説明

車両用シート装置

【課題】荷物を拘束するための部材を小型化する。
【解決手段】フロア10に配置されている前席20R、20Lと、前席20R、20Lよりも後方でフロア10に配置されている後席30と、を備え、前席20R、20Lは、フロア10に対し左右一対で立設し、前席20R、20Lのシート体の脚となるライザ21、41を備え、後席30の背面が後席30よりも後方のフロア10と連続するように、後席30は可倒し、左右一対のライザ21、41それぞれの間に、後席30用の足元スペースが形成される車両用シート装置であって、ライザ21R(21)、41L(41)の側面で、フロア10から上方に離間した位置にタイダウンフックHを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室後部に自転車などの荷物を搭載する車両のシートの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、後席のシートバックを前倒して自転車を積み込むスペースを確保する車両において、後席のシートバックの背面部に、自転車の車輪をガイドするガイド構造について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−157050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車室後部に自転車などの荷物を搭載するにあたり、荷物を拘束するための部材を小型化したいという要望がある。このとき、荷物自体は、ロープなどで拘束し、ロープなどを固定する部材を小型化して、前記要望を満たしてもよい。しかし、特許文献1のガイド構造は、後席のシートバックの背面部の一部領域に配設するほどの大きさを備えており、前記要望に応えられているとはいえない。
【0005】
そこで、本発明は、荷物を拘束するための部材を小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、フロアに配置されている前席と、前記前席よりも後方で前記フロアに配置されている後席と、を備え、前記前席は、前記フロアに対し左右一対で立設し、前記前席のシート体の脚となる脚部材を備え、前記後席の背面が前記後席よりも後方のフロアと連続するように、前記後席は可倒し、前記左右一対の脚部材の間に、前記後席用の足元スペースが形成される車両用シート装置であって、前記左右一対の脚部材の側面で、前記フロアから上方に離間した位置にフック部材を備えることを特徴とする。
【0007】
かかる構成によれば、前席の脚部材に取り付けることができる程度の大きさを持つフック部材で、例えば、後席を前倒することで後席の背面と荷室とが連続して広いスペースが形成される車室後部に搭載する荷物を拘束するロープなどを固定することができる。よって、荷物を拘束するための部材を小型化することができる。
また、荷物を拘束するための部材を小型化すれば、後席用の足元スペースを阻害しない。つまり、後席に座る乗員は、フック部材のことを気にすることなく、足元スペースに足を伸ばすことができる。
また、このフック部材は、小型化したとしても、脚部材に固定されている部材であるので、ロープなどを強固に固定して、荷物を強固に拘束することができる。
なお、フック部材は、脚部材の左右方向内側の面に固定するのが好ましい。これにより、荷物を拘束しようとする利用者がロープなどを引っ掛ける箇所を容易に見つけることができる。よって、荷物を拘束する作業を容易にすることができる。
【0008】
前記フック部材は、棒材から構成され、前記棒材の基部は、前記脚部材に固定され、前記棒材の先端部は、自由端であるとよい。
【0009】
かかる構成によれば、フック部材を簡易に形成することができる。
【0010】
前記棒材が固定されている脚部材の左右側面および後側面を保護するカバー部材を備え、前記カバー部材は、前記棒材の基部を被覆しているとよい。
【0011】
かかる構成によれば、カバー部材によって、棒材の基部が見えなくなるので見栄えをよくすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、荷物を拘束するための部材を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態の車両を模式的に示す左面図である。
【図2】本実施形態の車両を模式的に示す左面図である。
【図3】(a)は、後席の使用状態、(b)は、後席の格納状態を示す図である。
【図4】(a)は、運転席となる前席、(b)は、助手席となる前席の斜視図である。
【図5】(a)は、レッグカバーを取り付けたライザの斜視図、(b)は、レッグカバーを取り付けたライザの後面図である。
【図6】(a)は、タイダウンフックが取り付けられているライザを左方から視たときの図、(b)は、タイダウンフックが取り付けられているライザを上方から視たときの図である。
【図7】ライザにレッグカバーを取り付ける様子を示す図である。
【図8】車両に自転車を収容する動作を示す左面図である。
【図9】車両に搭載した自転車を拘束する動作を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)について、適宜図面を参照しながら説明する。説明の便宜上、同一の要素には同一の番号を付し、重複する説明は省略する。また、本実施形態において、図1に示した車両が直進する方向を「前」とし、その他の方向は、図1に従う。
【0015】
≪構成≫
図1および図2は、本実施形態の車両を模式的に示す左面図である。図1では、車両の後席に乗員が座っている様子が示されている。図2では、車室後部に自転車が搭載されている様子が示されている。
【0016】
本実施形態の車両1は、車体背面に設けられたバックドア3から自転車Bを車室後部スペースに搭載可能なものである。車両1は、フロア10と、左右一対の前席20、20と、左右一対の後席30、30と、スロープ50と、を備える。
【0017】
<フロア>
フロア10は、車室の床面を構成するものであって、前方から後方に向けて順に、フロントフロア11と、ミッドフロア12と、リアフロア13と、を備える。フロントフロア11には、左右一対の前席20、20が配置されている。ミッドフロア12には、左右一対の後席30、30が配置されている。リアフロア13は、後席30使用時(後席に乗員が座っているとき)には、車室後部の荷物スペースとして使用される。フロントフロア11、ミッドフロア12及びリアフロア13は、ボルト、溶接等によって図示しないフレームに固定されている。また、フロア10には、前席20と後席30との間、すなわち、フロントフロア11の後端からミッドフロア12の前端にかけて、凹部10aが形成されている。また、リアフロア13は、後ろに行くにつれて下がる傾斜面を呈している。
【0018】
<前席>
左右一対の前席20、20は、運転席及び助手席であり、フロントフロア11上に設けられている。説明の便宜上、運転席となる前席の符号は、「20R」とし、助手席となる前席の符号は、「20L」として説明する場合がある。前席20についての詳細は、後記する。
【0019】
<後席>
左右一対の後席30,30は、ミッドフロア12上に設けられている。後席30は、その前下方に形成された凹部10aに格納(いわゆる、ダイブダウン)可能に構成されている。本発明において、「後席30が凹部10aに格納可能」とは、「後席30のシートバックを前方へ倒しつつ後席30全体を前下方に移動させ、後席30の少なくとも一部を凹部10a内に収容する」ことをいう。
【0020】
ここで、図3を参照して、後席30の詳細について説明する。図3(a)、(b)は、後席を示す側面図であって、(a)は使用状態、(b)は格納状態を示す図である。
【0021】
図3(a)に示すように、後席30は、ミッドフロア12の前端に取り付けられた前脚31と、ミッドフロア12の後端に取り付けられた後脚32と、前脚31の上端に支持されたシートクッション33と、後脚32の上端に支持されたシートバック34と、シートバック34の上面に着脱可能に設けられたヘッドレスト35と、を備える。シートクッション33は、アームを介して後脚32に回動可能に連結されている。このため、後席30は、シートバック34を後傾(いわゆるリクライニング)したり、前傾したりすることができる(可倒式)。また、前脚31及び後脚32は、それぞれ左右方向に延びる回動軸を備えている。図3(b)に示すように、前脚31及び後脚32を回動軸まわりに前方へ傾動させることによって、シートバック34を前方へ倒し込みつつシートクッション33を前下方へ移動させ、後席30は、凹部10aに格納される。このとき、後席30用のシートベルトのバックル4も、前方へ倒れこむ。
【0022】
図2に示すように、後席30が凹部10aに格納されることによって、後席30の背面が、ミッドフロア12と連続する。これにより、後席30の背面、ミッドフロア12、リアフロア13が、後ろに行くにつれて下がる1つの傾斜面を呈し、車室後部の荷物スペースの容積が拡大する。この拡大した荷物スペースは、例えば、自転車Bを収容することができる。
【0023】
<スロープ>
図1および図2に示すスロープ50は、車室後端に設けられており、未使用時には、バックドア3近傍に立設した状態で収納され、使用時には、バックドア3開口から車両1の後方に倒されて展開される(図8参照)。スロープ50は、第一プレート51と、第二プレート52と、第三プレート53と、を備えている。第一プレート51は、下端が車体に対して回動可能に取り付けられている。第二プレート52は、第一プレート51の展開時上面に対してスライド可能に設けられている。第三プレート53は、第二プレート52の展開時上面に対してスライド可能に設けられている。また、スロープ50は、未使用時において、図示しないロック機構によって車体の左右側面に固定可能である。図2に示すように、スロープ50は、車室後部に収容された自転車Bが後方へ移動することを係止する。
【0024】
(前席20の詳細)
図4を参照して、前席20の詳細について説明する。図4(a)は、運転席となる前席20Rを左後方から視た斜視図であり、図4(b)は、助手席となる前席20Lを右後方から視た斜視図である。
【0025】
図4(a)に示すように、前席20Rは、ライザ(脚部材)21と、シートクッション22と、シートバック23と、ヘッドレスト24と、アームレスト25と、を備える。シートクッション22と、シートバック23と、ヘッドレスト24と、アームレスト25は、前席20Rの「シート体」を構成する。
【0026】
ライザ21R(21)、21L(21)は、フロントフロア11に対して左右一対に立設し、前後方向に延びることで4本の立脚部(右前の立脚部21rf、右後の立脚部21rr(例えば、図5参照)、左前の立脚部21lf、左後の立脚部)を形成している。ライザ21は、例えば、金属製である。ライザ21の立脚部は、例えば、1枚の金属板を上視略U字形に折り曲げ加工して形成される。ライザ21は、前席20Rのシート体を所定の高さ位置に支持しているので、左右一対のライザ21R、21Lの間には、後席30の乗員の足を伸ばすための足元スペースが形成されている(図1参照)。
【0027】
シートクッション22は、前後方向に移動可能となるようにライザ21に支持されている。シートバック23は、シートクッション22の後端に立設するように支持されている。シートバック23の左側部は、アームレスト25が収納されるように切り欠かれている。
【0028】
ヘッドレスト24は、シートバック23の上面に着脱可能に設けられている。アームレスト25は、シートバック23に隣接してシート体の背面を構成している。アームレスト25は、左右方向の回動軸を下部に有し、前方向に倒すことができる。
【0029】
ライザ21後部の2つの立脚部(右後の立脚部21r、左後の立脚部)にはそれぞれ、レッグカバー(カバー部材)26R(26)、26L(26)が配設されている。レッグカバー26、26は、2つの立脚部(右後の立脚部21r、左後の立脚部)それぞれの左右側面と、後側面とを保護する。レッグカバー26R、26Lは、例えば、樹脂製である。
【0030】
ライザ21Rの左右方向(前席20のシート幅方向)内側の面には、タイダウンフック(フック部材)HR(H)が、フロントフロア11から上方に離間した位置に、例えば溶接して取り付けられている。タイダウンフックHは、ロープなどを引っ掛ける(係止する)部材であり、そのロープなどを用いて車室後部に搭載された自転車Bなどを拘束することができる。このタイダウンフックHは、ライザ21に取り付けることができる程度の大きさである。
【0031】
一方、図4(b)に示すように、前席20L(助手席)は、ライザ(脚部材)41と、シートクッション42と、シートバック43と、ヘッドレスト44と、を備える。シートクッション42と、シートバック43と、ヘッドレスト44は、前席20Lの「シート体」を構成する。
【0032】
ライザ41R(41)、41L(41)は、フロントフロア11に対して左右一対に立設し、前後方向に延びることで4本の立脚部(右前の立脚部41rf、右後の立脚部、左前の立脚部41lf、左後の立脚部)を形成している。ライザ41は、ライザ21と同等の機能を有する。
【0033】
ライザ41後部の2つの立脚部(右後の立脚部、左後の立脚部)にはそれぞれ、レッグカバー(カバー部材)46R(46)、46L(46)が配設されている。レッグカバー46、46は、2つの立脚部(右後の立脚部、左後の立脚部)それぞれの左右側面と、後側面とを保護する。レッグカバー46は、レッグカバー26と同等の機能を有する。
【0034】
ライザ41Lの左右方向(前席20のシート幅方向)内側の面には、タイダウンフック(フック部材)HL(H)が、フロントフロア11から上方に離間した位置に、例えば溶接して取り付けられている。タイダウンフックHLと、タイダウンフックHRとにローブなどを引っ掛けて、そのロープなどを用いて車室後部に搭載された自転車Bなどを拘束することができる。
【0035】
図4(a)に示した破線の円Aで示した領域を拡大した図面を図5として示す。図5(a)は、レッグカバーを取り付けたライザの斜視図であり、図5(b)は、レッグカバーを取り付けたライザの後面図である。図5では、レッグカバー26Rを実線で図示し、レッグカバー26Rに被覆されているライザ21Rの立脚部21rrを破線で図示している。また、図5とは対照的に、レッグカバー26Rを二点鎖線で図示し、ライザ21Rの立脚部21rrを実線で図示した図面を図6として示す。図6(a)は、タイダウンフックが取り付けられているライザを左方から視たときの図、図6(b)は、タイダウンフックが取り付けられているライザを上方から視たときの図である。
【0036】
タイダウンフックHRは、左方向から視て略S字状を呈する金属製の棒材である。なお、前席20Lのライザ41Lに溶接して取り付けられているタイダウンフックHLは、タイダウンフックHRと同等の形状を呈している。基本的にタイダウンフックHRに関する説明は、タイダウンフックHLについても同様であるので、タイダウンフックHLに関する詳細な説明は省略する。
【0037】
タイダウンフックHRは、基部h1と、中央部h2と、先端部h3とから構成されている。基部h1は、タイダウンフックHRの一端であり、中央部h2に対して例えば曲げ加工を施すことで、略前後方向に延びている。基部h1は、例えば溶接により、ライザ21Rに取り付けられて固定されている。中央部h2は、基部h1に対して略上下方向に延び、先端部h3の上下方向における位置を定めている。中央部h2の上端は、例えば溶接により、ライザ21Rに取り付けられて固定されている。先端部h3は、タイダウンフックHRの一端であり、中央部h2に対して例えば曲げ加工を施すことで、略前後方向に延びている。先端部h3は、自由端であり、前方を向いている。
【0038】
図5(a)および図6(a)に示すように、タイダウンフックHRの溶接箇所となる基部h1は、レッグカバー26Rにより被覆されている。よって、例えば後席30の乗員には、その溶接箇所が見えず、前席20に形成された足元スペースの見栄えがよくなる。
【0039】
また、前記したとおり、タイダウンフックHRの基部h1および先端部h3は、略前後方向に延びており、中央部h2は、略上下方向に延びている。つまり、タイダウンフックHRは左右方向には延びていない。よって、レッグカバー26Rの左側板26Raは、タイダウンフックHRよりも左側、つまり、シート幅方向の内側に位置している(図6(b)参照)。このようなレッグカバー26Rは、ライザ21Rの立脚部21rrの左側面だけでなく、タイダウンフックHRの少なくとも基部h1も被覆している。よって、図5(b)に示すように、ライザ21Rの立脚部21rrだけでなく、タイダウンフックHRもレッグカバー26Rによって隠蔽されている。したがって、後席30の乗員は、タイダウンフックHRのことを気にすることなく、ライザ21により形成されている足元スペースに足を伸ばすことができる。
【0040】
図6(a)に示すように、ライザ21Rの左側面には、レッグカバー26Rの左側板の内側に形成されている爪部と嵌合する孔P1が形成されている。
【0041】
図7は、ライザにレッグカバーを取り付ける様子を示す図である。ライザ21Rの左側面にはすでに述べた孔P1が形成されているとともに、ライザ21Rの立脚部21rrの後側面には孔P2が形成されている。また、図示しないが、ライザ21Rの右側面にも孔が形成されている。
【0042】
一方、レッグカバー26Rの左側板の内側には爪部C1が形成されている。また、レッグカバー26Rの後側板の内側には爪部C2が形成されている。また、図示しないが、レッグカバー26Rの右側板の内側にも爪部が形成されている。後方からライザ21Rの立脚部21rrに向かってレッグカバー26Rを移動させると、爪部C1が孔P1と嵌合し、爪部C2が孔P2と嵌合する。レッグカバー26Rの右側板の内側にある不図示の爪部も、ライザ21Rの右側面にある不図示の孔と嵌合する。よって、レッグカバー26は、ライザ21に対して3箇所で固定されることになる。
【0043】
≪動作例≫
本実施形態の動作例として、車両1の車室後部に収容した自転車BをタイダウンフックHに引っ掛けたロープで拘束する動作例について、主に図8および図9を参照して説明する。図8は、車両に自転車を収容する動作を示す左面図である。図9は、車両に搭載した自転車を拘束する動作を示す上面図である。図9では、後席30およびフロア10の図示は省略している。
【0044】
図8に示すように、まず、利用者は、車両1の背面のバックドア3を開け、スロープ50を後方に倒して展開するとともに、左右一対の後席30(及びバックル4)を前下方へ倒し込んで凹部10aに格納する。スロープ50を展開した状態で、スロープ50及びリアフロア13は、14°程度の傾斜角の坂を構成する。続いて、利用者は、自転車Bを転がしながらスロープ50を上り、自転車Bとともに車両1の車室後部に乗り入れる。自転車Bの後輪が車室内に入り、自転車B全体が車室後部に収容されると、基本的には、自転車Bの前輪は、ダイブダウンした後席30の背面上に位置し、自転車Bの後輪は、リアフロア13上に位置する。
【0045】
図9に示すように、自転車Bが車室後部に収容された後、利用者は、ロープRを使って自転車Bを拘束する。ロープRは、例えば、輪状を呈する輪状部を両端に備え、それぞれの輪状部がタイダウンフックHと係止する。利用者は、まず、ロープRの一端に備わっている輪状部を、ライザ21Rの左側面に取り付けられているタイダウンフックHRの先端部h3に係止させる。次に、利用者は、ロープRの他端に備わっている輪状部を、例えば、自転車Bの前輪内側を通過させ、ライザ41Lの右側面に取り付けられているタイダウンフックHLの先端部h3に係止させる。
【0046】
最後に、利用者は、スロープ50を畳んで車室後端に立設させ、バックドア3を閉じる。
このようにして、ロープRを、例えば自転車Bの前輪内側を通過させてタイダウンフックHに係止させる、という簡易な構成で自転車Bを拘束することができる。
【0047】
≪まとめ≫
本実施形態によれば、自転車Bなどの荷物を拘束するための部材を小型化することができる。自転車Bなどを拘束するためのロープRを用いることで、タイダウンフックHは、前席20のライザ21に取り付けることができる程度の大きさで済むからである。
また、タイダウンフックHのように小型化したフック部材を用いれば、左右一対のライザ21の内側に形成された後席30用の足元スペースを阻害しない。また、タイダウンフックHは、前後方向に延びているとともに、レッグカバー26で覆われているので、足元スペースを阻害しないという効果が顕著になる。後席30に座る乗員は、タイダウンフックHを意識することなく、足元スペースに足を伸ばすことができる。
また、タイダウンフックHは、小型化したとしても、フロントフロア11に対して強固に固定されているライザ21が備える部材であるので、ロープなどを強固に固定して、自転車Bなどの荷物を強固に拘束することができる。
【0048】
また、タイダウンフックHは、例えば金属製の棒材に曲げ加工を施して基部h1、中央部h2、先端部h3を形成しただけであるので、タイダウンフックHを簡易に形成することができる。
【0049】
また、レッグカバー26、46は、例えば、ライザ21に対して溶接して固定されているタイダウンフックHの基部h1(および中央部h2の上端)を被覆して見えなくするので、車両1の全体的な見栄えをよくすることができる。特に、左右一対のライザ21の間にある足元スペースの見栄えをよくすることができる。
【0050】
≪その他≫
なお、前記実施形態は、本発明を実施するための好適なものであるが、その実施形式はこれに限定されるものではない。したがって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、実施形式を種々変形することが可能である。
【0051】
例えば、本実施形態では、車室後部に収容される荷物は、自転車として説明した。しかし、自転車に限らず、例えば、車椅子に対しても本発明を適用することができる。
【0052】
また、本実施形態では、ロープRを自転車Bの前輪内側を通過させることによって自転車Bを拘束するものとして説明した。しかし、前輪内側を通過させるに限らず、例えば、自転車のハンドルやサドルを越えるようにロープRをまわしたり、ロープRが後輪内側を通過するようにして、ロープRをタイダウンフックHに引っ掛けて自転車Bを拘束してもよい。
【0053】
また、本実施形態では、自転車をロープで拘束するものとして説明した。しかし、ロープに限らず、例えば、ベルトやチェーンなどを用いて本発明を適用して、自転車などの荷物を拘束してもよい。
【0054】
また、本実施形態では、後席30は、凹部10aに格納可能として説明した。しかし、後席30が、凹部10aに格納しない場合であっても、後席30のシートバック34が所定角度分だけ前倒してミッドフロア12と連続面を形成できる車両についても、本発明を適用することができる。また、後席30を凹部10aに格納もせず、前倒もせず、使用状態にある場合であっても、車室後部の荷物スペースに収容可能な荷物に対して本発明を適用することができる。
【0055】
また、本実施形態では、タイダウンフックHは、ライザ21、41に対して溶接して固定した。しかし、例えば、タイダウンフックHの形状と係合し、ボルトを用いてライザ21、41と螺合する留め金を用いてタイダウンフックHを固定してもよい。
【0056】
また、本実施形態では、タイダウンフックHは、車両の前後方向に伸びる略S字状を呈する金属製の棒材として説明した。しかし、タイダウンフックHの形状はさまざまに設計することができる。例えば、タイダウンフックHは、L字状を呈する棒材とする。このときタイダウンフックHの一端をライザ21、41に溶接などで固定し、他端を車両の前方向に延びる自由端とするとよい。また、タイダウンフックHは、直線状を呈する棒材であってもよい。この場合、タイダウンフックHの一端が前下方向に延びる自由端となるように、タイダウンフックHをライザ21、41に対して固定するとよい。タイダウンフックHの自由端の向きは、車両の前後方向や略前後方向に限らず、例えば、前下方向や前上方向に延びていてもよい。この場合、タイダウンフックHの自由端が前下方向や前上方向に延びるようにタイダウンフックHの形状を設計する。
【0057】
また、本実施形態では、タイダウンフックHの取り付け箇所は、ライザ21、41の左右方向内側の面にした。しかし、例えば、ライザ21、41の左右方向外側の面や後面でもよい。もし、ライザ21、41が前側板を備えていれば、ライザ21、41の前面にタイダウンフックHを取り付けてもよい。よって、タイダウンフックHは、ライザ21、41の側面に取り付けることが可能である。
【0058】
ただ、タイダウンフックHは、ライザ21、41の左右方向内側の面に取り付けるのが好ましい。そのようにすれば、車両1の後方から自転車Bなどを乗り入れようとする利用者は、自転車Bなどを容易に拘束することができる。ライザ21、41の左右方向内側の面に取り付いているタイダウンフックHは、(他の面に取り付いている場合と比較して)車両の後方から進入する利用者の目にとまり易い位置にあるからである。自転車Bなどを拘束しようとする際、利用者は、ロープなどを引っ掛ける箇所を容易に見つけることができる。
【0059】
また、本実施形態では、ライザ21、41の立脚部は、1枚の金属板を上視略U字形に折り曲げ加工して形成されるものとした。しかし、前記立脚部を柱状に形成してもよい。これにより、タイダウンフックHを取り付ける箇所が強固になるので、タイダウンフックHによる拘束を強化することができる。また、柱状の立脚部に、棒材のタイダウンフックHを挿入する穴を形成してもよい。これにより、ライザ21、41に対するタイダウンフックHの取り付けが容易になる。
【0060】
本実施形態で説明した技術的な事項を適宜組み合わせた技術を実現することもできる。
その他、本発明に必要となる各種部材の形状、材質、配置など具体的な構成について、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 車両
10 フロア
10a 凹部
11 フロントフロア
12 ミッドフロア
13 リアフロア
20(20R、20L) 前席
30 後席
50 スロープ
21(21R、21L)、41(41R、41L) ライザ(脚部材)
21rf、21rr、21lf 立脚部
41rf、41lf 立脚部
26(26R、26L)、46(46R、46L) レッグカバー(カバー部材)
H(HR、HL) タイダウンフック(フック部材)
h1 基部
h2 中央部
h3 先端部
B 自転車(荷物の具体例)
R ロープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアに配置されている前席と、前記前席よりも後方で前記フロアに配置されている後席と、を備え、
前記前席は、前記フロアに対し左右一対で立設し、前記前席のシート体の脚となる脚部材を備え、
前記後席の背面が前記後席よりも後方のフロアと連続するように、前記後席は可倒し、
前記左右一対の脚部材の間に、前記後席用の足元スペースが形成される車両用シート装置であって、
前記左右一対の脚部材の側面で、前記フロアから上方に離間した位置にフック部材を備える
ことを特徴とする車両用シート装置。
【請求項2】
前記フック部材は、棒材から構成され、
前記棒材の基部は、前記脚部材に固定され、前記棒材の先端部は、自由端である
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用シート装置。
【請求項3】
前記棒材が固定されている脚部材の左右側面および後側面を保護するカバー部材を備え、
前記カバー部材は、前記棒材の基部を被覆している
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用シート装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−112002(P2013−112002A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256982(P2011−256982)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】