説明

車両用シート空調装置

【課題】空調処理内容を簡易に構成し得る車両用シート空調装置を提供する。
【解決手段】車両用シート空調装置は、シートを空調する空調ユニット20(シート空調手段)と、各空調ユニット20を制御するシート空調ECU31と、太陽光を受けて発電するソーラバッテリ12(ソーラ発電手段)と、各シート空調ECU31と電力供給線L1を介して電力供給可能、かつ車内LAN40(車内通信線)を介して通信可能に接続され、イグニッションスイッチ14のオフ時にソーラバッテリ12からの電力を各シート空調ECU31に供給するソーラECU13(ソーラ制御手段)と、車両のドア毎に設けられ、ドアの開動作に連動してオンするドア動作連動スイッチ32とを備える。各シート空調ECU31は、イグニッションスイッチ14のオフ時に、対応するドア動作連動スイッチ32のオンを条件として、前記電力を駆動源として空調ユニット20を空調制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シート空調装置に関し、特にイグニッションスイッチのオフ時にシート毎にシート空調可能な車両用シート空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用シート空調装置として、例えば下記特許文献1に記載されているように、車両のエンジン停止時において、日射方向検出手段により検出された日射方向に基づいて、空調手段による車室内の領域毎の空調を制御するものが知られている。この特許文献1に記載された車両用シート空調装置では、車室内の領域毎に空調能力を調整して、空調と電力消費との調和を図るようにしている。
【特許文献1】特開2004−291680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載された車両用シート空調装置では、CPU(制御手段)が日射方向検出手段により検出された日射方向に基づいて、車室内の領域毎に空調装置を制御するように構成されている。このため、空調処理内容が極めて複雑化するという問題があった。
【0004】
本発明の課題は、空調処理内容を簡易に構成し得る車両用シート空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の車両用シート空調装置は、車両のシート毎に設けられ、対応するシートを空調するシート空調手段と、前記シート空調手段を制御するシート空調制御手段と、太陽光を受けて発電するソーラ発電手段と、前記シート空調制御手段と電力供給線を介して電力供給可能、かつ車内通信線を介して通信可能に接続され、イグニッションスイッチのオフ時に前記ソーラ発電手段からの電力を前記シート空調制御手段に供給するソーラ制御手段と、車両のドア毎に設けられ、前記ドアの開動作に連動してオンとなるドア動作連動スイッチとを備え、前記シート空調制御手段は、イグニッションスイッチのオフ時に前記電力を駆動源として、前記ドア動作連動スイッチのオンを条件として、オンとなったドアに対応する前記シート空調手段の空調制御を開始することを特徴とする。
【0006】
これによれば、ソーラ制御手段によって、イグニッションスイッチのオフ時に、ソーラ発電手段からの電力がシート空調制御手段に供給される。そして、シート空調制御手段によって、イグニッションスイッチのオフ時に前記電力を駆動源として、ドア動作連動スイッチのオンを条件として、オンとなったドアに対応するシート空調手段の空調制御が開始される。
【0007】
このため、ドア動作連動スイッチのオンを条件として、シート空調手段の空調処理が実行されるような処理の流れとすればよいので、その処理内容を極めて簡易に構成することができる。
【0008】
また、ドア動作連動スイッチがオンとなったドアに対応するシート空調手段のみが空調制御される。このため、ソーラ発電手段からの電力消費を良好に抑制することができる。
【0009】
本発明の実施に際して、前記各シート空調制御手段は、前記シート空調手段の空調制御を開始した後、所定時間内にイグニッションスイッチがオンされないとき、前記シート空調手段の空調制御を終了する構成にするとよい。
【0010】
これによれば、各シート空調制御手段によるシート空調手段の空調制御が開始された後、所定時間内にイグニッションスイッチがオンされないときは、シート空調手段の空調制御が終了される。このため、ソーラ発電手段からの電力消費をより一層良好に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。図1は本発明の車両用シート空調装置の一実施形態を概略的に示したブロック図であって、この車両用シート空調装置は、電源切替装置BSと複数のシート空調装置SCとで構成されている。
【0012】
電源切替装置BSは、シート空調装置SCの電源を切り替える機能を果たすものであり、メインバッテリ11、ソーラバッテリ12およびソーラECU13を備えている。シート空調装置SCは、車室内のシート(FRシート(運転席),FLシート(助手席),RRシート(後部右側席),RLシート(後部左側席))を個別に空調する機能を果たすものであり、それぞれ空調ユニット20(図2参照)とシート空調ECU31とを備えている。ソーラECU13は、各シート空調ECU31と電力供給線L1を介して電力供給可能に接続されるとともに、車内通信線としての車内LAN40(例えば、CAN)を介して通信可能に接続されている。
【0013】
メインバッテリ11は、イグニッションスイッチ14が設けられた電力供給線L2を介してソーラECU13に接続されている。ソーラバッテリ12(ソーラ発電手段)は、電力供給線L3を介してソーラECU13に接続されている。このソーラバッテリ12は、サンルーフなどの太陽光を受ける部位に組み込まれたソーラセル12a(例えば、発電能力が1000W/m)に接続されており、ソーラセル12aにより発電された電力を蓄電する。
【0014】
ソーラECU13(ソーラ制御手段)は、CPU,ROM,RAMなどからなるマイクロコンピュータを主要構成部品としており、ROM等に記憶された図3のメイン処理プログラムの実行により、シート空調装置SCの電源をメインバッテリ11とソーラバッテリ12の何れか一方に切り替える。
【0015】
このソーラECU13には、シート空調スイッチ15および内気センサ16が接続されている。シート空調スイッチ15は、そのオン操作により各空調ユニット20を作動させるためのスイッチ指示信号をソーラECU13へ出力する。内気センサ16は、車室内の内気温Trを検出してその温度信号(温度データ)をソーラECU13へ出力する。ソーラECU13は、入力されたスイッチ指示信号および温度信号を、車内LAN40を介して各シート空調ECU31へ送信する。
【0016】
各空調ユニット20は、図2にてFRシートを代表して示すように、シート内の主通路P1に設けられたペルチェモジュール21および送風機22と、シート座部およびシートバック部に埋設されたシートヒータ23とを備えている。
【0017】
主通路P1は、シート座部に形成された複数の導風通路P2を通してシート座部の上方空間に連通し、シートバック部に形成された複数の導風通路P3を通してシートバック部の前方空間に連通し、シート基部に形成された放熱通路P4を通してシートの下方空間に連通している。
【0018】
ペルチェモジュール21は、周知のペルチェ素子を有してなり、シート空調ECU31に接続されていて、シート空調スイッチ15のオン操作に応じて、上面が吸熱面(冷却側)となり下面が放熱面となるように、シート空調ECU31により通電駆動される。
【0019】
送風機22は、シート空調ECU31に接続されていて、シート空調スイッチ15のオン操作に応じて、ペルチェモジュール21により冷却された空気を導風通路P2を通してシート座部の上面部位に導き、導風通路P3を通してシートバック部の前面部位に導き、ペルチェモジュール21により加熱された空気を放熱通路P4を通してシートの下方へ放出する。
【0020】
シートヒータ23は、面状の電気ヒータであり、シート空調ECU31に接続されていて、シート空調スイッチ15のオン操作に応じて、シート空調ECU31により通電駆動される。
【0021】
各シート空調ECU31には、ドア動作連動スイッチ32が接続されている。ドア動作連動スイッチ32は、ドアの開動作でオン(閉状態)となり、オンとなってから極短い時間経過後にオフ(開状態)に切り替わるように設定されている。ドア動作連動スイッチ32のオン信号は、シート空調ECU31へ出力される。
【0022】
各シート空調ECU31(シート空調制御手段)は、CPU,ROM,RAMなどからなるマイクロコンピュータを主要構成部品としており、ROM等に記憶されている図4のシート処理プログラムの実行により、メインバッテリ11またはソーラバッテリ12の電力を駆動源として、ペルチェモジュール21および送風機22を通電駆動してシート座部およびシートバック部を冷却し、またはシートヒータ23を通電駆動してシート座部およびシートバック部を加熱する。
【0023】
次に、上記のように構成した本実施形態の作動について説明する。ソーラECU13は、ROM等に記憶された図3のメイン処理プログラムを所定の短時間毎に繰り返し実行している。
【0024】
このメイン処理プログラムは、ステップS10にてその実行が開始され、イグニッションスイッチ14のオフ時(ステップS11にて「No」)には、ステップS12にて、シート空調ECU31の電源をソーラバッテリ12に切り替える。一方、イグニッションスイッチ14のオン時(ステップS11にて「Yes」)には、ステップS13にて、シート空調ECU31の電源をメインバッテリ11に切り替える。
【0025】
各シート空調ECU31は、ROM等に記憶された図4のシート処理プログラムをそれぞれ所定の短時間毎に繰り返し実行している。
【0026】
各シート処理プログラムは、ステップS20にてその実行が開始される。車両が駐車状態にあり、乗員が車両から離れている場合には、ステップS21〜S23にて何れも「No」と判定する。したがって、各シート空調ECU31は空調ユニット20を通電駆動しない。
【0027】
乗員が車両に戻りドアを開くと、ドアの開動作でドア動作連動スイッチ32がオン(閉状態)となる。この場合、開かれたドアに対応するドア動作連動スイッチ32のみがオンとなり、開かれないドアに対応するドア動作連動スイッチ32はオフ(開状態)に維持される。
【0028】
開かれたドアに対応するシート空調ECU31は、ドア動作連動スイッチ32のオン信号を受けて、ステップS22にて「Yes」と判定し、ステップS24以降の処理を実行する。ステップS24では、タイマーに計時を開始させる。
【0029】
ステップS25では、ソーラECU13から車内LAN40を介して送信された内気センサ16による車室内の内気温Trに基づいて、内気温Trが所定の上限値Tupよりも大きいか否かを判定する。この上限値Tupは、空調ユニット20によるシートの冷却が必要と判断される温度に設定されている。内気温Trが上限値Tupよりも大きい場合(ステップS25にて「Yes」)には、ステップS26にてシートを冷却、すなわち空調ユニット20におけるペルチェモジュール21および送風機22を通電駆動する。
【0030】
これに対して、内気温Trが上限値Tup以下である場合(ステップS25にて「No」)には、ステップS27にて内気温Trが所定の下限値Tlow未満であるか否かを判定する。この下限値Tlowは、空調ユニット20によるシートの加熱が必要と判断される温度に設定されている。内気温Trが下限値Tlow未満である場合(ステップS27にて「Yes」)には、ステップS28にてシートを加熱、すなわち空調ユニット20におけるシートヒータ23を通電駆動する。
【0031】
なお、内気温Trが下限値Tlow以上かつ上限値Tup以下である場合(ステップS27にて「No」)には、車室内の温度による快適性が保たれているものと推定され、シートの空調を行わない。
【0032】
以降、イグニッションスイッチ14のオフ状態が続く限り、ステップS21にて「No」、ステップS22にて「No」(ドア動作連動スイッチ32は、オンとなってから極短い時間経過後にオフに切り替わる)、ステップS23にて「No」の処理が繰り返し実行され、ステップS26またはステップS28で設定されたモードのシート空調が行われる。この状態から、タイマカウント値が所定値に達すると(ステップS23にて「Yes」)、ステップS29にてシート空調を停止、すなわち空調ユニット20におけるペルチェモジュール21および送風機22の通電駆動、あるいはシートヒータ23の通電駆動を停止する。
【0033】
その後は、イグニッションスイッチ14のオンにより(ステップS21にて「Yes」)、シート空調スイッチ15の操作に応じたシート空調を行う(ステップS30)。
【0034】
以上の説明からも明らかなように、上記実施形態では、ソーラECU13によるステップS11,S12の処理の実行によって、イグニッションスイッチ14のオフ時に、ソーラバッテリ13からの電力がシート空調ECU31に供給される。そして、各シートECU31によるステップS22,S25〜S28の処理の実行によって、イグニッションスイッチ14のオフ時に前記電力を駆動源として、ドア動作連動スイッチ32のオンを条件として、オンとなったドアに対応する空調ユニット20の空調制御が開始される。
【0035】
これにより、ドア動作連動スイッチ32のオンを条件として、空調ユニット20の空調処理が実行されるような処理の流れとすればよいので、その処理内容を極めて簡易に構成することができる。
【0036】
また、上記実施形態では、ドア動作連動スイッチ32がオンとなったドアに対応する空調ユニット20のみが空調制御される。これにより、ソーラバッテリ12からの電力消費を良好に抑制することができる。
【0037】
また、上記実施形態では、各シート空調ECU31によるステップS26またはステップS28の処理の実行によって、空調ユニット20の空調制御が開始された後、所定時間内にイグニッションスイッチ14がオンされないときは、各シート空調ECU31によるステップS23,S29の処理の実行によって、空調ユニット20の空調制御が終了される。これにより、ソーラバッテリ12からの電力消費をより一層良好に抑制することができる。
【0038】
なお、上記実施形態では、シート空調ECU31がFR〜RLシート毎に設けられ、各シート空調ECU31によって、ドア動作連動スイッチ32がオンとなったドアに対応する空調ユニット20の空調制御が開始されるように構成したが、これに限らず、例えば、一つのシート空調ECUのみによって、ドア動作連動スイッチ32がオンとなったドアに対応する空調ユニット20の空調制御が開始されるように構成してもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、内気温Trが所定の上限値Tupよりも大きいときシートを冷却し、内気温Trが所定の下限値Tlow未満であるときシートを加熱するように構成したが、これに限らず、例えば、車室内を設定温度に保つ空調装置の設定温度スイッチのスイッチ指示信号が各シート空調ECU31に入力される構成とし、内気温Trが前回設定時の設定温度よりも大きいときシートを冷却し、内気温Trが前回設定時の設定温度よりも小さいときシートを加熱するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用シート空調装置を概略的に示すブロック図。
【図2】図1の空調ユニットを模式的に示す縦断面図。
【図3】図1のソーラECUによって実行されるメイン処理プログラムを示すフローチャート。
【図4】図1の各シート空調ECUによって実行される各シート処理プログラムを示すフローチャート。
【符号の説明】
【0041】
BS 電源切替装置
SC シート空調装置
11 メインバッテリ
12 ソーラバッテリ(ソーラ発電手段)
12a ソーラセル
13 ソーラECU(ソーラ制御手段)
14 イグニッションスイッチ
15 シート空調スイッチ
16 内気センサ
20 空調ユニット
21 ペルチェモジュール
22 送風機
23 シートヒータ
31 シート空調ECU(シート空調制御手段)
32 ドア動作連動スイッチ
40 車内LAN(車内通信線)
L1〜L3 電力供給線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のシート毎に設けられ、対応するシートを空調するシート空調手段と、
前記シート空調手段を制御するシート空調制御手段と、
太陽光を受けて発電するソーラ発電手段と、
前記シート空調制御手段と電力供給線を介して電力供給可能、かつ車内通信線を介して通信可能に接続され、イグニッションスイッチのオフ時に前記ソーラ発電手段からの電力を前記シート空調制御手段に供給するソーラ制御手段と、
車両のドア毎に設けられ、前記ドアの開動作に連動してオンとなるドア動作連動スイッチとを備え、
前記シート空調制御手段は、イグニッションスイッチのオフ時に前記電力を駆動源として、前記ドア動作連動スイッチのオンを条件として、オンとなったドアに対応する前記シート空調手段の空調制御を開始することを特徴とする車両用シート空調装置。
【請求項2】
前記シート空調制御手段は、前記シート空調手段の空調制御を開始した後、所定時間内にイグニッションスイッチがオンされないとき、前記シート空調手段の空調制御を終了する請求項1に記載の車両用シート空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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