニットと、を備えている。
【0031】
この車両用シート装置によれば、呼吸センサから得られた安定した出力信号に基づいて着座乗員の呼吸の間隔を算出するので、着座乗員の呼吸の間隔を精度良く検出することができる。
【発明の効果】
【0032】
以上詳述したように、本発明の車両用シートによれば、呼吸センサからの出力信号を安定させることができる。
【0033】
また、本発明の車両用シート装置によれば、着座乗員の呼吸の間隔を精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用シート装置の側面図である。
【図2】図1に示されるシートバックの平面断面図である。
【図3】図1に示される呼吸センサの出力信号の波形を示す図である。
【図4】図1に示される車両用シートの第一変形例を示す断面図である。
【図5】図1に示される車両用シートの第二変形例を示す断面図である。
【図6】図1に示される車両用シート装置の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
【0036】
なお、各図において示される矢印FR、矢印UP、矢印OUTは、シート前後方向前側、シート高さ方向上側、シート幅方向外側をそれぞれ示している。
【0037】
図1に示されるように、本発明の一実施形態に係る車両用シート装置10は、車両用シート12と、回路ユニット14とを備えている。車両用シート12は、乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション16と、乗員の上体を支持するシートバック18とを備えている。
【0038】
シートバック18は、図2に示されるように、バックボード20、軟質ウレタンフォーム22、シートフレーム24、呼吸センサ26、硬質ウレタンフォーム28、スラブウレタンフォーム30、面状ヒータ32、カバーパッド34、及び、シート表皮36を備えている。
【0039】
バックボード20は、シートバック18の背面部を構成しており、後述する軟質ウレタンフォーム22をシート後側から覆っている。
【0040】
軟質ウレタンフォーム22は、シートバック18のクッション層を構成している。この軟質ウレタンフォーム22は、シートバック18のシート幅方向中央部に配置されたクッション本体部38と、このクッション本体部38のシート幅方向両側に配置されたサイドクッション部40とを有している。クッション本体部38とサイドクッション部40との境界部には、シート前側に開口しシート高さ方向に延びる溝部42がそれぞれ形成されている。
【0041】
シートフレーム24は、軟質ウレタンフォーム22を支持している。なお、図2では、シートフレーム24のうち、クッション本体部38に対するシート幅方向両側に配置されシート高さ方向に延びる一対のサイドフレーム部44のみが図示されているが、シートフレーム24は、この一対のサイドフレームを連結する連結フレーム等を有して構成されている。
【0042】
呼吸センサ26は、フィルム状の圧力センサとされている。この呼吸センサ26は、シートバック18におけるシート幅方向中央部であって着座乗員の胸郭60(図1参照)に対応する高さに配置されている。
【0043】
つまり、この呼吸センサ26は、図1に示されるように、シートバック18をシート高さ方向に上側領域18A、中央上側領域18B、中央下側領域18C、及び、下側領域18Dに均等に区分けした場合に、中央下側領域18C内に配置されている。この中央下側領域18Cは、車両用シート12に正規の姿勢で着座する日本成人女性の5パーセンタイルダミーから米国成人男性の95パーセンタイルダミーにおける第一腰椎から第二腰椎(図1の符合62,64参照)に至る部位に対応する高さとされている。
【0044】
また、この呼吸センサ26は、図2に示されるように、クッション本体部38(軟質ウレタンフォーム22)のシート前側に設けられている。この呼吸センサ26は、クッション本体部38にシート前側に開口して形成された凹部38Aに収容されており、この凹部38Aの底部38Bは、シート後側に凸を成すように緩やかに湾曲されて形成されている。そして、この底部38Bの湾曲に倣って、フィルム状とされた呼吸センサ26も、シート後側に凸を成すように湾曲されている。
【0045】
硬質ウレタンフォーム28は、軟質ウレタンフォーム22よりも硬質とされている。この硬質ウレタンフォーム28は、クッション本体部38よりもシート幅方向に幅狭とされており、シートバック18におけるシート幅方向中央部に配置されている。
【0046】
この硬質ウレタンフォーム28は、呼吸センサ26よりも大きく形成されており、呼吸センサ26の全体をシート前側から覆っている。そして、この硬質ウレタンフォーム28におけるシート幅方向両側の端部は、呼吸センサ26におけるシート幅方向両側の端部よりもシート幅方向外側に位置されている。また、この硬質ウレタンフォーム28における上端部及び下端部は、呼吸センサ26における上端部及び下端部よりも上側及び下側にそれぞれ位置されている(図1参照)。
【0047】
スラブウレタンフォーム30は、硬質ウレタンフォーム28よりも軟質とされている。このスラブウレタンフォーム30は、クッション本体部38の前面の全体に亘って設けられており、硬質ウレタンフォーム28の全体をシート前側から覆っている。
【0048】
なお、この場合の硬質ウレタンフォーム28の全体とは、略全体も含まれる趣旨である。また、例えば、スラブウレタンフォーム30の一部に孔が形成されている場合であっても、このスラブウレタンフォーム30は、硬質ウレタンフォーム28の全体を覆うものである。
【0049】
面状ヒータ32は、電熱線入りとされており、スラブウレタンフォーム30にシート前側から重ね合わされている。この面状ヒータ32は、クッション本体部38におけるシート幅方向の一端側から他端側に亘って設けられると共に、シート高さ方向に呼吸センサ26と対応する位置に配置されている。また、この面状ヒータ32は、呼吸センサ26よりもシート幅方向に幅広とされており、この面状ヒータ32におけるシート幅方向両側の端部は、呼吸センサ26におけるシート幅方向両側の端部よりもシート幅方向外側に位置されている。
【0050】
また、この面状ヒータ32における上端部及び下端部は、呼吸センサ26における上端部及び下端部よりも上側及び下側にそれぞれ位置されている(図1参照)。つまり、この面状ヒータ32は、シートバック18をシート前側から見た場合に、呼吸センサ26の全体と重なり合う大きさ及び配置とされている。なお、この面状ヒータ32は、シートバック18をシート前側から見た場合に少なくとも一部が呼吸センサ26と重なり合う大きさ及び配置とされていても良い。
【0051】
カバーパッド34は、例えば、ウレタンパッド等により構成されている。このカバーパッド34は、面状ヒータ32のシート前側に設けられており、クッション本体部38の前面の全体をシート前側から覆っている。また、シート表皮36は、カバーパッド34の全体をシート前側から覆っており、サイドクッション部40の全体を覆う図示しないシート表皮と上述の溝部42の内側において縫製されている。
【0052】
図1に示される回路ユニット14は、呼吸センサ26から出力された出力信号に基づいて着座乗員の呼吸の間隔を算出するものであり、例えば、CPU等を有する電子回路により構成されている。この回路ユニット14は、車両用シート12以外の場所に設置されるか、又は、車両用シート12に一体に組み付けられる。
【0053】
次に、上記構成とされた車両用シート装置10の動作を説明する。
【0054】
車両用シート12に着座する乗員が息を吸うと、この乗員の上体が膨らみ、カバーパッド34、面状ヒータ32、スラブウレタンフォーム30、及び、硬質ウレタンフォーム28を介して呼吸センサ26に荷重が入力される。また、乗員が息を吐くと、この乗員の上体が萎み、これに伴って呼吸センサ26に入力されていた荷重が解放される。
【0055】
呼吸センサ26に荷重が入力されると、この呼吸センサ26からの出力信号の値が上昇し、呼吸センサ26に入力されていた荷重が弱まると、この呼吸センサ26からの出力信号の値が減少する。
【0056】
つまり、図3の信号波形で示されるように、着座乗員が息を吸っている期間T1では、呼吸センサ26からの出力信号Sの値が上昇し、着座乗員が息を吐いている期間T2では、呼吸センサ26からの出力信号Sの値が減少する。なお、期間T3は、着座乗員が呼吸をしてから次の呼吸を開始するまでの移行期間である。
【0057】
そして、図1に示される回路ユニット14は、上述の呼吸センサ26からの出力信号に基づいて着座乗員の呼吸の間隔を算出する。つまり、例えば、この回路ユニット14は、図3に示される如く着座乗員が呼吸をする度に得られる出力信号Sのピーク値P1が得られてから次のピーク値P2が得られるまでの間の時間tを、着座乗員の呼吸の間隔としてカウンタ回路等によりカウントする。
【0058】
この回路ユニット14により得られたカウント値、すなわち、着座乗員の呼吸の間隔を表す値は、この回路ユニット14やその他の制御ユニット等において図示しない駆動装置等を制御するのに利用される。
【0059】
次に、本発明の一実施形態の作用及び効果について説明する。
【0060】
以上詳述したように、本発明の一実施形態に係る車両用シート12によれば、呼吸センサ26は、シートバック18におけるシート幅方向中央部であって着座乗員の胸郭60に対応する高さに配置されており、シートバック18のクッション層を構成する軟質ウレタンフォーム22のシート前側に設けられている。そして、この呼吸センサ26の全体は、軟質ウレタンフォーム22よりも硬質とされた硬質ウレタンフォーム28によってシート前側から覆われている。
【0061】
従って、例えば、着座乗員からシートバック18にシート幅方向一方側に偏って荷重が入力された場合でも、この乗員からの荷重を硬質ウレタンフォーム28を介して呼吸センサ26の全体に入力させることができる。これにより、乗員の着座姿勢による影響を抑制することができるので、呼吸センサ26からの出力信号を安定させることができる。
【0062】
つまり、仮に、硬質ウレタンフォーム28が省かれた状態で、乗員からシートバック18にシート幅方向一方側に偏って荷重が入力された場合には、呼吸センサ26に入力された荷重の分布が不均一となる。従って、図3の出力信号S1で示されるように、出力信号S1の波形が乱れたりピーク値が低くなったりする虞がある。これに対し、本発明の一実施形態に係る車両用シート12によれば、呼吸センサ26の全体に荷重が入力されるので、呼吸センサ26に入力された荷重の分布が均一となる。従って、出力信号Sの波形を良好にできると共にピーク値も高くすることができる。
【0063】
しかも、この呼吸センサ26は、シート後側に凸を成すように湾曲して形成されている。従って、呼吸センサ26が着座乗員の上体に沿った形状とされるので、呼吸センサ26からの出力信号をより一層安定させることができる。
【0064】
また、この車両用シート12を備えた車両用シート装置10によれば、呼吸センサ26から得られた安定した出力信号に基づいて着座乗員の呼吸の間隔を算出するので、着座乗員の呼吸の間隔を精度良く検出することができる。
【0065】
しかも、呼吸センサ26は、シートバック18における上側領域18A、中央上側領域18B、中央下側領域18C、及び、下側領域18Dのうちの中央下側領域18C内に配置されている。これにより、呼吸センサ26が着座乗員の胸郭60に対応する高さに配置されるので、着座乗員の呼吸の間隔を精度良く検出することが可能になる。
【0066】
特に、この中央下側領域18Cは、車両用シート12に正規の姿勢で着座する日本成人女性の5パーセンタイルダミーから米国成人男性の95パーセンタイルダミーにおける第一腰椎から第二腰椎(図1の符合62,64参照)に至る部位に対応する高さとされている。これにより、呼吸センサ26が着座乗員の横隔膜66における背中側の端部66Aにより近い位置に配置されるので、着座乗員の呼吸の間隔をより一層精度良く検出することが可能になる。
【0067】
また、硬質ウレタンフォーム28の全体は、この硬質ウレタンフォーム28よりも軟質とされスラブウレタンフォーム30によってシート前側から覆われている。これにより、シートバック18の感触を良好にすることができ、ひいては、車両用シート12の着座感(座り心地)を向上させることができる。
【0068】
また、車両用シート12は、電熱線入りの面状ヒータ32を備えているが、この面状ヒータ32は、スラブウレタンフォーム30にシート前側から重ね合わされている。従って、電熱線により面状ヒータ32における呼吸センサ26側の面に凹凸が形成されていても、この凹凸をスラブウレタンフォーム30により吸収させることができる。
【0069】
また、仮に、面状ヒータ32の凹凸をスラブウレタンフォーム30により吸収できない場合でも、スラブウレタンフォーム30のシート後側には、このスラブウレタンフォーム30よりも硬質とされた硬質ウレタンフォーム28が配置されているので、面状ヒータ32の凹凸による影響を抑制して着座乗員からの荷重を呼吸センサ26の全体に入力させることができる。以上より、シートバック18への呼吸センサ26の搭載と面状ヒータ32の搭載とを両立させることができると共に、呼吸センサ26からの出力信号の安定状態を確保することができる。
【0070】
さらに、呼吸センサ26及び硬質ウレタンフォーム28の異物感を抑制することができる。また、スラブウレタンフォーム30が面状ヒータ32と呼吸センサ26との間に介在物として配置されるので、呼吸センサ26への熱の影響を抑制することができる。
【0071】
また、面状ヒータ32におけるシート幅方向両側の端部は、呼吸センサ26におけるシート幅方向両側の端部よりもシート幅方向外側に位置されている。これにより、面状ヒータ32による加熱領域の拡大を図ることができる。
【0072】
次に、本発明の一実施形態の変形例について説明する。
【0073】
上記実施形態において、硬質ウレタンフォーム28は、表面側から裏面側まで連通する多数の孔を有する三次元ネット状に形成されていても良い。
【0074】
また、図4に示されるように、硬質ウレタンフォーム28が三次元ネット状に形成された場合に、この硬質ウレタンフォーム28のシート後側にダクト状の送風部50が備えられても良い。そして、このダクト状の送風部50に図示しない送風機が接続され、硬質ウレタンフォーム28における多数の孔が送風部50からの送風通路として利用されても良い。
【0075】
このように構成されていると、硬質ウレタンフォーム28における多数の孔を通じて送風部50からシート前側に送風することができる。これにより、シートバック18に支持された乗員の上体を冷却することができるので、車両用シート12の快適性を向上させることができる。
【0076】
なお、上述のダクト状の送風部50と接続された送風機は、車両用シート12に内蔵されても良いし、車両用シート12の外側に設けられても良い。また、送風部50は、図示しない送風機と接続されたダクトとされる以外に、シートバック18に内蔵された送風機とされていても良い。
【0077】
また、上記実施形態において、軟質ウレタンフォーム22は、図5に示されるように、呼吸センサ26のシート後側に設けられた軟質パッド52を有していても良い。この軟質パッド52は、軟質ウレタンフォーム22における他の部位54よりも軟質とされている。
【0078】
このように構成されていると、この軟質パッド52により呼吸センサ26のシート前後方向(シートバック18の厚み方向)の撓み量を確保することができるので、呼吸センサ26からの出力信号をより一層安定させることができる。なお、この場合に、軟質パッド52は、シートバック18をシート後側から見た場合に、呼吸センサ26の全体と重なり合う大きさ及び配置とされていると、呼吸センサ26の撓み量をより効果的に確保することができるので好適である。
【0079】
また、上記実施形態において、車両用シート12には、図6に示されるように、中央上側領域18Bに配置された補助センサ56が設けられていても良い。この補助センサ56は、呼吸センサ26と同様のフィルム状の圧力センサとされており、着座乗員の胸郭60に対応する高さに配置されると共に、軟質ウレタンフォーム22のシート前側に設けられている。また、この補助センサ56も、呼吸センサ26と同様に、シート前側から硬質ウレタンフォーム28によって全体に覆われている。
【0080】
そして、この場合に、回路ユニット14は、呼吸センサ26及び補助センサ56のうち出力信号の波形が良好であるか又はピーク値が高い方のセンサからの出力信号に基づいて着座乗員の呼吸の間隔を算出しても良い。このように構成されていると、着座乗員の呼吸の間隔をより精度良く検出することができる。
【0081】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0082】
10 車両用シート装置
12 車両用シート
14 回路ユニット
18 シートバック
18A 上側領域
18B 中央上側領域
18C 中央下側領域
18D 下側領域
22 軟質ウレタンフォーム
26 呼吸センサ
28 硬質ウレタンフォーム
30 スラブウレタンフォーム
32 面状ヒータ
34 カバーパッド
36 シート表皮
50 送風部
52 軟質パッド
54 他の部位
56 補助センサ
60 胸郭
62 第一腰椎
64 第二腰椎
66 横隔膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックのクッション層を構成する軟質ウレタンフォームと、
フィルム状の圧力センサとされ、前記シートバックにおけるシート幅方向中央部であって着座乗員の胸郭に対応する高さに配置されると共に、前記軟質ウレタンフォームのシート前側に設けられた呼吸センサと、
前記軟質ウレタンフォームよりも硬質とされ、前記呼吸センサの全体をシート前側から覆う硬質ウレタンフォームと、
前記硬質ウレタンフォームよりも軟質とされ、前記硬質ウレタンフォームの全体をシート前側から覆うスラブウレタンフォームと、
を備えた車両用シート。
【請求項2】
前記スラブウレタンフォームにシート前側から重ね合わされると共に、前記シートバックをシート前側から見た場合に少なくとも一部が前記呼吸センサと重なり合う面状ヒータを備えた、
請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記面状ヒータにおけるシート幅方向両側の端部は、前記呼吸センサにおけるシート幅方向両側の端部よりもシート幅方向外側に位置されている、
請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記硬質ウレタンフォームは、表面側から裏面側まで連通する多数の孔を有する三次元ネット状に形成されている、
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の車両用シート。
【請求項5】
シートバックのクッション層を構成する軟質ウレタンフォームと、
フィルム状の圧力センサとされ、前記シートバックにおけるシート幅方向中央部であって着座乗員の胸郭に対応する高さに配置されると共に、前記軟質ウレタンフォームのシート前側に設けられた呼吸センサと、
前記軟質ウレタンフォームよりも硬質とされ、前記呼吸センサの全体をシート前側から覆うと共に、表面側から裏面側まで連通する多数の孔を有する三次元ネット状に形成された硬質ウレタンフォームと、
を備えた車両用シート。
【請求項6】
前記多数の孔を通じてシート前側に送風する送風部を備えた、
請求項4又は請求項5に記載の車両用シート。
【請求項7】
前記軟質ウレタンフォームは、前記呼吸センサのシート後側に設けられると共に前記軟質ウレタンフォームにおける他の部位よりも軟質とされた軟質パッドを有している、
請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の車両用シート。
【請求項8】
前記呼吸センサは、前記シートバックをシート高さ方向に上側領域、中央上側領域、中央下側領域、及び、下側領域に均等に区分けした場合に、前記中央下側領域内に配置されている、
請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の車両用シート。
【請求項9】
前記中央下側領域は、前記車両用シートに正規の姿勢で着座する日本成人女性の5パーセンタイルダミーから米国成人男性の95パーセンタイルダミーにおける第一腰椎から第二腰椎に至る部位に対応する高さとされている、
請求項8に記載の車両用シート。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の車両用シートと、
前記呼吸センサから出力された出力信号に基づいて着座乗員の呼吸の間隔を算出する回路ユニットと、
を備えた車両用シート装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−112044(P2013−112044A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257482(P2011−257482)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】